(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】氷晶形成を低減するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C07K 2/00 20060101AFI20220120BHJP
A01N 1/02 20060101ALI20220120BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220120BHJP
C12N 1/04 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C07K2/00
A01N1/02
C09K3/00 102
C12N1/04
(21)【出願番号】P 2018539231
(86)(22)【出願日】2016-10-13
(86)【国際出願番号】 US2016056852
(87)【国際公開番号】W WO2017066454
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2019-09-30
(32)【優先日】2015-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518129411
【氏名又は名称】エックス-サーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ シャオシ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/057484(WO,A1)
【文献】PNAS, 2012, Vol.109, No.49, p.19922-19927
【文献】Synthesis, 2009, No.3, p.488-494
【文献】ChemBioChem, 2010, Vol.11, p.152-160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 2/00
A01N 1/02
C09K 3/00
C12N 1/04
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷晶形成を低減または阻止する、式(I)のペプトイドポリマー、その互変異性体またはその立体異性体:
式中:
各R
1は独立して、
ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
1-18アルキル
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
1-18 ヒドロキシアルキル
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいアルコキシ
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
1-18アルキルアミノ
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
1-18アルキルチオ
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいカルボキシアルキル
;C
3-10シクロアルキル
;ヘテロシクロアルキル
;アリール
;ヘテロアリール
;(C
3-10シクロアルキル)アルキル
;(ヘテロシクロアルキル)アルキル
;アリールアルキル
;並びにヘテロアリールアルキルからなる群より選択され、
ここでR
1の少なくとも4つは
C
1-18ヒドロキシアルキルから独立して選択され、かつ
各R
2はH
であり;
XおよびYは独立して、H
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、
およびニトロ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
1-8アルキル
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
1-8アシル
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
1-8アルキルアミノ
;-OH
;-SH
;-NH
2
;カルボキシ
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
1-8ヒドロキシアルキル
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
1-8アルキルアミノ
;ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
2-8アルキルチオ
;並びにヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、
カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、
およびチオキソ
から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいC
1-8カルボキシアルキル
からなる群より選択されるか、または
代わりにXおよびYは一緒になって、互いに共有結合を形成し;かつ
下付き文字nは、ポリマー中のモノマーの数を表して、8~25である。
【請求項2】
各R
1が独立して、下記からなる群より選択される、請求項1記載のペプトイドポリマー
式中:
mは1~8であり;かつ
R
3は、H、C
1-8アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、アミン、オキソ、およびチオキソからなる群より選択される。
【請求項3】
1つまたは複数のR
1が、R
1b:
の構造を有する、請求項2記載のペプトイドポリマー。
【請求項4】
各R
1が独立して、下記からなる群より選択される、請求項1記載のペプトイドポリマー
。
【請求項5】
各R
1が、独立にC
1-6ヒドロキシアルキル基より選択される、請求項
1記載のペプトイドポリマー。
【請求項6】
nが10~25である、請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項7】
nが8~20である、請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項8】
Xが、H、C
1-8アルキル、およびC
1-8アシルからなる群より選択され;かつYが、-OH
一級アミノ
、二級アミノ、および三級アミノからなる群より選択される、請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項9】
nが10であり、かつ
ペプトイドポリマーが:
4つのNhp
(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび6つのNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
5つのNhpモノマーおよび5つのNsbモノマー;または
6つのNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー;または
7つのNhpモノマーおよび3つのNsbモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび2つのNsbモノマー;または
10のNhpモノマー
を含む、
請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項10】
nが10であり、かつ
ペプトイドポリマーが:
4つのNhp
(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび6つのNme
(2-(メチルアミノ)酢酸)モノマー;または
5つのNhpモノマーおよび5つのNmeモノマー;または
6つのNhpモノマーおよび4つのNmeモノマー;または
7つのNhpモノマーおよび3つのNmeモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび2つのNmeモノマー
を含む、
請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項11】
nが10であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
5つのNhe(2-((2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸)モノマーおよび5つのNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
5つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび5つのNbu(2-ブチルアミノ)酢酸)モノマー
を含む、
請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項12】
nが10であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
4つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび6つのNib(2-(イソブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNbu(2-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNpr(2-プロピルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNip(2-(イソプロピルアミノ)酢酸)モノマー
を含む、
請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項13】
nが14であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
6つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび8つのNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
7つのNhpモノマーおよび7つのNsbモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー;または
10のNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー;または
14のNhpモノマー
を含む、
請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項14】
nが14であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
6つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび8つのNib(2-(イソブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
7つのNhpモノマーおよび7つのNibモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび6つのNibモノマー;または
10のNhpモノマーおよび4つのNibモノマー;または
14のNhpモノマー
を含む、
請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項15】
nが16であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
5つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび11のNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
7つのNhpモノマーおよび9つのNsbモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび8つのNsbモノマー;または
10のNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー;または
12のNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー;または
16のNhpモノマー
を含む、
請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項16】
nが22であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
7つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび15のNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
10のNhpモノマーおよび12のNsbモノマー;または
11のNhpモノマーおよび11のNsbモノマー;または
14のNhpモノマーおよび8つのNsbモノマー;または
17のNhpモノマーおよび5つのNsbモノマー;または
22のNhpモノマー
を含む、
請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項17】
0℃~-20℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する、請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項18】
-20℃~-40℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する、請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項19】
-20℃で氷晶形成を低減または阻止する、請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項20】
-40℃~-200℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する、請求項1記載のペプトイドポリマー。
【請求項21】
請求項1記載のペプトイドポリマーと1つまたは複数のアミノ酸とを含むペプトイド-ペプチドハイブリッドであって、該1つまたは複数のアミノ酸が、該ペプトイドポリマーの一端もしくは両端および/または1つもしくは複数のペプトイドモノマーの間に位置する、ハイブリッド。
【請求項22】
1つまたは複数のアミノ酸が、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、アルギニン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、チロシン、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項
21記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド。
【請求項23】
組織、臓器、または細胞を保存するための方法であって、組織、臓器、または細胞を、請求項1記載のペプトイドポリマー、請求項
21記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、
またはその組み合わせと接触させる段階を含む、方法。
【請求項24】
ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、またはその組み合わせが、0℃~-200℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する、請求項
23記載の方法。
【請求項25】
ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、またはその組み合わせが、100nM~100mMの量で存在する、請求項
23記載の方法。
【請求項26】
組織、臓器、または細胞が、心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、腸、胸腺、角膜、神経細胞、血小板、精細胞、卵母細胞、胚細胞、幹細胞、ヒト多能性幹細胞、造血幹細胞、リンパ球、顆粒球、免疫系細胞、骨細胞、原形質類器官、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項
23記載の方法。
【請求項27】
生体高分子を保存するための方法であって、生体高分子を、請求項1記載のペプトイドポリマー、請求項
21記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、
またはその組み合わせと接触させる段階を含む、方法。
【請求項28】
生体高分子が、核酸、アミノ酸、タンパク質、単離タンパク質、ペプチド、脂質、複合構造物、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項
27記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年10月14日提出の米国特許仮出願第62/241,588号に対する優先権を主張し、その開示はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
凍結保護剤(CPA)は、溶液中に存在する場合、0℃未満の温度に曝露される溶液中の氷晶形成を低減または阻止し得る化合物である。現行のCPAには、小分子(透過性CPAと呼ばれることが多い)、合成ポリマー、および不凍タンパク質が含まれる。
【0003】
臓器移植は、生存、生活の質、および対費用効果に関して、末期臓器不全に対する現在最良の処置である。残念なことに、臓器移植の供給と需要との間には著しいギャップがあり、それは、衰弱性疾患の患者を長い待ち時間の間低い生活の質に苦しませる主な医学的障害の1つである。臓器の明らかな不足は、信頼できる保存法がないことからの少なからぬ無駄使いに起因する。事実、肺、膵臓、および心臓の50%以上が、死亡したドナーから回収されないままである。
【0004】
適切に臓器を保存するためには、臓器を保存溶液で洗浄して血液を除去し、臓器を安定化しなければならない。保存溶液中でいったん安定化させても、ドナーから取り出した後の臓器の割当て、輸送、および移植のためには限られた時間(約6~12時間)しかない。遠方の患者の適合性は限られた時間では確認することができないため、この短い時間枠により、ほとんどの臓器は同じ地域の患者に行くことになる。この不足の結果、そしてほぼすべての国に存在する臓器取引を禁止する法律にもかかわらず、受容を満たすための不法な臓器売買および人身売買が増加している。
【0005】
臓器保存で用いられる現行の透過性CPAには、中でも概して、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、グリセロール、スクロース、ラクトース、およびD-マンニトールが含まれる。臓器保存温度で氷晶成長を低減または阻止するために、透過性CPAの有効な濃度は非常に高くなければならない(≧60%が必要とされることが多い)。そのような高濃度では、これらの化合物は、保存しようとしている組織に対して毒性であり得、移植前の加温に際する大量のCPA除去は不可逆的な細胞死につながり得る。
【0006】
氷晶形成を低減または阻止するために用いられる他のCPAには、合成ポリマーおよび不凍タンパク質が含まれる。透過性CPAと同様に、これらはそれぞれ欠点を有する。例えば、合成ポリマーは、細胞膜を透過することができない。したがって、合成ポリマーCPAは細胞外の氷形成しか制御できない。生体試料を有効に保存するためには、氷晶形成を細胞の内側および外側の両方で制御しなければならない。魚、植物、または昆虫から分離されるものなどの、天然不凍タンパク質は、氷形成を防止するのに非常に有効であるが、入手可能な現行の不凍タンパク質は純度が低く、非常に高価である。加えて、生体試料を保存するための不凍タンパク質の使用は、免疫原性の潜在源を誘導する。
【0007】
したがって、当技術分野において、0℃未満および極低温度での氷晶形成を有効に低減または阻止するための新規な非毒性化合物が必要とされている。本開示はこの必要性を満たし、他の利点も提供する。
【発明の概要】
【0008】
いくつかの局面において、本明細書において提供するのは式(I)のペプトイドポリマー、その互変異性体、またはその立体異性体である:
式中:
各R
1は独立して、H、置換されていてもよいC
1-18アルキル、置換されていてもよいC
2-18アルケニル、置換されていてもよいC
2-18アルキニル、置換されていてもよいC
1-18 ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいC
1-18アルキルアミノ、置換されていてもよいC
1-18アルキルチオ、置換されていてもよいカルボキシアルキル、C
3-10シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C
3-10シクロアルキル)アルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキルからなる群より選択され、
ここでR
1の少なくとも1つの実例はC
1-18ヒドロキシアルキルであり、かつ
ここで任意のシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール基は独立して、1つまたは複数のR
3基で置換されていてもよく;
各R
2は独立して、H、置換されていてもよいC
1-18アルキル、置換されていてもよいC
2-18アルケニル、置換されていてもよいC
2-18アルキニル、置換されていてもよいC
1-18ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいC
1-18アルキルアミノ、置換されていてもよいC
1-18アルキルチオ、および置換されていてもよいカルボキシアルキルからなる群より選択され;
各R
3は独立して、ハロゲン、オキソ、チオキソ、-OH、-SH、アミノ、C
1-8アルキル、 C
1-8ヒドロキシアルキル、C
1-8アルキルアミノ、およびC
1-8アルキルチオからなる群より選択され;
XおよびYは独立して、H、置換されていてもよいC
1-8アルキルアミノ、-OH、-SH、カルボキシ、置換されていてもよいC
1-8ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいC
1-8アルキルアミノ、置換されていてもよいC
2-8アルキルチオ、置換されていてもよいC
1-8カルボキシアルキル、およびハロゲンからなる群より選択されるか、または
代わりにXおよびYは一緒に共有結合を形成し;かつ
下付き文字nは、ポリマー中のモノマーの数を表して、2~50であり;
ただしnが3~7である場合、R
1のすべての実例はエチルヒドロキシではないことを条件とする。
【0009】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマー中のR
1の各実例は、下記からなる群より選択される:
式中:
mは1~8であり;かつ
R
3は、H、C
1-8アルキル、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、アミン、オキソ、およびチオキソからなる群より選択される。
【0010】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマー中のR
1の各実例は、下記からなる群より選択される:
。
【0011】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマー中のR
1の各実例はC
1-18ヒドロキシアルキル基である。いくつかの態様において、R
1の各実例はC
1-6ヒドロキシアルキル基である。いくつかの態様において、R
1の各実例は同じC
1-6ヒドロキシアルキル基である。いくつかの態様において、R
1の各実例は:
である。
【0012】
いくつかの態様において、R2の各実例はHである。
【0013】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、3~25である。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、5~25である。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、8~50である。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、8~20である。
【0014】
いくつかの態様において、XおよびYは、H、置換されていてもよいC1-8アルキルアミノ、-OH、-SH、カルボキシ、置換されていてもよいC1-8ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいC1-8アルキルアミノ、置換されていてもよいC2-8アルキルチオ、置換されていてもよいC1-8カルボキシアルキル、またはハロゲンである。
【0015】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーのXおよびYは一緒に共有結合を形成する。
【0016】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:3つのNhpモノマーおよび7つのNsbモノマー、4つのNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー、5つのNhpモノマーおよび5つのNsbモノマー、6つのNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー、7つのNhpモノマーおよび3つのNsbモノマー、8つのNhpモノマーおよび2つのNsbモノマー、または10のNhpモノマーを含む。
【0017】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは配列
を有し、かつXはHまたはC
1-8アシルであり、かつYは-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは配列
を有し、かつXはHまたはC
1-8アシルであり、かつYは-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは配列
を有し、かつXはHまたはC
1-8アシルであり、かつYは-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは配列
を有し、かつXはHまたはC
1-8アシルであり、かつYは-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは配列
を有し、かつXはHまたはC
1-8アシルであり、かつYは-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである。
【0018】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:3つのNhpモノマーおよび7つのNmeモノマー、4つのNhpモノマーおよび6つのNmeモノマー、5つのNhpモノマーおよび5つのNmeモノマー、6つのNhpモノマーおよび4つのNmeモノマー、7つのNhpモノマーおよび3つのNmeモノマー、または8つのNhpモノマーおよび2つのNmeモノマーを含む。
【0019】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:5つのNheモノマーおよび5つのNsbモノマー、または5つのNhpモノマーおよび5つのNbuモノマーを含む。
【0020】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:4つのNhpモノマーおよび6つのNibモノマー、4つのNhpモノマーおよび6つのNbuモノマー、4つのNhpモノマーおよび6つのNprモノマー、または4つのNhpモノマーおよび6つのNipモノマーを含む。
【0021】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、14であり、かつペプトイドポリマーは:6つのNhpモノマーおよび8つのNsbモノマー、7つのNhpモノマーおよび7つのNsbモノマー、8つのNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー、10のNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー、または14のNhpモノマーを含む。
【0022】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、14であり、かつペプトイドポリマーは:6つのNhpモノマーおよび8つのNibモノマー、7つのNhpモノマーおよび7つのNibモノマー、8つのNhpモノマーおよび6つのNibモノマー、10のNhpモノマーおよび4つのNibモノマー、14のNhpモノマーを含む。
【0023】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、16であり、かつペプトイドポリマーは:5つのNhpモノマーおよび11のNsbモノマー、7つのNhpモノマーおよび9つのNsbモノマー、8つのNhpモノマーおよび8つのNsbモノマー、10のNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー、12のNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー、または16のNhpモノマーを含む。
【0024】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、22であり、かつペプトイドポリマーは:7つのNhpモノマーおよび15のNsbモノマー、10のNhpモノマーおよび12のNsbモノマー、11のNhpモノマーおよび11のNsbモノマー、14のNhpモノマーおよび8つのNsbモノマー、17のNhpモノマーおよび5つのNsbモノマー、または22のNhpモノマーを含む。
【0025】
いくつかの態様において、ポリマーは表2、表3、表4、表5、表6、表7、表8、または表9に示すポリマーの群より選択される。
【0026】
いくつかの態様において、本明細書に記載のペプトイドポリマーはヘリックス構造を形成する。
【0027】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは約0℃~約-20℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する。他の態様において、ペプトイドポリマーは約-20℃~約-40℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは約-20℃で氷晶形成を低減または阻止する。他の態様において、ペプトイドポリマーは約-40℃~約-200℃の範囲内の温度(例えば、-196℃)で氷晶形成を低減または阻止する。一定の態様において、ペプトイドポリマー(例えば、凍結保護剤溶液、不凍溶液、冷凍食品製品、または美容ケア製品などの組成物、製剤、または製品中に存在する)の濃度は、約100nM~約100mMである。特定の態様において、ペプトイドポリマーの濃度は約1~10mM(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mM)である。
【0028】
もう1つの局面において、本発明は、本明細書に記載のペプトイドポリマーと1つまたは複数のアミノ酸とを含むペプトイド-ペプチドハイブリッドであって、1つまたは複数のアミノ酸がペプトイドポリマーの一端もしくは両端および/または1つもしくは複数のペプトイドモノマーの間に位置する、ハイブリッドを提供する。いくつかの態様において、1つまたは複数のアミノ酸は、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、アルギニン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、チロシン、およびその組み合わせからなる群より選択される。特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸は、イソロイシン、ロイシン、セリン、スレオニン、アラニン、バリン、アルギニン、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0029】
もう1つの局面において、本発明は、本明細書に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、またはその組み合わせを含む、凍結保護剤溶液を提供する。いくつかの態様において、凍結保護剤溶液は、イオン種、透過性凍結保護剤、非透過性凍結保護剤、抗酸化剤、細胞膜安定化化合物、アクアポリンまたは他のチャネル形成化合物、アルコール、糖、糖誘導体、非イオン性界面活性剤、タンパク質、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、フィコール(登録商標)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒアルロナン、ホルムアミド、天然または合成ヒドロゲル、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物をさらに含む。
【0030】
いくつかの実例において、凍結保護剤溶液は、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、メタノール、ブチレングリコール、アドニトール、エタノール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エリスリトール、ソルビトール、キシシリトール(xythyritol)、ポリプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、マンニトール、イノシトール、ジチオリトール(dithioritol)、1,2-プロパンジオール、およびその組み合わせからなる群より選択されるアルコールをさらに含む。
【0031】
いくつかの実例において、凍結保護剤溶液は、単糖、二糖、多糖、およびその組み合わせからなる群より選択される糖をさらに含む。いくつかの実例において、糖は、グルコース、ガラクトース、アラビノース、果糖、キシロース、マンノース、3-O-メチル-D-グルコピラノース、およびその組み合わせからなる群より選択される単糖である。他の実例において、糖は、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、およびその組み合わせからなる群より選択される二糖である。さらに他の実例において、糖は、ラフィノース、デキストラン、およびその組み合わせからなる群より選択される多糖である。
【0032】
他の実例において、凍結保護剤溶液は、約1,000g/mol未満の平均分子量を有するPEGをさらに含む。特定の実例において、PEGは約200~400g/molの平均分子量を有する。
【0033】
いくつかの実例において、凍結保護剤溶液は、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、ゼラチン、およびその組み合わせからなる群より選択されるタンパク質をさらに含む。他の実例において、凍結保護剤溶液は、キトサン、ヒアルロン酸、またはその組み合わせを含む天然または合成ヒドロゲルをさらに含む。さらに他の実例において、凍結保護剤溶液は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリソルベート80、およびその組み合わせからなる群より選択される非イオン性界面活性剤をさらに含む。
【0034】
もう1つの局面において、本明細書において提供するのは、組織、臓器、または細胞を保存するための方法である。方法は、組織、臓器、または細胞を、本明細書に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本明細書に記載の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせと接触させる段階を含む。いくつかの態様において、組織は、生物工学によって作製された組織である。いくつかの態様において、組織、臓器、または細胞は、心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、腸、胸腺、角膜、神経細胞、血小板、精細胞、卵母細胞、胚細胞、幹細胞(例えば、ヒト多能性幹細胞、造血幹細胞)、リンパ球、顆粒球、免疫系細胞、骨細胞、原形質類器官、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0035】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせは、約0℃~約-20℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する。他の態様において、ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせは、約-20℃~約-40℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する。いくつかの態様において、ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせは、約-20℃で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する。他の態様において、ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせは、約-40℃~約-200℃の範囲内の温度(例えば、-196℃)で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する。一定の態様において、凍結保護剤溶液中のペプトイドポリマーおよび/またはペプトイド-ペプチドハイブリッドの濃度は、約100nM~約100mMである。特定の態様において、凍結保護剤溶液中のペプトイドポリマーおよび/またはペプトイド-ペプチドハイブリッドの濃度は約1~10mM(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mM)である。
【0036】
さらにもう1つの局面において、本明細書において提供するのは、生体高分子を保存するための方法である。方法は、生体高分子を、本明細書に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本明細書に記載の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせと接触させる段階を含む。いくつかの態様において、生体高分子は、核酸、アミノ酸、タンパク質、単離タンパク質、ペプチド、脂質、複合構造物、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0037】
もう1つの局面において、本発明は、本明細書に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本明細書に記載の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む、美容ケア製品を提供する。
【0038】
もう1つの局面において、本発明は、本明細書に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本明細書に記載の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む、除氷または氷結阻止製品などの不凍製品を提供する。いくつかの態様において、不凍製品を用いて、航空機またはその一部、ガスパイプライン、窓、電気機器、ドローン、ケーブル(例えば、送電線)、機械設備(例えば、自動車エンジン、ギア装置、ブレーキ装置など)などを含むがそれらに限定されない物体上の氷の形成を、防止する、阻止する、または遅延させる。
【0039】
さらにもう1つの局面において、本発明は、本明細書に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本明細書に記載の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む、冷凍食品製品を提供する。いくつかの態様において、冷凍食品製品は、アイスクリーム、ヨーグルト、海産物、果物、および肉製品からなる群より選択される。
【0040】
[本発明1001]
式(I)のペプトイドポリマー、その互変異性体またはその立体異性体:
式中:
各R
1
は独立して、H、置換されていてもよいC
1-18
アルキル、置換されていてもよいC
2-18
アルケニル、置換されていてもよいC
2-18
アルキニル、置換されていてもよいC
1-18
ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいC
1-18
アルキルアミノ、置換されていてもよいC
1-18
アルキルチオ、置換されていてもよいカルボキシアルキル、C
3-10
シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C
3-10
シクロアルキル)アルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキルからなる群より選択され、
ここでR
1
の少なくとも1つの実例はC
1-18
ヒドロキシアルキルであり、かつ
ここで任意のシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール基は独立して、1つまたは複数のR
3
基で置換されていてもよく;
各R
2
は独立して、H、置換されていてもよいC
1-18
アルキル、置換されていてもよいC
2-18
アルケニル、置換されていてもよいC
2-18
アルキニル、置換されていてもよいC
1-18
ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいC
1-18
アルキルアミノ、置換されていてもよいC
1-18
アルキルチオ、および置換されていてもよいカルボキシアルキルからなる群より選択され;
各R
3
は独立して、ハロゲン、オキソ、チオキソ、-OH、-SH、アミノ、C
1-8
アルキル、 C
1-8
ヒドロキシアルキル、C
1-8
アルキルアミノ、およびC
1-8
アルキルチオからなる群より選択され;
XおよびYは独立して、H、置換されていてもよいC
1-8
アルキル、置換されていてもよいC
1-8
アシル、置換されていてもよいC
1-8
アルキルアミノ、-OH、-SH、-NH
2
、カルボキシ、置換されていてもよいC
1-8
ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいC
1-8
アルキルアミノ、置換されていてもよいC
2-8
アルキルチオ、置換されていてもよいC
1-8
カルボキシアルキル、およびハロゲンからなる群より選択されるか、または
代わりにXおよびYは一緒に共有結合を形成し;かつ
下付き文字nは、ポリマー中のモノマーの数を表して、2~50であり;
ただしnが3~7である場合、R
1
のすべての実例はヒドロキシエチルではないことを条件とする。
[本発明1002]
各R
1
が独立して、下記からなる群より選択される、本発明1001のペプトイドポリマー
式中:
mは1~8であり;かつ
R
3
は、H、C
1-8
アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、アミン、オキソ、およびチオキソからなる群より選択される。
[本発明1003]
1つまたは複数のR
1
が、R
1a
:
の構造を有する、本発明1002のペプトイドポリマー。
[本発明1004]
各R
1a
基が独立して、
から選択される、本発明1003のペプトイドポリマー。
[本発明1005]
各R
1a
基が、
である、本発明1003のペプトイドポリマー。
[本発明1006]
各R
1a
基が、
である、本発明1003のペプトイドポリマー。
[本発明1007]
1つまたは複数のR
1
が、R
1b
:
の構造を有する、本発明1002のペプトイドポリマー。
[本発明1008]
各R
1b
基が独立して、
から選択される、本発明1007のペプトイドポリマー。
[本発明1009]
各R
1b
基が、
である、本発明1007のペプトイドポリマー。
[本発明1010]
各R
1b
基が、
である、本発明1007のペプトイドポリマー。
[本発明1011]
各R
1
が独立して、下記からなる群より選択される、本発明1001のペプトイドポリマー
。
[本発明1012]
R
1
の各実例が、独立に選択されたC
1-18
ヒドロキシアルキル基である、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1013]
R
1
の各実例が、独立に選択されたC
1-6
ヒドロキシアルキル基である、本発明1012のペプトイドポリマー。
[本発明1014]
R
1
の各実例が、同じC
1-6
ヒドロキシアルキル基である、本発明1013のペプトイドポリマー。
[本発明1015]
R
1
の各実例が、
である、本発明1014のペプトイドポリマー。
[本発明1016]
R
2
の各実例がHである、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1017]
nが3~25である、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1018]
nが8~50である、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1019]
nが8~20である、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1020]
Xが、H、C
1-8
アルキル、およびC
1-8
アシルからなる群より選択され;かつYが、-OHおよびアミノからなる群より選択される、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1021]
XおよびYが一緒に共有結合を形成する、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1022]
nが10であり、かつ
ペプトイドポリマーが:
3つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび7つのNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー;または
5つのNhpモノマーおよび5つのNsbモノマー;または
6つのNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー;または
7つのNhpモノマーおよび3つのNsbモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび2つのNsbモノマー;または
10のNhpモノマー
を含む、
本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1023]
配列
を有し;
XがHまたはC
1-8
アシルであり;かつYが-OHまたは-NH
2
またはC
1-8
アルキルである、
本発明1022のペプトイドポリマー。
[本発明1024]
配列
を有し;
XがHまたはC
1-8
アシルであり;かつYが-OHまたは-NH
2
またはC
1-8
アルキルである、
本発明1022のペプトイドポリマー。
[本発明1025]
配列
を有し;
XがHまたはC
1-8
アシルであり;かつYが-OHまたは-NH
2
またはC
1-8
アルキルである、
本発明1022のペプトイドポリマー。
[本発明1026]
配列
を有し;
XがHまたはC
1-8
アシルであり;かつYが-OHまたは-NH
2
またはC
1-8
アルキルである、
本発明1022のペプトイドポリマー。
[本発明1027]
配列
を有し;
XがHまたはC
1-8
アシルであり;かつYが-OHまたは-NH
2
またはC
1-8
アルキルである、
本発明1022のペプトイドポリマー。
[本発明1028]
表2に示す配列を有する、本発明1022のペプトイドポリマー。
[本発明1029]
nが10であり、かつ
ペプトイドポリマーが:
3つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび7つのNme(2-(メチルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNmeモノマー;または
5つのNhpモノマーおよび5つのNmeモノマー;または
6つのNhpモノマーおよび4つのNmeモノマー;または
7つのNhpモノマーおよび3つのNmeモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび2つのNmeモノマー
を含む、
本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1030]
表3に示す配列を有する、本発明1029のペプトイドポリマー。
[本発明1031]
nが10であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
5つのNhe(2-((2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸)モノマーおよび5つのNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
5つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび5つのNbu(2-ブチルアミノ)酢酸)モノマー
を含む、
本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1032]
表4に示す配列を有する、本発明1031のペプトイドポリマー。
[本発明1033]
nが10であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
4つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび6つのNib(2-(イソブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNbu(2-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNpr(2-プロピルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNip(2-(イソプロピルアミノ)酢酸)モノマー
を含む、
本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1034]
表5に示す配列を有する、本発明1033のペプトイドポリマー。
[本発明1035]
nが14であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
6つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび8つのNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
7つのNhpモノマーおよび7つのNsbモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー;または
10のNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー;または
14のNhpモノマー
を含む、
本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1036]
表6に示す配列を有する、本発明1035のペプトイドポリマー。
[本発明1037]
nが14であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
6つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび8つのNib(2-(イソブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
7つのNhpモノマーおよび7つのNibモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび6つのNibモノマー;または
10のNhpモノマーおよび4つのNibモノマー;または
14のNhpモノマー
を含む、
本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1038]
表7に示す配列を有する、本発明1037のペプトイドポリマー。
[本発明1039]
nが16であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
5つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび11のNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
7つのNhpモノマーおよび9つのNsbモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび8つのNsbモノマー;または
10のNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー;または
12のNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー;または
16のNhpモノマー
を含む、
本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1040]
表8に示す配列を有する、本発明1039のペプトイドポリマー。
[本発明1041]
nが22であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
7つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび15のNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
10のNhpモノマーおよび12のNsbモノマー;または
11のNhpモノマーおよび11のNsbモノマー;または
14のNhpモノマーおよび8つのNsbモノマー;または
17のNhpモノマーおよび5つのNsbモノマー;または
22のNhpモノマー
を含む、
本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1042]
表9に示す配列を有する、本発明1041のペプトイドポリマー。
[本発明1043]
ヘリックス構造を形成する、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1044]
約0℃~約-20℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1045]
約-20℃~約-40℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1046]
約-20℃で氷晶形成を低減または阻止する、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1047]
約-40℃~約-200℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する、本発明1001のペプトイドポリマー。
[本発明1048]
本発明1001のペプトイドポリマーと1つまたは複数のアミノ酸とを含むペプトイド-ペプチドハイブリッドであって、該1つまたは複数のアミノ酸が、該ペプトイドポリマーの一端もしくは両端および/または1つもしくは複数のペプトイドモノマーの間に位置する、ハイブリッド。
[本発明1049]
1つまたは複数のアミノ酸が、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、アルギニン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、チロシン、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1048のペプトイド-ペプチドハイブリッド。
[本発明1050]
1つまたは複数のアミノ酸が、イソロイシン、ロイシン、セリン、スレオニン、アラニン、バリン、アルギニン、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1048のペプトイド-ペプチドハイブリッド。
[本発明1051]
本発明1001のペプトイドポリマー、本発明1048のペプトイド-ペプチドハイブリッド、またはその組み合わせを含む、凍結保護剤溶液。
[本発明1052]
イオン種、透過性凍結保護剤、非透過性凍結保護剤、抗酸化剤、細胞膜安定化化合物、アクアポリンまたは他のチャネル形成化合物、アルコール、糖、糖誘導体、非イオン性界面活性剤、タンパク質、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、フィコール(登録商標)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒアルロナン、ホルムアミド、天然または合成ヒドロゲル、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物をさらに含む、本発明1051の凍結保護剤溶液。
[本発明1053]
アルコールが、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、メタノール、ブチレングリコール、アドニトール、エタノール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エリスリトール、ソルビトール、キシシリトール(xythyritol)、ポリプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、マンニトール、イノシトール、ジチオリトール(dithioritol)、1,2-プロパンジオール、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1052の凍結保護剤溶液。
[本発明1054]
糖が単糖である、本発明1052の凍結保護剤溶液。
[本発明1055]
単糖が、グルコース、3-O-メチル-D-グルコピラノース、ガラクトース、アラビノース、果糖、キシロース、マンノース、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1054の凍結保護剤溶液。
[本発明1056]
糖が二糖である、本発明1052の凍結保護剤溶液。
[本発明1057]
二糖が、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1056の凍結保護剤溶液。
[本発明1058]
糖が多糖である、本発明1052の凍結保護剤溶液。
[本発明1059]
多糖が、ラフィノース、デキストラン、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1058の凍結保護剤溶液。
[本発明1060]
PEGが約1,000g/mol未満の平均分子量を有する、本発明1052の凍結保護剤溶液。
[本発明1061]
PEGが約200~400g/molの平均分子量を有する、本発明1052の凍結保護剤溶液。
[本発明1062]
タンパク質が、卵アルブミン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、ゼラチン、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1052の凍結保護剤溶液。
[本発明1063]
天然または合成ヒドロゲルが、キトサン、ヒアルロン酸、またはその組み合わせを含む、本発明1052の凍結保護剤溶液。
[本発明1064]
非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリソルベート80、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1052の凍結保護剤溶液。
[本発明1065]
組織、臓器、または細胞を保存するための方法であって、組織、臓器、または細胞を、本発明1001のペプトイドポリマー、本発明1048のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本発明1051の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせと接触させる段階を含む、方法。
[本発明1066]
ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせが、約0℃~約-20℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する、本発明1065の方法。
[本発明1067]
ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせが、約-20℃~約-40℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する、本発明1065の方法。
[本発明1068]
ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせが、約-20℃で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する、本発明1065の方法。
[本発明1069]
ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせが、約-40℃~約-200℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する、本発明1065の方法。
[本発明1070]
組織が、生物工学によって作製された組織である、本発明1065の方法。
[本発明1071]
ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、またはその組み合わせが、約100nM~約100mMの量で存在する、本発明1065の方法。
[本発明1072]
組織、臓器、または細胞が、心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、腸、胸腺、角膜、神経細胞、血小板、精細胞、卵母細胞、胚細胞、幹細胞、ヒト多能性幹細胞、造血幹細胞、リンパ球、顆粒球、免疫系細胞、骨細胞、原形質類器官、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1065の方法。
[本発明1073]
生体高分子を保存するための方法であって、生体高分子を、本発明1001のペプトイドポリマー、本発明1048のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本発明1051の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせと接触させる段階を含む、方法。
[本発明1074]
生体高分子が、核酸、アミノ酸、タンパク質、単離タンパク質、ペプチド、脂質、複合構造物、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1073の方法。
[本発明1075]
本発明1001のペプトイドポリマー、本発明1048のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本発明1051の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む、美容ケア製品。
[本発明1076]
本発明1001のペプトイドポリマー、本発明1048のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本発明1051の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む、不凍製品。
[本発明1077]
物体上の氷の形成を防止する、阻止する、または遅延させるために用いられる除氷または氷結阻止製品である、本発明1076の不凍製品。
[本発明1078]
物体が、航空機またはその一部、ガスパイプライン、窓、電気機器、ドローン、ケーブル、送電線、機械設備、自動車エンジン、ギア装置、およびブレーキ装置からなる群より選択される、本発明1077の不凍製品。
[本発明1079]
本発明1001のペプトイドポリマー、本発明1048のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本発明1051の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む、冷凍食品製品。
[本発明1080]
アイスクリーム、ヨーグルト、海産物、果物、および肉製品からなる群より選択される、本発明1079の冷凍食品製品。
本発明の他の目的、特徴、および利点は、下記の詳細な説明および図面から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】「サブモノマー」アプローチを用いてのペプトイドオリゴマー合成のための一般的プロトコルを例示する。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、-20℃で実施した毛細管凍結アッセイの結果を示す。
図2Aは、化合物1(1当量)および10(1当量)をMilliQ水に溶解し、零度未満の温度にさらすアッセイを例示する。水単独およびエチレングリコール(EG)(18当量)溶液との比較を行った。
図2Bは、
図2Aに示すアッセイの正規化した結果を示す。
【
図3】
図3A~3Dは、x線回折(XRD)結晶解析データを示す。
図3Aは、5mMの化合物12および17.5体積%のエチレングリコール(EG)を含む溶液のXRDデータを示す。
図3Bは、30体積%のEGを含む溶液のXRDデータを示す。
図3Cは、17.5体積%のEGを含む溶液のXRDデータを示す。
図3Dは、EG、化合物2(「B」と表記;SEQ ID NO:10)、化合物12(「D」と表記;SEQ ID NO:8)、および/または化合物8(「E」と表記;SEQ ID NO:9)を含むいくつかの溶液のアイスリングスコアを示す。それぞれ異なる溶液について、2つの別々のアイスリングスコアを判定した。
【
図4-1】
図4A~4Gは、5mg/mLの化合物10、化合物12、化合物8、化合物13、化合物11、および化合物58を含む溶液のx線回折(XRD)結晶解析データを、エチレングリコール(EG)対照と比較して示す。各溶液は300mM NaCl、100mM HEPES、15体積%エチレングリコールも含み、pHは7.2に調節した。
図4A:化合物10のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。
図4B:化合物12のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。
図4C:化合物8のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。
図4D:化合物13のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。XRDスペクトルプロットについて、強度を角度(2θ度)の関数としてプロットした。
【
図4-2】
図4A~4Gは、5mg/mLの化合物10、化合物12、化合物8、化合物13、化合物11、および化合物58を含む溶液のx線回折(XRD)結晶解析データを、エチレングリコール(EG)対照と比較して示す。各溶液は300mM NaCl、100mM HEPES、15体積%エチレングリコールも含み、pHは7.2に調節した。
図4E:化合物11のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。
図4F:化合物58のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。
図4G:EG対照のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。XRDスペクトルプロットについて、強度を角度(2θ度)の関数としてプロットした。
【
図5-1】
図5A~5Gは、1mg/mLの化合物10、化合物12、化合物8、化合物13、化合物11、および化合物58を含む溶液のx線回折(XRD)結晶解析データを、エチレングリコール(EG)対照と比較して示す。各溶液は300mM NaCl、100mM HEPES、17.5体積%エチレングリコールも含み、pHは7.2に調節した。
図5A:化合物10のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。
図5B:化合物12のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。
図5C:化合物8のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。
図5D:化合物13のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。XRDスペクトルプロットについて、強度を角度(2θ度)の関数としてプロットした。
【
図5-2】
図5A~5Gは、1mg/mLの化合物10、化合物12、化合物8、化合物13、化合物11、および化合物58を含む溶液のx線回折(XRD)結晶解析データを、エチレングリコール(EG)対照と比較して示す。各溶液は300mM NaCl、100mM HEPES、17.5体積%エチレングリコールも含み、pHは7.2に調節した。
図5E:化合物11のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。
図5F:化合物58のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。
図5G:EG対照のXRD結晶解析パターン(左)およびスペクトルプロット(右)。XRDスペクトルプロットについて、強度を角度(2θ度)の関数としてプロットした。
【
図6】
図6A~6Cは、急速凍結し、再加温し、続いて再凍結した2つの溶液を示す。対照溶液は22.5体積%のエチレングリコール(EG)を含んでいた一方で、試験溶液は22.5%EGおよび5mg/mL(0.5%(w/v))の化合物12を含んでいた。
図6Aは、液体窒素中での急速凍結中に、化合物12を含む溶液はガラス化した一方で、対照溶液は完全に凍結したことを示す。
図6Bは、37℃で再加温中に、化合物12を含む溶液は解凍(2秒以内)した一方で、対照は凍結したままであったことを示す。
図6Cは、-20℃のフリーザー内で終夜放置後、化合物12の溶液は、対照とは異なり、解凍したままであったことを示す。
【
図7】化合物12(四角)またはDMSO(丸)を細胞培養液に加えたHEK 293細胞に対して実施した細胞毒性試験の結果を示す。化合物12もDMSOも加えない試料(「培養液」(三角))を対照とした。化合物12およびDMSOの異なる濃度を試験するために、連続希釈を実施した。
【
図8】エチレングリコール(EG)を含む溶液を、EGおよび化合物12を含む溶液と比較する、HEK 293細胞に対して実施した凍結保存アッセイの結果を示す。解凍の12時間後に細胞生存度を測定した。
【
図9】5mg/mLの化合物12ならびにグリコール、二糖、および一般的緩衝液を含む溶液を、VS2EまたはM22を含む溶液と比較する、HEK 293細胞に対して実施した凍結保存アッセイの結果を示す。解凍の16時間後に細胞生存度を測定した。細胞を液体窒素(LN2)でガラス化した。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
I. 序論
凍結保存を用いての低温での細胞および組織のバンキングは、多くの生物学的製品および適用にとって重要であるが、完全な回復の成功または生存能力のある治療用細胞、組織、もしくは臓器を実現しなければならないという、重大な課題が残っている。凍結保存は、典型的には、凍結保護剤(CPA)により実施し、これらはジメチルスルホキシド(DMSO)、ウシ血清アルブミン(BSA)などの重要な化学的添加物である。CPAは、氷晶の核形成および成長を防止することにより、凍結保存した生体系の解凍後の生存度を改善するために用いる。しかし、これらの作用物質は、それらの有効濃度で様々なレベルの細胞毒性を示し、したがって、凍結保存、バイオバンキング、および高度再生医学の成功を制限する。この有効かつ安全なCPAの欠如は、毒性CPAが広く使用される一因となっている。生物学的製品および適用の他にも、氷形成の防止は、多様な産業および技術分野にとって依然として物理的および化学的課題である。
【0043】
本発明は、部分的には、N-置換生物模倣アミノ酸ポリマー(ペプトイド)およびペプトイド-ペプチドハイブリッドが氷晶化阻止特性を有するとの驚くべき発見に基づいている。本明細書において提供するのは、0℃未満および極低温度での氷晶形成を低減または阻止するためのポリマーである。これらのポリマーは、凍結保護剤溶液の作製において有用である。本明細書において同様に提供するのは、本明細書に記載のペプトイドポリマーを含む凍結保護剤溶液を用いて、組織、臓器、または細胞を保存するための方法である。加えて、本明細書に記載のペプトイドポリマーを含む、不凍特性を有する美容ケア、除氷、および冷凍食品製品を提供する。詳細な説明を読むことで、当業者は本明細書において提供する教示から生じる他の利点があることを理解するであろう。
【0044】
II. 略語および定義
本明細書において用いられる略語は、特に記載がないかぎり、従来のものである。以下の略語はペプトイドポリマーのモノマー単位を指すために用いられる:Nsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)、Nib(2-(イソブチルアミノ)酢酸)、Nbu(2-ブチルアミノ)酢酸)、Npr(2-プロピルアミノ)酢酸)、Nip(2-(イソプロピルアミノ)酢酸)、Nme(2-(メチルアミノ)酢酸)、Nhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)、Nhe(2-((2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸)、Ndp(2-((2,3-ジヒドロキシプロプリル)アミノ)酢酸、Nyp(2-((1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)酢酸)、Nep(2-((1-(4-ヒドロキシフェニル)エチル)アミノ)酢酸、Ndh(2-((1,3,-ジヒドロオキシプロパン-2-イル)アミノ)酢酸、およびNop(2-((3-(2-オキソピロリンジン-1-イル)プロピル)アミノ)酢酸。以下の略語は化学化合物を指すために用いられる:DMF(N,N'-ジメチルホルムアミド)、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン、DIC(N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド)、ACN(アセトニトリル)、DCM(塩化メチレン)、HFIP(ヘキサフルオロイソプロピルアルコール);Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)。
【0045】
本明細書において用いられる「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「その(the)」なる用語は、1つの構成要素による局面を含むだけでなく、複数の構成要素による局面も含む。例えば、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうではないと示さないかぎり、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「作用物質(the agent)」への言及は、当業者には公知の1つまたは複数の作用物質への言及を含み、他も同様である。
【0046】
数値を修飾するために本明細書において用いられる「約」なる用語は、その値の前後の規定された範囲を示す。「X」が値である場合、「約X」は0.9X~1.1Xの値、より好ましくは0.95X~1.05Xの値を示す。「約X」への任意の言及は、少なくとも値X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、および1.05Xを具体的に示す。したがって、「約X」は、例えば、「0.98X」というクレーム限定のための明細書記載のサポートを教示および提供することが意図される。
【0047】
「アルキル」とは、示された数の炭素原子を有する、直鎖または分枝、飽和、脂肪族基を意味する。アルキルは、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7、C1-8、C1-9、C1-10、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6およびC5-6などの、任意の数の炭素を含み得る。例えば、C1-6アルキルには、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどが含まれるが、それらに限定されない。アルキルは、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどであるが、それらに限定されない、最大30までの炭素原子を有するアルキル基も意味し得る。アルキル基は、置換されていても無置換でもよい。アルキル基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0048】
「アルケニル」とは、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの二重結合を有する、直鎖または分枝炭化水素を意味する。アルケニルは、C2、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C3、C3-4、C3-5、C3-6、C4、C4-5、C4-6、C5、C5-6、およびC6などの、任意の数の炭素を含み得る。アルケニル基は、1、2、3、4、5またはそれ以上を含むが、それらに限定されない、任意の適切な数の二重結合を有し得る。アルケニル基の例には、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、イソペンテニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,5-ヘキサジエニル、2,4-ヘキサジエニル、または1,3,5-ヘキサトリエニルが含まれるが、それらに限定されない。アルケニル基は置換されていても無置換でもよい。アルケニル基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0049】
「アルキニル」とは、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの三重結合を有する、直鎖または分枝炭化水素のいずれかを意味する。アルキニルは、C2、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C3、C3-4、C3-5、C3-6、C4、C4-5、C4-6、C5、C5-6、およびC6などの、任意の数の炭素を含み得る。アルキニル基の例には、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、イソブチニル、sec-ブチニル、ブタジイニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、イソペンチニル、1,3-ペンタジイニル、1,4-ペンタジイニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、1,3-ヘキサジイニル、1,4-ヘキサジイニル、1,5-ヘキサジイニル、2,4-ヘキサジイニル、または1,3,5-ヘキサトリイニルが含まれるが、それらに限定されない。アルキニル基は置換されていても無置換でもよい。アルキニル基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0050】
「アルキレン」とは、示された数の炭素原子を有し、かつ少なくとも2つの他の基を連結する、直鎖または分枝、飽和、脂肪族基、すなわち、二価炭化水素基を意味する。アルキレンに連結された2つの部分は、アルキレン基の同じ原子または異なる原子に連結され得る。例えば、直鎖アルキレンは、nが適切な炭素原子の任意の数である、-(CH2)n-の二価の基であり得る。代表的なアルキレン基には、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、sec-ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンが含まれるが、それらに限定されない。アルキレン基は置換されていても無置換でもよい。アルキレン基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0051】
「アルケニレン」とは、少なくとも2つの他の基を連結する、前述の定義のアルケニル基、すなわち、二価炭化水素基を意味する。アルケニレンに連結された2つの部分は、アルケニレンの同じ原子または異なる原子に連結され得る。アルケニレン基には、エテニレン、プロペニレン、イソプロペニレン、ブテニレン、イソブテニレン、sec-ブテニレン、ペンテニレンおよびヘキセニレンが含まれるが、それらに限定されない。アルケニレン基は置換されていても無置換でもよい。アルケニレン基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0052】
「アルキニレン」とは、少なくとも2つの他の基を連結する、前述の定義のアルキニル基、すなわち、二価炭化水素基を意味する。アルキニレンに連結された2つの部分は、アルキニレンの同じ原子または異なる原子に連結され得る。アルキニレン基には、エチニレン、プロピニレン、イソプロピニレン、ブチニレン、sec-ブチニレン、ペンチニレンおよびヘキシニレンが含まれるが、それらに限定されない。アルキニレン基は置換されていても無置換でもよい。アルキニレン基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0053】
「ハロゲン」または「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味する。
【0054】
「アミン」または「アミノ」とは、R基が、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールなどであり得る、-N(R)2基を意味する。R基は同じでも異なっていてもよい。アミノ基は一級(各Rが水素である)、二級(1つのRが水素である)または三級(各Rが水素以外である)であり得る。アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0055】
「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」とは、-OH基を意味する。ヒドロキシルは任意の適切な炭素原子に存在し得る。
【0056】
「チオール」とは、-SH基を意味する。チオール基は任意の適切な炭素原子に存在し得る。
【0057】
「オキソ」とは、二重結合されたO基(=O、-C(O)-)を意味する。オキソ基は任意の適切な炭素原子に存在し得る。
【0058】
「チオキソ」とは、二重結合されたS基(=S)を意味する。チオキソ基は任意の適切な炭素原子に存在し得る。
【0059】
「ニトロ」とは、-NO2基を意味する。ニトロ基は任意の適切な炭素原子に存在し得る。
【0060】
「カルボキシ」とは、式-C(O)OHまたは-CO2Hのカルボン酸基を意味する。
【0061】
「シクロアルキル」とは、3~12の環原子、または示された数の原子を含む、飽和または部分不飽和、単環式、縮合二環式または架橋多環式環集合体を意味する。シクロアルキルは、C3-6、C4-6、C5-6、C3-8、C4-8、C5-8、C6-8、C3-9、C3-10、C3-11、およびC3-12などの、任意の数の炭素を含み得る。飽和単環式シクロアルキル環には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチルが含まれる。飽和二環式および多環式シクロアルキル環には、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレンおよびアダマンタンが含まれる。シクロアルキル基は、環内に1つまたは複数の二重または三重結合を有する、部分不飽和でもあり得る。部分不飽和である代表的シクロアルキル基には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-および1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-および1,5-異性体)、ノルボルネン、およびノルボルナジエンが含まれるが、それらに限定されない。シクロアルキルが飽和単環式C3-8シクロアルキルである場合、例示的な基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが含まれるが、それらに限定されない。シクロアルキルが飽和単環式C3-6シクロアルキルである場合、例示的な基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが含まれるが、それらに限定されない。シクロアルキル基は置換されていても無置換でもよい。シクロアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、チオール、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。例えば、シクロアルキル基は、C1-6アルキルまたはオキソ(=O)などで置換されていてもよい。
【0062】
「ヘテロシクロアルキル」とは、3~12の環構成員および1~4つのN、OおよびSのヘテロ原子を有する、飽和環系を意味する。B、Al、SiおよびPを含むが、それらに限定されない、さらなるヘテロ原子も有用であり得る。ヘテロ原子は酸化されていてもよく、例えば、-S(O)-および-S(O)2-であるが、それらに限定されない。ヘテロシクロアルキル基は、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11、または3~12の環構成員などの、任意の数の環原子を含み得る。1、2、3、もしくは4、または1~2、1~3、1~4、2~3、2~4、もしくは3~4などの、任意の適切な数のヘテロ原子が、ヘテロシクロアルキル基に含まれ得る。ヘテロシクロアルキル基には、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-、1,3-および1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン、またはジチアンなどの基が含まれ得る。ヘテロシクロアルキル基は芳香環または非芳香環系に縮合して、インドリンを含むが、それらに限定されない、構成員を形成してもよい。ヘテロシクロアルキル基は無置換でも置換されていてもよい。ヘテロシクロアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。例えば、ヘテロシクロアルキル基は、C1-6アルキルまたはオキソ(=O)などで置換されていてもよい。
【0063】
ヘテロシクロアルキル基は、環上の任意の位置で連結され得る。例えば、アジリジンは1-または2-アジリジンであり得、アゼチジンは1-または2-アゼチジンであり得、ピロリジンは1-、2-または3-ピロリジンであり得、ピペリジンは1-、2-、3-または4-ピペリジンであり得、ピラゾリジンは1-、2-、3-、または4-ピラゾリジンであり得、イミダゾリジンは1-、2-、3-または4-イミダゾリジンであり得、ピペラジンは1-、2-、3-または4-ピペラジンであり得、テトラヒドロフランは1-または2-テトラヒドロフランであり得、オキサゾリジンは2-、3-、4-または5-オキサゾリジンであり得、イソキサゾリジンは2-、3-、4-または5-イソキサゾリジンであり得、チアゾリジンは2-、3-、4-または5-チアゾリジンであり得、イソチアゾリジンは2-、3-、4-または5-イソチアゾリジンであり得、かつモルホリンは2-、3-または4-モルホリンであり得る。
【0064】
ヘテロシクロアルキルが3~8つの環構成員および1~3つのヘテロ原子を含む場合、代表的な構成員には、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、オキサン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサンおよびジチアンが含まれるが、それらに限定されない。ヘテロシクロアルキルは、5~6つの環構成員および1~2つのヘテロ原子を有する環も形成し得、代表的な構成員にはピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、およびモルホリンが含まれるが、それらに限定されない。
【0065】
「アリール」とは、任意の適切な数の環原子および任意の適切な数の環を有する、芳香環系を意味する。アリール基は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16の環原子などの、任意の適切な数の環原子、ならびに6~10、6~12、または6~14の環構成員を含み得る。アリール基は単環式であるか、縮合して二環式もしくは三環式基を形成するか、または結合により連結されてビアリール基を形成し得る。代表的アリール基には、フェニル、ナフチルおよびビフェニルが含まれる。他のアリール基には、メチレン連結基を有する、ベンジルが含まれる。フェニル、ナフチルまたはビフェニルなどの、いくつかのアリール基は、6~12の環構成員を有する。フェニルまたはナフチルなどの、他のアリール基は、6~10の環構成員を有する。フェニルなどの、他のアリール基は、6つの環構成員を有する。アリール基は置換されていても無置換でもよい。アリール基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0066】
「ヘテロアリール」とは、環原子の1~5つはN、OまたはSなどのヘテロ原子である、5~16の環原子を含む、単環式または縮合二環式もしくは三環式芳香環集合体を意味する。B、Al、SiおよびPを含むが、それらに限定されない、さらなるヘテロ原子も有用であり得る。ヘテロ原子は酸化されていてもよく、例えば、-S(O)-および-S(O)2-であるが、それらに限定されない。ヘテロアリール基は、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11、または3~12の環構成員などの、任意の数の環原子を含み得る。1、2、3、4、もしくは5、または1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、もしくは3~5などの、任意の適切な数のヘテロ原子が、ヘテロアリール基に含まれ得る。ヘテロアリール基は、5~8つの環構成員および1~4つのヘテロ原子、または5~8つの環構成員および1~3つのヘテロ原子、または5~6つの環構成員および1~4つのヘテロ原子、または5~6つの環構成員および1~3つのヘテロ原子を有し得る。ヘテロアリール基には、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、およびイソキサゾールなどの基が含まれ得る。ヘテロアリール基は、フェニル環などの芳香環系に縮合して、ベンゾピロール、例えば、インドールおよびイソインドール、ベンゾピリジン、例えば、キノリンおよびイソキノリン、ベンゾピラジン(キノキサリン)、ベンゾピリミジン(キナゾリン)、ベンゾピリダジン、例えば、フタラジンおよびシンノリン、ベンゾチオフェン、ならびにベンゾフランを含むが、それらに限定されない、構成員を形成してもよい。他のヘテロアリール基には、ビピリジンなどの、結合により連結されたヘテロアリール環が含まれる。ヘテロアリール基は置換されていても無置換でもよい。ヘテロアリール基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0067】
ヘテロアリール基は、環上の任意の位置で連結され得る。例えば、ピロールは1-、2-および3-ピロールを含み、ピリジンは2-、3-および4-ピリジンを含み、イミダゾールは1-、2-、4-および5-イミダゾールを含み、ピラゾールは1-、3-、4-および5-ピラゾールを含み、トリアゾールは1-、4-および5-トリアゾールを含み、テトラゾールは1-および5-テトラゾールを含み、ピリミジンは2-、4-、5-および6-ピリミジンを含み、ピリダジンは3-および4-ピリダジンを含み、1,2,3-トリアジンは4-および5-トリアジンを含み、1,2,4-トリアジンは3-、5-および6-トリアジンを含み、1,3,5-トリアジンは2-トリアジンを含み、チオフェンは2-および3-チオフェンを含み、フランは2-および3-フランを含み、チアゾールは2-、4-および5-チアゾールを含み、イソチアゾールは3-、4-および5-イソチアゾールを含み、オキサゾールは2-、4-および5-オキサゾールを含み、イソキサゾールは3-、4-および5-イソキサゾールを含み、インドールは1-、2-および3-インドールを含み、イソインドールは1-および2-イソインドールを含み、キノリンは2-、3-および4-キノリンを含み、イソキノリンは1-、3-および4-イソキノリンを含み、キナゾリンは2-および4-キノアゾリン(quinoazoline)を含み、シンノリンは3-および4-シンノリンを含み、ベンゾチオフェンは2-および3-ベンゾチオフェンを含み、かつベンゾフランは2-および3-ベンゾフランを含む。
【0068】
いくつかのヘテロアリール基には、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン、およびベンゾフランなどの、5~10の環構成員およびN、OまたはSを含む1~3つの環原子を有するものが含まれる。他のヘテロアリール基には、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、およびイソキサゾール基などの、5~8つの環構成員および1~3つのヘテロ原子を有するものが含まれる。いくつかの他のヘテロアリール基には、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフランおよびビピリジンなどの、9~12の環構成員および1~3つのヘテロ原子を有するものが含まれる。さらに他のヘテロアリール基には、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、およびイソキサゾールなどの、5~6つの環構成員およびN、OまたはSを含む1~2つの環原子を有するものが含まれる。
【0069】
「(シクロアルキル)アルキル」とは、アルキル構成要素およびシクロアルキル構成要素を有する基であって、アルキル構成要素がシクロアルキル構成要素を結合点に連結する基を意味する。アルキル構成要素は、それがシクロアルキル構成要素および結合点に連結するために、少なくとも二価、すなわちアルキレンであることを除き、前述の定義のとおりである。アルキル構成要素は、C1-6、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6およびC5-6などの、任意の数の炭素を含み得る。シクロアルキル構成要素は、この中の定義のとおりである。例示的な(シクロアルキル)アルキル基には、メチル-シクロプロピル、メチル-シクロブチル、メチル-シクロペンチルおよびメチル-シクロヘキシルが含まれるが、それらに限定されない。
【0070】
「(ヘテロシクロアルキル)アルキル」とは、アルキル構成要素およびヘテロシクロアルキル構成要素を有する基であって、アルキル構成要素がヘテロシクロアルキル構成要素を結合点に連結する基を意味する。アルキル構成要素は、それがヘテロシクロアルキル構成要素および結合点に連結するために、少なくとも二価、すなわちアルキレンであることを除き、前述の定義のとおりである。アルキル構成要素は、C0-6、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6およびC5-6などの、任意の数の炭素を含み得る。ヘテロシクロアルキル構成要素は前述の定義のとおりである。(ヘテロシクロアルキル)アルキル基は置換されていても無置換でもよい。
【0071】
「アリールアルキル」とは、アルキル構成要素およびアリール構成要素を有する基であって、アルキル構成要素がアリール構成要素を結合点に連結する基を意味する。アルキル構成要素は、それがアリール構成要素および結合点に連結するために、少なくとも二価、すなわちアルキレンであることを除き、前述の定義のとおりである。アルキル構成要素は、C0-6、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6およびC5-6などの、任意の数の炭素を含み得る。アリール構成要素は前述の定義のとおりである。アリールアルキル基の例には、ベンジルおよびエチル-ベンゼンが含まれるが、それらに限定されない。アリールアルキル基は置換されていても無置換でもよい。
【0072】
「ヘテロアリールアルキル」とは、アルキル構成要素およびヘテロアリール構成要素を有する基であって、アルキル構成要素がヘテロアリール構成要素を結合点に連結する基を意味する。アルキル構成要素は、それがヘテロアリール構成要素および結合点に連結するために、少なくとも二価、すなわちアルキレンであることを除き、前述の定義のとおりである。アルキル構成要素は、C0-6、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6およびC5-6などの、任意の数の炭素を含み得る。ヘテロアリール構成要素はこの中の定義のとおりである。ヘテロアリールアルキル基は置換されていても無置換でもよい。
【0073】
「カルボキシアルキル」とは、前述のアルキルに連結されたカルボキシ基であって、一般には式-C1-8アルキル-C(O)OHを有する基を意味する。任意の適切なアルキル鎖が有用である。カルボキシアルキル基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0074】
「アシル」とは、結合点にオキソ置換炭素を含むアルキル(-C(O)-C1-8アルキル)を意味する。任意の適切なアルキル鎖が有用である。アシル基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0075】
「ヒドロキシアルキル」とは、水素原子の少なくとも1つがヒドロキシ基で置き換えられている、前述の定義のアルキル基を意味する。アルキル基に関して、ヒドロキシアルキル基は、C1-6などの、任意の適切な数の炭素原子を有し得る。例示的なヒドロキシアルキル基には、ヒドロキシ-メチル、ヒドロキシエチル(ヒドロキシは1-または2-位にある)、ヒドロキシプロピル(ヒドロキシは1-、2-または3-位にある)、ヒドロキシブチル(ヒドロキシは1-、2-、3-または4-位にある)、ヒドロキシペンチル(ヒドロキシは1-、2-、3-、4-または5-位にある)、ヒドロキシヘキシル(ヒドロキシは1-、2-、3-、4-、5-または6-位にある)、1,2-ジヒドロキシエチルなどが含まれるが、それらに限定されない。ヒドロキシアルキル基は、ハロ、チオール、アミノ、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。当業者であれば、他のヒドロキシアルキル基も本発明において有用であることを理解するであろう。
【0076】
「アルコキシ」とは、少なくとも1つの架橋酸素原子を有するアルキル基を意味する。架橋酸素原子はアルキル鎖内の任意の場所であり得(アルキル-O-アルキル)、または架橋酸素原子はアルキル基を結合点に連結し得る(アルキル-O-)。いくつかの実例において、アルコキシは1、2、3、4、または5つの架橋酸素原子を含む。アルキル基に関して、アルコキシ基は、C1-2、C1-4、およびC1-6などの、任意の適切な数の炭素原子を有し得る。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ-プロポキシ、メチルオキシ-エチルオキシ-エチル(C1-O-C2-O-C2-)などが含まれる。アルコキシ基の一例は、ポリエチレングリコール(PEG)であって、ポリエチレングリコール鎖は2~20のエチレングリコールモノマーを含みうる。アルコキシ基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アルキルアミノ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。アルコキシ基は置換されていても無置換でもよい。
【0077】
「アルキルアミノ」とは、1つまたは複数のアミノ基を有する、この中の定義のアルキル基を意味する。アミノ基は一級、二級または三級であり得る。本発明において有用なアルキルアミノ基には、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチレンジアミンおよびエタノールアミンが含まれるが、それらに限定されない。アミノ基は、アルキル基のいかなる位置にあっても、アルキルアミノを化合物の残部との結合点に連結し得、またはアルキル基の少なくとも2つの炭素原子を一緒に連結し得る。アルキルアミノ基は、ハロ、ヒドロキシ、チオール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。当業者であれば、本発明において他のアルキルアミノも有用であることを理解するであろう。
【0078】
「アルキルチオ」とは、1つまたは複数のチオール基を有する、この中の定義のアルキル基を意味する。本発明において有用なアルキルチオ基には、エチルチオール、プロピルチオール、およびイソプロピルチオールが含まれるが、それらに限定されない。チオール基は、アルキル基のいかなる位置にあっても、アルキルチオを化合物の残部との結合点に連結し得、またはアルキル基の少なくとも2つの炭素原子を一緒に連結し得る。アルキルチオ基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、チオキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。当業者であれば、本発明において他のアルキルチオも有用であることを理解するであろう。
【0079】
「波線」なる用語は、置換基の分子の残部への結合点を示す。波線が特定の環原子に特に付加していると示されない場合、結合点は置換基の任意の適切な原子に対してであり得る。例えば、以下の構造:
の中の波線は、結合点として、任意の置換可能な原子を含むことが意図される。
【0080】
「再生医学」なる用語は、正常な機能を回復または確立するために、ヒト細胞、組織、または臓器を置き換える、操作する、または再生する方法を扱う、医学の部門を意味する。いくつかの態様において、再生医学は、体がそれ自体を直すことができない場合に、組織および臓器を実験室で成長させ、それらを安全に移植することを含む。
【0081】
「生物工学によって作製された組織」なる用語は、再生医学の目的のために作製された、1つまたは複数の合成的に作製された細胞、組織、または臓器を意味する。いくつかの態様において、生物工学によって作製された組織とは、実験室で発生させた細胞、組織、または臓器を意味する。いくつかの態様において、生物工学によって作製された組織とは、実験室由来の心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、腸、胸腺、角膜、幹細胞(例えば、ヒト多能性幹細胞、造血幹細胞)、リンパ球、顆粒球、免疫系細胞、骨細胞、原形質類器官、胚細胞、卵母細胞、精細胞、血小板、神経細胞、またはその組み合わせを意味する。
【0082】
「凍結保護剤溶液」なる用語は、氷晶形成によって引き起こされる凍結損傷を低減または防止するために用いられる溶液を意味する。いくつかの態様において、凍結保護剤溶液は、本明細書に記載の1つまたは複数のペプトイドポリマーを含む。他の態様において、凍結保護剤溶液は、本明細書に記載の1つまたは複数のペプトイドポリマーおよび1つまたは複数のペプトイド-ペプチドハイブリッドを含む。いくつかの態様において、凍結保護剤溶液は生体試料を凍結損傷から保護する。いくつかの態様において、凍結保護剤溶液は非生体試料を氷晶形成から保護する。いくつかの態様において、凍結保護剤溶液は生体試料を、それが低温にさらされなかった場合よりも長い期間保存する。
【0083】
「ガラス化する」および「ガラス化」なる用語は、物質のガラス(すなわち、非結晶アモルファス固体)への変換を意味する。水の文脈において、ガラス化とは、氷晶形成をもたらす通常の凍結とは対照的に、氷晶の形成なしに水がガラスへと変換することを意味する。ガラス化はしばしば、非常に急速な冷却および/または氷晶形成を抑制する作用物質の導入によって達成される。一方で、「脱ガラス化する」および「脱ガラス化」とは、以前は無結晶(アモルファス)であったガラスにおける結晶化の工程を意味する。水氷の文脈において、脱ガラス化は、以前は非結晶アモルファスであった固体が融解を起こす際の、氷晶の形成を意味し得る。
【0084】
「ペプトイド」なる用語は、アミド窒素原子上に置換基「R1」を有する、約2~1,000(例えば、約2~1,000、2~950、2~900、2~850、2~800、2~750、2~700、2~650、2~600、2~550、2~500、2~450、2~400、2~350、2~300、2~250、2~200、2~150、2~100、2~90、2~80、2~70、2~60、2~50、2~40、2~30、2~20、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、または2~3)の単位のポリアミドを意味する。任意で、第二の独立に選択された置換基「R2」が、カルボニル基に対してαの炭素原子に連結(すなわち、α-炭素原子に連結)されていてもよい。R2は、Hであり得るが、それに限定されない。特定の実例において、ペプトイドは、α-炭素原子に連結されていたであろう側鎖が代わりにアミド窒素原子に連結されている、ペプチドの合成類縁体である。ペプトイドは、異なる化学的機能を有する多様な側鎖を含むために、自動固相有機合成によって作製し得る、配列および長さが制御された合成ポリマーである。ペプトイド中のアミド窒素原子に結合されたR1基には、H、置換されていてもよいC1-18アルキル、置換されていてもよいC2-18アルケニル、置換されていてもよいC2-18アルキニル、置換されていてもよいC1-18ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいC1-18アルキルアミノ、置換されていてもよいC1-18アルキルチオ、置換されていてもよいカルボキシアルキル、C3-10シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C3-10シクロアルキル)アルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキル基が含まれ得るが、それらに限定されず、ここで任意のシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基は、1つまたは複数の「R3」基で独立に置換されていてもよい。各R3基は、ハロゲン、オキソ、チオキソ、-OH、-SH、アミノ、C1-8アルキル、C1-8ヒドロキシアルキル、C1-8アルキルアミノ、またはC1-8アルキルチオ基から独立に選択され得る。さらに、R1基は、任意のアミノ酸アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、またはチロシン(Tyr)の側鎖を含み得る。
【0085】
「ペプトイド-ペプチドハイブリッド」なる用語は、ペプトイドモノマー単位とα-アミノ酸(すなわち、ペプチド単位)との両方で構成されるオリゴマーを意味する。
【0086】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」なる用語は、アミノ酸残基のポリマー、またはアミノ酸残基の複数のポリマーの集合体を指すために、本明細書において交換可能に用いられる。
【0087】
「アミノ酸」なる用語には、天然α-アミノ酸およびそれらの立体異性体が含まれるが、それらに限定されない。アミノ酸の「立体異性体」とは、L-アミノ酸またはD-アミノ酸などの、アミノ酸の鏡像異性体を意味する。例えば、天然アミノ酸の立体異性体とは、天然アミノ酸の鏡像異性体(すなわち、D-アミノ酸)を意味する。
【0088】
天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるもの、ならびに後に改変されているアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリン)である。天然α-アミノ酸には、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、およびその組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。天然α-アミノ酸の立体異性体には、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リジン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(D-Pro)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-スレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)、およびその組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0089】
アミノ酸は、本明細書において、それらの一般に公知の三文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される一文字記号のいずれかで示し得る。例えば、L-アミノ酸は本明細書においてその一般に公知の三文字記号(例えば、L-アルギニンのArg)または大文字の一文字アミノ酸記号(例えば、L-アルギニンのR)で表し得る。D-アミノ酸は本明細書においてその一般に公知の三文字記号(例えば、D-アルギニンのD-Arg)または小文字の一文字アミノ酸記号(例えば、D-アルギニンのr)で表し得る。
【0090】
III. 態様の詳細な説明
本明細書において提供するのは、0℃未満の温度および極低温度での氷晶形成を低減または阻止するためのペプトイドポリマーおよび方法である。
【0091】
A. ペプトイドポリマー
いくつかの局面において、本明細書において提供するのは式(I)のペプトイドポリマー、その互変異性体、またはその立体異性体である:
式中:
各R
1は独立して、H、置換されていてもよいC
1-18アルキル、置換されていてもよいC
2-18アルケニル、置換されていてもよいC
2-18アルキニル、置換されていてもよいC
1-18 ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいC
1-18アルキルアミノ、置換されていてもよいC
1-18アルキルチオ、置換されていてもよいカルボキシアルキル、C
3-10シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C
3-10シクロアルキル)アルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキルからなる群より選択され、
ここでR
1の少なくとも1つの実例はC
1-18ヒドロキシアルキルであり、かつ
ここで任意のシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール基は独立して、1つまたは複数のR
3基で置換されていてもよく;
各R
2は独立して、H、置換されていてもよいC
1-18アルキル、置換されていてもよいC
2-18アルケニル、置換されていてもよいC
2-18アルキニル、置換されていてもよいC
1-18ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいC
1-18アルキルアミノ、置換されていてもよいC
1-18アルキルチオ、および置換されていてもよいカルボキシアルキルからなる群より選択され;
各R
3は独立して、ハロゲン、オキソ、チオキソ、-OH、-SH、アミノ、C
1-8アルキル、 C
1-8ヒドロキシアルキル、C
1-8アルキルアミノ、およびC
1-8アルキルチオからなる群より選択され;
XおよびYは独立して、H、置換されていてもよいC
1-8アルキル、置換されていてもよいC
1-8アシル、置換されていてもよいC
1-8アルキルアミノ、-OH、-SH、-NH
2、カルボキシ、置換されていてもよいC
1-8ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいC
1-8アルキルアミノ、置換されていてもよいC
2-8アルキルチオ、置換されていてもよいC
1-8カルボキシアルキル、およびハロゲンからなる群より選択されるか、または
代わりにXおよびYは一緒に共有結合を形成し;かつ
下付き文字nは、ポリマー中のモノマーの数を表して、2~50であり;
ただしnが3~7である場合、R
1のすべての実例はヒドロキシエチルではないことを条件とする。
【0092】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマー中のR
1の各実例は下記からなる群より選択される:
式中:mは1~8であり;かつR
3は、H、C
1-8アルキル、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、アミン、オキソ、およびチオキソからなる群より選択される。いくつかの態様において、反復単位、mは1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、または1~7であり得る。いくつかの態様において、反復単位、mは1、2、3、4、5、6、7、または8である。
【0093】
いくつかの態様において、1つまたは複数のR
1モノマーは、R
1a:
の構造を有する。
【0094】
いくつかの態様において、各R
1a基は独立して、
から選択される。いくつかの態様において、2つの立体異性体の混合物が選択される。いくつかの態様において、モノマーのR立体異性体だけが選択される。いくつかの態様において、このモノマーのS立体異性体だけが選択される。
【0095】
いくつかの態様において、1つまたは複数のR
1モノマーは、R
1b:
の構造を有する。
【0096】
いくつかの態様において、各R
1b基は独立して、
から選択される。いくつかの態様において、2つの立体異性体の混合物が選択される。いくつかの態様において、モノマーのR立体異性体だけが選択される。いくつかの態様において、このモノマーのS立体異性体だけが選択される。
【0097】
いくつかの態様において、1つまたは複数のR
1モノマーは、R
1c:
の構造を有する。
【0098】
いくつかの態様において、各R
1c基は独立して、
から選択される。いくつかの態様において、2つの立体異性体の混合物が選択される。いくつかの態様において、モノマーのR立体異性体だけが選択される。いくつかの態様において、このモノマーのS立体異性体だけが選択される。
【0099】
いくつかの態様において、1つまたは複数のR
1モノマーは、R
1d:
の構造を有する。
【0100】
いくつかの態様において、各R
1d基は独立して、
から選択される。いくつかの態様において、2つの立体異性体の混合物が選択される。いくつかの態様において、モノマーのR立体異性体だけが選択される。いくつかの態様において、このモノマーのS立体異性体だけが選択される。
【0101】
いくつかの態様において、1つまたは複数のR
1モノマーは、R
1e:
の構造を有する。
【0102】
いくつかの態様において、各R
1e基は独立して、
から選択される。いくつかの態様において、2つの立体異性体の混合物が選択される。いくつかの態様において、モノマーのR立体異性体だけが選択される。いくつかの態様において、このモノマーのS立体異性体だけが選択される。
【0103】
本明細書における任意のモノマーが立体化学を示さない場合はいつでも、任意の立体異性体を用い得る。いくつかの態様において、2つの立体異性体の混合物が選択される。立体異性体の混合物を含む態様において、ペプトイドポリマー中のモノマーのR立体異性体とS立体異性体との比は、約95:5~約90:10、約90:10~約85:15、約85:15~約80:20、約80:20~約75:25、約75:25~約70:30、約70:30~約65:35、約65:35~約60:40、約60:40~約55:45、約55:45~約50:50、約50:50~約45:55、約45:55~約40:60、約40:60~約35:65、約35:65~約30:70、約30:70~約25:75、約25:75~約20:80、約20:80~約15:85、約15:85~約10:90、または約10:90~約5:95の範囲であり得る。いくつかの態様において、モノマーのR立体異性体だけが選択される。いくつかの態様において、モノマーのS立体異性体だけが選択される。
【0104】
特定の立体化学がくさびまたは破線で示される場合はいつでも、モノマーは実質的に他の立体異性体を含まない。いくつかの態様において、実質的に含まないとは少なくとも70%の純度を意味する。いくつかの態様において、実質的に含まないとは少なくとも80%の純度を意味する。いくつかの態様において、実質的に含まないとは少なくとも90%の純度を意味する。いくつかの態様において、実質的に含まないとは少なくとも95%の純度を意味する。いくつかの態様において、実質的に含まないとは少なくとも99%の純度を意味する。いくつかの態様において、実質的に含まないとは少なくとも99.9%の純度を意味する。
【0105】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマー中のR
1の各実例は下記からなる群より選択される:
。
【0106】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマー中のR
1の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上の実例は、独立に選択されたC
1-18ヒドロキシアルキル基(例えば、独立に選択されたC
1-6ヒドロキシアルキル基)である。いくつかの態様において、ペプトイドポリマー中のR
1の各実例はC
1-18ヒドロキシアルキル基である。いくつかの態様において、R
1の各実例はC
1-6ヒドロキシアルキル基である。いくつかの態様において、R
1の各実例は同じC
1-6ヒドロキシアルキル基である。いくつかの態様において、R
1の各実例はヒドロキシアルキル基であり、ここで各ヒドロキシアルキル基中のアルキルの長さは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18またはそれ以上の炭素原子から選択される。いくつかの態様において、ヒドロキシアルキル基は、1、2、3、4、5、6、7、または8つのヒドロキシ置換基を含む。いくつかの態様において、R
1の各実例は:
である。
【0107】
いくつかの態様において、R2の各実例はHである。いくつかの態様において、少なくとも1つのR2はハロゲンである。
【0108】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、3~25である。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、5~25である。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、8~50である。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、8~25である。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、8~20である。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、約10~約28、約12~約26、約14~約24、約16~約22、または約18~約20であり得る。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、約8~約50、約8~約45、約8~約40、約8~約35、約8~約30、約10~約25、約10~約20、または約10~約15であり得る。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13 ,14 、15、16 、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50であり得る。
【0109】
いくつかの態様において、XおよびYは、H、置換されていてもよいC1-8アルキルアミノ、-OH、-SH、カルボキシ、置換されていてもよいC1-8ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいC1-8アルキルアミノ、置換されていてもよいC2-8アルキルチオ、置換されていてもよいC1-8カルボキシアルキル、またはハロゲンである。
【0110】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーのXおよびYは一緒に共有結合を形成する。XとYとの間の共有結合の形成は、以下に示すとおり、末端NR
1基および末端C=O基が連結されている、ペプトイドポリマーの環状化型をもたらす。
【0111】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは、表1に示すモノマーの群より選択されるモノマー単位からなる。当業者であれば、本発明の範囲は表1に挙げるモノマーに限定されないこと、および任意の有用なN-置換置換基はN-置換ペプトイドモノマーとして使用し得ることを理解するであろう。いくつかの態様において、N-置換ペプトイドモノマー上のN-置換置換基は、アミノ酸アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、またはチロシン(Tyr)の任意の側鎖である。
【0112】
【0113】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは、表2、表3、表4、表5、表6、表7、表8、または表9に示すペプトイドポリマーの群より選択される。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:10のNsbモノマー、1つのNhpモノマーと9つのNsbモノマー、2つのNhpモノマーと8つのNsbモノマー、3つのNhpモノマーと7つのNsbモノマー、4つのNhpモノマーと6つのNsbモノマー、5つのNhpモノマーと5つのNsbモノマー、6つのNhpモノマーと4つのNsbモノマー、7つのNhpモノマーと3つのNsbモノマー、8つのNhpモノマーと2つのNsbモノマー、9つのNhpモノマーと1つのNsbモノマー、または10のNhpモノマーを含む。
【0123】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは配列
を有し、ここでXはHまたはC
1-8アシルであり、かつYは-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは配列
を有し、ここでXはHまたはC
1-8アシルであり、かつYは-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは配列
を有し、ここでXはHまたはC
1-8アシルであり、かつYは-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは配列
を有し、ここでXはHまたはC
1-8アシルであり、かつYは-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは配列
を有し、ここでXはHまたはC
1-8アシルであり、かつYは-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである。いくつかの態様において、Yは二級アミンまたは三級アミンである。
【0124】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:10のNmeモノマー、1つのNhpモノマーと9つのNmeモノマー、2つのNhpモノマーと8つのNmeモノマー、3つのNhpモノマーと7つのNmeモノマー、4つのNhpモノマーと6つのNmeモノマー、5つのNhpモノマーと5つのNmeモノマー、6つのNhpモノマーと4つのNmeモノマー、7つのNhpモノマーと3つのNmeモノマー、および8つのNhpモノマーと2つのNmeモノマー、または9つのNhpモノマーと1つのNmeモノマーを含む。
【0125】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:1つのNheモノマーと9つのNsbモノマー、2つのNheモノマーと8つのNsbモノマー、3つのNheモノマーと7つのNsbモノマー、4つのNheモノマーと6つのNsbモノマー、5つのNheモノマーと5つのNsbモノマー、6つのNheモノマーと4つのNsbモノマー、7つのNheモノマーと3つのNsbモノマー、8つのNheモノマーと2つのNsbモノマー、9つのNheモノマーと1つのNsbモノマー、または10のNheモノマーを含む。
【0126】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:10のNbuモノマー、1つのNhpモノマーと9つのNbuモノマー、2つのNhpモノマーと8つのNbuモノマー、3つのNhpモノマーと7つのNbuモノマー、4つのNhpモノマーと6つのNbuモノマー、5つのNhpモノマーと5つのNbuモノマー、6つのNhpモノマーと4つのNbuモノマー、7つのNhpモノマーと3つのNbuモノマー、8つのNhpモノマーと2つのNbuモノマー、または9つのNhpモノマーと1つのNbuモノマーを含む。
【0127】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:10のNibモノマー、1つのNhpモノマーと9つのNibモノマー、2つのNhpモノマーと8つのNibモノマー、3つのNhpモノマーと7つのNibモノマー、4つのNhpモノマーと6つのNibモノマー、5つのNhpモノマーと5つのNibモノマー、6つのNhpモノマーと4つのNibモノマー、7つのNhpモノマーと3つのNibモノマー、8つのNhpモノマーと2つのNibモノマー、または9つのNhpモノマーと1つのNibモノマーを含む。
【0128】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:10のNprモノマー、1つのNhpモノマーと9つのNprモノマー、2つのNhpモノマーと8つのNprモノマー、3つのNhpモノマーと7つのNprモノマー、4つのNhpモノマーと6つのNprモノマー、5つのNhpモノマーと5つのNprモノマー、6つのNhpモノマーと4つのNprモノマー、7つのNhpモノマーと3つのNprモノマー、8つのNhpモノマーと2つのNprモノマー、または9つのNhpモノマーと1つのNprモノマーを含む。
【0129】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、10であり、かつペプトイドポリマーは:10のNipモノマー、1つのNhpモノマーと9つのNipモノマー、2つのNhpモノマーと8つのNipモノマー、3つのNhpモノマーと7つのNipモノマー、4つのNhpモノマーと6つのNipモノマー、5つのNhpモノマーと5つのNipモノマー、6つのNhpモノマーと4つのNipモノマー、7つのNhpモノマーと3つのNipモノマー、8つのNhpモノマーと2つのNipモノマー、または9つのNhpモノマーと1つのNipモノマーを含む。
【0130】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、14であり、かつペプトイドポリマーは:6つのNhpモノマーと8つのNsbモノマー、7つのNhpモノマーと7つのNsbモノマー、8つのNhpモノマーと6つのNsbモノマー、10のNhpモノマーと4つのNsbモノマー、または14のNhpモノマーを含む。
【0131】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、14であり、かつペプトイドポリマーは:6つのNhpモノマーと8つのNibモノマー、7つのNhpモノマーと7つのNibモノマー、8つのNhpモノマーと6つのNibモノマー、10のNhpモノマーと4つのNibモノマー、または14のNhpモノマーを含む。
【0132】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、16であり、かつペプトイドポリマーは:5つのNhpモノマーと11のNsbモノマー、7つのNhpモノマーと9つのNsbモノマー、8つのNhpモノマーと8つのNsbモノマー、10のNhpモノマーと6つのNsbモノマー、12のNhpモノマーと4つのNsbモノマー、または16のNhpモノマーを含む。
【0133】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーの配列長nは、22であり、かつペプトイドポリマーは:7つのNhpモノマーと15のNsbモノマー、10のNhpモノマーと12のNsbモノマー、11のNhpモノマーと11のNsbモノマー、14のNhpモノマーと8つのNsbモノマー、17のNhpモノマーと5つのNsbモノマー、または22のNhpモノマーを含む。
【0134】
いくつかの態様において、本明細書に記載のペプトイドポリマーはヘリックス構造を形成する。いくつかの態様において、ヘリックス構造は、ポリプロリンヘリックスに類似の構造をとる。一定の実例において、ペプトイドポリマーはポリプロリンIヘリックスを形成する。一定の他の実例において、ペプトイドポリマーはポリプロリンIIヘリックスを形成する。いくつかの態様において、ペプトイドポリマーが少なくとも1つのN-アリール側鎖を含む場合、ヘリックス構造をとる。いくつかの態様において、N-アリール側鎖はNepモノマーである。
【0135】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは約0℃~約-20℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する。他の態様において、ペプトイドポリマーは約-20℃~約-40℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する。一定の態様において、ペプトイドポリマーは約-20℃で氷晶形成を低減または阻止する。一定の他の態様において、ペプトイドポリマーは約-40℃~約-200℃の範囲内の温度(例えば、約-196℃)で氷晶形成を低減または阻止する。
【0136】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマーは約0℃~約-200℃の範囲内、約-10℃~約-190℃の範囲内、約-20℃~約-180℃の範囲内、約-30℃~約-170℃の範囲内、約-40℃~約-160℃の範囲内、約-50℃~約-150℃の範囲内、約-60℃~約-140℃の範囲内、約-70℃~約-140℃の範囲内、約-80℃~約-130℃の範囲内、約-90℃~約-120℃の範囲内、または約-100℃~約-110℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する。
【0137】
他の態様において、ペプトイドポリマーは-10℃もしくは約-10℃、-15℃もしくは約-15℃、-25℃もしくは約-25℃、-30℃もしくは約-30℃、-35℃もしくは約-35℃、-40℃もしくは約-40℃、-45℃もしくは約-45℃、-50℃もしくは約-50℃、-55℃もしくは約-55℃、-60℃もしくは約-60℃、-65℃もしくは約-65℃、-70℃もしくは約-70℃、-75℃もしくは約-75℃、-80℃もしくは約-80℃、-85℃もしくは約-85℃、-90℃もしくは約-90℃、-95℃もしくは約-95℃、-100℃もしくは約-100℃、-105℃もしくは約-105℃、-110℃もしくは約-110℃、-115℃もしくは約-115℃、-120℃もしくは約-120℃、-125℃もしくは約-125℃、-130℃もしくは約-130℃、-135℃もしくは約-135℃、-140℃もしくは約-140℃、-145℃もしくは約-145℃、-150℃もしくは約-150℃、-155℃もしくは約-155℃、-160℃もしくは約-160℃、-165℃もしくは約-165℃、-170℃もしくは約-170℃、-175℃もしくは約-175℃、-180℃もしくは約-180℃、-185℃もしくは約-185℃、-190℃もしくは約-190℃、-195℃もしくは約-195℃、-196℃もしくは約-196℃、または-200℃もしくは約-200℃で氷晶形成を低減または阻止する。
【0138】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマー(例えば、凍結保護剤溶液、不凍溶液、冷凍食品製品、または美容ケア製品などの組成物、製剤、または製品中に存在する)の濃度は、約100nM~約100mMである。一定の態様において、ペプトイドポリマー(例えば、凍結保護剤溶液、不凍溶液、冷凍食品製品、または美容ケア製品などの組成物、製剤、または製品中に存在する)の濃度は、約100nM~約250nM、約250nM~約500nM、約500nM~約750nM、約750nM~約1μM、約1μM~約5μM、約5μM~約25μM、約25μM~約50μM、約50μM~約100μM、約100μM~約250μM、約250μM~約500μM、約500μM~約750μM、約750μM~約1mM、約1mM~約10mM、約10mM~約50mM、または約50mM~約100mMである。他の態様において、ペプトイドポリマー(例えば、凍結保護剤溶液、不凍溶液、冷凍食品製品、または美容ケア製品などの組成物、製剤、または製品中に存在する)の濃度は、約100nM、約1μM、約10μM、約100μM、約1mM、約10mM、または約100mMである。特定の態様において、ペプトイドポリマーの濃度は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mMである。
【0139】
B. ペプトイド-ペプチドハイブリッド
もう1つの局面において、本発明は、ペプトイド-ペプチドハイブリッドを提供する。いくつかの態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、本明細書に記載のペプトイドポリマーと1つまたは複数のアミノ酸とを含む。アミノ酸は天然アミノ酸またはその変種であり得る。いくつかの態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドは約1~10のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のアミノ酸)を含む。他の態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドは約10~100のアミノ酸(例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100のアミノ酸)を含む。いくつかの態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドは約100よりも多くのアミノ酸を含む。他の態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドは、2~50のペプトイドモノマー(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、42、44、45、46、47、48、49、または50のペプトイドモノマー)と少なくとも約1~100のアミノ酸(例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100のアミノ酸)とを含む。
【0140】
アミノ酸は、N-およびC-末端ならびに/または任意のペプトイドモノマーの中間を含む、ポリマー内の任意の位置に配置されうる。ペプトイド-ペプチドハイブリッドが複数のアミノ酸を含む実例において、アミノ酸はすべて隣接していてもよく、またはそれらの一部だけが隣接していてもよい。または、すべてのアミノ酸が1つまたは複数のペプトイドモノマーで分離されていてもよい。
【0141】
いくつかの態様において、アミノ酸はD-アミノ酸である。他の態様において、アミノ酸はL-アミノ酸である。いくつかの他の態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドはD-およびL-アミノ酸の組み合わせを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のアミノ酸は、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、アルギニン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、チロシン、およびその組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実例において、1つまたは複数のアミノ酸は、イソロイシン、スレオニン、アラニン、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0142】
いくつかの態様において、ペプトイドポリマー中の1つまたは複数のNsbペプトイドモノマーは1つまたは複数のイソロイシンアミノ酸残基で置き換えられて、ペプトイド-ペプチドハイブリッドを生成する。1つまたは複数のイソロイシンアミノ酸はD-アミノ酸、L-アミノ酸、またはその組み合わせであり得る。他の態様において、ペプトイドポリマー中の1つまたは複数のNhpペプトイドモノマーは1つまたは複数のスレオニンアミノ酸残基で置き換えられて、ペプトイド-ペプチドハイブリッドを生成する。1つまたは複数のスレオニンアミノ酸はD-アミノ酸、L-アミノ酸、またはその組み合わせであり得る。いくつかの他の態様において、ペプトイドポリマー中の1つまたは複数のNmeペプトイドモノマーは1つまたは複数のアラニンアミノ酸残基で置き換えられて、ペプトイド-ペプチドハイブリッドを生成する。1つまたは複数のアラニンアミノ酸はD-アミノ酸、L-アミノ酸、またはその組み合わせであり得る。
【0143】
いくつかの態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドは配列:
を含み、ここでXaaアミノ酸残基は、D-アミノ酸、L-アミノ酸、またはその組み合わせなどの、独立に選択されたアミノ酸である。非限定例として、Xaaのすべての実例は、Arg、Ala、Val、および/またはSerアミノ酸残基である。
【0144】
他の態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドは配列:
を含み、ここでXaaアミノ酸残基は、D-アミノ酸、L-アミノ酸、またはその組み合わせなどの、独立に選択されたアミノ酸である。非限定例として、Xaaのすべての実例は、Arg、Ala、Val、および/またはIleアミノ酸残基である。
【0145】
さらに他の態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドは配列:
を含み、ここでXaaアミノ酸残基は、D-アミノ酸、L-アミノ酸、またはその組み合わせなどの、独立に選択されたアミノ酸である。非限定例として、Xaaのすべての実例は、Arg、Ala、Val、および/またはLeuアミノ酸残基である。
【0146】
いくつかの態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドは配列:
を含み、ここでArgアミノ酸残基はD-アミノ酸またはL-アミノ酸である。いくつかの態様において、ペプトイド-ペプチドハイブリッドは表10に示す構造を含む。
【0147】
【0148】
C. 合成法
もう1つの局面において、本明細書における発明は、ペプトイドポリマーまたはペプトイド-ペプチドハイブリッドの合成法を提供する。本発明のペプトイドポリマーおよびペプトイド-ペプチドハイブリッドは、容易に入手可能な出発原料から、本明細書に記載の一般的方法および手順を用いて調製することができる。典型的または好ましい工程条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧など)が与えられている場合、特に記載がないかぎり、他の工程条件も使用し得ることが理解されるであろう。最適な反応条件は、用いる特定の反応物または溶媒によって変動し得るが、そのような条件は、当業者であれば、日常的な最適化手順によって決定することができる。
【0149】
本発明のペプトイドポリマーおよびペプトイド-ペプチドハイブリッドは、有機合成の当業者であれば、公知または市販の出発原料および試薬から調製し得る。溶媒および試薬は商業的供給元から購入し、それ以上精製せずに用いる。
【0150】
いくつかの態様において、ペプトイド合成のためにサブモノマーアプローチ(
図1)を用い、ここで各N-置換グリシンモノマーを2つの容易に入手可能な「サブモノマー」から組み立てる。オリゴマーペプトイドの合成は、ペプチド合成に類似の、標準的固相法の強固な化学に基づいている。モノマー付加の各サイクルは、アシル化段階および求核置換段階の2つの段階からなる。いくつかの態様において、固相組立は、保護が必要な反応性側鎖官能基がないため、N-保護モノマーの必要性を取り除く。当業者であれば、自動のロボット合成機を含む、多くの固相合成法があることを理解するであろう。いくつかの態様において、用いる合成機はProtein Technologies, Inc.製のSymphony(登録商標) X Multiplex Peptide Synthesizerである。いくつかの態様において、用いる合成機はProtein Technologies, Inc.製のOverture Peptide Synthesizerである。他の態様において、ペプトイドを、当技術分野において公知の伝統的有機化学法を用いて手動で合成する。適切なアミノ酸を、ペプトイドモノマーの正しい場所に合成中の適切な時点で提供することにより、前述のものと同じ技術または類似の技術をペプトイド-ペプチドオリゴマーの合成に適用することができる。
【0151】
非限定例として、ペプトイドポリマーを100mgのRinkアミド樹脂(NovaBiochem;0.49mmol/g)上で合成することができる。Rinkアミド樹脂(100mg)を、1.5mLのDCM中で2回洗浄し、続いて1.5mLのDMF中で膨潤させることができる。膨潤段階は2回実施し得る。Fmoc保護基を、20%ピペリジン/DMFの添加により樹脂から除去することができる。混合物を10分間撹拌し、排液し、ピペリジン処理をくり返し、続いてDMF(1.5mLで5回)による十分な洗浄を行うことができる。2mLのDCM中の37mgのブロモ酢酸(0.27mmol;Sigma-Aldrich)および189μLのDIEA(1.08mmol;Chem Impex International)を振盪機台上、室温で30分間反応させ、続いてDCM(2mLで5回)およびDMF(2mLで5回)で十分に洗浄することにより、第一のモノマーを手動で付加することができる。ブロモアシル化樹脂を2mLのDMF中1Mアミンサブモノマーと共に、振盪機台上、室温で30分間インキュベートし、続いてDMF(2mLで5回)で十分に洗浄することができる。ブロモ酢酸を最初に手動でロードした後、第一のサブモノマー置換段階および続くすべてのブロモアセチル化およびアミン置換段階を、所望のオリゴマー長が得られるまで、ロボット合成機により実施することができる。1660μLのDMF中1.2Mブロモ酢酸および400μLのDIC(Chem Impex International)を加えることにより、自動ブロモアセチル化段階を実施することができる。混合物を20分間撹拌し、排液し、DMF(2mLで3回)で洗浄することができる。次に、2mLのDMF中1Mサブモノマー(2mmol)溶液を加えて、臭素の求核置換により側鎖を導入することができる。混合物を20分間撹拌し、排液し、DMF(2mLで3回)で洗浄し、DCM(2mLで3回)洗浄することができる。ペプトイド-樹脂を2mLのDCM中20体積%HEIP(Alfa Aesar)中、室温で切断することができる。切断は、ガラスチューブ中、30分間の持続的撹拌により実施することができる。HFIP/DCMを窒素気流下で蒸発させることができる。最終生成物を5mLのHPLC等級のH2O中50%ACNに溶解し、0.5pmステンレススチールフリットシリンジチップフィルター(Upchurch Scientific)でろ過することができる。ペプトイドオリゴマーを、Beckman Coulter System Gold機器を用い、C18逆相分析用HPLCカラムにより室温で(Peeke Scientific、5pm、120Å、2.0×50mm)分析することができる。20分間で5~95%アセトニトリル/水(0.1%TFA、Acros Organics)の直線勾配を、0.7mL/分の流速で用いることができる。試料溶液中にわずかなHFIPがあればこれを除去するために、50%ACN/H2Oに溶解した線形前駆体を終夜凍結乾燥することができる。
【0152】
ペプトイドポリマーおよびペプトイド-ペプチドハイブリッドは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析によって分析することができる。一般には、分析する1~5μMのペプトイドポリマーまたはペプトイド-ペプチドハイブリッド0.5~2mLを、1%のトリフルオロ酢酸などの有機酸を含む50%脱イオンH2O/50%HPLC等級ACN中で調製する。調製した試料を電子照射によりイオン化して、分子を荷電フラグメントへと分解させる。次いで、フラグメントを加速し、それらを電場または磁場に曝露することにより、イオンをそれらの質量電荷比に応じて分離する。イオンを、電子増倍管などの、荷電粒子を検出することができるメカニズムによって検出する。特定した質量に質量を相関させることにより、または特徴的なフラグメンテーションパターンを通して、ペプトイドおよびペプトイド-ペプチドハイブリッドを特定する。
【0153】
D. 使用法
いくつかの局面において、本発明は凍結保護剤溶液を提供する。いくつかの態様において、凍結保護剤溶液は、本明細書に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、またはその組み合わせを含む。他の態様において、凍結保護剤溶液は、イオン種、透過性凍結保護剤、非透過性凍結保護剤、抗酸化剤、細胞膜安定化化合物、アクアポリンまたは他のチャネル形成化合物、アルコール、糖、糖誘導体、非イオン性界面活性剤、タンパク質、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、フィコール(登録商標)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒアルロナン、ホルムアミド、天然または合成ヒドロゲル、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物をさらに含む。特定の態様において、透過性凍結保護剤は細胞膜を透過して細胞内水分濃度を低下させ、それにより任意の温度で形成される氷の量を低減する。他の特定の態様において、非透過性凍結保護剤は、コロイド浸透圧の変化を誘導し、誘導されたイオン性相互作用により細胞外水分と細胞膜との結合を改変する。
【0154】
いくつかの実例において、凍結保護剤溶液は、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、メタノール、ブチレングリコール、アドニトール、エタノール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エリスリトール、ソルビトール、キシシリトール、ポリプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、マンニトール、イノシトール、ジチオリトール(dithioritol)、1,2-プロパンジオール、およびその組み合わせからなる群より選択されるアルコールをさらに含む。
【0155】
他の実例において、凍結保護剤溶液は、単糖、二糖、多糖、およびその組み合わせからなる群より選択される糖をさらに含む。特定の実例において、糖は、グルコース、3-O-メチル-D-グルコピラノース、ガラクトース、アラビノース、果糖、キシロース、マンノース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、ラフィノース、デキストラン、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0156】
他の実例において、凍結保護剤溶液は、PEGまたは複数の異なるPEG化合物をさらに含む。いくつかの他の実例において、PEG化合物の少なくとも1つは約1,000g/mol未満(例えば、約1,000 950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、または100g/mol未満)の平均分子量を有する。特定の実例において、PEG化合物の少なくとも1つは約200~400g/mol(例えば、約200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、または400g/mol)の平均分子量を有する。いくつかの実例において、凍結保護剤溶液は、PEG200、PEG300、PEG400、およびその組み合わせからなる群より選択される、PEGまたは複数のPEG化合物を含む。
【0157】
他の実例において、凍結保護剤溶液は、卵アルブミン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、ゼラチン、およびその組み合わせからなる群より選択されるタンパク質をさらに含む。さらに他の実例において、凍結保護剤溶液は、キトサン、ヒアルロン酸、またはその組み合わせを含む天然または合成ヒドロゲルをさらに含む。
【0158】
有効濃度、粘度、水溶性、および/または膜透過性などの、凍結保護剤溶液の様々な特性の非限定例は、幹細胞、肝組織または肝細胞、腎臓、腸、心臓、膵臓、骨髄、原形質類器官、および他の生体組織を含むが、それらに限定されない、凍結保存のためのモデル細胞または組織を用いて評価することができる。
【0159】
いくつかの態様において、凍結保護剤溶液は、約0℃~約-20℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する。他の態様において、凍結保護剤溶液は約-20℃~約-40℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する。一定の態様において、凍結保護剤溶液は約-20℃で氷晶形成を低減または阻止する。一定の他の態様において、凍結保護剤溶液は約-40℃~約-200℃の範囲内の温度(例えば、約-196℃)で氷晶形成を低減または阻止する。
【0160】
いくつかの態様において、凍結保護剤溶液は約0℃~約-200℃の範囲内、約-10℃~約-190℃の範囲内、約-20℃~約-180℃の範囲内、約-30℃~約-170℃の範囲内、約-40℃~約-160℃の範囲内、約-50℃~約-150℃の範囲内、約-60℃~約-140℃の範囲内、約-70℃~約-140℃の範囲内、約-80℃~約-130℃の範囲内、約-90℃~約-120℃の範囲内、または約-100℃~約-110℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する。
【0161】
他の態様において、凍結保護剤溶液は-10℃もしくは約-10℃、-15℃もしくは約-15℃、-25℃もしくは約-25℃、-30℃もしくは約-30℃、-35℃もしくは約-35℃、-40℃もしくは約-40℃、-45℃もしくは約-45℃、-50℃もしくは約-50℃、-55℃もしくは約-55℃、-60℃もしくは約-60℃、-65℃もしくは約-65℃、-70℃もしくは約-70℃、-75℃もしくは約-75℃、-80℃もしくは約-80℃、-85℃もしくは約-85℃、-90℃もしくは約-90℃、-95℃もしくは約-95℃、-100℃もしくは約-100℃、-105℃もしくは約-105℃、-110℃もしくは約-110℃、-115℃もしくは約-115℃、-120℃もしくは約-120℃、-125℃もしくは約-125℃、-130℃もしくは約-130℃、-135℃もしくは約-135℃、-140℃もしくは約-140℃、-145℃もしくは約-145℃、-150℃もしくは約-150℃、-155℃もしくは約-155℃、-160℃もしくは約-160℃、-165℃もしくは約-165℃、-170℃もしくは約-170℃、-175℃もしくは約-175℃、-180℃もしくは約-180℃、-185℃もしくは約-185℃、-190℃もしくは約-190℃、-195℃もしくは約-195℃、-196℃もしくは約-196℃、または-200℃もしくは約-200℃で氷晶形成を低減または阻止する。
【0162】
いくつかの態様において、凍結保護剤溶液中のペプトイドポリマーおよび/またはペプトイド-ペプチドハイブリッドの濃度は、約100nM~約100mMである。いくつかの態様において、凍結保護剤溶液中のペプトイドポリマーおよび/またはペプトイド-ペプチドハイブリッドの濃度は、約100nM~約250nM、約250nM~約500nM、約500nM~約750nM、約750nM~約1μM、約1μM~約5μM、約5μM~約25μM、約25μM~約50μM、約50μM~約100μM、約100μM~約250μM、約250μM~約500μM、約500μM~約750μM、約750μM~約1mM、約1mM~約10mM、約10mM~約50mM、または約50mM~約100mMである。いくつかの態様において、凍結保護剤溶液中のペプトイドポリマーおよび/またはペプトイド-ペプチドハイブリッドの濃度は、約100nM、約1μM、約10μM、約100μM、約1mM、約10mM、または約100mMである。特定の態様において、凍結保護剤溶液中のペプトイドポリマーおよび/またはペプトイド-ペプチドハイブリッドの濃度は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mMである。
【0163】
他の局面において、本明細書において提供するのは、生体試料を保存するための方法である。特定の態様において、生体試料は細胞組成物を有する。いくつかの態様において、生体試料は組織である。他の態様において、生体試料は臓器である。さらに他の態様において、生体試料は細胞である。特定の態様において、生体試料は1つまたは複数の組織、臓器、もしくは細胞、またはその組み合わせを含む。いくつかの態様において、方法は、生体試料を、本明細書に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本明細書に記載の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせと接触させる段階を含む。いくつかの実例において、組成物または溶液の組み合わせを用いる場合、生体試料を組成物または溶液と接触させる段階は複数の段階で達成し得る。非限定例として、生体試料をまず本明細書に記載のペプトイドポリマーと接触させ、次いで後の時点で生体試料を本明細書に記載の凍結保護溶液と接触させることができる。
【0164】
特定の実例において、組織は生物工学によって作製された組織である。いくつかの態様において、生体試料は、心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、腸、胸腺、角膜、神経細胞、血小板、精細胞、卵母細胞、胚細胞、幹細胞、骨細胞、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0165】
生体試料の凍結保護は、任意の数の目的のために有用である。非限定例には、原形質類器官保存、幹細胞保存(例えば、造血幹細胞、胚幹(ES)細胞、多能性幹細胞(PSC)、および人工多能性幹細胞(iPSC))、成人細胞および細胞株(例えば、リンパ球、顆粒球、免疫系細胞、骨細胞)の保存、胚、精子、および卵母細胞の保存、組織保存、ならびに臓器保存が含まれる。組織、臓器、および他の生体試料および構造の保存は、例えば、臓器移植の分野において特に有用である。生体試料に対する本発明の他の有用な適用は、当業者には容易に知られるであろう。
【0166】
さらに他の局面において、本明細書において提供するのは、1つまたは複数の生体高分子を保存するための方法である。前記生体高分子は天然または非天然であり得る。本発明の組成物および方法による凍結保護に適した生体高分子の非限定例には、核酸(例えば、DNA、RNA)、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、脂質、および複合構造(例えば、リポソーム)が含まれる。いくつかの態様において、方法は、生体高分子を本明細書に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本明細書に記載の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせと接触させる段階を含む。いくつかの実例において、生体高分子は単離タンパク質である。特定の実例において、単離タンパク質はプロテアーゼタンパク質である。いくつかの実例において、組成物または溶液の組み合わせを用いる場合、1つまたは複数の生体高分子を組成物または溶液と接触させる段階は、複数の段階で達成することができる。非限定例として、1つまたは複数の生体高分子をまず本明細書に記載のペプトイドモノマーと接触させ、次いで後の時点で生体試料を本明細書に記載の凍結保護溶液と接触させることができる。
【0167】
本発明の組成物および方法を用いての生体高分子の凍結保護は、任意の数の目的のために有用である。そのような目的の非限定例には、DNA(例えば、ゲノムDNA)およびRNA試料の保存、幹細胞成長因子の保存、ならびに抗体の保存が含まれる。本発明の組成物および方法に適した他の有用な目的および適用は、当業者には容易に知られるであろう。
【0168】
特定の態様において、単離タンパク質は結晶化されている。結晶凍結保護は、生体高分子(例えば、タンパク質およびペプチド)を試験するための結晶学的方法のレパートリーにおいて必須のツールとなっている。多くの場合、極低温度での凍結保護と、その後のデータ収集は、x線ビームラインからの放射線損傷の問題を克服することにより、完全なデータセットを得るために必須である。さらに、低温法は、結晶学の専門家が小結晶について研究することを可能にし、そのような方法は回折の質を損なうことなく結晶を長期保存するための理想的な方法となっている。凍結保護剤は、高分子結晶を低温冷却工程中に氷形成の損傷効果から保護するための手段を提供する。凍結保護は通常は、結晶を液体窒素中で急速冷却しながら、非晶質ガラスを形成(すなわち、ガラス化)する溶液中に浸漬する段階を含む。結晶学のために理想的な凍結保護剤は超有効(すなわち、凍結保護剤は低濃度で有効な結果を達成する)であるべきである。現在利用可能な凍結保護剤は超有効ではない。したがって、凍結保護剤濃度が低すぎる場合、実験中に結晶氷が生成し、これはバックグラウンド干渉を引き起こす。凍結保護剤濃度が高すぎる場合、ビームエネルギーにより結晶構造の即座の融解が起こり得、その後の構造解析に影響する質の低いデータを生じる。例えば、x線結晶解析適用において用いられる現在の最先端の凍結保護剤溶液は、結晶化タンパク質の保存温度で氷晶形成を防止するために、20%エチレングリコールの使用を必要とする。x線データ収集中に、エチレングリコールは結晶を加熱して溶解し、さらなるデータ収集を妨げる。さらなる情報については、例えば、Garman et al. J. Appl. Cryst. 30:211 (1997)を参照されたい。
【0169】
いくつかの態様において、本発明に記載のペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、もしくは凍結保護剤溶液、またはその組み合わせは、x線データ収集中の結晶の溶解を低減する。いくつかの態様において、本発明に記載のペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせは、バックグラウンドの散乱を低下させる。
【0170】
本発明の組成物および方法による凍結保護に適した生体試料および高分子は、任意の生物界(例えば、動物界(ヒトおよび家畜を含むが、それらに限定されない)、植物界、真菌類(キノコを含むが、それらに限定されない)、原生生物界、古細菌/始原菌、および細菌/真正細菌)由来であり得る。
【0171】
もう1つの局面において、本発明は、美容ケア製品を提供する。いくつかの態様において、美容ケア製品は本発明に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本明細書に記載の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む。いくつかの態様において、美容ケア製品は皮膚ケア製品である。いくつかの態様において、皮膚ケア製品を局所適用する。局所製品のための典型的製剤には、クリーム、セラム、軟膏、噴霧剤、ローション、およびパッチが含まれる。
【0172】
もう1つの局面において、本発明は、除氷または氷結阻止製品などの不凍製品を提供する。いくつかの態様において、不凍製品は本発明に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本明細書に記載の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む。いくつかの態様において、不凍製品を用いて、一般的な機械および電気機器を含むがそれらに限定されない対象上の氷の形成を、防止する、阻止する、または遅延させる。いくつかの態様において、不凍製品は、航空機もしくはその一部、ドローン、自動車もしくはその一部、例えば、自動車エンジン、ギア装置、ブレーキ装置、窓、スプリンクラー装置、ガスパイプライン、または電気ケーブル、例えば、送電線上の氷の形成を防止する、阻止する、または遅延させる。他の実例において、不凍製品は、速度論的阻害剤として作用する。いくつかの態様において、不凍製品はエチレングリコール、メタノール、プロピレングリコール、グリセロール、またはその組み合わせをさらに含む。
【0173】
もう1つの局面において、本発明は冷凍食品製品を提供する。いくつかの態様において、冷凍食品製品は本発明に記載のペプトイドポリマー、本明細書に記載のペプトイド-ペプチドハイブリッド、本明細書に記載の凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む。いくつかの態様において、冷凍食品製品はアイスクリーム、ヨーグルト、海産物、果物、および肉製品からなる群より選択される。いくつかの態様において、冷凍食品製品はプロピレングリコールをさらに含む。
【0174】
E. 凍結保存プロトコル
本明細書に記載の組成物および方法は、任意の数の凍結保存プロトコルにおける使用に適している。非限定例として、本発明の組成物および方法は、高度氷点下温度(例えば、0℃~-20℃)への過冷却中の凍結保存のために有用である。臓器移植の分野において、臓器を典型的には氷上で冷却(例えば、0~4℃まで)し、これは移植ウィンドウを約10時間に制限する。標準の小分子CPAを含む凍結保護剤でのエクスビボ機械灌流を用いることにより、臓器を-6℃の温度で最大96時間まで保存することが可能となっている。可能な凍結保存時間を延ばすであろう-6℃未満まで凍結保存温度をさらに下げることが望ましいが、さらに温度を下げるために必要な標準的CPAの高い濃度は、CPA関連毒性による不可逆的な臓器損傷を引き起こすため、そうすることは可能ではなかった。さらなる情報については、例えば、Uygun K, et. al. Nat. Protoc. 10(3):484-94 (2015)を参照されたい。エクスビボ灌流法を用いること、またはそれ以外に生体試料(例えば、臓器および組織)もしくは高分子を本明細書に記載のペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/もしくは凍結保護剤溶液と接触させることは、高度氷点下温度に過冷却するために有用であり、現在実行可能なものよりも低い温度で長期間の凍結保存を可能にする。高度氷点下温度の過冷却への本発明の他の適切な適用は、当業者には容易に知られるであろう。
【0175】
もう1つの非限定例として、本発明の組成物および方法は、凍結プロトコル(例えば、-20℃~-196℃)中の凍結保存のために有用である。凍結プロトコルは典型的には、温度低下の少なくとも一部において、制御した速度(時に低速凍結と呼ぶ)で実施する。例えば、生体試料または高分子を本明細書に記載のペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液と接触させることができ、温度を所望の温度に達するまで制御した速度で低下させる(例えば、毎分1℃の速度で下げる)ことができる。または、温度を所望の温度に達するまで(例えば、-80℃~-180℃)制御した速度で低下させることができ、次いで試料または高分子を急速凍結(例えば、試料もしくは高分子を液体窒素中に浸漬する、または試料もしくは高分子を液体窒素の上に設置することにより)することができる。ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、または凍結保護剤溶液を凍結保存中の試料または高分子と、それが保存中の試料または高分子を損傷する氷晶の形成前であるかぎり、プロトコル中の任意の時点で接触させることができる。
【0176】
さらにもう1つの非限定例として、本発明の組成物および方法は、極低温凍結プロトコル(例えば、-90℃~-196℃)のために有用である。例えば、生体試料または高分子を本明細書に記載のペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、または凍結保護剤溶液と接触させ、次いで試料を氷晶形成なしに急速に凍結するために、液体窒素または液体窒素蒸気流中に投入することができる。氷格子は存在せず、したがって試料または高分子中の水は非晶質またはガラス様の状態である。したがって、損傷性の氷は形成されない。
【0177】
当業者であれば、本明細書に記載のペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および凍結保護剤溶液の濃度および組成は、凍結保存中の特定の生体試料および/または高分子ならびに用いている特定の凍結保存プロトコルに応じて、改変され得ることを容易に理解するであろう。
【0178】
F. スクリーニング法
関連する局面において、本発明はペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液の活性をスクリーニングする方法を提供する。
【0179】
1つの態様において、ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液の水の氷点低下能力を、氷晶形成を検出するための偏光顕微鏡を用いてスクリーニングする。偏光顕微鏡法は、光源として偏光を用いる光学顕微鏡技術である。画像コントラストが平面偏光と複屈折(または二重屈折)種との相互作用から生じて、それぞれ互いに垂直な平面で偏光する2つの個々の波成分が生じる。正常および異常波面と呼ばれる、これらの成分の速度は異なり、標本を通しての伝播方向によって変動する。標本を出た後、光成分は位相からはずれるが、分析器を通過するときに強め合う干渉および弱め合う干渉と再結合する。この干渉は試料において検出可能なコントラストを生じる。氷晶は複屈折種であるため、氷晶形成はこの技術を用いて容易に検出される。標準の実験において、ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液を含む試料を、所望の温度で所望の時間冷却する。1つまたは複数の試料を、所望の温度で、偏光顕微鏡下に置き、氷晶の形成を目視検査する。
【0180】
1つの態様において、ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液の水溶液の氷点低下能力を、熱ヒステリシス活性を定量するための示差走査熱量測定を用いてスクリーニングする。示差走査熱量測定は、試料および参照の温度を高めるのに必要とされる熱の量の差を温度の関数として測定する、熱分析技術である。相転移などの物理的変換が起こると、同じ温度で両方を維持するために、参照よりも多い、または少ない熱が試料に流れる必要がある。参照および試料の相転移の間の温度の差が、0℃未満の温度で氷晶形成を低減または阻止する試料の能力について報告する。標準の実験において、ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液を含む試料を、ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液を含まない参照と比較する。
【0181】
G. 活性を試験するための細胞生存度アッセイ
関連する局面において、本発明は、ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液の、低温で細胞生存度を維持する能力を試験するための細胞生存度アッセイを提供する。
【0182】
いくつかの態様において、細胞生存度を、Thermo Fisher Scientific, Inc.が提供するalamarBlue(登録商標) Cell Viability Assay Protocolを用いて試験する。簡単に言うと、alamarBlue(登録商標)は、青色で実質的に非蛍光の非毒性細胞透過性化合物であるレサズリン(7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オン10-オキシド)の商標である。細胞に侵入後、レサズリンは、赤色で高度に蛍光性の化合物であるレゾルフィンに還元される。生細胞はレサズリンをレゾルフィンへと持続的に変換し、細胞周囲の培地の全体の蛍光および色を増大させる。非生細胞はレサズリンをレゾルフィンに変換せず、したがって細胞周囲の培地の全体の蛍光および色は試料中の生細胞の相対量の指標となる。標準の実験において、細胞ならびにペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液を、任意の適切な容器内で混合する。次いで、混合物を所望の0℃未満の温度に冷却し、所望の時間維持する。次いで、細胞を周囲温度に戻し、almarBlue(登録商標)試薬を加え、インキュベートし、Thermo Fisherのプロトコルに従って測定する。典型的には、細胞生存度の直接読み出しを、波長λEx約560nm/λEm約590nmで試料の相対的蛍光を測定することにより判定する。
【0183】
いくつかの態様において、細胞生存度を、Thermo Fisher Scientific, Inc.が提供する哺乳動物細胞のためのLIVE/DEAD(登録商標) Viability/Cytotoxicity Kitを用いて試験する。このキットは2つの指標分子:カルセインAMおよびエチジウムホモドイマー-1(EthD-1)を用いる。生細胞を、実質的に非蛍光の細胞透過性カルセインAMの強度蛍光性カルセインへの酵素的変換により判定する、遍在性細胞内エステラーゼ活性の存在により識別する。ポリアニオン性色素カルセインは生細胞内でよく保持され、生細胞中で強い均質な緑色蛍光を生じる(λEx約495nm/λEx約515nm)。反対に、EthD-1は膜が損傷した細胞に侵入し、核酸に結合した後、蛍光の40倍の増強を起こし、それにより死細胞中で明るい赤色蛍光を生じる(λEx約495nm/λEm約635nm)。注目すべきことに、EthD-1は生細胞の無傷の形質膜により排除され、したがって生細胞および死細胞の判定は容易に識別可能である。カルセインおよびEthD-1は通常のフルオレセインロングパスフィルターで同時に見ることができる。または、これらの色素からの蛍光は別々に観察してもよい;カルセインは標準のフルオレセインバンドパスフィルターで見ることができ、EthD-1はヨウ化プロピジウムまたはTexas Red(登録商標)色素用のフィルターで見ることができる。標準の実験において、細胞ならびにペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液を任意の適切な容器内で混合する。次いで、混合物を所望の0℃未満の温度に冷却し、その温度で所望の時間維持し、次いで周囲温度に戻す。カルセインAMおよびEthD-1試薬の添加ならびにアッセイ結果の測定を含むその後の段階を、Thermo Fisherのプロトコルに記載のとおりに実施する。典型的には、細胞生存度の直接読み出しを、相対的蛍光を両方の試薬について前記波長で測定することにより判定する。
【0184】
いくつかの態様において、MTTアッセイを用いて細胞生存度を試験する。MTTアッセイは、黄色のテトラゾリウムMTT(臭化3-(4,5-ジメチルチアゾリル-2)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム)が、紫色を有する不溶性ホルマザンへ還元することに依る、比色細胞生存度および増殖アッセイである。テトラゾリウム色素還元は、代謝的に活性細胞のサイトゾル区画に主に局在する、NAD(P)H依存性酸化還元酵素に依存する。MTTアッセイは、例えば、ATCC(www.atcc.org)またはSigma-Aldrich(www.sigmaaldrich.com)から利用可能である。標準の実験において、細胞ならびにペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、および/または凍結保護剤溶液を、任意の適切な容器内で混合する。次いで、混合物を所望の0℃未満の温度に冷却し、所望の時間維持する。次いで周囲温度に戻し、MTT試薬を加え、インキュベートし、ATCCおよびSigma-Aldrichのプロトコルに従って測定する。典型的には、変換された色素の吸光度を570nmの波長で、630~690nmでバックグラウンドを差し引いて測定する。
【実施例】
【0185】
IV. 実施例
以下の実施例を、特許請求する発明を例示するために提供するが、限定のためではない。
【0186】
実施例1. ペプトイド仲介性の、氷晶形成の阻止
本実施例は、N-置換ペプトイドポリマーおよびペプトイド-ペプチドハイブリッドの0℃未満の温度での氷晶阻止特性を例示する。
【0187】
毛細管アッセイ
この実験において、4つの水性試料を、MilliQ精製水を含む毛細管中で調製した。1つの試料は水だけを含み、もう1つの試料は160mMエチレングリコール(EG)を含んでいた。他の2つの試料はそれぞれ9mMのペプトイドポリマーを含んでいた。ペプトイドポリマー試料の1つは「化合物1」と呼ぶペプトイドポリマーを含み、一方で他の試料は「化合物10」と呼ぶペプトイドポリマーを含んでいた。ペプトイドポリマーの配列は以下のとおりである:
。これらの化合物の化学構造を表2に提供する。
【0188】
試料調製後、すべての試料をゆっくり冷却し、Peltier冷却プレート上、-20℃でインキュベートした。1時間後、試料を取り出し、180倍のStereo Zoom顕微鏡に取り付けたデジタルカメラを用いてただちに撮影した(
図2A)。水およびEG試料は有意な氷晶形成を示したが、EG試料は水だけの試料よりも氷形成は少なかった。これとは対照的に、ペプトイドポリマー化合物を含む試料はどれも有意な氷晶形成を示さなかった。正規化データを
図2Bに示す。注目すべきことに、ペプトイド試料濃度よりも約18倍高いCPA濃度を含むEG試料は、なお有意な氷晶形成を示したが、ペプトイド試料は示さなかった。
【0189】
結晶学的x線回折アッセイ
ライブラリ分析の処理量を高めるために、結晶学的x線回折(XRD)技術を用いて、氷晶形成を評価した。これらの実験のために、「化合物2」、「化合物8」、「化合物10」、「化合物11」、「化合物12」、「化合物13」、および「化合物58」なる名称の化合物を試験した。化合物2、8、10、11、12、および13はペプトイドポリマーで、その構造を表2に提供する。化合物58はペプトイド-ペプチドハイブリッドで、その構造を表10に提供する。化合物58は、アルギニンアミノ酸がN末端に付加されていること以外は、化合物12と同様である。
【0190】
これらの実験のために、15体積%~30体積%のEG濃度を用いた。典型的には、EG、DMSO、および他の凍結保護剤をXRD試料分析中に35~40体積%の濃度で用いて、溶液をガラス化し、氷晶からの回折干渉を回避した。1および5mg/mLの濃度のペプトイドおよびペプトイド-ペプチド化合物を用いた。
図3A、3B、および3Cは、それぞれ完全ガラス化、角氷が存在する部分ガラス化、および凍結(角氷晶)の条件下での例示的XRDデータを示す。化合物8、10、11、12、13、および58のXRDデータを
図4A~4Gおよび
図5A~5Gに提供する。
図3Dは、様々なEG濃度および化合物2、8、および12の2つの濃度のアイスリングスコアを提供する。
【0191】
試験溶液試料セットのいくつかの混合物は、強い氷結防止効果を示した。
図3Dは、EGと比べてのいくつかのペプトイドポリマー溶液の実験結果を示す。「アイスリング1」および「アイスリング2」は氷形成スコアを意味し、これは0(氷形成なし)から15(大きい氷形成)の範囲である。化合物2、12、および8ならびにその他は、必要なEG濃度を有意に低下させた一方で、氷形成を防止した。
【0192】
水中5mg/mL(0.5%(w/v))の濃度の化合物12および17.5体積%の濃度のEGを含む試料は、急速凍結後に氷結しなかった。この特定の混合物は、液体窒素蒸気流中での急速凍結の複数回の試行を通してすべての氷形成を完全に除去し(
図3A)、30%EGの標準溶液よりも大幅にすぐれている(
図3B)ことが判明した。図中、黒い点およびリングは氷晶を表す。同じモル濃度のEGと比べて、この氷結防止効果は500倍強く、いかなる特定の理論にも縛られることなく、天然の不凍タンパク質によって用いられるメカニズムである、氷結防止の非束一的メカニズムを示唆する。
【0193】
より大量のアッセイ
より大規模での本発明の組成物の有用性を試験するために、標準の卵および幹細胞保存に用いられる量と同様の溶液量を用いて、実験を実施した。これらの実験のために、1つは22.5%EGおよび緩衝液だけを含み、もう1つは22.5%EGおよび5mg/ml(0.5%w/v)の化合物12および緩衝液を含む、2つの試料を液体窒素中で急速凍結した。
図6Aに示すとおり、化合物12溶液は、液体窒素から取り出した直後、氷形成を伴わない完全なガラス化を示した一方、対照溶液は明らかに凍結し、白い氷晶の塊を生じた。37℃の水浴中で溶液を再加温すると、予想外の有益な結果につながった。化合物12溶液は再加温後2秒未満で脱ガラス化を回避した(
図6B、右)が、20秒後の対照試料中には氷の塊が浮いているのが見られた(
図6B、左)。チューブは実際にはまだ室温よりもはるかに低かったため、各チューブ上で凝結が見られた。この結果は、化合物12は解凍中の活性な除氷剤として作用することを示す。
【0194】
さらに、-20℃のフリーザーに100μL試料を終夜放置した後、化合物12溶液は未凍結であることが判明した(
図6C、右)。この結果は、本発明の組成物が0℃未満の温度で長期間、いかなる氷形成もなしに、試料を保存する能力を提供することを示している。さらに、これらの実験は、本発明の化合物を組み込むことにより、-20℃での低温凍結保存または超冷却法でならびに-80℃に至るほぼガラス化において無氷状態を達成して、透過性CPAの臨界濃度を有意に低下させ、凍結保存毒性を軽減し得ることを示している。
【0195】
ここで示すとおり、化合物12の製剤は、ミリリットル未満の量でのガラス化中に氷形成を防止することが判明した。事実、溶液は-20℃で完全に未凍結のまま残ることができ、-196℃で急速凍結すると、ガラス化することもできた。現在、体外受精のための標準的なヒト卵細胞保存技術は、50%以上の凍結保護剤濃度を用いる一方で、5μL未満(多くの場合0.5~2.5μL)の溶液量に限定されている。したがって、化合物12は実際的な量で、非常に少ない凍結保護剤により氷形成を防止することができ、これにより、例えば、体外受精のためのヒト卵母細胞を保存するために有用となる。
【0196】
実施例2. 細胞毒性および凍結保存スクリーニング
本実施例は、本発明の組成物が細胞毒性をほとんどまたはまったく有さず、既存の化合物と比べるとすぐれた凍結保存を達成し得る一方で、CPAの必要量を低減し、したがってCPA関連毒性を低減することを示す。
【0197】
細胞毒性アッセイ
本発明の凍結保護剤組成物の安全性を示すために、組織培養中でヒト胚腎細胞から増殖させた丈夫で強健な幹細胞株であるHEK 293細胞株を用いて、高処理量の細胞ベース細胞毒性アッセイを開発した。
【0198】
Tecan Genesis Robotic Workstationを用いて96穴および384穴プレート中で溶液を調製した。溶液は培養液、緩衝液、本発明の凍結保護剤組成物(化合物12)またはDMSOを含んでいた。溶液を所望のpHに調節した。連続希釈を行って、様々な濃度の化合物12およびDMSOを含む溶液を得た。対照実験は培養液だけを用いて実施した。
【0199】
これらの実験のために、細胞を低密度(すなわち、10%コンフルエンス)で播種し、化合物12またはDMSOを含む溶液に曝露し、37℃のインキュベーター内に置いた。空の媒体だけで処理した対照細胞が70%コンフルエンスに近づくまで(典型的には約3~5日間)細胞を増殖させた。化合物の細胞毒性の評価をMTTアッセイにより行った。
【0200】
図7に見られるとおり、MTTアッセイにより分析した場合、化合物12の毒性は培養液だけのものから有意に逸脱していなかった。一方、DMSOは0.5体積%よりも高いいかなる濃度でも、長期間の生存を可能にしなかった。注目すべきことに、化合物12は、非生体試料で氷形成を防止し得る濃度(0.5%w/v)で毒性を示さず、この濃度よりも4倍高い濃度でも有意な毒性を示さなかった。
【0201】
これらの結果は、DMSO毒性が細胞生存を有意に低減する濃度においても、本発明の組成物が氷防止に有効であったことを示す。
【0202】
凍結保存アッセイ
最初の凍結保存アッセイは、混乱させる外部因子を最小限にするために、化合物12を加えた、および加えていない、非常に単純な溶液を用いて実施した。この第一の実験セットのために、2つの試料溶液を調製した。第一の試料溶液は単純な緩衝液および22.5体積%の濃度のエチレングリコール(EG)を含み、第二の試料溶液は単純な緩衝液、EG(22.5体積%)、および5mg/mL(0.5%(w/v))の化合物12を含んでいた。
【0203】
HEK 293細胞を70%コンフルエントになるまで増殖させ、次いでトリプシンで処理して接着タンパク質を除去し、浮遊細胞を得た。細胞を血球計算器を用いて計数し、試料細胞濃度を1マイクロリットルあたり10,000細胞の最終濃度に調節した。次いで、細胞を遠心沈降で圧縮して堅いペレットとし、続いて各試料を20μLの試料溶液の1つと混合した。次いで、試料を液体窒素に浸漬して急速凍結し、続いて37℃の水浴中で再加温した。凍結-解凍工程の後、細胞を回収するために400倍量の培養液中に懸濁した。陽性対照試料は37℃で培養液により処理し、凍結-解凍工程には供さなかった。陰性対照試料は、凍結-解凍工程中に培養液だけで処理した。回収後、細胞をカルセインAMで30分間染色し、細胞生存度を蛍光プレート読み取り器を用いて測定した。
【0204】
図8に示すとおり、化合物12を加えると、細胞生存が大きく改善され、この化合物の細胞を凍結保存する能力が示された。化合物12を含む試料は、凍結工程中に氷形成することなく完全なガラス化を達成することが観察された。加えて、脱ガラス化の工程は、化合物12を含まない試料に比べて、はるかに迅速に回避された。
【0205】
第二の実験セットを、5mg/mLの化合物12とグリコール、二糖、および一般的緩衝液の混合物を含む製剤の凍結保存能力を評価するために実施した。液体窒素中でのガラス化に続く解凍後の生存を、前述のとおりに評価した。
図9に見られるとおり、製剤はほぼ100%(すなわち、98%)の細胞の解凍後生存を達成し、これは凍結処理に曝露しなかった対照群と同様であった。細胞の形態および蛍光シグナルは非凍結対照と同じに見え、実験中の細胞にほとんど損傷は起こらないことを示した。
【0206】
第二の実験セットの一部として、製剤の凍結保存能力を2つの公知の凍結保存試薬と比較した。VS2Eは化学的に定義されていないポリマーを含む無DMSOおよび無血清溶液(例えば、Nishigaki et al. Int. J. Dev. Biol. 55:3015-311 (2011)参照)であり、M22は21
st Century Medicineから入手可能な臓器ガラス化溶液である。
図9は、VS2EおよびM22での細胞生存がそれぞれ72%および51%であったことから、化合物12を含む製剤がすぐれた凍結保存を達成したことを示す。M22試料について、画像における生細胞の数は51%よりもはるかに少ない細胞が生存することを示唆したため、バックグラウンド蛍光がこの結果をゆがめた可能性があることに留意すべきである。
【0207】
本発明の組成物は、有意に少ないエチレングリコールを含む溶液中で氷形成を防止するのに非常に有効であった。特に、低濃度の組成物(例えば、0.5%(w/v))は、様々な種類の細胞を保存するのに有用な規模である20uL規模で、ガラス化中の氷成長を防止するため、および溶液を無氷状態の液体に維持するために十分であった。
【0208】
まとめると、これらの結果は、本発明の組成物がすぐれた凍結保存を達成し、CPAの必要量を低減し、したがってCPAに関連する細胞毒性を低減し得ることを示す。本発明の組成物のすぐれた特性は、特定の感受性細胞株の処理のために、および/または細胞をより長期間培養しなければならない場合に、特に有用である。
【0209】
V. 例示的態様
本開示の主題に従って提供される例示的態様には、特許請求の範囲および以下の態様が含まれるが、それらに限定されない。
1. 式(I)のペプトイドポリマー、その互変異性体またはその立体異性体:
式中:
各R
1は独立して、H、置換されていてもよいC
1-18アルキル、置換されていてもよいC
2-18アルケニル、置換されていてもよいC
2-18アルキニル、置換されていてもよいC
1-18 ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいC
1-18アルキルアミノ、置換されていてもよいC
1-18アルキルチオ、置換されていてもよいカルボキシアルキル、C
3-10シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C
3-10シクロアルキル)アルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリールアルキル、およびヘテロアリールアルキルからなる群より選択され、
ここでR
1の少なくとも1つの実例はC
1-18ヒドロキシアルキルであり、かつ
ここで任意のシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール基は独立して、1つまたは複数のR
3基で置換されていてもよく;
各R
2は独立して、H、置換されていてもよいC
1-18アルキル、置換されていてもよいC
2-18アルケニル、置換されていてもよいC
2-18アルキニル、置換されていてもよいC
1-18ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいC
1-18アルキルアミノ、置換されていてもよいC
1-18アルキルチオ、および置換されていてもよいカルボキシアルキルからなる群より選択され;
各R
3は独立して、ハロゲン、オキソ、チオキソ、-OH、-SH、アミノ、C
1-8アルキル、 C
1-8ヒドロキシアルキル、C
1-8アルキルアミノ、およびC
1-8アルキルチオからなる群より選択され;
XおよびYは独立して、H、置換されていてもよいC
1-8アルキル、置換されていてもよいC
1-8アシル、置換されていてもよいC
1-8アルキルアミノ、-OH、-SH、-NH
2、カルボキシ、置換されていてもよいC
1-8ヒドロキシアルキル、置換されていてもよいC
1-8アルキルアミノ、置換されていてもよいC
2-8アルキルチオ、置換されていてもよいC
1-8カルボキシアルキル、およびハロゲンからなる群より選択されるか、または
代わりにXおよびYは一緒に共有結合を形成し;かつ
下付き文字nは、ポリマー中のモノマーの数を表して、2~50であり;
ただしnが3~7である場合、R
1のすべての実例はヒドロキシエチルではないことを条件とする。
2. 各R
1が独立して、下記からなる群より選択される、態様1のペプトイドポリマー
式中:
mは1~8であり;かつ
R
3は、H、C
1-8アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、アミン、オキソ、およびチオキソからなる群より選択される。
3. 1つまたは複数のR
1が、R
1a:
の構造を有する、態様2のペプトイドポリマー。
4. 各R
1a基が独立して、
から選択される、態様3のペプトイドポリマー。
5. 各R
1a基が、
である、態様3のペプトイドポリマー。
6. 各R
1a基が、
である、態様3のペプトイドポリマー。
7. 1つまたは複数のR
1が、R
1b:
の構造を有する、態様2のペプトイドポリマー。
8. 各R
1b基が独立して、
から選択される、態様7のペプトイドポリマー。
9. 各R
1b基が、
である、態様7のペプトイドポリマー。
10. 各R
1b基が、
である、態様7のペプトイドポリマー。
11. 各R
1が独立して、下記からなる群より選択される、態様1のペプトイドポリマー
。
12. R
1の各実例が、独立に選択されたC
1-18ヒドロキシアルキル基である、態様1のペプトイドポリマー。
13. R
1の各実例が、独立に選択されたC
1-6ヒドロキシアルキル基である、態様12のペプトイドポリマー。
14. R
1の各実例が、同じC
1-6ヒドロキシアルキル基である、態様13のペプトイドポリマー。
15. R
1の各実例が、
である、態様14のペプトイドポリマー。
16. R
2の各実例がHである、態様1~15のいずれかのペプトイドポリマー。
17. nが3~25である、態様1~16のいずれかのペプトイドポリマー。
18. nが8~50である、態様1~16のいずれかのペプトイドポリマー。
19. nが8~20である、態様1~16のいずれかのペプトイドポリマー。
20. Xが、H、C
1-8アルキル、およびC
1-8アシルからなる群より選択され;かつYが、-OHおよびアミノからなる群より選択される、態様1~19のいずれかのペプトイドポリマー。
21. XおよびYが一緒に共有結合を形成する、態様1~19のいずれかのペプトイドポリマー。
22. nが10であり、かつ
ペプトイドポリマーが:
3つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび7つのNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー;または
5つのNhpモノマーおよび5つのNsbモノマー;または
6つのNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー;または
7つのNhpモノマーおよび3つのNsbモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび2つのNsbモノマー;または
10のNhpモノマー
を含む、
態様1のペプトイドポリマー。
23. 配列
を有し;
XがHまたはC
1-8アシルであり;かつYが-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである、
態様22のペプトイドポリマー。
24. 配列
を有し;
XがHまたはC
1-8アシルであり;かつYが-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである、
態様22のペプトイドポリマー。
25. 配列
を有し;
XがHまたはC
1-8アシルであり;かつYが-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである、
態様22のペプトイドポリマー。
26. 配列
を有し;
XがHまたはC
1-8アシルであり;かつYが-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである、
態様22のペプトイドポリマー。
27. 配列
を有し;
XがHまたはC
1-8アシルであり;かつYが-OHまたは-NH
2またはC
1-8アルキルである、
態様22のペプトイドポリマー。
28. 表2に示す配列を有する、態様22のペプトイドポリマー。
29. nが10であり、かつ
ペプトイドポリマーが:
3つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび7つのNme(2-(メチルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNmeモノマー;または
5つのNhpモノマーおよび5つのNmeモノマー;または
6つのNhpモノマーおよび4つのNmeモノマー;または
7つのNhpモノマーおよび3つのNmeモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび2つのNmeモノマー
を含む、
態様1のペプトイドポリマー。
30. 表3に示す配列を有する、態様29のペプトイドポリマー。
31. nが10であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
5つのNhe(2-((2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸)モノマーおよび5つのNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
5つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび5つのNbu(2-ブチルアミノ)酢酸)モノマー
を含む、
態様1のペプトイドポリマー。
32. 表4に示す配列を有する、態様31のペプトイドポリマー。
33. nが10であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
4つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび6つのNib(2-(イソブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNbu(2-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNpr(2-プロピルアミノ)酢酸)モノマー;または
4つのNhpモノマーおよび6つのNip(2-(イソプロピルアミノ)酢酸)モノマー
を含む、
態様1のペプトイドポリマー。
34. 表5に示す配列を有する、態様33のペプトイドポリマー。
35. nが14であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
6つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび8つのNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
7つのNhpモノマーおよび7つのNsbモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー;または
10のNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー;または
14のNhpモノマー
を含む、
態様1のペプトイドポリマー。
36. 表6に示す配列を有する、態様35のペプトイドポリマー。
37. nが14であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
6つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび8つのNib(2-(イソブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
7つのNhpモノマーおよび7つのNibモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび6つのNibモノマー;または
10のNhpモノマーおよび4つのNibモノマー;または
14のNhpモノマー
を含む、
態様1のペプトイドポリマー。
38. 表7に示す配列を有する、態様37のペプトイドポリマー。
39. nが16であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
5つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび11のNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
7つのNhpモノマーおよび9つのNsbモノマー;または
8つのNhpモノマーおよび8つのNsbモノマー;または
10のNhpモノマーおよび6つのNsbモノマー;または
12のNhpモノマーおよび4つのNsbモノマー;または
16のNhpモノマー
を含む、
態様1のペプトイドポリマー。
40. 表8に示す配列を有する、態様39のペプトイドポリマー。
41. nが22であり;かつ
ペプトイドポリマーが:
7つのNhp(2-((2-ヒドロキシプロピル)アミノ)酢酸)モノマーおよび15のNsb(2-(sec-ブチルアミノ)酢酸)モノマー;または
10のNhpモノマーおよび12のNsbモノマー;または
11のNhpモノマーおよび11のNsbモノマー;または
14のNhpモノマーおよび8つのNsbモノマー;または
17のNhpモノマーおよび5つのNsbモノマー;または
22のNhpモノマー
を含む、
態様1のペプトイドポリマー。
42. 表9に示す配列を有する、態様41のペプトイドポリマー。
43. ヘリックス構造を形成する、態様1~42のいずれかのペプトイドポリマー。
44. 約0℃~約-20℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する、態様1~43のいずれかのペプトイドポリマー。
45. 約-20℃~約-40℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する、態様1~43のいずれかのペプトイドポリマー。
46. 約-20℃で氷晶形成を低減または阻止する、態様1~43のいずれかのペプトイドポリマー。
47. 約-40℃~約-200℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止する、態様1~43のいずれかのペプトイドポリマー。
48. 態様1~47のいずれかのペプトイドポリマーと1つまたは複数のアミノ酸とを含むペプトイド-ペプチドハイブリッドであって、該1つまたは複数のアミノ酸が、該ペプトイドポリマーの一端もしくは両端および/または1つもしくは複数のペプトイドモノマーの間に位置する、ハイブリッド。
49. 1つまたは複数のアミノ酸が、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、アルギニン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、チロシン、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様48のペプトイド-ペプチドハイブリッド。
50. 1つまたは複数のアミノ酸が、イソロイシン、ロイシン、セリン、スレオニン、アラニン、バリン、アルギニン、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様48のペプトイド-ペプチドハイブリッド。
51. 態様1~47のいずれかのペプトイドポリマー、態様48~50のいずれかのペプトイド-ペプチドハイブリッド、またはその組み合わせを含む、凍結保護剤溶液。
52. イオン種、透過性凍結保護剤、非透過性凍結保護剤、抗酸化剤、細胞膜安定化化合物、アクアポリンまたは他のチャネル形成化合物、アルコール、糖、糖誘導体、非イオン性界面活性剤、タンパク質、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、フィコール(登録商標)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒアルロナン、ホルムアミド、天然または合成ヒドロゲル、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物をさらに含む、態様51の凍結保護剤溶液。
53. アルコールが、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、メタノール、ブチレングリコール、アドニトール、エタノール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エリスリトール、ソルビトール、キシシリトール(xythyritol)、ポリプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、マンニトール、イノシトール、ジチオリトール(dithioritol)、1,2-プロパンジオール、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様52の凍結保護剤溶液。
54. 糖が単糖である、態様52の凍結保護剤溶液。
55. 単糖が、グルコース、3-O-メチル-D-グルコピラノース、ガラクトース、アラビノース、果糖、キシロース、マンノース、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様54の凍結保護剤溶液。
56. 糖が二糖である、態様52の凍結保護剤溶液。
57. 二糖が、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様56の凍結保護剤溶液。
58. 糖が多糖である、態様52の凍結保護剤溶液。
59. 多糖が、ラフィノース、デキストラン、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様58の凍結保護剤溶液。
60. PEGが約1,000g/mol未満の平均分子量を有する、態様52の凍結保護剤溶液。
61. PEGが約200~400g/molの平均分子量を有する、態様52の凍結保護剤溶液。
62. タンパク質が、卵アルブミン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、ゼラチン、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様52の凍結保護剤溶液。
63. 天然または合成ヒドロゲルが、キトサン、ヒアルロン酸、またはその組み合わせを含む、態様52の凍結保護剤溶液。
64. 非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリソルベート80、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様52の凍結保護剤溶液。
65. 組織、臓器、または細胞を保存するための方法であって、組織、臓器、または細胞を、態様1~47のいずれかのペプトイドポリマー、態様48~50のいずれかのペプトイド-ペプチドハイブリッド、態様51~64のいずれかの凍結保護剤溶液、またはその組み合わせと接触させる段階を含む、方法。
66. ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせが、約0℃~約-20℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する、態様65の方法。
67. ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせが、約-20℃~約-40℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する、態様65の方法。
68. ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせが、約-20℃で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する、態様65の方法。
69. ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、凍結保護剤溶液、またはその組み合わせが、約-40℃~約-200℃の範囲内の温度で氷晶形成を低減または阻止するのに十分な量で存在する、態様65の方法。
70. 組織が、生物工学によって作製された組織である、態様65~69のいずれかの方法。
71. ペプトイドポリマー、ペプトイド-ペプチドハイブリッド、またはその組み合わせが、約100nM~約100mMの量で存在する、態様65~70のいずれかの方法。
72. 組織、臓器、または細胞が、心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、腸、胸腺、角膜、神経細胞、血小板、精細胞、卵母細胞、胚細胞、幹細胞、ヒト多能性幹細胞、造血幹細胞、リンパ球、顆粒球、免疫系細胞、骨細胞、原形質類器官、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様65~71のいずれかの方法。
73. 生体高分子を保存するための方法であって、生体高分子を、態様1~47のいずれかのペプトイドポリマー、態様48~50のいずれかのペプトイド-ペプチドハイブリッド、態様51~64のいずれかの凍結保護剤溶液、またはその組み合わせと接触させる段階を含む、方法。
74. 生体高分子が、核酸、アミノ酸、タンパク質、単離タンパク質、ペプチド、脂質、複合構造物、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様73の方法。
75. 態様1~47のいずれかのペプトイドポリマー、態様48~50のいずれかのペプトイド-ペプチドハイブリッド、態様51~64のいずれかの凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む、美容ケア製品。
76. 態様1~47のいずれかのペプトイドポリマー、態様48~50のいずれかのペプトイド-ペプチドハイブリッド、態様51~64のいずれかの凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む、不凍製品。
77. 物体上の氷の形成を防止する、阻止する、または遅延させるために用いられる除氷または氷結阻止製品である、態様76の不凍製品。
78. 物体が、航空機またはその一部、ガスパイプライン、窓、電気機器、ドローン、ケーブル、送電線、機械設備、自動車エンジン、ギア装置、およびブレーキ装置からなる群より選択される、態様77の不凍製品。
79. 態様1~47のいずれかのペプトイドポリマー、態様48~50のいずれかのペプトイド-ペプチドハイブリッド、態様51~64のいずれかの凍結保護剤溶液、またはその組み合わせを含む、冷凍食品製品。
80. アイスクリーム、ヨーグルト、海産物、果物、および肉製品からなる群より選択される、態様79の冷凍食品製品。
【0210】
本明細書において例示し、論じる態様は、本発明を作製し、使用するための、発明者らが知る最良のやり方を当業者に教示することを意図するにすぎない。本明細書におけるなにものも本発明の範囲を限定すると考えられるべきではない。示したすべての例は代表例であって限定ではない。本発明の前述の態様は、前述の教示に照らして当業者には理解されるとおり、本発明から逸脱することなく改変または変更され得る。したがって、特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内で、本発明を、具体的に記載した以外で実施し得ることが理解される。本明細書において引用するすべての出版物、特許、および特許出願は、それぞれ個々の出版物、特許、および特許出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み入れられると示されたがごとく、参照により本明細書に組み入れられる。
【0211】