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特許7011834ホースラディッシュペルオキシダーゼ-IGG融合タンパク質の産生
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ホースラディッシュペルオキシダーゼ-IGG融合タンパク質の産生
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220203BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220203BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220203BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 5/14 20060101ALI20220203BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 9/08 20060101ALI20220203BHJP
   A01H 5/00 20180101ALN20220203BHJP
   A01H 6/82 20180101ALN20220203BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13
C07K19/00
C07K16/00
C12N5/14
C12P21/02 C
C12N9/08
A01H5/00 A
A01H6/82
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018562006
(86)(22)【出願日】2017-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 IB2017053029
(87)【国際公開番号】W WO2017203426
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-01-31
(31)【優先権主張番号】1609235.5
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515201671
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オブ ケープタウン
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ アン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ライビッキー エドワード ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヒッツェロート インガ イザベル
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-513398(JP,A)
【文献】Protein Expr Purif., 1999, vol. 16, no. 1, pp. 63-69
【文献】J Immunol Methods., 2010 Aug 6, vol. 361, pp. 57-63
【文献】J. Biochem., 1997, vol. 122, pp. 322-329
【文献】Mol Biol Rep., 2013 Nov 12, vol. 40, no. 12, pp. 7027-7037
【文献】PLoS One, 2013 Aug 15, vol. 8, no. 8, article no. e68772 (pp. 1-9)
【文献】Biotechnol Adv., 2012, vol. 30, no. 6, pp. 1614-1626 (Epub 2012 Jun 28)
【文献】BMC Biotechnol., 2006 Dec 7, vol. 6, article no. 46 (pp. 1-15)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ホースラディッシュペルオキシダーゼをコードするポリペプチドと、
(ii)ペプチドリンカーと、
(iii)scFvをコードするポリペプチドと、
(iv)小胞体残留シグナルと、
(v)ヒスチジンタグと、
を含む、植物又は植物細胞から回収された融合タンパク質。
【請求項2】
式:
-X-X-(X-X (I)
を有する融合タンパク質、あるいは、
式:
-X-X-(X-X (II)
を有する、植物又は植物細胞から回収された融合タンパク質
(式中、Xは、ホースラディッシュペルオキシダーゼをコードするポリペプチドであり、Xは、ペプチドリンカーであり、Xは、scFvをコードするポリペプチドであり、Xは、小胞体残留シグナルであり、Xは、ヒスチジンタグであり、nは、0又は1である)。
【請求項3】
前記ホースラディッシュペルオキシダーゼをコードするポリペプチドは、N末端小胞体ターゲティング配列を含む、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記scFvは、抗マウス、抗ロバ、抗ウサギ、抗ウマ、抗ヒト、抗ニワトリ、抗ヤギ又は抗ヒツジ活性からなる群から選択される免疫グロブリン結合活性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記scFvは、抗ウサギ免疫グロブリン結合活性を有する、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記小胞体残留シグナルは、HDEL、KDEL、SEKDEL又はそれらの変異体からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記ヒスチジンタグは、6×ヒスチジンタグである、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
ヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトIgG1軽鎖定常領域を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、植物又は植物細胞に発現させるための核酸分子。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸分子を含む、植物又は植物細胞のための発現ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載の発現ベクターで形質転換された植物細胞。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質を産生する方法であって、植物細胞において該融合タンパク質を発現させることと、該融合タンパク質を、該植物細胞から回収することとを含む、方法。
【請求項13】
前記植物細胞は、ニコチアナ種の植物細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質又は請求項10に記載の発現ベクターを備えるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドリンカーによって、ホースラディッシュペルオキシダーゼ酵素に、又はアルカリホスファターゼ酵素に連結されたscFvからなる融合タンパク質に関する。該融合タンパク質はまた、ヒスチジンタグ、及び任意で、小胞体残留シグナルを含む。本発明はまた、該融合タンパク質をコードする核酸、該核酸を含有する発現ベクター、該発現ベクターで形質転換された植物細胞及び本発明の融合タンパク質を産生する方法を含む。
【背景技術】
【0002】
セイヨウワサビ(アルモラシア・ルスチカナ(Armoracia rusticana)、同義語コクレアリア・アルモラシア(Cochlearia armoracia))は、アブラナ科の多年草である(同様に、アブラナ科には、カラシナ、ワサビ、ブロッコリー、及びキャベツが含まれる)。セイヨウワサビは、香辛料として使用される根菜である。
【0003】
ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)は、セイヨウワサビ(アルモラシア・ルスチカナ)の根から単離される酵素であり、ペルオキシダーゼのフェロプロトポルフィリン群に属する。HRPタンパク質は、4つのジスルフィド架橋を含有する単鎖ポリペプチドである。
【0004】
HRP酵素は、主に、弱いシグナルを増幅して、標的分子の検出能を高めるその能力のため、生化学用途で広範囲にわたって使用される。HRP酵素は、多くのアイソフォームを有する金属酵素であり、そのうちの最も研究されているアイソフォームは、C型である。
【0005】
HRPは、分子にコンジュゲートさせることができる6つのリジン残基を有する44173.9ダルトンの糖タンパク質である。HRPは、適正な基質とともにインキュベートすると、コンジュゲートされた分子の有色、蛍光又は発光誘導体を産生して、それを検出及び定量化することが可能となる。
【0006】
アルカリホスファターゼ(AP)は、その触媒機能に重要な2つの亜鉛原子を含有する86キロダルトンのホモ二量体タンパク質酵素である。モノマーはそれぞれ、1つの亜鉛原子を含む。APは、アルカリ性pHで活性を有する。
【0007】
APは、原核生物及び真核生物を含む多くの生物において見いだされている。各種形態は、同じ一般的な機能を有するが、機能する環境に適した異なる構造形態を有し得る。
【0008】
HRP若しくはAP酵素、又はそれらのコンジュゲートの存在は、酸化剤として過酸化水素を使用してHRP又はAPによって酸化される場合に、分光光度法によって検出可能な特徴的な変化をもたらす基質を使用して、可視状態になる。
【0009】
HRPはまた、その単量体の性質及び有色産物を産生する容易さに起因して、ELISA及び免疫組織化学検査等の技法において一般的に使用される。伝統的には、市販のHRP又はAP標識二次抗体は通常、HRP又はAPの、抗体への化学的標識によって作製される。このことは、産物の不均一な組成、並びにHRP又はAP及び抗体の活性の低減をもたらすことがあり、化学量論は、多くの場合、マーカータンパク質対抗体の所望の1:1の比ではなく、それらの全てが、ELISA及びウェスタンブロットの特異度及び感度に影響を及ぼす。組換えにより産生されるマーカー-抗体産物の遺伝子融合及び発現を用いて、これらの問題は改善される。考え得る解決法は、大腸菌(E. coli)において融合タンパク質を産生することであるが、これに伴う問題は、産物が可溶性ではないこと、大腸菌における翻訳後グリコシル化の欠如が、封入体における発現された組換えタンパク質の凝集を招き、その結果として、HRP活性を妨害することである。溶解度の問題を改善するためにピキア・パストリス(Pichia pastoris)において遺伝的に融合された組換えHRP-抗体(アトラジンに対する抗体のFab断片(非特許文献1))を産生する幾つかの研究が行われている。
【0010】
本発明は、上述のFab断片よりもはるかに小さい抗体の領域である単鎖可変断片(scFv)に融合されたマーカータンパク質(HRP又はAP)からなる組換え融合産物の産生をもたらす。さらに、本発明は、植物において産生される融合タンパク質に依存する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Koliasnikov et al 2011
【発明の概要】
【0012】
本発明は、ペプチドリンカーによって、ホースラディッシュペルオキシダーゼ酵素に、又はアルカリホスファターゼ酵素に連結されたscFvからなる融合タンパク質に関する。該融合タンパク質はまた、ヒスチジンタグ、及び任意で、小胞体残留シグナルを含む。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼをコードするポリペプチドと、ペプチドリンカーと、scFvをコードするポリペプチドと、任意で、小胞体残留シグナルと、ヒスチジンタグとを含む融合タンパク質が提供される。
【0014】
本発明の第2の態様は、式I又は式IIから選択される式:
-X-X-(X-X (I)
-X-X-(X-X (II)
を有する融合タンパク質
(式中、Xは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼをコードするポリペプチドであり、Xは、ペプチドリンカーであり、Xは、scFvをコードするポリペプチドであり、Xは、小胞体残留シグナルであり、Xは、ヒスチジンタグであり、nは、0又は1である)を提供する。
【0015】
本発明の1つの実施の形態において、ホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼをコードするポリペプチドは、小胞体ターゲティングシグナルを含む。ホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼは、N末端小胞体ターゲティング配列を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の別の実施の形態において、scFvは、抗マウス、抗ロバ、抗ウサギ、抗ウマ、抗ヒト、抗ニワトリ、抗ヤギ又は抗ヒツジ活性から選択される免疫グロブリン活性を有する。scFvは、抗ウサギ活性を有することが好ましい。
【0017】
更なる実施の形態において、小胞体残留シグナルは、HDEL、KDEL、SEKDEL又はそれらの変異体からなる群から選択される。しかしながら、小胞体残留シグナルが、当該技術分野で既知の小胞体シグナルから選択されてもよいことは、当業者に理解されよう。
【0018】
融合タンパク質の精製を助長するために、融合タンパク質が、ヒスチジンタグを含むことは理解されよう。ヒスチジンタグは、6×ヒスチジンタグであることが好ましい。
【0019】
本発明の更なる実施の形態は、scFvに連結された、ヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトIgG1軽鎖定常領域を含むことを包含し得る。定常領域を含むことにより、Fcエフェクター機能が可能になることは理解されよう。
【0020】
本発明の第2の態様は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子を提供する。
【0021】
第3の態様は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0022】
本発明の更なる態様は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターで形質転換された植物細胞を提供する。
【0023】
本発明の更に別の態様において、本発明の融合タンパク質を産生する方法であって、植物細胞において該融合タンパク質を発現させることと、該融合タンパク質を、該植物細胞から回収することとを含む、方法が提供される。
【0024】
好ましい実施の形態において、植物細胞は、ニコチアナ種(Nicotiana sp.:タバコ属の一種)の植物細胞である。
【0025】
本発明の更なる態様は、本発明の融合タンパク質又は本明細書に記載の発現ベクターを備えるキットを提供する。
【0026】
ここで、本発明の非限定的な実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】HRP-Ig融合構築物の例示的な略図である。融合構築物は、1-ERに対するタンパク質ターゲティングに関与する自然HRP N末端シグナル配列(ERシグナル)、2-HRPの成熟部分(成熟HRPタンパク質)、3-強固なα-ヘリックスリンカー(リンカー)、4-ニワトリ由来IgY scFv(scFv)、5-ERタンパク質蓄積をもたらすSEKDEL ER残留シグナル(存在するか、又は存在しないかのいずれか)(SEKDEL)、及び6-下流のタンパク質精製用のC末端Hisタグ(his)で構成される。
図2】(A)植物により発現されたニワトリ由来IgY scFv(B2、B4及びF8)の抗ウサギIgG結合活性を確認するドットブロットを示す図である。PBS対照は、結合を示さなかった(発色なし)のに対して、比色分析の結果により、scFvがウサギIgGに結合した場合に発色が見られることがわかった。陽性対照により、scFvが植物抽出物中に存在することが確認された。(B)ドットブロットにおけるscFv活性を検出するのに使用される構成成分の略図である。まず、ウサギIgGが膜に結合され、この後、ウサギIgGを認識して、それに結合する、植物により発現されたニワトリ由来IgY scFvを添加する。続いて、結合されたscFvは、アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ニワトリIgYを使用して検出することができる。アルカリホスファターゼは、基質が添加される場合に発色に関与する。
図3】HRP_B2_SEKDEL(左側の粗製)及びHRP_B2(右側の粗製)でインフィルトレートした粗製葉抽出物におけるHRPの存在及び空の構築物(陰性)でインフィルトレートした粗製葉抽出物におけるHRPの存在の欠如を示す迅速なHRP検査を示す図である。
図4】1:2000希釈の抗L1(ガーダシル)及び1:1000希釈の抗L2ウサギ血清でプローブして、市販の抗ウサギHRP(C)又は粗製の植物により産生されたHRP_B2_SEKDEL scFvのいずれかで検出されるHPV16 L1-L2タンパク質のウェスタンブロットを示す図である。
図5】組換え構築物:pTRAc-HRP_B2_2hisを使用したN.ベンサミアナ(N. benthamiana)におけるHRP融合ニワトリ由来IgY scFv(HRP_B2_2his)発現のタイムトライアル研究を示す図である。融合タンパク質は、抗his抗体(A)、抗HRP抗体(B)又は抗ニワトリIgY抗体(C)のいずれかで検出された。植物は、インフィルトレーションの1日後(レーン1)、2日後(レーン2)、3日後(レーン3)、5日後(レーン4)及び7日後(レーン5)に試料採取した。融合タンパク質(F)は、HRP(H)及びscFvと併せて示される。
図6】HRP_B2_2 scFvを含有する粗製植物抽出物でプローブしたインフルエンザH1tr、BFDV CP及びGOx抗原のウェスタンブロットを示す図である。植物により産生された組換えscFvは、二次抗体として使用される場合に、3つ全ての抗原を検出することが可能であった。
図7】HRP_B2_2SEKDELhis発現N.ベンサミアナから抽出した総可溶性タンパク質の硫酸アンモニウム分画を示す図である。レーン:予め染色したタンパク質ラダー(M)、葉組織からの総可溶性タンパク質抽出物(1)、0%~40%の画分(2)、40%~60%の画分(3)、60%~80%の画分(4)、80%~90%の画分(5)。(A)クマシーブルー染色は、抗his抗体(B)又は抗ニワトリIgY抗体のいずれかを使用したウェスタンブロット分析と併せて、40%~60%の画分においてHRP_B2_2SEKDELhisの富化を示す(F)のに対して、60%~80%の画分において遊離scFvの蓄積を示す。
図8】HisTrapアフィニティークロマトグラフィーカラムでのHRP_B2_2_SEKDELタンパク質の精製プロファイルを示す図である。
図9】6×hisアフィニティークロマトグラフィーによって精製されたクマシー染色したHRP_B2_2_SEKDEL画分のSDS-PAGEを示す図である。
図10】抗6×his抗体(1:1000)を使用したアフィニティークロマトグラフィーによって精製されたHRP_B2_2_SEKDEL画分のウェスタンブロットを示す図である。
図11】市販の抗ウサギHRP二次抗体(C)及び植物により産生されたHRP-IgG二次抗体(P)でプローブしたGOxタンパク質のウェスタンブロットを示す図である。
図12】ELISA吸光度読取りのグラフ図である。抗体1~抗体3は、市販のポリクローナル抗ウサギIgG/HRP(希釈に関しては、表2.3を参照)を使用した検出を表し、レーン4~レーン15は、植物により産生された二次HRP-scFvを使用した検出を表す。
図13】A)L-アルギニンを用いた場合及び用いない場合の様々な緩衝液中で検査したHRP活性を示す図である。プレートの左側:陰性対照(-)、プレートの右側=検査試料(+)。B)種々の緩衝液中での粗製抽出物のHRP活性;+=L-アルギニンを添加した、-=L-アルギニンを添加していない。
図14】TMBペルオキシダーゼ基質を使用してHRP活性に関して検査した硫酸アンモニウム画分を示す図である。
図15】硫酸アンモニウム、透析及び精製からのscFv-HRP画分の分析を示す図である。(A)抗his一次コンジュゲート1:2000でプローブしたウェスタンブロット及び(B)染色をしていないSDSゲル。scFv-HRP融合タンパク質及び遊離scFvは、明らかに検出可能である。レーン14~レーン16は、40%~60%の硫酸アンモニウム分画後の部分的に精製されたscFv-HRPの存在を示す。
図16】Amicon濾過ユニットを使用した、種々の層へのDE試料の濃縮を示す図である。
図17】scFv-HRPタンパク質及び遊離HRPの存在を示すウェスタンブロットを示す図である。
図18】植物により作製されたグルコースオキシダーゼ(GOx)のウェスタンブロットを示す図である。一次ウサギ抗GOx(1:2000)を使用して、scFv-HRP融合物の種々の画分及び希釈物を二次プローブとして使用した。矢印は、GOxを示す。
図19】Ultra TMB-ELISA基質を使用した、硫酸アンモニウム沈殿前の上清試料(右側)の活性分析を示す図である。1×PBS緩衝液を陰性対照として使用した(左側)。
図20】バッチ結合精製に関する抗hisプローブを用いたウェスタンブロットを示す図である。FT=カラムフロースルー、W1.1=洗浄液1 50ml、W1.2=洗浄液1 50ml、W2.1~W2.3=洗浄液2 50ml、3倍。E1=溶出画分1、E2=溶出画分2、E3=溶出画分3。
図21】AKTA精製のSDS-PAGEを示す図である。総計=総タンパク質、FT=カラムフロースルー、W1=洗浄液1、W2=洗浄液2、W3=洗浄液3、E1=溶出画分1、E2=溶出画分2、E3=溶出画分3。最終レーンは、タンパク質分子量マーカーである。
図22】AKTA精製の抗Hisプローブを用いたウェスタンブロットを示す図である。総計=総タンパク質、FT=カラムフロースルー、W1=洗浄液1、W2=洗浄液2、W3=洗浄液3、E1=溶出画分1、E2=溶出画分2、E3=溶出画分3。最終レーンは、タンパク質分子量マーカーである。
図23】(A)ポリクローナルブタ抗ウサギ免疫グロブリン/HRP(1/4000)でプローブした陽性対照ブロット。(B)精製1からのscFv-HRPでプローブしたブロット。(C)精製2(バッチ精製)からのscFv-HRPでプローブしたブロット。(D)精製2(カラム精製)からのscFv-HRPでプローブしたブロット。ブロット上の数字は、使用した種々のウサギ一次抗体を表す。丸は、陽性反応を有したドットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここで、添付の図面を参照して、本発明をこれ以降でより完全に記載するが、そこでは、本発明の幾つかの実施形態が示され、本発明の全ての実施形態が示されるわけではない。
【0029】
記載される発明は、開示した特定の実施形態に限定されるものでなく、変更及び他の実施形態も本発明の範囲内に包含されるものと意図される。本明細書には特定の用語が使用されるが、それらは、限定を目的とせず包括的及び記述的な意味でのみ使用される。
【0030】
本明細書を通じて及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上特に明確に指定されない限り、単数形(the singular forms "a", "an" and "the")には複数形が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される用語及び表現は、説明を目的とし、限定するとみなされるものではない。本明細書で使用される「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」、「包含する(including)」という用語、及びそれらの変化形の使用は、その前に列挙される項目及びそれらの均等物と、更なる項目とを包含することを意味するものである。
【0032】
本発明は、抗ウサギ免疫グロブリン(Ig)活性を有する、植物により産生されたHRP融合又はAP融合単鎖可変断片(scFv)(「融合タンパク質」)に関する。しかしながら、scFvが、抗マウス、抗ロバ、抗ウマ、抗ニワトリ、抗ヤギ又は抗ヒツジ免疫グロブリン活性を有し得ることは理解されよう。本発明の融合タンパク質は、ウェスタンブロッティング及びELISAにおいて二次抗体として使用され得る。
【0033】
「単鎖抗体断片」(scFv)又は「抗体断片」という用語は、本明細書中で使用する場合、ペプチドリンカー(L)によって連結される6つ全てのCDRを含有する可変重鎖(VH)ドメインに連結された可変軽鎖(VL)ドメインを含有するポリペプチドを意味する。VLドメイン及びVHドメインの順序は、VH-L-VL又はVL-L-VHとして結合及び表示され得る。抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域は、抗原と相互作用する。
【0034】
scFvに関するDNA配列を含有するベクターを作製するために、これらの領域をコードする遺伝子の供給源が必要とされる。適切なDNA配列は、公開されている供給源から得られ得るか、又は当該技術分野で既知の標準的な手順によって得られ得る。例えば、The U.S. Department of Health and Human Servicesによって出版されたKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest 4th ed., (1991)は、これまで記載されてきた抗体可変領域のほとんどの配列を開示している。
【0035】
あるいは、遺伝子配列が未知である場合、ベクターへクローニングするDNAの供給源として逆転写酵素媒介合成によってmRNAから得られるcDNA配列を利用することが、一般的に可能である。scFvに関して、mRNAの供給源は、広範なハイブリドーマから得ることができる。多種多様な抗原と反応性であるハイブリドーマ分泌モノクローナル抗体は、本発明において使用可能である。これらの細胞株及び類似の性質を有する他の細胞株を、可変ドメインをコードするmRNAの供給源として、又は抗体タンパク質を得て、モノクローナル抗体自体のアミノ酸配列を決定するのに利用することができる。
【0036】
また、抗体の可変領域は、適切な脊椎動物、一般的には家畜を免疫化することによって得ることができ、マウス、ロバ、ウサギ、ウマ、ニワトリ、ヤギ又はヒツジは、最も利便性よく、免疫原で感作され得る。免疫原は、興味(of interest)抗原である。感作は従来、通常2週~3週間隔で宿主動物への、免疫原の1回以上の反復注射を用いて実施され得る。通常、最終接種(challenge)の3日後に、脾臓を取り出して、細胞融合に使用される単一細胞に解離して、mRNAが当該技術分野で既知の標準的な手順によって容易に得ることができるハイブリドーマを提供する。
【0037】
所定の抗体が得られ、そのアミノ酸配列のみが既知である場合、配列を逆翻訳することが可能である。
【0038】
本発明の抗体断片を形成するために、適切なペプチドリンカーを有することが必要である。VHドメイン及びVLドメインを結合するのに適したリンカーは、VHドメイン及びVLドメインを、抗体全体の元の構造に非常に類似している三次元構造を有し、そして、scFv断片が得られる抗体全体の結合特異性を維持する単鎖ポリペプチドへとフォールディングすることが可能であるリンカーであり得る。scFvを標識するのに適したリンカーは、VHドメイン及びVLドメインが、免疫グロブリン断片が得られる抗体全体の結合特異性を維持する三次元構造を有するように、2つ以上のscFvの標識を可能にするリンカーである。リンカーは、当該技術分野で既知であり、本発明の目的で、任意のリンカーが使用され得る。
【0039】
scFv抗体を迅速かつ経済的に産生することができるという点で、scFv抗体は、ハイブリドーマ技術によって生成されるモノクローナル抗体を上回る幾つかの利点を提供し、機能的に活性であり、かつ遺伝的に安定な抗体を生じる。
【0040】
本明細書中で使用する場合、「単鎖Fv」及び「scFv」という用語は、区別なく使用され、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含むポリペプチドを意味し、ここで、これらのドメインは、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーによって、単鎖ポリペプチドへと結合される。リンカーにより、scFvは、エピトープ結合のための所望の構造を形成することが可能である。
【0041】
本発明のscFvは、Fc領域エフェクター機能を可能にするように、それをヒトIgG1重及び軽鎖定常領域に融合することによって、完全長抗体に変換することができることが理解されよう。完全長抗体は、scFv-HRP又はscFv-APを、完全長抗体の形成を容易にするベクターにクローニングすることによって作製され得る。scFv-HRP又はscFv-APは、scFv-HRP又はscFv-APを提示する完全長組換え抗体が生成されるような位置でクローニングされる。HRP又はAPの活性は、グアヤコールアッセイを使用して測定されてもよく、二次抗体としての融合タンパク質の機能性は、本明細書中に記載するように、scFv HRP融合タンパク質単独の機能性を検査するのに使用されたウサギ抗体の同じセットに対して検査され得る。
【0042】
現在利用可能なHRP標識抗ウサギ二次抗体が、哺乳動物細胞で産生され、その結果、輸入に関して厳しい規制を受け、またそれらが動物細胞から得られて、他の動物タンパク質による混入の可能性が常に存在するのであまり望ましくないことから、本発明の融合タンパク質は、類似した産物を上回る多くの利益を有する。さらに、哺乳動物細胞において産生されるHRP標識抗ウサギ二次抗体(又はAP標識抗ウサギ二次抗体)は、非常に高価である。植物におけるHRP-Ig又はAP-Igの産生は、その産物が、いかなる考え得る哺乳動物細胞の混入物もなく、産生するのにより安価であり、したがって、最終使用者に、よりコスト効率のよい試薬を供給することを意味する。
【0043】
本発明による融合タンパク質として、N末端ERターゲティング配列と、リンカーと、scFvと、任意で、ER残留シグナルと、ヒスチジンタグとを含む、成熟HRPタンパク質又は成熟APタンパク質のアミノ酸配列を含む融合タンパク質が挙げられるが、限定されない。scFvは、リンカーを用いてHRPのC末端に融合されてもよい。あるいは、scFvが、HRPペプチドのN末端に融合されて、リンカーが、ヒスチジンタグとHRPとの間に挿入されるように、HRPとscFv遺伝子配列とを交換してもよい。このことにより、アフィニティー精製カラム上で効率的な結合を容易にすることによって、収率が改善されて、また精製が助長され得る。さらに、融合タンパク質が、HRPとは対照的にAPを含む場合、scFvは、リンカーを用いて、APのC末端に融合されてもよい。あるいは、scFvが、APペプチドのN末端に融合されて、リンカーが、ヒスチジンタグとAPとの間に挿入されるように、APとscFv遺伝子配列とを交換してもよい。
【0044】
「タンパク質」、「ペプチド」又は「ポリペプチド」は、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)に関係なく、天然に存在するか、又は天然に存在しないアミノ酸又はアミノ酸類似体を含む2つ以上のアミノ酸の任意の鎖である。
【0045】
「核酸」又は「核酸分子」という用語は、リボ核酸(RNA)並びにcDNA、ゲノムDNA及び合成DNAを含むデオキシリボ核酸(DNA)の両方を包含する。核酸は、二重鎖又は単鎖であり得る。核酸が単鎖である場合、核酸は、センス鎖又はアンチセンス鎖であり得る。核酸分子は、天然に存在する又は天然に存在しないヌクレオチド、又はヌクレオチド類似体若しくは誘導体を含む2つ以上の共有結合されたヌクレオチドの任意の鎖であり得る。「RNA」とは、2つ以上の共有結合された天然に存在するリボヌクレオチド又は修飾リボヌクレオチドの配列を意味する。「DNA」という用語は、2つ以上の共有結合された天然に存在するデオキシリボヌクレオチド又は修飾デオキシリボヌクレオチドの配列を指す。「cDNA」とは、RNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)の作用によって、RNA鋳型から産生される相補DNA又はコピーDNAを意味する。
【0046】
したがって、「cDNAクローン」は、所定のRNA分子に対して相補性であり、クローニングベクターに保有される二本鎖DNA配列を指す。「相補性」という用語は、2つの核酸分子間の二本鎖の領域を産生するようにワトソン-クリック塩基対を形成することが可能な2つの核酸分子、例えば、DNA又はRNAを指す。核酸分子における各ヌクレオチドは、二本鎖を形成するのに、反対の相補鎖におけるヌクレオチドと、対応するワトソン-クリック塩基対を形成する必要がないことが当業者に理解されよう。したがって、1つの核酸分子は、高いストリンジェンシーの条件下で、第2の核酸分子とハイブリダイズする場合に、第2の核酸分子に対して「相補性」である。本発明による核酸分子は、両方の相補分子を含む。
【0047】
幾つかの実施形態において、本発明の融合タンパク質として、N末端ERターゲティング配列と、リンカーと、scFvと、ER残留シグナル(これは、存在しなくてもよい)と、ヒスチジンタグとを含む、成熟HRP又は成熟APタンパク質を含むアミノ酸配列を含むポリペプチドが挙げられ得るが、限定されない。本発明の別の実施形態として、上述の融合タンパク質をコードする核酸分子が挙げられるが、限定されない。
【0048】
本明細書中で使用する場合、「実質的に同一の」配列は、1つ以上の保存的置換によって、又は発現される融合タンパク質若しくは核酸分子によってコードされるポリペプチドの抗原性を破壊しないか、若しくは実質的に低減しない配列の位置に位置する1つ以上の非保存的置換、欠失若しくは挿入によってのみ、参照配列と異なるアミノ酸又はヌクレオチド配列である。パーセント配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、当業者の知識内の様々な方法で達成することができる。これらは、例えば、ALIGN、Megalign(DNASTAR)、CLUSTALW又はBLASTソフトウェア等のコンピューターソフトウェアを使用することを含む。当業者は、比較される配列の完全長にわたる最大アラインメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含むアラインメントを測定するのに適したパラメーターを容易に決定することができる。本発明の1つの実施形態において、本明細書中に記載する配列に対する、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、又は約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の配列同一性といった更に大きな配列同一性を有するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列が提供される。
【0049】
あるいは、又はさらに、2つの核酸配列は、高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする場合、「実質的に同一」であり得る。ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定可能であり、概して、プローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に応じて経験的に算出される。一般的に、より長いプローブは、適正なアリーリングにより高温を必要としたのに対して、より短いプローブは、より低温を要する。ハイブリダイゼーションは概して、相補鎖が、それらの融点未満の環境に存在する場合、変性されたDNAの、再アニーリングする能力に依存する。かかる「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件の典型的な例は、穏やかに振とうしながら65℃にて18時間実施されるハイブリダイゼーション、洗浄緩衝液A(0.5%SDS、2×SSC)中で65℃にて12分間の第1の洗浄、及び洗浄緩衝液B(0.1%SDS、0.5%SSC)中で65℃にて10分間の第2の洗浄である。
【0050】
本発明の1つの実施形態において、融合タンパク質は、例えば、融合タンパク質をコードする核酸分子の任意の位置で、核酸を挿入すること、欠失すること又は置き換えることによって作製され得る。
【0051】
ポリペプチド、ペプチド又はペプチド類似体が、標準的な化学的技法を使用して、例えば、溶液又は固相合成方法論を使用した自動合成によって合成することができることは、当業者に理解されよう。自動ペプチド合成機は、市販されており、当該技術分野で既知の技法を使用する。ポリペプチド、ペプチド及びペプチド類似体はまた、組換えDNA技術を使用して、それらの対応する核酸分子から作製することもできる。
【0052】
幾つかの実施形態において、本発明の核酸分子は、他の配列に作動可能に連結され得る。「作動可能に連結される」とは、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子及び調節配列は、適切な分子が調節配列に結合された場合に融合タンパク質の発現を可能にするように結合されることを意味する。かかる作動可能に連結される配列は、発現用の宿主細胞に形質転換又はトランスフェクトされ得るベクター又は発現構築物中に含有され得る。任意のベクターが、本発明の融合タンパク質を発現する目的で使用され得ることは理解されよう。
【0053】
「組換え」という用語は、何かが組換えられたことを意味する。核酸構築物に関連して使用する場合、その用語は、分子生物学的技法を用いて、一緒に結合されるか、又は産生される核酸配列を含む分子を指す。「組換え」という用語は、タンパク質又はポリペプチドに関連して使用する場合、分子生物学的技法を用いることで生じる組換え核酸構築物から発現されるタンパク質又はポリペプチド分子を指す。組換え核酸構築物は、事実上ライゲートされないか、又は事実上異なる位置でライゲートされる核酸配列にライゲートされるか、又はライゲートされるよう操作されるヌクレオチド配列を含み得る。したがって、組換え核酸構築物は、核酸分子が、遺伝子操作を使用して、即ち、ヒトの介入によって操作されたことを示す。組換え核酸構築物は、形質転換によって宿主細胞に導入されてもよい。かかる組換え核酸構築物は、同じ宿主細胞種から、又は異なる宿主細胞種から得られる配列を含んでもよい。
【0054】
「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチド又は遺伝子配列を細胞に導入することができる手段を指す。プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ及びコスミドを含む当該技術分野で既知の様々な型のベクターが存在する。概して、ポリヌクレオチド又は遺伝子配列は、カセットを用いてベクターに導入される。「カセット」という用語は、ベクターから発現されるポリヌクレオチド又は遺伝子配列、例えば、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド又は遺伝子配列を指す。カセットは概して、ベクターに挿入される遺伝子配列を含み、これが、幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチド又は遺伝子配列を発現するための調節配列を提供する。他の実施形態において、ベクターは、融合タンパク質の発現のための調節配列を提供する。更なる実施形態において、ベクターは、幾つかの調節配列を提供し、ヌクレオチド又は遺伝子配列は、他の調節配列を提供する。「調節配列」として、プロモーター、転写終結配列、エンハンサー、スプライスアクセプター、ドナー配列、イントロン、リボソーム結合配列、ポリ(A)付加配列、及び/又は複製起点が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的で、発現カセットが、本発明の融合タンパク質の発現に使用されることが好ましい。
【0055】
上述するように、本発明による融合タンパク質として、N末端ERターゲティング配列と、リンカーと、scFvと、ER残留シグナルと、ヒスチジンタグとを含む、成熟HRPタンパク質又は成熟APタンパク質のアミノ酸配列が挙げられるが、限定されない。融合タンパク質をコードする発現カセットもまた、本発明の範囲内にあることが理解されよう。
【0056】
ER残留シグナルは、アミノ酸配列KDELを含んでもよく、好ましくは、ER残留シグナルは、SEKDELである。本発明の融合タンパク質においてER残留シグナルを含むことにより、発現されたタンパク質の小胞体残留が可能となる。カセットの構築のためのERにおいて局在化される動物及び植物タンパク質に通常存在する他の残留シグナルもまた、使用することができる。
【0057】
本発明のscFvの利点は、発現、成熟及び精製の容易さである。これらの利点は、植物発現系においてscFvを安定に又は一過的に発現する能力に幾分起因する。植物発現系の使用により、標準的なタンパク質精製技法によるscFvの精製が容易となる。しかしながら、本発明の融合タンパク質の精製は、scFvの精製を容易にし得る1つ以上のアミノ酸配列を付加することによって更に簡素化され得る。
【0058】
通常、精製を助長するように本発明の融合タンパク質に付加され得る配列の1つは、ヒスチジンタグ、すなわち「hisタグ」である。ヒスチジンタグは概して、複数のヒスチジン残基を含む。タグ付けしたタンパク質を、ニッケルN-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸(Ni-NTA)アガロースマトリクスを含むカラムに通すことにより、hisタグを含む融合タンパク質を分離することができる。
【0059】
下記の実施例は、実例として提供されるものであり、限定として提供されるものではない。
【実施例
【0060】
実施例1
HRP-scFv構築物及びインフィルトレーション
抗ウサギIgG活性を示すニワトリ由来の免疫グロブリン(IgY)単鎖可変断片(scFv)をコードする構築物(B2)を試験して、ウサギIgGタンパク質に対して高い結合活性が示された。別の2つの構築物であるB4及びF8もまた、結合活性を有することが示され、クローニング及び発現させたが、精製及び機能性の実験は、B2のみを用いて実施した。scFv遺伝子を、間に厳密α-ヘリックスリンカー(EAAAK)n(n=2)リンカーを用いて、5’末端上でホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)遺伝子に融合させた。HRP配列は、小胞体(ER)へのタンパク質のターゲティングに関与するその自然シグナルペプチドを含んでいた。ERにおけるHRPのプロセシングは、HRP活性に必須である。各scFvに関する2つの構築物は、一方はER残留に関するSEKDEL配列を用いて(HRP-scFv-SEKDEL)、及び一方は用いずに(HRP-scFv)作製した。
【0061】
ポリヒスチジン-タグ(6×hisタグ)を、融合構築物の3’末端に融合させて、下流の精製を容易にした。発現構築物は全て、植物発現ベクターpTRAcにクローニングした。図1は、構築物の略図を示す。表1は、作製した構築物について概要する。
【0062】
【表1】
【0063】
組換え構築物は全て、制限消化、PCR及び関係ある場合には配列分析によって確認された。ベクターは全て、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に形質転換した。
【0064】
ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)の葉を組換えアグロバクテリウム種(Agrobacterium sp.:アグロバクテリウム属の一種)でインフィルトレートして、HRP及びscFvの発現を、抗ニワトリIgY抗体又は抗6×his抗体又は抗HRP抗体を用いた、粗製葉抽出物のウェスタンブロットのプロービングによって個々に検証した。
【0065】
発現されたHRP-scFvの機能性を検査して、scFvでプローブしたウサギIgGタンパク質(粗製葉抽出物)(図2)及びalk-phos標識抗ニワトリIgYのドットプロット並びにウェスタンブロッティング(データは示していない)によって決定されるように、ウサギIgGに結合することが示された。
【0066】
さらに、植物抽出物の液滴にHRP基質を添加することによって、粗製葉抽出調製物における組換え融合タンパク質のHRP構成成分の予備定性機能性を確立させた。これは、色彩を変化させない対照植物由来の粗製抽出物と比較した比色分析の結果をもたらした(図3)。植物により産生されたHRP-Igは、非常に粗製の形態で二次抗体として活性である(即ち、葉から圧搾した粗製植物樹液として使用した場合に、活性は、ウェスタンブロッティングにて検出可能である)ことは非常に驚くべきことである。
【0067】
しかしながら、HRP_B2_SEKDEL発現を示すウェスタンブロットの結果(データは示していない)において、多数の「遊離」HRPが存在することに留意されており、実施される融合タンパク質の幾つかのin vivoでのプロセシングが存在することを示唆している。HRP-scFvのアミノ酸配列に関するシグナルペプチドの確認により、3つの事例全てにおいて、過剰の「遊離」HRP産生量の原因となっている可能性のあるscFv遺伝子配列の開始部位に隣接する切断部位が存在することが示された。遊離HRPではなく融合タンパク質の産生を支持するように、3つのscFv遺伝子(B2、B4及びF8)全てに関するシグナル配列を除去するようPCR及びクローニングを実施して、SEKDEL配列を含むもの及び排除するものの両方を含むHRP-scFv配列を再構築して、新たな6つの構築物を得た(表2)。
【0068】
【表2】
【0069】
これらの構築物を使用したインフィルトレーションにより、ウェスタンブロットで可視化されるように、これまでの構築物と比較して、組換え融合タンパク質の発現量が増加されたが、依然として幾らかの「遊離」HRPが検出されることが示された。図5は、ER残留シグナルを欠如するHRP_B2_2his構築物によってコードされる融合タンパク質(F)を示す。
【0070】
概念実証として、新たなHRP_B2_2及びHRP_B2_2SEKDEL融合タンパク質の予備機能性検査を、ウェスタンブロットでウサギ結合抗体(幾つかの異なる抗原に結合されている)を検出する、それらの能力を検査することによって実施した。
【0071】
グルコースオキシダーゼ(GOx)、インフルエンザ赤血球凝集素(H1tr)、オウム嘴羽病(beak and feather disease)ウイルスコートタンパク質(BFDV CP)及びインフルエンザM1をSDS PAGEによって分離して、ニトロセルロースに転写して、それら各々のウサギ抗体でプローブした。次に、ブロットを、粗製の植物により産生されたHRP_B2_2及びHRP_B2_2SEKDELの低希釈物でプローブした。図6は、HRP_B2_2scFvでプローブしたウェスタンブロットを示す。組換え二次抗体は、GOx(75kDa)、H1tr(70kDa)及びBFDV CP(27kDa)を検出することが可能であった。
【0072】
分析により、B2のER残留された融合タンパク質(HRP_B2_2SEKDEL)及びB2のER残留シグナルを欠如する融合タンパク質(HRP_B2_2)はともに、同様に良好に発現され、その結果、両方の構築物は、精製プロトコルの開発に関して継続させることが示された。
【0073】
精製
組換え融合タンパク質を精製することに対する第1の工程として、インフィルトレーションの3日後の葉組織から抽出したHRP_B2_2SEKDELhis(検査バッチとして使用される)の硫酸アンモニウム分画について研究した。分画により、HRP_B2_2SEKDELhisの大部分が、40%~60%の画分に見出され得る(図7)のに対して、少量が60%~80%及び0%~40%の画分中に存在することが示された。ニッケルアフィニティークロマトグラフィーを使用して、40%~60%の画分を更に精製した。
【0074】
HRP_B2_2及びHRP_B2_2SEKDELの両方に関する精製プロトコルは、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)システム(AKTAexplorer 100)によって作動されるHisTrapカラム(GE Lifesciences社)を使用して開発された。多大な試行錯誤後、10mMイミダゾールを使用して溶出される比較的純粋なタンパク質を産生する精製プロトコルが確立された。図8は、画分15~画分19に及ぶタンパク質吸光度ピークを有するHRP_B2_2SEKDELの溶出プロファイルを示す。
【0075】
画分2、画分16、画分17、画分18及び画分19を、SDS-PAGEによって分離して、クマシーブルーで染色した(図9)のに対して、画分2、画分7及び画分14~画分19は、SDS-PAGEによって分離して、ニトロセルロース上にブロットして、抗6×his抗体でプローブした(図10)。
【0076】
クマシー染色したゲルは、特に画分17~画分19において、タンパク質の良好な精製を示した(レーン6~レーン8)。
【0077】
ウェスタンブロットにより、図9におけるクマシーブルー染色によって可視化されたバンドが、組換え融合タンパク質のバンドであることが確かめられた。最も高濃度のタンパク質は、画分17及び画分18に存在するようであった。続いて、HRP活性を決定して、ELISAにおいて、及びウェスタンブロットで組換え融合タンパク質の機能性を検査するように、これら2つの画分をプールして、リン酸カリウム緩衝液へと透析させた。
【0078】
HRP活性実験及びイムノアッセイ実験
精製してプールした試料に対して、HRPアッセイを実施して、非常に低いが、活性であり、0.214U/ml(タンパク質)の比活性を有することが示された。組換えHRPのこれまでの活性測定は、それ自体で、9U/ml~750U/mlの範囲であった。タンパク質の濃度は、ブラッドフォードのアッセイによって1.37mg/mlであると測定された。
【0079】
精製した組換え融合タンパク質の活性は、ウェスタンブロッティングにおいてGOx抗原のみを使用して検査した。HRP_B2_2SEKDEL scFvは、1:100の希釈で使用した場合に、ウサギ抗GOx抗体を検出することが可能であり(図11)、それは非常に有望である。
【0080】
精製したHRP融合タンパク質を、結合抗原としてGOxを使用したELISAにおいて機能性に関して更に検査した。表3は、検査した種々の二次抗体希釈物の吸光度値を示す。市販のポリクローナルブタ抗ウサギIgG/HRPと比較して、検出シグナルは、かなり低かった(図12)。しかしながら、植物により産生されたHRP-scFvの結合は、1:100の希釈が使用された場合に起こり、組換えタンパク質が機能性であることを示した。HRPの活性が低かったので、シグナルは非常に低かったと考えられる。
【0081】
【表3】
【0082】
実施例2
種々の緩衝液中でのscFv-HRPの安定性及び活性
実施例1におけるscFv-HRPの小規模の精製を、NaPO pH7.0の緩衝液を使用して実施した。どの緩衝液が、HRP活性を保持するのに最も適しているかを研究することにした。4つの更なる緩衝液中での精製したscFv-HRPの濃度の安定性についても簡単に調べた(表4)。予め精製したscFv-HRP試料(100μl)を、表4に示すような幾つか異なる緩衝液へと透析させた。
【0083】
【表4】
【0084】
L-アルギニンを含む上記緩衝液及びL-アルギニンを含まない上記緩衝液の両方を全て検査した。4℃で2時間の透析後に、試料を、TMBペルオキシダーゼ基質(KPL)を使用してHRP活性に関して検査した。図13で見られるように、1×PBS pH7.6及びNaPO pH7.0は、最も著しい比色反応をもたらし、それは、より高いHRP活性を示す(図13A)。しかしながら、HRP活性は、グアヤコールアッセイによって測定される場合、1×PBSが最も高い活性を付与したことを示し(図13B)、したがって、この緩衝液は、scFv-HRPの大規模な抽出及び精製に関して継続させた。
【0085】
実施例3及び実施例4に詳述するような2つの大規模な精製(精製1及び精製2)を、pTRAc-HRP_B2_2SEKDELでインフィルトレートした葉に対して実施して、植物により産生されたscFv-HRPのパイロットスケールの産生の実現可能性を決定した。
【0086】
実施例3
大規模精製1
精製1に関して、64個の植物を、培養OD 0.25でpTRAc-HRP_B2_2SEKDELを保有する組換えアグロバクテリウム属(Agrobacterium)でインフィルトレートした。インフィルトレートしたN.ベンサミアナの葉300グラムを細かく切って、1×PBS緩衝液(pH7)中で1:3(質量:容量)の比で均質化させた。抽出物を3層のミラクロスに通して濾過した後、10000gで10分間、2回遠心分離して、残存する粒子状物質を全て取り除いた。上清を、4℃で攪拌しながら、0%~40%の硫酸アンモニウム沈殿工程に2時間付して、その後、それを10000gで10分間遠心分離して、沈殿したタンパク質をペレット化した。上清を、第2の一晩の40%~60%の硫酸アンモニウム沈殿工程に付して、10000gで10分間、更に遠心分離した。得られた上清に対して、60%~90%の分画を実施した。続いて、ペレットを1×PBS中に再懸濁させた。これらの手順からの試料を、TMBペルオキシダーゼ基質を用いて検査して、HRP活性を予備決定した(図14)。
【0087】
scFv-HRP試料を、バッチ精製方法を使用して精製した。上清を、4℃で一晩、続いて室温で2時間、ニッケル負荷樹脂1.5mlに結合させた。バッチ精製は、5mMイミダゾール含有PBSの10倍カラム容量の洗浄液及び20mMイミダゾール含有PBSの10倍カラム容量の洗浄液を用いて実施した。ニッケル負荷樹脂からの最終溶出は、120mMイミダゾール含有PBSを用いて実施した。
【0088】
画分を収集して、BSA標準曲線を用いたブラッドフォードアッセイを使用して、タンパク質濃度を測定した。試料はまた、ローディング緩衝液で処理して、10%アクリルアミドゲル上でPAGEによって分離させた。ゲルの1つを、ブロッキング緩衝液(PBS 10×、5%無脂肪乳、1%Tween 20)で洗浄したニトロセルロース上にブロットして、ブロッキング緩衝液中で1:2000希釈した抗ポリヒスチジン抗体でプローブした。ゲルを一晩インキュベートして、ブロッキング緩衝液を用いて15分間、3回洗浄した後、1:10000希釈した二次アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウス抗体でプローブした(図15A)。ニトロセルロース上へブロッティングした後、タンパク質を検出するために、ポリアクリルアミドゲルを可視化した(図15B)。40%~60%の硫酸アンモニウム分画後の3つの部分的に精製されたscFv-HRP溶出画分をプールして、続いて濃縮工程に付した。
【0089】
精製されたscFv-HRPの濃縮
次に、透析した溶出液(DE)15mlを、3000MWカットオフ点を有するAmiconフィルターチューブを使用して1.2mlにまで濃縮した。これは、4000rpmで37分間の遠心分離によって行った。この時点で、2つの層、即ち、より薄い上層(DEcs-上清)及びより濃い下層(DEcp-ペレット)は、チューブ中で可視化された(図16)。これらを取り出して、分離状態にした。試料を10%ポリアクリルアミドゲル上に流した(図17)。DE scFv-HRPの一部を凍結乾燥させて(1ml)、タンパク質が、このプロセス中及び再構成後に、安定性かつ活性を残しているかどうかを決定した。続いて、凍結乾燥させたタンパク質を、1×PBS+L-アルギニン100μl(0.1)中で再構成させて、HRP活性に関して検査した。凍結乾燥させたタンパク質の試料を、10%ポリアクリルアミドゲル上に流した(図17のレーン4)。
【0090】
scFv-HRPの機能性検査
異なる処理を行った精製scFv-HRP試料の機能性を、ウェスタンブロットで、ウサギ抗GOX抗体に結合して、それを検出するその能力に関して検査して、それを、市販のHRPコンジュゲートウサギ抗体(図18-レーン2)と比較した。全ての型のタンパク質(凍結乾燥させた型及び両方の濃縮型)は、検査した全ての状態において抗体を検出することに成功した。
【0091】
植物により産生されたscFv-HRP(DE試料)の機能性を、ウェスタンブロッティングによって更に6つのウサギ抗体で検査した。結果を表5に概要する。総計7つから、3つのウサギ抗体が、scFv-HRPによって認識された。
【0092】
【表5】
【0093】
HRPの活性検査(グアヤコールアッセイ)
scFv-HRPのDE試料のHRP活性を、グアヤコールアッセイを使用して測定した。HRP活性は、1ml当たり27042mUであると算出された。タンパク質濃度は、0.7mg/mlであると測定され、その結果として、HRPの比活性は、27042U/0.7mg=38631U/mgであると算出された。
【0094】
実施例4
大規模精製2
第2の精製は、実施例3に記載するように40個のN.ベンサミアナの植物のインフィルトレーションを含んでいた。植物の葉材料(264g)を、より小さい細片へと細かく刻み、1×PBS緩衝液を3:1(緩衝液:植物の質量)の比で添加した。植物物質を、手持ちブレンダーを使用して1×PBS中で均質化させた。均質化させた材料を、3層のミラクロスに通して濾過し、濾液をJA14 ベックマンローターにおいて8000gで15分間、2回遠心分離して、残存する植物の葉の残骸を全て除去した。上清を予備検査して、HRP活性が、硫酸アンモニウム沈殿前に試料中に存在したことを決定した(図19)。
【0095】
上清の容量を記録して(800ml)、0%~35%の沈殿に要される硫酸アンモニウムの量を算出した。硫酸アンモニウムをスプーン一杯分、一度に上清に添加して、4℃で一晩沈殿を実施した。14000gで20分間、溶液を遠心分離して、35%~75%の硫酸アンモニウム沈殿用に、上清を保持した。再び、硫酸アンモニウムをスプーン一杯分、一度に上清に添加して、4℃で一晩沈殿を実施した。14000gで20分間の遠心分離後、2つのペレットを-20℃で保管した。
【0096】
翌日、ペレットの1つを、Akta Explorerによって作動されるHis Trap FFアフィニティーカラムを使用したニッケルアフィニティーカラム精製に付し、残りの半分は、精製に関して記載するように、バッチ結合に付した。
【0097】
バッチ精製に関して、下記の通りのバッチ精製プロトコルを使用した第1の精製用に、ペレット1つを冷凍庫から取り出した:ペレットを、5mMイミダゾールを含有する1×PBS 100ml中に再懸濁して、14000gで45分間の遠心分離に付した。上清を、4℃で一晩、続いて室温で2時間、ニッケル負荷樹脂1.5mlに結合させた。バッチ精製は、5mMイミダゾール含有PBSの100倍カラム容量の洗浄液、20mMイミダゾール含有PBSの100倍カラム容量の洗浄液を用いて実施した。ニッケル負荷樹脂からの最終溶出は、120mMイミダゾール含有PBSを用いて実施した。バッチ精製からの画分を収集して、抗hisウェスタンブロットにより分析した(図20)。
【0098】
カラム精製に関して、下記の通りのAKTAプロトコルを使用した第1の精製用に、ペレット1つを冷凍庫から取り出した:ペレットを、5mMイミダゾールを含有する1×PBS 100ml中に再懸濁して、14000gで45分間の遠心分離に付した。上清を、1分当たり1mlで、1mlのニッケル負荷カラムに結合させた。精製は、5mMイミダゾール含有PBSの15倍カラム容量の洗浄液、15mMイミダゾール含有PBSの15倍カラム容量の洗浄液及び35mMイミダゾール含有PBSの15倍カラム容量の洗浄液を用いて、1分当たり2mlで実施した。カラムからの最終溶出は、120mMイミダゾール含有PBSを用いて実施した。カラム精製からの画分を収集して、SDS-PAGE(図21)及び抗hisウェスタンブロット(図22)により分析した。
【0099】
所定のタンパク質を含有する溶出画分をプールして、PBS緩衝液に対して、4℃で3回透析して、0.45μmフィルターに通して濾過した。
【0100】
HRPの活性検査(グアヤコールアッセイ)
scFv-HRP精製(精製1、精製2-バッチ精製、及び精製2-カラム精製)全てに関して、グアヤコールアッセイを実施した。
【0101】
この実施例における試料中のタンパク質濃度は、0.5mg/mlであると測定された。カラム精製した(AKTA)試料は、1ml当たり29507mUの活性を有すると算出された。その結果として、HRPの比活性は、59014mU/mgであると算出された。バッチ精製したHRP(実施例4)活性は、1ml当たり17857mUであると算出され、その結果として、HRPの比活性は、35714mU/mgであった。結果を以下の表6に概要する。
【0102】
【表6】
【0103】
scFv-HRPの機能性
精製したタンパク質の結合/機能性を、時間的な制約に起因して、ウェスタンブロッティングではなくドットブロットを使用して検査した。
【0104】
種々の一次ウサギ抗体を、各抗体に関してニトロセルロース膜上にドットして(1×PBS中の1/500希釈物を2μl)、乾燥させた。ニトロセルロースをブロッキング緩衝液中でブロックした(実施例3におけるウェスタンブロッティングに関して記載するように)。続いて、ブロットを、1:500希釈したscFv-HRPでプローブした(実施例3、実施例4-バッチ精製及び実施例4-カラム精製からのバッチそれぞれに関して)。ブロットを洗浄した後、BMブルーPOD基質を用いて発色させた。陽性対照は、即座に紫色になった。しかしながら、他のドットは、色彩の変化がほんのわずかに増加したに過ぎなかった。結果を図23に示す。
【0105】
結果の概要の表もまた、以下で見ることができる(表7)。表中の+の記号は、可視化された有色ドットの強度の表示を付与する(即ち、+非常に低いシグナル、及び++++非常に高いシグナル)。
【0106】
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23