(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】基地局、端末、通信システム、通信方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/14 20090101AFI20220120BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20220120BHJP
【FI】
H04W16/14
H04W72/04 132
H04W72/04 150
(21)【出願番号】P 2019101513
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2021-12-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】下地 龍二
(72)【発明者】
【氏名】辻 和輝
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-104026(JP,A)
【文献】特開2020-5137(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220944(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信フレームを送信できる時間が通信チャネルごとに制限されている通信帯域を用いて端末と無線通信をする基地局であって、
無線通信をする通信インタフェースと、
現時点を終期とする所定期間内に前記端末が無線通信により通信フレームを送信した累積時間である第一時間と、前記所定期間内に前記通信インタフェースが通信フレームを送信した累積時間である第二時間とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記第一時間及び前記第二時間の少なくとも一方が所定の閾値を超えたと判定した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを変更することを示す通知を前記通信インタフェースにより前記端末に送信する通知部と、
前記通知部が前記通知を送信した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを変更する制御部とを備える
基地局。
【請求項2】
前記取得部は、
前記端末によって算出された前記第一時間を含む通信フレームを受信することで、前記第一時間を取得し、
前記所定期間内に前記通信インタフェースが行った通信フレームの送信に関する情報に基づいて前記第二時間を算出することで取得する
請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記取得部は、
前記所定期間内に前記端末が送信した通信フレームの前記通信インタフェースによる受信に関する情報に基づいて前記第一時間を算出することで取得し、
前記所定期間内に前記通信インタフェースが行った通信フレームの送信に関する情報に基づいて前記第二時間を算出することで取得する
請求項1に記載の基地局。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、
前記通信チャネルを変更する前に前記通信インタフェースと前記端末との通信に用いられていた管理情報を、前記通信チャネルを変更した後の前記通信インタフェースと前記端末との通信に用いる制御をする
請求項1~3のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項5】
通信フレームを送信できる時間が通信チャネルごとに制限されている通信帯域を用いて基地局と無線通信をする端末であって、
無線通信をする通信インタフェースと、
現時点を終期とする所定期間内に前記通信インタフェースが通信フレームを送信した時間である第一時間を算出し、算出した前記第一時間を前記通信インタフェースにより前記基地局に提供する提供部と、
前記提供部が提供した前記第一時間に基づいて前記基地局から送信される通知であって、前記基地局との無線通信の通信チャネルを変更することを示す通知を前記通信インタフェースにより受信した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを、受信した前記通知に含まれる前記通信チャネルに変更する制御部とを備える
端末。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の基地局と、
前記基地局と無線通信する、請求項5に記載の端末とを備える
通信システム。
【請求項7】
通信フレームを送信できる時間が通信チャネルごとに制限されている通信帯域を用いて端末と無線通信をする基地局の通信方法であって、
現時点を終期とする所定期間内に前記端末が無線通信により通信フレームを送信した累積時間である第一時間と、前記所定期間内に前記基地局の通信インタフェースが通信フレームを送信した累積時間である第二時間とを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記第一時間及び前記第二時間の少なくとも一方が所定の閾値を超えたと判定した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを変更することを示す通知を前記通信インタフェースにより前記端末に送信する通知ステップと、
前記通知ステップで前記通知を送信した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを変更する制御ステップとを含む
通信方法。
【請求項8】
通信フレームを送信できる時間が通信チャネルごとに制限されている通信帯域を用いて基地局と無線通信をする端末の通信方法であって、
現時点を終期とする所定期間内に前記端末の通信インタフェースが通信フレームを送信した時間である第一時間を算出し、算出した前記第一時間を前記通信インタフェースにより前記基地局に提供する提供ステップと、
前記提供ステップで提供した前記第一時間に基づいて前記基地局から送信される通知であって、前記基地局との無線通信の通信チャネルを変更することを示す通知を前記通信インタフェースにより受信した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを、受信した前記通知に含まれる前記通信チャネルに変更する制御ステップとを含む
通信方法。
【請求項9】
請求項7に記載の通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項8に記載の通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、端末、通信システム、通信方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、920MHz帯を使用する無線通信の方式としてLPWA(Low Power Wide Area)が普及しつつある。LPWAに属する通信規格の1つにIEEE802.11ah規格がある。
【0003】
ここで、IEEE802.11ah規格で使用する920MHz帯では、2.4GHz又は5GHz帯等を使用するIEEE802.11a、b、g、n、ac規格等と異なり、周波数およびキャリアセンス時間の条件によっては、電波法により総送信時間が規制される。その目的の1つは、電波の帯域の公平な利用である。そのため、通信装置がデータの連続送信、又は、大容量のデータの送信などをした場合、データ送信の途中であっても送信を停止しなければならないことが起こり得る。
【0004】
このように、IEEE802.11ah規格のように総送信時間の規制がある通信規格では、IEEE802.11a、b、g、n、ac規格等のように総送信時間の規制がない通信規格と比較して、通信の用途が限定される。例えば、監視カメラ映像の転送のように比較的高い通信量を継続的に維持しなければならない用途には、IEEE802.11ah規格は、不向きであるといえる。
【0005】
特許文献1は、920MHz帯における通信において、データ送信時間の制約を満たすように効率的にデータを送信できるネットワークシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
920MHz帯のように、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域においてデータ送信をする場合、制限値を超えるデータ量のデータを送信することが難しいという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域においてデータ送信を適切に継続できる基地局などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る基地局は、通信フレームを送信できる時間が通信チャネルごとに制限されている通信帯域を用いて端末と無線通信をする基地局であって、無線通信をする通信インタフェースと、現時点を終期とする所定期間内に前記端末が無線通信により通信フレームを送信した累積時間である第一時間と、前記所定期間内に前記通信インタフェースが通信フレームを送信した累積時間である第二時間とを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記第一時間及び前記第二時間の少なくとも一方が所定の閾値を超えたと判定した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを変更することを示す通知を前記通信インタフェースにより前記端末に送信する通知部と、前記通知部が前記通知を送信した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを変更する制御部とを備える。
【0010】
これによれば、基地局は、端末と基地局との少なくとも一方の累積送信時間が通信チャネルごとの制限値に近づいた場合に、端末と基地局とがともに通信チャネルを変更する。このとき、端末に対しては、チャネル変更を知らせるための通知を送信するので、端末がより確実に通信チャネルを変更することができる。また、端末が通知によって変更先の通信チャネルを知ることができるので、端末が基地局を探すために通信チャネルをスキャンすることを要せずに変更先の通信チャネルで通信を開始できる。このようにして、基地局は、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域においてデータ送信を適切に継続できる。
【0011】
また、前記取得部は、前記端末によって算出された前記第一時間を含む通信フレームを受信することで、前記第一時間を取得し、前記所定期間内に前記通信インタフェースが行った通信フレームの送信に関する情報に基づいて前記第二時間を算出することで取得する。
【0012】
これによれば、基地局は、端末の累積送信時間(第一時間)については、送信した端末自身が算出した値を用いて、累積送信時間が制限値に近づいたことを比較的正確に判定することができる。また、基地局の累積送信時間(第二時間)については、送信した基地局自身が算出した値を用いて、累積送信時間が制限値に近づいたことを比較的正確に判定することができる。よって、基地局は、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域において、より正確な累積送信時間に基づく判定をすることでデータ送信を適切に継続できる。
【0013】
また、前記取得部は、前記所定期間内に前記端末が送信した通信フレームの前記通信インタフェースによる受信に関する情報に基づいて前記第一時間を算出することで取得し、前記所定期間内に前記通信インタフェースが行った通信フレームの送信に関する情報に基づいて前記第二時間を算出することで取得する。
【0014】
これによれば、基地局は、端末の累積送信時間(第一時間)については、端末が送信して基地局が受信した通信フレームを用いて算出した値を用いて、累積送信時間が制限値に近づいたことを判定する。仮に累積送信時間を端末から取得するとすれば、そのための専用の通信を発生させることになり、当該通信チャネルの送信時間を増加させ、その結果、累積送信時間を制限値に近づけてしまうことになる。上記のように基地局が算出することで、上記送信時間を増加させてしまうことを回避でき、その結果、端末が他の通信フレームを送信する余地を残すことができる。また、基地局の累積送信時間(第二時間)については、送信した基地局自身が算出した値を用いて、累積送信時間が制限値に近づいたことを比較的正確に判定する。よって、基地局は、当該通信チャネルで端末が他の通信フレームを送信する余地を残しながら、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域において、データ送信を適切に継続できる。
【0015】
また、前記制御部は、さらに、前記通信チャネルを変更する前に前記通信インタフェースと前記端末との通信に用いられていた管理情報を、前記通信チャネルを変更した後の前記通信インタフェースと前記端末との通信に用いる制御をする。
【0016】
これによれば、基地局は、チャネル変更の前後で管理情報を引き継いで使用するので、チャネル変更後に管理情報の生成処理などを行う必要がなく、その生成処理を行うとすれば必要となる時間が不要になる。よって、基地局は、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域において、より短時間でデータ送信を適切に継続できる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る端末は、通信フレームを送信できる時間が通信チャネルごとに制限されている通信帯域を用いて基地局と無線通信をする端末であって、無線通信をする通信インタフェースと、現時点を終期とする所定期間内に前記通信インタフェースが通信フレームを送信した時間である第一時間を算出し、算出した前記第一時間を前記通信インタフェースにより前記基地局に提供する提供部と、前記提供部が提供した前記第一時間に基づいて前記基地局から送信される通知であって、前記基地局との無線通信の通信チャネルを変更することを示す通知を前記通信インタフェースにより受信した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを、受信した前記通知に含まれる前記通信チャネルに変更する制御部とを備える。
【0018】
これによれば、端末は、フレームを送信した端末自身が算出した累積送信時間を基地局に送信し、基地局によるチャネル変更のための判定がなされる。よって、基地局は、端末の累積送信時間(第一時間)については、送信した端末自身が算出した値を用いて、累積送信時間が制限値に近づいたことを比較的正確に判定することができる。よって、端末は、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域において、データ送信を適切に継続できる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る通信システムは、上記の基地局と、前記基地局と無線通信する、上記の端末とを備える。
【0020】
これによれば、上記基地局と同様の効果を奏する。
【0021】
また、本発明の一態様に係る通信方法は、通信フレームを送信できる時間が通信チャネルごとに制限されている通信帯域を用いて端末と無線通信をする基地局の通信方法であって、現時点を終期とする所定期間内に前記端末が無線通信により通信フレームを送信した累積時間である第一時間と、前記所定期間内に前記基地局の通信インタフェースが通信フレームを送信した累積時間である第二時間とを取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記第一時間及び前記第二時間の少なくとも一方が所定の閾値を超えたと判定した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを変更することを示す通知を前記通信インタフェースにより前記端末に送信する通知ステップと、前記通知ステップで前記通知を送信した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを変更する制御ステップとを含む。
【0022】
これによれば、上記基地局と同様の効果を奏する。
【0023】
また、本発明の一態様に係る通信方法は、通信フレームを送信できる時間が通信チャネルごとに制限されている通信帯域を用いて基地局と無線通信をする端末の通信方法であって、現時点を終期とする所定期間内に前記端末の通信インタフェースが通信フレームを送信した時間である第一時間を算出し、算出した前記第一時間を前記通信インタフェースにより前記基地局に提供する提供ステップと、前記提供ステップで提供した前記第一時間に基づいて前記基地局から送信される通知であって、前記基地局との無線通信の通信チャネルを変更することを示す通知を前記通信インタフェースにより受信した場合に、前記通信インタフェースの通信チャネルを、受信した前記通知に含まれる前記通信チャネルに変更する制御ステップとを含む。
【0024】
これによれば、上記端末と同様の効果を奏する。
【0025】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、上記の通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0026】
これによれば、上記基地局と同様の効果を奏する。
【0027】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、上記の通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0028】
これによれば、上記端末と同様の効果を奏する。
【0029】
なお、本発明は、装置として実現できるだけでなく、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、基地局は、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域においてデータ送信を適切に継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る基地局と端末との構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、送信時間を記録するテーブルの一例の説明図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る累積送信時間の送信に用いられる通信フレームの構成を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る基地局の処理を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る端末の送信時間を提供する処理を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る端末の通信チャネルを変更する処理を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る通信システムの処理を示すシーケンス図である。
【
図8】
図8は、実施の形態の変形例に係る基地局と端末との構成を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施の形態の変形例に係る通信システムの処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0033】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0034】
(実施の形態)
本実施の形態において、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域においてデータ送信を適切に継続できる基地局などについて説明する。
【0035】
図1は、本実施の形態に係る通信システム1の構成を示す説明図である。
【0036】
図1に示されるように、通信システム1は、基地局A1と端末S1とを備える。
【0037】
基地局A1は、無線通信の基地局である。基地局A1は、端末S1と他のネットワーク(不図示)との通信を双方向に中継する基地局装置である。基地局A1は、端末S1と無線による通信をすることができ、また、他のネットワークと有線又は無線による通信をすることができる。他のネットワークには、オフィス若しくは工場等のローカルエリアネットワーク、又は、インターネットなどが含まれ得る。
【0038】
端末S1は、基地局A1と無線通信により接続する通信端末である。端末S1は、基地局A1による中継を利用して他のネットワークと通信したり、基地局A1と通信したりすることができる。
【0039】
なお、基地局A1に接続される端末として端末S1だけを図示しているが、複数の端末が存在する場合でも同様の説明が成立する。
【0040】
基地局A1と端末S1との無線通信は、通信フレームを送信できる時間が通信チャネル(単にチャネルともいう)ごとに制限されている通信帯域、例えば920MHz帯でなされる。より具体的には、基地局A1と端末S1との無線通信は、IEEE802.11ah規格に準拠した通信であり、この場合を一例として説明するが、この他にもIEEE802.15.4g規格に準拠した通信等にも適用され得る。なお、上記のような通信フレームを送信できる時間の制限は、例えば、複数の用途、又は、複数の通信装置による電波の公平利用を目的とする規制(例えば電波法の規制)に基づくものである。
【0041】
具体的には、920MHz帯における通信は、1台の通信装置が1つの通信チャネルで1時間当たりに送信する時間が制限値(具体的には360秒間)以下に制限されている。言い換えれば、1台の通信装置が1つの通信チャネルで過去の直近の1時間の期間に360秒間の送信をした場合、その通信装置は、当該期間内には通信フレームを送信することができない。なお、この場合、通信装置は、過去の直近の1時間に360秒間の送信した上記通信チャネルと異なる通信チャネルでは、通信フレームを送信できる。ここで「過去の直近の1時間」とは、現時点から過去に向かう1時間の時間をいい、単に「直近の1時間」ということもある。
【0042】
以降において、基地局A1と端末S1との構成を詳しく説明する。
【0043】
図1に示されるように、基地局A1は、無線IF(インタフェース)11と、取得部12と、通知部13と、制御部14とを備える。なお、取得部12と、通知部13と、制御部14とは、プロセッサがメモリを用いて所定のプログラムを実行することで実現され得る。
【0044】
無線IF11は、端末S1と無線通信をする通信インタフェースである。無線IF11の通信規格は、例えば、IEEE802.11ah規格である。無線IF11が通信フレームを送信する時間は、上記の制限がある。無線IF11が制限値を超える量の通信フレームの送信を禁止する制御は制御部14によりなされる。
【0045】
無線IF11は、無線通信のインタフェースである。無線IF11は、アンテナ、及び、無線通信信号の送受信回路などを含む。
【0046】
無線IF11は、端末S1との間で無線通信の確立のための通信を行う。より具体的には、無線IF11は、認証(Authentication)のための通信、接続確立(Association)のための通信、及び、4ウェイハンドシェイクの通信などを行うことで、無線通信を確立するとともに、暗号鍵の生成など無線通信に必要な情報を生成する。また、無線IF11は、制御部14による制御のもとで通信チャネルを変更する。
【0047】
取得部12は、端末S1及び基地局A1の累積送信時間を取得する処理部である。取得部12は、現時点を終期とする所定期間内に端末S1が無線通信により通信フレームを送信した時間である第一時間と、所定期間内に自機(無線IF11)が通信フレームを送信した時間である第二時間とを取得する。
【0048】
ここで、所定期間の時間長は、通信制限の単位となる時間であり、920MHz帯における1時間に360秒以内という通信制限の場合では1時間である。つまり、所定期間は、現時点から過去に向かう直近の1時間である。なお、所定期間の始期は、現時点の1時間前の時点である。
【0049】
第一時間は、端末S1が所定期間内に通信フレームを所定のチャネルで送信した時間の累積値である累積送信時間である。取得部12は、例えば、端末S1によって算出された第一時間を含む通信フレームを受信することで、第一時間を取得する。
【0050】
第二時間は、基地局A1が所定期間内に通信フレームを所定のチャネルで送信した時間の累積値である累積送信時間である。取得部12は、無線IF11が所定期間内に送信した通信フレームに関する情報に基づいて第二時間を算出することで取得する。第二時間を算出するには、一例として、所定期間内に含まれる時間区間ごとの送信時間を記録するためのテーブル(後述)が用いられる。
【0051】
取得部12は、取得した端末S1及び基地局A1の累積送信時間に通信チャネルと紐づけてメモリなどに記憶する。このようにして、取得部12は、通信システム1における基地局A1および端末S1で使用可能な通信チャネルごとに端末S1及び基地局A1の累積送信時間を管理する。例えば、24chにおいて、端末S1の累積送信時間は45msecであることを紐づけて管理する。
【0052】
また、取得部12は、基地局A1の配下に複数の端末が接続している場合は、端末ごとの累積送信時間を取得し通信チャネルと紐づけてメモリなどに記憶する。このようにして、取得部12は、自装置(基地局A1)の配下で無線通信を行う複数の端末それぞれに対応して、累積送信時間の管理ができる。例えば、24chにおいて、端末S1の累積送信時間は45msecであり、端末S2(図示しない)の累積送信時間は90msecであり、端末S3(図示しない)の累積送信時間は180msecであることを紐づけて管理する。
【0053】
通知部13は、端末S1に対してチャネル変更通知を送信する処理部である。通知部13は、取得部12が取得した第一時間及び第二時間の少なくとも一方が所定の閾値を超えたと判定した場合に、無線通信の通信チャネルを変更することを示す通知であるチャネル変更通知を無線IF11により端末S1に送信する。ここで、所定の閾値とは、例えば、920MHz帯の通信の場合、全時間のうちの9.5%とすることができる。これは、1時間あたり342秒に相当する。
【0054】
また、通知部13は、上記チャネル変更通知に含めるべき、変更先の通信チャネルを決定する。変更先の通信チャネルには、直近の1時間の通信量がより少ない通信チャネルがより優先的に決定されてもよい。直近の1時間の通信量がより少ない通信チャネルは、所定期間内に含まれる時間区間ごとの送信時間を記録するための上記テーブル(上記)を参照して決定できる。また、変更先の通信チャネルは、通信可能なチャネルのうち、予めユーザによって決められた順序で決定されてもよいし、工場出荷時に設定されていてもよい。
【0055】
なお、直近の1時間の通信量が制限値を超えていない通信チャネルが決定されるのが望ましいが、直近の1時間の通信量が制限値を超えているチャネルに決定されてもよい。その場合、時間経過によって直近の1時間の通信量が制限値を超えなくなるまで待機した後に無線IF11による通信が可能となる。
【0056】
なお、チャネル変更通知は、少なくとも変更先のチャネルを含む通信フレームであればよい。チャネル変更通知は、例えば、IEEE802.11h規格に準拠したCSA(Channel Switch Announcement)フレームを利用できる。
【0057】
制御部14は、通知部13がチャネル変更通知を送信した場合に、無線IF11の通信チャネルを変更する制御をする処理部である。制御部14は、通知部13が決定した変更先の通信チャネルに、無線IF11の通信チャネルを変更する。この後、変更先の通信チャネルで無線IF11が端末S1の無線IF21との無線通信を確立し、端末S1と基地局A1との通信がなされることになる。
【0058】
なお、制御部14は、上記の通信チャネルの変更の際に、さらに、通信チャネルを変更する前に無線IF11と端末S1との通信に用いられていた管理情報を、通信チャネルを変更した後の無線IF11と端末S1との通信に用いる制御をしてもよい。ここで、管理情報とは、無線通信の接続に必要な情報であり、認証又は暗号に関する情報である。このようにすれば、通信チャネルを変更した後の通信で、通信チャネルを変更する前の管理情報を使用することができ、新たに管理情報を生成するとすれば必要になる処理(例えば無線通信の確立のための通信など)を省略できる利点がある。
【0059】
また、
図1に示されるように、端末S1は、無線IF21と、提供部22と、制御部23とを備える。なお、提供部22と、制御部23とは、プロセッサがメモリを用いて所定のプログラムを実行することで実現され得る。
【0060】
無線IF21は、無線通信のインタフェースである。無線IF21は、アンテナ、及び、無線通信信号の送受信回路などを含む。
【0061】
無線IF21は、基地局A1との間で無線通信の確立のための通信を行う。より具体的には、無線IF21は、認証のための通信、接続確立のための通信、4ウェイハンドシェイクの通信などを行うことで、無線通信を確立するとともに、暗号鍵の生成など無線通信に必要な情報を生成する。また、無線IF21は、制御部23による制御のもとで通信チャネルを変更する。
【0062】
提供部22は、端末S1の累積送信時間を基地局A1に提供する処理部である。提供部22は、現時点を終期とする所定期間内に無線IF21が通信フレームを送信した時間である第一時間を算出し、算出した第一時間を無線IF21により基地局A1に提供する。ここで、所定期間の時間長は、例えば、上記(基地局A1の取得部12の記載を参照)と同様に920MHz帯における通信では1時間とする。
【0063】
制御部23は、無線IF21の通信チャネルの制御などを行う処理部である。制御部23は、提供部22が提供した第一時間に基づいて基地局A1から送信される通知であって、基地局A1との無線通信の通信チャネルを変更することを示す通知(変更先の通信チャネルを含む)を無線IF21により受信した場合に、無線IF21の通信チャネルを、受信した通知に含まれる通信チャネルに変更する。この後、変更先の通信チャネルで無線IF21が基地局A1の無線IF11と無線通信を確立し、端末S1と基地局A1との通信がなされることになる。
【0064】
なお、制御部23は、基地局A1の制御部14と同様に、上記の通信チャネルの変更の際に、さらに、通信チャネルを変更する前に無線IF11と端末S1との通信に用いられていた管理情報を、通信チャネルを変更した後の無線IF11と端末S1との通信に用いる制御をしてもよい。
【0065】
図2は、送信時間を記録するテーブルの一例であるテーブル40の説明図である。テーブル40は、例えば、基地局A1の取得部12が、無線IF11の送信時間を取得するために用いられる。なお、テーブル40は、送信時間を記録するための情報の一例であり、他の形式の情報が用いられてもよい。
【0066】
テーブル40は、1時間つまり3600秒間を100ミリ秒ごとの時間区間(単に区間ともいう)に区切り、各区間の無線IF11の送信時間を記録したものである。上記区間は36000個ある。テーブル40における1つのエントリは、1つの区間に対応している。
【0067】
テーブル40において、各エントリは、番号41と送信時間42とを有する。
【0068】
番号41は、各エントリの通し番号である。
【0069】
送信時間42は、各エントリに対応する区間における無線IF11の送信時間である。送信時間42は例えばミリ秒を単位として表現された送信時間である。当該エントリに対応する区間においてまったく送信がなかった場合にはゼロとなり、当該エントリに対応する区間におけるすべての時間で通信フレームを送信していた場合には100となる。
【0070】
一例として、
図2における番号が1であるエントリに対応する区間では無線IF11が送信を行わなかったことが示されており、番号が2であるエントリに対応する区間では無線IF11が45ミリ秒間の送信を行ったことが示されている。
【0071】
取得部12は、無線IF11の送信を監視しており、100ミリ秒の区間ごとに、無線IF11の100ミリ秒間の送信時間を取得する。ここで、送信時間には、通信フレームの再送に係る時間も含まれる。
【0072】
そして、取得部12は、区間ごとに番号を1ずつ増やしながら、当該区間に対応する番号のエントリの送信時間42に、取得した送信時間を記録する。番号が36000であるエントリに送信時間を記録した次には、番号が1であるエントリに送信時間を記録する。このようにしてテーブル40には、循環的に各区間における送信時間が記録される。その結果、テーブル40には、常に最新の1時間分の各区間における送信時間が記録されることとなるので、送信時間42の合計を算出すればいつでも直近の1時間の累積送信時間が得られる。
【0073】
なお、上記の累積送信時間の算出方法は、端末S1が無線IF21の累積送信時間を算出するときにも用いられ得る。送信時間42は、各エントリに対応する区間における無線IF21の送信時間である。
【0074】
図3は、本実施の形態に係る累積送信時間の送信に用いられる通信フレーム50の構成を示す説明図である。
図3に示される通信フレーム50は、端末S1が、端末S1の累積送信時間を基地局A1に送信するときに用いられ得る。なお、通信フレーム50は、一例として、IEEE802.11シリーズ規格におけるアクションフレームのフレームフォーマットを有する通信フレームである。
【0075】
図3に示されるように、通信フレーム50は、DA(Destination Address)と、SA(Source Address)と、アクションフィールドとを含む。
【0076】
DAは、通信フレーム50の宛先アドレスであり、基地局A1のMAC(Media Access Control)アドレスが含まれている。
【0077】
SAは、通信フレーム50の送信元アドレスであり、端末S1のMACアドレスが含まれている。
【0078】
アクションフィールドは、IEEE802.11シリーズ規格における追加的機能のために設けられるフィールドである。アクションフィールドは、カテゴリ、ベンダIDおよびベンダ独自情報を含む。例えば、カテゴリのフィールドには、ベンダ独自情報を意味する126又は127が設定される。ベンダ独自情報のフィールドには、装置IDとして、累積送信時間に係る通信装置の識別子である、端末S1のMACアドレスが設定される。累積送信時間には、単位をミリ秒として表現した端末S1の累積送信時間が設定される。
【0079】
以上のように構成された基地局A1および端末S1の処理について以降で説明する。
【0080】
図4は、本実施の形態に係る基地局A1の処理を示すフロー図である。
【0081】
ステップS101において、取得部12は、端末S1の累積送信時間を取得する。端末S1の累積送信時間の取得は、端末S1によって算出された端末S1の累積送信時間を受信することでなされる。また、取得部12は、取得した端末S1の累積送信時間とともに通信フレーム50から抽出した通信チャネルに紐づけてメモリ(図示しない)などに記憶する。
【0082】
ステップS102において、取得部12は、基地局A1の累積送信時間を取得する。基地局A1の累積送信時間の取得は、例えば、テーブル40を用いる方法、より具体的には、テーブル40に記録された送信時間42の合計を算出することでなされる。また、取得部12は、取得した基地局A1の累積送信時間を通信チャネルに紐づけてメモリ(図示しない)などに記憶する。
【0083】
ステップS103において、通知部13は、ステップS101で取得した端末S1の累積送信時間と、ステップS102で取得した基地局A1の累積送信時間とのいずれかが所定の閾値を超えたか否かを判定する。いずれかの累積送信時間が所定の閾値を超えたと判定した場合(ステップS103でYes)には、ステップS104に進み、そうでない場合(ステップS103でNo)には、ステップS101を再び実行する。
【0084】
ステップS104において、通知部13は、変更先のチャネルを決定する。
【0085】
ステップS105において、通知部13は、ステップS104で決定したチャネルを含むチャネル変更通知を端末S1に送信する。
【0086】
ステップS106において、制御部14は、無線IF11の通信チャネルを変更する。この後、無線IF11は、変更後の通信チャネルで端末S1の無線IF21と無線通信の接続をし、通信可能となる。
【0087】
なお、基地局A1は、上記処理と並行して、通信帯域の規制を守るための送信制限処理を行っている。具体的には、基地局A1は、送信しようとする通信フレームそれぞれを送信する前に、送信する予定の通信フレームを送信した場合に送信時間が制限値を超えないか否かを判定し、当該通信フレームを送信すると制限値を超える場合には、当該通信フレームの送信を取りやめる処理を行っている。この送信制限処理でも、無線IF11の所定期間内の送信時間が用いられる。そのため、上記ステップS102での累積送信時間の取得のときに、上記送信制限処理で用いられているテーブルから累積送信時間を得るようにしてもよい。
【0088】
図5は、本実施の形態に係る端末S1の送信時間を提供する処理を示すフロー図である。
【0089】
ステップS201において、提供部22は、無線IF21の累積送信時間を算出する。累積送信時間の算出は、テーブル40に含まれる1時間分の送信時間42の合計を算出することでなされ得る。なお、ステップS201の処理は、例えば、1分~5分程度ごとに実行され、より特定的には1分ごとに実行される。
【0090】
ステップS202において、提供部22は、ステップS201で算出した無線IF21の累積送信時間を、無線IF21により基地局A1に提供する。ステップS202を終えたらステップS201を実行する。
【0091】
なお、端末S1は、上記処理と並行して、通信帯域の規制を守るための送信制限処理を行っている。送信制限処理は、基地局A1が行うのと同様の処理である。そのため、上記ステップS201での累積送信時間の取得のときに、上記送信制限処理で用いられているテーブルから累積送信時間を得るようにしてもよい。
【0092】
図6は、本実施の形態に係る端末S1の通信チャネルを変更する処理を示すフロー図である。
図6に示される処理は、
図5に示される処理と並行して実行され得る。
【0093】
ステップS211において、制御部23は、無線IF21により基地局A1からチャネル変更通知を受信したか否かを判定する。チャネル変更通知を受信したと判定した場合(ステップS211でYes)には、ステップS212を実行し、そうでない場合(ステップS211でNo)には、ステップS211を再び実行する。つまり、制御部23は、チャネル変更通知を受信するまでステップS211で待ち状態をとる。
【0094】
ステップS212において、制御部23は、無線IF21の通信チャネルを、ステップS211で受信したチャネル変更通知に含まれる通信チャネルに変更する。
【0095】
図7は、本実施の形態に係る通信システム1の処理を示すシーケンス図である。
図7には、基地局A1と端末S1とが通信している状態において、端末S1の累積送信時間が所定の閾値を超えたことに基づいて、基地局A1と端末S1とが通信チャネルを変更して通信を継続するまでの一連の流れが示されている。
【0096】
まず、基地局A1と端末S1との間で無線通信の接続のための処理がなされる。接続のための処理は、認証のための処理、接続確立のための処理、及び、4ウェイハンドシェイクの通信を含む。接続のための通信が完了すると、基地局A1と端末S1とは通信可能な状態となる。
【0097】
その後、端末S1は、1分ごとに累積送信時間を基地局A1に送信し(ステップS202)、送信された累積送信時間を基地局A1が受信する(ステップS101)。送信される累積送信時間は、
図7において、累積送信時間T11、T12、・・・、T1Nと示されている。また、基地局A1は、1分ごとに基地局A1の累積送信時間T21、T22、・・・、T2Nを算出することで取得する(ステップS102)。
【0098】
基地局A1は、累積送信時間T11等及びT21等を取得したら、取得した累積送信時間が所定の閾値thを超えたか否かを判定する(ステップS103)。ここでは、累積送信時間T11、T12、・・・、が閾値thを超えておらず、累積送信時間T1Nが閾値thを超えていたとする。
【0099】
すると、基地局A1は、累積送信時間T1Nが閾値thを超えたと判定し(ステップS103でYes)、変更先のチャネルを決定し(ステップS104)、チャネル変更通知を端末S1に送信し(ステップS105)、通信チャネルを変更する(ステップS106)。チャネル変更通知を受信した端末S1も、チャネル変更通知に従って通信チャネルを変更する(ステップS212)。
【0100】
その後、基地局A1と端末S1とは、変更後の通信チャネルで通信可能な状態となる。このとき、当初の通信のときに生成した暗号鍵などの情報を引き続き使用可能であるので、新たに接続のための処理を行うことを要しない。そのため、新たに接続のための時間を要せずに通信可能な状態となる利点がある。
【0101】
(実施の形態の変形例)
本変形例では、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域においてデータ送信を適切に継続できる基地局などにおいて、端末の累積送信時間を基地局が算出する技術を説明する。
【0102】
図8は、本実施の形態の変形例に係る基地局A2と端末S2とを備える通信システム2の構成を示す説明図である。
【0103】
図8に示されるように、本変形例に係る基地局A2は、無線IF11と、取得部12Aと、通知部13と、制御部14とを備える。また、本変形例に係る端末S2は、無線IF21と、制御部23とを備える。
【0104】
ここで、基地局A2は、取得部12Aを備える点で実施の形態の基地局A1と異なる。また、端末S2は、提供部22を備えない点で実施の形態の端末S1と異なる。
【0105】
以降において、取得部12Aについて主に説明する。
【0106】
取得部12Aは、端末S2の累積送信時間つまり第一時間を取得することを、所定期間内に端末S2が送信した通信フレームの無線IF11による受信に関する情報(受信に要した時間など)に基づいて行う。具体的には、取得部12Aは、無線IF11が端末S2から受信した通信フレームについて、
図2に示されるテーブル40を用いる方法で、端末S2の直近の1時間の累積送信時間を算出する。
【0107】
図9は、本変形例に係る通信システム2の処理を示すシーケンス図である。
【0108】
図9は、本実施の形態に係る通信システム2の処理を示すシーケンス図である。
図9には、基地局A2と端末S2とが通信している状態において、端末S2の累積送信時間が所定の閾値を超えたことに基づいて、基地局A2と端末S2とが通信チャネルを変更して通信を継続するまでの一連の流れが示されている。
図9は、実施の形態の
図7に相当するシーケンス図である。
【0109】
まず、基地局A2と端末S2との間で無線通信の接続のための処理がなされる。この処理は、実施の形態における基地局A1と端末S1との処理と同様である。
【0110】
その後、基地局A2は、累積送信時間T11、T12、・・・、T1N、及び、T21、T22、・・・、T2Nを算出することで取得する。このとき、基地局A2は、T21、T22、・・・、T2Nを算出するにあたり、端末S2の累積送信時間を示す情報を、端末S2から受信する必要がない。つまり、基地局A2は、取得部12Aにおいて、端末S2の直近の1時間の累積送信時間を算出できるからである。
【0111】
基地局A2は、取得した累積送信時間が閾値thを超えたか否かを判定する(ステップS103)。ここでは、累積送信時間T11、T12、・・・、が閾値thを超えておらず、累積送信時間T1Nが閾値thを超えていたとする。
【0112】
すると、基地局A2は、変更先のチャネルを決定し(ステップS104)、チャネル変更通知を端末S2に送信し(ステップS105)、通信チャネルを変更する(ステップS106)。チャネル変更通知を受信した端末S2も、チャネル変更通知に従って通信チャネルを変更する(ステップS212)。
【0113】
その後、基地局A2と端末S2とは、変更後の通信チャネルで通信可能な状態となる。このとき、当初の通信のときに生成した管理情報などの情報を引き続き使用可能であるので、基地局A2及び端末S2は、新たな接続のための処理を行うことを要しない。そのため、基地局A2及び端末S2は、新たな接続のための時間を要せずに通信可能な状態となる利点がある。
【0114】
また、端末S2から基地局A2への累積送信時間の送信を行うことを要しない利点もある。上記の累積送信時間の送信をする場合、端末S2から基地局A2に、そのための専用の通信を発生することになり、当該通信チャネルでの端末S2の送信時間を増加させてしまうことになる。よって、端末S2から基地局A2への累積送信時間の送信を行うことがなければ、上記送信時間を増加させることを回避でき、端末S2が他の通信フレームを送信する余地を残すことができる。
【0115】
以上のように、実施の形態及び変形例に係る基地局は、端末と基地局との少なくとも一方の累積送信時間が通信チャネルごとの制限値に近づいた場合に、端末と基地局とがともに通信チャネルを変更する。このとき、端末に対しては、チャネル変更を知らせるための通知を送信するので、端末がより確実に通信チャネルを変更することができる。また、端末が通知によって変更先の通信チャネルを知ることができるので、端末が基地局を探すために通信チャネルをスキャンすることを要せずに変更先の通信チャネルで通信を開始できる。このようにして、基地局は、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域においてデータ送信を適切に継続できる。
【0116】
また、基地局は、端末の累積送信時間(第一時間)については、送信した端末自身が算出した値を用いて、累積送信時間が制限値に近づいたことを比較的正確に判定することができる。また、基地局の累積送信時間(第二時間)については、送信した基地局自身が算出した値を用いて、累積送信時間が制限値に近づいたことを比較的正確に判定することができる。よって、基地局は、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域において、より正確な累積送信時間に基づく判定をすることでデータ送信を適切に継続できる。
【0117】
また、基地局は、端末の累積送信時間(第一時間)については、端末が送信して基地局が受信した通信フレームを用いて算出した値を用いて、累積送信時間が制限値に近づいたことを判定する。仮に累積送信時間を端末から取得するとすれば、そのための専用の通信を発生させることになり、当該通信チャネルの送信時間を増加させ、その結果、累積送信時間を制限値に近づけてしまうことになる。上記のように基地局が算出することで、上記送信時間を増加させてしまうことを回避でき、その結果、端末が他の通信フレームを送信する余地を残すことができる。また、基地局の累積送信時間(第二時間)については、送信した基地局自身が算出した値を用いて、累積送信時間が制限値に近づいたことを比較的正確に判定する。よって、基地局は、当該通信チャネルで端末が他の通信フレームを送信する余地を残しながら、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域において、データ送信を適切に継続できる。
【0118】
また、基地局は、チャネル変更の前後で管理情報を引き継いで使用するので、チャネル変更後に管理情報の生成処理などを行う必要がなく、その生成処理を行うとすれば必要となる時間が不要になる。よって、基地局は、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域において、より短時間でデータ送信を適切に継続できる。
【0119】
また、実施の形態に係る端末は、フレームを送信した端末自身が算出した累積送信時間を基地局に送信し、基地局によるチャネル変更のための判定がなされる。よって、基地局は、端末の累積送信時間(第一時間)については、送信した端末自身が算出した値を用いて、累積送信時間が制限値に近づいたことを比較的正確に判定することができる。よって、端末は、通信チャネルごとに送信時間が制限されている通信帯域において、データ送信を適切に継続できる。
【0120】
なお、本発明は、装置として実現できるだけでなく、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。
【0121】
以上、本発明の基地局及び端末等について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、送信量の制限がある通信帯域で無線通信する基地局(アクセスポイントなど)、及び、端末(パーソナルコンピュータ、スマートフォンなど)に利用され得る。
【符号の説明】
【0123】
1、2 通信システム
11、21 無線IF
12、12A 取得部
13 通知部
14、23 制御部
22 提供部
40 テーブル
41 番号
42 送信時間
50 通信フレーム
A1、A2 基地局
S1、S2 端末