(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】装着型シミュレータ
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20220120BHJP
G09B 23/28 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
G09B23/28
(21)【出願番号】P 2020106602
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】511036439
【氏名又は名称】公立大学法人三重県立看護大学
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】玉田 章
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 浩
(72)【発明者】
【氏名】関根 由紀
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智之
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06032289(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0206978(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103860166(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
G09B17/00-19/26
G09B23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬患者となる着用者が着装して看護演習に利用される装着型シミュレータであって、
前記装着型シミュレータは、ベスト、および該ベストに接続する1または複数の線状体とを備え、
前記ベストに接続する線状体の先端には、前記ベストに接続するための固定部が備えられ、
前記固定部および前記ベストには、互いに面接して着脱可能な着脱手段が設けられ、
前記ベストに設けられる着脱手段は、前記ベスト前面の1または複数の箇所において所定の範囲に設けられ、
前記ベストは、メッシュ製であり、前記着用者の体形に応じて調節可能な調節部を有していることを特徴とする装着型シミュレータ。
【請求項2】
前記線状体のうち少なくとも一つの線状体
の固定部と前記ベストの接続は、それぞれに面接する接続部材を介して行われ、
前記接続部材の表面と裏面には、前記固定部および前記ベストのそれぞれと互いに面接して着脱可能な着脱手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の装着型シミュレータ。
【請求項3】
前記着脱手段は、面ファスナーであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の装着型シミュレータ。
【請求項4】
前記線状体のうち少なくとも一つの線状体の先端は、前記固定部において、前記接続部材の面と平行、かつ、所定の方向へ固定されることを特徴とする請求項
2記載の装着型シミュレータ。
【請求項5】
前記ベストの背面には、前記着用者の背骨に沿って縦方向に設けられた背面固定部を有し、
前記背面固定部は、硬膜外カテーテルを内設可能であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の装着型シミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、看護学の学内演習などにおいて手術後患者を学ぶ際に、学生などを短時間に実際の患者を模した模擬患者の状態とすることができ、学習効果が高い装着型シミュレータ(以下、「シミュレータ」ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
手術後安静臥床を長期間継続することは、様々な臓器・器官に好ましくない影響を与える。例えば、循環、呼吸器系では、機能的肺活量の減少により、無気肺や肺炎を引き起こしたり、循環器系では、循環血液量の低下や、特に下半身の静脈血のうっ滞などにより、肺塞栓症など重篤な術後合併症につながる可能性がある。また、運動器系では、四肢の関節拘縮や筋萎縮、皮膚においては、仙骨部や、背骨部、腸骨部、外裸部など、荷重がかかり、骨などの硬いものが皮膚を圧迫する荷重部に褥瘡形成をきたしやすくなる。そのため、手術後の早期離床は、術後の呼吸機器合併症や循環器合併症、褥瘡や筋力低下などの予防のために重要である。
【0003】
早期離床は、看護者の介助による他動運動や自動運動から始めて、体位変換、頭部挙上、坐位へと、患者の状況に応じて、適切な頻度、時間で各種動作を行うことで促進される。離床まで繰り返し行われる運動や、体位変換を安全に進めるためには、看護者はその都度、患者の全身状態の観察とともに、患者に接続している医療機器(心電図テレメータ、排液バッグ、持続硬膜外麻酔セットなど)の接続状況を確認する必要がある。
【0004】
患者の全身状態の観察は、安全に離床ができるか判断するために重要である。手術中から臥床状態にあった患者が身体を動かすことは、患者にとって運動負荷となり、創部痛の増強や呼吸困難、起立性の血圧低下などが生じる可能性があり、さらにこれらの身体症状は離床に対する意欲の低減につながる。また、医療機器の接続状況の確認は、離床の際などに、挿入部位からの排液チューブや硬膜外カテーテルなどの抜去や、心電図テレメータのセンサー電極の剥がれが起こらないようにするために重要である。看護者は硬膜外カテーテルなどの挿入部位、挿入長、固定方法などを確認し、患者の身体が動いた際に、これらが外れることが無いように最細心の注意を払う必要がある。
【0005】
看護学領域においては、演習(以下、「看護演習」ともいう)の形態を、模擬患者(以下、「患者役」ともいう)と看護者役のロールプレイ形式とすることにより、対象者を的確にとらえることができ、紙上での事例演習に比べ学習効果が高まることが知られている。ここで、模擬患者とは、実際の患者ではない人間が演じる模擬の患者をいう。上述した手術後の患者の離床のための手技を看護学生が学ぶ際にも、模擬患者を用いた演習が行われている。患者役は、学生のほか、ボランティアや、アルバイトなどが演じる。学生同士で患者と看護者を演じる場合、患者側、看護者側の両方を体験できるので、一つの手技に対して両方の視点から学ぶことができる点で意義がある。一方、演習の内容によっては、患者を演じる学生の腹部などに直接創部を描いたり、医療機器をテープなどで肌の上に直接固定したりする必要があり、肌の露出が起こりうる。この場合、他の学生への羞恥心から集中力が低下するなどして、学習効果が低下するおそれがあるため、学生同士を模擬患者とする演習の内容が制限されることがある。また、ボランティアや、アルバイトに模擬患者を依頼する場合、必要人数の確保が容易でない場合がある。よって、ロールプレイ形式の演習において、学生が羞恥心を感じることなく患者を演じられる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】有澤舞、他4名、「東京家政大学研究紀要」、東京家政大学、第59集(2)、2019年3月1日、p.39~46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、模擬患者の羞恥心低減のための方法として、肌の上に直接または肌着、もしくはTシャツなどを介して着用することで、肌の露出を防ぎ羞恥心を除去することができる模擬患者用スーツが記載されている。本文献には、模擬患者の少なくとも上半身の腹側を頸部から両上腕を含めて胸部、腹部、骨盤部、両大腿部まで被うことができる大きさと形状を有し、外観及び質感が真正の皮膚に近似しており、樹脂製の弾性材料シートで構成される模擬患者用スーツが記載されている。
【0009】
本スーツは、医学生や看護学生などが、視診、聴診などの診察トレーニングを行う際に着用することを想定したスーツであるため、着用者への密着性に優れるが、高価であり、演習用に多数のスーツを準備することは困難な場合がある。さらに、上記密着性に起因して脱ぎ着が容易でないため、速やかな着替えに難がある。また、樹脂製の弾性材料シート製であるため、動きにくかったり、蒸れやすいことが予想される。特に、梅雨時や夏場などの高温多湿な時期の使用は、スーツの内側に汗が付着しやすいため、衛生面の懸念があるとともに、使用毎の洗浄や、乾燥など、維持管理の負担が大きいと考えられる。
【0010】
非特許文献1には、着脱に時間を要しない手術後患者シミュレーションスーツが記載されている。該スーツは、着替えやすさを重視して大きめに設計されている。また、本スーツは、スーツの腹部に直接創部を設けたり、スーツの特定箇所に孔を空け、当該孔に挿入した硬膜外カテーテルをテープで貼り付けて固定したりすることで、特定の術後状態を想定したスーツである。また、スーツの素材には、合成皮革が使用されている。本文献には、当該シミュレーションスーツを用いて行った演習の結果として、学生の術後患者のイメージ化に有用であった旨の記載がある一方、スーツの密着感の不足や、素材の違和感などにより、患者の状態をイメージできなかったこと、スーツの着脱時に硬膜外カテーテルなどが抜けたり、絡まったりして着替えにくかったことなどの課題が挙げられている。また、スーツの素材が合成皮革であることから、特許文献1と同様に夏場の使用や衛生面の点で懸念が生じる。
【0011】
よって、術後状態を想定した模擬患者用の装着型シミュレータには、肌が露出しないだけでなく、脱ぎ着しやすく、着用時は密着性に優れることが求められる。また、実際の術後患者は、疾患や術式によって創部や排液チューブなどの接続位置が異なるため、演習の目的に応じて、創部や排液チューブなどの接続場所をスーツ表面の任意の場所へ設けられることが望ましい。さらに、シミュレータの数を確保することは、学習効率、ひいては学習効果の向上に寄与するため、複数導入可能な程度に安価であること、長期間使用可能なことも望まれる。
【0012】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、看護演習において、術後模擬患者、および模擬患者に対する手技を学習する際に、簡易に模擬患者となることができ、学習効果が高い装着型シミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の装着型シミュレータは、模擬患者となる着用者が着装して看護演習に利用される装着型シミュレータであって、上記装着型シミュレータは、ベスト、および該ベストに接続する1または複数の線状体とを備え、上記ベストに接続する線状体の先端には、上記ベストに接続するための固定部が備えられ、上記固定部および上記ベストには、互いに面接して着脱可能な着脱手段が設けられ、上記ベストに設けられる着脱手段は、上記ベスト前面の1または複数の箇所において所定の範囲に設けられ、上記ベストは、メッシュ製であり、上記着用者の体形に応じて調節可能な調節部を有していることを特徴とする。
【0014】
上記線状体のうち少なくとも一つの線状体と上記ベストの接続は、それぞれに面接する接続部材を介して行われ、上記接続部材の表面と裏面には、上記固定部および上記ベストのそれぞれと互いに面接して着脱可能な着脱手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
上記着脱手段は、面ファスナーであることを特徴とする。
【0016】
上記線状体のうち少なくとも一つの線状体の先端は、上記固定部において、上記接続部材の面と平行、かつ、所定の方向へ固定されることを特徴とする。
【0017】
上記ベストの背面には、上記着用者の背骨に沿って縦方向に設けられた背面固定部を有し、上記背面固定部は、硬膜外カテーテルを内設可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の装着型シミュレータは、模擬患者となる着用者が着装して看護演習に利用され、ベスト、および該ベストに接続する1または複数の線状体とを備え、ベストに接続する線状体の先端には、ベストに接続するための固定部が備えられ、固定部およびベストには、互いに面接して着脱可能な着脱手段が設けられ、ベストに設けられる着脱手段は、ベスト前面の1または複数の箇所において所定の範囲に設けられ、ベストは、着用者の体形に応じて調節可能な調節部を有しているので、看護演習において、術後模擬患者、および模擬患者に対する手技を学習する際に、脱ぎ着に手間取らず簡易に模擬患者となることができる。また、ベストが体に密着しやすいため、体位変換時に、線状体から受ける張力を模擬患者が感じやすく、着用者が実際の術後患者の状態をイメージしやすい。さらに、ベスト前面の任意の場所に線状体を接続することができるので、1つのシミュレータで様々な術式の術後状態を模擬患者に再現し、看護演習を行うことができる。また、ベストはメッシュ製であるので、通気性に優れ、長時間の演習が可能である。ベストに接続される線状体や医療機器を全て除去すれば、ベストは洗濯・乾燥が容易であるため、衛生的であるとともに、嵩張らないため、保管場所の確保が容易であり、シミュレータの維持管理負担が軽い。さらに、メッシュ製ベストは安価であるため、シミュレータの数を確保し易く、学習効率の向上に寄与する。上記の各種効果により、看護演習において、患者役、看護者役ともに、高い学習効果を得られる。
【0019】
線状体のうち少なくとも一つの線状体とベストの接続は、それぞれに面接する接続部材を介して行われ、接続部材の表面と裏面には、固定部およびベストのそれぞれと互いに面接して着脱可能な着脱手段が設けられているので、接続部材を介さない場合と比べ、線状体がベストから容易に外れにくい。それにより、演習の進行が妨げられにくく、学習効果の向上に寄与する。また、線状体と接続部材をまとめてベストから取り外すことが可能となるため、シミュレータの脱ぎ着がさらに容易となる。それにより、患者役は簡易、迅速に模擬患者となることができるため、着替え時間を短縮でき、演習自体の時間をより多く確保することができる。
【0020】
着脱手段は、面ファスナーであるので、簡易に各部を着脱でき、シミュレータを脱ぎ着する際に線状体が絡まることなく速やかに着替えることができる。また、汚れた場合には、洗濯や洗浄などをしても着脱手段の付着力が低下することなく、長期間使用することができるため、シミュレータの数を維持しやすく、学習環境を維持しやすい。
【0021】
線状体のうち少なくとも一つの線状体の先端は、固定部において、接続部材の面と平行、かつ、所定の方向へ固定されるので、現実の術後患者に近い状態を再現することができる。学生は、実際に患者が感じている術後の動きの制限や、看護の際に気を付けるべき点に気付きやすくなり、高い学習効果を得られる。
【0022】
ベストの背面には、着用者の背骨に沿って縦方向に設けられた背面固定部を有し、背面固定部は、硬膜外カテーテルを内設可能であるので、硬膜外カテーテルの皮膚固定の位置や方法も学習することができる。腹部だけでなく、背面にも硬膜外カテーテルが繋がった状態を再現することで、患者役は動きの更なる制約を学ぶことができ、看護者役は患者に接続する線状体が増えた場合の注意点や難しさを学ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の装着型シミュレータの正面図(第一実施形態)である。
【
図2】本発明の装着型シミュレータの正面図(第二実施形態)である。
【
図7】患者役によるシミュレータ着用状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の装着型シミュレータの例を以下に示す。第一実施形態を
図1を用いて説明する。
図1は、大学や専門学校などでの看護演習において、看護学生が服の上から、あるいは地肌に着装し、模擬患者となることができるシミュレータ1を正面側から見た場合の平面図である。シミュレータ1は、手術後の患者が離床する状況を想定した看護演習に、好適に用いることができる。シミュレータ1は、ベスト2、およびベスト2に接続する複数の線状体5とを備えている。ここで、排液導管の排液チューブ5bと、排液を貯留できる排液バッグ3bを合わせて腹腔ドレーンという。ベスト2には、心電図テレメータ3aから延伸する導線5a、および排液バッグ3bから延伸する排液チューブ5bが接続しており、導線5aおよび排液チューブ5bを合わせて線状体5という。
【0025】
線状体5のベスト2に接続する側の先端には、ベスト2に接続するための固定部8が備えられている。ここで、導線5aの先端を導線接続部8a、排液チューブ5bの先端を排液チューブ接続部8bといい、導線接続部8aと排液チューブ接続部8bを総称して、固定部8という。固定部8およびベスト2には、互いに面接して着脱可能な着脱手段7として面ファスナーが設けられている。具体的には、固定部8は、ベスト2と面接する面を有し、当該面接する面には、該ベスト2と着脱可能な面ファスナー(図示省略)が設けられている。また、ベスト2には、該固定部8の有する面ファスナーと着脱可能な面ファスナー7aが設けられている。ベスト2に設けられる面ファスナー7aは、ベスト2の前面を胸部から腹部まで覆うように設けられている。
【0026】
ベスト2は、ポリエステルのメッシュ生地が用いられたメッシュ製ベストであり、着用者の体形に応じて調節可能な調節部9を有している。調節部9は、着用者の左右の体側部に、それぞれ2つずつ設けられている。調節部の数は、左右の体側部に2つずつに限られず、ベストを密着させられれば、設置位置や、形状、数は自由に選択できる。線状体の先端は、ベストと面接して固定されることで、遊動が抑制され、ベストから外れにくい。また、心電図テレメータの導線接続部8a、や排液チューブ8bが、柔軟かつ密着性に優れたベストの前面に固定されることによって、装着者には患者が感じるものに近い違和感を得ることが可能である。
【0027】
ベストに設けられる着脱手段は、ベスト前面の1または複数の箇所において所定の範囲に設けられていれば、自由な位置に、自由な大きさで設けることができる。例えば、着脱手段は、
図1に示すように胸部から腹部までの広い範囲を覆うように設けるほか、胸部のみ、腹部のみ、または胸部と腹部それぞれ別個に設けるなどしてもよい。学習効果の観点からは、胸部から腹部までまとめて覆うように設けることが好ましい。それにより、ベスト前面の任意の場所に固定部を固定することができるため、種々の術後状態を想定して、線状体をベスト上の自由な場所に接続することができる。その結果として、患者役、看護者役ともに、より多くの術後状態を経験でき、学習効果の向上が期待される。
【0028】
着脱手段は、対向して面接する2つの面を可逆的に着脱可能にする部材であれば、上述した面ファスナーに限らず自由に選択することができる。例えば、易剥離性シートや、スナップボタンを使用してもよい。面ファスナーは、面での接合が可能で、着脱を繰り返しても接合力の低下が起こりにくいこととともに、ベストや固定部への取付も容易であるなどの理由から好ましい。
【0029】
面ファスナーの種類は、織物や、編物、樹脂成型タイプなどのさまざまな種類から選択できる。面ファスナーには、その片面にオスとメスが混在しない、いずれか一方のみが形成されたものを用いることが好ましい。これにより、シミュレータまたはベストを脱ぎ着する際に、同一の着脱手段同士が接合することを回避できるため、再び着用する場合に、接合した着脱手段を剥がす手間を削減することができる。ベストや固定手段などへの着脱手段の取付け方法としては、アイロン接着や、接着剤、両面テープ、縫い付けなどの種々の方法を自由に選択することができる。着脱手段の取付方法としては、使用時に必要な強度と耐久性の観点から、アイロン接着、接着剤、もしくは両面テープと、縫い付けを併用することが好ましい。
【0030】
ベスト前面の着脱手段には、所定の位置、大きさ、密度で、パンチング処理を施してもよい。それにより、通気性と身体への密着性の向上を図ることができ、学習効果の向上に寄与する。特に、着脱手段として面ファスナーを選択し、胸部から腹部までの広い範囲を覆うように設けた場合などには、ベストの剛性が高まることで身体への密着性が低下するとともに、通気性も悪化しやすい。そのため、上記パンチング処理を施した面ファスナーの適用は、シミュレータの身体への密着性、通気性の向上に効果的である。
【0031】
ベスト2は、フリーサイズであるが、メッシュ生地を用いたメッシュ製のベストであるため、頭から被り、左右の体側部に存する調節部9を用いて調節することで、着用者の体形にかかわらず、身体に密着させることができる。メッシュ生地の素材としては、柔らかく、通気性がよく、身体に密着しやすい素材であれば特に限定されず、例えば、綿や麻などの植物繊維、絹や羊毛などの動物繊維、レーヨンやキュプラなどの再生繊維、ナイロンや、ポリエステル、アクリル、ポリウレタンなどの合成繊維、その他紙や金属など、種々の素材から選択することができる。特に、通気性、柔軟性、身体への密着性などの観点からは、植物繊維や、合成繊維が用いられたメッシュ生地が好ましい。さらに、耐久性の観点も含めると、合成繊維がより好ましく、ナイロンや、ポリエステル、ポリウレタンなどがさらに好ましい。ベストを構成するメッシュ生地は、1種類に限られず、部位に応じて最適な機能を有するメッシュ生地を複数組み合わせてもよい。ここで、メッシュ製のベストは、ベストの一部または全部にメッシュ生地が用いられたベストを意味する。
【0032】
ベスト2の前面の面ファスナー7aには、創部21が表示された3cm×12cmの長方形の創部表示部材23が取り付けられている。創部表示部材23の面ファスナー7aと面接する面には、ベストへの着脱が可能となるよう面ファスナーが設けられている。術後の創部の状態や、位置を意識できるように、創部表示部材は、腹部に限らず、各演習で想定する術後の創部の位置や、患者の状態により、所定の大きさ、位置に設けることができる。創部表示部材は、腹部に限らず、胸部や、背面などに設けてもよい。また、創部表示部材は、目的に応じて、使用したり、使用しなかったりすることができる。創部表示部材の素材は自由に選択でき、例えば、平織の布や、綾織の布、メッシュなどの種々の布のほか、樹脂製の板などを用いることができる。創部の表示は、樹脂製の透明板の内部に創部の写真を入れたり、樹脂製の板の表面に直接創部の写真を印刷したりして行うことができる。また、創部の表示は、写真に限らず、樹脂製の板の上にシリコン素材で模擬創部を作成する方法で行ってもよい。
【0033】
本発明の装着型シミュレータの第二実施形態を
図2を用いて説明する。
図2は、複数の線状体のうちの一部の線状体とベストとの接続が、接続部材を介して行われたシミュレータ1’を正面側から見た場合の平面図である。シミュレータ1’において、心電図テレメータ3aから延伸する複数の導線のうちの1本である導線5a’および排液バッグ3bから延伸する排液チューブ5b’と、ベスト2の前面との接続は、それぞれに面接する接続部材4を介して行われる。ここで、心電図テレメータ3aおよび排液バッグ3bを医療機器3という。心電図テレメータ3aから延伸する導線5aは、ベスト前面の面ファスナーに直接接続している。接続部材4の表面と裏面には、固定部6およびベスト2のそれぞれと互いに面接して着脱可能な着脱手段として、面ファスナーが設けられている。ここで、接続部材4が有する2つの面のうち、固定部6と面接する面を表面といい、ベスト2と面接する面を裏面という。また、接続部材の着脱手段としては、2つの面を着脱可能とするものであれば面ファスナーに限られず、ベストや固定部に設けられる着脱手段と同様に、種々のものを選択することができる。
【0034】
導線5a’の固定部6aは、接続部材4の表面と面接する面を有し、当該面接する面には、該接続部材4の表面と着脱可能な面ファスナー(図示省略)が設けられている。また、接続部材4の表面には、該固定部6aの有する面ファスナーと着脱可能な面ファスナー(図示省略)が設けられている。また、接続部材4の裏面には、ベスト2の前面に設けられた面ファスナー7aと着脱可能な面ファスナー(図示省略)が設けられている。
【0035】
接続部材4には、上述のように、線状体5を通じて医療機器3が接続している。医療機器には、実際の医療現場で使用されるものを用いてもよいし、それに模したもので代用してもよい。なお、
図1および
図2に示した形態では、医療機器は線状体を介してベストに繋がっているが、その他の形態として、線状体とベストが接続していれば、医療機器やその代用品(以下、「医療機器など」という)は無くてもよい。看護演習の学習効果を得るためには、ベストには少なくとも線状体が接続している必要がある。それにより、演習者は、排液チューブ、導線などの線状体の形や、数、接続位置などを学習することができる。医療機器などを使用する場合は、心電図テレメータの電極は、ベストを介して接続されるため、本シミュレータ装着者の心電図をモニターすることはできない。そのため、心電図テレメータは小型の箱などで代用することが好ましい。心電図テレメータの導線および導線接続部、腹腔ドレーンなどは、学習効果の観点から、実際の医療現場で使用されるものを用いることが好ましい。また、疑似血液を排液バッグ内に入れた状態で演習を行ってもよい。
【0036】
ベスト2の腹部に設けられた接続部材4には、術後の創部の状態や、位置を意識できるように、創部21が表示されている。接続部材は、腹部に限らず、各演習で想定する術後の創部の位置や、患者の状態により、所定の大きさ、位置に設けることができる。また、創部の表示は、目的に応じて、行ったり、行わなかったりすることができる。接続部材を設ける位置は、腹部に限らず、胸部や、背面に設けてもよい。
【0037】
接続部材の大きさとしては、例えば、胸部から下腹部、さらに脇腹部まで広く覆う形状であってもよい。また、接続部材は、胸部や、腹部、脇腹部など身体の各部位ごとに、別々に設けてもよい。接続部材の素材は自由に選択でき、例えば、平織の布や、綾織の布、メッシュなどの種々の布のほか、樹脂製の板などを用いることができる。
【0038】
接続部材は、上述のように、表面に創部を設けることで、固定部の接続のためだけでなく、創部表示部材としての機能を持たせてもよい。その場合、接続部材の本体として、樹脂製の透明板の内部に創部の写真を入れたものや、樹脂製の板の表面に直接創部の写真を印刷したものを用いることができる。樹脂製の板を用いる場合、当該板に複数の穴開け加工を施し、メッシュ化することで、軽量化および通気性を向上することができる。また、この場合、樹脂製の板の剛性が低下するため、当該接続部材を接合したベスト着用時の身体への密着性が向上し、自然な装着感を得やすくなる。
【0039】
複数の線状体がベストに接続している場合、ベストと線状体の間の接続強度の観点から、少なくとも1つの線状体が接続部材を介してベストに接続していることが好ましい。ベストと線状体の先端の固定部との間に接続部材が存在することで、複数の着脱手段により張力を緩和することができ、一つの着脱手段への力の集中が抑制されるため、線状体がより外れにくくなる。
【0040】
次に、
図3(a)~(c)を用いて、シミュレータに用いられるベスト2および接続部材4について説明する。
図3(a)は、線状体および接続部材を外した状態のベスト2の表面を示す正面図である。また、
図3(b)は、接続部材4の裏面の平面図である。
図3(c)は、接続部材4の表面の平面図である。
【0041】
ベスト2の腹部には、接続部材と面接する面ファスナー7aが取り付けられ(
図3(a)参照)、接続部材4の裏面には、面ファスナー7aと面接する面ファスナー7bが取り付けられている(
図3(b)参照)。また、接続部材4の表面には、導線接続部と面接する面ファスナー7cが取り付けられ、また排液チューブ接続部と面接する面ファスナー7dが取り付けられている(
図3(c)参照)。導線接続部および排液チューブ接続部にはそれぞれ、上記面ファスナー7cおよび面ファスナー7dと面接する面ファスナーが取り付けられている(図示省略)。ここで、面ファスナー7a、面ファスナー7b、面ファスナー7c、および面ファスナー7dを着脱手段7という。
【0042】
このように、各部材が面接する面に着脱手段を設けることで、各部材を可逆的に着脱することが可能となる。これにより、ベストと接続部材の間で取り外すことや、接続部材と線状体の間で取り外すことが自由に選択できるため、状況に応じた着脱が可能となり、演習時の利便性に優れる。例えば、線状体を接続部材との間で取り外せることは、上述した非特許文献1のようにスーツ上に線状体を直接固定する場合に比べ、一つのシミュレータで種々の線状体や医療機器などを用いて様々な演習を行うことができるため有用である。また、同一の演習内容を、患者役が次々に交代しながら演習を行う場合には、ベストと接続部材の間で取り外すことで、線状体をまとめて取り外すことができる。それにより、線状体の抜けや絡まりなどを抑制できるとともに、簡易迅速に着替えることができる。
【0043】
着脱手段は、接続部材の表面上であれば自由な位置に、自由な大きさで設けることができる。例えば、
図3(d)に示すように、接続部材4’の表面上、創部21が表示されている場所以外の場所に、全面的に面ファスナー7eを設けてもよい。これにより、接続部材上の任意の場所に固定部を固定することができるため、種々の術後状態を想定して、医療機器を自由な場所に接続することができる。その結果として、模擬患者側、看護者側ともに、より多くの経験を積むことができることで、学習効果の向上が期待される。ここで、面ファスナー7eを着脱手段7という。
【0044】
図4(a)を用いて、ベストの調節部について説明する。
図4(a)はベストを開いた状態の外面の平面図である。ベスト2は、着用者の体形に応じてそのサイズを調節可能な調節部9を有する。調節部9は、調節帯9aと、調節帯9aと着脱可能な調節帯固定部9bとから構成される。調節帯9aは、着用者の左右の体側部のうち、腰部、脇腹部に位置するよう、左右それぞれに2つずつ設けられている。調節帯9aは、ベストの正面側方から左右に延在し、脇腹から背面まで到達するように設けられている。調節帯固定部9bは、ベストの背面に、調節帯9aと面接し、対となって固定できるように設けられる。調節帯9aと調節帯固定部9bの面接する面には、それぞれに面ファスナーが設けられており、可逆的に固定できる。ベスト2の本体の縁には、綾織の布によるパイピング部12が設けられている。また、調節帯9aも綾織の布で、ベスト2は、メッシュ生地である。
【0045】
調節部9には、上述の面ファスナーに限らず、可逆的に固定可能な固定手段であれば、自由に選択することができる。面ファスナー以外の固定手段としては、例えば、ボタン、スナップボタン、またはファスナーなどを選択することができる。これらの固定手段は、1つの手段のみを使用してもよいし、複数を組み合わせてもよい。密着性、固定力、および簡易な着脱性などの観点から、固定手段としては、面ファスナーが好適である。調節部は、着用者の身体への密着性を確保するため、より多く設けてもよい。例えば、腰部、脇腹部、脇下部の3か所へ設けることで、腹部のみでなく、胸部、背面も含めた上半身全体への密着性をより高めることができる。
【0046】
次に、
図4(b)を用いて、異種素材を用いたベストの一例について説明する。
図4(b)は、異種素材の生地から構成されるベスト2’を開いた状態の外面の平面図である。ベスト2’の調節帯10aおよび肩部11には、ジャージ素材の生地が使用され、それ以外の部位にはメッシュ生地が使用されている。ベスト2’本体の縁には、綾織の布によるパイピング部12が設けられており、肩部11の周囲のパイピング部12’には、ジャージ素材の生地が用いられている。
【0047】
ジャージ素材の生地の部位は、メッシュ生地の部位よりも伸縮性が高いため、ジャージ素材の生地とメッシュ生地の併用は、ベストの着心地および密着性を向上させることができる。また、離床動作のために模擬患者(ベスト着装者)が体位変換する際に、調節部が外れることを抑制でき、密着性を維持することができる。さらにジャージ素材の生地が用いられた調節帯10aでは、固定手段は調節帯の先端部に設けることが好ましい。これにより、ジャージ素材の伸縮効果を最大限に発揮することができる。
【0048】
図7に、
図1に示したシミュレータを着用した状態の患者役の上半身の斜視図を示す(創部表示部材は省略)。患者役はTシャツの上にシミュレータを着用している。
図7(a)は、斜め前方からの斜視図であり、
図7(b)は、斜め後方からの斜視図である。
図7に示すように、ベストは着用者の上半身の胸部、腹部、および背面のすべてに密着しているため、体位変換の際などに線状体からの引力として実際に患者が感じるものに近い違和感を得ることが可能である。これにより、患者役は高い学習効果を得ることができる。
【0049】
ベストの背面には、上述した排液チューブや導線などの線状体以外に、硬膜外カテーテルなどを接続してもよい。実際の術後の患者は、寝衣を着た患者あるいは看護者が持続硬膜外麻酔セットの操作を行えるように、腰の後ろから首の後ろまで硬膜外カテーテルをテープで貼り付けて固定される。ベストの背面の一例として、持続硬膜外麻酔セット14が接続されたベスト2の背面について、
図5を用いて説明する。
図5(a)は、背面固定部13を介して持続硬膜外麻酔セット14が接続されたベスト2の背面の平面図である。また、
図5(b)は上記背面固定部13および調節帯9aを開いた状態のベスト2の背面の平面図である。
【0050】
背面固定部13は、その内部に面ファスナーが設けられており、背骨に対して横方向に開閉可能である。また、背面固定部13の下方の腰部には、持続硬膜外麻酔セット14から延伸する硬膜外カテーテル15を連結する連結部16が設けられている。背面固定部13は、ベスト2に直接縫い付けて固定してもよいし、面ファスナーなどの着脱可能な部材で固定してもよい。離床の演習では、患者役の背中に持続硬膜外麻酔セットを接続することが多いこと、また背面に着脱可能な部材で固定した場合に、患者役の体位変換によりベッドとの摩擦力で背面固定部が外れるおそれがあることなどから、背面固定部を設ける場合、ベストへ直接縫い付けて固定することが好ましい。
【0051】
ベストの背面へ背面固定部を介して持続硬膜外麻酔セットを接続することで、硬膜外カテーテルを、腰の後ろから背骨に沿って首の後ろまで延設することができる。実際の術後の状態は、腰の後ろから脊髄へ挿入された硬膜外カテーテルは、腰から背骨に沿って首の後ろまでテープにより患者の背中に固定され、首の後ろから硬膜外カテーテルが延伸する状態となる。そのため、ベストの背面を上記構成とすることで、実際の術後に近い状況を再現でき、高い学習効果を得られる。
【0052】
ベストと硬膜外カテーテルの間の接続強度の観点からは、硬膜外カテーテルの先端は、背面固定部内部の連結部に連結され、背面固定部を介してベストに接続されていることが好ましい。硬膜外カテーテルを、背面固定部を用いず、ベストの背面に腰の後ろから首の後ろまでテープで直接貼付けた場合、ベストの布地表面の凹凸に起因して密着面積が小さいため密着力が低くなり、十分な接続強度を得られない。それに対し、背面固定部を用いた場合、硬膜外カテーテルの先端は背面固定部内部の連結部と連結し、線状の部分は背面固定部に内接するのみとすることで、硬膜外カテーテルの動きに一定の自由度が与えられるので、体位変換時に張力が発生しても硬膜外カテーテルが抜けにくくなる。それにより、演習がスムーズに進行しやすくなるため、学習効果の向上に寄与する。また、上記構成は、硬膜外カテーテルのベストからの取り外しが容易に行えるため、ベストを洗濯する際に手間がかからない。これにより、シミュレータを長期間に渡って使用することができるため、好ましい。
【0053】
図2における固定部6bについて、
図6を用いて、線状体の先端における、固定部との連結手段の一例について説明する。
図6は、排液チューブ5b(線状体)の先端を、排液チューブ接続部6b(固定部6)へ、連結部17を用いて連結した状態の平面図である。なお、本状態は、排液チューブ5bの取り外しを行う際に、排液チューブ接続部6bを開いた状態を示している。排液チューブ接続部6bは、その内部に、互いに接合可能な面ファスナー22aおよび面ファスナー22bを備えており、半分に折りたたんで開閉することが可能である。面ファスナー22aと面ファスナー22bを接合させて排液チューブ接続部6bを閉じると、連結部17および排液チューブ5bの先端が排液チューブ接続部6bの内部に収納される。排液チューブ接続部6bには、環状体20が備えられており、排液チューブ5bの先端には、環状体18を介してロブスターフック19が連結している。ここで、上述した環状体18、ロブスターフック19、および環状体20を合わせて、連結部17という。連結部17の各部材は、金属製であるため、所定の連結強度を確保できる。
【0054】
環状体18は、排液チューブ5bの先端に、貫通して連結している。また、環状体20は、排液チューブ接続部6bの内部の面ファスナー22aを貫通して連結している。環状体18に連結したロブスターフック19と、環状体20を連結することにより、排液チューブ5bの先端を排液チューブ接続部6bと連結でき、看護演習時に排液チューブがベストから外れることを抑制できる。また、排液チューブ5bを連結部17により排液チューブ接続部6bに連結し、さらに排液チューブ接続部6bを閉じることで、排液チューブ5bの先端は接続部材の面と平行、かつ、所定の方向へ固定することができる。これにより、実際の術後のように、テープにより排液チューブが患者の身体に固定され、所定の方向へ延伸している状況に近い状態とすることができる。また、排液チューブ5bは、面ファスナー22aと面ファスナー22bに挟まれた状態で固定されるため、先端の遊動が抑制される。それにより、排液チューブ5bは、単に連結部17に連結した場合に比べ、ベストからより外れにくくなる。
【0055】
上記連結部は、上述したベストの背面に設けられる背面固定部の連結部にも適用できる。硬膜外カテーテルのチューブ径が細い場合には、ロブスターフックなどを介さず、硬膜外カテーテルの先端を背面固定部側の環状体へ直接結び付けるなどしてもよい。
【0056】
次に、装着型シミュレータの脱ぎ着の方法について説明する。本シミュレータは、複数の線状体をベストに接続することができるが、線状体を接続した状態のまま着用者一人で脱ぎ着しようとすると、線状体が邪魔となり、脱ぎ着に手間と時間を要する。特に、無理に脱ぎ着しようとすると、固定具が破損したり、線状体が絡まったりするおそれがあるため注意を要する。介助者が着用者の脱ぎ着を介助できる場合、線状体の絡まりは起こりにくいため、線状体をベストに接続させたまま脱ぎ着することもできる。それにより、脱ぎ着に要する時間を短縮することができる。
【0057】
脱ぎ着の際には以下の手順で行うことが好ましい。まず初めに、線状体が接続していない状態のベストのみを着用し、調節部を調整して身体にベストを密着させる。その後、線状体をベストに接続することで、線状体の破損や絡まりなどの問題を防ぐことができる。また、シミュレータを脱ぐ際には、着用の場合とは逆に、初めに線状体を外し、その後にベストを脱ぐ手順とすることで、スムーズに脱ぐことができる。ベストに接続する線状体が少なかったり、着替えに慣れていたりする場合、線状体の絡みに留意すれば、線状体を接続したままの状態でベストを脱ぎ着することもできる。
【0058】
線状体が接続部材を介してベストに接続している場合、線状体の先端の固定部を接続部材から取り外すことによって、線状体をベストから取り外してもよいし。または、接続部材に線状体が接続した状態のまま、接続部材とベストの間を剥がすことで、線状体と接続部材をまとめてベストから取り外してもよい。線状体と接続部材をまとめてベストから取り外すことにより、線状体の絡まりが抑制されるため、取扱いが容易になる。その結果、シミュレータの脱ぎ着も容易になり、迅速に着替えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の装着型シミュレータは、術後模擬患者、および模擬患者に対する手技を学習する際に、簡易に模擬患者となることができ、看護学生の学習効果向上に寄与するので、大学や専門学校などでの看護学の演習に際して広く利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1、1’ シミュレータ
2、2’ ベスト
3 医療機器
3a 心電図テレメータ
3b 排液バッグ
4、4’ 接続部材
5 線状体
5a、5a’ 導線
5b、5b’ 排液チューブ
6 固定部
6a 導線接続部
6b 排液チューブ接続部
7 着脱手段
7a~7e 面ファスナー
8 固定部
8a 導線接続部
8b 排液チューブ接続部
9 調節部
9a 調節帯
9b 調節帯固定部
10a 調節帯
11 肩部
12、12’ パイピング部
13 背面固定部
14 持続硬膜外麻酔セット
15 硬膜外カテーテル
16、17 連結部
18、20 環状体
19 ロブスターフック
21 創部
22a、22b 面ファスナー
23 創部表示部材