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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】溶湯混合システム
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20220203BHJP
   F27B 3/04 20060101ALI20220203BHJP
   C22B 21/00 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C22B7/00 F
F27B3/04
C22B21/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020189243
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】391003727
【氏名又は名称】株式会社トウネツ
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 城也太
(72)【発明者】
【氏名】岩本 富弘
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-273050(JP,A)
【文献】特開平02-038538(JP,A)
【文献】特開平09-241774(JP,A)
【文献】特開2003-089826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/00
F27B 3/04
C22B 21/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1溶湯材料を溶解して第1溶湯を製造する第1溶解装置と、
第2溶湯材料を溶解して第2溶湯を製造する第2溶解装置と、
前記第1溶解装置と前記第2溶解装置を連結する連結管と、を有し、
前記第2溶解装置で製造した前記第2溶湯が、前記連結管の内部空間を通って前記第1溶解装置へ搬送され、前記第1溶解装置の内部の前記第1溶湯材料および前記第1溶湯の少なくとも一方と混合する構成とされ、
前記第2溶解装置は、前記第1溶解装置に搬送される前記第2溶湯を貯留する出湯室を備え、
前記第1溶解装置は、前記第2溶解装置から搬送された前記第2溶湯を貯留する受湯室を備え、
前記受湯室に貯留された前記第2溶湯の一部が前記受湯室の外に排出され、前記受湯室の液面の高さが低下すると、サイホンの原理によって、前記出湯室の前記第2溶湯が前記連結管を通じて前記受湯室へ移動する構成であり、
前記第1溶解装置は、
前記第1溶湯材料を投入する投入室と、
前記投入室から前記第1溶湯材料が供給され、供給された前記第1溶湯材料を溶解して前記第1溶湯を製造する溶解室と、を有し、
前記投入室は前記受湯室として用いられ、前記投入室の内部で前記第1溶湯材料と前記第2溶湯を混合する構成であることを特徴とする溶湯混合システム。
【請求項2】
前記第1溶解装置は
前記溶解室から前記第1溶湯が供給され、前記第1溶湯を貯留する貯留室と、を有し、
前記貯留室は前記受湯室として用いられ、前記貯留室の内部で前記第1溶湯と前記第2溶湯を混合する構成である請求項1記載の溶湯混合システム。
【請求項3】
前記第1溶湯材料は、新しい非鉄金属およびリターン材の少なくとも一方を含み、
前記第2溶湯材料は、ブリケット材および切粉の少なくとも一方を含む請求項1または2に記載の溶湯混合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の溶湯材料を第1溶解装置で溶解させて第1溶湯を製造するとともに、第2の溶湯材料を第2溶解装置で溶解させて第2溶湯を製造し、その後、第1溶湯と第2溶湯とを混合する溶湯混合システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶湯の材料として鉄がよく用いられている。しかし、近年は自動車の燃費向上を目的として車体の軽量化が進められており、比較的比重の小さいアルミニウム材やアルミニウム合金材などの非鉄金属を車体に用いる割合が増えつつある。そのため、非鉄金属の資源価値が上昇しつつあり、その貴重な非鉄金属資源を有効活用しようとする意識が高まっている。そのような意識の下、一度使用した非鉄金属と新たな非鉄金属(新材)とを混合して、新たな非鉄金属(新材)の使用量を削減する方法が求められている。
【0003】
前述の一度使用した非鉄金属としては、例えば、リターン材、ブリケット材、切粉等のスクラップ材を挙げることができる。スクラップ材のうち、前記リターン材は非鉄金属の成形時もしくは成形直後の加工時に発生する不要部分を粉砕機で粉砕したものを例示することができ、性状が新材に近く、新材とともに溶解して溶湯としやすい。前記ブリケット材は非鉄金属の加工時に発生する切削屑や切粉等を圧縮して固形にしたものを例示することができる。
【0004】
以上のように、一度使用した非鉄金属には様々な種類のものが存在するが、その種類によって再利用しやすい材料と再利用しにくい材料がある。具体的には、リターン材の再利用は前述のとおり比較的容易であるが、ブリケット材や切粉は再利用しにくい傾向がある。その理由は次のとおりである。
【0005】
一般的に、ブリケット材は前述のとおり、非鉄金属の加工時に発生する切削屑や切粉等を圧縮して固形にしたものであり、油分や水分を含むため、そのまま溶解すると質の高い溶湯とはならない。そのため、再利用する際は、まずブリケット材を乾燥等させてブリケット材に含まれる油分や水分等を蒸発等で取り除く前処理を行うのが望ましいが、新材と同様には溶湯に溶解し難い。また、ブリケット材は、比重が小さく表面積が大きいため湯面に浮きやすく溶解に際し一部が酸化されやすい。
【0006】
切粉も同様に比重が小さく表面積が大きいため湯面に浮きやすく溶解に際し一部が酸化されやすい。例えば、アルミニウム材やアルミニウム合金材は酸化アルミニウム(Al23)等の酸化物になりやすい。特に切粉は表面積が大きいため、単位重量当たりの酸化物量が多くなりやすい。そのため、酸化物の影響を受けて、酸化物を含む切粉全体の融点が上昇して溶けにくくなる。例えば、酸化アルミニウムの融点は2072℃であり、非常に溶けにくい性質となる。
【0007】
以上のように、ブリケット材や切粉には前述のような性質があるため、資源として再利用しづらい傾向がある。
【0008】
ここで、本発明に関連する先行技術文献を提示する。具体的には、本発明に関連する先行技術として、例えば下記特許文献1記載の発明がある。この特許文献1記載の発明は、補給用溶湯保持炉内の溶湯を鋳造用溶湯保持炉内へ配湯するために、サイホン機能を有する連結管を用いるという発明である。
【0009】
しかし、前記特許文献1記載の発明は、サイホン機能を有する連結管を用いて、保持炉内の溶湯を隣接する別の保持炉に移動させることを開示しているにすぎず、本発明のように二以上の溶湯を混合するシステムではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第5237752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、酸化しやすい性質を持つブリケット材や切粉を再利用するために、例えば、最初に切削油等の油分や水分が混入したアルミ切粉を洗浄液により油分を溶解したり水分を除外したりする。またはロータリーキルンでアルミニウムが酸化しないように仮焼して油分・水分を揮発させて除外する。その後、切粉を溶解炉に投入してアルミニウム溶湯を得たりする。または、切粉から油分や水分を除外しないままブリケット材にして、切削油を回収した上で、ブリケット材を乾燥させる場合もある。その後、乾燥させたブリケット材を溶解炉に投入してアルミニウム溶湯を得たりする。そして、前記アルミニウム溶湯を、別途新しいアルミニウム材やアルミニウム合金材等の溶湯と混合したり、別途新しいアルミニウム材やアルミニウム合金材等及びこれらのリターン材との溶湯と混合したりする方法が比較的よく用いられている。この別工程で溶解させたブリケット材や切粉の溶湯は、桶やラドルを用いて人力で溶解炉から保持炉へ移動させることが多い。
【0012】
しかし、溶湯を移動させる際や溶湯を保持炉に注ぎ入れる際に、溶解した溶湯が空気と接触して酸化する。その結果、移動させた溶湯の内部に酸化物が混入した状態となり、溶湯の品質が低下してしまうという問題がある。
【0013】
また、一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶湯と新たな非鉄金属(新材)の溶湯とを混合する際、または一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶湯と新しい非鉄金属(新材)及びリターン材の溶湯とを混合する際には、前記各非鉄金属や前記リターン材を予め定めた重量で溶解炉に投入する必要がある。例えば、必要な溶湯として、一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶湯重量が1時間当たり150kg、新たな非鉄金属(新材)の溶湯重量が1時間当たり150kg、合計1時間当たり300kg必要とする場合を考える。そのためには、バーナーやヒーター等の溶解設備を配置した溶解炉に、一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)を1時間当たり150kgの固体原料で投入するとともに、新たな非鉄金属(新材)を1時間当たり150kgの固体原料で投入することになる。バーナーやヒーター等の溶解設備からの火炎が均一に前記各非鉄金属に直接当たったとしても、一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶解速度と新たな非鉄金属(新材)の溶解速度とでは異なる。しかも、タワー型溶解炉の場合では、バーナーやヒーター等の溶解設備からの火炎に直接当たっている非鉄金属と当たっていない非鉄金属とでも溶解速度が異なる。これは、切粉は、火炎が直接当たると、瞬時に燃えて酸化物になってしまい溶解し難い傾向があり、また、ブリケット材は、火炎が直接当たるところで酸化物となり、溶解し難い傾向にあるからである。なお、リターン材は、先述したとおり、性状が新材に近く、新材とともに溶解して溶湯としやすく、新たな非鉄金属(新材)の溶解速度とほぼ同じと考えてよい。このように、固体原料での投入は、溶解速度に差が生じ、不均一でムラのある溶湯になるばかりか、予め定めた重量比率(上記の場合、一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶湯重量:新たな非鉄金属(新材)の溶湯重量=150kg:150kg=1:1)に必ずしもならないという不具合が生じやすかった。
【0014】
しかも、一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶湯と新たな非鉄金属(新材)の溶湯を混合する際、または一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶湯と新しい非鉄金属(新材)及びリターン材の溶湯とを混合する際には、各溶湯を投入する時間に差が生じやすい。そのため、一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶湯量と新たな非鉄金属(新材)の溶湯量を所望の混合比率(重量比率)にすること、または一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶湯量と新しい非鉄金属(新材)及びリターン材の溶湯量を所望の混合比率(重量比率)にすることは、先述のとおり、一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶解速度、新しい非鉄金属(新材)及びリターン材の溶解速度がそれぞれ異なるため、現実的に困難であるという問題もある。例えば、一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶湯量と新たな非鉄金属(新材)の溶湯量とを予め定めた混合比率(重量比率)で混合する場合、従来、まずは溶解速度が大きい新たな非鉄金属(新材)の溶湯を所定の混合比率(重量比率)通りに投入し、その後、溶解速度が小さく非鉄金属(新材)よりも遅く溶解する一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶湯を所定の混合比率(重量比率)通りに投入することがあった。このような時間差の投入による混合は、溶解速度の大きい新たな非鉄金属(新材)やリターン材は早く溶解するため、主に質がよい溶湯が先に保持炉に移動する傾向にある。その後、溶解速度の小さい一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶解による溶湯が混合され、質が劣る溶湯が保持炉に移動することになる。このことは、先に保持炉に移動した溶湯が、その後の鋳造工程に進めば製品の品質(強度等)はよいものとなる。一方で、その後保持炉に移動した、一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)の溶解による溶湯が混合した溶湯は、鋳造工程に進めば製品の品質(強度等)は劣る虞がある。このように、溶湯の品質特性に影響を与えるだけでなく、引いてはその後の鋳造工程における製品の品質(強度等)に悪影響を与えるおそれがあった。
【0015】
以上の説明では、最近需要が増している非鉄金属であるアルミニウム材、アルミニウム合金材を中心に述べてきたが、従来から溶湯によく用いられている鉄等についても同様の問題がある。
【0016】
したがって、本発明の主たる課題は、第1の溶湯材料を溶解させた第1溶湯と、第2の溶湯材料を溶解させた第2溶湯とを混合させる過程において、酸化物の発生を抑制することができ、酸化物が混ざっていない(または酸化物の混入量が少ない)均質な溶湯を製造するための溶湯混合システムを提供することにある。また、本発明の従たる課題は、予め定めた重量比率で第1溶湯と第2溶湯とを混合することができるための溶湯混合システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題は、以下の本発明によって解決することができる。すなわち、第1溶湯材料を溶解して第1溶湯を製造する第1溶解装置と、第2溶湯材料を溶解して第2溶湯を製造する第2溶解装置と、前記第1溶解装置と前記第2溶解装置を連結する連結管と、を有し、前記第2溶解装置で製造した前記第2溶湯が、前記連結管の内部空間を通って前記第1溶解装置へ搬送され、前記第1溶解装置の内部の前記第1溶湯材料および前記第1溶湯の少なくとも一方と混合する構成とされ、前記第2溶解装置は、前記第1溶解装置に搬送される前記第2溶湯を貯留する出湯室を備え、前記第1溶解装置は、前記第2溶解装置から搬送された前記第2溶湯を貯留する受湯室を備え、前記受湯室に貯留された前記第2溶湯の一部が前記受湯室の外に排出され、前記受湯室の液面の高さが低下すると、サイホンの原理によって、前記出湯室の前記第2溶湯が前記連結管を通じて前記受湯室へ移動する構成の溶湯混合システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る溶湯混合システムによれば、第1の溶湯材料を溶解させた第1溶湯と、第2の溶湯材料を溶解させた第2溶湯とを混合させる過程において、酸化物の発生を抑制することができ、酸化物が混ざっていない(または酸化物の混入量が少ない)均質な溶湯を製造することができる。また、溶湯同士の混合であるため、予め定めた重量比率で第1溶湯と第2溶湯とを混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る溶湯混合システムの平面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る溶湯混合システムの平面図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る溶湯混合システムの平面図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る溶湯混合システム(第2溶解装置1に循環室3がない態様)の平面図である。
図5】本発明の第5実施形態に係る溶湯混合システム(第1溶解装置10に循環室14を設けた態様)の平面図である。
図6図1のB-B’断面図である。(6A)は第1のB-B’断面図であり、(6B)は第2のB-B’断面図である。
図7】本発明の第6実施形態に係る溶湯混合システム(第4実施形態の第2溶解装置1の第2溶解装置4を1室にした態様)の平面図である。
図8図1のA-A’断面図である。(8A)は第1のA-A’断面図であり、(8B)は第2のA-A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る溶湯混合システムの好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の実施形態の一例を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきでない。
【0021】
(第1実施形態)
本発明に係る溶湯混合システムの第1実施形態を図1に示す。この溶湯混合システムは、第1溶解材料を溶解して第1溶湯を製造する第1溶解装置10と、第2溶解材料を溶解して第2溶湯を製造する第2溶解装置1と、第1溶解装置10と第2溶解装置1の間を連結する連結管W20を有し、連結管W20を介して、第2溶解装置1で製造した第2溶湯を第1溶解装置10へ搬送し、前記第1溶解装置10の内部で第1溶湯と第2溶湯を混合する構成になっている。
【0022】
(第1溶解装置10)
第1溶解装置10は、第1溶解材料を投入する第1投入室11と、第1投入室11から第1溶解材料を受け入れ、その第1溶解材料を溶解して第1溶湯を製造する第1溶解室12と、第1溶解室12から第1溶湯を受け入れ、鋳造機やダイカストマシン等の外部装置に供給するまで、第1溶湯を一時的に貯留する第1貯留室13と、を有する。
【0023】
第1投入室11と第1溶解室12は第11搬送路W11によって接続されている。この第11搬送路W11として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。以下においては、第11搬送路W11として管を設けた例を挙げて説明し、第11搬送路W11としての管を管W11と表示する。
【0024】
また、詳細は後述するが、第1実施形態では第1溶解材料のほかに第2溶湯も第1投入室11に投入されることから、第1投入室11は受湯室でもある。そのため、第1投入室11の内部では、第2溶湯の液内に第1溶解材料が混在した状態になっている。そして、この第1投入室11内の第2溶湯と第1溶解材料は、管W11の内部空間を通って第1溶解室12に流入する。
【0025】
第1溶解室12に流入した第1溶解材料は、第1溶解室12の内部に設置された浸漬バーナー7によって加熱され、溶解して第1溶湯になる。この浸漬バーナー7は、第1溶解室12の側壁から内部へ向かって延在した構造となっており、第1溶解室12内に貯留された溶湯の液面下に配置されている。いわゆる横浸漬型バーナーである。この浸漬バーナー7の内部は、例えば二重管構造になっている。具体的には、浸漬バーナー7の基端部からバーナー内に流入した熱風は、浸漬バーナー7の外壁に沿って浸漬バーナー7の先端部へ移動する。この熱風の移動過程で浸漬バーナー7の外壁面が加熱され、浸漬バーナー7の外壁面と接する溶湯や第1溶解材料が熱される。このようにして浸漬バーナー7の先端部に到達した熱風はその進行方向を反転し、浸漬バーナー7の中心部に配置された排気管の内部空間を浸漬バーナー7の基端部へ向かって移動した後、浸漬バーナー7の外に排気される。このような構造の浸漬バーナー7を用いるので、エネルギー効率の高い加熱が可能となる。また、上記は横浸漬型バーナーを例に説明したが、浸漬バーナー7は、第1溶解室12の天井壁から内部へ向かって延在した構造とし、第1溶解室12内に貯留された溶湯の液面下に配置されてもよい。いわゆる縦浸漬型バーナーであってもよい。なお、浸漬バーナーの代わりに、浸漬ヒーターを採用しても構わない。
【0026】
以上のようにして、第1溶解室12の内部で第1溶湯材料から第1溶湯が製造される。前述のように、第1投入室11から第1溶解室12に第2溶湯も流入するため、第1溶解室12の内部では、第1溶湯と第2溶湯が混合して、混合溶湯が製造される。
【0027】
また、第1溶解室12と第1貯留室13は第12搬送路W12によって接続されている。この第12搬送路W12として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。以下においては、第12搬送路W12として管を設けた例を挙げて説明し、第12搬送路W12としての管を管W12と表示する。
【0028】
第1溶解室12の内部で製造された混合溶湯は、前記管W12の内部を通って、第1貯留室13に流入する。以上のようにして、第1貯留室13の内部に混合溶湯が貯留される。この混合溶湯は、例えば、後段の鋳造機やダイカストマシン等へバッチ式または連続式で供給される。
【0029】
なお、図6(6A)に示す第1のB-B’断面図のように、第1溶解装置10の第1投入室11、第1溶解室12および第1貯留室13にはそれぞれ第1投入室蓋11L、第1溶解室蓋12L、第1貯留室蓋13Lが被せられている。各室11、12、13の内部空間は空気のない密閉空間となっていることが好ましい。このように各室11、12、13の内部を空気のない密閉空間にすることで、溶湯が空気中の酸素と接触する機会を少なくして、溶湯の一部が酸化することを防いでいる。特に、図6(6B)に示す第2のB-B’断面図のように、第1投入室11の上部開口部11a、第1溶解室12の上部開口部12a、第1貯留室13の上部開口部13aが、上方に向けて開口面積が漸次広く設定されて傾斜した内周面を有し、第1投入室蓋11L、第1溶解室蓋12L、第1貯留室蓋13Lが、それぞれの上部開口部11a、12a、13aに上方から嵌め込み可能に上部開口部11a、12a、13aの各内周面に対応して傾斜した外周面を有していることが望ましい。以上のような構成にすれば、上部開口部11a、12a、13aの各内周面のところまで溶湯面を上げても、上部開口部11a、12a、13aの各内周面を垂直にして、かつ第1投入室蓋11L、第1溶解室蓋12L、第1貯留室蓋13Lの各外周面も垂直にした場合に比べ、第1投入室蓋11L、第1溶解室蓋12L、第1貯留室蓋13Lを嵌め込んだときに隙間が生じづらくなるため、各室11、12、13内の溶湯の酸化を防ぎやすい。また、上部開口部11a、12a、13aに上方からそれぞれの第1投入室蓋11L、第1溶解室蓋12L、第1貯留室蓋13Lを嵌め込むだけで容易に上部開口部11a、12a、13aを閉塞することができる。なお、第1投入室11も第1溶湯材料を投入する以外は第1投入室蓋11Lが被せられている。第1貯留室13も、後段の鋳造機やダイカストマシン等へバッチ式または連続式で溶湯を供給したり、メンテナンスや点検をしたりする以外は第1貯留蓋13Lが被せられている。ただし、後述する連結管W20が第1貯留室13に配置される場合は、連結管W20が溶湯温度により伸縮したり、外部からの振動で損壊したりするのを防止するため、第1貯留室蓋13Lとの間に隙間等を設ける方が好ましい。
【0030】
また、図6(6A)(6B)に示すように、第1溶解装置10は複数層から構成することが好ましい。第1溶解装置10の各室11、12、13内の溶湯が外部に漏れだすことを防いだり、溶湯の熱が外部に伝わることを防いだり(断熱)する等の目的がある。図6(6A)(6B)では、第1溶解装置10を3層構造にしているが、2層にしたり、4層以上にしたりしてもよい。最も内側に位置する層(内層)10Aは、主として溶湯の浸透防止を目的として設けたものであり、例えばアルミナ(Al23)や二酸化珪素(SiO2)等の材料から構成される。最も外側に位置する層(外層)10Cは、主として断熱を目的として設けたものであり、例えば耐火性の布帛を張り付けて構成された断熱材層から構成される。内層10Aと外装10Cの間に位置する層(中間層)10Bは、主としてクラック(亀裂)が生じた際、溶湯が外壁まで到達させないことを目的として設けたものであり、例えば内層10Aよりも断熱性が高い耐火物材料から構成される。なお、外層10Cの外周、底面及び上面の一部は外壁、例えば鉄製の外壁(鉄皮)で覆われている。
【0031】
第1投入室11、第1溶解室12および第1貯留室13は、それぞれ管W11および管W12で連結されており、各室11、12、13の気圧もほぼ同じであるため、各室11、12、13の液面レベルはほぼ同一になっている。
【0032】
その状態から、第1貯留室13内の混合溶湯の一部が第1溶解装置10の外に排出されると、第1貯留室13内の混合溶湯の液面レベルが低下する。すると、その第1貯留室13内の液面レベルの低下を補うために、第2溶解装置1から第2溶湯が第1投入室11(受湯室)内へ自動搬送される。第1投入室11(受湯室)内に搬送された第2溶湯は、第1溶解室12の内部で第1溶湯材料から製造された第1溶湯と混合されて混合溶湯となり、その混合溶湯が第1貯留室13へと補充される。その結果、各室11、12、13の液面レベルが、以前の状態に回復する。
【0033】
(第2溶解装置1)
第2溶解装置1は、第2溶解材料を投入する第2投入室2と、第2投入室2から第2溶解材料を受け入れ、その第2溶解材料を溶解して第2溶湯を製造する第2溶解室4と、第2溶解室4から第2溶湯を受け入れ、第2溶湯中に残留している固形物等の不純物を浮遊又は沈殿させることで除去し、清浄な第2溶湯にする除去室5と、不純物が除去された第2溶湯を受け入れ、第1溶解装置10に供給するまで、第2溶湯を一時的に貯留する第2貯留室6と、を有する。
【0034】
なお、第4’搬送路W4’によって、第2投入室2と循環室3を接続している。この第4’搬送路W4’として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。第4’搬送路W4’としての管を管W4’と表示する。また、第5搬送路W5によって、循環室3と第2溶解室4を接続している。この第5搬送路W5として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。第5搬送路W5としての管を管W5と表示する。また、第1搬送路W1によって、第2投入室2と第2溶解室4を接続している。この第1搬送路W1として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。さらに、第1搬送路W1としての管を管W1と表示する。例えば、循環室3に設けられた金属溶湯循環用インペラーの回転(時計回りの回転)によって、第2溶解室4内の第2溶湯と第2溶解材料が、管W1、第2投入室2、管W4’、循環室3、管W5を経て第2溶解室4に循環することができる。特に、第2投入室2に新規に第2溶解材料が投入された際は、溶湯の温度が下がるため、循環室3に設けられた金属溶湯循環用インペラーの回転(反時計回りの回転)によって、第2溶湯と第2溶解材料を、管W1、第2溶解室4、管W5、循環室3、管W4’を経て第2投入室2に循環することで、新規に投入された第2溶解材料の溶解を第2溶解室4で促進させて溶湯とするとともに、溶湯の温度の下降を抑止することが望ましい。
【0035】
第2溶解室4に流入した第2溶湯と第2溶解材料は、第2溶解室4に設置された浸漬バーナー7によって加熱され、第2溶解材料が溶解して第2溶湯になる。この浸漬バーナー7は、第2溶解室4の側壁から内部へ向かって延在した構造となっており、第2溶解室4内に貯留された溶湯の液面下に配置されている。いわゆる横浸漬型バーナーである。この浸漬バーナー7の内部は、例えば先述の通りである。また、上記浸漬バーナー7は横浸漬型バーナーであったが、浸漬バーナー7を第2溶解室4の天井壁から内部へ向かって延在した構造とし、第2溶解室4内に貯留された溶湯の液面下に配置してもよい。いわゆる縦浸漬型バーナーであってもよい。なお、浸漬バーナーの代わりに浸漬ヒーターを採用しても構わない。
【0036】
先述したように、第2溶解室4の内部で第2溶湯材料から第2溶湯が製造される。管W4’を通って第2投入室2から循環室3に、さらに管W5を通って循環室3から第2溶解室4に第2溶湯と第2溶解材料が流入するため、第2溶解室4の内部では第2溶湯と第2溶解材料が混合した状態になっている。第1実施形態では、第2溶解室4は2室で構成されており、第6搬送路W6によって第2溶解室4同士が接続されている。この第6搬送路W6として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。第6搬送路W6としての管を管W6と表示する。これは、第2投入室側の第2溶解室4で第2溶解材料を十分に溶解させて溶湯にした上で、除去室5側の第2溶解室4に流入させることを目的としたものである。なお、第1実施形態のように第2溶解室4を2室で構成することに限られず、第2溶解室4を3室以上の室で構成してもよいし、後述する第6実施形態のように第2溶解室4を1室で構成してもよい。
【0037】
第2溶解室4と除去室5は第2搬送路W2によって接続されている。この第2搬送路W2として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。第2搬送路W2としての管を管W2と表示する。
【0038】
第2溶解室4の第2溶湯は、前記管W2の内部を通って、除去室5に流入する。
【0039】
除去室5では、除去室5に流入した第2溶湯を鎮静させ、溶湯中に残留している固形物等の不純物を浮遊又は沈殿させることで除去し、清浄な第2溶湯にする。
【0040】
また、除去室5と第2貯留室6が第3搬送路W3によって接続されている。この第3搬送路W3として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。第3搬送路W3としての管を管W3と表示する。
【0041】
除去室5で清浄にした第2溶湯は、管W3の内部を通って、第2貯留室6に流入する。除去室5には、第2溶湯の温度が低下しないように浸漬バーナー7を設置することが好ましい。この浸漬バーナー7は、図示したように除去室5の側壁から内側に向かって延在した構造となっており、除去室5内に貯留された溶湯の液面下に配置されている。いわゆる横浸漬型バーナーである。この浸漬バーナー7の内部は、例えば上述の通りである。また、上記の浸漬バーナー7は横浸漬型バーナーであったが、この浸漬バーナー7を除去室5の天井壁から内部へ向かって延在した構造とし、除去室5内に貯留された第2溶湯の液面下に配置されてもよい。いわゆる縦浸漬型バーナーであってもよい。なお、浸漬バーナーの代わりに、浸漬ヒーターを採用しても構わない。
【0042】
図8の8Aに、図1の第2溶解装置1のA-A’の断面図を示す。第2溶解装置1の第2投入室2、循環室3(図示せず)、第2溶解室4、除去室5および第2貯留室6(図示せず)にはそれぞれ第2投入室蓋2L、循環室蓋3L(図示せず)、第2溶解室蓋4L、除去室蓋5L、第2貯留室蓋6L(図示せず)が被せられている。各室2、3、4、5、6の内部空間は空気のない密閉空間となっていることが好ましい。このように、各室2、3、4、5,6の内部を空気のない密閉空間にすることで、溶湯が空気中の酸素と接触する機会を少なくして、溶湯の一部が酸化することを防いでいる。
【0043】
特に、図8の8Bに示すように、第2投入室2の上部開口部2a、循環室3の上部開口部3a(図示せず)、第2溶解室4の上部開口部4a、除去室5の上部開口部5a、第2貯留室6の上部開口部6a(図示せず)を上方に向けて開口面積が漸次広くなるように設定した傾斜した内周面にすることが好ましい。また、第2投入室蓋2L、循環室蓋3L(図示せず)、第2溶解室蓋4L、除去室蓋5L、第2貯留室蓋6L(図示せず)を、それぞれの上部開口部2a、3a、4a、5a、6aに上方から嵌め込みできるように、上部開口部2a、3a、4a、5a、6aの各内周面に対応した傾斜した外周面にすることが好ましい。以上のような構成にすれば、上部開口部2a、3a、4a、5a、6aの各内周面のところまで溶湯面を上げても、上部開口部2a、3a、4a、5a、6aの各内周面を垂直にして、かつ第2投入室蓋2L、循環室蓋3L、第2溶解室蓋4L、除去室蓋5L、第2貯留室蓋6Lの各外周面も垂直にした場合に比べ、第2投入室蓋2L、循環室蓋3L、第2溶解室蓋4L、除去室蓋5L、第2貯留室蓋6Lを嵌め込んだときに隙間が生じづらくなるため、各室2、3、4、5、6内の溶湯の酸化を防ぎやすい。また、上部開口部2a、3a、4a、5a、6aに上方からそれぞれの第2投入室蓋2L、循環室蓋3L、第2溶解室蓋4L、除去室蓋5L、第2貯留室蓋6Lを嵌め込むだけで容易に上部開口部2a、3a、4a、5a、6aを閉塞することができる。なお、第2投入室2も第2溶解材料を投入する以外は蓋が被せられている。第2貯留室6もメンテナンスや点検以外は第2貯留室蓋6Lが被せられている。ただし、後述する連結管W20が第2貯留室6に配置される場合は、連結管W20が溶湯温度により伸縮したり、外部からの振動で損壊したりするのを防止するため、第2貯留室蓋6Lとの間に隙間等を設ける方が好ましい。
【0044】
また、図8の(8A)(8B)に示すように、第2溶解装置1は複数層から構成することが好ましい。第2溶解装置1の各室2、3、4、5、6内の溶湯が外部に漏れだすことを防いだり、溶湯の熱が外部に伝わることを防いだり(断熱)する等の目的がある。図8の(8A)(8B)では、第2溶解装置1を3層構造にしているが、2層にしたり、4層以上にしたりしてもよい。最も内側に位置する層(内層)1Aは、主として溶湯の浸透防止を目的として設けたものであり、例えばアルミナ(Al23)や二酸化珪素(SiO2)等の材料から構成される。最も外側に位置する層(外層)1Cは、主として断熱を目的として設けたものであり、例えば耐火性の布帛を張り付けて構成された断熱材層から構成される。内層1Aと外装1Cの間に位置する層(中間層)1Bは、主としてクラック(亀裂)が生じた際、溶湯が外壁まで到達させないことを目的として設けたものであり、例えば1Aよりも断熱性が高い耐火物材料から構成される。なお、1Cの外周、底面及び上面の一部は外壁、例えば鉄製の外壁(鉄皮)で覆われている。
【0045】
(連結管W20)
連結管W20は、第1溶解装置10と第2溶解装置1の間を連結する管である。より具体的には、この連結管W20によって、第1溶解装置10の第1投入室11(受湯室)と第2溶解装置1の第2貯留室6(出湯室)の間を連結している。
【0046】
連結管W20の素材は特に限定されないが、耐熱性や耐久性の観点から、例えば、窒化珪素(Si34)質セラミックス、炭化珪素(SiC)及び窒化珪素(Si34)の成分を含む耐火物や炭化珪素(SiC)耐火物等を用いることが好ましい。また、連結管W20は一層の管であっても良いが、二層以上の管であってもよい。例えば、連結管W20を三層の管にする場合、最も中心側に位置する第1層(内層)をファインセラミックスからなる円筒状の層とし、最も外側に位置する第3層(外層)を酸化アルミニウム(Al23)及び二酸化珪素(SiO2)を主成分とした毛布状の断熱材などからなる円筒状の層とし、内層と外層の間の第2層(中間層)を酸化アルミニウム(Al23)及び二酸化珪素(SiO2)でできたセラミックスファイバーを熱板とした電気ヒーターなどの加熱手段を埋め込んでもよい。このような三層構造の連結管W20においては、内層よりも中心側に形成された空洞部分(内部空間)を溶湯が通過することになるが、外気温が低いときに、内部空間を流れる溶湯の温度が低下して固化し、連結管W20の内壁に溶湯の固化物が付着することを防止できる。
【0047】
連結管W20はサイホン機能を有している。詳しくは、連結管W20の内部が液体(例えば第2溶湯)で満たされた状態で、第1溶解装置10の第1投入室11内に貯留された第2溶湯の液面が低下すると、サイホンの原理によって、第2溶解装置1の第2貯留室6に貯留された第2溶湯が連結管W20の内部空間を通って第1投入室11へ自動搬送される構成となっている。
【0048】
連結管W20の配置は特に限定されないが、第2溶湯装置1の第2貯留室6に貯留された第2溶湯の液面よりも下に連結管W20の一端部を配置し、第1溶解装置10の第1投入室11内に貯留された第2溶湯の液面よりも下に連結管W20の他端部を配置することが好ましい。特に、連結管W20の両端は、各室の溶湯面付近及び各室の底面付近を除く溶湯の中央付近に配置することが望ましい。溶湯面付近には空気中の酸素と反応してできた酸化物の膜ができ易く、また、各室の底面付近には一度使用した非鉄金属(ブリケット材や切粉等)、新しい非鉄金属(新材)、リターン材に混入していた重金属が堆積していることから、酸化物の膜や重金属が溶湯と一緒に連結管W20の内部に混入することを避けるためである。連結管W20の両端をそれぞれ溶湯内に位置することにより、前述のサイホンの原理が生じるからである。同様に、サイホンの原理を実現するために、連結管W20の内部空間も溶湯で満たすことが好ましい。
【0049】
なお、連結管W20の両端部がそれぞれ溶湯の液面よりも下に位置している状態を維持するため、各室の溶湯の液面レベルを検知するレベルセンサを各室にそれぞれ設けることが好ましい。そして、連結管W20の両端部の少なくとも一方が溶湯の液面よりも上になる状態が近づいていることをレベルセンサが検知したときに、第1溶湯材料や第2溶湯材料を追加投入して、各部屋の溶湯の液面レベルを上昇させる構成にすることが好ましい。なお、第2貯留室6(出湯室)の溶湯の液面レベルが第1投入室11(受湯室)の溶湯の液面レベルより下であると溶湯が逆流してしまう。そのような不具合の発生を防止するため、逆流のおそれがあることをレベルセンサにより感知した場合、サイホンの原理を解除する。なお、サイホンの原理は、2つの異なる室に貯留された溶湯の液面の高さが異なるときに、液面の高い室に貯留された溶湯が、液面の低い室へ移動するものであり、各部屋の液面の高さがほぼ同じになった段階で、溶湯の移動が停止するものである。
【0050】
(第1溶解材料、第2溶解材料)
第1溶解材料は新しい非鉄金属およびリターン材の少なくとも一方を含むものであることが好ましい。第2溶解材料はブリケット材および切粉の少なくとも一方を含むものであることが好ましい。
【0051】
特に、第2投入室2をいわゆる渦室とし、渦室の下方に磁気攪拌装置または当出願人の特願2019-207478で記載した気体噴出装置を設けることが好ましい。渦室内の溶湯に渦流を発生させ、溶湯に比して比重の軽いブリケット材や切粉を外気との接触時間が短くなるよう溶湯内に引き込んで酸化物が形成され難いようにするためである。
【0052】
(第2実施形態)
図2に第2実施形態を示す。この第2実施形態では、連結管W20が第1溶解装置10の第1貯留室13(受湯室)と第2溶解装置1の第2貯留室6(出湯室)の間を連結している。第2貯留室6の第2溶湯は連結管W20を介して第1貯留室13(受湯室)に流入する。これにより、第2溶湯の滞留時間を短くし、溶湯が酸化することを防止することができる。その他は第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0053】
(第3実施形態)
図3に第3実施形態を示す。この第3実施形態では、連結管W20が第1溶解装置10の第1投入室11(受湯室)及び第1貯留室13(受湯室)と、第2溶解装置1の第2貯留室6(出湯室)の間を連結している。第2貯留室6の第2溶湯は連結管W20を介して第1投入室11(受湯室)および/または第1貯留室13(受湯室)に流入する。第1投入室11(受湯室)に流入した第2溶湯は、第1実施形態と同様に、第1溶解室12で再度昇温でき、第1貯留室13(受湯室)に流入した第2溶湯は、第2実施形態と同様に、第2溶湯の滞留時間を短くし、溶湯が酸化することを防止することができる。その他は第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0054】
(第4実施形態)
図4に第4実施形態を示す。この第4実施形態では、第2投入室2と第2溶解室4を第4搬送路W4によって接続している。この第4搬送路W4として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。以下においては、第4搬送路W4として管を設けた例を挙げて説明し、第4搬送路W4としての管を管W4と表示する。第2投入室2の内部では、第2溶湯と第2溶解材料が混在した状態になっている。そして、この第2投入室2内の第2溶湯と第2溶解材料は、管W4の内部空間を通って第2溶解室4に流入する。第2溶解室4と第2投入室2は管W1によっても接続されている。これにより、第2溶解室4、管W4、第2投入室2、管W1を経て第2溶解室4まで反時計回りに溶湯が循環することができるし、またその逆の時計回りにも循環することができる。循環は、固体原料を移動させることで、溶解しやすくし液状の溶湯にするとともに、溶湯の温度や粘度などの物理的性質の分布状態も均一にする。また、第2溶解装置1の第2投入室2、第2溶解室4、除去室5および第2貯留室6にはそれぞれ第2投入室蓋2L、第2溶解室蓋4L、除去室蓋5L、第2貯留室6Lが被せられている。各室2、4、5、6の内部空間は空気のない密閉空間となっていることが好ましい。その他は第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0055】
(第5実施形態)
図5に第5実施形態を示す。この第5実施形態では、第1投入室11と第1溶解室12との間は、第14搬送路W14によって接続されている。この第14搬送路W14として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。第14搬送路W14としての管を管W14と表示する。また、第1投入室11と循環室14との間は、第13搬送路W13によって接続されている。この第13搬送路W13として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。第13搬送路W13としての管を管W13と表示する。循環室14と第1溶解室12との間は、第11搬送路W11によって接続されている。この第11搬送路W11として、例えば内部が空洞になった管を挙げることができる。第11搬送路W11としての管を管W11と表示する。循環室14の中に金属溶湯循環用インペラーを備えても構わない。これにより、第1投入室11、第1溶解室12、循環室14の間を溶湯が効率よく循環することになり、第1溶解材料の溶解を促進させるとともに、より酸化物が混ざっていない(または酸化物の混入が少ない)均質な溶湯にすることができる。この循環について詳述すると、例えば循環室14に設けられた金属溶湯循環用インペラーの回転(正転または逆転)によって、第1溶解室12内の混合溶湯(第1溶湯と第2溶湯が混合したもの)が、管W14、第1投入室11、管W13、循環室14、管W11を経て第1溶解室12まで運ばれたり、その逆経路で第1溶解室12まで運ばれたりする。なお、第2溶解装置1の態様は特に限定されない。例えば、第1~第4、第6実施形態のいずれかの第2溶解装置1と同じ装置1としてもよい。
【0056】
(第6実施形態)
図7に第6実施形態を示す。この第6実施形態では、第4実施形態の第2溶解室4を1室にしたものである。1室にすることにより、メンテナンス時の清掃がしやすくなる。
【0057】
(その他)
上記では、浸漬バーナー7を例に説明をしたが、浸漬バーナー以外のバーナーを用いても良い。また、バーナーではなくヒーターを用いても良い。
【0058】
(各実施形態の効果)
第2溶解装置1から第1溶解装置10に溶湯を搬送する際に、第2溶解装置1内の第2溶湯を取り鍋で取り、その取り鍋をフォークリフトで運び、第1溶解装置10へ注ぎ入れる方法も考えられるが、溶湯の搬送過程で、第2溶湯が空気に触れて多くの酸化物が発生し、最終製品の品質が低下するおそれがある。また、搬送過程で溶湯が飛び散るおそれや、フォークリフトから排出される排ガスが工場内に充満するおそれがあり、作業者の作業環境が良いとも言えない。
【0059】
各実施形態のように、連結管W20を介して第2溶湯を搬送することで、搬送中に酸化物が発生する量を著しく少なくすることができ、結果として最終製品の品質を向上させることができる。また、作業者の作業環境の悪化を防ぐことができる。さらに、搬送に人手が必要なくなるため、人件費の削減にも貢献できる。
【0060】
また、溶湯同士を混合させるため、予め定めた重量比率で第1溶湯と第2溶湯とを混合することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…第2溶解装置、2…第2投入室、2a…第2投入室の上部開口部、2L…第2投入室蓋、3…循環室、3a…循環室の上部開口部、3L…循環室蓋、4…第2溶解室、4a…第2溶解室の上部開口部、4L…第2溶解室蓋、5…除去室、5a…除去室の上部開口部、5L…除去室蓋、6…第2貯留室、6a…第2貯留室の上部開口部、6L…第2貯留室蓋、7…バーナー(浸漬バーナー)(ヒーター)、10…第1溶解装置、11…第1投入室、11a…第1投入室の上部開口部、11L…第1投入室蓋、12…第1溶解室、12a…第1溶解室の上部開口部、12L…第1溶解室蓋、13…第1貯留室、13a…第1貯留室の上部開口部、13L…第1貯留室蓋、14…循環室、W1…第1搬送路、W2…第2搬送路、W3…第3搬送路、W4…第4搬送路、W4’…第4’搬送路、W5…第5搬送路、W6…第6搬送路、W11…第11搬送路、W12…第12搬送路、W13…第13搬送路、W14…第14搬送路、W20…連結管
【要約】      (修正有)
【課題】酸化物が混ざっていない(または酸化物の混入量が少ない)均質な溶湯を製造するための溶湯混合システムの提供。
【解決手段】第1溶湯を製造する第1溶解装置10と、第2溶湯を製造する第2溶解装置1と、第1溶解装置10と第2溶解装置1を連結する連結管W20とを有し、第2溶湯が、連結管W20を通って第1溶解装置10へ搬送され、第1溶解装置10の第1溶湯材料と混合する構成とされ、第2溶解装置1は、第1溶解装置10に搬送される第2溶湯を貯留する出湯室6を備え、第1溶解装置10は、第2溶解装置1から搬送された第2溶湯を貯留する受湯室11を備え、受湯室11に貯留された第2溶湯の一部が受湯室11の外に排出され、受湯室の液面の高さが低下すると、サイホンの原理によって、出湯室6の第2溶湯が連結管W20を通じて受湯室11へ移動する溶湯混合システム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8