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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】素子ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20220120BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20220120BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20220120BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20220120BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20220120BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H02M1/08 Z
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021202942
(22)【出願日】2021-12-14
(62)【分割の表示】P 2018541056の分割
【原出願日】2017-09-15
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2016186254
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲郎
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/043402(WO,A1)
【文献】特開2016-158457(JP,A)
【文献】国際公開第2016/025514(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/079762(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/081619(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0087529(US,A1)
【文献】特開2010-016035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08,3/155
H03K 17/687,17/695,17/06
H01L 21/8234,21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に不純物拡散層が形成された基板と、
中央部にチャネルとなる半導体領域が、一端にドレイン領域が、他端にソース領域がそれぞれ設けられるとともに前記ソース領域が前記不純物拡散層上に接続されて、第1の方向にライン状に並べられた複数の第1の半導体柱と、各々の前記第1の半導体柱の中央部を囲む第1のアレイゲート電極と、各前記第1の半導体柱と前記第1のアレイゲート電極との間にそれぞれ設けられたゲート絶縁膜とを有し、第1のMOSトランジスタ素子となる第1のトランジスタアレイと、
中央部にチャネルとなる半導体領域が、一端にソース領域が、他端にドレイン領域がそれぞれ設けられるとともに前記ドレイン領域が前記不純物拡散層上に接続されて、前記第1の方向にライン状に並べられた複数の第2の半導体柱と、各々の前記第2の半導体柱の中央部を囲む第2のアレイゲート電極と、各前記第2の半導体柱と前記第2のアレイゲート電極との間にそれぞれ設けられたゲート絶縁膜とを有し、前記第1のMOSトランジスタ素子と同じ極性の第2のMOSトランジスタ素子となる第2のトランジスタアレイと、
前記第1の半導体柱の各一端を相互に電気的に接続するドレイン接続部と、
前記第2の半導体柱の各一端を相互に電気的に接続するソース接続部と
を備え、
前記第1のトランジスタアレイと前記第2のトランジスタアレイとがそれぞれ複数設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1のトランジスタアレイと前記第2のトランジスタアレイとが交互に配され、
前記ドレイン接続部は、前記第1のトランジスタアレイごとに設けられ、
前記ソース接続部は、前記第2のトランジスタアレイごとに設けられ、
前記第1のアレイゲート電極同士を電気的に接続する第1のゲート接続部と、
前記第2のアレイゲート電極同士を電気的に接続する第2のゲート接続部と、
前記ドレイン接続部同士を電気的に接続するドレイン相互接続部と、
前記ソース接続部同士を電気的に接続するソース相互接続部と
を有することを特徴とする素子ユニット。
【請求項2】
前記ドレイン接続部と前記ソース接続部とは、同一の配線層に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の素子ユニット。
【請求項3】
前記第1のアレイゲート電極と前記第2のアレイゲート電極とは、同一のゲート電極層に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の素子ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプロセッサユニット等の半導体集積回路では、それが実装された電子回路基板から供給される直流電圧を降圧して、半導体回路の配線幅等に応じた電圧に変換することが行われている。このように電圧を変換する降圧型DC-DCコンバータには種々のものがあるが、マイクロプロセッサユニット等では、効率の高さから同期整流式のものが多く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された同期整流式の降圧型DC-DCコンバータは、変換元の電圧を出力する高電圧源の高電位端とグランドとの間に直列に接続されたハイサイドスイッチング素子及びローサイドスイッチング素子とこれらをオン・オフする駆動回路等とからなるスイッチング回路装置と、ハイサイドスイッチング素子とローサイドスイッチング素子との接続点に接続されて、スイッチング回路装置から出力される電圧を平滑化する平滑回路で構成される。高電位端側に接続されたハイサイドスイッチング素子には、p型MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)が用いられ、グランド(低電位)側に接続されたローサイドスイッチング素子にはn型MOSFETが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-18419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハイサイドスイッチング素子をオンするためには、ドレイン端子に加えられる変換元の電圧よりも高いゲート電圧が必要になる。そこで、ハイサイドスイッチング素子としてp型MOSFETを用いている。しかしながら、p型MOSFETは、n型MOSFETに比べてオン抵抗が大きい。このため、ハイサイドスイッチング素子における損失が大きく、スイッチング回路装置としての効率が悪いという問題があった。また、所望とするドレイン電流(IDS)を得るには、p型MOSFETは、n型MOSFETよりも素子サイズが大型になるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、スイッチング回路装置等に好適な素子ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の素子ユニットは、一方の面に不純物拡散層が形成された基板と、中央部にチャネルとなる半導体領域が、一端にドレイン領域が、他端にソース領域がそれぞれ設けられるとともに前記ソース領域が前記不純物拡散層上に接続されて、第1の方向にライン状に並べられた複数の第1の半導体柱と、各々の前記第1の半導体柱の中央部を囲む第1のアレイゲート電極と、各前記第1の半導体柱と前記第1のアレイゲート電極との間にそれぞれ設けられたゲート絶縁膜とを有し、第1のMOSトランジスタ素子となる第1のトランジスタアレイと、中央部にチャネルとなる半導体領域が、一端にソース領域が、他端にドレイン領域がそれぞれ設けられるとともに前記ドレイン領域が前記不純物拡散層上に接続されて、前記第1の方向にライン状に並べられた複数の第2の半導体柱と、各々の前記第2の半導体柱の中央部を囲む第2のアレイゲート電極と、各前記第2の半導体柱と前記第2のアレイゲート電極との間にそれぞれ設けられたゲート絶縁膜とを有し、前記第1のMOSトランジスタ素子と同じ極性の第2のMOSトランジスタ素子となる第2のトランジスタアレイと、前記第1の半導体柱の各一端を相互に電気的に接続するドレイン接続部と、前記第2の半導体柱の各一端を相互に電気的に接続するソース接続部とを備え、前記第1のトランジスタアレイと前記第2のトランジスタアレイとがそれぞれ複数設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1のトランジスタアレイと前記第2のトランジスタアレイとが交互に配され、前記ドレイン接続部は、前記第1のトランジスタアレイごとに設けられ、前記ソース接続部は、前記第2のトランジスタアレイごとに設けられ、前記第1のアレイゲート電極同士を電気的に接続する第1のゲート接続部と、前記第2のアレイゲート電極同士を電気的に接続する第2のゲート接続部と、前記ドレイン接続部同士を電気的に接続するドレイン相互接続部と、前記ソース接続部同士を電気的に接続するソース相互接続部とを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の素子ユニットよれば、直列に接続された第1のMOSトランジスタと第2のMOSトランジスタの間の直列抵抗が低減され、スイッチング回路装置等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を実施した降圧型DC-DCコンバータの回路構成を示す回路図である。
図2】縦型BC-MOSFETの外観を示す斜視図である。
図3】n型の縦型BC-MOSFETの基板バイアス電圧に対するVGS-IDS特性の変化を示すグラフである。
図4】n型の平面型MOSFETの基板バイアス電圧に対するVGS-IDS特性の変化を示すグラフである。
図5】n型、p型及び縦型、平面型の違いによるMOSFETの性能の違いを示すグラフである。
図6】直列に接続されたハイサイドスイッチング素子のオフ時の入力電圧の分配状態を示すグラフである。
図7】スイッチング回路部の各部の電位、電圧の変化を示すタイミングチャートである。
図8】スイッチング回路部の各部の電圧の変化のシミュレーション結果を示すグラフである。
図9】負荷電流の変化に対する効率の変化を示すグラフである。
図10】各ハイサイドスイッチング素子の損失を示すグラフである。
図11】ブートストラップ回路の各スイッチング素子をp型のMOSFETとした例を示す回路図である。
図12】第2実施形態の素子ユニットを示す斜視図である。
図13】素子ユニットのトランジスタを7×8のマトリクス状に配置した例を示す説明図である。
図14】7×8のマトリクスに対して各トランジスタアレイが傾けられた例を示す説明図である。
図15】各ハイサイドスイッチング素子をp型のMOSFETとした降圧型DC-DCコンバータの回路構成を示す回路図である。
図16】参考例2における素子ユニットの概略を示す説明図である。
図17】実施例1と参考例2における負荷の変化に対する効率の変化のシミュレーション結果を示すグラフである。
図18】参考例1と参考例3における負荷の変化に対する効率の変化のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1において、本発明を実施した降圧型DC―DCコンバータ(以下コンバータと称する)10は、スイッチング回路部11、駆動信号発生部12、レベルシフタ13、平滑回路14を備えている。このコンバータ10は、高電圧源(図示省略)からの変換元の電圧源である入力電圧Vin(例えば3.3V)を出力電圧Vout(例えば1.2V)に降圧して負荷15に供給する。また、スイッチング回路部11は、駆動電源(図示省略)からの駆動電圧Vhrの供給を受けて作動する。駆動電圧Vhrは、例えば1.65Vである。高電圧源及び駆動電源の低電位端は、グランドされて、装置全体の基準電位にされている。
【0011】
例えば、スイッチング回路部11を構成する各回路素子は、後述するブートストラップコンデンサCbの他は、負荷15となる回路ともに1つの半導体基板に形成され、1つのチップにまとめられている。
【0012】
スイッチング回路装置としてのスイッチング回路部11は、駆動部21と、この駆動部21によって駆動されるスイッチング素子部22とを有している。スイッチング素子部22は、高電圧源の高電位側に接続されたハイサイドスイッチング素子回路(以下、HSW回路と称する)23と、高電圧源の低電位側、すなわちグランド側に接続されたローサイドスイッチング素子回路(以下、LSW回路と称する)24とを有している。これらHSW回路23とLSW回路24とは直列に接続されており、HSW回路23とLSW回路24との接続点Pswが平滑回路14に接続されている。接続点Pswは、スイッチング回路部11の出力端に相当ないし接続された部位である。駆動部21は、上記HSW回路23を駆動するハイサイド駆動回路25と、LSW回路24を駆動するローサイド駆動回路26とを有している。
【0013】
駆動信号発生部12は、HSW回路23、LSW回路24をオン・オフするための駆動信号を生成する。駆動信号は、HSW回路23をオン・オフする第1駆動信号と、LSW回路24をオン・オフする第2駆動信号とがあり、駆動信号発生部12は、HSW回路23とLSW回路24とが交互にオンするように第1、第2駆動信号を生成する。駆動信号発生部12は、負荷15の大きさに応じて第1駆動信号、第2駆動信号のパルス幅を変化させるパルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)を行う。レベルシフタ13は、第1駆動信号をハイサイド駆動回路25の基準電位の信号となるように変換する。
【0014】
平滑回路14は、スイッチング回路部11の出力電圧、すなわち接続点Pswの電圧を平滑化して出力端子Poutに出力電圧Voutとして出力する。この平滑回路14は、一端が接続点Pswに、他端が出力端子Poutにそれぞれ接続されたチョークコイルL1と、一端がチョークコイルL1の他端に接続され、他端がグランドされコンデンサC1とを有している。
【0015】
上記HSW回路23は、ハイサイドスイッチング素子M1とハイサイドスイッチング素子M2とからなり、ハイサイドスイッチング素子M1、M2は、いずれもn型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)からなる。ハイサイドスイッチング素子M1、M2は、高電圧源の高電位端と上記接続点Pswとの間に直列に接続されている。この例では、高電圧源の高電位端に接続された高電位ラインLp1にハイサイドスイッチング素子M1のドレイン端子が接続され、ハイサイドスイッチング素子M1のソース端子とハイサイドスイッチング素子M2のドレイン端子とが互いに接続され、ハイサイドスイッチング素子M2のソース端子が接続点Pswに接続されている。LSW回路24がオフのときに、HSW回路23がオンすなわちハイサイドスイッチング素子M1、M2がオンになると、接続点Pswに高電圧源の高電位端が接続されて、入力電圧Vinが平滑回路14に出力される。ハイサイドスイッチング素子M1、M2は、そのゲート端子がハイサイド駆動回路25に接続されている。
【0016】
一方、LSW回路24は、ローサイドスイッチング素子M3とローサイドスイッチング素子M4とからなり、ローサイドスイッチング素子M3、M4は、いずれもn型のMOSFETからなる。これらローサイドスイッチング素子M3、M4は、上記接続点Pswと高電圧源の低電位端との間に直列に接続されている。すなわち、接続点Pswにローサイドスイッチング素子M3のドレイン端子が接続され、ローサイドスイッチング素子M3のソース端子とローサイドスイッチング素子M4のドレイン端子とが互いに接続され、ローサイドスイッチング素子M4のソース端子がグランドされている。HSW回路23がオフのときに、LSW回路24がオンすなわちローサイドスイッチング素子M3、M4がオンになると、接続点Pswがグランドされて、0Vの電圧が平滑回路14に出力される。ローサイドスイッチング素子M3は、そのゲート端子が駆動電源ラインLp2を介して駆動電源の高電位端に接続され、ローサイドスイッチング素子M4は、そのゲート端子がローサイド駆動回路26に接続されている。
【0017】
なお、この例では、ハイサイドスイッチング素子M1が第1のハイサイドスイッチング素子、ハイサイドスイッチング素子M2が第2のハイサイドスイッチング素子である。また、ローサイドスイッチング素子M3が第1のローサイドスイッチング素子、ローサイドスイッチング素子M4が第2のローサイドスイッチング素子である。
【0018】
この例では、HSW回路23、LSW回路24は、いずれも2個のスイッチング素子を直列に接続した構成であるが、それぞれ1個のスイッチング素子で構成することも可能である。この場合には、HSW回路23をハイサイドスイッチング素子M2だけで、またLSW回路24をローサイドスイッチング素子M4だけで構成すればよい。また、HSW回路23、LSW回路24を3個以上のスイッチング素子で構成してもよい。この場合、例えば、HSW回路23では、詳細を後述するハイサイドスイッチング素子M1のゲート端子のようにブートストラップコンデンサCbの一端がゲート端子に接続された複数のハイサイドスイッチング素子をハイサイドスイッチング素子M2と高電圧源の高電位端との間に直列に接続すればよい。LSW回路24では、接続点Pswとローサイドスイッチング素子M4との間に、ゲート端子がローサイドスイッチング素子M3のように接続された複数のローサイドスイッチング素子を直列に接続する。スイッチング素子のオフ時における各スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧の大きさを低減する観点からは、HSW回路23、LSW回路24のいずれも直列に接続された2個以上のスイッチング素子で構成し、入力電圧Vinを各スイッチング素子に分配することが好ましい。複数のスイッチング素子に分配することで、高い入力電圧Vinに対応可能になる。
【0019】
HSW回路23をオン・オフするハイサイド駆動回路25は、ブートストラップ回路25aと回路本体部25bとを有している。ブートストラップ回路25aは、p型のMOSFETのスイッチング素子M5及びn型のMOSFETのスイッチング素子M6からなるスイッチング回路と、ブートストラップコンデンサCbとから構成される。回路本体部25bは、直列に接続した複数のバッファ28で構成され、レベルシフタ13から第1駆動信号が入力され、この入力された第1駆動信号に応じてハイサイドスイッチング素子M2にゲート電圧Vgを印加する。
【0020】
ブートストラップ回路25aのスイッチング素子M5は、そのソース端子が駆動電源ラインLp2を介して駆動電源の高電位端に接続され、ゲート端子が接続点Pswに接続されている。これにより、スイッチング素子M5は、LSW回路24がオン、すなわちローサイドスイッチング素子M3、M4がオンすると、スイッチング素子M5のゲート端子にグランド電圧が印加され、このスイッチング素子M5がオンする。スイッチング素子M6は、そのドレイン端子及びゲート端子がスイッチング素子M5のドレイン端子に接続されており、スイッチング素子M5がオンとなることによってゲート電圧が印加されてオンとなる。
【0021】
ブートストラップコンデンサCbは、その一端がハイサイドスイッチング素子M1のゲート端子に接続され、他端が接続点Pswに接続されている。ブートストラップコンデンサCbの一端とハイサイドスイッチング素子M1のゲート端子との接続点Pbsには、スイッチング素子M6のソース端子が接続されている。これにより、ブートストラップコンデンサCbは、LSW回路24がオンとなっている間に、オンとなっているスイッチング素子M5、M6を介して、その一端が駆動電源の高電位端に接続され、他端がLSW回路24を介してグランドされるので、端子間電圧が駆動電圧Vhrとなるまで充電される。
【0022】
なお、ブートストラップ回路25aのスイッチング回路は、例えばスイッチング素子M5だけで構成することもできるが、上記のようにスイッチング素子M5、M6を直列に接続した構成とすれば、駆動電圧Vhrを各スイッチング素子に分配することできるので好ましい。スイッチング回路は、直列に接続した3個以上のスイッチング素子で構成してもよい。
【0023】
回路本体部25bの各バッファ28は、その正電源端子が接続点Pbsに接続され、負電源端子が接続点Pswに接続されている。これにより、第1駆動信号に応じてHSW回路23をオンとする場合に、回路本体部25bは、充電されたブートストラップコンデンサCbを電源として作動し、その充電電圧による接続点Pbsの電圧Vbsをハイサイドスイッチング素子M2のゲート電圧Vgとして印加して、ハイサイドスイッチング素子M2をオンする。ハイサイドスイッチング素子M1は、ハイサイドスイッチング素子M2のオンによりブートストラップコンデンサCbの充電電圧による接続点Pbsの電圧Vbsがゲート電圧Vgとして印加されてオンとなる。ところで、ハイサイドスイッチング素子M1、M2がオンする場合、LSW回路24のオフによってフローティング状態になった接続点Pswは、高電圧源の高電位端の入力電圧Vinまで上昇する。ブートストラップコンデンサCbは、一端が接続点Pbsに接続され、他端が接続点Pswに接続されているから、接続点Pbsの電圧Vbsは、接続点Pswの電圧Vswだけ高くなる。ハイサイドスイッチング素子M1、M2を完全にオンするためには、そのドレイン電圧となる入力電圧Vinよりも高いゲート電圧Vgが必要であるが、上記のように入力電圧VinよりもブートストラップコンデンサCbの充電電圧(=駆動電圧Vhr)だけ高いゲート電圧Vg(=Vbs)でハイサイドスイッチング素子M1、M2を完全にオンすることができる。
【0024】
LSW回路24をオン・オフするローサイド駆動回路26は、回路本体部25bと同様に直列に接続した複数のバッファ29で構成されている。ローサイド駆動回路26は、第2駆動信号に応じてLSW回路24をオンとする場合に、ローサイドスイッチング素子M4に駆動電源からの駆動電圧Vhrをゲート電圧Vgとして印加し、そのローサイドスイッチング素子M4をオンする。ローサイドスイッチング素子M3は、上記のようにゲート端子が駆動電源の高電位端に接続され、ソース端子がローサイドスイッチング素子M4に接続されているため、ローサイドスイッチング素子M4がオンとなると、それに連動してオンとなる。
【0025】
HSW回路23に用いるハイサイドスイッチング素子M1、M2としては、上記のようにオン抵抗が小さいn型のMOSFETを用いており、これにより同じ大きさのドレイン電流(IDS)を流すp型のMOSFETを用いた場合と比べて、トランジスタサイズを小さくすることができ、チップの小型化に有利になっている。また、p型のMOSFETを用いた場合と比べて、導通損失が小さく、高効率化すなわち省電力化を図ることができる。
【0026】
さらに、上記のようにHSW回路23とLSW回路24からなるスイッチング素子部22については、全てのスイッチング素子をn型MOSFETとすることにより、p型MOSFETを構成するn型ウェルを設ける必要がなく、またn型ウェルとn型MOSFETを構成するp型ウェルとを分離するための分離領域を半導体基板に設ける必要がなくなる。このため、スイッチング素子部22の半導体基板におけるサイズを小さくすることができるとともに、製造プロセスを少なくすることができる。
【0027】
ところで、ハイサイドスイッチング素子M1、M2がオンとなるとき、すなわちローサイドスイッチング素子M3、M4がオフとなっているときには、ハイサイドスイッチング素子M1、M2のソース端子が接続される接続点Pswの電位は、グランド電位に対してローサイドスイッチング素子M3、M4の閾値電圧分浮いた状態になる。このため、ハイサイドスイッチング素子M1、M2として、一般的な構造のn型のMOSFETを用いた場合、その浮きによる基板バイアス(バックバイアス)効果によりみかけ上の閾値電圧が高くなる。このため、所望とするドレイン電流(IDS)を得ようとすると、トランジスタサイズが大きくなってしまう。
【0028】
そこで、HSW回路23に用いるハイサイドスイッチング素子M1、M2としては、基板バイアス効果が生じない構造のMOSFETを用いることが好ましい。基板バイアス効果が生じない構造のMOSFETとしては、例えば縦型BC(Body Channel)-MOSFETが挙げられる。
【0029】
図2に一例を示すように、n型の縦型BC-MOSFET30は、半導体柱31と、半導体柱31の中央部の周囲を囲むように設けられたゲート電極35と、このゲート電極35と半導体柱31との間に設けられたゲート絶縁膜としてのゲート酸化膜36とを有し、半導体柱31の中央部にチャネルとなるp型半導体領域32が設けられ、一端にドレイン領域33が、他端にソース領域34がそれぞれ設けられた構造である。この縦型BC-MOSFET30は、例えばシリコン基板38上に形成されている。半導体柱31は、例えばシリコンにより形成され、ドレイン領域33及びソース領域34は、いずれもn型となるように半導体柱31の端部をドープしたものである。この縦型BC-MOSFET30では、p型半導体領域32が完全空乏化するため、バックバイアス効果による閾値電圧の上昇を無視することができる。なお、符号37は、ドレイン電極である。また、図2に示す縦型BC-MOSFET30は、半導体柱31の軸心がシリコン基板38の表面に垂直な方向に形成されているが、シリコン基板38の表面に水平な方向に形成したものであってもよい。さらに、複数の縦型BC-MOSFETを半導体柱31の軸心方向に積層してもよい。
【0030】
上記のような縦型BC-MOSFETは、半導体基板にウェル領域を作成する必要なく、またウェル領域と電気的に接続されたウェルコンタクト(電極)も不要であり、半導体回路基板の小型化及び製造プロセスの簡略化を図ることができる。
【0031】
図3は、図2に示す構造のn型の縦型BC-MOSFET30のゲート・ソース間電圧とドレイン電流特性(VGS-IDS特性)に対する基板バイアス効果の影響のシミュレーション結果を示すグラフである。このシミュレーションでは、シリコン基板38に基板バイアス電圧0V,-3.3Vを印加した状態を想定している。また、シミュレーションで用いた縦型BC-MOSFET30については、ゲート幅Wに相当する長さとしての半導体柱31の外周長を5μm、ゲート長(L)に相当する長さとしてのゲート電極35の高さ(半導体柱31の軸心方向の長さ)を0.18μmとした。結果として、基板バイアス電圧を変化させてもVGS-IDS特性は全く変化せず、基板バイアス効果が生じない構造であることがわかる。なお、n型の平面型MOSFETのVGS-IDS特性に対する基板バイアス効果の影響のシミュレーション結果を図4に示すように、平面型MOSFETでは、基板バイアス電圧を0Vから-3.3Vに変化すると閾値電圧が上昇し、基板バイアス効果が生じることがわかる。平面型MOSFETでは、ゲート幅(W)を5μm、ゲート長(L)を0.18μmとした。
【0032】
図5は、HSW回路23のハイサイドスイッチング素子M1、M2として、n型の縦型BC-MOSFETを用いた場合、p型の縦型BC-MOSFETを用いた場合、n型の平面型MOSFETを用いた場合、p型の平面型MOSFETを用いた場合のそれぞれについて、入力電圧Vinに対するHSW回路23から出力される出力電流の変化をシミュレーションした結果を示している。図中の曲線G1がn型の縦型BC-MOSFETを用いた場合の結果を示している。また、曲線G2がp型の平面型MOSFETを用いた場合、曲線G3がp型の縦型BC-MOSFETを用いた場合、曲線G4がn型の平面型MOSFETを用いた場合の結果をそれぞれ示している。
【0033】
上記シミュレーションでは、ハイサイドスイッチング素子M2のソース端子がグランドされているものとし、またn型の縦型BC-MOSFET、n型の平面型MOSFETを用いた場合では、それぞれ基板バイアス電圧として-3.3Vが印加されている状態を想定した。なお、縦型BC-MOSFETについては、ゲート幅Wに相当する長さとしての半導体柱31の外周長を5μm、ゲート長(L)に相当する長さとしてのゲート電極35の高さを0.18μmとし、平面型MOSFETでは、ゲート幅(W)を5μm、ゲート長(L)を0.18μmとした。
【0034】
図5に示すシミュレーション結果から、ハイサイドスイッチング素子M1、M2としてn型の縦型BC-MOSFETを用いた場合は、他の構造のものを用いた場合よりも大きな出力電流が得られることがわかる。例えば、入力電圧が0.10Vでは、ハイサイドスイッチング素子M1、M2としてn型の縦型BC-MOSFETを用いた場合の出力電流は、p型の平面型MOSFETを用いた場合の出力電流に対して94%も大きくなっている。
【0035】
図6は、ハイサイドスイッチング素子M1、M2としてn型の縦型BC-MOSFETを用いた場合(Vertical)と、n型の平面型MOSFETを用いた場合(Planar)について、入力電圧がオフ状態のハイサイドスイッチング素子M1、M2に分配される電圧(ドレイン-ソース間の電圧)の分配状態のシミュレーション結果を示している。この結果より、ハイサイドスイッチング素子M1、M2として縦型BC-MOSFETを用いた場合は、オフ状態のハイサイドスイッチング素子M1、M2に分配される電圧の分配状態が均一なものに近づくことがわかる。これは、縦型BC-MOSFETにおいて、基板バイアス効果がないことにより、ハイサイドスイッチング素子M1の閾値電圧の上昇が抑制された結果と考えられる。
【0036】
シミュレーション結果では、ハイサイドスイッチング素子M1として縦型BC-MOSFETを用いた場合は、平面型MOSFETを用いた場合に比べて、ドレイン-ソース間の電圧が0.25V小さくなっている。これにより、大きな入力電圧に対応することが可能になる。なお、シミュレーションでは、ハイサイドスイッチング素子M2のソース端子及びゲート端子をグランドし、ハイサイドスイッチング素子M1のドレイン端子に入力電圧Vinとして3.3Vを与え、さらにハイサイドスイッチング素子M1のゲート電位を1.65Vにしている。
【0037】
基板バイアス効果が生じない構造のMOSFETとして、さらにトリプルウェル構造のn型の平面型MOSFETを用いてもよい。n型のMOSFETにおけるトリプルウェル構造は、p型基板上にn型ウェルが形成され、このn型ウェル内にp型ウェルが形成され、p型ウェル内にn型のドレイン領域及びソース領域が形成され、さらにドレイン領域とソース領域との間のチャネル領域上にゲート絶縁膜を介してゲート電極が形成された構造である。この場合、ソース領域とn型ウェルとを接続することによって基板バイアス効果による閾値電圧の上昇を抑制することができる。
【0038】
なお、ハイサイドスイッチング素子M1、M2に加えて、LSW回路24に用いるローサイドスイッチング素子M3、M4についても、縦型BC-MOSFETやトリプルウェル構造のn型のMOSFETを用いることができる。
【0039】
以下、上記の構成の動作について図7を参照しながら説明する。なお、図7には、ハイサイドスイッチング素子M1のゲート電圧Vg、ハイサイドスイッチング素子M2のゲート電圧Vg、ローサイドスイッチング素子M3のゲート電圧Vg、ローサイドスイッチング素子M4のゲート電圧Vg、接続点Pbsの電位Vbs、接続点Pswの電位Vswをそれぞれ示してある。なお、ハイサイドスイッチング素子M1のゲート電圧Vgは、接続点Pswとの間の電位差であり、ローサイドスイッチング素子M3のゲート電圧Vgは、グランド電位との電位差を示している。
【0040】
まず、第2駆動信号に基づいて、ローサイド駆動回路26がローサイドスイッチング素子M4にゲート電圧Vg(=Vhr)を印加することによって、ローサイドスイッチング素子M4をオンする。ローサイドスイッチング素子M4がオンすると、ローサイドスイッチング素子M3にゲート電圧Vg(=Vhr)が印加されて、このローサイドスイッチング素子M3がオンする。このようにローサイドスイッチング素子M3、M4がオンすると、これらを介して接続点Pswがグランドされるため、平滑回路14にOVが出力される。なお、ローサイドスイッチング素子M3、M4がオンしている間は、ハイサイドスイッチング素子M1、M2はオフしている。
【0041】
一方、上記のようにローサイドスイッチング素子M3、M4がオンすると、接続点Pswに接続されているブートストラップコンデンサCbの他端がローサイドスイッチング素子M3、M4を介してグランドされる、また、ローサイドスイッチング素子M3、M4のオンにより、スイッチング素子M5、M6が順次にオンし、ブートストラップコンデンサCbの接続点Pbs側の一端が駆動電源の高電位端に接続される。これにより、駆動電源からの電流によってブートストラップコンデンサCbが充電され、接続点Psw側の他端を基準にして一端の電位が駆動電圧Vhrまで上昇する。すなわち、ブートストラップコンデンサCbの端子間電圧が駆動電圧Vhrになる。
【0042】
所定時間の経過後、第2駆動信号に基づいて、ローサイド駆動回路26によるローサイドスイッチング素子M4へのゲート電圧Vgの印加が停止されると、ローサイドスイッチング素子M4がオフし、これに伴ってローサイドスイッチング素子M3もオフする。接続点Pswは、グランドから切り離されてフローティング状態になる。また、ローサイドスイッチング素子M3、M4がオフすると、スイッチング素子M5、M6が順次にオフし、接続点Pbsが駆動電源の高電位端から切り離される。これにより、接続点Pbsには、接続点Pswを基準電位としてブートストラップコンデンサCbの端子間電圧である駆動電圧Vhrが与えられた状態になる。
【0043】
ブートストラップコンデンサCbの端子間電圧による接続点Pbsと接続点Pswとの間の駆動電圧Vhrが回路本体部25bに与えられる。そして、第1駆動信号に基づいてHSW回路23をオンするタイミングになると、回路本体部25bは、ゲート電圧Vgをハイサイドスイッチング素子M2に印加する。ハイサイドスイッチング素子M2のゲート・ソース間に印加される電圧は、ブートストラップコンデンサCbの端子間電圧(=Vhr)であるが、グランド電位を基準としたゲート端子に印加されるゲート電圧Vgは、ブートストラップコンデンサCbの端子間電圧(=Vhr)に、入力電圧Vinになる接続点Pswの電圧Vswを加えた電圧となる。したがって、ドレイン電圧よりも高いゲート電圧Vgが印加されてハイサイドスイッチング素子M2がオンする。
【0044】
また、ハイサイドスイッチング素子M1に印加される接続点Pswの電位を基準としたゲート端子に印加されるゲート電圧Vgは、ブートストラップコンデンサCbの端子間電圧(=Vhr)であるが、ハイサイドスイッチング素子M2がオンすると、グランド電位を基準としたゲート電圧は、ハイサイドスイッチング素子M2と同様に、端子間電圧(=Vhr)に入力電圧Vinになる接続点Pswの電圧Vswを加えたものとなる。したがって、ドレイン電圧よりも高いゲート電圧が印加されてハイサイドスイッチング素子M1がオンする。
【0045】
このようにハイサイドスイッチング素子M1、M2がオンすると、これらを介して接続点Pswが高電圧源の高電位端に接続される。これにより、平滑回路14に入力電圧Vinが出力される。
【0046】
所定時間の経過後、第1駆動信号に基づいて、ハイサイド駆動回路25によるハイサイドスイッチング素子M2へのゲート電圧Vgの印加が停止されると、ハイサイドスイッチング素子M2がオフし、これに伴ってハイサイドスイッチング素子M1もオフする。
【0047】
ハイサイドスイッチング素子M1、M2のオフ後には、上記同様にしてローサイドスイッチング素子M3、M4がオンし、このローサイドスイッチング素子M3、M4のオンの間に、ブートストラップコンデンサCbが充電される。また、ローサイドスイッチング素子M3、M4が所定時間経過後にオフすると、その後にハイサイドスイッチング素子M1、M2がオンする。上記同様に、ハイサイドスイッチング素子M1、M2はブートストラップコンデンサCbの充電電圧によってオンする。
【0048】
以上のようにして、交互にハイサイドスイッチング素子M1、M2のオンとローサイドスイッチング素子M3、M4のオンとが繰り返され、これに伴って接続点Pswから出力される電圧が入力電圧Vinと0Vとの間で変化する。そして、この変化する接続点Pswの電圧が平滑回路14で平滑化されることで、入力電圧Vinが降圧された出力電圧Voutが出力端子Poutから負荷15に供給される。
【0049】
図8は、スイッチング回路部11をスイッチング周波数100MHzとしたシミュレーションで得られたハイサイドスイッチング素子M2及びローサイドスイッチング素子M4のゲート電圧Vg、接続点Pbsの電位Vbs、接続点Pswの電位Vsw、出力端子Poutからの出力電圧Voutを示している。この結果から、スイッチング周波数100MHzでも、正常にスイッチング回路部11が動作することがわかる。なお、図8に示すグラフの横軸は時間である。
【0050】
また、図9に負荷電流の変化に対するコンバータ10の効率の変化のシミュレーション結果を示す。図9に示すグラフの横軸は負荷電流(A)であり、縦軸が効率(%)を示している。また、曲線G5がハイサイドスイッチング素子M1、M2としてn型の縦型BC-MOSFETを用いた場合を示し、曲線G6がハイサイドスイッチング素子M1、M2としてp型の縦型BC-MOSFETを用いた場合を示している。効率は、入力電圧Vinについてコンバータ10に投入した電力をP(Vin)とし、駆動電圧Vhrについてコンバータ10に投入した電力をP(Vhr)とし、さらに出力電力をPとしたときに、「効率=[P/(P(Vin)+P(Vhr))]×100%」として求めた。
【0051】
上記結果より、ハイサイドスイッチング素子M1、M2としてn型の縦型BC-MOSFETを用いた場合は、p型の縦型BC-MOSFETを用いた場合よりも高効率であることがわかる。ピーク効率同士で比べた場合、n型の縦型BC-MOSFETを用いた場合とp型の縦型BC-MOSFETを用いた場合との差は3%になる。また、n型の縦型BC-MOSFETを用いた場合は、重負荷でも効率が高く、負荷電流が2(A)となる条件では、p型の縦型BC-MOSFETを用いた場合との効率の差は11%になる。
【0052】
さらに、図10にハイサイドスイッチング素子M1、M2の内部損失のシミュレーション結果を示すように、ハイサイドスイッチング素子M1、M2としてn型の縦型BC-MOSFETを用いた場合は、p型の縦型BC-MOSFETを用いた場合よりも、それらの内部損失がかなり小さくなる結果となった。なお、ハイサイドスイッチング素子M1については、n型の縦型BC-MOSFETを用いた場合の内部損失はp型の縦型BC-MOSFETを用いた場合よりも43%低く、ハイサイドスイッチング素子M2についてはn型の縦型BC-MOSFETを用いた場合の内部損失はp型の縦型BC-MOSFETを用いた場合よりも46%低くなった。
【0053】
上記ではブートストラップ回路25aのスイッチング素子M6としてn型のMOSFETを用いているが、図11に示すように、スイッチング素子M6としてp型のMOSFETを用いてもよい。図11の例では、スイッチング素子M6は、そのソース端子がスイッチング素子M5のドレイン端子に接続され、ドレイン端子が接続点Pbsに接続される。また、スイッチング素子M6は、そのゲート端子がハイサイドスイッチング素子M2のゲート端子に接続されている。
【0054】
[第2実施形態]
第2実施形態は、HSW回路内の直列に接続された第1及び第2のハイサイドスイッチング素子をマルチピラー型の縦型BC-MOSFETを用いて構成したものである。なお、第1及び第2のハイサイドスイッチング素子をマルチピラー型の縦型BC-MOSFETを用いて構成した他は、コンバータの回路構成を含め第1の実施形態と同じであり、実質的に同じものには同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0055】
この例では、図12に示すように、ハイサイドスイッチング素子M1、M2(図1参照)との直列回路として素子ユニット50を用いている。この素子ユニット50は、大別して、シリコン基板38A、ハイサイドスイッチング素子M1となる複数の第1トランジスタアレイAr1と、ハイサイドスイッチング素子M2となる複数の第2トランジスタアレイAr2と、ドレイン配線51と、ソース配線52とを有している。詳細を後述するように、第1トランジスタアレイAr1は、それぞれ複数のトランジスタM1aが形成され、第2トランジスタアレイAr2は、それぞれ複数のトランジスタM2aが形成されており、各トランジスタM1a、M2aは、縦型BC-MOSFETとなっている。
【0056】
シリコン基板38Aは、一方の面に不純物拡散層が形成されている。この不純物拡散層により、トランジスタM1aのソース領域34とトランジスタM2aのドレイン領域33とを電気的に接続する。トランジスタM1a、M2aがn型のMOSFETであるため、不純物拡散層はn型の不純物をドープしたものとなっている。なお、シリコン基板38Aがn型の半導体基板であってもよい。また、シリコン基板38Aは、他の回路が形成された基板の一部に不純物拡散層を形成したものであってもよい。
【0057】
第1トランジスタアレイAr1は、複数(この例では4個)のトランジスタM1aを一体にしたものであり、所定の間隔でX方向にライン状に並んだ複数の第1の半導体柱としての半導体柱31aと、各半導体柱31aに共通に設けられ各々の半導体柱31aの中央部を囲む第1のゲートアレイ電極としての第1アレイゲート電極35aと、半導体柱31aと第1アレイゲート電極35aとの間に設けたゲート絶縁膜としてのゲート酸化膜36とを有している。1本の半導体柱31aと、その中央部の周囲に設けたゲート酸化膜36及び第1アレイゲート電極35aとによって1つのトランジスタM1aが構成され、第1トランジスタアレイAr1には、第1アレイゲート電極35aを共通のゲート電極とする複数のトランジスタM1aが形成されている。
【0058】
上記トランジスタM1aの構成は、第1実施形態の縦型BC-MOSFET30(図2参照)と基本的に同じある。すなわち、トランジスタM1aの半導体柱31aは、その中央部にチャネルとなるp型半導体領域32が設けられ、一端にn型のドレイン領域33が、他端にn型のソース領域34がそれぞれ設けられた構造を有している。半導体柱31aは、その他端の端面すなわちソース領域34がシリコン基板38Aの一方の面に直接に接続された状態で、シリコン基板38Aの一方の面上に起立した姿勢に設けられている。半導体柱31aの上面(一端の端面)には、ドレイン電極となるコンタクト37aが設けられている。
【0059】
第2トランジスタアレイAr2は、複数(この例では4個)のトランジスタM2aを一体にしたものであり、所定の間隔でX方向にライン状に並んだ複数の第2の半導体柱としての半導体柱31bと、各半導体柱31bに共通に設けられ各々の半導体柱31bの中央部を囲む第2のゲートアレイ電極としての第2アレイゲート電極35bと、半導体柱31bと第2アレイゲート電極35bとの間に設けたゲート酸化膜36とを有している。1本の半導体柱31bと、その中央部の周囲に設けたゲート酸化膜36及び第2アレイゲート電極35bとによって1つのトランジスタM2aが構成され、第2トランジスタアレイAr2には、第2アレイゲート電極35bを共通のゲート電極とする複数のトランジスタM2aが形成されている。
【0060】
トランジスタM2aについても、縦型BC-MOSFET30と同様であり、半導体柱31bには、その中央部にp型半導体領域32が、一端にn型のドレイン領域33が、他端にn型のソース領域34がそれぞれ設けられている。トランジスタM2aの半導体柱31bは、一端の端面すなわちドレイン領域33がシリコン基板38Aの一方の面に直接に接続された状態で、シリコン基板38Aの一方の面上に起立した姿勢に設けられている。半導体柱31bの上面(他端の端面)には、ソース電極となるコンタクト37bが設けられている。なお、シリコン基板38Aの表面からの各半導体柱31a、31bの上端までの高さを同じにしている。
【0061】
上記のように構成される第1トランジスタアレイAr1と第2トランジスタアレイAr2とは、それぞれX方向に延びており、これら第1トランジスタアレイAr1と第2トランジスタアレイAr2とは、X方向と直交するY方向に所定の間隔で交互に配置されている。この例では、第1トランジスタアレイAr1と第2トランジスタアレイAr2とがそれぞれ2個ずつ設けられている。また、1つの第1トランジスタアレイAr1または第2トランジスタアレイAr2には、4個のトランジスタM1aまたはトランジスタM2aが設けられている。したがって、素子ユニット50には、トランジスタM1a、M2aが4×4のマトリクス状に設けられている。なお、X方向、Y方向は、いずれもシリコン基板38の面に平行な方向である。また、この例では、X方向が第1の方向であり、Y方向が第2の方向である。
【0062】
第1アレイゲート電極35a及び第2アレイゲート電極35bは、それぞれX方向に延びている。各第1アレイゲート電極35aは、X方向の一方の端部で第1ゲート接続部56によって相互に電気的に接続され、各第2アレイゲート電極35bは、X方向の他方の端部で第2ゲート接続部57によって相互に電気的に接続されている。例えば、各第1アレイゲート電極35aと第1ゲート接続部56とが一体に形成され、また各第2アレイゲート電極35bと第2ゲート接続部57とが一体に形成され、それぞれ櫛状のユニットゲート電極を構成する。各ユニットゲート電極は、同一のゲート層に形成されている。第1ゲート接続部56は、ハイサイドスイッチング素子M1のゲート端子となり、第2ゲート接続部57は、ハイサイドスイッチング素子M2のゲート端子となり、それぞれハイサイド駆動回路25(図1参照)に接続される。
【0063】
ドレイン配線51は、第1トランジスタアレイAr1ごとに設けられたドレイン接続部51aと、ドレイン接続部51a同士を電気的に接続するドレイン相互接続部51bとからなり、櫛状に形成されている。ドレイン接続部51aは、X方向に延びており、対応する第1トランジスタアレイAr1内のコンタクト37a同士を電気的に接続する。ドレイン相互接続部51bは、Y方向に延びており、各ドレイン接続部51aの一端に一体に形成されている。
【0064】
ソース配線52は、第2トランジスタアレイAr2ごとに設けられたソース接続部52aと、ソース接続部52a同士を電気的に接続するソース相互接続部52bとからなり、櫛状に形成されている。ソース接続部52aは、X方向に延びており、対応する第2トランジスタアレイAr2内のコンタクト37b同士を電気的に接続する。ソース相互接続部52bは、Y方向に延びており、ドレイン相互接続部51bとは反対側のソース接続部52aの一端に一体に形成されている。このソース配線52は、ドレイン配線51と同一のメタル配線層に形成されている。
【0065】
ドレイン相互接続部51bは、ハイサイドスイッチング素子M1のドレイン端子となり、高電位ラインLp1(図1参照)に接続される。また、ソース相互接続部52bは、ハイサイドスイッチング素子M2のソース端子となり、接続点Psw(図1参照)に接続される。
【0066】
なお、シリコン基板38の面に垂直な方向から見て素子ユニット50を平面視したときに、ドレイン配線51、ソース配線52と、上述の各ユニットゲート電極の形状及び位置が一致することが好ましい。
【0067】
上記のように構成される素子ユニット50では、各第1トランジスタアレイAr1の各トランジスタM1aが、そのドレイン領域33、ソース領域34、ゲート電極がそれぞれ同じもの同士で電気的に接続されて1つのハイサイドスイッチング素子M1となる。同様に、各第2トランジスタアレイAr2の各トランジスタM2aが、そのドレイン領域33、ソース領域34、ゲート電極がそれぞれ同じもの同士で電気的に接続されて1つのハイサイドスイッチング素子M2となる。また、各トランジスタM1aのドレイン領域33と各トランジスタM2aのソース領域34とがシリコン基板38Aの不純物拡散層を介して電気的に接続されているため、素子ユニット50全体として、ハイサイドスイッチング素子M1のソース端子とハイサイドスイッチング素子M2のドレイン端子とを接続した、ハイサイドスイッチング素子M1とハイサイドスイッチング素子M2の直列回路となる。
【0068】
上記の素子ユニット50では、第1トランジスタアレイAr1と第2トランジスタアレイAr2とを交互に配置することにより、トランジスタM1aの半導体柱31aの周囲には複数のトランジスタM2aの半導体柱31bが近接して配され、同様にトランジスタM2aの半導体柱31bの周囲には複数のトランジスタM1aの半導体柱31aが近接して配される。このため、シリコン基板38A(不純物拡散層)の表面におけるトランジスタM1aの半導体柱31aの端面が接触している箇所とトランジスタM2aの半導体柱31bの端面が接触している箇所との距離が短くなるとともに、不純物拡散層を介して半導体柱31a、31bの一方に対して他方が複数接続される状態になる。この結果、シリコン基板38Aを介して接続される各々の半導体柱31aのソース領域34と半導体柱31bのドレイン領域33との間の不純物拡散層の寄生抵抗成分が小さくなる。
【0069】
上記のように、各々の半導体柱31aのソース領域34と半導体柱31bのドレイン領域33との間の不純物拡散層の寄生抵抗成分が小さくなるため、ハイサイドスイッチング素子M1のソースとハイサイドスイッチング素子M2のドレインとの間の直列抵抗(以下、ソースドレイン間直列抵抗という)が低く抑えられ、結果としてコンバータ10の効率が向上する。
【0070】
また、この例では、上述のように半導体柱31a、31bの高さを同じにしているため、半導体柱31a、31bから、同一の配線層に形成されるドレイン配線51及びソース配線52までの距離が同じになり、コンタクト37a、37bの高さが同じになる。この結果、コンタクト37a、37bの一方の高さを大きくする必要がないのでコンタクト抵抗を小さくでき、その分についてもソースドレイン間直列抵抗が低く抑えられるので、コンバータ10の効率がより向上する。
【0071】
上記ではトランジスタを4×4のマトリクス状に配した構成を例に説明したが、トランジスタの配列は、これに限定されない。図13は、7×8のマトリクス状にトランジスタM1a、M2aを配置したものであり、X方向に延びた第1トランジスタアレイAr1及び第2トランジスタアレイAr2をそれぞれ4列設け、第1トランジスタアレイAr1、第2トランジスタアレイAr2には、7個のトランジスタM1a、M2aをそれぞれ設けてある。図14は、図13の例と同様に7×8のマトリクス状にトランジスタM1a、M2aを配置したものであるが、第1トランジスタアレイAr1、第2トランジスタアレイAr2をX方向に対して45度傾けたものとなっている。また、この図14の例では、トランジスタM1a、M2aの個数が異なる第1トランジスタアレイAr1、第2トランジスタアレイAr2が混在する。さらに、例えば、第1トランジスタアレイAr1と第2トランジスタアレイAr2とを1つずつ設け、これらを隣接させて配置してもよい。なお、図13図14では、トランジスタM1aに文字「D」を、トランジスタM2aに文字「S」を付してある。
【0072】
なお、上記のようなマルチピラー型の縦型BC-MOSFETを用いた素子ユニットは、図15に一例を示すように、p型のMOSFETであるハイサイドスイッチング素子M1、M2を直列に接続した構成にもソースドレイン間直列抵抗が低く抑えることができる点で有用である。図15に示すコンバータ10AのHSW回路23Aは、p型のMOSFETからなるハイサイドスイッチング素子M1、M2が直列に接続されている。ハイサイドスイッチング素子M1のソース端子が高電位ラインLp1に接続され、ハイサイドスイッチング素子M1のドレイン端子とハイサイドスイッチング素子M2のソース端子とが互いに接続され、ハイサイドスイッチング素子M2のドレイン端子が接続点Pswに接続されている。また、ハイサイドスイッチング素子M1は、そのゲート端子がハイサイド駆動回路25に接続され、ハイサイドスイッチング素子M2は、そのゲート端子が駆動電源ラインLp2に接続されている。この例におけるハイサイド駆動回路25には、ブートストラップ回路は設けられていない。バッファで構成される回路本体部25bは、その一対の電源端子には入力電圧Vin、駆動電圧Vhrが入力される。なお、その他の構成は、図1に示すコンバータ10と同様であり、実質的に同じ部材には同一の符号を付してある。
【0073】
この場合、ハイサイドスイッチング素子M1、M2を構成するトランジスタの半導体柱は、その中央部のチャネルとなる半導体領域をn型とし、一端及び他端のドレイン領域及びソース領域をp型とする。また、ハイサイドスイッチング素子M1となる各トランジスタの半導体柱は、そのドレイン領域をシリコン基板の一方の面に接続された状態とし、ハイサイドスイッチング素子M2となる各トランジスタの半導体柱は、そのソース領域をシリコン基板の不純物拡散層を形成した一方の面に接続された状態として、シリコン基板38Aの一方の面に起立した姿勢に設ければよい。さらに、ハイサイドスイッチング素子M1となる各トランジスタの半導体柱には、ソース配線を電気的に接続し、ハイサイドスイッチング素子M2となる各トランジスタの半導体柱には、ドレイン配線を電気的に接続する。シリコン基板の不純物拡散層は、p型の不純物をドープしたものとする。
【0074】
上記の素子ユニット50を用いたコンバータ10の負荷電流の変化に対する効率の変化のシミュレーションを実施例1として行った。この実施例1では、コンバータ10のブートストラップ回路25aとしては、スイッチング素子M6としてp型のMOSFETを用いた図11に示される回路構成とした。また、素子ユニット50としては、図13に示される7×8のマトリクス状にトランジスタM1a、M2aを配置したものとした。
【0075】
さらに、図15に示されるコンバータ10Aについての同様な効率のシミュレーションを参考例1として行った。この参考例1における素子ユニットは、各トランジスタM1a、M2aがp型のMOSFETであるが、その他の配置等の条件は実施例1と同じにした。
【0076】
また、図16に示すマルチピラー型の縦型BC-MOSFETを用いた素子ユニット60を用いた実施例1と同様な回路について、同様な効率のシミュレーションを参考例2として行った。なお、図16では、トランジスタM1aに文字「D」を、トランジスタM2aに文字「S」を付してある。素子ユニット60は、基板上の不純物拡散領域61aと、この不純物拡散領域61aと電気的に分離された不純物拡散領域61bとが設けられている。不純物拡散領域61aには、5×5のマトリクス状で配置可能な箇所のうちの、矩形状の周囲と十字状の中心線上の各箇所の計21カ所にトランジスタM1aがそれぞれ設けられており、残りの配置可能な4カ所には中間接続点63が設けられている。トランジスタM1aは、半導体柱の上部のドレイン領域がコンタクトを介してドレイン配線62aで相互に接続され、下部のソース領域が不純物拡散領域61aに直接接続されている。
【0077】
不純物拡散領域61bについても同様に、5×5のマトリクス状で配置可能な箇所のうちの21カ所にトランジスタM2aがそれぞれ設けられ、残りの配置可能な4カ所には中間接続点63が設けられている。トランジスタM2aは、半導体柱の上部のソース領域がコンタクトを介してソース配線62bで相互に接続され、下部のドレイン領域が不純物拡散領域61bに直接接続されている。
【0078】
不純物拡散領域61aに設けられた各中間接続点63は、不純物拡散領域61aに電気的に接続され、不純物拡散領域61bに設けられた各中間接続点63は、不純物拡散領域61bに電気的に接続されている。不純物拡散領域61aと不純物拡散領域61bとは、不純物拡散領域61a側の中間接続点63と不純物拡散領域61b側の中間接続点63とが2本の配線64よって接続されることで電気的に接続される。このように構成される素子ユニット60は、不純物拡散領域61a側の各トランジスタM1aがハイサイドスイッチング素子M1として動作し、不純物拡散領域61b側の各トランジスタM2aがハイサイドスイッチング素子M2として動作し、これらが配線64よって直列に接続された状態にされている。なお、不純物拡散領域61a、61bにおける各トランジスタM1a、M2aの構成については、文献「K. Sakui and T. Endoh,“A Compact Space and Efficient Drain Current Design for Multipillar Vertical MOSFETs”,IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, 2010 VOL.57, NO.8, p.1768-1773」に紹介されている。
【0079】
また、上記素子ユニット60と同様な構成でハイサイドスイッチング素子M1、M2をp型のMOSFETとし、図15に示されるコンバータ10Aについての同様な効率のシミュレーションを参考例3として行った。
【0080】
シミュレーションにおける入力電圧Vin,駆動電圧Vhr、出力電圧Vout,チョークコイルL1のインダクタンス、コンデンサC1の静電容量、実施例1及び参考例1~3におけるブートストラップコンデンサCbの静電容量、クロスオーバ周波数、スイッチング周波数(fsw)は、表1に示す通りである。また、トランジスタM1a、M2aとしては、実験的に抽出された60nmの縦型BC-MOSFETのBSIM4のトランジスタモデルを用いた。
【0081】
【表1】
【0082】
上記実施例1と参考例2とのシミュレーション結果を図17に、また上記参考例1と参考例3とのシミュレーション結果を図18にそれぞれ示す。図17図18に示す各グラフは、横軸が負荷電流(A)であり、縦軸が効率(%)を示している。なお、図17図18には、実施例1、参考例1の理論モデル(MODEL)による効率の変化をあわせて示す。また、効率は、第1実施形態と同様に与えられる。
【0083】
表2には、実施例1、参考例1~3のセルエリアファクタ(F)とシミュレーションにより得られたピーク効率及び重負荷(負荷電流が2A)の場合の効率をそれぞれ示す。また、各表2の実施例1、参考例1の欄の括弧内の数字は、実施例1については参考例2と比較した場合の増分を、参考例1については参考例3と比較した場合の増分(セルエリアファクタについては縮小率)をそれぞれ示している。
【0084】
【表2】
【0085】
上記シミュレーション結果からわかるように、実施例1と参考例1とを比較した場合、及び参考例2と参考例3とを比較した場合、すなわち同様な回路でハイサイドスイッチング素子M1、M2をn型のMOSFETとした場合とp型のMOSFETとした場合とを比較した場合、いずれもn型のMOSFETとした場合の方がピーク効率及び重負荷における効率が高くなることがわかる。
【0086】
また、ハイサイドスイッチング素子M1、M2をn型のMOSFETとした実施例1と参考例2とを比較した場合、それらのピーク効率同士では実施例1は6.0%の効率向上があり、重負荷の場合では14.1%の効率向上がある。また、ハイサイドスイッチング素子M1、M2をp型のMOSFETとした参考例1と参考例3とを比較した場合、それらのピーク効率同士では参考例1は5.4%の効率向上があり、重負荷の場合では15.4%の効率向上がある。この効率向上は、素子ユニット50のような構成により、トランジスタM1a、M2aの各半導体柱間における不純物拡散層の寄生抵抗成分が小さくなることによるものと考えられる。また、実施例1は参考例2に対して、参考例1は参考例3に対して、セルエリアファクタを16%小さくでき、回路面積の小面積化に有利であることもわかる。
【0087】
上記では、コンバータのHSW回路に素子ユニットを用いた場合について説明しているが、素子ユニットはこれに限らず、極性が同じ、すなわちn型のMOSトランジスタ素子同士、またはp型のMOSトランジスタ素子同士を直列に接続する場合に利用することができる。
【0088】
上記各実施形態では、スイッチング回路装置を同期整流式の降圧型DC-DCコンバータに適用した場合について説明したが、スイッチング回路装置は、I/O回路、パワーゲーティング回路、レベルシフタ回路、カレントミラー回路、トランスコンダクタンスアンプ回路にも利用できる。
【符号の説明】
【0089】
10 降圧型DC-DCコンバータ
11 スイッチング回路部
14 平滑回路
25 ハイサイド駆動回路
25a ブートストラップ回路
26 ローサイド駆動回路
38、38A シリコン基板
50 素子ユニット
Ar1、Ar2 トランジスタアレイ
Cb ブートストラップコンデンサ
M1、M2 ハイサイドスイッチング素子
M1a、M2a トランジスタ
M3、M4 ローサイドスイッチング素子
M5、M6 スイッチング素子

【要約】
【課題】スイッチング回路装置等に好適な素子ユニットを提供する。
【解決手段】降圧型DC-DCコンバータ10は、スイッチング回路部11と平滑回路14とを備えている。スイッチング回路部11は、ハイサイドスイッチング素子回路23と、ローサイドスイッチング素子回路24と、ハイサイド駆動回路25と、ローサイド駆動回路26とを有している。ハイサイドスイッチング素子回路23は、直列に接続されたn型のMOSFETのハイサイドスイッチング素子M1、M2からなり、ローサイドスイッチング素子回路24は、n型のMOSFETのローサイドスイッチング素子M3、M4からなる。ハイサイドスイッチング素子M1、M2には、縦型BC―MOSFETが用いられる。
【選択図】図1

図1
図2
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