(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】はんだ接合材料及び接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20220203BHJP
B22F 1/16 20220101ALI20220203BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20220203BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20220203BHJP
B23K 3/06 20060101ALI20220203BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20220203BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
B23K35/363 E
B22F1/16
H05K3/34 503Z
H05K3/34 507C
H05K3/34 512C
B23K1/00 330E
B23K3/06 E
C22C13/00
B23K35/26 310A
(21)【出願番号】P 2016569077
(86)(22)【出願日】2016-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2016083929
(87)【国際公開番号】W WO2017086335
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2015224960
(32)【優先日】2015-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 敬士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英之
(72)【発明者】
【氏名】西岡 敬三
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/001448(WO,A1)
【文献】特開2004-216403(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125779(WO,A1)
【文献】特開2006-009125(JP,A)
【文献】特開平06-262386(JP,A)
【文献】特開2002-126869(JP,A)
【文献】特許第5717147(JP,B2)
【文献】特開2015-047615(JP,A)
【文献】特開平05-169289(JP,A)
【文献】特開平04-300090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B22F 1/16
H05K 3/34
B23K 1/00
B23K 3/06
C22C 13/00
B23K 35/26
B23K 101/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ粒子と、フラックスと、バインダーとを含み、
前記はんだ粒子の含有量が80重量%を超え、
前記はんだ粒子として、外表面にアミノ基又はチオール基を有するはんだ粒子を含有するか、又は、前記フラックス及び前記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有し、
フラックスとして含有される場合の前記アミノ基又はチオール基を有する化合物が、アミノ基を有する化合物であり、該アミノ基を有する化合物が、カルボン酸とアミンとの反応物であり、
複数の第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、複数の第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材とにおける前記第1の電極と前記第2の電極との電気的な接続に用いられる、はんだ接合材料。
【請求項2】
前記フラックス及び前記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有する、請求項1に記載のはんだ接合材料。
【請求項3】
前記アミノ基又はチオール基を有する化合物が、分子末端にアミノ基又はチオール基を有する、請求項1又は2に記載のはんだ接合材料。
【請求項4】
前記アミノ基又はチオール基を有する化合物が、25℃で液状である、請求項1~3のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項5】
前記アミノ基又はチオール基を有する化合物が、ポリエーテル骨格を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項6】
前記アミノ基又はチオール基を有する化合物の分解温度及び揮発温度の内の少なくとも一方が、前記はんだ粒子の融点-45℃以上、260℃以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項7】
前記アミノ基又はチオール基を有する化合物の分解温度及び揮発温度の内の少なくとも一方が、前記はんだ粒子の融点以上、260℃以下である、請求項6に記載のはんだ接合材料。
【請求項8】
前記アミノ基又はチオール基を有する化合物として、チオール基を有する化合物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項9】
前記アミノ基又はチオール基を有する化合物として、アミノ基を有する化合物と、チオール基を有する化合物とを含む、請求項8に記載のはんだ接合材料。
【請求項10】
前記フラックスの沸点が180℃以上、260℃以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項11】
前記はんだ粒子は、外表面にカルボキシル基を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項12】
はんだペーストであり、
前記第1の電極上に、前記第1の電極よりも側方にはみ出すように塗布されるか、又は、複数の前記第1の電極上に、複数の前記第1の電極をまたがるように塗布されて用いられる、請求項1~11のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項13】
複数の第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、請求項1~12のいずれか1項に記載のはんだ接合材料を配置する工程と、
前記はんだ接合材料の前記第1の接続対象部材とは反対の表面上に、複数の第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程と、
前記はんだ粒子の融点以上に加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続しているはんだ部を、前記はんだ接合材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記はんだ部により電気的に接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法。
【請求項14】
前記はんだ接合材料は、はんだペーストであり、
前記第1の電極上に、前記第1の電極よりも側方にはみ出すように、前記はんだ接合材料を配置するか、又は、複数の前記第1の電極上に、隣り合う前記第1の電極間をまたがるように、前記はんだ接合材料を配置し、
隣り合う前記第1の電極間を、前記はんだ部がまたがっておらず、かつ、隣り合う前記第2の電極間を、前記はんだ部がまたがっていない接続構造体を得る、請求項
13に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項15】
前記はんだ接合材料が、前記フラックス及び前記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有し、
前記はんだ粒子の融点以上に加熱することで、かつ、前記アミノ基又はチオール基を有する化合物の分解温度及び揮発温度の内の少なくとも一方の温度以上に加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続しているはんだ部を、前記はんだ接合材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記はんだ部により電気的に接続する、請求項
13又は
14に記載の接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ粒子を80重量%を超える量で含むはんだ接合材料に関する。また、本発明は、上記はんだ接合材料を用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
はんだを含む異方性導電材料が知られている。上記異方性導電材料におけるはんだ粒子の含有量は、例えば、80重量%以下である。
【0003】
一方で、はんだを多く含むはんだ接合材料が知られている。はんだ接合材料は、例えば、はんだペースト等である。はんだ接合材料におけるはんだ粒子の含有量は、例えば、80重量%を超える。
【0004】
上記はんだ接合材料は、各種の接続構造体を得るために、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用されている。
【0005】
電極間を電気的に接続する際に、上記はんだ接合材料は、例えば、スクリーン印刷等により、回路基板等のはんだ付け部である電極上に選択的に塗布される。次に、半導体チップ等を積層し、はんだを溶融させた後に、固化させる。固化したはんだにより電極間が電気的に接続される。
【0006】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、導電性粒子と、該導電性粒子の融点で硬化が完了しない樹脂成分とを含む異方性導電材料が記載されている。上記導電性粒子としては、具体的には、錫(Sn)、インジウム(In)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ガリウム(Ga)及びタリウム(Tl)等の金属や、これらの金属の合金が挙げられている。
【0007】
特許文献1では、上記導電性粒子の融点よりも高く、かつ上記樹脂成分の硬化が完了しない温度に、異方性導電樹脂を加熱する樹脂加熱ステップと、上記樹脂成分を硬化させる樹脂成分硬化ステップとを経て、電極間を電気的に接続することが記載されている。また、特許文献1には、特許文献1の
図8に示された温度プロファイルで実装を行うことが記載されている。特許文献1では、異方性導電樹脂が加熱される温度にて硬化が完了しない樹脂成分内で、導電性粒子が溶融する。
【0008】
下記の特許文献2では、はんだ粒子とフラックスとを含むはんだペーストが開示されている。上記フラックスは、ポリアルキルメタクリレート1.0質量%以上、2.0質量%未満と、ステアリン酸アミド5.0質量%以上、15.0質量%未満とを含む。上記はんだペーストの粘度は50~150Pa・sである。上記フラックスは、はんだ付け時の加熱によって、分解又は蒸発し、残渣として残らないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-260131号公報
【文献】特開2013-132654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の異方性導電材料及びはんだ接合材料では、接続されるべき上下の電極間に、導電性粒子又ははんだ粒子を効率的に配置することができないことがある。
【0011】
また、はんだ接合材料に関しては、近年、電極がある電極幅又は電極がない電極間幅が狭くなってきており、はんだペースト等をスクリーン印刷などにより、はんだ付け部である1つの電極上のみに選択的に塗布することが困難になってきている。このため、横方向に隣り合う複数の電極をまたがるように、はんだペーストが塗布されることが想定される。しかしながら、この場合には、横方向に隣り合う複数の電極が、はんだにより電気的に接続され、絶縁不良が生じやすい。
【0012】
特に、はんだ粒子の含有量が80重量%以下である異方性導電材料では、横方向に隣り合う複数の電極が、はんだにより電気的に接続されにくいのに対して、はんだ粒子の含有量が80重量%を超えるはんだペーストでは、横方向に隣り合う複数の電極が、はんだにより電気的に接続されやすい。はんだペーストを用いた場合には、電極幅又は電極間幅が狭い場合に、絶縁不良が特に生じやすいという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、電極幅又は電極間幅が狭くても、接続されるべき電極間に、はんだを効率的に配置することができ、導通信頼性及び絶縁信頼性を高めることができるはんだ接合材料を提供することである。また、本発明の目的は、上記はんだ接合材料を用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の広い局面によれば、はんだ粒子と、フラックスと、バインダーとを含み、前記はんだ粒子の含有量が80重量%を超え、前記はんだ粒子として、外表面にアミノ基又はチオール基を有するはんだ粒子を含有するか、又は、前記フラックス及び前記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有する、はんだ接合材料が提供される。
【0015】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記はんだ接合材料は、前記フラックス及び前記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有する。
【0016】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記アミノ基又はチオール基を有する化合物が、分子末端にアミノ基又はチオール基を有する。
【0017】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記アミノ基又はチオール基を有する化合物が、25℃で液状である。
【0018】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記アミノ基又はチオール基を有する化合物が、ポリエーテル骨格を有する。
【0019】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記アミノ基又はチオール基を有する化合物の分解温度及び揮発温度の内の少なくとも一方が、前記はんだ粒子の融点-45℃以上、260℃以下である。
【0020】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記アミノ基又はチオール基を有する化合物の分解温度及び揮発温度の内の少なくとも一方が、前記はんだ粒子の融点以上、260℃以下である。
【0021】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記はんだ接合材料は、前記アミノ基又はチオール基を有する化合物として、チオール基を有する化合物を含む。
【0022】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記はんだ接合材料は、前記アミノ基又はチオール基を有する化合物として、アミノ基を有する化合物と、チオール基を有する化合物とを含む。
【0023】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記フラックスの沸点が180℃以上、260℃以下である。
【0024】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記はんだ粒子は、外表面にカルボキシル基を有する。
【0025】
本発明に係るはんだ接合材料のある特定の局面では、前記はんだ接合材料は、はんだペーストであり、複数の第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、複数の第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材とにおける前記第1の電極と前記第2の電極との電気的な接続に用いられ、前記第1の電極上に、前記第1の電極よりも側方にはみ出すように塗布されるか、又は、複数の前記第1の電極上に、複数の前記第1の電極をまたがるように塗布されて用いられる。
【0026】
本発明の広い局面によれば、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続しているはんだ部とを備え、前記はんだ部の材料が、上述したはんだ接合材料であり、前記第1の電極と前記第2の電極とが前記はんだ部により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【0027】
本発明に係る接続構造体のある特定の局面では、前記第1の接続対象部材が、前記第1の電極を複数有し、前記第2の接続対象部材が、前記第2の電極を複数有し、隣り合う前記第1の電極間を、前記はんだ部がまたがっておらず、かつ、隣り合う前記第2の電極間を、前記はんだ部がまたがっていない。
【0028】
本発明の広い局面によれば、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、上述したはんだ接合材料を配置する工程と、前記はんだ接合材料の前記第1の接続対象部材とは反対の表面上に、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程と、前記はんだ粒子の融点以上に加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続しているはんだ部を、前記はんだ接合材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記はんだ部により電気的に接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法が提供される。
【0029】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、前記はんだ接合材料は、はんだペーストであり、前記第1の接続対象部材が、前記第1の電極を複数有し、前記第2の接続対象部材が、前記第2の電極を複数有し、前記第1の電極上に、前記第1の電極よりも側方にはみ出すように、前記はんだ接合材料を配置するか、又は、複数の前記第1の電極上に、隣り合う前記第1の電極間をまたがるように、前記はんだ接合材料を配置し、隣り合う前記第1の電極間を、前記はんだ部がまたがっておらず、かつ、隣り合う前記第2の電極間を、前記はんだ部がまたがっていない接続構造体を得る。
【0030】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、前記はんだ接合材料が、前記フラックス及び前記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有し、前記はんだ粒子の融点以上に加熱することで、かつ、前記アミノ基又はチオール基を有する化合物の分解温度及び揮発温度の内の少なくとも一方の温度以上に加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続しているはんだ部を、前記はんだ接合材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記はんだ部により電気的に接続する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るはんだ接合材料は、はんだ粒子と、フラックスと、バインダーとを含み、上記はんだ粒子の含有量が80重量%を超え、上記はんだ粒子として、外表面にアミノ基又はチオール基を有するはんだ粒子を含有するか、又は、上記フラックス及び上記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有するので、電極幅又は電極間幅が狭くても、接続されるべき電極間に、はんだを効率的に配置することができ、導通信頼性及び絶縁信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るはんだ接合材料を用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、本発明の一実施形態に係るはんだ接合材料を用いて、接続構造体を製造する方法の一例の各工程を説明するための断面図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、本発明の一実施形態に係るはんだ接合材料を用いて、接続構造体を製造する方法の他の例の各工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0034】
(はんだ接合材料)
本発明に係るはんだ接合材料は、はんだ粒子と、フラックスと、バインダーとを含む。本発明に係るはんだ接合材料では、上記はんだ粒子の含有量が80重量%を超える。本発明に係るはんだ接合材料は、上記はんだ粒子として、外表面にアミノ基又はチオール基を有するはんだ粒子を含有するか、又は、上記フラックス及び上記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有する。本発明に係るはんだ接合材料は、上記はんだ粒子として、外表面にアミノ基又はチオール基を有するはんだ粒子を含有していてもよく、上記フラックス及び上記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有していてもよい。本発明に係るはんだ接合材料は、上記はんだ粒子として、外表面にアミノ基又はチオール基を有するはんだ粒子を含有し、かつ、上記フラックス及び上記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有していてもよい。
【0035】
本発明では、上記の構成が備えられているので、電極がある電極幅(ライン)が狭くても、電極がない電極間幅(スペース)が狭くても、接続されるべき電極間に、はんだを効率的に配置することができ、導通信頼性及び絶縁信頼性を高めることができる。電極幅又は電極間幅が狭い場合に、電極上にはんだを寄せ集めにくい傾向があるが、本発明では、電極幅又は電極間幅が狭くても、電極上にはんだを充分に寄せ集めることができる。本発明では、上記の構成が備えられているので、電極間を電気的に接続した場合に、はんだが、上下の対向した電極間に集まりやすく、はんだを電極(ライン)上に効率的に配置することができる。また、本発明では、電極がある電極幅が広いと、はんだが電極上により一層効率的に配置される。また、本発明では、電極がない電極間幅が広いと、横方向に隣り合う電極間の絶縁信頼性がより一層高くなる。
【0036】
また、本発明では、はんだの一部が、電極が形成されていない領域(スペース)に配置され難く、電極が形成されていない領域に配置されるはんだの量をかなり少なくすることができる。本発明では、対向する電極間に位置していないはんだを、対向する電極間に効率的に移動させることができる。従って、電極間の導通信頼性を高めることができる。しかも、接続されてはならない横方向に隣り合う電極間の電気的な接続を防ぐことができ、絶縁信頼性を高めることができる。
【0037】
また、本発明に係るはんだ接合材料は、1つの電極上に選択的に配置されてもよく、横方向に隣り合う複数の電極をまたがるように配置されてもよい。近年、電極幅又は電極間幅が狭くなってきており、はんだペースト等をスクリーン印刷などによりはんだ付け部である1つの電極上のみに選択的に塗布することが困難になってきている。このため、横方向に隣り合う複数の電極をまたがるように、はんだペーストが塗布されることが想定され、結果として、横方向に隣り合う複数の電極が、はんだにより電気的に接続されやすくなっている。特に、はんだ粒子の含有量が80重量%を超えるはんだペーストでは、横方向に隣り合う複数の電極が、はんだにより電気的に接続されやすいという問題がある。本発明では、横方向に隣り合う複数の電極が、はんだにより電気的に接続されることを効果的に防ぐことができる。本発明では、はんだ接合材料(はんだペーストなど)を横方向に隣り合う複数の電極をまたがるように塗布しても、はんだが上下の電極間に効率的に移動する結果、横方向に隣り合う複数の電極が、はんだにより電気的に接続されることを効果的に防ぐことができる。
【0038】
さらに、本発明では、電極間の位置ずれを防ぐことができる。本発明では、はんだ接合材料を上面に配置した第1の接続対象部材に、第2の接続対象部材を重ね合わせた際に、第1の接続対象部材の電極と第2の接続対象部材の電極とのアライメントがずれた状態で、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材とが重ね合わされた場合でも、そのずれを補正して、第1の接続対象部材の電極と第2の接続対象部材の電極とを接続させることができる(セルフアライメント効果)。
【0039】
はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料は、上記フラックス及び上記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有することが好ましい。上記はんだ接合材料は、上記フラックスとして、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有していてもよく、上記バインダーとして、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有していてもよい。上記はんだ接合材料は、上記フラックスとして、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有し、かつ、上記バインダーとして、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有していてもよい。
【0040】
上記アミノ基又はチオール基を有する化合物は、熱硬化性化合物でなくてもよく、光硬化性化合物でなくてもよく、熱硬化剤でなくてもよく、光重合開始剤でなくてもよい。
【0041】
はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記アミノ基又はチオール基を有する化合物は、分子末端にアミノ基又はチオール基を有することが好ましい。上記アミノ基又はチオール基を有する化合物は、分子末端と分子側鎖とのうち、分子末端にアミノ基又はチオール基を有することが好ましい。分子末端にアミノ基又はチオール基が存在すると、アミノ基又はチオール基が、はんだ粒子の上下の電極間への移動を促進させやすい。
【0042】
はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記アミノ基又はチオール基を有する化合物が、25℃で液状であることが好ましい。
【0043】
はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記アミノ基又はチオール基を有する化合物が、ポリエーテル骨格を有することが好ましい。
【0044】
はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記アミノ基又はチオール基を有する化合物の分解温度及び揮発温度の内の少なくとも一方が、上記はんだ粒子の融点-50℃以上、260℃以下であることが好ましく、上記はんだ粒子の融点-45℃以上、260℃以下であることがより好ましく、上記はんだ粒子の融点-38℃以上、260℃以下であることが更に好ましく、上記はんだ粒子の融点以上、260℃以下であることが更に一層好ましい。上記分解温度及び揮発温度の内の少なくとも一方が、上記はんだ粒子の融点+5℃以上であることが特に好ましく、上記はんだ粒子の融点+10℃以上であることが最も好ましい。上記分解温度及び揮発温度の内の低い方の温度が、上記はんだ粒子の融点-50℃以上であることが好ましく、上記はんだ粒子の融点-45℃以上であることがより好ましく、上記はんだ粒子の融点-38℃以上であることが更に好ましく、上記はんだ粒子の融点以上であることが更に一層好ましく、上記はんだ粒子の融点+5℃以上であることが特に好ましく、上記はんだ粒子の融点+10℃以上であることが最も好ましい。このようなアミノ基又はチオール基を有する化合物を用いることで、はんだ接合後に、アミノ基又はチオール基を有する化合物を除去し、アミノ基又はチオール基を有する化合物の残渣を少なくすることができ、アミノ基又はチオール基を有する化合物による悪影響を防ぐことができる。
【0045】
上記アミノ基又はチオール基を有する化合物は、アミノ基を有していてもよく、チオール基を有していてもよく、アミノ基とチオール基とを有していてもよい。はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料は、上記アミノ基又はチオール基を有する化合物として、アミノ基を有する化合物と、チオール基を有する化合物とを含むことが好ましい。
【0046】
はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料100重量%中、上記アミノ基又はチオール基を有する化合物の全体の含有量は、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは20重量%未満、より好ましくは17重量%以下である。はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料におけるはんだ粒子を除く成分100重量%中、上記アミノ基又はチオール基を有する化合物の全体の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0047】
はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料100重量%中、上記アミノ基を有する化合物の全体の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%以下である。はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料におけるはんだ粒子を除く成分100重量%中、上記アミノ基を有する化合物の全体の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0048】
はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料100重量%中、上記チオール基を有する化合物の全体の含有量は、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは4重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であり、好ましくは23重量%以下、より好ましくは21重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、更に一層好ましくは18重量%以下、特に好ましくは17重量%以下、最も好ましくは16重量%以下である。はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料におけるはんだ粒子を除く成分100重量%中、上記チオール基を有する化合物の全体の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、より一層好ましくは20重量部以上、更に好ましくは25重量部以上、特に好ましくはであり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0049】
はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料において、上記チオール基を有する化合物の含有量は、上記アミノ基を有する化合物の含有量よりも多いことが好ましい。はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料において、上記はんだ接合材料100重量%中、上記チオール基を有する化合物の含有量と、上記アミノ基を有する化合物の含有量との差の絶対値は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。はんだを上下の電極間に効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料において、上記はんだ接合材料におけるはんだ粒子を除く成分100重量%中、上記チオール基を有する化合物の含有量と、上記アミノ基を有する化合物の含有量との差の絶対値は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。
【0050】
上記はんだ接合材料は、はんだペースト及びはんだフィルム等として使用され得る。はんだを電極上により一層効率的に配置する観点からは、上記はんだ接合材料は、はんだペーストであることが好ましい。上記はんだ接合材料は、電極の電気的な接続に好適に用いられる。上記はんだ接合材料は、回路接続材料であることが好ましい。
【0051】
上記はんだ接合材料は、複数の第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、複数の第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材とにおける上記第1の電極と上記第2の電極との電気的な接続に用いられることが好ましい。はんだ粒子を上下の電極間に効率的に移動させることができるので、上記はんだ接合材料は、上記第1の電極上に、上記第1の電極よりも側方にはみ出すように塗布されるか、又は、複数の上記第1の電極上に、複数の上記第1の電極をまたがるように塗布されて用いることができる。但し、上記はんだ接合材料は、複数の上記第1の電極をまたがらないように塗布されて用いられてもよく、1つの上記第1の電極上に選択的に塗布されて用いられてもよい。
【0052】
はんだを電極上により一層効率的に配置するために、上記はんだ接合材料は、25℃で液状であることが好ましく、はんだペーストであることが好ましい。はんだを電極上により一層効率的に配置するために、上記はんだ接合材料の25℃での粘度(η25)は好ましくは50Pa・s以上、より好ましくは100Pa・s以上、更に好ましくは150Pa・s以上、特に好ましくは200Pa・s以上であり、好ましくは800Pa・s以下、より好ましくは600Pa・s以下、より一層好ましくは500Pa・s以下、更に好ましくは400Pa・s以下、特に好ましくは300Pa・s以下、最も好ましくは250Pa・s以下である。上記粘度(η25)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整可能である。
【0053】
上記粘度(η25)は、例えば、E型粘度計(東機産業社製)等を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定可能である。
【0054】
以下、上記はんだ接合材料に含まれる各成分を説明する。
【0055】
(はんだ粒子)
上記はんだ粒子は、接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記はんだ粒子は、はんだ粒子であってもよい。上記はんだ粒子ははんだにより形成されている。上記はんだ粒子は、中心部分及び導電部の外表面部分のいずれもがはんだにより形成されている。上記はんだ粒子は、上記はんだ粒子の中心部分及び導電性の外表面のいずれもがはんだである粒子である。上記はんだ粒子は、コア粒子として、基材粒子を有さない。上記はんだ粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置されたはんだ部とを備える導電性粒子とは異なる。上記はんだ粒子は、例えば、はんだを好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上で含む。
【0056】
接続構造体における接続抵抗を効果的に低くし、ボイドの発生を効果的に抑制する観点からは、上記はんだ粒子は、外表面にカルボキシル基を有することが好ましい。上記はんだ粒子の外表面には、カルボキシル基又はアミノ基が存在することが好ましく、カルボキシル基が存在することが好ましく、アミノ基が存在することが好ましい。上記はんだ粒子は、外表面に、Si-O結合、エーテル結合、エステル結合又は下記式(X)で表される基を介して、カルボキシル基又はアミノ基を含む基が共有結合していることが好ましく、エーテル結合、エステル結合又は下記式(X)で表される基を介して、カルボキシル基又はアミノ基を含む基が共有結合していることがより好ましい。カルボキシル基又はアミノ基を含む基は、カルボキシル基とアミノ基との双方を含んでいてもよい。なお、下記式(X)において、右端部及び左端部は結合部位を表す。
【0057】
【0058】
はんだの表面に水酸基が存在する。この水酸基とカルボキシル基を含む基とを共有結合させることにより、他の配位結合(キレート配位)等にて結合させる場合よりも強い結合を形成できるため、電極間の接続抵抗を低くし、かつボイドの発生を抑えることが可能なはんだ粒子が得られる。
【0059】
上記はんだ粒子では、はんだの表面と、カルボキシル基を含む基との結合形態に、配位結合が含まれていなくてもよく、キレート配位による結合が含まれていなくてもよい。
【0060】
接続構造体における接続抵抗を効果的に低くし、ボイドの発生を効果的に抑制する観点からは、上記はんだ粒子は、水酸基と反応可能な官能基とカルボキシル基又はアミノ基とを有する化合物(以下、化合物Xと記載することがある)を用いて、はんだの表面の水酸基に、上記水酸基と反応可能な官能基を反応させることにより得られることが好ましい。上記反応では、共有結合を形成させる。はんだの表面の水酸基と上記化合物Xにおける上記水酸基と反応可能な官能基とを反応させることで、はんだの表面にカルボキシル基又はアミノ基を含む基が共有結合しているはんだ粒子を容易に得ることができ、はんだの表面にエーテル結合又はエステル結合を介してカルボキシル基又はアミノ基を含む基が共有結合しているはんだ粒子を得ることもできる。上記はんだの表面の水酸基に上記水酸基と反応可能な官能基を反応させることで、はんだの表面に、上記化合物Xを共有結合の形態で化学結合させることができる。
【0061】
上記水酸基と反応可能な官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エステル基及びカルボニル基等が挙げられる。水酸基又はカルボキシル基が好ましい。上記水酸基と反応可能な官能基は、水酸基であってもよく、カルボキシル基であってもよい。
【0062】
水酸基と反応可能な官能基を有する化合物としては、レブリン酸、グルタル酸、グリコール酸、コハク酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、5-ケトヘキサン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、4-アミノ酪酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトイソブチル酸、3-メチルチオプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、3-フェニルイソブチル酸、4-フェニル酪酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、9-ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、(9,12,15)-リノレン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、デカン二酸及びドデカン二酸等が挙げられる。グルタル酸又はグリコール酸が好ましい。上記水酸基と反応可能な官能基を有する化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記水酸基と反応可能な官能基を有する化合物は、カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましい。
【0063】
上記化合物Xは、フラックス作用を有することが好ましく、上記化合物Xは、はんだの表面に結合した状態でフラックス作用を有することが好ましい。フラックス作用を有する化合物は、はんだの表面の酸化膜及び電極の表面の酸化膜を除去可能である。カルボキシル基はフラックス作用を有する。
【0064】
フラックス作用を有する化合物としては、レブリン酸、グルタル酸、グリコール酸、コハク酸、5-ケトヘキサン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、4-アミノ酪酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトイソブチル酸、3-メチルチオプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、3-フェニルイソブチル酸及び4-フェニル酪酸等が挙げられる。グルタル酸又はグリコール酸が好ましい。上記フラックス作用を有する化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
接続構造体における接続抵抗を効果的に低くし、ボイドの発生を効果的に抑制する観点からは、上記化合物Xにおける上記水酸基と反応可能な官能基が、水酸基又はカルボキシル基であることが好ましい。上記化合物Xにおける上記水酸基と反応可能な官能基は、水酸基であってもよく、カルボキシル基であってもよい。上記水酸基と反応可能な官能基がカルボキシル基である場合には、上記化合物Xは、カルボキシル基を少なくとも2個有することが好ましい。カルボキシル基を少なくとも2個有する化合物の一部のカルボキシル基を、はんだの表面の水酸基に反応させることで、はんだの表面にカルボキシル基を含む基が共有結合しているはんだ粒子が得られる。
【0066】
上記はんだ粒子の製造方法は、例えば、はんだ粒子を用いて、該はんだ粒子、水酸基と反応可能な官能基とカルボキシル基とを有する化合物、触媒及び溶媒を混合する工程を備える。上記はんだ粒子の製造方法では、上記混合工程により、はんだの表面に、カルボキシル基を含む基が共有結合しているはんだ粒子を容易に得ることができる。
【0067】
また、上記はんだ粒子の製造方法では、はんだ粒子を用いて、該はんだ粒子、上記水酸基と反応可能な官能基とカルボキシル基とを有する化合物、上記触媒及び上記溶媒を混合し、加熱することが好ましい。混合及び加熱工程により、はんだの表面に、カルボキシル基を含む基が共有結合しているはんだ粒子をより一層容易に得ることができる。
【0068】
上記溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノール等のアルコール溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン及びキシレン等が挙げられる。上記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、トルエンであることがより好ましい。上記溶媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
上記触媒としては、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及び10-カンファースルホン酸等が挙げられる。上記触媒は、p-トルエンスルホン酸であることが好ましい。上記触媒は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
上記混合時に加熱することが好ましい。加熱温度は好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは130℃以下、より好ましくは110℃以下である。
【0071】
接続構造体における接続抵抗を効果的に低くし、ボイドの発生を効果的に抑制する観点からは、上記はんだ粒子は、イソシアネート化合物を用いて、はんだの表面の水酸基に、上記イソシアネート化合物を反応させる工程を経て得られることが好ましい。上記反応では、共有結合を形成させる。はんだの表面の水酸基と上記イソシアネート化合物とを反応させることで、はんだの表面に、イソシアネート基に由来する基の窒素原子が共有結合しているはんだ粒子を容易に得ることができる。上記はんだの表面の水酸基に上記イソシアネート化合物を反応させることで、はんだの表面に、イソシアネート基に由来する基を共有結合の形態で化学結合させることができる。
【0072】
また、イソシアネート基に由来する基には、シランカップリング剤を容易に反応させることができる。上記はんだ粒子を容易に得ることができるので、上記カルボキシル基を含む基が、カルボキシル基を有するシランカップリング剤を用いた反応により導入されているか、又は、シランカップリング剤を用いた反応の後に、シランカップリング剤に由来する基にカルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物を反応させることで導入されていることが好ましい。上記はんだ粒子は、上記イソシアネート化合物を用いて、はんだの表面の水酸基に、上記イソシアネート化合物を反応させた後、カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物を反応させることにより得られることが好ましい。
【0073】
接続構造体における接続抵抗を効果的に低くし、ボイドの発生を効果的に抑制する観点からは、上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物が、カルボキシル基を複数有することが好ましい。
【0074】
上記イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。これら以外のイソシアネート化合物を用いてもよい。この化合物をはんだの表面に反応させた後、残イソシアネート基と、その残イソシアネート基と反応性を有し、かつカルボキシル基を有する化合物を反応させることで、はんだの表面に式(X)で表される基を介して、カルボキシル基を導入することができる。
【0075】
上記イソシアネート化合物としては、不飽和二重結合を有し、かつイソシアネート基を有する化合物を用いてもよい。例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート及び2-イソシアナトエチルメタクリレートが挙げられる。この化合物のイソシアネート基をはんだの表面に反応させた後、残存している不飽和二重結合に対し反応性を有する官能基を有し、かつカルボキシル基を有する化合物を反応させることで、はんだの表面に式(X)で表される基を介して、カルボキシル基を導入することができる。
【0076】
上記シランカップリング剤としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製「KBE-9007」)、及び3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(MOMENTIVE社製「Y-5187」)等が挙げられる。上記シランカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物としては、レブリン酸、グルタル酸、グリコール酸、コハク酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、5-ケトヘキサン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、4-アミノ酪酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトイソブチル酸、3-メチルチオプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、3-フェニルイソブチル酸、4-フェニル酪酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、9-ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、(9,12,15)-リノレン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、デカン二酸及びドデカン二酸等が挙げられる。グルタル酸、アジピン酸又はグリコール酸が好ましい。上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記イソシアネート化合物を用いて、はんだの表面の水酸基に、上記イソシアネート化合物を反応させた後、カルボキシル基を複数有する化合物の一部のカルボキシル基を反応させることで、はんだの表面の水酸基に反応させることで、カルボキシル基を含む基を残存させることができる。
【0079】
上記はんだ粒子の製造方法では、はんだ粒子を用いて、かつ、イソシアネート化合物を用いて、はんだの表面の水酸基に、上記イソシアネート化合物を反応させた後、カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物を反応させて、はんだの表面に、上記式(X)で表される基を介して、カルボキシル基を含む基が結合しているはんだ粒子を得る。上記はんだ粒子の製造方法では、上記の工程により、はんだの表面に、カルボキシル基を含む基が導入されたはんだ粒子を容易に得ることができる。
【0080】
上記はんだ粒子の具体的な製造方法としては、以下の方法が挙げられる。有機溶媒にはんだ粒子を分散させ、イソシアネート基を有するシランカップリング剤を添加する。その後、はんだの表面の水酸基とイソシアネート基との反応触媒を用い、はんだの表面にシランカップリング剤を共有結合させる。次に、シランカップリング剤のケイ素原子に結合しているアルコキシ基を加水分解することで、水酸基を生成させる。生成した水酸基に、カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物のカルボキシル基を反応させる。
【0081】
また、上記はんだ粒子の具体的な製造方法としては、以下の方法が挙げられる。有機溶媒にはんだ粒子を分散させ、イソシアネート基と不飽和二重結合を有する化合物を添加する。その後、はんだの表面の水酸基とイソシアネート基との反応触媒を用い、共有結合を形成させる。その後、導入された不飽和二重結合に対して、不飽和二重結合、及びカルボキシル基を有する化合物を反応させる。
【0082】
はんだの表面の水酸基とイソシアネート基との反応触媒としては、錫系触媒(ジブチル錫ジラウレート等)、アミン系触媒(トリエチレンジアミン等)、カルボキシレート触媒(ナフテン酸鉛、酢酸カリウム等)、及びトリアルキルホスフィン触媒(トリエチルホスフィン等)等が挙げられる。
【0083】
接続構造体における接続抵抗を効果的に低くし、ボイドの発生を効果的に抑制する観点からは、上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。下記式(1)で表される化合物は、フラックス作用を有する。また、下記式(1)で表される化合物は、はんだの表面に導入された状態でフラックス作用を有する。
【0084】
【0085】
上記式(1)中、Xは、水酸基と反応可能な官能基を表し、Rは、炭素数1~5の2価の有機基を表す。該有機基は、炭素原子と水素原子と酸素原子とを含んでいてもよい。該有機基は炭素数1~5の2価の炭化水素基であってもよい。上記有機基の主鎖は2価の炭化水素基であることが好ましい。該有機基では、2価の炭化水素基にカルボキシル基や水酸基が結合していてもよい。上記式(1)で表される化合物には、例えばクエン酸が含まれる。
【0086】
上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物は、下記式(1A)又は下記式(1B)で表される化合物であることが好ましい。上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物は、下記式(1A)で表される化合物であることが好ましく、下記式(1B)で表される化合物であることがより好ましい。
【0087】
【0088】
上記式(1A)中、Rは、炭素数1~5の2価の有機基を表す。上記式(1A)中のRは上記式(1)中のRと同様である。
【0089】
【0090】
上記式(1B)中、Rは、炭素数1~5の2価の有機基を表す。上記式(1B)中のRは上記式(1)中のRと同様である。
【0091】
はんだの表面に、下記式(2A)又は下記式(2B)で表される基が結合していることが好ましい。はんだの表面に、下記式(2A)で表される基が結合していることが好ましく、下記式(2B)で表される基が結合していることがより好ましい。なお、下記式(2A)及び下記式(2B)において、左端部は結合部位を表す。
【0092】
【0093】
上記式(2A)中、Rは、炭素数1~5の2価の有機基を表す。上記式(2A)中のRは上記式(1)中のRと同様である。
【0094】
【0095】
上記式(2B)中、Rは、炭素数1~5の2価の有機基を表す。上記式(2B)中のRは上記式(1)中のRと同様である。
【0096】
はんだの表面の濡れ性を高める観点からは、上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物の分子量は、好ましくは10000以下、より好ましくは1000以下、更に好ましくは500以下である。
【0097】
上記分子量は、上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物が重合体ではない場合、及び上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0098】
導電接続時にはんだ粒子の凝集性を効果的に高めることができることから、上記はんだ粒子は、はんだ粒子本体と、上記はんだ粒子本体の表面上に配置されたアニオンポリマーとを有することが好ましい。上記はんだ粒子は、はんだ粒子本体をアニオンポリマー又はアニオンポリマーとなる化合物で表面処理することにより得られることが好ましい。上記はんだ粒子は、アニオンポリマー又はアニオンポリマーとなる化合物による表面処理物であることが好ましい。上記アニオンポリマー及び上記アニオンポリマーとなる化合物はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記アニオンポリマーは、酸性基を有するポリマーである。
【0099】
はんだ粒子本体をアニオンポリマーで表面処理する方法としては、アニオンポリマーとして、例えば(メタ)アクリル酸を共重合した(メタ)アクリルポリマー、ジカルボン酸とジオールとから合成されかつ両末端にカルボキシル基を有するポリエステルポリマー、ジカルボン酸の分子間脱水縮合反応により得られかつ両末端にカルボキシル基を有するポリマー、ジカルボン酸とジアミンとから合成されかつ両末端にカルボキシル基を有するポリエステルポリマー、並びにカルボキシル基を有する変性ポバール(日本合成化学社製「ゴーセネックスT」)等を用いて、アニオンポリマーのカルボキシル基と、はんだ粒子本体の表面の水酸基とを反応させる方法が挙げられる。
【0100】
上記アニオンポリマーのアニオン部分としては、上記カルボキシル基が挙げられ、それ以外には、トシル基(p-H3CC6H4S(=O)2-)、スルホン酸イオン基(-SO3
-)、及びリン酸イオン基(-PO4
-)等が挙げられる。
【0101】
また、表面処理の他の方法としては、はんだ粒子本体の表面の水酸基と反応する官能基を有し、さらに、付加、縮合反応により重合可能な官能基を有する化合物を用いて、この化合物をはんだ粒子本体の表面上にてポリマー化する方法が挙げられる。はんだ粒子本体の表面の水酸基と反応する官能基としては、カルボキシル基、及びイソシアネート基等が挙げられ、付加、縮合反応により重合する官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0102】
上記アニオンポリマーの重量平均分子量は好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上であり、好ましくは10000以下、より好ましくは8000以下である。上記重量平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ粒子の表面に十分な量の電荷、及びフラックス性を導入することができる。これにより、導電接続時にはんだ粒子の凝集性を効果的に高めることができ、かつ、接続対象部材の接続時に、電極の表面の酸化膜を効果的に除去することができる。
【0103】
上記重量平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ粒子本体の表面上にアニオンポリマーを配置することが容易であり、導電接続時にはんだ粒子の凝集性を効果的に高めることができ、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができる。
【0104】
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0105】
アニオンポリマーの重量平均分子量は、はんだを溶解し、アニオンポリマーの分解を起こさない希塩酸等により、はんだを除去した後、残存しているアニオンポリマーの重量平均分子量を測定することで求めることができる。
【0106】
アニオンポリマーのはんだ粒子の表面における導入量に関しては、はんだ粒子1gあたりの酸価が、好ましくは1mgKOH以上、より好ましくは2mgKOH以上であり、好ましくは10mgKOH以下、より好ましくは6mgKOH以下である。
【0107】
上記酸価は以下のようにして測定可能である。はんだ粒子1gを、アセトン36gに添加し、超音波にて1分間分散させる。その後、指示薬として、フェノールフタレインを用い、0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液にて滴定する。
【0108】
上記はんだは、融点が450℃以下である金属(低融点金属)であることが好ましい。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。また、上記はんだは錫を含むことが好ましい。上記はんだ100重量%中、錫の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記はんだ中の錫の含有量が上記下限以上であると、はんだと電極との導通信頼性がより一層高くなる。
【0109】
なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP-AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX-800HS」)等を用いて測定可能である。
【0110】
上記はんだ粒子を用いることで、はんだが溶融して電極に接合し、はんだが電極間を導通させる。例えば、はんだと電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、はんだ粒子の使用により、はんだと電極との接合強度が高くなる結果、はんだと電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性が効果的に高くなる。
【0111】
上記低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫-銀合金、錫-銅合金、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-亜鉛合金、錫-インジウム合金等が挙げられる。電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫-銀合金、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-インジウム合金であることが好ましい。錫-ビスマス合金、錫-インジウム合金であることがより好ましい。
【0112】
上記はんだの材料は、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだの組成としては、例えば亜鉛、金、銀、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。低融点で鉛フリーである錫-インジウム系(117℃共晶)、又は錫-ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、上記はんだは、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ、又は錫とビスマスとを含むはんだであることが好ましい。
【0113】
上記はんだと電極との接合強度をより一層高めるために、上記はんだは、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。また、はんだと電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記はんだは、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。はんだと電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、上記はんだ100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上であり、好ましくは1重量%以下である。
【0114】
上記はんだ粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下である。上記はんだ粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができ、電極間にはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性がより一層高くなる。
【0115】
上記はんだ粒子の形状は特に限定されない。上記はんだ粒子の形状は、球状であってもよく、扁平状などの球形状以外の形状であってもよい。
【0116】
上記はんだ接合材料100重量%中、上記はんだ粒子の含有量は80重量%を超え、好ましくは81重量%以上、より好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、更に好ましくは92重量%以下である。上記はんだ粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができ、電極間にはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性がより一層高くなる。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記はんだ粒子の含有量は多い方が好ましい。
【0117】
(バインダー)
上記はんだ接合材料は、上記フラックス及び上記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有することが好ましい。上記はんだ接合材料は、上記バインダーとして、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有することが好ましい。
【0118】
上記バインダーとして用いることができる上記アミノ基又はチオール基を有する化合物としては、液状ポリサルファイドポリマー、トリアリルイソシアヌレートとジペンタエリスリトール ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)との反応物、及びポリエーテルアミン等が挙げられる。
【0119】
上記アミノ基又はチオール基を有する化合物以外のバインダーとしては、ポリエーテルポリオール、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
【0120】
上記はんだ接合材料100重量%中、上記バインダーの含有量は好ましくは1重量%を超え、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは20重量%未満、より好ましくは17重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。上記バインダーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができ、電極間にはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性がより一層高くなる。
【0121】
(フラックス)
上記はんだ接合材料は、上記フラックス及び上記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有することが好ましい。上記はんだ接合材料は、上記フラックスとして、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有することが好ましい。
【0122】
フラックスの使用により、はんだを電極上により一層効果的に配置することができる。該フラックスは特に限定されない。フラックスとして、はんだ接合等に一般的に用いられているフラックスを使用できる。
【0123】
上記フラックスとして用いることができる上記アミノ基又はチオール基を有する化合物としては、カルボン酸とアミンとの反応物、及びカルボン酸とアニリンとチオフェノールとの反応物等が挙げられる。
【0124】
上記フラックスとしては、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸及び松脂等が挙げられる。上記フラックスは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0125】
上記溶融塩としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。上記有機酸としては、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、グルタミン酸及びグルタル酸等が挙げられる。上記松脂としては、活性化松脂及び非活性化松脂等が挙げられる。上記フラックスは、カルボキシル基を2個以上有する有機酸、松脂であることが好ましい。上記フラックスは、カルボキシル基を2個以上有する有機酸であってもよく、松脂であってもよい。カルボキシル基を2個以上有する有機酸、松脂の使用により、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0126】
上記松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。フラックスは、ロジン類であることが好ましく、アビエチン酸であることがより好ましい。この好ましいフラックスの使用により、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0127】
上記フラックスの活性温度(融点)は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、より一層好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下、更に一層好ましくは140℃以下である。上記フラックスの活性温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス効果がより一層効果的に発揮され、はんだが電極上により一層効率的に配置される。上記フラックスの活性温度(融点)は80℃以上、190℃以下であることが好ましい。上記フラックスの活性温度(融点)は80℃以上、140℃以下であることが特に好ましい。
【0128】
フラックスの活性温度(融点)が80℃以上、190℃以下である上記フラックスとしては、コハク酸(融点186℃)、グルタル酸(融点96℃)、アジピン酸(融点152℃)、ピメリン酸(融点104℃)、スベリン酸(融点142℃)等のジカルボン酸、安息香酸(融点122℃)、リンゴ酸(融点130℃)等が挙げられる。
【0129】
また、はんだを電極上により一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスの沸点は200℃以下であることが好ましい。
【0130】
はんだを電極上により一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスの融点は、上記はんだの融点よりも、高いことが好ましく、5℃以上高いことがより好ましく、10℃以上高いことが更に好ましい。
【0131】
上記フラックスは、はんだ接合材料中に分散されていてもよく、はんだ粒子の表面上に付着していてもよい。
【0132】
フラックスの融点が、はんだの融点より高いことにより、電極部分にはんだを効率的に凝集させることができる。これは、接合時に熱を付与した場合、接続対象部材上に形成された電極と、電極周辺の接続対象部材の部分とを比較すると、電極部分の熱伝導率が電極周辺の接続対象部材部分の熱伝導率よりも高いことにより、電極部分の昇温が速いことに起因する。はんだの融点を超えた段階では、はんだの内部は溶解するが、表面に形成された酸化被膜は、フラックスの融点(活性温度)に達していないので、除去されない。この状態で、電極部分の温度が先に、フラックスの融点(活性温度)に達するため、優先的に電極上に来たはんだの表面の酸化被膜が除去されることや、活性化したフラックスによりはんだの表面の電荷が中和されることにより、はんだが電極の表面上に濡れ拡がることができる。これにより、電極上に効率的にはんだを凝集させることができる。
【0133】
上記はんだ接合材料100重量%中、上記フラックスの含有量は好ましくは1重量%を超え、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは10重量%未満、より好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。上記フラックスの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ及び電極の表面に酸化被膜がより一層形成され難くなり、さらに、はんだ及び電極の表面に形成された酸化被膜をより一層効果的に除去できる。
【0134】
(他の成分)
上記はんだ接合材料は、必要に応じて、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0135】
(接続構造体及び接続構造体の製造方法)
本発明に係る接続構造体は、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続しているはんだ部とを備える。本発明に係る接続構造体では、上記はんだ部の材料が、上記はんだ接合材料である。上記はんだ部が、上記はんだ接合材料により形成されている。本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極と上記第2の電極とが上記はんだ部により電気的に接続されている。
【0136】
本発明に係る接続構造体では、上記第1の接続対象部材が、上記第1の電極を複数有し、上記第2の接続対象部材が、上記第2の電極を複数有し、隣り合う上記第1の電極間を、上記はんだ部がまたがっておらず、かつ、隣り合う上記第2の電極間を、上記はんだ部がまたがっていないことが好ましい。
【0137】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、上述したはんだ接合材料を配置する工程と、上記はんだ接合材料の上記第1の接続対象部材とは反対の表面上に、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、上記第1の電極と上記第2の電極とが対向するように配置する工程と、上記はんだ粒子の融点以上に加熱することで、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続しているはんだ部を、上記はんだ接合材料により形成し、かつ、上記第1の電極と上記第2の電極とを、上記はんだ部により電気的に接続する工程とを備える。
【0138】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第1の電極上に、上記第1の電極よりも側方にはみ出さないように、上記はんだ接合材料を配置してもよい。
【0139】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記はんだ接合材料は、はんだペーストであることが好ましい。本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第1の接続対象部材が、上記第1の電極を複数有し、上記第2の接続対象部材が、上記第2の電極を複数有し、上記第1の電極上に、上記第1の電極よりも側方にはみ出すように、上記はんだ接合材料を配置するか、又は、複数の上記第1の電極上に、隣り合う上記第1の電極間をまたがるように、上記はんだ接合材料を配置し、隣り合う上記第1の電極間を、上記はんだ部がまたがっておらず、かつ、隣り合う上記第2の電極間を、上記はんだ部がまたがっていない接続構造体を得ることが好ましい。上記第1の電極上に、上記第1の電極よりも側方にはみ出すように、上記はんだ接合材料を配置してもよく、隣り合う上記第1の電極間をまたがるように、上記はんだ接合材料を配置してもよい。
【0140】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記はんだ接合材料が、上記フラックス及び上記バインダーの内の少なくとも一方として、アミノ基又はチオール基を有する化合物を含有し、上記はんだ粒子の融点以上に加熱することで、かつ、上記アミノ基又はチオール基を有する化合物の分解温度及び揮発温度の内の少なくとも一方の温度以上に加熱することで、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続しているはんだ部を、上記はんだ接合材料により形成し、かつ、上記第1の電極と上記第2の電極とを、上記はんだ部により電気的に接続することが好ましい。
【0141】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0142】
図1は、本発明の一実施形態に係るはんだ接合材料を用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0143】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材3と、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続しているはんだ部4とを備える。はんだ部4は、上述したはんだ接合材料により形成されている。
【0144】
第1の接続対象部材2は表面(上面)に、複数の第1の電極2aを有する。第2の接続対象部材3は表面(下面)に、複数の第2の電極3aを有する。第1の電極2aと第2の電極3aとが、はんだ部4により電気的に接続されている。隣り合う第1の電極2a間、及び、隣り合う第2の電極3a間を、はんだ部4はまたがっていない。
【0145】
第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4とは異なる領域では、はんだは存在しない。はんだ部4とは異なる領域では、はんだ部4と離れたはんだは存在しない。なお、少量であれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4とは異なる領域に、はんだが存在していてもよい。
【0146】
第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間において、はんだ部がない領域には、アンダーフィル材が充填されてもよい。第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間において、はんだ部がない領域には、アンダーフィル材を充填して、接続構造体を用いてもよい。
【0147】
導通信頼性をより一層高める観点からは、第1の電極とはんだ部と第2の電極との積層方向に第1の電極と第2の電極との対向し合う部分をみたときに、第1の電極と第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上)に、はんだ部が配置されていることが好ましい。
【0148】
次に、本発明の一実施形態に係るはんだ接合材料を用いて、接続構造体1を製造する方法の一例を説明する。
【0149】
先ず、第1の電極2aを表面(上面)に有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、
図2(a)に示すように、第1の接続対象部材2の表面上に、はんだ粒子11Aを含むはんだ接合材料11を配置する(第1の工程)。第1の電極2a上に、はんだ粒子11Aを含むはんだ接合材料11を配置する。
【0150】
第1の接続対象部材2の第1の電極2aが設けられた表面上に、はんだ接合材料11を配置する。隣り合う第1の電極2a間をまたがらないように、
図2(a)では、各第1の電極2a上に選択的に、はんだ接合材料11を配置している。1つの第1の電極2a上に、第1の電極2aよりも側方にはみ出すように、はんだ接合材料11を配置している。はんだ接合材料11の配置の後に、はんだ粒子11Aは、第1の電極2a(ライン)上と、第1の電極2aが形成されていない領域(スペース)上との双方に配置されている。
【0151】
はんだ接合材料11の配置方法としては、特に限定されないが、ディスペンサーによる塗布、スクリーン印刷、及びインクジェット装置による吐出等が挙げられる。
【0152】
また、第2の電極3aを表面(下面)に有する第2の接続対象部材3を用意する。次に、
図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の表面上のはんだ接合材料11において、はんだ接合材料11の第1の接続対象部材2側とは反対側の表面上に、第2の接続対象部材3を配置する(第2の工程)。はんだ接合材料11の表面上に、第2の電極3a側から、第2の接続対象部材3を配置する。このとき、第1の電極2aと第2の電極3aとを対向させる。
【0153】
次に、はんだ粒子11Aの融点以上にはんだ接合材料11を加熱する(第3の工程)。この加熱時には、電極が形成されていない領域に存在していたはんだ粒子11Aは、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まる(自己凝集効果)。また、はんだ粒子11Aは溶融し、互いに接合する。また、この加熱により、バインダーは分解又は揮発することが好ましい。さらに、この加熱により、フラックスは分解又は揮発することが好ましい。この結果、
図2(c)に示すように、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続しているはんだ部4を、はんだ接合材料11により形成する。複数のはんだ粒子11Aが接合することによってはんだ部4が形成される。
【0154】
なお、
図3(a)に示すように、隣り合う第1の電極2a間をまたがるように、各第1の電極上に選択的に、はんだ接合材料を配置してもよい。この場合に、1つの第1の電極上に、該第1の電極よりも側方にはみ出すように、はんだ接合材料を配置してもよい。その後、
図2(b)及び
図2(c)に対応する
図3(b)及び
図3(c)に示す状態を経て、接続構造体を得てもよい。
【0155】
上記第3の工程における上記加熱温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上であり、好ましくは450℃以下、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは250℃以下、特に好ましくは200℃以下である。
【0156】
なお、上記第3の工程の後に、位置の修正や製造のやり直しを目的として、第1の接続対象部材又は第2の接続対象部材を、はんだ部から剥離することができる。この剥離を行うための加熱温度は、好ましくははんだの融点以上、より好ましくははんだの融点(℃)+10℃以上である。この剥離を行うための加熱温度は、はんだの融点(℃)+100℃以下であってもよい。
【0157】
上記第3の工程における加熱方法としては、はんだの融点以上に、接続構造体全体を、リフロー炉を用いて又はオーブンを用いて加熱する方法や、接続構造体のはんだ部のみを局所的に加熱する方法が挙げられる。
【0158】
局所的に加熱する方法に用いる器具としては、ホットプレート、熱風を付与するヒートガン、はんだゴテ、及び赤外線ヒーター等が挙げられる。
【0159】
また、ホットプレートにて局所的に加熱する際、はんだ部直下は、熱伝導性の高い金属にて、その他の加熱することが好ましくない個所は、フッ素樹脂等の熱伝導性の低い材質にて、ホットプレート上面を形成することが好ましい。
【0160】
上記第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。上記第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、半導体パッケージ、LEDチップ、LEDパッケージ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びに樹脂フィルム、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、リジッドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記第1,第2の接続対象部材は、電子部品であることが好ましい。
【0161】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極、SUS電極、及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極、銀電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0162】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0163】
バインダー1の作製方法:
チオール基を有する化合物の合成:
DPMP-E(ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート))3モルに対し、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)1モルをラジカル開始剤V-65(和光純薬工業社製、アゾ系重合開始剤)にて60℃で30分反応させることで、チオール基を有する化合物を合成した。得られたチオール基を有する化合物の沸点は、190℃であった。
【0164】
バインダー2の作製方法:
アミノ基を有する化合物の合成:
ビス(ヘキサメチレン)トリアミン3モルに対して、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)1モルをラジカル開始剤V-65(和光純薬工業社製、アゾ系重合開始剤)にて60℃で30分反応させることで、アミノ基を有する化合物を合成した。得られたアミノ基を有する化合物の沸点は、180℃であった。
【0165】
バインダー3の作製方法:
チオール基を有する化合物の合成:
TMTP(トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート)3モルに対し、シアヌル酸トリアリル1モルをラジカル開始剤V-65(和光純薬工業社製、アゾ系重合開始剤)にて60℃で30分反応させることで、チオール基を有する化合物を合成した。得られたチオール基を有する化合物の沸点は、170℃であった。
【0166】
バインダーA:水添ロジン
【0167】
フラックス1の作製方法:
酒石酸30重量部、ベンジルアミン75重量部を3つ口フラスコに入れ、溶解させた。その後、150℃で減圧下(4Torr以下)2時間反応させることにより、フラックス1を得た。得られたフラックス1の沸点は、180℃であった。
【0168】
フラックスA:アジピン酸
【0169】
はんだ粒子1の作製方法:
Sn-3Ag-0.5Cuはんだ粒子(三井金属社製「ST-5」、平均粒子径(メディアン径)5μm)と、クエン酸(和光純薬工業社製「クエン酸」)とを、触媒であるp-トルエンスルホン酸を用いて、トルエン溶媒中90℃で脱水しながら8時間攪拌することにより、はんだの表面にカルボキシル基を含む基が共有結合しているはんだ粒子1(CV値20%)を得た。はんだ粒子1におけるはんだの融点は、218℃であった。
【0170】
はんだ粒子2の作製方法:
Sn-3Ag-0.5Cuはんだ粒子(三井金属社製「ST-5」、平均粒子径(メディアン径)5μm)200gと、イソシアネート基を有するシランカップリング剤(信越シリコーン社製「KBE-9007」)10gと、アセトン70gとを3つ口フラスコに秤量した。室温で撹拌しながら、はんだ粒子表面の水酸基とイソシアネート基との反応触媒であるジブチル錫ジラウレート0.25gを添加し、撹拌下、窒素雰囲気下にて100℃で2時間加熱した。その後、メタノールを50g添加し、撹拌下、窒素雰囲気下にて、60℃で1時間加熱した。
【0171】
その後、室温まで冷却し、ろ紙ではんだ粒子をろ過し、真空乾燥にて、室温で1時間脱溶剤を行った。
【0172】
上記はんだ粒子を、3つ口フラスコに入れ、アセトン70gと、クエン酸トリメチル30gと、エステル交換反応触媒であるモノブチルスズオキサイド0.5gとを添加し、撹拌下、窒素雰囲気下で60℃で1時間反応させた。
【0173】
これにより、シランカップリング剤由来のシラノール基に対して、クエン酸トリメチルのエステル基をエステル交換反応により反応させ、共有結合させた。
【0174】
その後、クエン酸を10g追加し、60℃で1時間反応させることで、クエン酸トリメチルのシラノール基と反応していない残メチルエステル基に対して、クエン酸を付加させた。
【0175】
その後、室温まで冷却し、ろ紙ではんだ粒子をろ過し、ろ紙上でヘキサンにてはんだ粒子を洗浄し、未反応、及びはんだ粒子の表面に非共有結合にて付着している、残クエン酸トリメチル、クエン酸を除去したのち、真空乾燥にて、室温で1時間脱溶剤を行った。
【0176】
得られたはんだ粒子をボールミルで解砕した後、所定のCV値となるように篩を選択した。
【0177】
これにより、はんだ粒子2(CV値20%)を得た。はんだ粒子2におけるはんだの融点は、218℃であった。
【0178】
はんだ粒子3の作製方法:
外表面にチオール基を有するはんだ粒子の作製:
チオール基を有するシランカップリング剤(信越シリコーン社製「KBM-803」)10gと、アセトン50g、水20gとを3つ口フラスコに秤量した。室温で撹拌しながら、窒素雰囲気下にて60℃で6時間加熱した。
【0179】
その後、室温まで冷却し、ろ紙ではんだ粒子をろ過し、真空乾燥にて、室温で1時間脱溶剤を行った。これにより、はんだ粒子3(CV値20%)を得た。はんだ粒子3におけるはんだの融点は、218℃であった。
【0180】
はんだ粒子4の作製方法:
外表面にアミノ基を有するはんだ粒子の作製:
アミノ基を有するシランカップリング剤(信越シリコーン社製「KBM-603」)10gと、アセトン50g、水20gとを3つ口フラスコに秤量した。室温で撹拌しながら、窒素雰囲気下にて60℃で6時間加熱した。
【0181】
その後、室温まで冷却し、ろ紙ではんだ粒子をろ過し、真空乾燥にて、室温で1時間脱溶剤を行った。これにより、はんだ粒子4(CV値20%)を得た。はんだ粒子4におけるはんだの融点は、218℃であった。
【0182】
はんだ粒子5の作製方法:
Sn-3Ag-0.5Cuはんだ粒子(三井金属社製「ST-5」、平均粒子径(メディアン径)5μm)を、SnBiはんだ粒子、三井金属社製「ST-5」、平均粒子径(メディアン径)5μm)に変更したこと以外は、はんだ粒子1と同様にして、はんだ粒子5(CV値20%)を得た。はんだ粒子5におけるはんだの融点は、139℃であった。
【0183】
(はんだ粒子のCV値)
CV値を、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製「LA-920」)にて、測定した。
【0184】
はんだ粒子A:SnBiはんだ粒子、融点139℃、三井金属社製「ST-5」、平均粒子径(メディアン径)5μm
【0185】
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル
【0186】
(実施例1~7及び比較例1,2)
(1)はんだペーストの作製
下記の表1に示す成分を下記の表1に示す配合量で配合して、はんだペーストを得た。
【0187】
(2)接続構造体の作製
複数の銅箔ランドが形成されたFR-4基板上にメタルマスクではんだペーストを、複数の銅箔ランドをまたがるように印刷した後、1005サイズの積層セラミックコンデンサ部品を銅箔ランドの印刷膜上にマウンターにて実装した。その後、最高温度260℃、保持時間40秒の条件で、リフローはんだ付けをし、試験基板である接続構造体を作製した。
【0188】
(評価)
(1)粘度
はんだペーストの25℃での粘度(η25)を、E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定した。
【0189】
(2)電極上のはんだの配置精度1
得られた接続構造体において、第1の電極とはんだ部と第2の電極との積層方向に第1の電極と第2の電極との対向し合う部分をみたときに、第1の電極と第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の、はんだ部が配置されている面積の割合Xを評価した。電極上のはんだの配置精度1を下記の基準で判定した。
【0190】
[電極上のはんだの配置精度1の判定基準]
○○:割合Xが70%以上
○1:割合Xが65%以上、70%未満
○2:割合Xが60%以上、65%未満
△1:割合Xが55%以上、60%未満
△2:割合Xが50%以上、55%未満
×:割合Xが50%未満
【0191】
(3)部品実装性の確認
得られた接続構造体について、積層セラミックコンデンサ500個のショートの有無を確認した。
【0192】
結果を下記の表1に示す。
【0193】
【符号の説明】
【0194】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…第1の電極
3…第2の接続対象部材
3a…第2の電極
4…はんだ部
11…はんだ接合材料
11A…はんだ粒子