(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】負極活物質塗料、負極および二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20220203BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220203BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220203BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220203BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M10/0566
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2017187329
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐貫 淳
(72)【発明者】
【氏名】川野 有加
(72)【発明者】
【氏名】中村 志穂
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105514435(CN,A)
【文献】特開2012-033364(JP,A)
【文献】特開2013-197078(JP,A)
【文献】特開2017-071524(JP,A)
【文献】特開2017-022019(JP,A)
【文献】特開2013-110018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質、導電剤、水系バインダー、水、および溶媒を含有する負極活物質量塗料であって、上記溶媒の沸点が200℃以上300℃以下、かつ25℃における水溶解度が20 g/L以上であり、上記溶媒の含有量が、負極活物質塗料100質量%に対し
0.5質量%以上5質量%以下であることを特徴とする負極活物質塗料。
【請求項2】
上記水系バインダーの含有量の合計量が、負極活物質塗料100質量%に対し0.0 5質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質塗料。
【請求項3】
集電体および上記集電体上に形成された負極活物質合材層を備えた負極であって、上記 負極活物質合材層が、請求項1または2に記載の負極活物質塗料を乾燥させてなるもので あり、上記負極活物質合材層の単位面積当たりの目付け量が、10mg/cm
2以上30 mg/cm
2以下であることを特徴とする負極。
【請求項4】
負極と正極と、負極と正極との間に配置されるセパレーターと、電解液とを備えた 二次電池であって、上記負極が、請求項3に記載の負極であることを特徴とする二次電池 。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質塗料、負極および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池として、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン二次電池に注目が集まっている。また、電池の高容量化のために電極の合材層を厚くすることが検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、低コスト化の要請から活物質塗料塗工後の乾燥速度を上げる傾向にあるため、合材層を厚くするために電極の活物質塗料も塗工厚を増加すると、乾燥が不十分となったり、乾燥後の合材層に割れが発生する等の問題が生じている。これらを解決するために、水系バインダー(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、スチレンブタジエンゴム)の配合量を増加することによる改善が検討されている。しかし、絶縁体である水系バインダーが増加すると電極内の抵抗の増加し、電池特性の低下が生じるという問題があった。
そこで、本発明は低コストで高容量かつ電池特性に優れた二次電池を供することが出来る負極活物質塗料、負極、および二次電池を提供ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の実施形態としては、負極活物質、導電剤、水系バインダー、水、および
溶媒を含有する負極活物質量塗料であって、上記溶媒の沸点が200℃以上300℃以下
、かつ25℃における水溶解度が20g/L以上であり、上記溶媒の含有量が、負極活物
質塗料100質量%に対し0.5質量%以上5質量%以下であることを特徴とする負極
活物質塗料である。
【0006】
好ましい実施形態としては、水系バインダーの合計量が、負極活物質塗料100質量%に対し0.05質量%以上5質量%以下である。
【0007】
本発明の他の実施形態としては、集電体および上記集電体上に形成された負極活物質合材層を備えた負極であって、上記負極活物質合材層が、上記負極活物質塗料を乾燥させてなるものであり、上記負極活物質合材層の単位面積当たりの目付け量が、10mg/cm2以上30mg/cm2以下である負極である。
【0008】
本発明の他の実施形態としては、負極と正極と、負極と正極との間に配置されるセパレーターと、電解液とを備えた二次電池であって、負極が、上記負極である二次電池である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、低コストで高容量かつ電池特性に優れた二次電池を供することが出来る負極活物質塗料、負極、および二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0011】
本実施形態に係る負極活物質塗料(以下、単に塗料ということがある。)は、負極活物質、導電剤、水系バインダー、水、および溶媒を含有する負極活物質量塗料であって、上記溶媒の沸点が200℃以上300℃以下、かつ25℃における水溶解度が20g/L(25℃)以上であり、上記溶媒の含有量が、負極活物質塗料100質量%に対し0.05質量%以上5質量%以下であるものである。
【0012】
上記負極活物質は、炭素系負極活物質およびケイ素系負極活物質から選択された1種または2種以上を使用することができる。
【0013】
上記炭素系負極活物質としては、炭素(原子)を含み、かつ電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出することができる物質であれば特に制限無く使用することができる。上記炭素系活物質としては、例えば、黒鉛活物質(人造黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛と天然黒鉛との混合物、人造黒鉛を被覆した天然黒鉛等)等が挙げられ、これらを2種以上併用したものも使用することができる。
【0014】
上記ケイ素系負極活物質は、ケイ素(原子)を含み、かつ、電気化学的にリチウムイオ
ンを吸蔵及び放出することができる物質である。ケイ素系負極活物質としては、例えば、
ケイ素単体の微粒子、ケイ素化合物の微粒子等が挙げられる。ケイ素化合物は、リチウム
イオン二次電池の負極活物質として使用されるものであれば特に制限されないが具体的に
はケイ素酸化物及びケイ素合金等が挙げられる。これらのうち、ケイ素、ケイ素合金、お
よびSiOx(ただし、xは0.5≦x≦1.6を表す)で表されるケイ素酸化物から選
択された1種または2種以上が好ましい。
【0015】
上記導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば、特に限
定なく使用することができる。通常、アセチレンブラックやケッチンブラック等のカーボ
ンブラックが使用されるが、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人造黒
鉛、カーボンウイスカー、炭素繊維や金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金等)粉
末、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料でもよい。これらの導電剤の内、
グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボン
ナノチューブやその誘導体、炭素繊維が挙げられる。これらは2種類以上の混合物として
使用することもできる。その添加量は負極活物質量100質量%に対して0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、特に0.2質量%以上20質量%以下が好ましい。
【0016】
上記水系バインダーとしては、スチレン-ブタジエンゴム、アクリル化されたスチレン-ブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、プロピレンと炭素数が2~8のオレフィンとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
上記水系バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系化合物をさらに含むことができる。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。アルカリ金属塩としては、Na、KまたはLiを含む塩を使用することができる。
【0018】
上記水系バインダーの合計量(水系バインダーとセルロース系化合物の合計量)の下限は、負極活物質量塗料100質量%に対し、0.05質量%以上が好ましく、0.25質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。一方、上限は5.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましい。上記水系バインダーの合計量が上記範囲内である場合、負極活物質および導電剤の分散性が良好となり、均一でムラの無い負極活物質層を得ることが出来る。
【0019】
上記水系バインダーとセルロース系化合物の配合比率は水系バインダー100質量部に対し、セルロース系化合物が5質量部以上であり、10質量部以上が好ましく、20質量部がより好ましい。また、300質量部以下であり、200質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましい。配合比率が上記範囲名である場合、負極活物質および導電剤の分散性が良好となり、均一でムラの無い負極活物質層を得ることが出来る。
【0020】
上記溶媒は、沸点が200℃以上300℃以下、かつ水溶解度が20g/L(25℃)以上である。溶媒が上記条件を満たす場合、塗工厚を厚くしても、割れが発生せず均一でムラの無い負極活物質層を得ることが出来る。
【0021】
上記溶媒としては、上記条件を満たすものであれば特に限定されないが、具合的には、
N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルアセトアミド、アセトアミド、2-フェニルエタノール、2-フェノキシエタノール、2-(2-フェノキシエトキシ)エタノール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2’-ジヒドロキシジエチルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコール、1,2-ジブトキシエタン、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが上げられる。
【0022】
上記溶媒の含有量が、負極活物質塗料100質量%に対し0.05質量%以上5質量%以下である。含有量が上記範囲内である場合、負極活物質塗料の分散性が良好となり、得られる負極活物質層の状態が良好となる。含有量の下限は、0.25質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。含有量の上限は、2.5質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。含有量が上記範囲内である場合、塗工厚を厚くしても、割れが発生せず均一でムラの無い負極活物質層を得ることが出来る。
【0023】
上記負極活物質塗料は、負極活物質および導電剤を順次水系バインダーに添加・混合し、さらに水で希釈する事により調製することが出来る。上記負極活物質塗料の粘度は適宜設定できるものであるが、具体的には下限が1,000mPa・s以上、好ましくは2,000mPa・s以上、より好ましくは3,000mPa・s以上である。一方、下限は10,000mPa・s以下が好ましく、7,000mPa・s以下がより好ましく、5,000mPa・s以下が更に好ましい。上記負極活物質塗料の粘度が上記範囲内である場合、塗工性が優れた塗料となるため好ましい。
【0024】
上記負極は、上記負極活物質塗料を集電体に塗工し、水を揮発させることにより負極活物質層を形成するものである。
【0025】
上記集電体は、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でも
使用可能である。例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭
素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性
向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いる
ことができる。これらの集電体材料は表面を酸化処理することも可能である。また、その
形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキス
パンドされた物、ラス体、多孔質体、発泡体等の成形体も用いられる。厚みは特に限定は
ないが、1~100μmのものが通常用いられる。
【0026】
上記負極活物質塗料を集電体に塗工する場合の塗工厚は適宜設定されるものであるが、具体的には、150μm以上300μm以下の比較的厚めに塗工するものに好適である。
【0027】
上記負極活物質層の単位面積当たりの目付け量は、適宜設定されるものであるが、具体的には10mg/cm2以上であり、30mg/cm2以下の比較的目付け量の多い塗工を行うものに好適である。
【0028】
本発明の二次電池は、負極として上記負極を備えるものである。一実施形態に係る二次電池の構造は、特に限定されず、例えば、正極、負極、セパレーター、および電解質で構成することができ、負極に上記本実施形態に係る電極が用いられる。一実施形態として、電池は、セパレーターを介して正極と負極を交互に積層した積層体と、該積層体を収容する容器と、容器内に注入された電解液など電解質とを備えてなるものでもよい。
【実施例】
【0029】
つぎに、実施例について比較例とあわせて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例
に限定されるものではない。なお、例中、「%」とあるのは、特に限定のない限り質量基
準を意味する。
【0030】
[塗料の調製]
(塗料1)
負極活物質(天然黒鉛系活物質)96.5質量部、導電材(導電性カーボンブラック、製品名:SuperP、イメリス・ジーシー・ジャパン株式会社製)0.5質量部、水系バインダー(スチレン-ブタジエンゴムエマルジョン、固形分49%)2質量部、セルロース系化合物1(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、セロゲンF-6HS9、第一工業製薬株式会社製)1質量部、溶媒1(N-メチルピロリドン、沸点202℃、水溶解度1000g/L)0.2質量部を自公転式書攪拌機にて、20rpmの回転速度で10分間攪拌した後、蒸留水100質量部を数回に分割して添加し、その都度40rpmの回転速度で10分間攪拌して塗料1を得た。
【0031】
(塗料2および3)
溶媒1(N-メチルピロリドン)の配合量を表1に示すとおりに変更した以外は、塗料1と同様に調製し、塗料2および3を得た。
【0032】
(塗料4)
溶媒1(N-メチルピロリドン)を溶媒2(2-フェノキシエタノール、沸点245℃、水溶解度28.9g/L)に、配合量を0.3質量部に変更した以外は、塗料1と同様に調製し、塗料4を得た。
【0033】
(塗料5および6)
2-フェノキシエタノールの配合量を表1に示すとおりに変更した以外は、塗料4と同様に調製し、塗料5および6を得た。
【0034】
(塗料7)
溶媒(N-メチルピロリドン)を2-(2-フェノキシエトキシ)エタノール(沸点298℃、37g/L)に変更した以外は、塗料1と同様に調製し、塗料7を得た。
【0035】
(塗料8)
2-(2-フェノキシエトキシ)エタノールの配合量を1質量部に変更した以外は、塗料7と同様に調製し、塗料8を得た。
【0036】
(塗料9)
セルロース系化合物1をセルロース系化合物2(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、セロゲンBSH-12、第一工業製薬株式会社製)に、配合量を0.6質量部に、溶媒1の配合量を1.3質量部にそれぞれ変更した以外は、塗料1と同様に調製し、塗料9を得た。
【0037】
(塗料10)
溶媒1の配合量を2.5質量部に変更した以外は、塗料1と同様に調製し、塗料10を得た。
【0038】
(塗料11)
溶媒1を溶媒2(2-フェノキシエタノール)に、配合量を1.3質量部にそれぞれ変更した以外は塗料9と同様に調製し、塗料11を得た。
【0039】
(塗料12)
溶媒を配合しない以外は、塗料1と同様に調製し、塗料9を得た。
【0040】
[塗料の評価]
塗料1ないし12を以下の評価基準にて評価を行った。その結果を下記表1に示す。
【0041】
(粘度)
JIS Z8803に準じてBM型粘度計(単一円筒型回転粘度計)を用いて25℃における負極活物質塗料の粘度を測定した。その際、(a)ロータ回転数を60rpmとして測定し、(b)上記(a)での測定値が8000mPa・s以上の場合にはロータ回転数を30rpmに変更して測定し、(c)上記(b)での測定値が16000mPa・s以上の場合にはロータ回転数を12rpmに変更して測定した。
【0042】
(分散状態)
負極活物質塗料の負極活物質および導電材の分散状態を以下の評価基準にて評価した
○:目視にて分散不良による小さな負極活物質あるいは導電材の固化物が存在しないこと、かつ、水系バインダーの遊離あるいは凝集物が存在しないこと
△:目視にて分散不良による小さな負極活物質あるいは導電材の固化物が存在する、または、水系バインダーのわずかな遊離あるいは小さな凝集物が存在するなどいずれか一方が確認されたこと
×:目視にて明らかに分散不良とわかる大きな負極活物質あるいは導電材の固化物が存在する、または、水系バインダーの明らかな遊離あるいは大きな凝集物が存在する、塗料の分離などが確認されたこと
【0043】
【表1】
[負極の作成]
(負極1)
塗料1を銅箔(厚さ10μm)に、厚みが280μmとなるようにアプリケーターを調整・塗工し、100℃で予備乾燥を行った後、130℃で8時間真空乾燥を行った。乾燥 して得られた電極をローラープレス機により加圧成形することにより、銅箔の片面の電極密度が1.5g/cm3の負極合剤層を有する電極シートを得た。その後、上記電極シー トをφ12mmの打ち抜き機で円形に打ち抜き、評価用の負極1を得た。
【0044】
(負極2ないし13)
塗料および塗工厚を表2に示すとおり変更した以外は、負極1と同様に作成し、負極2 ないし13を得た。
【0045】
[負極の評価]
負極1ないし13を下記の評価基準にて評価した。評価結果を表2に示す。
【0046】
(目付け量の測定)
φ12mmで打ち抜いた電極の重量(電極重量)から銅箔の重量(銅箔)を差き、合剤層の重量を算出する。合剤層中の活物質比率(活物質含有率)から活物質の重量が算出され、打ち抜いた電極の面積で除した値を目付け量とした。
【0047】
目付け量(g/cm2)=(電極重量(g)-銅箔重量(g))×活物質含有率(質量%)÷電極の面積(cm2)…(式1)
【0048】
(乾燥割れの評価)
乾燥後の負極の状態を以下の評価基準にて評価を行った。
◎:予備乾燥後の電極表面を目視で観察し、亀裂および粉落ちなどが全くない
○:予備乾燥後の電極表面を目視で観察し、塗工面の端でわずかに亀裂があるが、中央では割れおよび粉落ちなどが全くない
△:予備乾燥後の電極表面を目視で観察し、亀裂は認められるが粉落ちは全くない
【0049】
(剥離強度の測定)
上記電極シートを18cm×2cmの短冊状に切り出し、集電体側に厚み1mmの鋼板を両面テープで接着し、塗工面を両面テープに貼り付け、集電体にセロハン粘着テープを貼り付け、引張試験機(島津製作所、オートグラフAGS-X)にて50mm/minの速さで180°方向にはく離させる際の応力を測定した。
【0050】
【表2】
表2より、溶媒を含まない塗料(塗料
12)を使用した負極は塗工量を多くし た場合(負極
13)、乾燥時に負極合材層に割れが生じた。
【0051】
[リチウムイオン二次電池の作製]
(実施例1)
上記で得られた負極1、セパレーター(サンクメタル社製セルガード2325)、作用極としてリチウム金属(φ15mm)の順で、日本トムセル製TJ-ACコインセル内の所定の位置に配置した。さらに、1mol/LのLiPF6を含むエチレンカーボネート、メチルエチルカーボネートの混合溶液にビニレンカーボネートを添加した電解液濃度を注液し、二次電池を作製した。
【0052】
(実施例2~8)
負極1をそれぞれ負極2~9に変更した以外は、実施例1と同様に作成し二次電池を得た。
【0053】
[電池特性の評価]
(初回充放電特性)
20℃の雰囲気下、上記負極の理論容量に基づいて得られた0.1Cの電流値で電圧値が0.01Vとなるまで定電流定電圧条件で充電を行い、電流値が0.05Cに低下した時点で充電を停止した。次いで、電流値0.1Cの条件で金属Liに対する電圧が1.0Vとなるまで放電を行い、初回放電容量を測定した。評価結果を表3に示す。
【0054】
【0055】
表3より、実施例1~8で得られた負極は二次電池として作動することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の負極活物質塗料およびこれを用いた負極ならびに二次電池は携帯機器などに広く利用することができる。