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特許7011925易開封性ヒートシール材用樹脂組成物、易開封性ヒートシール材、包装材および包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】易開封性ヒートシール材用樹脂組成物、易開封性ヒートシール材、包装材および包装体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20220120BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220120BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/26
B65D65/40 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017217366
(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公開番号】P2019085541
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀則
(72)【発明者】
【氏名】芝田 保喜
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-188305(JP,A)
【文献】特開2015-214659(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145235(WO,A1)
【文献】特開2009-035308(JP,A)
【文献】特開2017-190406(JP,A)
【文献】特開2010-150318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/12
C08L 23/26
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
易開封性ヒートシール材に用いられる樹脂組成物であって、
ポリプロピレン系樹脂(A)と、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)と、を含み、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)はプロピレン系ブロック共重合体を含み、
前記樹脂組成物中の前記ポリプロピレン系樹脂(A)と前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の合計を100質量%としたとき、前記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が1質量%以上50質量%以下であり、前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の含有量が50質量%以上99質量%以下であり、
前記樹脂組成物全体を100質量%としたとき、前記ポリプロピレン系樹脂(A)と前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の合計含有量が50質量%以上である易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
【請求項2】
易開封性ヒートシール材に用いられる樹脂組成物であって、
ポリプロピレン系樹脂(A)と、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)(ただし、アイオノマーを除く)と、を含み、
前記樹脂組成物中の前記ポリプロピレン系樹脂(A)と前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の合計を100質量%としたとき、前記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が1質量%以上50質量%以下であり、前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の含有量が50質量%以上99質量%以下であり、
前記樹脂組成物全体を100質量%としたとき、前記ポリプロピレン系樹脂(A)と前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の合計含有量が95質量%以上である易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
JIS K7210:1999に準拠し、230℃、2160g荷重の条件で測定される、前記ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以上50g/10分以下であり、
JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以上50g/10分以下である易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2または3に記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)がホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンとのランダム共重合体およびプロピレン系ブロック共重合体から選択される一種または二種以上を含む易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2または3に記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)がプロピレン系ブロック共重合体を含む易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)に含まれる、前記エチレンから導かれる構成単位の含有量が50質量%以上98.9質量%以下であり、前記不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有量が0.1質量%以上20質量%以下であり、前記不飽和エステルから導かれる構成単位の含有量が1質量%以上30質量%以下である易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)における前記不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸を含む易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)における前記不飽和エステルが(メタ)アクリル酸エステルを含む易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物により構成された易開封性ヒートシール材。
【請求項10】
基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、請求項に記載の易開封性ヒートシール材からなるヒートシール層と、
を備える包装材。
【請求項11】
請求項10に記載の包装材において、
前記ヒートシール層の厚みが20μm以下である包装材。
【請求項12】
請求項10または11に記載の包装材において、
前記ヒートシール層は海島構造を有し、
前記海島構造における島相に前記ポリプロピレン系樹脂(A)が少なくとも存在し、前記海島構造における海相に前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)が少なくとも存在する包装材。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか一項に記載の包装材を用いた包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性ヒートシール材用樹脂組成物、易開封性ヒートシール材、包装材および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋等の包装体に求められる機能の一つに易開封性がある。包装体に易開封性を付与ることによって、包装体を破かずに内容物を取り出すことができる。包装体に易開封性を付与する方法として、一般的に、易開封性ヒートシール材が用いられている。
【0003】
このような易開封性ヒートシール材に関する技術としては、例えば、特許文献1および2に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1(特開2013-136151号公報)には、基材層、中間層、及びシーラント層を順次積層して得られる易開封性積層フィルムであって、該シーラント層は、ポリエチレン樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合樹脂及びポリプロピレン樹脂からなる群より選択される熱可塑性樹脂Aと、ポリブテン-1、ポリプロピレンまたはエチレン・プロピレンランダム共重合体から選択される熱可塑性樹脂Bとを、熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=70/30~97/3の質量比で含む樹脂組成物からなり、且つ、該熱可塑性樹脂A相中に該熱可塑性樹脂Bからなるドメインが分散する海島構造を有する層であり、該ドメイン断面の長径と短径との比は、長径/短径=14~30であり、該シーラント層の厚さは、3~15μmであることを特徴とする、易開封性積層フィルムが記載されている。
【0005】
特許文献2(特開2009-96155号公報)には、シール層(A)及び基材層(B)を有する多層積層フィルムであって、10~50重量部の高密度ポリエチレンと50~90重量部のポリプロピレンの混合物からなるシール層(A)上に、エチレン・プロピレンのブロック又はランダム共重合体からなる基材層(B)が1層又は2層以上積層されており、該シール層(A)の層厚が1μm~20μmであり、該基材層(B)の層厚が20μm~100μmであることを特徴とする多層積層フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-136151号公報
【文献】特開2009-96155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、包装体に使用する易開封性ヒートシール材のコストを下げる観点から、易開封性を満足しながら、厚みが薄いヒートシール層を得ることが可能な易開封性ヒートシール材用樹脂組成物が求められている。
しかし、本発明者らの検討によれば、従来の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物を用いて厚みが薄いヒートシール層を形成すると、得られる包装材の易開封性が悪化してしまうことを見出した。
すなわち、従来の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物では、易開封性および加工性の性能バランスという観点において、改善の余地があることが明らかになった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、易開封性および加工性の性能バランスに優れた易開封性ヒートシール材を実現できる易開封性ヒートシール材用樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、加工性に優れるエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)に対し、ポリプロピレン系樹脂(A)を特定量配合することで、易開封性および加工性の性能バランスを向上できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す易開封性ヒートシール材用樹脂組成物、易開封性ヒートシール材、包装材および包装体が提供される。
【0011】
[1]
易開封性ヒートシール材に用いられる樹脂組成物であって、
ポリプロピレン系樹脂(A)と、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)と、を含み、
上記樹脂組成物中の上記ポリプロピレン系樹脂(A)と上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の合計を100質量%としたとき、上記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が1質量%以上50質量%以下であり、上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の含有量が50質量%以上99質量%以下である易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
JIS K7210:1999に準拠し、230℃、2160g荷重の条件で測定される、上記ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以上50g/10分以下であり、
JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以上50g/10分以下である易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
[3]
上記[1]または[2]に記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
上記ポリプロピレン系樹脂(A)がホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンとのランダム共重合体およびプロピレン系ブロック共重合体から選択される一種または二種以上を含む易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
[4]
上記[1]または[2]に記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
上記ポリプロピレン系樹脂(A)がプロピレン系ブロック共重合体を含む易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)に含まれる、上記エチレンから導かれる構成単位の含有量が50質量%以上98.9質量%以下であり、上記不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有量が0.1質量%以上20質量%以下であり、上記不飽和エステルから導かれる構成単位の含有量が1質量%以上30質量%以下である易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)における上記不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸を含む易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)における上記不飽和エステルが(メタ)アクリル酸エステルを含む易開封性ヒートシール材用樹脂組成物。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物により構成された易開封性ヒートシール材。
[9]
基材層と、
上記基材層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、上記[8]に記載の易開封性ヒートシール材からなるヒートシール層と、
を備える包装材。
[10]
上記[9]に記載の包装材において、
上記ヒートシール層の厚みが20μm以下である包装材。
[11]
上記[9]または[10]に記載の包装材において、
上記ヒートシール層は海島構造を有し、
上記海島構造における島相に上記ポリプロピレン系樹脂(A)が少なくとも存在し、上記海島構造における海相に上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)が少なくとも存在する包装材。
[12]
上記[9]乃至[11]のいずれか一つに記載の包装材を用いた包装体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、易開封性および加工性の性能バランスに優れた易開封性ヒートシール材を実現できる易開封性ヒートシール材用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、数値範囲の「X~Y」は特に断りがなければ、X以上Y以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは」アクリル、メタクリルまたはアクリルとメタクリルの両方を意味する。
【0014】
1.易開封性ヒートシール材用樹脂組成物(P)について
本実施形態に係る易開封性ヒートシール材用樹脂組成物(P)(以下、樹脂組成物(P)とも呼ぶ。)は、易開封性ヒートシール材に用いられる樹脂組成物であって、ポリプロピレン系樹脂(A)と、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)と、を含む。
そして、樹脂組成物(P)において、樹脂組成物(P)中の上記ポリプロピレン系樹脂(A)と上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の合計を100質量%としたとき、ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が1質量%以上50質量%以下であり、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の含有量が50質量%以上99質量%以下である。
また、樹脂組成物(P)中のポリプロピレン系樹脂(A)の含有量の下限値は、易開封性をより良好にする観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは6質量%以上である。樹脂組成物(P)中のポリプロピレン系樹脂(A)の含有量の上限値は、加工性をより良好にする観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
また、樹脂組成物(P)中のエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の含有量の下限値は、加工性をより良好にする観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。樹脂組成物(P)中のエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の含有量の上限値は、易開封性をより良好にする観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、特に好ましくは95質量%以下である。
【0015】
前述したように、本発明者らの検討によれば、従来の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物を用いて厚みが薄いヒートシール層を形成すると、得られる包装材の易開封性が悪化してしまうことを見出した。
また、本発明者らは、従来の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物は、厚みが薄い易開封性ヒートシール層を安定的に形成することが困難であることを見出した。すなわち、本発明者らは、従来の易開封性ヒートシール材用樹脂組成物では、易開封性および加工性の性能バランスという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0016】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、加工性に優れるエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)に対し、ポリプロピレン系樹脂(A)を上記範囲内の含有量になるように配合することで、厚みが薄いヒート―シール層を形成しても良好な易開封性を得ることができることを見出し、本発明に至った。
エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)に対してポリプロピレン系樹脂(A)を上記範囲内の含有量になるように配合することによって、良好な加工性を得ながら、得られるヒートシール材の接着性を低下させ、易開封性を向上できると考えられる。
すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物(P)によれば、易開封性および薄膜加工性の性能バランスに優れた易開封性ヒートシール材を実現することができる。
【0017】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)において、ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量とエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の含有量との合計含有量は、樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量とエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)との合計含有量が上記範囲内であると、得られる包装材の易開封性および加工性の性能バランスをより一層良好なものとすることができる。
【0018】
以下、樹脂組成物(P)を構成する各成分について説明する。
【0019】
<ポリプロピレン系樹脂(A)>
本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂(A)としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンとのランダム共重合体(以下、ランダムポリプロピレンとも呼ぶ。)、プロピレン系ブロック共重合体(以下、ブロックポリプロピレンとも呼ぶ。)等が挙げられる。
本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂(A)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、易開封性および加工性の性能バランスにより一層優れた易開封性ヒートシール材を得ることができる観点から、ポリプロピレン系樹脂(A)としてはブロックポリプロピレンが好ましい。
また、易開封性および加工性の性能バランスにより一層優れた易開封性ヒートシール材を得ることができる観点から、ポリプロピレン系樹脂(A)としては、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)とは相溶しないポリプロピレン系樹脂(A)が好ましい。
【0020】
本実施形態に係るランダムポリプロピレンにおいて、エチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。これらの中ではエチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンが好ましく、エチレンまたは1-ブテンがより好ましく、エチレンがさらに好ましい。ランダムポリプロピレン中のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、ランダムポリプロピレン中の全構成単位の含有量を100モル%としたとき、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることがさらに好ましい。これらのα-オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本実施形態に係るブロックポリプロピレンとしては、例えば、プロピレンとエチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンとのブロック共重合体を用いることができる。エチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。これらの中ではエチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンが好ましく、エチレンまたは1-ブテンがより好ましく、エチレンがさらに好ましい。ブロックポリプロピレン中のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、ブロックポリプロピレン中の全構成単位の含有量を100モル%としたとき、1モル%以上30モル%以下であることが好ましく、2モル%以上20モル%以下であることがより好ましい。これらのα-オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本実施形態に係るブロックポリプロピレンは、ホモプロピレンおよびランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも一種のポリプロピレンにより構成された重合体部と、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンにより構成された重合体部を含む共重合体であってもよい。
【0022】
本実施形態において、流動性および成形性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、230℃、2160g荷重の条件で測定される、本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、1.0g/10分以上50g/10分以下であることが好ましく、3.0g/10分以上45g/10分以下であることがより好ましく、5.0g/10分以上40g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0023】
本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂(A)の融点は、好ましくは120℃以上180℃以下、より好ましくは130℃以上175℃以下、さらに好ましくは140℃以上170℃以下の範囲にある。ポリプロピレン系樹脂(A)の融点が上記下限値以上であると、得られるヒートシール材の易開封性、耐熱性および取扱い性等のバランスを良好にすることができる。また、ポリプロピレン系樹脂(A)の融点が上記上限値以下であると、得られるヒートシール材のヒートシール性をより良好にすることができる。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。また、ポリプロピレン系樹脂(A)は市販されているものを用いてもよい。
【0025】
<エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)>
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)は、エチレンと、不飽和カルボン酸の少なくとも1種と、不飽和エステルの少なくとも1種と、を共重合した重合体である。エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)としては、エチレンと不飽和カルボン酸と不飽和エステルとを含む共重合体を例示することができる。
【0026】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)を構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。
これらの中でも、上記不飽和カルボン酸は、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の生産性や衛生性等の観点から、アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)を構成する不飽和エステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの不飽和エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸イソブチルおよび(メタ)アクリル酸n-ブチルから選択される少なくとも一種(すなわち(メタ)アクリル酸ブチル)が好ましい。
【0028】
本実施形態において、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)としては、エチレン(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましく、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体およびエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体から選択される少なくとも一種が特に好ましい。
なお、本実施形態において、「(メタ)アクリル酸」とは」アクリル酸、メタクリル酸またはアクリル酸とメタクリル酸を意味し、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体としてはエチレン・アクリル酸・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体等が例示できる。
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)において、エチレンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは50質量%以上98.9質量%以下、より好ましくは65質量%以上94.5質量%以下、さらに好ましくは75質量%以上91.5質量%以下である。
エチレンから導かれる構成単位の含有量が上記下限値以上であると、得られるヒートシール材の耐熱性や機械的強度等をより良好なものとすることができる。また、エチレンから導かれる構成単位の含有量が上記上限値以下であると、得られるヒートシール材の透明性や柔軟性、接着性等をより良好なものとすることができる。
【0030】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)において、不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有量は、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有量が上記下限値以上であると、得られるヒートシール材の透明性や柔軟性、接着性等をより良好なものとすることができる。また、不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有量が上記上限値以下であると、樹脂組成物(P)の加工性をより良好なものとすることができる。
【0031】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)において、不飽和エステルから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下である。
不飽和エステルから導かれる構成単位の含有量が上記下限値以上であると、得られるヒートシール材の透明性や柔軟性、接着性等をより良好なものとすることができる。また、不飽和エステルから導かれる構成単位の含有量が上記上限値以下であると、樹脂組成物(P)の加工性をより良好なものとすることができる。
【0032】
本実施形態において、流動性および成形性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)は、1.0g/10分以上50g/10分以下であることが好ましく、3.0g/10分以上40g/10分以下であることがより好ましく、5.0g/10分以上30g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0033】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温、高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。また、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)は市販されているものを用いてもよい。
【0034】
<その他の成分>
本実施形態に係る樹脂組成物(P)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリプロピレン系樹脂(A)およびエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)以外の成分を含有してもよい。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、光安定剤、発泡剤、潤滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、触媒失活剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機充填剤、有機充填剤、耐衝撃性改良剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、加工助剤、離型剤、加水分解防止剤、耐熱安定剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、難燃剤、難燃助剤、光拡散剤、抗菌剤、防黴剤、分散剤、その他の樹脂等を挙げることができる。その他の成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
<樹脂組成物(P)の調製方法>
樹脂組成物(P)の調製方法としては特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)とをドライブレンドして混合することにより調製する方法;ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)とを押出機等で溶融混合することにより調製する方法;等を適用することができる。エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)中のポリプロピレン系樹脂(A)の分散性を向上させる観点から、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)とを押出機等で溶融混合することにより調製する方法が好ましい。
【0036】
2.易開封性ヒートシール材
本実施形態に係る易開封性ヒートシール材は、本実施形態に係る易開封性ヒートシール材用樹脂組成物(P)により構成される。
本実施形態に係る易開封性ヒートシール材は、易開封性ヒートシール材用樹脂組成物(P)により構成されているため、易開封性および加工性の性能バランスに優れている。
【0037】
本実施形態に係る易開封性ヒートシール材の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができ、例えば、プレス成形法、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等を用いることができる。
【0038】
3.包装材
本実施形態に係る包装材は、例えば、基材層と、上記基材層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、本実施形態に係る易開封性ヒートシール材からなるヒートシール層と、を備える。
本実施形態に係る包装材は、本実施形態に係る易開封性ヒートシール材からなるヒートシール層を備えるため、易開封性および加工性の性能バランスに優れている。そのため、易開封性が求められる用途に好適に用いることができる。
【0039】
本実施形態に係る包装材において、本実施形態に係るヒートシール材からなるヒートシール層の厚さは、例えば、1μm以上20μm以下であり、好ましくは2μm以上15μm以下であり、さらに好ましくは3μm以上12μm以下である。本実施形態に係る易開封性ヒートシール材は加工性に優れるため、このような薄い厚みのヒートシール層を実現することができ、特に面々イージーピール用途に好適に使用することができる。
【0040】
本実施形態に係る包装材において、易開封性および加工性の性能バランスをより一層向上させる観点から、ヒートシール層は海島構造を有していることが好ましい。ヒートシール層が海島構造を有する場合、海島構造における島相にポリプロピレン系樹脂(A)が少なくとも存在し、海島構造における海相にエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)が少なくとも存在することが好ましい。
ヒートシール層中の海島構造は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)画像や透過型電子顕微鏡(TEM)画像により観察することができる。
【0041】
本実施形態に係る基材層は、包装材の取り扱い性や機械的特性、導電性、断熱性、耐熱性、防湿性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。基材層としては、例えば、オレフィン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート等の樹脂フィルム;金属箔;紙;アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム、アルミニウム蒸着ポリプロピレンフィルム、シリカ蒸着ポリエステルフィルム、アルミナ蒸着ポリエステルフィルム等の金属表面やセラミック表面を有するプラスチックフィルム;不織布等が例示でき、これらの積層体であってもよい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは一軸あるいは二軸に延伸されたものであってもよい。
【0042】
基材層はヒートシール層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
基材層の厚さは、1μm以上200μm以下が好ましく、2μm以上100μm以下がより好ましく、5μm以上80μm以下がさらに好ましい。
基材層の形状は、特に限定されないが、例えば、シート、フィルム等の形状が挙げられる。
【0043】
本実施形態に係る包装材は、基材層とヒートシール層とのみで構成されていてもよいし、包装材に様々な機能を付与する観点から、基材層とヒートシール層以外の層(以下、その他の層とも呼ぶ。)を有していてもよい。その他の層としては、例えば、発泡層、金属層、無機物層、ガスバリア性樹脂層、帯電防止層、ハードコート層、接着層、反射防止層、防汚層等を挙げることができる。その他の層は1層単独で用いてもよいし、2層以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、接着層は、各層同士の接着性を高めるために設けられる層である。
【0044】
本実施形態に係る包装材には、必要に応じて、任意の率で一軸または二軸延伸を加えてもよい。
また、本実施形態に係る包装材の形状は特に限定されないが、フィルムやシートが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る包装材は、例えば、菓子類・肉類などの食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等を包装するために用いられる包装材として好適に用いることができ、食品および医薬品の包装材として特に好適に用いることができる。
【0046】
本実施形態に係る包装材の製造方法は特に限定されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形法を適用することができる。例えば、T-ダイ押出機あるいはインフレーション成形機等を用いる公知の方法によって行うことができる。
例えば、本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成されたフィルムを成形した後、接着剤等を使用して基材層を貼り合わせるドライラミネート法;基材層上に樹脂組成物(P)を押出ラミネートする方法;本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成されたフィルム上に、基材層を押出ラミネートする方法等を用いることができる。
ここで、本実施形態に係る樹脂組成物(P)は加工性に優れているため、基材層上に樹脂組成物(P)を溶融押出ししてラミネートする押出ラミネート成形法において、薄いヒートシール層を生産性よく形成することができる。そのため、本実施形態に係る包装材は、生産性の観点から、押出ラミネート成形法により製造することが好ましい。
【0047】
4.包装体
本実施形態に係る包装体は、本実施形態に係る包装材を用いたものである。
本実施形態に係る包装体は、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品等の内容物を収容することを目的として使用される包装袋自体または包装袋に内容物を収容したものである。また、本実施形態に係る包装体はその一部に本実施形態に係る包装材を使用してもよいし、包装体の全体に本実施形態に係る包装材を使用してもよい。
本実施形態に係る包装体の形態は特に限定されないが、例えば、三方袋、四方袋、ピロー袋、ガセット袋、スティック袋等が挙げられる。本実施形態に係る包装体は、例えば、食品用包装袋、医薬品用包装袋、工業用品用包装袋、日用品用包装袋等として用いることができる。特に、食品用包装袋として好適に用いることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
樹脂組成物(P)の調製に用いた成分の詳細は以下の通りである。
【0051】
<ポリプロピレン系樹脂(A)>
ホモPP1:ホモポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名:F113G、MFR(230℃、2160g荷重):3.0g/10分、密度:910kg/m、融点:157℃)
ランダムPP2:ランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名:F227D、MFR(230℃、2160g荷重):7.0g/10分、密度:910kg/m、融点:138℃)
ブロックPP3:ブロックポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名:J715M、MFR(230℃、2160g荷重):9.0g/10分、密度910kg/m、融点:165℃)
ブロックPP4:ブロックポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名:J707G、MFR(230℃、2160g荷重):30g/10分、密度:910kg/m、融点:165℃)
【0052】
<エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル系ランダム共重合体(B)>
EMAA・BA:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体(エチレン含有量:88.5質量%、メタクリル酸含有量:4.0質量%、アクリル酸ブチル含有量:7.5質量%、MFR(190℃、2160g荷重):14g/10分、密度:930kg/m
【0053】
<その他の共重合体>
EMAA1:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン含有量:96.0質量%、メタクリル酸含有量:4.0質量%、MFR(190℃、2160g荷重):7.0g/10分)
EMAA2:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン含有量:91.0質量%、メタクリル酸含有量:9.0質量%、MFR(190℃、2160g荷重):8.2g/10分)
EMAA3:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン含有量:90.0質量%、メタクリル酸含有量:10.0質量%、MFR(190℃、2160g荷重):35g/10分)
アイオノマー1:エチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー(金属イオン:Naイオン、MFR(190℃、2160g荷重):3.0g/10分、中和度:35%)
LLDPE1:直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(190℃、2160g荷重):11g/10分)、密度:940kg/m
HDPE1:高密度ポリエチレン(MFR(190℃、2160g荷重):5.2g/10分)、密度:965kg/m
TPX1:ポリメチルペンテン(MFR(230℃、2160g荷重):100g/10分)
APL1:環状オレフィン系樹脂((MFR(260℃、2160g荷重):80g/10分))
【0054】
[実施例1]
(1)基材層
基材層として、OPPフィルム(20μm)/LDPEフィルム(15μm)/アルミナ蒸着PETフィルム(12μm)の積層フィルムを用いた。
なお、OPPフィルムとLDPEフィルムとの間にはアンダーコート層を付与した。
(2)包装材の作製
押出コーティング装置を用いて、上記積層フィルムのアルミナ蒸着PETフィルム(12μm)側のPET面へアンカーコート層を付与し、次いで、ダイ下の樹脂温度315℃の条件で、樹脂組成物(P)を用いて10μm厚のヒートシール層を上記アンカーコート層上に押出コーティングし、包装材を得た。
ここで、樹脂組成物(P)は、30mmφ同方向二軸押出機を用いて表1に示す配合で各成分を溶融混合することによって調製した。
なお、得られた包装材は、40℃雰囲気の恒温槽内に2日間保管し、アンカーコート層を確実に固化させる処理を行った。
得られた樹脂組成物(P)および包装材について、以下の評価をおこなった。その結果を表1に示す。
【0055】
<評価>
(1)加工性評価
樹脂組成物(P)の加工性は以下の方法で評価した。
加工速度200m/minの条件で、樹脂組成物(P)を用いて10μm厚のヒートシール層を上記基材層上に押出コーティング成形したときに、樹脂溶融膜が切れたり、樹脂溶融膜の端部分が揺れたりせずに、同一幅で、かつ、同一厚みで基材層上に樹脂組成物(P)を押出コーティングできたものを「○」と評価し、同一幅で、かつ、同一厚みで基材層上に樹脂組成物(P)を押出コーティングできなかったものを「×」と評価した。
【0056】
(2)易開封性評価
まず、得られた包装材をA4サイズに切り出した。次いで、ヒートシーラー(テスター産業社製)を用いて、切り出した包装材の三方シール袋を作製した。ヒートシール条件は、ヒートシール温度:110~130℃、ヒートシール圧力:0.2MPa、ヒートシール時間:0.5秒とした。
次いで、得られた三方シール袋について、人間の手を用いて開封し、以下の基準で易開封性(剥離性および剥離界面の状態)を評価した。
・剥離性の評価
評価はパネラー5人でおこない、5人全員が良好と評価したものを「◎」、1~4人が良好と評価したものを「○」、5人全員が不良と評価したものを「×」とそれぞれ評価した。
良好:適度な力でストレスなく袋の開封をおこなうことができたもの
不良:強い力を入れなければ袋の開封ができず明らかに開封し難いもの;袋の開封をする際に基材層が破れたもの;袋の口のヒートシール性が明らかに弱くすぐに口が開いてしまうもの;袋の口がヒートシールできなかったもの;のいずれかに該当するもの
・剥離界面の状態の評価
◎:剥離後の界面にザラザラとする肌触りや毛羽立ちが観察されず、綺麗に面々剥離できたもの
○:剥離後の界面に毛羽立ちが観察されないが、ザラザラとする肌触りは観察されるもの
×:剥離後の界面に毛羽立ちが観察されるもの
【0057】
[実施例2~4および比較例1~9]
表1に示す配合とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(P)および包装材をそれぞれ作製し、実施例1と同様の評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1にそれぞれ示す。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1~4の樹脂組成物(P)および包装材は易開封性および加工性の性能バランスに優れていた。また、実施例1~4の樹脂組成物(P)により得られたヒートシール層には走査型電子顕微鏡(SEM)画像により海島構造が観察された。
これに対し、比較例1~9の樹脂組成物(P)および包装材は易開封性および加工性の性能バランスに劣っていた。