(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】グリスフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 45/08 20060101AFI20220120BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B01D45/08 Z
F24F7/06 101A
(21)【出願番号】P 2017251758
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】598032564
【氏名又は名称】日本設備企画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 則正
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-253723(JP,A)
【文献】特開昭63-100912(JP,A)
【文献】特開2002-066233(JP,A)
【文献】実開昭60-108325(JP,U)
【文献】特開昭63-270517(JP,A)
【文献】特開昭63-178813(JP,A)
【文献】米国特許第6454825(US,B1)
【文献】実開平07-024415(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D45/00-46/54
B01D39/00-39/20
F24F7/04-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側に向けて開いた複数個の後羽根板を列状に配置した後枠と、
後側に向けて開いた複数個の前羽根板を前記後羽根板に部分的に重なるように列状に配置した前枠とを重ね合わせたグリスフィルタであって、
前記後羽根板の側方部分に重なる前記前羽根板の側方部分には、前記後羽根板に向かって近づくように切り起こされた複数個の切り起こし片が間隔をあけて線状に設けられ、
前記切り起こし片の線状方向の長さは、隣接する隣の前記切り起こし片同士の間隔よりも長く設けられ
、
前記後羽根板には、前記後羽根板用の切り起こし片は設けられていない、グリスフィルタ。
【請求項2】
前記前羽根板の側方端は前記後羽根板に向かうように折曲げられ、前記切り起こし片は折曲げられた前記側方端とほぼ平行な関係となるように切り起こされており、
前記後羽根板の側方端は前記前羽根板に向かうように折曲げられ、前記切り起こし片は折曲げられた前記側方端とほぼ平行な関係となるように切り起こされている、請求項1に記載のグリスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば厨房などで排気用に設置されるグリスフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
厨房などでは油脂を含む蒸気が発生する。グリスフィルタは、排気中に含まれる油脂等の付着成分を有効に除去するものである。
【0003】
図1は、厨房に設置されたグリスフィルタユニット1の一例を模式的に図示している。厨房の天井7にはフード6が取付けられている。フード6内でダクト8を取囲むようにグリスフィルタユニット1が設置される。グリスフィルタユニット1は、ほぼV字状の位置関係となるように設置された2つのグリスフィルタ10と、オイル受け3と、チューブ4と、オイルカップ5とを備える。ダクト8に通ずる排気口には防火ダンパ9が設置される。
【0004】
油脂を含む蒸気は、図中矢印で示すように、グリスフィルタ10を通過し、さらに防火ダンパ9を通過してダクト8から外部へ排気される。グリスフィルタ10は、蒸気中に含まれる油脂等を分離する。グリスフィルタ10によって分離された油脂等は、グリスフィルタ10を伝って下方に流れオイル受け3によって受けられ、さらにチューブ4を経由してオイルカップ5に溜められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グリスフィルタは、蒸気中に含まれる油脂等を有効に分離除去する必要がある。そこで、この発明の目的は、油脂等を有効に分離することのできる、さらに改良された構造を持つグリスフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このグリスフィルタは、前側に向けて開いた複数個の後羽根板を列状に配置した後枠と、後側に向けて開いた複数個の前羽根板を上記後羽根板に部分的に重なるように列状に配置した前枠とを重ね合わせたグリスフィルタであって、上記後羽根板の側方部分に重なる上記前羽根板の側方部分には、上記後羽根板に向かって近づくように切り起こされた複数個の切り起こし片が間隔をあけて線状に設けられ、上記切り起こし片の線状方向の長さは、隣接する隣の上記切り起こし片同士の間隔よりも長く設けられている。上記後羽根板には、前記後羽根板用の切り起こし片は設けられていない。
【0008】
上記構成によれば、切り起こし片はガスの流れを面で受けるようになるので、ガスのより大きな抵抗となり油脂等の分離効率を高めることができる。さらに、上記切り起こし片の線状方向の長さは、隣接する隣の上記切り起こし片同士の間隔よりも長く設けられている。その結果、切り起こし片のガスの流れを受ける面の面積をより大きくすることができ、効果的に油脂等の分離効率を高めることができる。
【0009】
好ましい形態においては、上記前羽根板の側方端は上記後羽根板に向かうように折曲げられ、上記切り起こし片は折曲げられた上記側方端とほぼ平行な関係となるように切り起こされており、上記後羽根板の側方端は上記前羽根板に向かうように折曲げられ、上記切り起こし片は折曲げられた上記側方端とほぼ平行な関係となるように切り起こされている。
【0010】
上記構成よれば、上記前羽根板の側方端と上記後羽根板の側方端との挟まれた領域は、他の領域よりも間隔が狭くなるために、ガスの流れが速くなる。これにより、切り起こし片へのガスの衝突スピードが高まることで、相対的に切り起こし片のガスに対する抵抗がさらに高まり、油脂等の分離効率をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
このグリスフィルタによれば、油脂等を有効に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】厨房の天井に設置されたグリスフィルタユニットを示す図である。
【
図2】実施の形態のグリスフィルタの正面図である。
【
図3】実施の形態のグリスフィルタの背面図である。
【
図5】
図4中のBで囲まれた領域の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2から
図5を参照して、実施の形態におけるグリスフィルタ10の構成について説明する。グリスフィルタ10は、前枠20と、後枠30と、後枠30に取付けられた取手40とを含む。
図2および
図3においては、構造の理解を容易にするために、一部破断して図示している。
【0014】
図4によく表れるように、前枠20には後側に向けて開いた複数個の前羽根板21が列状に配置されている。後枠30には、前側に向けて開いた複数個の後羽根板31が前羽根板21に部分的に重なるように列状に配置されている。グリスフィルタ10は、前枠20と後枠30とを重ね合わせて使用される。
【0015】
図5を参照して、前羽根板21および後羽根板31は、ともに、全体としては丸みを帯びたV字状の形態となっている。前羽根板21の側方部分は、入ってくるガスの流れに対して垂直な面を構成する肩部22と、後羽根板31に向かうように折曲げられた折曲げ側方端23とを有する。
【0016】
前羽根板21の肩部22には、後羽根板31に向かって近づくように切り起こされた複数個の切り起こし片25が間隔をあけて線状に設けられている。切り起こし片25を切り起こすことによって形成される開口24は、折曲げ側方端23と切り起こし片25との間に位置する。切り起こし片25は、折曲げ側方端23とほぼ平行な関係となるように切り起こされている。
【0017】
後羽根板31の側方部分は、肩部32、および、折曲げ側方端33を有する。折曲げ側方端33は前羽根板21に向かうように折曲げられ、切り起こし片25は折曲げられた折曲げ側方端23とほぼ平行な関係となるように切り起こされている。
【0018】
図5中の矢印は、ガスの流れを示している。前羽根板21と後羽根板31とが重なり合った領域では流路が狭くなっているので、通過するガスの流れは速くなる。特に、図示した構成では、前羽根板21の折曲げ側方端23と後羽根板31の折曲げ側方端33とが重なり合った領域では流路を一層狭くしているので、ガスの流れは一層速くなる。
【0019】
このようなガスの最速領域に切り起こし片25が位置しているので、切り起こし片25は通過するガスの流れに対して障害物(抵抗)となるように機能する。特に図示した実施の形態では、切り起こし片25は、ガスの流れに対してまともに衝突する面となる。油脂等を含むガスは切り起こし片25に衝突し、この衝突によって油脂等が有効に分離される。
【0020】
図6に示すように、切り起こし片25の線状方向の長さL1は、隣接する隣の切り起こし片25同士の間隔L2よりも長く設けられている。この構成を採用することで、切り起こし片25のガスの流れを受ける面の面積をより大きくすることができ、より、効果的に油脂等の分離効率を高めることができる。
【0021】
切り起こし片25は、前羽根板21の一部を部分的に切り起こすことによって切り起こし片を形成している。これにより、材料および部品を増やすことなく、ガスの流れに対して抵抗となる障害物を形成しているので、製造コストを低く抑えることができる。なお、コストが問題にならないのであれば、別部品で切り起こし片25を構成してもよい。
【0022】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0023】
10 グリスフィルタ、20 前枠、21 前羽根板、30 後枠、31 後羽根板、22,32 肩部、23,33 折曲げ側方端、24 開口、25 切り起こし片、40 取手。