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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】水栓金具の取り外し冶具
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
E03C1/042 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018038634
(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公開番号】P2019152047
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉江 恒巳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】福本 克久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】阿原 真
(72)【発明者】
【氏名】山本 章造
(72)【発明者】
【氏名】黒原 啓彦
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-132318(JP,A)
【文献】実公昭50-023253(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第3191894(JP,U)
【文献】特開2015-208792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部に取り付けられた台座部と、前記台座部に対して上方から覆うように嵌め込まれて固定される支持部材と、を備える水栓金具の取り外し冶具であって、
少なくとも一部が前記台座部と前記支持部材との間に配置され、前記台座部と前記支持部材とを上下に引き離す方向に力を加える水栓金具の取り外し冶具。
【請求項2】
前記台座部に当接する第1当接部材と、
前記支持部材に当接する第2当接部材と、
ねじ部と、
前記ねじ部がねじ込まれるナット部と、
を備え、
前記ねじ部又は前記ナット部の一方が、他方に対して相対的に前記ねじ部の軸方向に移動することによって、前記第1当接部材と前記第2当接部材とが離れる方向に力を加える請求項1に記載の水栓金具の取り外し冶具。
【請求項3】
前記第1当接部材が前記台座部に当接すること、又は前記第2当接部材が前記支持部材に当接することによって、前記ねじ部又は前記ナット部が回り止めされている請求項2に記載の水栓金具の取り外し冶具。
【請求項4】
前記第1当接部材又は前記第2当接部材の少なくとも一方は、それぞれが当接する前記台座部又は前記支持部材と係合することで位置決めされる係合構造を有している請求項2又は請求項3に記載の水栓金具の取り外し冶具。
【請求項5】
前記台座部の前記第1当接部材との当接面と、前記支持部材の前記第2当接部材との当接面と、の間の空間に前記ねじ部の少なくとも一部が配置される請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の水栓金具の取り外し冶具。
【請求項6】
前記第1当接部材の中心位置は、上下方向において、前記台座部の中心位置、又は前記台座部において当該台座部を前記取付部に固定する少なくとも2本のボルト間の中心位置に位置する請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の水栓金具の取り外し冶具。
【請求項7】
前記第1当接部材又は前記第2当接部材は、前記ねじ部が挿通する貫通孔が形成されており、
前記ねじ部は、前記貫通孔を貫通した状態で、前記台座部又は前記支持部材に形成された挿入孔に挿入されている請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の水栓金具の取り外し冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水栓金具の取り外し冶具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の水栓金具は、カウンターに形成された取付穴に上側から取り付けられている。この水栓金具は、水栓本体、及びアダプタ装置を備えている。アダプタ装置は、水栓金具の台座部として構成され、カウンターの取付穴に装着されている。水栓本体は、吐水管や操作レバー等を支持する支持部材として構成されている。水栓本体は、吐水管及び操作レバーが延び出すように設けられている。
【0003】
アダプタ装置は、アダプタ本体、ホルダ、及び一対の雄ねじ部材を有している。アダプタ本体は、カウンターの上面に着座してカウンターを上面側から挟み込む部材である。ホルダは、カウンターの裏面側からカウンターを挟み込む部材である。一対の雄ねじ部材は、アダプタ本体に形成された上下方向に貫通する一対の挿通孔にそれぞれ上側から挿通されている。また、一対の雄ねじ部材は、ホルダに形成された上下方向に貫通する一対の雌ねじ孔にそれぞれ上側からねじ込まれている。水栓本体は、下端部が円筒状に形成されており、カウンターに装着されたアダプタ本体に上側から外嵌して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3824629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の水栓金具は、交換等に際してカウンターから取り外そうとした場合、水栓本体をアダプタ装置から引き抜く必要がある。しかしながら、水栓金具は、水栓本体の下端部とアダプタ本体とが水の浸入による腐食等によって固着する場合もあり、水栓本体をアダプタ装置から簡単に引き抜けなくなってしまう虞がある。そこで、カウンターを破損させたりせず、容易に台座部から支持部材を取り外すことができる冶具が求められている。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、取付部に取り付けられた台座部から支持部材を容易に取り外し得る水栓金具の取り外し冶具を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水栓金具の取り外し冶具は、
取付部に取り付けられた台座部と、前記台座部に対して上方から覆うように嵌め込まれて固定される支持部材と、を備える水栓金具の取り外し冶具であって、
少なくとも一部が前記台座部と前記支持部材との間に配置され、前記台座部と前記支持部材とを上下に引き離す方向に力を加える。
【0008】
この水栓金具の取り外し冶具は、台座部と支持部材との間に配置され、台座部と支持部材とを上下に引き離す方向に力を加える構成である。このように、冶具は、少なくとも一部が台座部と支持部材との間に配置されることで、台座部と支持部材のみに効率的に力を伝えることができる。その上で、冶具は、台座部と支持部材とを上下に引き離す方向に力を加えることで、支持部材が台座部から引き抜かれることになる。そのため、台座部と支持部材とが固着した場合であっても、支持部材を台座部から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る水栓金具がカウンターの天板に取り付けられた状態を示す側面図である。
図2】実施例1に係る取付金具がカウンターの天板に取り付けられた状態を示す側面図である。
図3図2の台座部に支持部材が嵌め込まれ固定された状態を示す斜視図である。
図4】実施例1に係る冶具を示す斜視図である。
図5図3の台座部に冶具が組み付けられた状態を示す斜視図である。
図6図3の支持部材にねじ部が当接した状態を示す斜視図である。
図7図6に示す状態を概略的に説明する正面断面図である。
図8】実施例2の冶具が取付金具に組み付けられた状態を概略的に説明する側断面図である。
図9】実施例3の冶具が取付金具に組み付けられた状態を概略的に説明する側断面図である。
図10】他の実施例の冶具が取付金具に組み付けられた状態を概略的に説明する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0011】
本発明の水栓金具の取り外し冶具は、
前記台座部に当接する第1当接部材と、
前記支持部材に当接する第2当接部材と、
ねじ部と、
前記ねじ部がねじ込まれるナット部と、
を備え、
前記ねじ部又は前記ナット部の一方が、他方に対して相対的に前記ねじ部の軸方向に移動することによって、前記第1当接部材と前記第2当接部材とが離れる方向に力を加え得る。
この場合、この水栓金具の取り外し冶具は、ナット部とねじ部とを相対的に回転させることで、第1当接部材と第2当接部材とが離れる方向に力を加えて台座部と支持部材とを引き離すことができる。そのため、この冶具は、ナット部とねじ部とを相対的に回転させるのみで、支持部材を台座部から容易に取り外すことができる。
【0012】
本発明の水栓金具の取り外し冶具は、前記第1当接部材が前記台座部に当接すること、又は前記第2当接部材が前記支持部材に当接することによって、前記ねじ部又は前記ナット部が回り止めされ得る。
この場合、この水栓金具の取り外し冶具は、ねじ部又はナット部が回り止めされていることによって、ねじ部又はナット部の一方に回転力を付加することで、他方に対して相対回転させることができる。そのため、この冶具は、ねじ部又はナット部の一方に回転力を付加するのみで支持部材を台座部から容易に取り外すことができる。
【0013】
本発明の水栓金具の取り外し冶具において、前記第1当接部材又は前記第2当接部材の少なくとも一方は、それぞれが当接する前記台座部又は前記支持部材と係合することで位置決めされる係合構造を有し得る。
この場合、この水栓金具の取り外し冶具は、第1当接部材および第2当接部材の少なくとも一方が、それぞれが当接する台座部および支持部材と係合することで、水栓金具に安定して組み付けることができる。そのため、この冶具は、水栓金具に無駄なく力を伝えることができる。また、この冶具は、台座部と支持部材とを引き離す際に、水栓金具から外れることを防ぐことができる。
【0014】
本発明の水栓金具の取り外し冶具は、前記台座部の前記第1当接部材との当接面と、前記支持部材の前記第2当接部材との当接面と、の間の空間に前記ねじ部の少なくとも一部が配置され得る。
この場合、この水栓金具の取り外し冶具は、第1当接部材、第2当接部材、及びねじ部の少なくとも一部が台座部と支持部材の間に配置されるようなコンパクトな構造である。そのため、治具は、コンパクト化することができ、持ち運びや水栓金具への装着が容易になる。
【0015】
本発明の水栓金具の取り外し冶具は、前記第1当接部材の中心位置は、上下方向において、前記台座部の中心位置、又は前記台座部において当該台座部を前記取付部に固定する少なくとも2本のボルト間の中心位置に位置し、
前記第2当接部材は、前記ねじ部が上下方向に延びるように配置されることで、前記支持部材に当接し得る。
この場合、この水栓金具の取り外し冶具は、第1当接部材の中心位置が、上下方向において、台座部の中心位置、又は台座部において当該台座部を取り付け面に固定する少なくとも2本のボルト間の中心位置に位置することで、第1当接部材が台座部に安定的に当接する。そのため、第1当接部材は、台座部から外れ難くなる。
【0016】
本発明の水栓金具の取り外し冶具において、前記第1当接部材又は前記第2当接部材は、前記ねじ部が挿通する貫通孔が形成されており、
前記ねじ部は、前記貫通孔を貫通した状態で、前記台座部又は前記支持部材に形成された挿入孔に挿入され得る。
この場合、この水栓金具の取り外し冶具は、ナット部のねじ部へのねじ込みを調整することで、台座部と支持部材との距離に依らずに、第1当接部材及び第2当接部材をそれぞれ台座部及び支持部材に当接させることができる。特に、第1当接部材又は第2当接部材の貫通孔を挿通するねじ部が、台座部又は支持部材の挿入孔に挿入されることで、ナット部のねじ部へのねじ込みの程度の幅が広くなる。これにより、この冶具は、台座部と支持部材との距離が異なる様々な水栓金具の取り外しが可能である。
【0017】
次に、本発明の水栓金具の取り外し冶具を具体化した実施例1~3について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
<実施例1>
実施例1の水栓金具10は、図1に示すように、カウンターの天板Bに取り付けられている。水栓金具10は、取付金具20、給水管11、給湯管12、混合吐水管13、ヘッドパーツ14(図2参照)、吐水ホース15、操作レバー16、吐水部17、及びカバー18を備えている。
【0019】
本明細書では、カウンターの天板Bの板面に直交する方向が上下方向であり、操作レバー16等が配置される側が上方側であり、それとは反対側が下方側である。水栓金具10を操作する使用者と向かい合う側(図1では左側)が前方側であり、それとは反対側が後方側である。上下方向及び前後方向に直交する方向が左右方向であり、水栓金具10を前方側から見たときの左手側が左側であり、右手側が右側である。
【0020】
取付金具20は、水栓金具10の土台となる部分である。取付金具20は、図2に示すように、取付穴Hに取り付けられている。取付金具20は、台座部30、及び支持部材40を備えている。台座部30は、カウンターの天板B(請求項の「取付部」に相当)に取り付けられている。台座部30は、本体部31、ホルダ32、一対の雄ねじ部33(請求項の「ボルト」に相当)、及びパイプガイド34を備えている。本体部31は、円筒状であり、図7に示すように、一対の雄ねじ部33のそれぞれが上下方向に挿通する一対の挿通孔31Aを有する。ホルダ32は、図1に示すように、略円弧状であり、周方向の長さが取付穴Hの半周分程度になっている。ホルダ32は、上面に周方向全体に亘って複数の係合歯(図示略)が形成されている。ホルダ32は、図7に示すように、一対の雄ねじ部33のそれぞれがねじ込まれる一対の雌ねじ孔32Aを有する。一方の雄ねじ部33は、対応する一方の雌ねじ孔32Aに上側から螺合され、一方の雌ねじ孔32Aより下方に突出した先端部にナット33Aが螺合している。一方の雄ねじ部33は、他方の雄ねじ部33より長くなっている。
【0021】
パイプガイド34は、給水管11、給湯管12、混合吐水管13、及び吐水ホース15を位置決めしてガイドするように機能する。パイプガイド34は、図2に示すように、台板部34A、円筒部34B、及びガイド部34Cを備えている。台板部34A、円筒部34B、及びガイド部34Cは、一体的に形成されている。台板部34Aは、半円板状である。台板部34Aは、本体部31の上面に載置されている。台板部34Aは、図3に示す貫通孔34D、一対の突起部34E、及び図7に示す一対の凹部34Fが形成されている。貫通孔34Dは、図3に示すように、台板部34Aを板厚方向に貫通している。突起部34Eは、台板部34Aの上面において貫通孔34Dから僅かに外側の位置に形成されている。一対の突起部34Eは、貫通孔34Dを左右両側から挟んでいる。突起部34Eは、貫通孔34Dの外周に沿う円弧状である。凹部34Fは、図7に示すように、台板部34Aの下面において上方に凹んでいる。一対の凹部34Fは、それぞれ一対の雄ねじ部33の頭部が入り込む。これにより、パイプガイド34は、本体部31に対して回り止めされる。
【0022】
円筒部34Bは、図7に示すように、台板部34Aの内周部から下方に延出している。すなわち、円筒部34Bは、貫通孔34Dに連通している。そして、貫通孔34Dと円筒部34Bとによって、後述するねじ部51が挿入される挿入孔34Gが構成されている。円筒部34Bは、吐水ホース15を位置決めしてガイドする。ガイド部34Cは、図3に示すように、台板部34A、及び円筒部34Bの後端部側に形成されている。ガイド部34Cは、湾曲板状であり、上下方向に延びる3つの溝が形成されている。これらの溝にそれぞれ給水管11、給湯管12、混合吐水管13が入り込み、位置決めされてガイドされる。また、ガイド部34Cは、上端部に円筒部34Bの内周部に沿うように上方に延びる溝部34Hが形成されている。
【0023】
支持部材40は、図2図7に示すように、台座部30に上方から覆うように嵌め込まれて固定されている。支持部材40は、給水管11、給湯管12、混合吐水管13、ヘッドパーツ14、吐水ホース15、操作レバー16、吐水部17、及びカバー18を支持している。なお、支持部材40は、これらの部材のうちの一部のみを支持する構成であってもよく、これらの部材以外の部材を支持する構成であってもよい。支持部材40は、図2図3に示すように、嵌合部41、側壁部42、及び支持部43を備えている。嵌合部41は、円筒状である。嵌合部41は、台座部30の本体部31に嵌め込まれる部分である。側壁部42は、半円筒状である。側壁部42は、嵌合部41の後方側の上端部から上方に延出している。支持部43は、下端部が閉塞した略円柱状である。支持部43は、側壁部42の上端部に設けられている。支持部43は、上壁部43A、及び上筒部43Bが形成されている。上壁部43Aは、略円板状である。上壁部43Aは、側壁部42の上端部の内側に形成されている。上壁部43Aは、給水管11、給湯管12、混合吐水管13をそれぞれ上下方向に挿通する3つの貫通孔(図示略)が形成されている。上壁部43Aは、図2図3に示すように、下面において上方に凹む凹部43Cが形成されている。凹部43Cは、前後方向に延び、断面が四角形である。上筒部43Bは、円筒状である。上筒部43Bは、ヘッドパーツ14を収容する。
【0024】
次に、台座部30をカウンターの天板Bへ取り付ける工程について説明する。
台座部30を取付穴Hに取り付ける前に、一方の雄ねじ部33を本体部31の一方の挿通孔31Aに挿通するとともに、一方の雌ねじ孔32Aに対して先端部を下方に突出させてナット33Aを螺合させた状態とする(図7参照)。これにより、台座部30は、ナット33Aがロックナットとして機能し、ホルダ32が一方の雄ねじ部33と一体回転する。ホルダ32は、自由端部を本体部31に対して半径方向に突き出した状態として、取付穴Hに上側から挿入される。ホルダ32は、天板Bの下面側に配置される。本体部31は、リング形状のパッキン等を介して天板Bの上面側に配置される。
【0025】
ホルダ32は、本体部31と上下方向で重なるように、適正位置に一方の雄ねじ部33と一体回転する。予め本体部31の他方の挿通孔31Aに挿通してある他方の雄ねじ部33は、ホルダ32に設けられた弾性クリップ32B(図7参照)に弾性嵌合する。ホルダ32は、このような状態において、他方の雄ねじ部33は、他方の雌ねじ孔32Aに対向する。一対の雄ねじ部33を一対の雌ねじ孔32Aにそれぞれねじ込んでいくと、ホルダ32が上方に引き寄せられ、本体部31とホルダ32によって天板Bを表裏両側から強く挟み込む状態となる。
【0026】
次に、水栓金具の取り外し冶具50(以下、単に治具50ともいう)について説明する。冶具50は、図4に示すように、ねじ部51(請求項の「第2当接部材」に相当)、ナット部52、及び当接部材53(請求項の「第1当接部材」に相当)を備えている。ねじ部51は、ねじ本体51A、及び押上部51Bを有している。ねじ本体51Aは、長尺状であり、外周全体にねじ山が形成されている。押上部51Bは、直方体形状であり、ねじ本体51Aの一端から軸方向に突出している。押上部51Bは、ねじ本体51Aの軸方向に直交する方向に長い長尺状である。ナット部52は、ねじ本体51Aにねじ込まれている。当接部材53は、略半円板状であり、平坦部53A、湾曲部53B、貫通孔53Cが形成されている。平坦部53Aは、当接部材53の外周の一部に形成され、長方形の面を有する。湾曲部53Bは、平坦部53Aとは反対側の外周部分に形成され、湾曲した面を有する。貫通孔53Cは、当接部材53の中心を貫通するように形成されている。貫通孔53Cは、ねじ本体51Aが挿通されている。
【0027】
次に、冶具50を用いた水栓金具10の取り外し(台座部30からの支持部材40の取り外し)について説明する。
取付金具20は、水栓金具10において、例えば、吐水ホース15、操作レバー16、ヘッドパーツ14、吐水部17とカバー18の順に取り外すことで、取り外し前の状態となる。取付金具20は、支持部材40の嵌合部41と、台座部30の本体部31との間に水が浸入して腐食等によりこれら部材が固着する場合がある。この場合、支持部材40を台座部30から簡単に引き抜けなくなってしまう虞がある。そこで、カウンターの天板Bを破損させたりせず、容易に台座部30から支持部材40を取り外すために、冶具50を用いる。
【0028】
ここで、冶具50を用いる前に、以下の作業を行ってもよい。例えば、支持部材40の嵌合部41と、台座部30の本体部31との間に塩素系薬剤を流し込むことで、これらの間の固着物を溶かしてもよい。また、例えば、支持部材40を温めるとともに台座部30を冷やすこと、又は支持部材40に対する温冷を繰り返すことで、固着物の破断を促してもよい。また、例えば、台座部30を固定し、支持部材40に高速振動を与えることで、固着物の疲労破壊を促してもよい。これらの作業により、以下で説明する治具50を用いた作業において、より小さな力で治具50を操作して取付金具20を取り外すことができ、過剰な加圧による取付金具20の変形をより一層防ぎ易くなる。
【0029】
まず、図2図3に示す天板Bに取り付けられた取付金具20に対して、図5に示すように、冶具50を組み付ける。具体的には、ナット部52が押上部51Bに近い位置までねじ込まれた状態の冶具50を、挿入孔34Gに挿入する。そして、当接部材53は、台板部34Aの内縁部上に載置されることで、台座部30に当接する。具体的には、当接部材53は、図7に示すように台座部30において当該台座部30を取付部に固定する一対の雄ねじ部33間の中心位置(左右方向における一対の雄ねじ部33間の中心位置)に当接する。また、当接部材53は、一対の突起部34Eに挟まれた位置に配置される。また、当接部材53は、湾曲部53Bがパイプガイド34の溝部34Hに後方からガイドされ、位置決めされる。このようにして、治具50は、一部(ねじ部51の上端部、ナット部52、及び当接部材53)が台座部30と支持部材40との間に配置される。
【0030】
次に、治具50において、ナット部52をねじ部51に対して相対回転させて、ナット部52をねじ部51に対して軸方向下側へ移動させる。このとき、ナット部52は下側で当接部材53に当接しているため、ナット部52の位置は変わらず、ねじ部51が上方に移動する。ねじ部51は、ナット部52を回転させ続けてさらに上方に移動すると、図6図7に示すように、押上部51Bが支持部材40の凹部43Cに入り込み、凹部43Cの上側の面(底面)に当接する。すなわち、押上部51Bは、凹部43Cに嵌合した状態となる。そのため、押上部51Bは、凹部43Cに入り込むことで、回り止めされた状態で位置決めされる。ねじ部51は、このように当接する支持部材40と係合する係合構造(押上部51B)を有している。
【0031】
このように、台座部30の当接部材53との当接面(上面)と、支持部材40のねじ部51との当接面(凹部43Cの上面)と、の間の空間にねじ部51の大部分(上端側部分)が配置される。そのため、冶具50は、このような支持部材40の内側の空間に配置されるようなコンパクトな構造である。したがって、冶具50は、コンパクト化することができ、持ち運びや取付金具20への装着が容易になる。
【0032】
図6図7に示すように押上部51Bが凹部43Cに入り込むことで、ねじ部51が支持部材40に対して回転しようとする際に、押上部51Bが回転方向で凹部43Cに当接することで回り止めされる。これにより、ナット部52をねじ部51に対して相対回転させる際に、ねじ部51が回転しなくなる。
【0033】
続いて、図6図7に示す状態において、さらにナット部52をねじ部51に対して相対回転させて、当接部材53とねじ部51とが離れる方向に力を加えて、台座部30と支持部材40とを引き離す。これにより、嵌合部41と本体部31とが固着している場合であっても、嵌合部41の前面部分と、本体部31の前面部分とが上下方向に容易に引き離される。ここで、ねじ部51が支持部材40に当接して回り止めされているため、ナット部52のみを回す作業のみで容易に当接部材53とねじ部51とが離れる方向に力を加えることができる。以上のように、過大な力を加えることなく、失敗することなく確実に台座部30と支持部材40とを引き離すことができる。そして、嵌合部41の前面部分と本体部31の前面部とが僅かにでも引き離されることで、あとは外部から支持部材40に力を加えることで、支持部材40を台座部30から容易に取り外すことができる。
【0034】
以下、本構成の効果を例示する。
実施例1の水栓金具の取り外し治具50は、台座部30と支持部材40との間に配置され、台座部30と支持部材40とを上下に引き離す方向に力を加える構成である。このため、治具50は、一部が台座部30と支持部材40との間に配置されることで、台座部30と支持部材40のみに効率的に力を伝えることができる。その上で、治具50は、台座部30と支持部材40とを上下に引き離す方向に力を加えることで、支持部材40が台座部30から引き抜かれることになる。そのため、台座部30と支持部材40とが固着した場合であっても、支持部材40を台座部30から容易に取り外すことができる。特に、治具50の取付金具20への組み付けは、単純であり、メカニカルな機構に基づくものであるため、取付金具20の取り外しの信頼性が高い。
【0035】
また、治具50は、台座部30に当接する当接部材53と、支持部材40に当接する第2当接部材と、ねじ部51と、ねじ部51がねじ込まれるナット部52と、を備えている。ねじ部51又はナット部52の一方が、他方に対して相対的にねじ部51の軸方向に移動することによって、当接部材53とねじ部51とが離れる方向に力を加える。これにより、この治具50は、ナット部52とねじ部51とを相対的に回転させることで、当接部材53とねじ部51とが離れる方向に力を加えて台座部30と支持部材40とを引き離すことができる。そのため、この治具50は、ナット部52とねじ部51とを相対的に回転させるのみで、支持部材40を台座部30から容易に取り外すことができる。
【0036】
また、治具50は、ねじ部51が支持部材40に当接することによって、ねじ部51が回り止めされている。これにより、この治具50は、ねじ部51が回り止めされていることによって、ナット部52に回転力を付加することで、ねじ部51に対して相対回転させることができる。そのため、この治具50は、ナット部52に回転力を付加するのみで支持部材40を台座部30から容易に取り外すことができる。
【0037】
また、治具50において、ねじ部51は、当接する支持部材40と係合することで位置決めされる係合構造(押上部51B)を有している。これにより、この治具50は、ねじ部51が当接する支持部材40と係合することで、取付金具20に安定して組み付けることができる。そのため、この治具50は、取付金具20に無駄なく力を伝えることができる。これにより、取付金具20の変形や破壊が起き難い。また、この治具50は、台座部30と支持部材40とを引き離す際に、取付金具20から外れることを防ぐことができる。
【0038】
また、治具50は、台座部30の当接部材53との当接面(上面)と、支持部材40のねじ部51との当接面(凹部43Cの上面)と、の間の空間にねじ部51の一部(上端側部分)が配置される。これにより、この治具50は、ねじ部51の一部、及び当接部材53が台座部30と支持部材40の間に配置されるようなコンパクトな構造である。そのため、治具50は、コンパクト化することができ、持ち運びや取付金具20への装着が容易になる。
【0039】
また、治具50において、当接部材53の中心位置は、上下方向において、台座部30における当該台座部30を天板Bに固定する一対の雄ねじ部33間の中心位置に位置する。これにより、この治具50は、当接部材53の中心位置が、上下方向において、台座部30において当該台座部30を天板Bに固定する一対の雄ねじ部33間の中心位置に位置することで、当接部材53が台座部30に安定的に当接する。そのため、当接部材53は、台座部30から外れ難くなる。
【0040】
また、治具50において、当接部材53は、ねじ部51が挿通する貫通孔53Cが形成されている。ねじ部51は、貫通孔53Cを貫通した状態で、台座部30に形成された挿入孔34Gに挿入されている。これにより、この治具50は、ナット部52のねじ部51へのねじ込みを調整することで、台座部30と支持部材40との距離に依らずに、当接部材53及びねじ部51をそれぞれ台座部30及び支持部材40に当接させることができる。特に、当接部材53の貫通孔53Cを挿通するねじ部51が、台座部30の挿入孔34Gに挿入されることで、ナット部52のねじ部51へのねじ込みの程度の幅が広くなる。これにより、この治具50は、台座部30と支持部材40との距離(台板部34Aと上壁部43Aとの距離)が異なる様々な取付金具20の取り外しが可能である。
【0041】
<実施例2>
次に、実施例2について説明する。
実施例2の水栓金具の取り外し治具50は、実施例1の水栓金具の取り外し治具50と構成が異なる。水栓金具10の構成は実施例1と同一であり、同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0042】
実施例2の治具50は、図8に示すように、ねじ部51(請求項の「第2当接部材」に相当)、ナット部54、及び当接部材55(請求項の「第1当接部材」に相当)を備えている。ねじ部51は、実施例1と同様の構成であり、ねじ本体51A、及び押上部51Bを有している。ナット部54は、袋ナットとして構成されている。ナット部54は、ねじ本体51Aにねじ込まれている。当接部材55は、略半円板状であり、実施例1と同様の平坦部53A、及び湾曲部53Bと、図8に示す凹部53Dが形成されている。凹部53Dは、ナット部54の頭部が嵌まり込んでいる。
【0043】
次に、冶具50を用いた水栓金具10の取り外しについて説明する。
まず、実施例1と同様に、当接部材55を台板部34Aの内縁部上に載置されることで、台座部30に当接させる。そして、ねじ部51にねじ込まれたナット部54を、当接部材55の凹部53Dに嵌め込むように当接部材55上に載置する。
【0044】
続いて、実施例1と同様に、治具50において、ナット部54をねじ部51に対して相対回転させて、ナット部54をねじ部51に対して軸方向下側へ移動させる。そして、図8に示すように、押上部51Bが支持部材40の凹部43Cに入り込み凹部43Cの上面に当接する。このように、台座部30の当接部材55との当接面(上面)と、支持部材40のねじ部51との当接面(凹部43Cの上面)と、の間の空間に治具50の全体が配置される。そのため、冶具50は、より一層コンパクトな構造であり、持ち運びや取付金具20への装着がより一層容易になる。
【0045】
続いて、図8に示す状態において、実施例1と同様に、さらにナット部54をねじ部51に対して相対回転させて、当接部材55とねじ部51とが上下に離れる方向に力を加えて、台座部30と支持部材40とを引き離す。これにより、実施例1と同様に、過大な力を加えることなく、失敗することなく確実に台座部30と支持部材40とを引き離すことができる。
【0046】
<実施例3>
次に、実施例3について説明する。
実施例3の水栓金具の取り外し治具50は、実施例1の水栓金具の取り外し治具50と構成が異なる。水栓金具10の構成は実施例1と同一であり、同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
実施例3の治具50は、図9に示すように、ねじ部61、ナット部62(請求項の「第2当接部材」に相当)、当接部材63(請求項の「第1当接部材」に相当)、及び連結部材64を備えている。ねじ部61は、ねじ本体61A、及び操作部61Bを有している。ねじ本体61Aは、長尺状であり、外周全体にねじ山が形成されている。操作部61Bは、棒状である。操作部61Bは、ねじ本体61Aの一端においてねじ本体61Aの軸方向と直交するように設けられている。ナット部62は、ねじ込み部62A、及び押上部62Bを有している。ねじ込み部62Aは、ねじ本体61Aにねじ込まれるとともに、後述する連結部材64が挿通している。押上部62Bは、長尺状であり、ねじ込み部62Aに固定されている。当接部材63は、略半円板状であり、実施例1の平坦部53A、及び湾曲部53Bと同様の構成を有している。連結部材64は、略L字状であり、長手部64A、押下部64B、及びナット部64Cを有している。長手部64Aは、棒状である。押下部64Bは、長尺状であり、長手部64Aの下端に連なっている。ナット部64Cは、長手部64Aの上端に溶接されて固定されている。ナット部64Cは、ねじ部61がねじ込まれている。
【0048】
このような構成の治具50は、ねじ部61をナット部62及び連結部材64に対して相対回転させることで、ナット部62が連結部材64の長手部64Aにガイドされて、ねじ部61及び連結部材64に対して上下動することになる。
【0049】
次に、冶具50を用いた水栓金具10の取り外しについて説明する。
まず、実施例1と同様に、当接部材63を台板部34Aの内縁部上に載置されることで、台座部30に当接させる。そして、連結部材64の押下部64Bを当接部材63の上面に載置する。続いて、操作部61Bを回転操作して、ねじ部61をナット部62及び連結部材64に対して相対回転させて上方に移動させる。そして、図9に示すように、実施例1と同様に、押上部62Bが支持部材40の凹部43Cに入り込み凹部43Cの上面に当接する。
【0050】
続いて、図9に示す状態において、実施例1と同様に、さらに操作部61Bを回転操作して、押下部64Bと押上部62Bとが上下に離れる方向に力を加えて、台座部30と支持部材40とを引き離す。これにより、実施例1と同様に、過大な力を加えることなく、失敗することなく確実に台座部30と支持部材40とを引き離すことができる。
【0051】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1) 実施例1では、当接部材53は、パイプガイド34の台板部34A上に載置されていたが、図10に示すように、一対の雄ねじ部33に取付けする構成であってもよい。例えば、図10に示すように、当接部材53は、一対の雄ねじ部33の一方が係合するガイド溝53Eと、他方が挿通する孔53Fが形成されている。そして、当接部材53は、ガイド溝53Eを一方の雄ねじ部33に係合し、袋ナット33Bで支えられた状態で取付けされ、孔53Fに挿通する他方の雄ねじ部33にナット32C,32Dを用いて取付けされる構成であってもよい。このような構成であっても、施例1と同様に、ナット部52をねじ部51に対して相対回転させることで、当接部材53とねじ部51とが上下に離れる方向に力を加えて、台座部30と支持部材40とを引き離すことができる。
(2) 実施例1,2では、ねじ部51の押上部51Bが入り込んで当接する凹部43Cが支持部材40に形成されていたが、凹部43Cが形成されなくてもよい。このような構成でも、ねじ部51が支持部材40の上壁部43Aと回転方向に当接することによって、ねじ部51を回り止めすることができる。
また、実施例1,2において、凹部43Cが形成されず、ナット部52,54が当接部材53,55に当接した状態で回り止めされ、ねじ部51をナット部52,54に対して相対的に回転させてもよい。このような構成であっても、ねじ部51をナット部52,54に対して上方に移動させて、台座部30と支持部材40とを上下方向に引き離すことができる。
(3) 実施例1~3において、当接部材53,55,63は、パイプガイド34に係合する構成であってもよい。例えば、当接部材53,55,63は、一対の突起部34Eや溝部34Hに当接した状態でパイプガイド34上に載置されてもよい。当接部材53,55,63を台座部30に安定して組み付けることができる。
(4) 実施例1~3において、冶具50は、当接部材53,55,63の中心位置が、台座部30において当該台座部30を取付部に固定する一対の雄ねじ部33間の中心位置に位置した。しかしながら、冶具50は、当接部材53,55,63の中心位置が、上下方向において、台座部30の中心位置に位置してもよい。このような構成によっても、当接部材53が台座部30に安定的に当接する。
(5) 実施例1において、当接部材53が上方から台座部30に当接し、ねじ部51が下方から支持部材40に当接する構成を示した。しかしながら、当接部材53(請求項の「第2当接部材」に相当)が下方から支持部材40に当接し、ねじ部51(請求項の「第1当接部材」に相当)が上方から台座部30に当接するような構成でもよい。そして、ねじ部51は、当接部材53の貫通孔53Cに貫通した状態で、支持部材40に形成された挿入孔(図示略)に挿通されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…水栓金具
20…取付金具
30…台座部
34G…挿入孔
40…支持部材
50…冶具(水栓金具の取り外し治具)
51…ねじ部(第2当接部材)
52…ナット部
53…当接部材(第1当接部材)
53C…貫通孔
B…天板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10