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特許7011968階段用シート及びその施工方法並びに階段構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】階段用シート及びその施工方法並びに階段構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/17 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
E04F11/17 100D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018082408
(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2019190087
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 雄志郎
(72)【発明者】
【氏名】古谷 伸一
(72)【発明者】
【氏名】明石 和也
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-026148(JP,A)
【文献】実開昭53-065227(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1642892(KR,B1)
【文献】特開2012-077521(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0089457(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/16、11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み面部、蹴込み面部、及び前記踏み面部と蹴込み面部の間において前方に突設された段鼻部を有する階段の前記踏み面部、段鼻部及び蹴込み面部に施工される階段用シートにおいて、
柔軟な本体層と、前記本体層の裏面又は内部に積層された繊維補強層と、を有し、
段鼻部の上出隅部に対応する領域、下出隅部に対応する領域及び下入隅部に対応する領域の各裏面側に、前記繊維補強層を分断する線状切込みが幅方向にそれぞれ形成されている、階段用シート。
【請求項2】
記段鼻部の上出隅部に対応する領域の裏面側に、1本の線状切込みが独立して形成され、
前記段鼻部の下出隅部に対応する領域及び下入隅部に対応する領域の各裏面側に、複数本の線状切込みが幅方向と直交する方向に並んで形成されている、請求項1に記載の階段用シート。
【請求項3】
踏み面部、蹴込み面部、及び前記踏み面部と蹴込み面部の間において前方に突設された段鼻部を有する階段の前記踏み面部、段鼻部及び蹴込み面部に、請求項1または2に記載の階段用シートを施工する方法であって、
前記段鼻部の上面、前面及び下面に両面粘着テープを貼付けると共に、前記踏み面部の上面及び前記蹴込み面部の前面に接着剤を塗布する工程、
前記階段用シートを、上出隅部に対応する領域に形成された線状切込みにて折り曲げ、前記段鼻部の上面及び前面の両面粘着テープに貼り付ける工程、
前記階段用シートを、下出隅部に対応する領域に形成された線状切込みにて折り曲げ、前記段鼻部の下面の両面粘着テープに貼り付ける工程、
前記階段用シートを、下入隅部に対応する領域に形成された線状切込みにて折り曲げ、前記蹴込み面部の前面の接着剤に貼り付ける工程、
を有する、階段用シートの施工方法。
【請求項4】
踏み面部、蹴込み面部、及び前記踏み面部と蹴込み面部の間において前方に突設された段鼻部を有する階段と、前記踏み面部、段鼻部及び蹴込み面部に沿って貼り付けられている階段用シートと、から構成され、
前記階段用シートが、本体層と、前記本体層の裏面又は内部に積層された繊維補強層と、を有し、
前記階段用シートが、前記段鼻部の上出隅部、下出隅部及び下入隅部において折り曲げられており、
前記階段用シートのうち前記段鼻部の上出隅部に対応する領域、下出隅部に対応する領域及び下入隅部に対応する領域の各裏面側に、前記繊維補強層を分断する線状切込みが幅方向にそれぞれ形成されている、階段構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般住宅、マンション、オフィスビルなどの各種構造物の階段の表面に施工される階段用シートなどに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、踏み面部、蹴込み面部、及び前記踏み面部と蹴込み面部の間において前方に突設された段鼻部を有する階段と、前記踏み面部、段鼻部及び蹴込み面部に沿って貼り付けられている階段用シートと、から構成される階段構造が開示されている。前記階段用シートは、段鼻部の外形に沿って折り曲げることにより、蹴込み面部、段鼻部及び蹴込み面部に沿って貼り付けられている。
かかる階段構造は、段鼻部に対応する階段用シートの表面に、特定の長状凸部が形成されているので、歩行者の足裏の滑りを効果的に防止でき、好ましいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-026148号公報
【発明の概要】
【0004】
一般的な階段では、歩行者が昇降時に足を載せ易くするために、踏み面部の面積を大きくするために、段鼻部が前方に突設されていることが多い。かかる段鼻部は、蹴込み面部よりも前方に突設されているので、階段は、段鼻部において上出隅部、下出隅部及び下入隅部という3箇所の隅部を有する。このため、階段用シートを階段に貼り付ける際には、段鼻部の3箇所の隅部に対応する領域において階段用シートを綺麗に折り曲げながら施工しなければならない。
【0005】
しかしながら、階段用シートを段鼻部の3箇所の隅部に沿うように綺麗に折り曲げつつ皺などが発生しないように美観良く貼り付けるには熟練を要するが、施工熟練者の数も限りがある。
また、歩行者の昇降時に足裏で踏まれる階段用シートは、ある程度の剛性を有するものが使用されるので、前記折り曲げ施工が困難であり、特に、繊維補強層を有する階段用シートは剛性が高いので、より施工が困難となる。
従って、比較的容易に施工できる階段用シートが求められている。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、段鼻部を有する階段に容易に施工できる階段用シート及びその施工方法などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の階段用シートは、踏み面部、蹴込み面部、及び前記踏み面部と蹴込み面部の間において前方に突設された段鼻部を有する階段の前記踏み面部、段鼻部及び蹴込み面部に施工される階段用シートにおいて、柔軟な本体層と、前記本体層の裏面又は内部に積層された繊維補強層と、を有し、段鼻部の上出隅部に対応する領域、下出隅部に対応する領域及び下入隅部に対応する領域の各裏面側に、前記繊維補強層を分断する線状切込みが幅方向にそれぞれ形成されている。
【0008】
本発明の好ましい階段用シートは、記段鼻部の上出隅部に対応する領域の裏面側に、1本の線状切込みが独立して形成され、前記段鼻部の下出隅部に対応する領域及び下入隅部に対応する領域の各裏面側に、複数本の線状切込みが幅方向と直交する方向に並んで形成されている。
【0009】
本発明の別の局面によれば、階段用シートの施工方法を提供する。
本発明の階段用シートの施工方法は、踏み面部、蹴込み面部、及び前記踏み面部と蹴込み面部の間において前方に突設された段鼻部を有する階段の前記踏み面部、段鼻部及び蹴込み面部に、上記いずれかの階段用シートを施工する方法であって、前記段鼻部の上面、前面及び下面に両面粘着テープを貼付けると共に、前記踏み面部の上面及び前記蹴込み面部の前面に接着剤を塗布する工程、前記階段用シートを、上出隅部に対応する領域に形成された線状切込みにて折り曲げ、前記段鼻部の上面及び前面の両面粘着テープに貼り付ける工程、前記階段用シートを、下出隅部に対応する領域に形成された線状切込みにて折り曲げ、前記段鼻部の下面の両面粘着テープに貼り付ける工程、前記階段用シートを、下入隅部に対応する領域に形成された線状切込みにて折り曲げ、前記蹴込み面部の前面の接着剤に貼り付ける工程、を有する。
【0010】
本発明の別の局面によれば、階段構造を提供する。
本発明の階段構造は、踏み面部、蹴込み面部、及び前記踏み面部と蹴込み面部の間において前方に突設された段鼻部を有する階段と、前記踏み面部、段鼻部及び蹴込み面部に沿って貼り付けられている階段用シートと、から構成され、前記階段用シートが、本体層と、前記本体層の裏面又は内部に積層された繊維補強層と、を有し、前記階段用シートが、前記段鼻部の上出隅部、下出隅部及び下入隅部において折り曲げられており、前記階段用シートのうち前記段鼻部の上出隅部に対応する領域、下出隅部に対応する領域及び下入隅部に対応する領域の各裏面側に、前記繊維補強層を分断する線状切込みが幅方向にそれぞれ形成されている。
【発明の効果】
【0011】
また、本発明の階段用シートは、段鼻部を有する階段に容易に施工できる。また、本発明の階段用シートは、施工後、階段に長期間安定的に貼り付き、シート浮きも生じ難いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る階段構造の斜視図。
図2】階段の一部省略側面図。
図3】階段用シートの平面図。
図4】階段用シートの背面図。
図5】階段用シートの拡大側面図。
図6図5のVI-VI’部拡大図。
図7図6のVII-VII’部拡大図。
図8図3のVIII-VIII線で切断した拡大断面図。
図9】階段用シートを階段に施工する過程を示す一部省略断面図。
図10】階段用シートを階段に施工する過程を示す一部省略断面図。
図11】階段構造の一部省略断面図。
図12】第1変形例に係る階段用シートの拡大断面図。
図13】第1変形例に係る階段用シートの拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「上方」は階段を登っていく側を、「下方」はこれと反対に階段を降りていく側を、「前方」は蹴込み面部から離れる側を、「後方」はこれと反対に蹴込み面部に近づく側を、「幅方向」は、上下方向と前後方向に直交する方向を意味する。
本明細書において、平面視は、階段用シートの表面に対して直交する方向から見ることをいい、平面視形状は、その方向から見たときの形状をいう。また、断面視形状は、階段用シートを厚み方向で切断したときの形状をいう。
本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
【0014】
<階段構造の概要>
図1に示すように、本発明の階段構造1は、踏み面部4、蹴込み面部6及び段鼻部5を有する階段2と、前記階段2の表面に貼り付けられた階段用シート3と、から構成されている。
階段用シート3は、段鼻部5において折り曲げられ、階段2の表面に沿って貼り付けられている。
以下、階段2及び階段用シート3を説明した後、階段構造1の詳細を説明する。
【0015】
<階段>
階段2は、木板の組み合わせ構造体、コンクリート構造体などの構造物である。
階段2は、図2に示すように、踏み面部4と段鼻部5と蹴込み面部6とを一段とし、これが複数段上方に連設されている。
段鼻部5は、蹴込み面部6の上方位置において踏み面部4の前方に突出されている。通常、踏み面部4と段鼻部5は、1つの部材で一体的に形成されるため、図2では、踏み面部4と段鼻部5の概念上の境界を短破線で示している。
通常、踏み面部4の上面4aと蹴込み面部6の前面6aが略直交状となるように踏み面部4及び蹴込み面部6は形成される。もっとも、蹴込み面部6の前面6aが踏み面部4の上面4aに対して鈍角又は鋭角に傾斜するように、踏み面部4及び蹴込み面部6が形成されていてもよい。
段鼻部5の上面5aは踏み面部4の上面4aと面一に形成され、段鼻部5の下面5cは踏み面部4の上面4aと略平行に形成される。通常、段鼻部5の前面5bは蹴込み面部6の前面6aと略平行に形成されるが、上述のように、蹴込み面部6の前面6aが踏み面部4の上面4aに対して略直交状でなく傾斜するように形成されている場合には、段鼻部5の前面5bは蹴込み面部6の前面6aに対して非平行状に形成される場合が多い。
なお、階段2の表面は、踏み面部4の上面、段鼻部5の上面、前面及び下面、蹴込み面部6の前面から構成される。
【0016】
段鼻部5の前方上部は、略直角状の出隅51(以下、上出隅部51という)とされ、段鼻部5の前方下部は、略直角状の出隅52(以下、下出隅部52という)とされ、段鼻部5の後方下部は、入隅53(以下、下入隅部53という)とされている。
踏み面部4及び段鼻部5の上面長さ4aLは、上段の蹴込み面部6の入隅部Xから段鼻部5の上出隅部51までの直線長さをいい、段鼻部5の前面長さ5bLは、上出隅部51から下出隅部52までの直線長さをいい、段鼻部5の下面長さ5cLは、下出隅部52から下入隅部53までの直線長さをいい、蹴込み面部6の前面長さ6aLは、下入隅部53から下段の入隅部Zまでの直線長さをいう。
【0017】
標準的な一般住宅の屋内階段にあっては、各寸法は下記の通りである。
踏み面部4の幅は、特に限定されず、例えば、750mm~1500mmであり、好ましくは800mm~1400mmである。
踏み面部4及び段鼻部5の上面長さ4aLは、特に限定されず、例えば、150mm~900mmであり、好ましくは、200mm~300mmである。
段鼻部5の前面長さ5bLは、特に限定されず、例えば、15mm~50mmであり、好ましくは、20mm~40mmである。
段鼻部5の下面長さ5cLは、特に限定されず、例えば、15mm~50mmであり、好ましくは、20mm~35mmである。
蹴込み面部6の前面長さ6aLは、特に限定されず、例えば、140mm~230mmであり、好ましくは、150mm~210mmである。
【0018】
既存の階段の寸法及び新設の階段2の寸法は、一律ではないが、ある程度の範囲内に収まっていることが多く、後述する階段用シートの線状切込みの形成位置及び形成数は、階段2の寸法を考慮して設計される。
【0019】
<階段用シート>
図3は、階段用シートを表面側から見た平面図、図4は、裏面側から見た背面図、図5は、図3の右側から見た側面を拡大した側面図、図6は、図5のVI-VI’で区切られた部分をさらに拡大した側面図、図7は、図6のVII-VII’で区切られた部分をさらに拡大した側面図、図8は、図3のVIII-VIII線で切断して拡大した断面図である。
階段用シート3の幅方向は、階段2の幅方向と同じ方向であり、階段用シート3の長さ方向は、階段用シート3の幅方向に対して直交する方向をいう。
【0020】
階段用シート3は、図3及び図4に示すように、平面視略矩形状に形成されている。
階段用シート3の幅(幅方向の長さ)は、前記踏み面部4の幅と同じ又はそれよりも数cm~十数cm程度大きく設定されている。
階段用シート3の長さ(長さ方向の長さ)は、階段2の一段の長さ(前記踏み面部4及び段鼻部5の上面長さ4aL+段鼻部5の前面長さ5bL+段鼻部5の下面長さ5cL+蹴込み面部6の前面長さ6aL)と同じ又はそれよりも数cm~十数cm程度大きく設定されている。
階段用シート3は、柔軟性を有し、容易に湾曲させることができる。前記柔軟性は、本発明の階段用シート3を人力で直径約15cmの軸芯にロール状に巻くことができる程度に軟らかいことをいう。
【0021】
図6乃至図8を参照して、階段用シート3は、柔軟な本体層31と、前記本体層31の裏面又は内部に積層された繊維補強層32と、を有する。本実施形態では、繊維補強層32は、本体層31の裏面に積層されている。
本体層31は、基材層311と、基材層311の表面側に積層された装飾層312と、を有する。
本体層31の厚みは、特に限定されず、例えば、1mm~7mmであり、好ましくは、1.5mm~4mmである。
【0022】
基材層311は、階段用シート3の主要部を成しており、例えば、合成樹脂などを用いて形成される。
基材層311は、1層構造でもよく、2層以上の積層構造でもよい。また、基材層311は、発泡層から形成されていてもよく、非発泡層から形成されていてもよい。2層以上の積層構造からなる基材層(図示せず)は、発泡層と非発泡層の積層構造であってもよい。
衝撃緩和性、クッション性及び防音性に優れることから、基材層311は、発泡層を含んでいることが好ましい。図示例では、便宜上、基材層311として、発泡層のみからなる1層構造を例示している。
基材層311の材質は、特に限定されず、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンなどのオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル樹脂、エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂などの熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。加工性が良く、強度及び耐久性に優れ、曲げにも柔軟に追随しやすく、低コストであることから、塩化ビニル樹脂を用いた基材層311が好ましい。
【0023】
基材層311が発泡層を含む場合、その発泡層の形成方法としては、例えば、発泡剤を添加した樹脂組成物(例えば、発泡剤を添加したペースト状塩化ビニル樹脂)を繊維補強層上に積層した後、加熱炉や加熱ロールに通してこれを発泡させる方法;発泡剤を添加した樹脂組成物を発泡させながら繊維補強層上に積層する方法;発泡剤を添加した樹脂組成物から未発泡シートを成形した後、加熱ロールなどに通して発泡シートを得る方法などが挙げられる。発泡層の発泡倍率は特に限定されないが、経時的に圧縮され難いことから、1.1倍~7倍が好ましく、2倍~5倍がより好ましい。
発泡層の厚みは、特に限定されないが、衝撃緩和性及びクッション性に優れた階段構造1を構成するために、例えば、0.9mm~6.9mmであり、好ましくは1mm~3mmである。
【0024】
装飾層312としては、例えば、デザインを転写した転写層、デザインを印刷した印刷層、デザイン印刷済みのフィルム層などを用いることができる。装飾層312の色彩又は模様は、特に限定されず任意に設定できる。例えば、装飾層312の色彩又は模様は、木のような色彩・模様を有する木目模様、石のような色彩・模様を有する石目模様、抽象柄などに設定できる。
なお、装飾層312の表面には、表面保護層(図示せず)が設けられていてもよい。
【0025】
繊維補強層32は、階段用シート3の剛性を高め、さらに、階段用シート3に寸法安定性を付与するための層である。
繊維補強層32に用いられる繊維は、特に限定されず、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、ロックウールなどの無機繊維;ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維などの合成繊維;綿、羊毛などの天然繊維;などが挙げられる。これらの中でも、強度に優れ、かつ、寸法変化が小さいという点から、無機繊維が好ましく、特にガラス繊維を用いることが好ましい。
繊維補強層32は、無機繊維などの繊維の不織布、織布、編み物などが挙げられる。
繊維補強層32の目付量は特に限定されないが、例えば、ガラス繊維を含む繊維補強層32を用いる場合、10g/m~120g/mのガラス繊維織布又は不織布が特に好ましい。なお、ガラス繊維以外の繊維を用いた場合でも、前記と同程度の目付量の織布又は不織布が好ましい。
繊維補強層32の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1mm~0.5mmであり、好ましくは0.15mm~0.4mmである。
【0026】
前記階段用シート3の表面には、滑り止め凸部38が形成され、滑り止め凸部38に隣接して凹部39が形成されている。
滑り止め凸部38は、階段用シート3の表面の一部分を凹ませることによって形成されていてもよく、或いは、階段用シート3の表面の一部分を突出させることによって形成されていてもよい。いずれの場合でも、凸部は、その凸部に隣接する凹みよりも相対的に突出した部分と観念できる。凸部と凹部は、相対的な概念であり、凹部39を基準として突出している部分が滑り止め凸部38である。
滑り止め凸部38の形態は、特に限定されず、例えば、特許文献1(特開2012-026148号公報)に開示されたような複数本の長状凸部でもよく、幅方向に断続的に形成された凸部などであってもよい。
【0027】
図3乃至図8を参照して、本実施形態では、例えば、本体層31の表面に、滑り止め凸部38としてその幅方向全体に延びる細長い凸部が形成されている。この滑り止め凸部38に隣接して、本体層31の表面には、幅方向に延びる細長い凹部39が形成されている。
滑り止め凸部38は、好ましくは長さ方向に複数本並設され、図示例では、6つの滑り止め凸部38が形成されている。
好ましくは、1つの滑り止め凸部381(以下、第1滑り止め凸部381という)が独立して形成され、残る複数の滑り止め凸部382(以下、第2滑り止め凸部382という)が長さ方向に連続的に並設されている。
第1滑り止め凸部381の両側には、幅方向に延びる凹部39が形成されている。また、複数(図示例では5つ)の第2滑り止め凸部382の両側にも凹部39が形成されている。各凹部39の深さ及び長さは特に限定されず、互いに異なっていてもよく、或いは、同じでもよく、一部が異なり残部が同じであってもよい。
図示例では、第1滑り止め凸部381と第2滑り止め凸部382の間に存する凹部391は、その他の凹部39に比して深く且つ長く形成されている。
【0028】
また、階段用シート3には、本発明の特徴の1つである、線状切込み7が形成されている。
線状切込み7は、少なくとも繊維補強層32を分断するように形成されているものである。
繊維補強層32を有する階段用シート3は、その剛性により、略直角状に比較的折り曲げ難く、また、施工後には繊維補強層32の引張り復元力により、略直角状に折り曲げた部分が弧状に変形しやすいが、線状切込み7を設けることにより、階段用シート3を略直角状などに折り曲げ易くなり、また、施工後も略直角状を維持させ易くなる。
【0029】
線状切込み7は、階段用シート3の幅方向に延設されている。線状切込み7は、階段用シート3の幅方向全体に亘って形成されていてもよく、或いは、幅方向に断続的に形成されていてもよい。なお、幅方向に断続的に形成されるとは、階段用シートの裏面側から見たときに、線状切込み7が、点線状や破線状などの非連続状の線を成して幅方向に延設されていることをいう。
好ましくは、図示のように、線状切込み7は、階段用シート3の全体に亘って形成され、より好ましくは、幅方向に直線状に延設されている。幅方向全体に亘る線状切込み7を形成することにより、繊維補強層32の剛性を効果的に下げることができる。
【0030】
本実施形態のように、繊維補強層32が本体層31の裏面側に積層されている場合には、線状切込み7は、階段用シート3の裏面側から繊維補強層32を分断して形成されている。
線状切込み7は、繊維補強層32を厚み方向で切断し、線状切込み7にて少なくとも繊維補強層32を2分するように形成されていればよく、線状切込み7が本体層31の一部分に至っていてもよく、或いは、本体層31に至っていなくてもよい。ただし、線状切込み7が本体層31に至っている場合であっても、線状切込み7は、本体層31を完全に分断せず、本体層31の厚み方向中途部にまで形成される。
好ましくは、線状切込み7は、繊維補強層32を分断し且つ本体層31の一部分を切り欠くように形成されている。
前記線状切込み7の深さは、少なくとも繊維補強層32を分断でき且つ本体層31を完全に分断しない程度であれば特に限定されず、例えば、0.2mm~6mmである。特に、繊維補強層32が本体層31の裏面側に積層されている場合においては、線状切込み7の深さは、0.2mm~1mmが好ましく、0.3mm~0.7mmがより好ましい。
【0031】
線状切込み7の断面視形状は、特に限定されず、図示したような略逆V字状でもよく、特に図示しないが略逆U字状、略I字状(図12参照)などであってもよい。前記略I字状の線状切込みは、カッター刃などを用いて繊維補強層32を有する本体層31を厚み方向に切り目を形成するだけで得られるので、加工性に優れるが、折り曲げ性にやや劣る可能性がある。この点、略逆V字状や略逆U字状の線状切込みは、その形成時に削り滓が生じるが、略I字状の切込みに比して本体層31の裏面側を大きく切り欠いているので、折り曲げ性に優れている。特に、略逆V字状の線状切込みは、折り曲げ性と加工性に優れるので好ましい。
【0032】
線状切込み7は、階段用シート3の長さ方向、すなわち幅方向と直交する方向において複数本並設されている。
階段用シート3を階段2に施工する際に、階段用シート3は、階段2の踏み面部4の上面4a、段鼻部5の上面5a、前面5b及び下面5c、並びに、蹴込み面部6の前面6aに貼り付けられる。
線状切込み7は、階段用シート3のうち、段鼻部5の上出隅部51に対応する領域(以下、上出隅対応領域という)、段鼻部5の下出隅部52に対応する領域(以下、下出隅対応領域という)、及び、段鼻部5の下入隅部53に対応する領域(以下、下入隅対応領域という)にそれぞれ形成されている。
線状切込み7は、踏み面部4に対応する領域及び/又は蹴込み面部6に対応する領域にも形成されていてもよいが、その領域における繊維補強層32の剛性を低下させないようにするために、踏み面部4に対応する領域及び蹴込み面部6に対応する領域のうち、少なくとも踏み面部4に対応する領域には形成されていないことが好ましい。
【0033】
なお、上出隅対応領域は、段鼻部5の上出隅部51及びその上出隅部近傍部に対応する領域をいい、下出隅対応領域は、段鼻部5の下出隅部52及びその下出隅部近傍部に対応する領域をいい、下入隅対応領域は、施工時に段鼻部5の下入隅部53及びその下入隅部近傍部に対応する領域をいう。前記上出隅部近傍部は、図2を参照して、段鼻部5の上面5aのうち上出隅部51から10mm以内の範囲及び段鼻部5の前面5bのうち上出隅部51から10mm以内の範囲を含む。前記下出隅部近傍部は、段鼻部5の前面5bのうち下出隅部52から10mm以内の範囲及び段鼻部5の下面5cのうち下出隅部52から10mm以内の範囲を含む。前記下入隅部近傍部は、段鼻部5の下面5cのうち下入隅部53から10mm以内の範囲及び蹴込み面部6の前面6aのうち下入隅部53から10mm以内の範囲を含む。
【0034】
階段用シート3の上出隅対応領域、下出隅対応領域及び下入隅対応領域のそれぞれに、線状切込み7が形成されていることにより、それらの領域それぞれで階段用シート3を容易に折り曲げることができる。
階段用シート3の上出隅対応領域には、複数本の線状切込み7が一定間隔又は所定間隔を開けて形成されていてもよく、或いは、1本の線状切込み7が形成されていてもよい。
階段用シート3の施工時に位置決め基準とすることができることから、上出隅対応領域には、1本の線状切込み7が形成されていることが好ましい。この1本の線状切込み7を他の線状切込み7と区別して説明する場合に、この1本の線状切込み7を「位置決め線状切込み71」という場合がある。
【0035】
また、位置決め線状切込み71は、上出隅対応領域の中の任意の箇所に配置すればよいが、階段用シート3の表面に形成された凹部39の裏面側に配置されていることが好ましい。凹部39の裏面側に位置決め線状切込み71を配置することにより、本体層31の厚みがより小さくなり、位置決め線状切込み71において階段用シート3を特に折り曲げ易くなる。
特に、位置決め線状切込み71は、階段用シート3の表面に形成された滑り止め凸部38と関連付けて配置されていることが好ましい。図示例では、第1滑り止め凸部381が段鼻部5の上面の上出隅部近傍部に位置するように施工される階段用シート3を例示している。かかる階段用シート3にあっては、位置決め線状切込み71は、第1滑り止め凸部381に対応する裏面側に配置され、好ましくは、第1滑り止め凸部381の両側の凹部39のうち前方の凹部392の裏面側に配置される。
【0036】
この場合、位置決め線状切込み71は、その中央部が凹部392の範囲内(相対的な概念である凹凸の凹んでいる部分の範囲内)となるように形成されていればよい。好ましくは、その中央部が凹部392の最深部から長さ方向に3mm以内(凹部392の最深部を基準として、その長さ方向の左方3mm~右方3mmの範囲内)に位置するように位置決め線状切込み71が形成され、より好ましくは、その中央部が凹部392の最深部から長さ方向に1mm以内(凹部392の最深部を基準として、その長さ方向の左方1mm~右方1mmの範囲内)に位置するように位置決め線状切込み71が形成され、さらに好ましくは、図7のように、その中央部が凹部392の最深部の直下に位置するように、位置決め線状切込み71が形成される。
なお、位置決め線状切込み71の中央部は、図7に示す側面視で、線状切込み線の長さ方向における中間点をいう。
【0037】
階段用シート3の下出隅対応領域には、複数本の線状切込み7が一定間隔又は所定間隔を開けて形成されていてもよく、或いは、1本の線状切込み7が形成されていてもよい。後述するように、位置決め線状切込み71にて階段用シート3を折り曲げて順に施工していくと、下出隅部52に線状切込み7が位置して下出隅対応領域を折り曲げ易くなることから、階段用シート3の下出隅対応領域には、複数本の線状切込み7が一定間隔又は所定間隔を開けて形成されていることが好ましい。
従って、下入隅対応領域には、長さ方向に複数本の線状切込み7が並設されており、前記上出隅対応領域に形成された単独の1本の位置決め線状切込み71との対比において、下入隅対応領域は、線状切込み7が過密に存在する切込み密集部位とされている。
【0038】
ここで、図6及び図7を参照して、符号W1は、下出隅対応領域に形成された複数本の線状切込み7の形成間隔(隣接する線状切込み7の中央部間の長さ方向における距離)を示す。図6を参照して、符号W2は、下入隅対応領域に形成された複数本の線状切込み7の形成間隔(隣接する線状切込み7の中央部間の長さ方向における距離)を示し、符号W3は、下出隅対応領域に形成された線状切込み7の中央部と位置決め線状切込み71の中央部との間隔を示す。また、図5を参照して、符号W4は、線状切込み7が連続した切込み密集部位の長さを示す。

前記形成間隔W1は、特に限定されず、例えば、0.5mm~5mmであり、好ましくは、1mm~4mmである。複数本の線状切込み7の形成間隔は、一定でもよく、異なっていてもよい。
【0039】
後述するように位置決め線状切込み71を1本単独で存在させることにより、位置決め基準とできることから、下出隅対応領域に形成された線状切込み7と位置決め線状切込み71との間隔は、ある程度離れていることが好ましい。例えば、前記間隔W3は、10mm以上であり、好ましくは15mm以上であり、より好ましくは20mm以上である。また、前記間隔W3は、例えば、60mm以下、好ましくは50mm以下である。
【0040】
階段用シート3の下入隅対応領域には、複数本の線状切込み7が一定間隔又は所定間隔を開けて形成されていてもよく、或いは、1本の線状切込み7が形成されていてもよい。後述するように、位置決め線状切込み71にて階段用シート3を折り曲げて順に施工していくと、下入隅部53に線状切込み7が位置して下入隅対応領域を折り曲げ易くなることから、階段用シート3の下入隅対応領域には、複数本の線状切込み7が一定間隔又は所定間隔を開けて形成されていることが好ましい。
従って、下入隅対応領域には、長さ方向に複数本の線状切込み7が並設されており、前記上出隅対応領域に形成された単独の1本の位置決め線状切込み71との対比において、下入隅対応領域は、線状切込み7が過密に存在する切込み密集部位とされている。
前記形成間隔W2は、特に限定されず、例えば、0.5mm~5mmであり、好ましくは、1mm~4mmである。複数本の線状切込み7の形成間隔は、一定でもよく、異なっていてもよい。
また、前記形成間隔W2と前記形成間隔W1は、何れか一方が小さくてもよく、或いは、同じであってもよい。好ましくは、前記形成間隔W2を前記形成間隔W1よりも小さくすることにより、一般的には追従し難い下入隅部53に、階段用シート3を容易に施工できる。
【0041】
前記下出隅対応領域及び下入隅対応領域において、両領域に形成される線状切込み7が連続していてもよい。
図5では、下出隅対応領域から下入隅対応領域にかけて、複数本の線状切込み7が一定間隔又は所定間隔を開けて長さ方向に連続的に形成されている場合を例示している。
この線状切込み7が連続した切込み密集部位の長さW4は、例えば、40mm~130mmであり、好ましくは50mm~100mmである。
切込み密集部位における線状切込み7の数は、例えば、8~120本、好ましくは10~80本である。
【0042】
なお、前記線状切込み7は、例えば、次のようにして形成できる。
本体層31及び繊維補強層32を有する階段用シート3を、従来公知の手順で作製する。
この階段用シート3の裏面側に、回転刃などを幅方向に移動させて、階段用シート3を厚み方向の中途部分まで切断又は切除することにより、前記線状切込み7を形成できる。
【0043】
<階段用シートの施工方法>
階段用シート3は、既存の階段又は新設の階段に施工できる。
本発明の階段用シート3の施工方法は、例えば、階段用シートの調整工程、接着手段を具備させる工程、階段用シートを折り曲げながら前記接着手段を介して階段に貼り付ける工程、を有する。
【0044】
(階段用シートの調整)
施工に際して、階段2の各寸法を計測する。
階段用シート3の幅を、施工対象の階段2の幅に合わせて調整する。
階段用シート3は、比較的多くの階段に施工できるようにするため(汎用性を持たせるため)、標準的な階段の寸法よりも大きく形成されている。
このため、例えば、階段用シート3の幅が階段2の幅よりも大きい場合には、それに合わせて階段用シート3を裁断する。
階段用シート3の長さを、施工対象の階段2に合わせて調整する。後述するように、本発明の階段用シート3は、位置決め線状切込み71を基準にすると容易に施工できるので、階段用シート3の長さの調整も、位置決め線状切込み71を基準とすることが好ましい。
すなわち、階段用シート3の位置決め線状切込み71から一方端までの長さを、踏み面部4及び段鼻部5の上面長さ4aL、と同じとする。例えば、階段用シート3の位置決め線状切込み71から一方端までの長さが、踏み面部4及び段鼻部5の上面長さ4aLよりも大きい場合には、それに合わせて階段用シート3の長さ方向一方端側を適宜裁断する。
同様に、階段用シート3の位置決め線状切込み71から反対端までの長さを、段鼻部5の前面長さ5bL+段鼻部5の下面長さ5cL+蹴込み面部6の前面長さ6aL、と同じとする。階段用シート3の位置決め線状切込み71から反対端までの長さが、段鼻部5の前面長さ5bL+段鼻部5の下面長さ5cL+蹴込み面部6の前面長さ6aLよりも大きい場合には、それに合わせて階段用シート3の長さ方向反対端側を適宜裁断する。
【0045】
(接着手段の準備)
図9に示すように、階段2の踏み面部4、段鼻部5及び蹴込み面部6に、接着手段を設ける。接着手段は、階段用シート3を階段2に接着できるものであれば特に限定されず、例えば、両面粘着テープ、接着剤、粘着剤、コーキング剤などが挙げられ、好ましくは、両面粘着テープ及び/又は接着剤が好適に用いられる。
両面粘着テープは、初期タックに優れ、階段用シート3を折り曲げた状態で素早く且つ奇麗に階段用シート3を接着させることができる。接着剤は、未固化の状態では流動性に優れており、階段用シート3の貼り付け位置の微調整や貼り直しを容易に行うことができる。このため、両面粘着テープと接着剤を併用することが好ましい。
【0046】
両面粘着テープと接着剤を併用する場合、両者の使用箇所は適宜設定できる。
初期の階段用シート3の貼り付け位置が決まり易く、且つ、下入隅部53に沿って階段用シート3を綺麗に貼り付けることができることから、少なくとも段鼻部5の上面、前面及び下面に両面粘着テープを貼り付け、且つ、蹴込み面部6の前面に接着剤を塗布することが好ましい。
図示例では、段鼻部5の上面、前面及び下面並びに踏み面部4の上面の前方部位(段鼻部5の上面に連続する踏み面部4の上面の一部分)に、両面粘着テープ81を貼り付け、踏み面部4の上面の残部(踏み面部4の上面の後方部位)及び蹴込み面部6の前面に接着剤82を塗布している。
前記両面粘着テープ81は、その粘着剤の露出面を階段側に向けて貼り付けられており、その反対面には、剥離可能な離型紙83が仮添付されている。
【0047】
段鼻部5の上面、前面及び下面並びに踏み面部4の上面の前方部位に貼り付けられる両面粘着テープ81は、単一のものでもよく、幾つかに分割されていてもよい。特に図示しないが、例えば、1枚の両面粘着テープが、段鼻部5の上面及び踏み面部4の上面の前方部位に貼り付けられ、もう1枚の両面粘着テープが、段鼻部5の前面に貼り付けられ、更にもう1枚の両面粘着テープが、段鼻部5の下面に貼り付けられていてもよい(この場合には、3つに分割された両面粘着テープが貼り付けられている)。
例えば、段鼻部5の前面において上下で2つに分割されるように、両面粘着テープを貼り付ける。
この態様の一例としては、例えば、図9に示すように、1枚の両面粘着テープ81’が、段鼻部5の前面の上方部位、段鼻部5の上面及び踏み面部4の上面の前方部位に貼り付けられ、もう1枚の両面粘着テープ81”が、段鼻部5の前面の下方部位及び段鼻部5の下面に貼り付けられている。
なお、両面粘着テープ81は、段鼻部5の上面、前面及び下面の各面の、全体に貼り付けられる場合に限られず、段鼻部5の上面の少なくとも一部分、段鼻部5の前面の少なくとも一部分、及び/又は段鼻部5の下面の少なくとも一部分に貼り付けられていてもよい。
【0048】
(階段用シートの貼り付け)
階段用シート3の一方端を上段の蹴込み面部6に位置合わせしつつ階段用シート3を踏み面部4の上面及び段鼻部5の上面に貼り付ける。
階段用シート3には、位置決め線状切込み71が形成されているので、階段用シート3を容易に略直角状に折り曲げることができる。
上述のように、位置決め線状切込み71を基準にして、階段用シート3の長さを、踏み面部4及び段鼻部5の上面長さ4aLに調整しているので、位置決め線状切込み71を段鼻部5の上出隅部51に略一致させると、自ずと階段用シート3を踏み面部4の上面及び段鼻部5の上面にほぼぴったりと納まるようになる。
また、上述のように、位置決め線状切込み71は滑り止め凸部38と関連付けた位置に形成されているので、位置決め線状切込み71を段鼻部5の上出隅部51に略一致させて階段用シート3を貼り付けることにより、第1滑り止め凸部381も段鼻部5の上面に位置するようになる。
【0049】
具体的には、位置決め線状切込み71にて階段用シート3を折り曲げる。
前記階段用シート3の折り曲げと前後して、両面粘着テープ81の離型紙83を引き剥がす。好ましくは、少なくとも段鼻部5の前面の上方部位及び段鼻部5の上面に貼り付けられた両面粘着テープ81’の離型紙83を引き剥がす。
位置決め線状切込み71にて折り曲げた階段用シート3を、位置決め線状切込み71が段鼻部5の上出隅部51に略一致するように位置合わせして貼り付ける。すると、図10に示すように、階段用シート3の位置決め線状切込み71から一方端までを、両面粘着テープ81’及び接着剤を介して、段鼻部5の上面及び踏み面部4の上面に貼り付けることができ、同時に、階段用シート3の一部分を、両面粘着テープ81’を介して、段鼻部5の前面の上方部位に貼り付けることができる。
なお、(予め階段用シート3を折り曲げず)階段用シート3の位置決め線状切込み71から一方端までを、両面粘着テープ81’及び接着剤を介して、段鼻部5の上面及び踏み面部4の上面に貼り付けた後、位置決め線状切込み71にて折り曲げつつ両面粘着テープ81’を介して、段鼻部5の前面の上方部位に貼り付けてもよい。
【0050】
必要に応じて、階段用シート3の表面側から階段側に階段用シート3を押圧し、階段用シート3を、段鼻部5の上面及び前面の上方部位並びに踏み面部4の上面に、十分に接着させる。
段鼻部5の上面及び段鼻部5の前面に、両面粘着テープ81を配置することにより、階段用シート3の貼り付け初期の位置が決まり易くなる。つまり、段鼻部5の上面及び前面に貼り付ける接着手段として両面粘着テープ81を用いると、一旦それに貼り付けた階段用シート3が面方向に位置ずれし難くなるので、階段用シート3の初期位置が固定される。このように段鼻部5の上出隅部51の近傍に対する階段用シート3の初期位置をしっかりと固定できることにより、施工者がその後の作業をする際に、階段用シート3が位置ずれせず、折り曲げや貼り付け作業を容易に行えるようになる。
【0051】
なお、階段用シート3を貼り付ける際には、階段用シート3のうち、位置決め線状切込み71から離れた領域ほどずれ易いことが本発明者らの研究で判明している。そのため、位置決め線状切込み71から離れた領域は、施工初期の段階で階段に固定しないことが好ましい。そのため、踏み面部4の上面の後方部位及び蹴込み面部6の前面に対する接着手段としては、流動性を有する接着剤を用いることが好ましい。つまり、踏み面部4の上面の後方部位及び蹴込み面部6の前面に接着剤を塗布しておくと、それらに貼り付ける階段用シート3の領域をある程度ずらすことができるので、貼り付け位置の調整を容易に行うことができる。
【0052】
次に、段鼻部5の前面の下方部位及び段鼻部5の下面に貼り付けられた両面粘着テープ81”の離型紙83を引き剥がす。
そして、階段用シート3を、両面粘着テープ81”を介して、段鼻部5の前面の下方部位に貼り付けた後、下出隅部52において、階段用シート3を折り曲げ、両面粘着テープ81”を介して、段鼻部5の下面に貼り付ける。
階段用シート3を段鼻部5の前面に貼り付けると、下出隅対応領域に形成された複数本の線状切込み7のいずれかが下出隅部52に略一致するようになるので、下出隅部52において階段用シート3を容易に折り曲げることができ、下出隅部52において略直角状を成して階段用シート3を段鼻部5の下面に綺麗に貼り付けることができる。
【0053】
さらに、下入隅部53において、階段用シート3を折り曲げ、接着剤82を介して、階段用シート3を蹴込み面部6の前面に貼り付ける。階段用シート3を段鼻部5の下面に貼り付けると、下入隅対応領域に形成された複数本の線状切込み7のいずれかが下入隅部53に略一致するようになるので、下入隅部53において階段用シート3を容易に折り曲げることができ、下入隅部53において略直角状を成して階段用シート3を蹴込み面部6の前面に綺麗に貼り付けることができる。
特に、蹴込み面部6の前面には、接着剤82が塗布されているので、接着剤82を介して前記前面に貼り付けた階段用シート3を、面方向にずらしながら位置調整を容易に行うことができる。
また、接着剤82を介して貼り付けた箇所は、接着剤が固化する前であれば、階段用シート3の一部分を剥がして再び貼り付けることができる。例えば、施工時において、事前に裁断した階段用シート3の寸法が少し大きすぎる場合、階段用シート3の端部を引き剥がして裁断した後、再び貼り付けることによって、綺麗に仕上げることが可能となる。
最後に、接着剤82に対応する階段用シート3を表面側から押圧し、自然乾燥などによって接着剤82が固化すると、1段の階段用シート3の施工が完了する。
【0054】
この作業を各段に繰り返して行っていくことにより、図11に示すような階段構造1を構築できる。
なお、階段用シート3の貼付けは、下段から上段に順次施工してもよく、或いは、上段から下段に順次施工していってもよい。一般的には、下段から上段に順次施工していく方が良好な外観となる場合が多い。
【0055】
図11は、本発明の階段構造を示す一部省略断面図である。なお、図11において、階段用シート3は、基材層(本体層及び装飾層)と繊維補強層を区別せず、全体を1層構造で表している(図10も同様)。
図11に示すように、本発明の階段構造1は、前記踏み面部4、段鼻部5及び蹴込み面部6を有する階段2と、前記階段2の踏み面部4、段鼻部5及び蹴込み面部6に沿って貼り付けられた前記階段用シート3と、を有する。
階段用シート3は、段鼻部5の上出隅部51、下出隅部52及び下入隅部53において、略直角状などの所定角状に折り曲げられており、階段用シート3のうち前記段鼻部5の上出隅部51に対応する領域、下出隅部52に対応する領域及び下入隅部53に対応する領域に、線状切込み7が形成されている。特に、上出隅部51に略一致するように線状切込み7が配置され、好ましくは、上出隅部51、下出隅部52及び下入隅部53のそれぞれに略一致するように線状切込み7が配置されている。
かかる階段構造1は、折り曲げ部分が経時的に元に戻り難く、長期間に亘って安定的に階段用シート3が段鼻部5に接着され、階段用シート3が浮き上がり難いものである。
【0056】
<変形例>
上記実施形態では、線状切込み7は、断面視で略逆V字状に形成されているが、例えば、図12に示すように、線状切込み7が、断面視で略I字状に形成されていてもよい。なお、図12で示した略I字状の線状切込み7は、(紙面の左右方向)に空隙を有するように表しているが、これに限られず、カッター刃で切断したような、実質的に空隙を有さない形状であってもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、繊維補強層32が本体層31の裏面側に設けられているが、例えば、図13に示すように、繊維補強層32が本体層31の内部に積層されていてもよい。この場合、繊維補強層32の裏面には、合成樹脂などからなる裏面層33が積層される。
このように本体層31の内部に繊維補強層32が設けられている場合、線状切込み7はその繊維補強層32のみを分断するように形成されていてもよいが、線状切込み7を簡単に形成できることから、線状切込み7は、少なくとも裏面層33及び繊維補強層32を分断するように、裏面層側から形成されていることが好ましい。
線状切込み7の深さは、特に限定されず、例えば、0.3mm~6mmであり、好ましくは、0.4mm~3mmである。
なお、本体層31の内部に繊維補強層32が設けられている場合、本体層31の裏面に繊維補強層32を積層し、裏面側から線状切込み7を形成し、その後、裏面層33を積層し一体化させて、階段用シートを作製してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の階段用シートは、一般住宅、集合住宅、マンション、オフィスビルなどの各種構造物の階段に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 階段構造
2 階段
3 階段用シート
31 本体層
32 繊維補強層
38 滑り止め凸部
39 凹部
4 階段の踏み面部
5 階段の段鼻部
51 段鼻部の上出隅部
52 段鼻部の下出隅部
53 段鼻部の下入隅部
6 階段の蹴込み面部
7 線状切込み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13