(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】気体圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/06 20060101AFI20220120BHJP
F04B 39/02 20060101ALI20220120BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
F04B39/06 F
F04B39/02 D
F04D29/58 M
F04B39/06 M
(21)【出願番号】P 2018100145
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 謙次
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-166080(JP,A)
【文献】特開昭53-076412(JP,A)
【文献】特開2011-012613(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0164228(US,A1)
【文献】特開2010-216284(JP,A)
【文献】特開2016-205117(JP,A)
【文献】特開2009-013843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/02、39/06
F04C 29/04
F04D 29/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、該駆動源からの駆動力で気体を吸込み、圧縮気体を吐き出す圧縮機本体と、前記圧縮機本体よりも下流配管に配置して、前記圧縮機本体を流通する圧縮気体又は潤滑媒体の少なくとも一方を冷却する空冷式の熱交換器と
、冷却風を生成するファン装置とを備える気体圧縮機であって
、
前記熱交換器を流通する冷却風の流れの上流及び下流の少なくとも一方に
配置された複数の板状部材と、
前記複数の板状部材が冷却風の風圧によって冷却風の流れ方向に回動するように、前記複数の板状部材における短手方向の一方側の部分をそれぞれ支持する複数の回動機構と、
前記複数の板状部材に冷却風の流れ方向と反対方向への付勢力をそれぞれ与える複数の付勢部材とを備えるものである気体圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷式の熱交換器を備えた気体圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気やガスを圧縮する気体圧縮機が知られている。気体圧縮機は気体の圧縮作用によって熱を発生することから、圧縮気体や圧縮機本体及びそれを構成する軸受等を潤滑・冷却する潤滑油や水を空冷式の熱交換器で冷却する構成などを有する。
【0003】
発生する熱量や要求される冷却能力は圧縮機の仕様に応じて異なる。このため必要風量毎に定格の冷却ファン装置を配置したり、これの回転数を可変としたり、熱交換器のサイズを変更したり、熱交換器に流入する冷却対象物(気体・潤滑油(水)の量を制御したり等種々の技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1は、給油式の空気圧縮機であって、圧縮機本体が吐出した圧縮空気から空気と油を分離する油回収器と、この油回収器で回収した油を冷却する空冷式の熱交換器と、油回収器から熱交換器の間に油の流入を制限する開閉弁と、油の温度を検出するい温度検出手段を備え、制御部が、温度検出検出手段の検出温度に応じて開閉弁の開閉を行い、油の冷却温度を制御する構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように、気体圧縮機の熱交換器における冷却能力は、仕様毎の発熱量や要求冷却能力が異なるが、このような種々の仕様に応じて熱交換器の種類(サイズ等)を用意するのは部品点数の増加といったコスト的なデメリットがある。同様に、各仕様に応じてファン装置を駆動する電動機の定格を変更したり、可変速装置を設置したりするはコスト面に加えて制御が複雑化するというデメリットもある。
仕様毎で共通して利用できる熱交換器の範囲を簡易に実現できる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、例えば、特許請求の範囲に記載の構成を適用する。即ち、駆動源と、該駆動源からの駆動力で気体を吸込み、圧縮気体を吐き出す圧縮機本体と、前記圧縮機本体よりも下流配管に配置して、前記圧縮機本体を流通する圧縮気体又は潤滑媒体の少なくとも一方を冷却する空冷式の熱交換器と、冷却風を生成するファン装置とを備える気体圧縮機であって、前記熱交換器を流通する冷却風の流れの上流及び下流の少なくとも一方に配置された複数の板状部材と、前記複数の板状部材が冷却風の風圧によって冷却風の流れ方向に回動するように、前記複数の板状部材における短手方向の一方側の部分をそれぞれ支持する複数の回動機構と、前記複数の板状部材に冷却風の流れ方向と反対方向への付勢力をそれぞれ与える複数の付勢部材とを備える構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、仕様毎に異なる要求冷却能力を簡易な構成で実現できる。即ち複数の仕様に共通して一定体格の熱交換器を適用することができ、部品点数の削減を実現することができる。
本発明の他の課題・構成・効果は、以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明を適用した実施例1による給油式圧縮機の構成を示す模式図である。
【
図2】実施例1による遮蔽部材の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】実施例1の変形例による構成を模式的に示す図である。
【
図4】本発明を適用した実施例2による構成を示す模式図である。
【
図5】本発明を適用した実施例3による構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1に、本発明を適用した実施例1による給油式空気圧縮機100(以下、「圧縮機100」と称する場合がある。)の構成を示す。
圧縮機100は、電動機1、圧縮機本体2、気液分離器3、電磁三方弁4、エアクーラ5、オイルクーラ6、吐出配管7a・7b、潤滑油配管8a・8b、バイパス配管9、遮蔽部材10、ファン装置21を主に備え、これらがパッケージ筐体18に格納された構成を有する。
【0012】
電動機1は、圧縮機本体2に回転動力を共有する駆動源である。本実施例では電動機を例とするが、内燃機関など他の駆動源であってもよい。なお、本実施例では電動機1が圧縮機本体2に軸同で接続する構成とするが、ベルトやギアを介して接続する構成であってもよい。
【0013】
圧縮機本体1は、容積型(スクリュー型、スクロール型、レシプロ型、ベーン型又はクロー型等)或いは遠心型(ターボ)の圧縮機構を有する。本実施例において、圧縮機本体1は、エアフィルタ13を介して吸い込んだ空気を、圧縮作動室に供給される潤滑油と共に圧縮し、気液混合の圧縮空気を吐出配管7aに吐き出す給油式の圧縮機構を有する。なお、本発明はこれに限定するものではなく、無給油式の圧縮機本体であっても適用することができるものである。また、供給する液体が水である給水式であってもよい。
【0014】
気液分離器3は、旋回式や衝突式の気液分離機構を有し、圧縮機本体2が吐き出した気液混合の圧縮空気から空気と油を分離するようになっている。分離された空気は、吐出配管7bに流れ、分離されて底部に貯留された油は、電磁三方弁4を介して潤滑油配管8a又はバイパス配管9に流れるようになっている。
【0015】
電磁三方弁4は、吐出配管7a、7b或いはその両方に配置する空気温度センサ(不図示)や、潤滑油配管8a、8b或いはその両方に配置された油温度センサ(不図示)等の検出値に基づいて、気液分離器3からの潤滑油の流れを潤滑油配管8a又はバイパス配管9に切り替えるようになっている。例えば、電磁三方弁4は、空気温度センサや油温度センサの検出値が所定温度よりも高い場合に、潤滑油の流れを潤滑油配管8aに許可し、後述するオイルクーラで冷却する。また、所定温度よりも低い場合には、電磁三方弁4は、潤滑油の流れをバイパス配管9に許可し、過冷却を防止するようになっている。
【0016】
エアクーラ5及びオイルクーラ6は熱交換器であり、ファン装置21が生成する冷却風と、内部を流通する圧縮空気や潤滑油との熱交換を行う冷却装置である。エアクーラ5とオイルクーラ6は、冷却風の流れ方向に重畳して配置し(本例では、オイルクーラ6が冷却風に対して上流)、一方を流通した冷却風が他方に流入するようになっている。
【0017】
ファン装置21は、ターボ型、プロペラ型等種々の形式の回転翼と、これを駆動する電動機とからなる。ファン装置21が駆動することで、パッケージ筐体18内部に吸気口19から排気口20に至る冷却風の流れを生成する。吸気口19から流入した外気は、電動機1や圧縮機本体2を冷却し、その後、エアクーラ5やオイルクーラ6を流通後、排気口20から筐体外部に流出するようになっている。
【0018】
ダクト15は、筒形状からなるエアダクトであり、エアクーラ5、オイルクーラ6を内包し冷却風がこれらに流れやすいように案内する。なお、本実施例では、ダクト15内において、冷却風の流れ方向に対して、その上流からファン装置21、オイルクーラ6、エアクーラ5の順で配置構成するものとするが、本実施例はこの構成に限定されるものではない。
【0019】
次いで、本実施例の特徴の1つである遮蔽部材10について説明する。
本実施例では、複数の遮蔽部材10を配置する。遮蔽部材10の素材としては金属・木材・樹脂・ゴム等種々のものが適用できる。遮蔽部材10は、冷却風の流れ方向で、エアクーラ5の冷却風出口側近傍に配置されるようになっている。遮蔽部材10が、エアクーラ5の冷却風出口面の全面又は一部を覆うことで、エアクーラ5及びオイルクーラ6を流通する冷却風の流量を制御することができるようになっている。本実施例では、3つの遮蔽部材10を、面方向をエアクーラ5の冷却風出口面に対向して配置する構成とする。
【0020】
各遮蔽部材10の一辺は、ヒンジ等の回動機構と固定接続され、エアクーラ5の冷却風出口面と水平の状態(0°)から、鉛直(90°)或いはそれ以上の角度(180°)の範囲で回動可能となっている。即ち遮蔽部材10は、エアクーラ5やオイルクーラ6を流れる冷却風の流れ方向と水平から鉛直方向の間で傾倒することができる状態となるようになっている。
【0021】
図2に、遮蔽部材10の斜視図を模式的に示す。
図2(a)は、1つの遮蔽部材1
0の斜視外観と、エアクーラ5による冷却風出口面の一部を示す。同図において、直方体の板状部材からなる遮蔽部材10の長手方向は、エアクーラ5の冷却出口面の奥行方向とし、これと概略同じ長さである。遮蔽部材10の短手方向側面10bは、短手方向の中央から一方の長手方向側面10a側の何れかの部分に、回動用の支持部11を備える。支持部11は、例えば上記長手方向に延伸する凸部又は凹部である。遮蔽部材10は、ダクト15内部に配置して、遮蔽部材10を支持する矩形枠体12或いはダクト15の内壁とボルトやピン等と組み合わせることで、支持部11を支点として、冷却風の流れ方向に対してエアクーラ5と反対方向に回動するようになっている(
図2(b)参照。)。
【0022】
また、遮蔽部材10は、冷却風の風圧により流れ方向に回動する。より具体的には、風圧が遮蔽部材10の自重を上回ることで、風圧に応じてその回動角度が変化するようになっている。換言すれば、ファン装置10が生成する冷却風の風圧が高ければ回動角度が大きくなり、低ければ小さくなる。即ちエアクーラ5やオイルクーラ6を流通する冷却風の量を制御することができる。
【0023】
このことは以下の効果をもたらす。
まず第1に、ファン装置21の回転数に応じてエアクーラ5やオイルクーラ6の冷却能力を制御することが可能となる。例えば、定格吐出能力が異なる圧縮機の場合、発熱量と要求される冷却性能が異なる。このような場合にはエアクーラ5やオイルクーラ6のサイズ等を要求される冷却能力に応じて各定格吐出能力に応じて用意する必要がある。更には、圧縮機の設置環境によっては、吸込空気の温度が高い場合や低い場合がある。仮に周囲温度0度から45度まで対応できる仕様のとき、周囲温度がこれを上まわる場合や下回る場合には、冷却不足や過冷却となる虞もある。
【0024】
本実施例によれば、遮蔽部材10によって各クーラの冷却能力を制御できるため、同一仕様のクーラを異なる定格出力の圧縮機に適用することができ、部品点数の削減という効果をえることができる。即ち定格吐出能力に要求される冷却能力より大きいクーラを設置しても、遮蔽部材10によって、要求冷却能力内の冷却をすることになり、過冷却となることを防止できる。逆に、要求冷却能力に見合った定格吐出能力を有する圧縮機の場合には、遮蔽部材10が全開し、冷却不足を防止することができる。
【0025】
また、周囲温度が高い又は低い場合には、遮蔽部材10の枚数や重量を増減させることで十分な要求冷却能力に調節することができる。
【0026】
また第2に、遮蔽部材10は、冷却風が無い場合(圧縮機100が停止又は一時停止する場合等)には、遮蔽部材10が閉状態(概略水平方向の状態)となり、下流側からの粉塵等に対するカバーとなり得る。
【0027】
以上、本発明を実施するための実施例1について説明したが、本発明は上記例に限定されるものではなく、その趣旨に沿う範囲で種々の変更が可能である。
【0028】
例えば、実施例1では、エアクーラ5とオイルクーラ6を冷却風の流れ方向に沿って重畳的に配置したが、
図3(
b)に示すように、これらを水平方向に並列に配置する構成であ
ってもよい。更には、図
3(
a)に示すように、クーラ毎に1台のファン装置21を配置する構成であってもよい。この場合、一方のクーラのみに遮蔽部材10を配置してもよいし、両方のクーラに遮蔽部材10を配置して、その数及び重量が異なるように構成してもよい。
【0029】
また、実施例1では、遮蔽部材10を複数配置する構成であるが、1の遮蔽部材10で各クーラの冷却風出口面を覆うように構成してもよい。
更には、遮蔽部材10を複数配置する構成である場合に、各遮蔽部材10のサイズ、重量が異なるように構成してもよい(異素材の採用による重量変化を含む。)。
【0030】
なお、実施例1はパッケージ筐体18を利用するパッケージ型の圧縮機を例としたが、本発明の必須構成要素ではなく、パッケージを使用しない圧縮機にも適用することができる。同様に、ダクト15も本発明の必須構成要素ではなく、その使用は任意である。
【実施例2】
【0031】
実施例2は、冷却風の流れ方向に対して遮蔽部材10を配置する位置が、実施例1と主に異なる。以下図面を用いて説明する。なお、同一構成要素については同一符号を用い、詳細な説明を省略する場合がある。
【0032】
図4に、実施例2による圧縮機100のクーラ、ファン装置及び遮蔽部材10の配置構成を模式的に示す。実施例2では、冷却風の流れ方向に対して遮蔽部材10がファン装置21よりも
上流側に配置することを特徴の一つとする。
【0033】
ファン装置21の駆動によって、ダクト15の吸込みの流れが発生するが、この吸込みの冷却風量を遮蔽部材10が制御することができる。即ち吸込みの流れに応じて各遮蔽部材10がファン装置21側に回動し、エアクーラ5及びオイルクーラ6に流れる冷却風の風量が変化し、各クーラの冷却能力が制御されることとなる。
このように、実施例2の構成であっても、実施例1の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0034】
実施例3は、実施例1の構成を基調とし、遮蔽部材10に、冷却風の流れ方向と反対方向への付勢力を与える付勢部材50を更に有する点を特徴の一つとする。以下、図面を用いて説明する。なお、実施例1及び2と同一の構成要素は同一符号を使用するものとし、詳細な説明を省略する場合がある。
【0035】
図5に、実施例3による圧縮機100のクーラ、ファン装置、遮蔽部材10及び付勢部材50の配置構成を模式的に示す。付勢部材50は、例えば、バネ、ゴムといった弾性体等からなり、所定角度以上に遮蔽部材10が回動したときに、水平方向に向かって遮蔽部材10を引きもどす力を生成するようになっている。付勢部材50は、その両端を遮蔽部材50の短手方向側面10a上で、支持部11から離間する部分と、支持枠体12とに接続するようになっている。
【0036】
実施例3によれば、実施例1及び2の効果に加えて、以下の効果をえることができる。
まず、付勢部材50の作用により、遮蔽部材50の自重以上の冷却風風量についても制御することができる。これにより同じクーラで、要求冷却能力に対応できる範囲が拡大することができる。
【0037】
また、遮蔽部材50が鉛直方向に配置される構成(長手方向側面10aが鉛直方向に対向する姿勢)の場合、圧縮機100の停止時等に遮蔽部材50を閉じる方向に戻すことができ、粉塵等の侵入を防止するカバーとしての機能を発揮することができる。
【0038】
以上、本発明の実施例を説明したが、一の実施例の構成要素を他の実施例に置換するなど、本発明は上記種々の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
1…電動機、2…圧縮機本体、3…気液分離器、4…電磁三方弁、5…エアクーラ、6…オイルクーラ、7a・7b…吐出配管、8a・8b…潤滑油配管、9…バイパス配管、10…遮蔽部材(板状部材)、10a…長手方向側面、10b…短手方向側面、11…支持部、12…支持枠体、13…エアフィルタ、15…ダクト、17…オイルフィルタ、18…パッケージ筐体、19…吸気口、20…排気口、21…ファン装置、50…付勢部材、100…給油式圧縮機