(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】真空二重構造体及びその製造方法、並びにヘッドホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
H04R1/10 101
H04R1/10 104
(21)【出願番号】P 2018100956
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2017108252
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591261602
【氏名又は名称】サーモス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 達郎
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-102618(JP,A)
【文献】特開2009-005283(JP,A)
【文献】特開2018-207226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した金属製の外筐体及び内筐体を有し、前記外筐体の内側に前記内筐体を収容した状態で互いの開口端が接合されると共に、前記外筐体と前記内筐体との間に真空層が設けられた真空二重構造体であって、
前記外筐体と前記内筐体との一方の開口端側が溶接により接合された一方の接合端部と、
前記外筐体と前記内筐体との他方の開口端側がろう付けにより接合された他方の接合端部とを有することを特徴とする真空二重構造体。
【請求項2】
前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁とが径方向に隙間を設けて配置され、
前記他方の接合端部において、前記隙間に浸透したろう材を介して互いの周壁が接合されていることを特徴とする請求項1に記載の真空二重構造体。
【請求項3】
前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁との先端側に溝部が設けられ、
前記他方の接合端部において、前記溝部に溜まったろう材を介して互いの周壁が接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空二重構造体。
【請求項4】
前記他方の開口端にろう材を介してろう受部材が貼り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の真空二重構造体。
【請求項5】
前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁は、前記内筐体の開口端と対向する部分を挟んで内周側へと折り返されたろう受部を有し、
前記他方の接合端部において、前記ろう受部に溜まったろう材を介して互いの周壁が接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空二重構造体。
【請求項6】
前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁は、前記外筐体の開口端と対向する部分を挟んで外周側へと折り返されたろう受部を有し、
前記他方の接合端部において、前記ろう受部に溜まったろう材を介して互いの周壁が接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空二重構造体。
【請求項7】
前記外筐体の前記一方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記一方の接合端部を形成する周壁とが径方向に重なるように配置され、
前記一方の接合端部において、互いの開口端が溶接により接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の真空二重構造体。
【請求項8】
電気信号を振動に変換して音響を発するスピーカーユニットと、前記スピーカーユニットの背面側に配置されたハウジングとを含む左右一対又は左右何れか一方のヘッドホン本体を備え、
前記ハウジングは、請求項1~7の何れか一項に記載の真空二重構造体であることを特徴とするヘッドホン。
【請求項9】
両端が開口した金属製の外筐体及び内筐体を有し、前記外筐体の内側に前記内筐体を収容した状態で互いの開口端が接合されると共に、前記外筐体と前記内筐体との間に真空層が設けられた真空二重構造体の製造方法であって、
前記外筐体と前記内筐体との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、前記外筐体と前記内筐体との他方の開口端側をろう付けにより接合することを特徴とする真空二重構造体の製造方法。
【請求項10】
前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁とを径方向に隙間を設けて配置し、
前記他方の開口端側を下方又は上方に向けた状態で、前記チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を前記隙間に浸透させることによって、互いの周壁を前記ろう材を介して接合することを特徴とする請求項9に記載の真空二重構造体の製造方法。
【請求項11】
前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁との先端側に溝部を設け、
前記他方の開口端側を上方に向けた状態で、前記チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を前記溝部に溜めることによって、互いの周壁を前記ろう材を介して接合することを特徴とする請求項9又は10に記載の真空二重構造体の製造方法。
【請求項12】
前記他方の開口端に対向してろう受部材を配置し、
前記他方の開口端側を下方又は上方に向けた状態で、前記チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を前記ろう受部材に溜めることによって、互いの周壁を前記ろう材を介して接合することを特徴とする請求項9または10に記載の真空二重構造体の製造方法。
【請求項13】
前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁に、前記内筐体の開口端と対向する部分を挟んで内周側へと折り返されたろう受部を設け、
前記他方の開口端側を下方に向けた状態で、前記チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を前記ろう受部に溜めることによって、互いの周壁を前記ろう材を介して接合することを特徴とする請求項9又は10に記載の真空二重構造体の製造方法。
【請求項14】
前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁に、前記外筐体の開口端と対向する部分を挟んで外周側へと折り返されたろう受部を設け、
前記他方の開口端側を下方に向けた状態で、前記チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を前記ろう受部に溜めることによって、互いの周壁を前記ろう材を介して接合することを特徴とする請求項9又は10に記載の真空二重構造体の製造方法。
【請求項15】
前記外筐体の前記一方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記一方の接合端部を形成する周壁とを径方向に重なるように配置し、
この状態で、互いの開口端を溶接により接合することを特徴とする請求項9または10に記載の真空二重構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空二重構造体及びその製造方法、並びにヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一端が開口した有底筒状の外筐体及び内筐体を有し、外筐体の内側に内筐体を収容した状態で互いの開口端が接合されると共に、これら外筐体と内筐体との間に真空層が設けられた真空二重構造体がある。
【0003】
このような真空二重構造体は、保温・保冷機能を有する真空断熱容器として利用されている。また、最近では、真空二重構造体を用いたエンクロージャーによって、外部に伝播する振動を抑制したスピーカー装置も開発されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の真空二重構造体は、外筐体の内側に内筐体を収容した状態で互いの開口端を溶接により接合した後に、高真空に減圧(真空引き)されたチャンバー内で、外筐体に設けられた脱気孔を封止することによって作製される。
【0006】
また、一端が開口した真空二重構造体の場合は、外筐体の底壁中央部に脱気孔を設けるのが一般的である。これに対して、両端が開口した真空二重構造体の場合は、外筐体の周壁に脱気孔を設ける必要がある。この場合、外筐体と内筐体との間に設けられた真空層の厚みが、脱気孔が設けられた位置にて不均一なものとなる。また、外筐体の機械的強度も低下することになる。さらに、脱気孔をプレス加工する必要がある。
【0007】
さらに、両端が開口した真空二重構造体の小型化及び軽量化を図るためには、外筐体及び内筐体の板厚を薄くするだけでなく、これら外筐体と内筐体との間に設けられた真空層の厚み(間隔)も小さくする必要がある。このため、上述した外筐体の周壁に脱気孔を設けた場合は、この真空二重構造体の小型化及び軽量化を図ることが非常に困難となってしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、小型化及び軽量化が可能な真空二重構造体及びその製造方法、並びにそのような真空二重構造体を用いたヘッドホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 両端が開口した金属製の外筐体及び内筐体を有し、前記外筐体の内側に前記内筐体を収容した状態で互いの開口端が接合されると共に、前記外筐体と前記内筐体との間に真空層が設けられた真空二重構造体であって、
前記外筐体と前記内筐体との一方の開口端側が溶接により接合された一方の接合端部と、
前記外筐体と前記内筐体との他方の開口端側がろう付けにより接合された他方の接合端部とを有することを特徴とする真空二重構造体。
〔2〕 前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁とが径方向に隙間を設けて配置され、
前記他方の接合端部において、前記隙間に浸透したろう材を介して互いの周壁が接合されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の真空二重構造体。
〔3〕 前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁との先端側に溝部が設けられ、
前記他方の接合端部において、前記溝部に溜まったろう材を介して互いの周壁が接合されていることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の真空二重構造体。
〔4〕 前記他方の開口端にろう材を介してろう受部材が貼り付けられていることを特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の真空二重構造体。
〔5〕 前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁は、前記内筐体の開口端と対向する部分を挟んで内周側へと折り返されたろう受部を有し、
前記他方の接合端部において、前記ろう受部に溜まったろう材を介して互いの周壁が接合されていることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の真空二重構造体。
〔6〕 前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁は、前記外筐体の開口端と対向する部分を挟んで外周側へと折り返されたろう受部を有し、
前記他方の接合端部において、前記ろう受部に溜まったろう材を介して互いの周壁が接合されていることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の真空二重構造体。
〔7〕 前記外筐体の前記一方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記一方の接合端部を形成する周壁とが径方向に重なるように配置され、
前記一方の接合端部において、互いの開口端が溶接により接合されていることを特徴とする前記〔1〕~〔6〕の何れか一項に記載の真空二重構造体。
〔8〕 電気信号を振動に変換して音響を発するスピーカーユニットと、前記スピーカーユニットの背面側に配置されたハウジングとを含む左右一対又は左右何れか一方のヘッドホン本体を備え、
前記ハウジングは、前記〔1〕~〔7〕の何れか一項に記載の真空二重構造体であることを特徴とするヘッドホン。
〔9〕 両端が開口した金属製の外筐体及び内筐体を有し、前記外筐体の内側に前記内筐体を収容した状態で互いの開口端が接合されると共に、前記外筐体と前記内筐体との間に真空層が設けられた真空二重構造体の製造方法であって、
前記外筐体と前記内筐体との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、前記外筐体と前記内筐体との他方の開口端側をろう付けにより接合することを特徴とする真空二重構造体の製造方法。
〔10〕 前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁とを径方向に隙間を設けて配置し、
前記他方の開口端側を下方又は上方に向けた状態で、前記チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を前記隙間に浸透させることによって、互いの周壁を前記ろう材を介して接合することを特徴とする前記〔9〕に記載の真空二重構造体の製造方法。
〔11〕 前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁との先端側に溝部を設け、
前記他方の開口端側を上方に向けた状態で、前記チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を前記溝部に溜めることによって、互いの周壁を前記ろう材を介して接合することを特徴とする前記〔9〕又は〔10〕に記載の真空二重構造体の製造方法。
〔12〕 前記他方の開口端に対向してろう受部材を配置し、
前記他方の開口端側を下方又は上方に向けた状態で、前記チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を前記ろう受部材に溜めることによって、互いの周壁を前記ろう材を介して接合することを特徴とする前記〔9〕~〔11〕の何れか一項に記載の真空二重構造体の製造方法。
〔13〕 前記外筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁に、前記内筐体の開口端と対向する部分を挟んで内周側へと折り返されたろう受部を設け、
前記他方の開口端側を下方に向けた状態で、前記チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を前記ろう受部に溜めることによって、互いの周壁を前記ろう材を介して接合することを特徴とする前記〔9〕又は〔10〕に記載の真空二重構造体の製造方法。
〔14〕 前記内筐体の前記他方の接合端部を形成する周壁に、前記外筐体の開口端と対向する部分を挟んで外周側へと折り返されたろう受部を設け、
前記他方の開口端側を下方に向けた状態で、前記チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を前記ろう受部に溜めることによって、互いの周壁を前記ろう材を介して接合することを特徴とする前記〔9〕又は〔10〕に記載の真空二重構造体の製造方法。
〔15〕 前記外筐体の前記一方の接合端部を形成する周壁と、前記内筐体の前記一方の接合端部を形成する周壁とを径方向に重なるように配置し、
この状態で、互いの開口端を溶接により接合することを特徴とする前記〔9〕~〔14〕の何れか一項に記載の真空二重構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、小型化及び軽量化が可能な真空二重構造体及びその製造方法、並びにそのような真空二重構造体を用いたヘッドホンを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図2】
図1に示す真空二重構造体の製造工程を説明するための図であり、外筐体と内筐体との他方の開口端側をろう付けにより接合する状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図6】本発明の第5の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図7】
図6に示す真空二重構造体の製造工程を説明するための図であり、外筐体と内筐体との他方の開口端側をろう付けにより接合する状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の第6の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図である。(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図9】本発明の第7の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図10】本発明の第8の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図11】本発明の第9の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図12】本発明の第10の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図13】本発明の第11の実施形態に係る真空二重構造体の構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【
図14】本発明の第12の実施形態に係るヘッドホンが備えるヘッドホン本体の外観を示す斜視図である。
【
図15】
図14に示すヘッドホン本体の構成を示す断面図である。
【
図16】
図14に示すヘッドホン本体の別の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1(A)~(D)に示す真空二重構造体1Aについて説明する。なお、
図1は、真空二重構造体1Aの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。
【0013】
本実施形態の真空二重構造体1Aは、
図1(A)~(D)に示すように、両端が開口した金属製の外筐体2及び内筐体3を有し、外筐体2の内側に内筐体3を収容した状態で互いの開口端が接合されると共に、外筐体2と内筐体3との間に真空層4が設けられた真空二重構造を有している。
【0014】
上記外筐体2および内筐体3は、以下の構成を具備する。
外筐体2は、大径円筒部、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とをなだらかに接続するテーパー部とを有する。
同様に、内筐体3は、大径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とをなだらかに接続するように設けられたテーパー部とを有する。
図1Aに示されるように、軸線方向(
図1における上下方向、以下「軸線方向」とは図面における上下方向を意味する。)における、外筐体2の大径円筒部は、径方向(
図1における左右方向、以下「径方向」とは図面における左右方向を意味する。)で相対する内筐体3の大径円筒部よりも長い。また、軸線方向における、外筐体2の小径円筒部は、径方向で相対する内筐体3の小径円筒部よりも短い。
【0015】
外筐体2および内筐体3が上記構造を有しているため、外筐体2と、内筐体3との間に空間であるラジアルギャップ部7が形成される。
【0016】
外筐体2及び内筐体3には、例えばステンレスやチタンなどの金属を用いることができる。また、真空二重構造が得られる材質のものあればよく、それ以外の金属等を用いることも可能である。
【0017】
真空二重構造体1Aは、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側が溶接により接合された一方の接合端部5と、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側がろう付けにより接合された他方の接合端部6とを有している。
【0018】
上記一方の接合端部5においては、一方の接合端部5を形成する外筐体2の円筒状の周壁2bと、一方の接合端部5を形成する内筐体3の円筒状の周壁3bとが径方向に重なるように配置されている。
つまり、外筐体2の大径円筒部と、内筐体3の大径円筒部とを径方向に重なるように配置するとともに、両者の開口端を面一にして、面一に配置された両者の先端を溶接により接合する(以下、このような溶接により接合された部分(図中のWで示す部分)を「溶接接合部」と言う。)と、真空二重構造体1Aの一方の接合端部5が形成される。
【0019】
上記他方の接合端部6においては、他方の接合端部6を形成する外筐体2の円筒状の周壁2cと、他方の接合端部6を形成する内筐体3の円筒状の周壁3cとが径方向に隙間Sを設けて配置されている。
つまり、径方向における、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の小径円筒部との間には、隙間Sが全周にわたって設けられる。
上記隙間Sを含むラジアルギャップ部7の下部に浸透したろう材Bを介して外筐体2の周壁2cと、内筐体3の周壁3cとが接合され(以下、このようなろう付けにより接合された部分(図中のBで示す部分)を「ろう付け接合部」と言う。)、真空二重構造体1Aの他方の接合端部6が形成される。
なお、上記構造を有するため、真空二重構造体1Aでは、一方の接合端部5により円形状に形成された一方の開口部5aの径が、他方の接合端部6により円形状に形成された他方の開口部6aの径よりも大きくなっている。
【0020】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Aでは、従来のような脱気孔を外筐体2の側面に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7の真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)との差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Aの剛性を高めることが可能である。
【0021】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Aでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Aの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0022】
次に、上記真空二重構造体1Aの製造方法について
図2を参照しながら説明する。なお、
図2は、真空二重構造体1Aの製造工程を説明するための図であり、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合する状態を示す断面図である。
【0023】
本実施形態の真空二重構造体1Aの製造方法は、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー(図示せず。)内で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合することを特徴とする。
【0024】
まず、ラジアルギャップ部7を形成する外筐体2の内周面または内筐体3の外周面にろう材Bを予め配置しておく。
【0025】
ろう材Bについては、特に限定されるものでなく、例えば金属ろう材やガラスろう材など、従来公知のものを使用することが可能である。ペースト状のろう材を用いた場合には、固体状のろう材を用いた場合よりも、配置し易くなる。これにより、後述する加熱時において、溶融したろう材Bを隙間Sに的確に浸透させることが可能である。
【0026】
次いで、
図2に示すように、一方の接合端部5を形成する周壁2b、3bである、外筐体2の大径円筒部と、内筐体3の大径円筒部との先端が面一になるように外筐体2および内筐体3とを配置する。
そして、この状態で、互いの周壁2b、3bの先端を溶接により全周に亘って接合し、溶接接合部Wを形成する。溶接には、例えばレーザー溶接を好適に用いることができるが、それ以外の溶接方法を用いることも可能である。
【0027】
また、上記の通り、この状態では、他方の接合端部6を形成する周壁2cである、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の小径円筒部との間には径方向において隙間Sが設けられる。
【0028】
次に、他方の開口端側を下方に向けた状態で、外筐体2と内筐体3とをチャンバー内に設置する。その後、チャンバー内を高真空に減圧(真空引き)する。これにより、外筐体2と内筐体3とのに設けられた隙間Sを含むラジアルギャップ部7は脱気される。
【0029】
次に、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合する。
具体的には、このチャンバー内で、真空二重構造体1Aを加熱する。これにより、予め配置されたろう材Bが溶融し、他方の開口端側へと流れ始め、毛細現象により隙間Sに浸透することになる。そして、加熱終了後硬化したろう材Bを介して、他方の開口端側の周壁2c、3cである、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の小径円筒部とが全周に亘って接合される。
なお、使用するろう材Bの量によっては、隙間Sのみならず、さらに内筐体3の小径円筒部と、外筐体2のテーパー部の一部も接合できる。
【0030】
ここで、内筐体3の周壁3cをスピニング加工等により外筐体2の周壁2cよりも薄く形成した場合には、他方の接合端部6において、互いの周壁2c,3cの先端(外筐体2及び内筐体3の開口端)を溶接により接合することが困難となる。これに対して、本実施形態では、上述したろう付けによって互いの周壁2c,3cを全周に亘って接合することが可能である。
【0031】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2の側面に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Aを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Aをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Aを一括して製造することが可能である。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図3(A)~(D)に示す真空二重構造体1Bについて説明する。なお、
図3は、真空二重構造体1Bの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記真空二重構造体1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0033】
本実施形態の真空二重構造体1Bは、
図3(A)~(D)に示すように、他方の接合端部6の構成が異なる以外は、上記真空二重構造体1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0034】
外筐体2は、円筒部と、円筒部に連結して設けられ、円筒部の径よりも徐々に縮径するテーパー部とを具備する。
内筐体3は、大径円筒部と、それよりも径の小さい中径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と中径円筒部とを連結するテーパー部と、中径円筒部と小径円筒部とを連結するテーパー部とを具備する。
図3(A)に示されるように、外筐体2のテーパー部の先端は、対面する内筐体3の小径円筒部と一定の間隔である隙間Sを維持すべく、面取りされている。
【0035】
外筐体2および内筐体3が上記構造を有しているため、外筐体2の円筒部の開口端と、内筐体3の大径円筒部の開口端とを面一にし、外筐体2のテーパー部の先端と、内筐体3の小径円筒部のとの間に隙間Sが設けられるように、外筐体2と、内筐体3とを組み合わせると、外筐体2の内周面と内筐体3の外周面との間に空間であるラジアルギャップ部7が形成される。本実施形態においては、上記隙間Sもラジアルギャップ部7に含まれる。
【0036】
上記隙間Sを含むラジアルギャップ部7の下部に浸透したろう材Bを介して、外筐体2の周壁2cと、内筐体3の周壁3cとが接合されている。
つまり、外筐体2のテーパー部と、内筐体3の中径円筒部、テーパー部、および小径円筒部とが接合されている。
なお、必ずしも外筐体2のテーパー部と、内筐体3の中径円筒部、テーパー部、および小径円筒部とが接合される必要はなく、少なくとも、外筐体2のテーパー部と、内筐体3の小径円筒部とが接合されていればよい。
【0037】
本実施形態の真空二重構造体1Bでは、他方の接合端部6をこのような構成とすることで、外筐体2の内側に内筐体3を収容する際に、互いの開口端の位置合わせが容易となっている。
【0038】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Bでは、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7を形成する真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Bの剛性を高めることが可能である。
【0039】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Bでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Bの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0040】
本実施形態の真空二重構造体1Bを製造する際は、上記真空二重構造体1Aを製造する場合と同様の方法を用いることができる。すなわち、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合すればよい。
【0041】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Bを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Bをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Bを一括して製造することが可能である。
【0042】
なお、上記実施形態では、口径が大きい側を溶接接合部Wとし、口径が小さい側をろう付接合部(ろう材)Bとした場合を例示しているが、それとは逆に、口径が大きい側をろう付接合部(ろう材)Bとし、口径が小さい側を溶接接合部Wとすることも可能である。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば
図4(A)~(D)に示す真空二重構造体1Cについて説明する。なお、
図4は、真空二重構造体1Cの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記真空二重構造体1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0044】
本実施形態の真空二重構造体1Cは、
図4(A)~(D)に示すように、他方の接合端部6の構成が異なる以外は、上記真空二重構造体1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0045】
外筐体2は、大径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とをなだらかに連結するように設けられたテーパー部とを具備する。
内筐体3は、大径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とを連結するテーパー部とを具備する。上記小径円筒部の開口端は全周にわたって内側になだらかに曲面をもって折り返されている。
外筐体2および内筐体3が上記構造を有しているため、外筐体2および内筐体3の一方の接合端部5をなす周壁2b、3bを径方向に接するように配置し、他方の接合端部6をなす外筐体2および内筐体3の周壁2c、3cを、隙間Sをもって配置すると、外筐体2の内周面と内筐体3の外周面との間に空間であるラジアルギャップ部7が形成される。
つまり、外筐体2および内筐体3が上記構造を有しているため、外筐体2の大径円筒部の開口端と、内筐体3の大径円筒部の開口端とを面一にし、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の小径円筒部の開口端とを面一にして、外筐体2と、内筐体3とを組み合わせると、外筐体2の内周面と内筐体3の外周面との間に空間であるラジアルギャップ部7が形成される。
上記ラジアルギャップ部7には、径方向における、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の小径円筒部との隙間S(上記小径円筒部なだらかな局面をもって内側に折り返されたことにより形成された、内筐体3と外筐体2との他方の接合端部6に設けられた溝部6bを含む)も含まれる。
なお、溝部6bは、外筐体2の他方の接合端部6を形成する周壁2cと、内筐体3の他方の接合端部6を形成する周壁3cとの先端側に設けられた部位である。
【0046】
外筐体2の大径円筒部と、内筐体3の大径円筒部とを径方向に重なるように配置するとともに、両者の開口端を面一にして、面一に配置された両者の先端を溶接により接合すると、真空二重構造体1Aの一方の接合端部5が形成される。
【0047】
この状態では、径方向における、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の小径円筒部との間には、隙間Sが全周にわたって設けられる。
上記隙間Sを含むラジアルギャップ部7の下部に浸透したろう材Bを介して外筐体2の周壁2cと、内筐体3の周壁3cとが接合され(以下、このようなろう付けにより接合された部分(図中のBで示す部分)を「ろう付け接合部」と言う。)、真空二重構造体1Aの他方の接合端部6が形成される。
つまり、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の小径円筒部とが接合されている。
なお、必ずしも外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の小径円筒部とが接合される必要はなく、使用するろう材の量によっては、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3のテーパー部とをさらに接合することもできる。
【0048】
本実施形態の真空二重構造体1Cでは、他方の接合端部6における内筐体3の小径円筒部の開口端が全周にわたって内側になだらかに曲面をもって折り返されているため、外筐体2の内側に内筐体3を収容する際に、外筐体2の他方の接合端部6を形成する周壁2cの内側に、内筐体3の他方の接合端部6を形成する周壁3cが挿入し易くなっている。
【0049】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Cでは、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7を形成する真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Cの剛性を高めることが可能である。
【0050】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Cでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Cの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0051】
本実施形態の真空二重構造体1Cを製造する際は、上記真空二重構造体1Aを製造する場合と同様の方法を用いることができる。すなわち、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合すればよい。
【0052】
具体的には、まず、外筐体2の他方の接合端部6を形成する小径円筒部と、内筐体3の小径円筒部との隙間Sに形成された(外筐体2の他方の接合端部6を形成する周壁2cと、内筐体3の他方の接合端部6を形成する周壁3cとの先端側に設けられた)溝部6bにろう材Bを配置する。
【0053】
そして、他方の開口端側を上方に向けた状態で、外筐体2と内筐体3とをチャンバー内に設置した後、チャンバー内を高真空に減圧(真空引き)する。その後、このチャンバー内で、真空二重構造体1Cを加熱する。
【0054】
これにより、ろう材Bが溶融し、溝部6bに溜まり、毛細現象により隙間Sに浸透することになる。そして、加熱終了後は、硬化したろう材Bを介して互いの周壁2c、3cが全周に亘って接合された状態となる。なお、ろう材は、内筐体3の小径円筒部と、外筐体2の小径円筒部との間だけではなく、内筐体3の小径円筒部と、外筐体のテーパー部との間にまで浸透してもよい。
【0055】
なお、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合する際は、上述した真空二重構造体1Aを製造する場合と同様に、ラジアルギャップ部7を形成する外筐体2の内周壁および内筐体3の外周壁の少なくとも一方にろう材Bを配置し、他方の開口端側を下方に向けた状態で、チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を隙間Sに浸透させる方法を用いることも可能である。
【0056】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Cを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Cをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Cを一括して製造することが可能である。
【0057】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態として、例えば
図5(A)~(D)に示す真空二重構造体1Dについて説明する。なお、
図5は、真空二重構造体1Dの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記真空二重構造体1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0058】
本実施形態の真空二重構造体1Dは、
図5(A)~(D)に示すように、他方の接合端部6の形状が異なる以外は、上記真空二重構造体1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0059】
つまり、外筐体2は、大径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とをなだらかに接続するように設けられたテーパー部と、小径円筒部から徐々に拡径するテーパー部とを具備する。上記小径円筒部から拡径するテーパー部の開口端が他方の接合端部6となっている。
内筐体3は、大径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とを連結するテーパー部とを具備する。上記小径円筒部の開口端が他方の接合端部6となっている。
上記外筐体2の小径円筒部の内周壁と、内筐体3の小径円筒部の外周壁との間には、全周にわたって隙間Sが設けられている。また、外筐体2においては、小径円筒部から拡径するテーパー部が設けられているため、他方の接合端部6には、溝部6bが形成されている(換言すると、溝部6bは、外筐体2の他方の接合端部6を形成する周壁2cと、内筐体3の他方の接合端部6を形成する周壁3cとの先端側に設けられている)。
【0060】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Dでは、従来のような脱気孔を外筐体2に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7を形成する真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Dの剛性を高めることが可能である。
【0061】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Dでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Dの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0062】
本実施形態の真空二重構造体1Dを製造する際は、上記真空二重構造体1Aを製造する場合と同様の方法を用いることができる。
すなわち、まずは、外筐体2と内筐体3との一方の接合端部5をなす周壁2b、3bを溶接により接合する。
つまり、外筐体2の大径円筒部と、内筐体3の大径円筒部とを径方向に重なるように配置するとともに、両者の開口端を面一にして、面一に配置された両者の先端を溶接により接合することにより、真空二重構造体1Dの一方の接合端部5が形成する。
次いで、高真空に減圧されたチャンバー内で、外筐体2と内筐体3との他方の接合端部6をなす周壁2c、3cを、ろう材Bによりろう付けにより接合すればよい。
【0063】
具体的には、まずは外筐体2のテーパー部と、内筐体3の小径円筒部とで形成された(外筐体2の他方の接合端部6を形成する周壁2cと、内筐体3の他方の接合端部6を形成する周壁3cとの先端側に設けられた)溝部6bにろう材Bを配置する。
【0064】
そして、他方の開口端側を上方に向けた状態で、外筐体2と内筐体3とをチャンバー内に設置した後、チャンバー内を高真空に減圧(真空引き)する。その後、このチャンバー内で、外筐体2と内筐体3とを加熱する。
【0065】
これにより、溝部6bでろう材Bが溶融し、溝部6bから毛細現象により隙間Sに浸透することになる。そして、加熱終了後は、硬化したろう材Bを介して内筐体3の周壁3cおよび外筐体2の周壁2cが全周に亘って接合された状態となる。
【0066】
なお、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合する際は、上述した真空二重構造体1Aを製造する場合と同様に、ラジアルギャップ部7を形成する外筐体2の内周面と内筐体3の外周面との少なくとも一方にろう材Bを配置し、他方の開口端側を下方に向けた状態で、チャンバー内を高真空に減圧した後に、加熱することによって溶融したろう材を隙間Sに浸透させる方法を用いることも可能である。
【0067】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Dを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Dをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Dを一括して製造することが可能である。
【0068】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態として、例えば
図6(A)~(D)に示す真空二重構造体1Eについて説明する。なお、
図6は、真空二重構造体1Eの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記真空二重構造体1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0069】
本実施形態の真空二重構造体1Eは、
図6(A)~(D)に示すように、他方の接合端部6の構成が異なる。本実施形態の真空二重構造体1Eは、外筐体2と、内筐体3との他に、ろう受部材8を具備する点で相違する以外は、上記真空二重構造体1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0070】
外筐体2は、大径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とをなだらかに連結するように設けられたテーパー部とを具備する。
内筐体3も、大径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とを連結するテーパー部とを具備する。
本実施形態の真空二重構造体1Eでは、他方の接合端部6において、ラジアルギャップ部7を形成する外筐体2と内筐体3との間から隙間Sに浸透したろう材Bを介して、少なくとも互いの周壁部である、小径円筒部が接合されると共に、互いの小径円筒部の先端にろう材Bを介してろう受部材8が貼り付けられている。
なお、このろう材Bは、外筐体2のテーパー部にまで浸透してもよい。
ろう受部材8は、例えば銅箔などの金属シム状プレート(箔状)であり、加熱時に溶融したろう材Bが溜まるように、他方の開口端と対向する部分を挟んで外筐体2外周側及び内筐体3の内周側に折り返された形状を有している。
【0071】
本実施形態の真空二重構造体1Eでは、他方の接合端部6をこのような構成とすることで、この他方の接合端部6における接合強度を高めることが可能である。
【0072】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Eでは、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7を形成する真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Eの剛性を高めることが可能である。
【0073】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Eでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Eの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0074】
本実施形態の真空二重構造体1Eを製造する際は、上記真空二重構造体1Aを製造する場合と同様の方法を用いることができる。すなわち、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合すればよい。
【0075】
次いで、ろう受部材8の内側に溜められたろう材Bにより、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合する。
【0076】
具体的に、この他方の開口端側をろう付けにより接合する工程について、
図7を参照しながら説明する。なお、
図7は、真空二重構造体1Eの製造工程を説明するための図であり、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合する状態を示す断面図である。
【0077】
まずは、ろう受部材8にろう材Bを予め配置しておく。なお、ろう材Bは、ラジアルギャップ部7を形成する外筐体2の内周面と内筐体3の外周面との少なくとも一方に予め配置しておくことも可能である。
【0078】
他方の開口端側をろう付けにより接合する際は、
図7に示すように、他方の接合端部6を形成する外筐体2の周壁2cと、他方の接合端部6を形成する内筐体3の周壁3cとを径方向に隙間Sを設けて配置すると共に、他方の開口端に対向してろう材Bが入ったろう受部材8を配置する。
【0079】
このとき、他方の開口端において、互いの周壁2c,3cの先端面が揃っている必要がある。一方の開口端側を溶接により接合した後に、外筐体2及び内筐体3の他方の開口端側を切削加工により切り揃えることが可能である。これにより、外筐体2及び内筐体3の他方の開口端側の寸法精度を気にすることなく、他方の開口端において、互いの周壁2c,3cの先端面を揃えることが可能であり、製造工程を簡便化することが可能である。
【0080】
そして、他方の開口端側を下方に向けた状態で、外筐体2、内筐体3、およびろう受部材8をチャンバー内に設置した後、チャンバー内を高真空に減圧(真空引き)する。その後、このチャンバー内で、外筐体2、内筐体3、およびろう受部材8を加熱する。
【0081】
これにより、ろう材Bが溶融し、ろう受部材8の内側に溜まったろう材Bは毛細現象により隙間Sに浸透することになる。そして、加熱終了後は、硬化したろう材Bを介して少なくとも互いの小径円筒部が全周に亘って接合された状態となる。また、ろう受部材8が他方の開口端に貼り付けられた状態となる。これにより、他方の開口端側をろう受部材8により確実に封止することが可能である。
さらに、ろう受部材8の内側にろう材Bを溜めた状態で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合した場合は、ろう材Bの落下を防ぐと共に、ろう付け後の状態を容易に確認することが可能である。
【0082】
他方の接合端部6の接合後は、ろう受部材8のうち、他方の開口端に貼り付けられた部分から不要な部分を除去する。これにより、上記真空二重構造体1Eを作製することが可能である。
【0083】
なお、ろう受部材8については、ろう付け後に、必ずしも不要な部分を除去する必要はなく、このような工程を省略することも可能である。この場合、ろう受部材8の底面部の幅が、外筐体2の厚さと、内筐体3の厚さと、隙間Sとの合計であるものを用いることが好ましい。さらに、ろう受部材8をチャンバー内に真空二重構造体1Eを設置するための台座として用いてもよい。
なお、ろう受部材8は、ろう付け後に完全に除去することも可能である。
【0084】
また、他方の開口端側をろう付けにより接合する際は、上述した他方の開口端側を下方に向けた状態で、この他方の開口端に対向してろう受部材8を配置する方法に限らず、他方の開口端側を上方に向けた状態で、この他方の開口端にろう受部材8を配置することも可能である。この場合、ろう受部材8底面部にスリットを設けて、ろう受部材8内で溶融したろう材Bがスリットを通して他方の開口端側へと流れ込むようにすればよい。
【0085】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Eを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Eをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Eを一括して製造することが可能である。
【0086】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態として、例えば
図8(A)~(D)に示す真空二重構造体1Fについて説明する。なお、
図8は、真空二重構造体1Fの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記真空二重構造体1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0087】
本実施形態の真空二重構造体1Fは、
図8(A)~(D)に示すように、他方の接合端部6の構成が異なる以外は、上記真空二重構造体1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0088】
上記真空二重構造体1Aが具備する内筐体3は、大径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とを連結するテーパー部とを具備する。
外筐体2は、円筒部と、円筒部の下端に設けられたろう受部2rとを具備する。このろう受部2rは、内筐体3の小径円筒部の内周側へと折り返された、上に凹のさら形状を有する。凹部の平坦な底面部に内筐体3の小径円筒部の先端が接する。
【0089】
本実施形態の真空二重構造体1Fでは、他方の接合端部6をこのような構成とすることで、外筐体2の内側に内筐体3を収容する際に、互いの開口端の位置合わせが容易となっている。また、この他方の接合端部6における機械的強度(剛性)を高めることが可能である。
【0090】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Fでは、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7を形成する真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Fの剛性を高めることが可能である。
【0091】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Fでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Fの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0092】
本実施形態の真空二重構造体1Fを製造する際は、上記真空二重構造体1Aを製造する場合と同様の方法を用いることができる。
すなわち、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合すればよい。
【0093】
他方の開口端を形成するには、まず、内筐体3の内側に位置するろう受部2rにろう材Bを溜める。なお、ろう材Bは、ラジアルギャップ部7を形成する、外筐体2と内筐体3との間に予め配置しておくことも可能である。
【0094】
次いで、ろう受部2rの底面部に内筐体3の他方の接合端部6を形成する周壁3cを軸線方向に突き合わせた状態で配置する。
【0095】
そして、他方の開口端側を下方に向けた状態で、外筐体2と、内筐体3とをチャンバー内に設置した後、チャンバー内を高真空に減圧(真空引き)する。その後、このチャンバー内を加熱する。
【0096】
これにより、溶融したろう材Bがろう受部2rに溜まった状態で、内筐体3の内壁の全周にいきわたる。そして、加熱終了後は、硬化したろう材Bを介して内筐体3の小径円筒部と、外筐体2のろう受部とが全周に亘って接合された状態となる。
なお、ろう受部2rの内側にろう材Bを溜めた状態で、外筐体2と内筐体3との他方の接合端部6をろう付けにより接合した場合は、ろう材Bの落下を防ぐと共に、ろう付け後の状態を容易に確認することが可能である。
【0097】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Fを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Fをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Fを一括して製造することが可能である。
【0098】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態として、例えば
図9(A)~(D)に示す真空二重構造体1Gについて説明する。なお、
図9は、真空二重構造体1Gの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記真空二重構造体1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0099】
本実施形態の真空二重構造体1Gは、
図9(A)~(D)に示すように、他方の接合端部6の構成が異なる以外は、上記真空二重構造体1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0100】
内筐体3は、大径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とを連結するテーパー部とを具備する。
外筐体2は、円筒部と、円筒部の下端に設けられたろう受部2rとを具備する。このろう受部2rは内筐体3の小径円筒部の内周側へと折り返された上に凹のさら形状を有する。ろう受部2rの内筐体の内側に位置する周端2dが他方の開口部6aを形成する。また、ろう受部2rの凹部の平坦な底面部に内筐体3の小径円筒部の先端が当接する。
そして、他方の接合端部6において、ラジアルギャップ部7を形成する外筐体2と内筐体3との間からろう受部2rに溜まったろう材Bを介して他方の接合端部をなす内筐体3の周壁3cと外筐体2の周壁2cとが接合されている。
より具体的には、外筐体2のろう受部2rと、内筐体3の小径円筒部とが接合されている。
【0101】
本実施形態の真空二重構造体1Gでは、他方の接合端部6をこのような構成とすることで、外筐体2の内側に内筐体3を収容する際に、互いの開口端の位置合わせが容易となっている。また、この他方の接合端部6における機械的強度(剛性)を高めることが可能である。
【0102】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Gでは、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7を形成する真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Gの剛性を高めることが可能である。
【0103】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Gでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Gの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0104】
本実施形態の真空二重構造体1Gを製造する際は、上記真空二重構造体1Aを製造する場合と同様の方法を用いることができる。すなわち、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合すればよい。
【0105】
また、本実施形態の真空二重構造体1Gを製造する際は、ラジアルギャップ部7を形成する外筐体2と内筐体3との間ろう材Bを溜めた状態で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合する。
【0106】
具体的には、まず、ろう材Bを、例えば内筐体3の小径円筒部に配置する。次いで、外筐体2のろう受部の凹部である平坦な底面部に、内筐体3の小径円筒部の先端を軸線方向に突き合わせた状態で配置する。
【0107】
そして、他方の開口端側を下方に向けた状態で、他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Gをチャンバー内に設置した後、チャンバー内を高真空に減圧(真空引き)する。その後、このチャンバー内で、真空二重構造体1Gを加熱する。
【0108】
これにより、溶融したろう材Bが他方の開口端側へと流れ込み、ろう受部に溜まった状態となる。そして、加熱終了後は、硬化したろう材Bを介して外筐体2のろう受部と、内筐体3の小径円筒部とが全周に亘って接合された状態となる。
このように、ろう受部2rの内側にろう材Bを溜めた状態で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合した場合は、ろう材Bの落下を防ぐことができる。
【0109】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Gを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Gをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Gを一括して製造することが可能である。
【0110】
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態として、例えば
図10(A)~(D)に示す真空二重構造体1Hについて説明する。なお、
図10は、真空二重構造体1Hの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記真空二重構造体1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0111】
本実施形態の真空二重構造体1Hは、
図10(A)~(D)に示すように、他方の接合端部6の構成が異なる以外は、上記真空二重構造体1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0112】
上記外筐体2は円筒部で構成されている。
内筐体3は、大径円筒部と、それよりも径の小さい小径円筒部と、大径円筒部と小径円筒部とを連結するテーパー部と、小径円筒部に設けられたろう受部3rとを具備する。ろう受部3rは、内筐体3の小径円筒部の下端に設けられた底面部と、底面部の外周から立ち上がるフランジ部とを具備する。上記底面部は、小径円筒部に対して略直角に位置し、そして小径円筒部の全周にわたって設けられている。
【0113】
上記外筐体2の円筒部と、内筐体3の大径円筒部とが径方向において接するように、かつ両者の先端が面一になるように配置されている。そして面一の先端が溶接により接合され、一方の接合端部5が形成されている。
外筐体2よりも外周側に位置するろう受部3rに溜まったろう材Bを介して、外筐体2の円筒部と、内筐体3のろう受部3rとが接合され、他方の接合端部6が形成されている。
【0114】
本実施形態の真空二重構造体1Hでは、他方の接合端部6をこのような構成とすることで、内筐体3の外側に外筐体2を配置する際に、互いの開口端の位置合わせが容易となっている。また、この他方の接合端部6における機械的強度(剛性)を高めることが可能である。
【0115】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Hでは、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7を形成する真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Hの剛性を高めることが可能である。
【0116】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Hでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Hの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0117】
本実施形態の真空二重構造体1Hを製造する際は、上記真空二重構造体1Aを製造する場合と同様の方法を用いることができる。すなわち、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側周壁2c、3cをろう付けにより接合すればよい。
【0118】
具体的には、まず、ろう受部3rにろう材Bを予め配置しておく。
図10では、外筐体2の外側に位置するろう受部3rにろう材Bを配置したが、ラジアルギャップ部7を形成する外筐体2と内筐体3との間に予め配置しておくことも可能である。
次いで内筐体3のろう受部3rの底面部に対して、外筐体2を軸線方向に突き合わせた状態で配置する。
なお、
図10に示すように、外筐体2の外側に位置するろう受部3rにろう材Bを配置する場合、外筐体2と内筐体3とを突き合せた状態で配置したのち、ろう材を配置することもできる。
【0119】
そして、他方の開口端側を下方に向けた状態で、内筐体3と外筐体2とをチャンバー内に設置した後、チャンバー内を高真空に減圧(真空引き)する。その後、このチャンバー内で、真空二重構造体1Hを加熱する。
【0120】
これにより、溶融したろう材Bがろう受部3rに溜まった状態で、外筐体2の全周に行き渡る。そして、加熱終了後は、硬化したろう材Bを介して外筐体2と内筐体との周壁2c、3cが全周に亘って接合された状態となる。
さらに、ろう受部にろう材Bを溜めた状態で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合した場合は、ろう材Bの落下を防ぐと共に、ろう付け後の状態を容易に確認することが可能である。
【0121】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Hを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Hをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Hを一括して製造することが可能である。
【0122】
(第9の実施形態)
次に、本発明の第9の実施形態として、例えば
図11(A)~(D)に示す真空二重構造体1Iについて説明する。なお、
図11は、真空二重構造体1Iの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記真空二重構造体1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0123】
本実施形態の真空二重構造体1Iは、
図11(A)~(D)に示すように、一方の接合端部5及び他方の接合端部6の構成が異なる以外は、上記真空二重構造体1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0124】
外筐体2は、小径円筒部と、大径円筒部と、小径円筒部と大径円筒部とをなだらかに接続するテーパー部とを具備する。
内筐体3は、円筒部と、円筒部の下端に設けられたろう受部3rとを具備する。このろう受部3rは、外筐体2の大径円筒部の先端に接するように設けられた上に凹の受け皿形状であり、その外周端は外筐体2の大径円筒部よりも外側に位置する。
【0125】
真空二重構造体1Iでは、外筐体2の一方の接合端部5を形成する円筒状の周壁2bと、内筐体3の一方の接合端部5を形成する円筒状の周壁3bとが径方向に重なるように配置されている。そして、一方の接合端部5において、互いの周壁2b,3bの先端(外筐体2及び内筐体3の開口端)が溶接により接合されている。
より具体的には、真空二重構造体1Iでは、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の円筒部とが径方向に重なるように、かつその先端が面一になるように配置されている。そして、外筐体2の小径円筒部の先端と、内筐体3の円筒部の先端とが(外筐体2及び内筐体3の開口端)が溶接により接合されて、一方の接合端部5を形成する。
【0126】
真空二重構造体1Iでは、ろう受部に溜まったろう材Bを介して、外筐体2の大径円筒部と、内筐体3のろう受部とが接合されて、他方の接合端部6を形成する。
【0127】
本実施形態の真空二重構造体1Iでは、他方の接合端部6をこのような構成とすることで、外筐体2の内側に内筐体3を収容する際に、互いの開口端の位置合わせが容易となっている。また、この他方の接合端部6における機械的強度(剛性)を高めることが可能である。
【0128】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Iでは、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7を形成する真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Iの剛性を高めることが可能である。
【0129】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Iでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Iの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0130】
本実施形態の真空二重構造体1Iを製造する際は、上記真空二重構造体1Aを製造する場合と同様の方法を用いることができる。すなわち、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合すればよい。
【0131】
具体的には、まず、内筐体3のろう受部3rに、外筐体2の大径円筒部の先端を軸線方向に突き合わせた状態で配置する。
【0132】
次いで、ろう受部3rの外筐体2の外側にろう材Bを配置する。なお、ろう材Bは、内筐体3および外筐体2を配置する前に予め上記場所に配置することも可能であるし、さらにラジアルギャップ部7を形成する外筐体2と内筐体3との間に予め配置しておくことも可能である。
【0133】
そして、他方の開口端側を下方に向けた状態で、他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Iをチャンバー内に設置した後、チャンバー内を高真空に減圧(真空引き)する。その後、このチャンバー内で、真空二重構造体1Iを加熱する。
【0134】
これにより、溶融したろう材Bがろう受部3rに溜まった状態で、外筐体2の全周に行き渡る。そして、加熱終了後は、硬化したろう材Bを介して外筐体2の大径円筒部と、内筐体3のろう受部とが全周に亘って接合された状態となる。
ろう受部にろう材Bを溜めた状態で、外筐体2と内筐体3とをろう付けにより接合した場合は、ろう材Bの落下を防ぐと共に、ろう付け後の状態を容易に確認することが可能である。
【0135】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Iを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Iをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Iを一括して製造することが可能である。
【0136】
(第10の実施形態)
次に、本発明の第10の実施形態として、例えば
図12(A)~(D)に示す真空二重構造体1Jについて説明する。なお、
図12は、真空二重構造体1Jの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記真空二重構造体1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0137】
本実施形態の真空二重構造体1Jは、
図12(A)~(D)に示すように、一方の接合端部5及び他方の接合端部6の構成が異なる以外は、上記真空二重構造体1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0138】
外筐体2は、小径円筒部と、それよりも径の大きい大径円筒部と、小径円筒部と大径円筒部とを連結するテーパー部とを具備する。
内筐体3は、円筒部と、円筒部の下端に設けられたろう受部3rとを具備する。このろう受部3rは、内筐体3の円筒部の下端に設けられた底面部と、底面部の外周から立ち上がるフランジ部とを具備する。上記底面部は、円筒部に対して略直角に位置し、そして小径円筒部の全周にわたって設けられている。
【0139】
真空二重構造体1Jでは、外筐体2の一方の接合端部5を形成する円筒状の周壁2bと、内筐体3の一方の接合端部5を形成する円筒状の周壁3bとが径方向に重なるように配置されている。そして、一方の接合端部5において、互いの周壁2b,3bの先端(外筐体2及び内筐体3の開口端)が溶接により接合されている。
より具体的には、真空二重構造体1Jでは、上記外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の円筒部とが径方向において重なるように、かつ両者の先端が面一になるように配置されている。そして面一の先端が溶接により接合され、一方の接合端部5が形成されている。
他方の接合端部6では、ろう受部3rに溜まったろう材Bを介して互いの周壁2c,3cが接合されている。
より具体的には、外筐体2の外周側のろう受部3rに溜まったろう材Bを介して、外筐体2の大径円筒部と、内筐体3のろう受部とが接合され、他方の接合端部6が形成されている。
この真空二重構造体1Jでは、内筐体3と外筐体2とが上記形状を有するため、一方の接合端部5により円形状に形成された一方の開口部5aの径と、他方の接合端部6により円形状に形成された他方の開口部6aの径とが等しくなっている。
【0140】
本実施形態の真空二重構造体1Jでは、他方の接合端部6をこのような構成とすることで、外筐体2の内側に内筐体3を収容する際に、互いの開口端の位置合わせが容易となっている。また、この他方の接合端部6における機械的強度(剛性)を高めることが可能である。
【0141】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Jでは、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7を形成する真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Jの剛性を高めることが可能である。
【0142】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Jでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Jの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0143】
本実施形態の真空二重構造体1Jを製造する際は、上記真空二重構造体1Aを製造する場合と同様の方法を用いることができる。すなわち、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合すればよい。
【0144】
また、本実施形態の真空二重構造体1Jを製造する際は、ろう受部3rにろう材Bを溜めた状態で、外筐体2と内筐体3との他方の接合端部6をろう付けにより接合する。
【0145】
具体的には、内筐体3のろう受部3rに、外筐体2の大径円筒部の先端を軸線方向に突き合わせた状態で配置する。
【0146】
次に、外筐体2の外周側のろう受部3rにろう材Bを配置する。なお、ろう材Bは、内筐体3および外筐体2を配置する前に予め上記場所に配置することも可能であるし、さらにラジアルギャップ部7を形成する外筐体2と内筐体3との間に予め配置しておくことも可能である。
【0147】
そして、他方の開口端側を下方に向けた状態で、内筐体3と外筐体2とをチャンバー内に設置した後、チャンバー内を高真空に減圧(真空引き)する。その後、このチャンバー内で、真空二重構造体1Jを加熱する。
【0148】
これにより、溶融したろう材Bがろう受部3rの全周に行き渡る。そして、加熱終了後は、硬化したろう材Bを介して外筐体2の大径円筒部と、内筐体3のろう受部とが全周に亘って接合された状態となる。
ろう受部にろう材Bを溜めた状態で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合した場合は、ろう材Bの落下を防ぐと共に、ろう付け後の状態を容易に確認することが可能である。
【0149】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Jを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Jをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Jを一括して製造することが可能である。
【0150】
(第11の実施形態)
次に、本発明の第11の実施形態として、例えば
図13(A)~(D)に示す真空二重構造体1Kについて説明する。なお、
図13は、真空二重構造体1Kの構成を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図、(C)はその一端側から見た正面図、(D)はその他端側から見た正面図である。また、以下の説明では、上記真空二重構造体1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0151】
本実施形態の真空二重構造体1Kは、
図13(A)~(D)に示すように、一方の接合端部5及び他方の接合端部6の構成が異なる以外は、上記真空二重構造体1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0152】
外筐体2は、両端に設けられた小径円筒部と、小径円筒部の間に設けられた、小径円筒部よりも径の大きい大径円筒部と、小径円筒部と大径円筒部とを連結する2か所のテーパー部とを具備する。
内筐体3は、円筒部と、円筒部の下端に設けられたろう受部3rとを具備する。このろう受部3rは、内筐体3の円筒部の下端に設けられた底面部と、底面部の外周から立ち上がるフランジ部とを具備する。上記底面部は、円筒部に対して略直角に位置し、そして円筒部の全周にわたって設けられている。
【0153】
真空二重構造体1Kでは、外筐体2の一方の接合端部5を形成する円筒状の周壁2bと、内筐体3の一方の接合端部5を形成する円筒状の周壁3bとが径方向に重なるように配置されている。そして、一方の接合端部5において、互いの周壁2b,3bの先端(外筐体2及び内筐体3の開口端)が溶接により接合されている。
より具体的には、真空二重構造体1Kでは、一方の接合端部5を形成する外筐体2の円筒状の周壁である小径円筒部と、一方の接合端部5を形成する内筐体3の円筒状の周壁である円筒部とが径方向に重なるように、かつその先端が面一になるように配置されている。そして、一方の接合端部5において、小径円筒部と、円筒部との先端(外筐体2及び内筐体3の開口端)が溶接により接合されている。
【0154】
真空二重構造体1Kでは、外筐体2の他方の接合端部6を形成する円筒状の周壁である小径円筒部と、内筐体3の他方の接合端部6を形成する円筒状の周壁である円筒部とが径方向に隙間Sを設けて配置されている。
他方の接合端部6では、ろう受部3rに溜まったろう材Bを介して、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の円筒部とが接合されている。
【0155】
本実施形態の真空二重構造体1Kでは、他方の接合端部6をこのような構成とすることで、外筐体2の内側に内筐体3を収容する際に、互いの開口端の位置合わせが容易となっている。また、この他方の接合端部6における機械的強度(剛性)を高めることが可能である。
【0156】
以上のような構造を有する本実施形態の真空二重構造体1Kでは、従来のような脱気孔を外筐体2の側壁に設けたり、この脱気孔をプレス加工したりする必要がなく、ラジアルギャップ部7を形成する真空層4の厚みを周方向において均一とすることが可能である。これにより、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外筐体2及び内筐体3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外筐体2及び内筐体3の機械的強度が増すことになる。したがって、この真空二重構造体1Kの剛性を高めることが可能である。
【0157】
さらに、本実施形態の真空二重構造体1Kでは、外筐体2及び内筐体3の板厚を薄くすることができ、これら外筐体2と内筐体3との間に設けられた真空層4の厚み(間隔)も小さくすることが可能である。したがって、この真空二重構造体1Kの小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0158】
本実施形態の真空二重構造体1Kを製造する際は、上記真空二重構造体1Aを製造する場合と同様の方法を用いることができる。すなわち、外筐体2と内筐体3との一方の開口端側を溶接により接合した後に、高真空に減圧されたチャンバー内で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合すればよい。
【0159】
また、本実施形態の真空二重構造体1Kを製造する際は、ろう受部にろう材Bを溜めた状態で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合する。
【0160】
つまり、他方の開口端側をろう付けにより接合する際は、内筐体3の他方の接合端部6を形成する周壁3cのろう受部3rに対して、外筐体2の他方の接合端部6を形成する周壁2cの小径円筒部を軸線方向に突き合わせた状態で配置する。
より具体的には、まず内筐体3のろう受部の底面部に、外筐体2の他方側小径円筒部の先端を軸線方向に突き合わせた状態で配置する。
次に、外筐体2の外周側のろう受部3rにろう材Bを配置する。なお、ろう材Bは、内筐体3および外筐体2を配置する前に予め上記場所に配置することも可能であるし、さらにラジアルギャップ部7を形成する外筐体2と内筐体3との間に予め配置しておくことも可能である。
【0161】
そして、他方の開口端側を下方に向けた状態で、内筐体3と外筐体2とをチャンバー内に設置した後、チャンバー内を高真空に減圧(真空引き)する。その後、このチャンバー内で、真空二重構造体1Kを加熱する。
【0162】
これにより、溶融したろう材Bがろう受部に溜まり、毛細現象により隙間Sに浸透する。そして、加熱終了後は、硬化したろう材Bを介して互いの周壁2c,3cが全周に亘って接合された状態となる。より具体的には、外筐体2の小径円筒部と、内筐体3の円筒部およびろう受部3rとが全周に亘って接合された状態となる。
ろう受部にろう材Bを溜めた状態で、外筐体2と内筐体3との他方の開口端側をろう付けにより接合した場合は、ろう材Bの落下を防ぐと共に、ろう付け後の状態を容易に確認することが可能である。
【0163】
以上のように、従来のような脱気孔を外筐体2に設け、この脱気孔をプレス加工するといった工程を行う必要がなく、上述した簡便な工程を経ることによって、本実施形態の真空二重構造体1Kを歩留まり良く製造することが可能である。また、上述した他方の開口端側が接合される前の真空二重構造体1Kをチャンバー内に複数設置することで、複数の真空二重構造体1Kを一括して製造することが可能である。
【0164】
(第12の実施形態)
次に、本発明の第12の実施形態として、例えば
図14及び
図15に示すヘッドホン10が備えるヘッドホン本体11について説明する。なお、
図14は、ヘッドホン10が備えるヘッドホン本体11の外観を示す斜視図である。
図15は、ヘッドホン本体11の構成を示す断面図である。
【0165】
本実施形態のヘッドホン10は、
図14及び
図15に示すように、カナル型のヘッドホン(イヤホン)であり、左右一対のヘッドホン本体11を概略備えている。なお、一対のヘッドホン本体11は、左右対称な構造となる以外は互いに同じ構造を有している。
したがって、以下の説明で特に断りがない限りは、
図14及び
図15に示す一方のヘッドホン本体11を例に挙げて説明するものとする。
【0166】
ヘッドホン本体11は、スピーカーユニット12と、スピーカーユニット12の背面側に配置されたハウジング13と、スピーカーユニット12の前面側に配置されたイヤーピース14と、ハウジング13の背面側に配置された本体ケース15とを有している。
【0167】
スピーカーユニット12は、電気信号を振動に変換して音響を発するものであり、その駆動方式等について特に限定されるものではない。一般に、スピーカーユニット12は、磁気回路と、磁気回路の磁気ギャップ中で移動自在とされたボイスコイルと、ボイスコイルに取り付けられた振動板と、磁気回路及び振動板を支持するフレームとを含むスピーカー本体SPを有して、ボイスコイルに電気信号を供給し、この電気信号に応じて振動板を振動させることによって、音響を発することが可能となっている。
【0168】
イヤーピース14は、例えばシリコーンゴム等の弾性部材からなり、耳穴(外耳道)に差し込むことによって、ヘッドホン本体11を装着可能とするものである。イヤーピース14には、軸線方向に貫通する放音孔14aが設けられている。イヤーピース14は、スピーカーユニット12(スピーカー本体SP)の先端に放音孔14aを差し込むことによって、スピーカーユニット12に取り付けられている。
【0169】
ヘッドホン本体11では、ハウジング13として、上記
図1に示す真空二重構造体1Aが用いられている。また、ヘッドホン本体11では、例えば
図16に示すように、ハウジング13として、上記
図9に示す真空二重構造体1Gを用いることもできる。なお、
図16は、ヘッドホン本体11の別の構成を示す断面図である。
【0170】
ヘッドホン本体11では、このような真空二重構造体1A,1Gをハウジング13として用いることで、このハウジング13の剛性を高めることが可能である。また、ハウジング13の小型化及び軽量化を図ることが可能である。
【0171】
スピーカーユニット12は、
図15及び
図16に示すように、その背面側をハウジング13の内側に向けた状態で、ハウジング13の前面側の開口部(一方の開口部5a)を閉塞した状態で配置されている。
【0172】
具体的に、このスピーカーユニット12は、内筐体3の内側に嵌め込まれた状態で、内筐体3の一方の接合端部5及びラジアルギャップ部7を形成する面に、その外周面の一部を全周に亘って接触させた状態で取り付けられている。これにより、ヘッドホン本体11は、外筐体2を外部に露出した状態で、スピーカーユニット12を一体に保持している。
【0173】
また、ヘッドホン本体11は、ハウジング13の背面側の開口部(他方の開口部6a)を閉塞した状態で、本体ケース15が取り付けられている。具体的に、ハウジング13の背面側の接合端部(他方の接合端部6)は、本体ケース15の前面に設けられた嵌合凹部15aの内側に嵌め合わされている。
【0174】
以上のような構成を有する本実施形態のヘッドホン10では、上述した真空二重構造体1A,1Gをハウジング13として用いることによって、このハウジング13の剛性を高めることが可能である。これにより、スピーカーユニット12からハウジング13へと伝わる不要な振動を抑制しながら、音響再現性に優れたヘッドホン10を得ることが可能である。
【0175】
また、本実施形態のヘッドホン10では、スピーカーユニット12の背面側から放出される音響によってハウジング13の内筐体3が振動しても、真空層4によって内筐体3から外筐体2への振動の伝播が阻止される。これにより、ハウジング13を介して外部に伝播する振動を更に抑制することが可能である。
【0176】
また、本実施形態のヘッドホン10では、内筐体3の一方の接合端部5及びラジアルギャップ部7を形成する面にスピーカーユニット12の一部を接触させた状態で、スピーカーユニット12がハウジング13に取り付けられている。これにより、簡便な構造でありながら、スピーカーユニット12からの不要な振動がハウジング13へと伝わることを防止することが可能である。また、ハウジング13に対するスピーカーユニット12の取り付けも容易であり、部品点数及び組み立工数の削減が可能である。
【0177】
なお、本実施形態のヘッドホン10については、ヘッドホン本体11と電気的に接続されたヘッドホンケーブル(図示せず。)を介して、例えば音響機器やパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器等と接続することによって、これらの機器で再生された音楽等を聴くことが可能である。また、このような構成に必ずしも限定されるものではなく、例えば、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線規格に準じた無線通信機能を付加することによって、この無線通信機能を有した機器等で再生された音楽等をワイヤレスで聴く構成とすることも可能である。
【0178】
また、ヘッドホンの形態としては、上述したカナル型のヘッドホン(イヤホン)10以外にも、例えば、一対のヘッドホン本体がヘッドバンドを介して連結されたオーバーヘッド型のヘッドホンや、ヘッドホン本体に取り付けられたクリップを耳輪に引っ掛けることにより装着可能な耳掛け型のヘッドホン、首の後ろ側から一対のヘッドホン本体を、ネックバンドを介して連結したネックバンド型のヘッドホン、耳珠に引っ掛けることにより装着可能なインナーイヤー型のヘッドホン(イヤホン)などを挙げることができる。
【0179】
また、左右何れか一方のヘッドホン本体のみを備えた片耳型のヘッドホンであってもよい。さらに、ヘッドセットのように、左右何れか一方のヘッドホン本体とマイクとを組み合わせた構成としてもよい。
【0180】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
すなわち、真空二重構造体の外観形状については、特に限定されるものではなく、サイズやデザイン等に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。
【0181】
また、上記実施形態では、ヘッドホンのハウジングに真空二重構造体を適用した場合を例示しているが、真空二重構造体の用途については特に限定されるものではなく、このような真空二重構造体が適用可能なものに対して幅広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0182】
1A~1K…真空二重構造体、2…外筐体、2b…一方の開口端部をなす周壁(周壁)、2c…他方の開口端部をなす周壁(周壁)、2r…ろう受部、3…内筐体、3b…一方の開口端部をなす周壁(周壁)、3c…他方の開口端部をなす周壁(周壁)、3r…ろう受部、4…真空層、5…一方の接合端部、5a…一方の開口部、6…他方の接合端部、6a…他方の開口部、6b…溝部、7…ラジアルギャップ部、8…ろう受部材、10…ヘッドホン、11…ヘッドホン本体、12…スピーカーユニット、13…ハウジング、14…イヤーピース、15…本体ケース、B…ろう材(ろう付け接合部)、S…隙間、W…溶接接合部