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特許7012004シヌクレイノパチーの治療のための薬剤、使用および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】シヌクレイノパチーの治療のための薬剤、使用および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20220203BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220203BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220203BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20220203BHJP
   A61P 25/16 20060101ALN20220203BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20220203BHJP
   A61P 25/02 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/02 103
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018501163
(86)(22)【出願日】2016-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2016066476
(87)【国際公開番号】W WO2017009312
(87)【国際公開日】2017-01-19
【審査請求日】2019-07-08
(31)【優先権主張番号】1512203.9
(32)【優先日】2015-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】カルンキ,ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】フォグ,カリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェステラガー,ルイス,ブーア
(72)【発明者】
【氏名】ベアグストローム,アン-ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ソッティー,フロレンス
(72)【発明者】
【氏名】サティーン,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブリンク,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】パレン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】レードメーカー,リック
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンク,トム
(72)【発明者】
【氏名】マリク,イブラヒム,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】モンテジーニョ,リリアーナ,クリスティーナ,ペレイラ
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-517928(JP,A)
【文献】国際公開第2005/047860(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0208487(US,A1)
【文献】Journal of Neurochemistry,2003年,Vol.86, p.836-847
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00-16/46
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;
(b)配列番号2のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;
(c)配列番号3のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(d)配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1;
(e)配列番号5のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3
を含む、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
配列番号7の重鎖可変領域および配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;
(b)配列番号33のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;
(c)配列番号3のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(d)配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1;
(e)配列番号5のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3
を含む、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
配列番号30の重鎖可変領域および配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;
(b)配列番号34のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;
(c)配列番号3のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(d)配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1;
(e)配列番号5のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3
を含む、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
配列番号31の重鎖可変領域および配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項5に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;
(b)配列番号35のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;
(c)配列番号3のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(d)配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1;
(e)配列番号5のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3
を含む、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
配列番号32の重鎖可変領域および配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項7に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
(a)配列番号20のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;
(b)配列番号21のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;
(c)配列番号22のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(d)配列番号23のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1;
(e)配列番号24のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2;および
(f)配列番号25のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3
を含む、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
配列番号26の重鎖可変領域および配列番号27の軽鎖可変領域を含む、請求項9に記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
無傷の抗体を含むかまたはそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体が、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の抗体からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
Fvフラグメント、Fab様フラグメントおよびFabフラグメントらなる群から選択される抗原結合フラグメントを含むかまたはそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
ヒト組み換えまたはキメラ抗体である、請求項1~13のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体またはフラグメントをコードする核酸。
【請求項16】
治療に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
シヌクレイノパチー、またはパーキンソン病、特発性および遺伝性のパーキンソン病、ゴーシェ病(GD)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症または多系統萎縮症を治療するのに使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α-シヌクレインに特異的に結合する新規な種類のモノクローナル抗体、ならびにシヌクレイノパチーの治療および診断にこれらの分子およびそれらのα-シヌクレイン結合フラグメントを使用する方法に関する。
【0002】
配列表の参照:
本出願は、米国特許法施行規則(37 C.F.R.)第1.821条に従う1つまたは複数の配列表(以下参照)を含み、これは、コンピュータ可読媒体(ファイル名:0992_ST25.txt、2016年6月22日に作成され、44kBのサイズを有する)で開示され、このファイルは、全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
レビー小体病(LBD)としても知られているシヌクレイノパチーは、タンパク質α-シヌクレインが主要成分であるレビー小体(LB)および/またはレビー神経突起として顕微鏡で見られる細胞内のタンパク質凝集体の堆積によって特徴付けられる(Jellinger,Mov Disord.2012 Jan;27(1):8-30;McKeith et al.,Neurology(1996)47:1113-24)。シヌクレイノパチーとしては、パーキンソン病(PD)(特発性および遺伝性のパーキンソン病を含む)およびびまん性レビー小体(DLB)病(レビー小体認知症(DLB)としても知られている、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病(CAPD)、純粋自律神経不全症(PAF)および多系統萎縮症(MSA;例えば、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症およびシャイ・ドレーガー症候群))が挙げられる。シヌクレイノパチーは、パーキンソン病における主要な運動障害(固縮、運動緩徐、安静時振戦)の原因となるドーパミン作動性黒質線条体系の変性を有することが多いが、中枢神経系、末梢神経系および自律神経系および脳領域ならびに認知症および自律神経系障害などの非運動機能障害に関連する他の器官におけるレビー小体および変性レビー神経突起の広範な発生もある。非運動兆候および症状のいくつかは、パーキンソン病および他のシヌクレイノパチーにおいて運動症状に先立って起こるものと考えられる。このような初期兆候としては、例えば、レム睡眠行動障害(RBD)および嗅覚の低下および便秘が挙げられる(Mahowald et al.,Neurology(2010)75:488-489)。シヌクレイノパチーは、高齢化する人口において運動障害および認知力低下の一般的な原因であり続けている(Galasko et al.,Arch.Neurol.(1994)51:888-95)。
【0004】
α-シヌクレインは、β-およびγ-シヌクレインおよびシノレチン(synoretin)を含むタンパク質のファミリーの1つである。α-シヌクレインは、シナプスに関連して正常な状態で発現され、シナプス小胞放出を調節し、それによって、神経伝達、可塑性、学習および記憶に影響を与えるのに役割を果たすものと考えられる。
【0005】
いくつかの研究により、α-シヌクレインがPD発症に中心的役割を果たすことが示唆されている。タンパク質は、病的状態において、凝集して細胞内の不溶性原線維を形成し得る。例えば、LBにおいてシヌクレインが蓄積する(Spillantini et al.,Nature(1997)388:839-40;Takeda et al.,J.Pathol.(1998)152:367-72;Wakabayashi et al.,Neurosci.Lett.(1997)239:45-8)。稀な家族性パーキンソン病では、α-シヌクレイン遺伝子の突然変異ならびにこの遺伝子の重複および三重重複(triplication)が共分離する(Kruger et al.,Nature Gen.(1998)18:106-8;Polymeropoulos,et al.,Science(1997)276:2045-7)。α-シヌクレインが、細胞外液中に分泌され、血漿および脳脊髄液(CSF)中に存在し得るという重要な発見があった。例えばPacheco et al.(2015)およびその他(Pacheco et al J Neurochem.2015 Mar;132(6):731-4;Conway et al.,Proc Natl Acad Sci USA(2000)97:571-576;Volles et al.,J.Biochem.42:7871-7878,2003)によるいくつかの研究により、細胞外シヌクレインが、脳において病因的役割を果たすことが示唆されている。それらの研究により、細胞外α-シヌクレインオリゴマーが、脳神経細胞膜に対して神経毒性を有することが実証された。シヌクレイン分泌のデータに基づいた別の興味深い仮説は、α-シヌクレインのプリオン様の広がりが、パーキンソン病および他のシヌクレイノパチーの進行の根底にあるというものである(Lee et al.2014,Nat Rev Neurol.2014 Feb;10(2):92-8;Hansen and Li 2012,Trends Mol Med.2012 May;18(5):248-55)。これらの発見により、細胞外シヌクレインが、免疫療法によって標的にされ得るという期待が生じた(Vekrellis et al.2011,Lancet Neurol.2011 Nov;10(11):1015-25)。
【0006】
天然α-シヌクレイン自己抗体は、PD患者および健常対照の両方において存在することが示されており(Smith et al.2012,PLoS One.2012;7(12):e52285;Maetzler et al.2014,PLoS One.2014 Feb 21;9(2):e88604,Papachroni et al.2007 J Neurochem.2007 May;101(3):749-56およびWoulfe et al.2002,Neurology.2002 May 14;58(9):1435-6)、場合により、PDにおいてα-シヌクレインに対する自己抗体の増加されたレベル(Gruden et al.2011,J Neuroimmunol.2011 Apr;233(1-2):221-7,Gruden et al.2012,Neuroimmunomodulation.2012;19(6):334-42およびYanamandra 2011,PLoS One.2011 Apr 25;6(4):e18513)、または健常対照と比較してPD患者におけるα-シヌクレインに対する減少された自己抗体が報告された(Besong-Agbo et al 2013,Neurology.2013 Jan 8;80(2):169-75)。血中抗α-シヌクレイン自己抗体が、α-シヌクレイン凝集に関して保護的役割を果たし得る可能性が、この自己抗体の発見後、ごく早々に示唆された(Woulfe et al.2002,Neurology.2002 May 14;58(9):1435-6)。
【0007】
トランスジェニックマウスにおけるα-シヌクレインの過剰発現は、レビー小体病のいくつかの病理学的側面に類似している。α-シヌクレインを過剰発現するマウスのいくつかの異なる遺伝子導入系が、過去10年間で作成された(以下の報告に記載されている:Koehler et al 2014,PLoS One.2013 May 31;8(5):e64649;Fleming and Chesselet,2006,Behav Pharmacol.2006 Sep;17(5-6):383-91;Springer and Kahle 2006,Curr Neurol Neurosci Rep.2006 Sep;6(5):432-6)。Thy-1およびPDGF-βプロモータを有するマウス系統が、運動障害および認知障害を発症し、インビボでα-シヌクレインに対する抗体の神経保護的効果を実証するのに使用されている。しかしながら、ドーパミン作動性ニューロンの確固たる変性を有する遺伝子導入系はなく、多くの場合、運動表現型が、運動ニューロンにおける発現によって駆動され、これは、通常、パーキンソン病において悪化しない。したがって、潜在的疾患調節治療の好結果が、ドーパミン作動性ニューロンまたは他の中枢神経系ニューロンに対する効果を介して仲介されるかどうかは定かではない。
【0008】
トランスジェニックマウスモデルにおける1つに確固たる発見は、ヒトα-シヌクレインの慢性過剰発現が、シナプス機能を損なうというものであった。インビトロおよびインビボ系の両方における研究を用いて、野生型(wt)ヒトα-シヌクレインの過剰発現が、海馬におけるシナプス伝達を損なったことが示された(Nemani et al.2010,Neuron.2010 Jan 14;65(1):66-79;Paumier et al.2013,PLoS One.2013 Aug 1;8(8):e70274)。これは、海馬のCA1領域において示され、この領域では、両方の研究が減少した基底シナプス伝達を発見した。この背景にある機構は、シナプス放出の機能不全につながるα-シヌクレインの細胞内蓄積であると考えられた。しかしながら、シナプスにおける細胞外空間中へのα-シヌクレインの分泌およびシナプス機能に対するα-シヌクレインオリゴマーの毒性作用に関する最近の発見は、シナプス機能障害における細胞外α-シヌクレインの役割の可能性を開き、ひいては治療用抗体が障害を救う能力に扉を開くものである。
【0009】
α-シヌクレインを過剰発現するためのウイルスベクターの使用は、げっ歯類のPDをモデル化する重要な方法であるが、その理由は、この手法が、マウスまたはラットにおける遺伝子突然変異によってまだ再現されていない特徴である、黒質線条体ニューロンの比較的速い進行性変性を生じるためである(Kirik and Bjorklund,2003,Trends Neurosci.2003 Jul;26(7):386-92)。さらに、ウイルス遺伝子送達は、wt α-シヌクレインが黒質線条体病変を誘発する能力を明らかにし(Kirik et al.2002,J Neurosci.2002 Apr 1;22(7):2780-91)、これは、α-シヌクレイン重複および三重重複を有する家族性のPDのエビデンスと一致する発見である(Lee and Trojanowski,2006,Neuron.2006 Oct 5;52(1):33-8)。ある研究では、α-シヌクレインに対するヤギ抗体のプールが、ドーパミン作動性細胞死からN末端を保護し、パーキンソン病のAAV-α-シヌクレインに基づくラットモデルの行動障害を改善したことが示されている(Shahaduzzaman et al 2015,PLoS One.2015 Feb 6;10(2):e0116841)。
【0010】
α-シヌクレイン病変のプリオン様の広がりは、α-シヌクレイン病変を発現させ、ドーパミン作動性細胞死も発現させることが最近示された(Luk et al.2012,Science.2012 Nov 16;338(6109):949-53)。このモデルは、α-シヌクレイン抗体が、この病変を改善することができることを示すのに使用された(Tran et al.2014,Cell Rep.2014 Jun 26;7(6):2054-65)。このモデルにおいて、抗体治療は、いくつかの脳領域(黒質にドーパミン作動性ニューロンを含む)におけるリン酸化α-シヌクレインの蓄積を減少させ、運動障害の発現を減少させることができた。
【0011】
突然変異に加えて、α-シヌクレイン遺伝子の選択的スプライシングおよびタンパク質の翻訳後修飾(リン酸化、ユビキチン化、ニトロ化、および切断など)が、α-シヌクレインの凝集および/または毒性形態を形成する強化された能力を有するα-シヌクレインタンパク質形態を生じ得る(Beyer and Ariza,Mol Neurobiol.2013 Apr;47(2):509-24)。しかしながら、α-シヌクレインの正確な病理学的な種は、依然として不明である。オリゴマーから原線維に及ぶ様々なミスフォールド/凝集/分泌された種、および様々な翻訳後修飾が、毒性と関連付けられているが、実際に1つの毒性種があった場合でさえ、どれが最も重要かについての意見の一致はない。
【0012】
全体的に、ヒト、マウス、およびハエなどの様々な動物モデルにおける同様の形態学的および神経学的変化を有するα-シヌクレインの蓄積は、この分子が、レビー小体病の発症において中心的な役割を果たすことを示唆している。
【0013】
α-シヌクレインに対するいくつかの異なる抗体が、前臨床動物モデルにおいて治療効果を有することが示されている。α-シヌクレイン残基91~99を含むエピトープを標的にする抗体およびα-シヌクレイン残基118~126を含むエピトープを標的にする抗体は両方とも、トランスジェニックマウスの運動障害および認知障害に対する効果を与えることが示されている(Games et al.2014,J Neurosci.2014 Jul 9;34(28):9441-54)。最先端のこれらの抗体は、α-シヌクレイン残基118~126を含むエピトープを標的にし、現在、臨床試験のフェーズIの段階にある、マウスモノクローナル抗体9E4に基づいたヒト化抗体である。α-シヌクレイン残基120~140を含むエピトープを標的にするC末端抗体274(Bae et al.2012,J Neurosci.2012 Sep 26;32(39):13454-69)も、前臨床モデルにおいて、細胞から細胞への病変の広がりに対する効果を有することが示された。これらに加えて、α-シヌクレインのオリゴマーおよび原線維などの立体配座種を標的にする抗体は、これらのおそらく毒性のα-シヌクレイン種のレベルを少なくとも低下させることができることが示された(Lindstroem et al.2014,Neurobiol Dis.2014 Sep;69:134-43およびSpencer et al.2014,Mol Ther.2014 Oct;22(10):1753-67)。mab47などの、インビボでα-シヌクレインオリゴマーレベルを低下させるこれらの立体配座抗体も、アミノ酸121~125からの、α-シヌクレインのC末端におけるエピトープを標的にすることが示された(米国特許出願公開第20120308572号明細書)。他の立体配座、原線維およびオリゴマー特異的抗体も、C末端配列を標的にする(Vaikath et al.Neurobiol Dis.2015;79:81-99)。
【0014】
α-シヌクレインの毒性形態は不明であるため、治療用抗体は、理想的には、選択的スプライシングまたは翻訳後修飾(切断など)によって形成されるα-シヌクレイン種の大部分、ならびにオリゴマーおよび原線維形態に結合することができるべきである。上述されるように、前臨床モデルにおいて治療薬として試験されている現在の抗体の1つの問題は、それらの多くが、主な切断型のα-シヌクレインのいくつかにおいて見られないC末端エピトープを標的にしていることである。例えば、9E4の結合に重要なアミノ酸は、(米国特許出願公開第20140127131号明細書に示されるアラニンスキャンによれば)アスパラギン122およびチロシン125であり、これは、この抗体が、パーキンソン病脳組織における主な切断種の一部である、アミノ酸119、および122において切断されるα-シヌクレインに結合することができないことを意味する(Kellie et al.Sci Rep.2014;4:5797)。同じことが、抗体274および抗体mab47の場合にも言えるであろう(米国特許第8,632,776号明細書)。また、アミノ末端抗体は、おそらく、アミノ酸5~140に切断されたα-シヌクレインなどの、α-シヌクレインの最初のアミノ酸が欠如した主な切断種のいくつかに結合することができないであろう。9E4抗体の場合、抗体が、プロテアーゼがα-シヌクレインを切断する同じ領域に結合するため、作用機序は、細胞外空間中のアミノ酸119~122における切断の防止であることが示唆された(Games et al.2014,J Neurosci.2014 Jul 9;34(28):9441-54)。同様の作用機序が、この部位にごく近接した抗体でも見られ、したがって、この領域の周りの多くの抗体が、この活性を有することが予測されるであろう。
【0015】
動物モデルにおいて切断α-シヌクレイン種の毒性の役割に対するいくつかの裏付けがある。チロシン-ヒドロキシラーゼプロモータ下での切断α-シヌクレインの発現が、トランスジェニックα-シヌクレインモデルにおいて通常見られない黒質線条体病変につながることが示された(Tofaris et al.2006,J Neurosci.2006 Apr 12;26(15):3942-50;Wakamatsu et al.2006,Neurobiol Aging.2008 Apr;29(4):574-85)。例えば、A53T突然変異を有するヒトα-シヌクレインタンパク質のアミノ酸1~130の発現が、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの胚損失を引き起こした一方、完全長タンパク質の発現はそれを引き起こさなかった(Wakamatsu et al.2006,Neurobiol Aging.2008 Apr;29(4):574-85)。カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIα(CamKII-α)プロモータ中での120アミノ酸α-シヌクレイン分子の発現は、α-シヌクレイン凝集ならびにバーンズ迷路および新奇物体認識を含む皮質-海馬記憶試験における進行的障害に関連付けられた(Hall et al.2015,Exp Neurol.2015 Feb;264:8-13)。また、ラットAAVモデルにおいて、C末端が切断されたα-シヌクレインの共発現は、完全長α-シヌクレイン誘発性の病変を促進した(Ulusoy et al.2010,Eur J Neurosci.2010 Aug;32(3):409-22)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明において、毒性α-シヌクレインフラグメント1~119/122に結合し、この切断型のα-シヌクレインを無効にし得る抗体(実施例に記載されている「GM37」および「GM285」)が生成された。GM37およびGM285などの、本発明の抗体は、他のオリゴマー型のα-シヌクレインに結合し、疾患の拡大を抑えるように他のCNSの常在細胞によるそれらの取り込みを変化させることが可能である。さらに、GM37および285などの、本発明の抗体は、ヒトの脳において異なるα-シヌクレイン種に結合する際に、9E4などの先行技術の抗体より優れていることが意外にも分かり、細胞外α-シヌクレインを除去し、インビボで異常なα-シヌクレインの存在によって誘発されるシナプス伝達障害を正常化するのに意外なほど優れた効果を与える。それらの治療能力をさらに説明すると、GM37および285などの、本発明の抗体は、パーキンソン病のラットモデルにおいて疾患に関連する運動表現型の出現を防ぐことができる。最後に、抗体GM37およびGM285は、初代マウスニューロンにおいて細胞外の加えられた組み換え病理学的α-シヌクレインシードによって誘発される内因性α-シヌクレインの凝集のシーディングおよびリン酸化を阻害することができる。GM37および285などの抗体は、パーキンソン病のマウスモデルを用いて、インビボでドーパミン作動性ニューロンへのα-シヌクレイン病変のシーディングも阻害することができ、これは、病変の細胞間の伝播を防ぐ際のこれらの抗体の治療能力をさらに裏付けている。これらのデータは、合わせて、疾患病変がパーキンソン病患者のニューロン間で広がる機構の阻害によって疾患を修飾することが可能な新しい治療剤としてのこれらの新規な抗体、GM37およびGM285の使用を強く裏付けるものである。
【0017】
本発明のさらなる態様において、GM37抗体の3つのアミノ酸変異体が提供される。全ての変異体は、親抗体、GM37と同様の機能的読み出し(functional readout)を有するが、製造可能性についての改良された特性を有する。これらの変異体は、GM37抗体の結合領域内で起こる翻訳後修飾のリスクを低下させ、抗体の産生のいくらかの改良を提供する。これは、抗体の大規模な臨床的または商業的製造が、複雑でかつ高価であり、薬剤に均質な製品を提供することが、特に免疫グロブリンおよびタンパク質にとって重要であるため、有利である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、α-シヌクレインにおけるアミノ酸112~117(配列番号9(ILEDMP))内のエピトープに特異的に結合することが可能な、新規なモノクローナル抗体、およびその抗原結合フラグメントを提供する。例示的な抗体「GM37」、または「GM285」などの、本発明の抗体またはその抗体結合フラグメントによって結合されるエピトープは、本明細書において「112~117エピトープ」と呼ばれる。本発明の抗体は、112~117エピトープ内のエピトープに特異的に結合し、一実施形態によれば、アミノ酸112~117内のエピトープへの結合について、抗体GM37またはGM285と競合し得る。例えば、本発明に係る抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号7の可変領域からなる重鎖および配列番号8の可変領域からなる軽鎖を有し、ヒトα-シヌクレインのアミノ酸112~117内のエピトープへの結合について競合し得る。このような競合的な結合の阻害は、当該技術分野において周知のアッセイおよび方法を用いて、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)などの非標識結合アッセイを用いて決定され得る。例えば、ヒトα-シヌクレインを表面に固定し、試験される抗体または結合フラグメントを用いたインキュベーションの前に参照抗体‘GM37’を用いてまたは用いずにインキュベートする。あるいは、ペアワイズマッピング手法が使用され得、この手法では、参照抗体‘GM37’が表面に固定され、ヒトα-シヌクレイン抗原が固定抗体に結合され、次に、二次抗体がヒトα-シヌクレインに対する同時結合能力について試験される(開示内容が参照により本明細書に援用される‘BIAcore(登録商標)Assay Handbook’,GE Healthcare Life Sciences,29-0194-00 AA 05/2012を参照)。
【0019】
より詳細には、GM285抗体は、α-シヌクレインの残基112~115(ILED;配列番号19)を含む、α-シヌクレインの残基112~117内のエピトープに結合する。
【0020】
一実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体GM37、その変異体(例えば、GM37変異体1、GM37変異体2およびGM37変異体3)、またはGM285に関する。
【0021】
特に、本発明は、モノクローナル抗体GM37、その変異体(例えば、GM37変異体1、GM37変異体2およびGM37変異体3)、またはGM285を提供し、ヒトシヌクレインに特異的に結合することが可能な結合部位を形成するのに、十分な数(例えば、1、2、または3つ)の軽鎖CDRおよび十分な数(例えば、1、2、または3つ)の重鎖CDRを有するこのような抗体ならびにその誘導体を包含する。好ましくは、このような抗体は、以下に規定されるように、3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRを有する。この領域中のアミノ酸残基の番号付けは、IMGT(登録商標)、国際ImMunoGeneTics情報システム(登録商標)または、Kabat,E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesmann,K.S.& Foeller,C.(1991).Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th edit.,NIH Publication no.91-3242、米国保健福祉省(U.S.Department of Health and Human Services);Chothia,C.& Lesk,A.M.(1987).Canonical structures For the Hypervariable domains Of Immunogloblins.J.Mol.Biol.196,901-917にしたがって行われる。
【0022】
一実施形態において、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能な
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および/または
(b)配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および/または
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;および/または
(d)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および/または
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および/または
(f)配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含むかまたはそれからなるシヌクレイン抗原結合フラグメントを有する。
【0023】
別の実施形態において、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能な
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(b)配列番号33、34または35のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
(d)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
を含むかまたはそれからなるシヌクレイン抗原結合フラグメントを有する。
【0024】
さらに別の実施形態において、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能な
(a)配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;および/または
(b)配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;および/または
(c)配列番号22のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;および/または
(d)配列番号23のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;および/または
(e)配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および/または
(f)配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含むかまたはそれからなるシヌクレイン抗原結合フラグメントを有する。
【0025】
一実施形態において、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、天然抗α-シヌクレイン抗体のものと異なり、かつ(このような天然抗α-シヌクレイン抗体と比べて):
(i)α-シヌクレインに対する結合親和性(KD)の相違;
(ii)α-シヌクレイン原線維のプロテアーゼ切断を阻害する能力の相違;
(iii)F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を改善する能力の相違;
(iv)インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレインのレベルを減少させる能力の相違;および/または
(v)慢性的に投与されるときの、パーキンソン病のラットモデルにおける運動機能を回復させる能力の相違、
(vi)α-シヌクレインのシーディング(インビトロでのおよび/またはパーキンソン病のマウスモデルにおける不溶性リン酸化α-シヌクレインの蓄積など)を防ぐ能力の相違;および/または
(vii)ヒトの脳における切断α-シヌクレインに結合する能力の相違
を示すアミノ酸配列を(そのCDR、その可変領域、そのフレームワーク残基中またはその定常領域中に)含むシヌクレイン抗原結合フラグメントを有する。
【0026】
本発明の抗体およびその抗原結合フラグメントは、パーキンソン病((PD)、特発性および遺伝性のパーキンソン病を含む)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、ゴーシェ病(GD)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病(CAPD)、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症などのシヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするための方法に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ハイブリドーマの作製のための免疫化プロトコルを示す。表は、GM37およびGM285の同定に使用される免疫原およびマウス株の相違を要約している。異なるHCo17-Balb/cおよびHCo12/Balb/cマウスを、別々に免疫した(これらのマウスの説明が以下に示される)。アミノ酸1~140原線維を含有する完全長α-シヌクレインで免疫され、完全長(FL)α-シヌクレイン(配列番号10)の切断α-シヌクレインフラグメント1~60および1~119を投与された(boosted)マウスから、ハイブリドーマ発現GM37を同定した。ハイブリドーマ発現抗体GM285は、HCo12-Balb/cマウスが、完全長モノマーα-シヌクレイン、アミノ酸1~140で免疫され、続いて、完全長線維性α-シヌクレインを投与された免疫化プロトコル(実施例1)から得られた。
図2】(パネルA~C)は、αシヌクレイン、α-シヌクレインホモログおよびオルソログへの結合についてのGM37のスクリーニングを示す。 A)非洗浄溶液ベースのELISA(FMAT)を用いたα-シヌクレインへの抗体GM37の結合。 B)SPR(Fortebio)を用いて、抗体GM37の結合は、α-シヌクレイン(αパネル)に特異的であり、他の関連するシヌクレインファミリータンパク質、β-シヌクレイン(βパネル)およびγ-シヌクレイン(γパネル)に結合しない。SPR(Fortebio Octetred)を用いて測定を行い、GM37は、カニクイザル(カニクイザルパネル)およびマウス(マウスパネル)に由来するα-シヌクレインへの同様の結合を示す(実施例1)。 C)SPR(Fortebio Octetred)を用いて、抗体GM285の結合は、α-シヌクレインに特異的であり、他の関連するシヌクレインファミリータンパク質、β-シヌクレインおよびγ-シヌクレインに結合しない。SPR(Fortebio Octetred)を用いて測定を行い、カニクイザル(カニクイザル)およびマウス(マウス)に由来するα-シヌクレインへのGM285の同様の結合を示す(実施例1)。
図3】(パネルA~C)は、GM37のリアルタイムの結合親和性を示す。 A)SPR(BIAcore(登録商標)3000)によって決定される際の時間(X軸)に対するRU(相対単位(Relative Unit))(y軸)で測定されるα-シヌクレインへの抗体GM37の結合。ヤギ抗ヒトIgGを、CM5チップ上に固定した。GM37を、ヤギ抗ヒトIgG固定化チップ上に捕捉し、一連の濃度のヒトα-シヌクレイン(3.125、6.25、12.5、25、50、100nM)を、表面への結合について試験した。各サイクル間でセンサー表面を再生した。 B)結合曲線に変換される異なる濃度における結合からの信号。 C)抗体GM37(hlgG1-6004-037-C106Sと示される)の計算された結合定数(実施例2)。
図4】(パネルA~C)は、GM285のリアルタイムの結合親和性を示す。 A)SPR(BIAcore(登録商標)3000)によって決定される際の時間(X軸)に対するRU(y軸)で測定されるα-シヌクレインへの抗体GM285の結合。ヤギ抗ヒトIgGを、CM5チップ上に固定した。GM285を、ヤギ抗ヒトIgG固定化チップ上に捕捉し、一連の濃度のヒトα-シヌクレイン(3.125、6.25、12.5、25、50、100nM)を、表面への結合について試験した。各サイクル間でセンサー表面を再生した。 B)結合曲線に変換される異なる濃度における結合からの信号。 C)抗体GM285(hlgG1-6004-285と示される)の計算された結合定数(実施例2)。
図5】(パネルA~C)は、比較用抗体9E4のリアルタイムの結合を示す。 A)SPR(BIAcore(登録商標)3000)によって決定される際の時間(X軸)に対するRU(y軸)で測定されるα-シヌクレインへの9E4の結合を示す。ヤギ抗ヒトIgGを、CM5チップ上に固定した。9E4を、チップに固定されたヤギ抗ヒトIgGへのその結合によってチップ上に捕捉した。一連の濃度のヒトα-シヌクレイン(3.125、6.25、12.5、25、50、100nM)を、表面への結合について試験した。各サイクル間でセンサー表面を再生した。 B)結合曲線に変換される異なる濃度における結合からの信号。 C)抗体9E4についての計算された結合定数(実施例2)。
図6】α-シヌクレインのアミノ酸配列を示す。ヒト脳組織において質量分析法によって特定される主な切断部位(矢印によって示される)(Kellie JF,Higgs RE,Ryder JW,Major A,Beach TG,Adler CH,Merchant K,Knierman MD.Quantitative measurement of intact alpha-synuclein proteoforms from post-mortem control and Parkinson’s disease brain tissue by mass spectrometry.Sci Rep.2014 Jul 23;4:5797.doi:10.1038/srep05797)。
図7】(パネルA~B)は、抗体GM37およびGM285のエピトープマッピングを示す。α-シヌクレインアミノ酸配列95~132に由来する連続ペプチド(20量体)(他の非結合ペプチドは図示されていない)への抗体の結合の相対レベルを示すELISAデータ。 A)GM37エピトープは、完全な結合のためにペプチド配列ILEDMP(配列番号9)を必要とする。 B)GM285は、完全な結合のためにペプチドILED(配列番号19)を必要とする(実施例3)。
図8】(パネルA~B)は、切断型のα-シヌクレインの概略図を示す。 A)GM37/285(ILEDMP;配列番号9)および9E4(NEAYE;配列番号36)の結合エピトープが、α-シヌクレインアミノ酸配列(配列番号10)において太字で示される。矢印は、図6からのc末端切断部位を示す。 B)ヒトの脳物質から同定された主な切断型のα-シヌクレイン。アミノ酸数に基づいたサイズが、右側に示される。完全長α-シヌクレインは、140個のアミノ酸である。エピトープから推論され得るように、GM37、その変異体1~3、およびGM285は、完全長および1~119/122、1~135フラグメントに結合するはずである。抗体9E4は、完全長および1~135フラグメントのみに結合するであろう。切断後に残ったより小さいc末端フラグメントの特異性は示されていない。
図9】抗体GM37およびGM285が、ヒトの脳に由来する完全長α-シヌクレインならびに切断α-シヌクレインを免疫沈降させることを示す。ヒトDLB脳の粗ホモジネートを、試験抗体(ビーズ(抗体なし(No ab))、α-シヌクレインに結合しないB12-ヒトIgG1対照抗体、GM-37、GM37変異体2、GM-285およびマウス(m)9E4)ならびに免疫枯渇させた上清とともにインキュベートし、免疫沈降させた材料をSDS-PAGEにおいて分離した。ウエスタンブロットは、上清から枯渇され、抗体(IP)で免疫沈降された、完全長および様々な切断型のα-シヌクレインを表すバンドを示す。見て分かるように、GM37、GM37v2およびGM285抗体は、上清から主なα-シヌクレイン種を枯渇させ、IPは、これらの種、切断種1~135、1~119/122および完全長αシヌクレインを示す。9E4は、1~119/122種に影響を与えないが、IP完全長および1~135のみに影響を与える(実施例4)。
図10】アミノ酸119/122においてカルパインによって切断されるα-シヌクレイン原線維のタンパク質分解の概略図を示す。α-シヌクレイン原線維(PFF)が、試験抗体を含む(PFF+)かまたは含まない(PFF)培養物に加えられる。GM-37/285の存在は、細胞内の切断α-シヌクレインの形成、および細胞培地への分泌を阻害する。
図11A】GM37が、培地中およびPFFで処理された初代マウス皮質培養物の細胞溶解物中の切断バンド(12KD)の形成を阻害することを示す。タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、ウエスタンブロットして、α-シヌクレインの様々な種を検出した。PFFのみまたは対照抗体(B12)で処理された細胞内で、2つのモノマーα-シヌクレインバンドが、12および14kDaで検出され、これは、それぞれ切断および完全長α-シヌクレインを表す。GM-37の存在下で、12Kdでかすかなバンドがあるに過ぎず、これは、切断の大部分が阻害されることを示す。この効果は、細胞の培地にも反映される。蓄積の相対レベルも、14Kdバンドの相対強度の低下に反映されるように、GM-37の存在によって阻害され得る。あるいは、細胞による取り込みに利用可能な減少した量の14Kdバンドがあり得る(実施例5)。
図11B】抗体GM37、GM37変異体2およびGM285によるα-シヌクレイン原線維のタンパク質分解の用量依存的阻害を示す。低い抗体濃度(0.1ug/ml)における初代マウス皮質培養物に由来する細胞溶解物において、完全長(FL)α-シヌクレインを表すバンドおよびC末端切断(CT)α-シヌクレインを表すバンド(矢印によって示される)の両方がある。抗体濃度を1、5および10ug/mlに増加させると、細胞内のα-シヌクレイン原線維のタンパク質分解の減少につながる。これは、抗体GM37、GM37v2およびGM285の両方で観察される。対照試料は、α-シヌクレインを認識しないヒトIgG1抗体B12で処理される。抗体を加えていない対照(抗体なし)、およびα-シヌクレイン原線維を加えていない細胞(Asynなし)もある。また、α-シヌクレインの総量が、B12または「抗体なし」対照と比較して、37、37v2および285で処理された試料において減少され、これは、全ての3つの抗体が、濃度依存的に細胞内のα-シヌクレインの蓄積を減少させることを示す。ゲルの上部におけるアクチンバンドは、試料の等量の充填を示す(実施例5)。
図12】マウス初代皮質ニューロンにおいてα-シヌクレイン凝集のシーディングおよびα-シヌクレインリン酸化に対するGM37およびGM285の影響を示す。 12A)細胞に、α-シヌクレインの1ngの純粋なシードまたは粗シードのいずれかが播種されるとき、細胞内のスポットまたは点状の染色として現れる、リン酸化α-シヌクレインについて染色された初代ニューロンの画像の例。 12B)可溶性画分および不溶性画分に分離される初代皮質ニューロンからのタンパク質のウエスタンブロット。ブロットを、ヒトα-シヌクレイン特異的抗体(4B12/H a-syn)、ホスホ-Ser-129-α-シヌクレイン特異的抗体(ab51253/pS-a-Syn)およびマウスα-シヌクレイン特異的抗体(D37A2/M a-syn)で染色し、初代ニューロンへの粗シードの添加が、不溶性画分中の内因性マウスα-シヌクレインおよびリン酸化α-シヌクレインおよびα-シヌクレインのより高い分子量の多量体の蓄積をもたらすことを示す。 12C)GM37、GM37変異体2およびGM285は、Cellomics ARRAYSCAN(商標)自動顕微鏡によって、細胞内のα-シヌクレインホスホセリン129陽性スポットの数として定量化されるリン酸化α-シヌクレインの出現を阻害する。GM37、GM37v2およびGM285は、用量依存的に細胞内のリン酸化α-シヌクレインスポットの量を減少させる。 12D)最も高用量の抗体(133nM)で処理され、アクチン、ヒトα-シヌクレイン、リン酸化α-シヌクレインおよびマウスα-シヌクレインについて染色された初代皮質ニューロンからのホモジネートのウエスタンブロットは、抗体37、37v2および285が、不溶性画分中の細胞によって取り込まれるα-シヌクレイン粗シードの切断を阻害することを示す。また、全ての抗体が、不溶性画分中のリン酸化、内因性マウスα-シヌクレインおよびリン酸化マウスα-シヌクレインのより高い分子量の多量体の蓄積を阻害する。ゲルの上部におけるアクチンバンドは、試料の等量の充填を示す(実施例6)。
図13】F28-sncaトランスジェニックマウスおよび月齢をマッチさせた対照マウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける基底シナプス伝達を示す。興奮性シナプス後場電位(fEPSP)を、シャファー側枝に加えられる単一の刺激によって引き起こし、基底シナプス伝達を、刺激強度の関数としてfEPSPの傾きを測定することによって評価した。短期シナプス可塑性を、二発刺激促通(paired-pulse facilitation)の誘発によって評価した。様々な強度の刺激は、0、25、50、75、100、150、200、300、400、および500μAであり、これを低い方から順に連続して加え、各強度で2~3回繰り返す。基底シナプス伝達は、月齢をマッチさせた対照マウスと比較して、野生型α-シヌクレインを過剰発現するF28-sncaトランスジェニックマウスにおいて著しく低下されたことが分かった(実施例7)。
図14】F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける基底シナプス伝達の障害に対する単回用量のヒト9E4(15mg/kg、腹腔内(i.p.))の全身投与の効果を示す。興奮性シナプス後場電位(fEPSP)を、シャファー側枝に加えられる単一の刺激によって引き起こし、基底シナプス伝達を、刺激強度の関数としてfEPSPの傾きを測定することによって評価した。h9E4による急性治療により、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害のかなりの改善が誘発された(Tg-snca+h9E4対Tg-snca+PBS、p=0.002)。しかしながら、h9E4による改善は、PBSで処理された同腹仔と比較して著しく低い基底シナプス伝達によって示されるように部分的であるに過ぎなかった(p=0.007)(実施例7)。
図15】F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける基底シナプス伝達の障害に対する単回用量のヒトGM37(15mg/kg、腹腔内(i.p))またはアイソタイプ対照抗体(B12)の全身投与の効果を示す。興奮性シナプス後場電位(fEPSP)を、シャファー側枝に加えられる単一の刺激によって引き起こし、基底シナプス伝達を、刺激強度の関数としてfEPSPの傾きを測定することによって評価した。GM37による急性治療により、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害の完全な改善が誘発された(Tg-snca+GM37対Tg-snca+B12、p=0.004)(実施例7)。
図16】F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける基底シナプス伝達の障害に対する単回用量のヒトGM285(15mg/kg、腹腔内(i.p))の全身投与の効果を示す。興奮性シナプス後場電位(fEPSP)を、シャファー側枝に加えられる単一の刺激によって引き起こし、基底シナプス伝達を、刺激強度の関数としてfEPSPの傾きを測定することによって評価した。GM285による急性治療により、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害の完全な改善が誘発された(Tg-snca+GM285対Tg-snca+PBS、p=0.001)(実施例7)。
図17】(パネルA~B)は、自由行動F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中の間質液(isf)中のヒトα-シヌクレインのレベルに対するヒト9E4、GM37またはアイソタイプ対照抗体(抗HEL)の全身投与(15mg/kg、腹腔内(i.p.))の効果を示す。抗体処理の前の2~3つの基底値(4時間~6時間)の平均を、ベースラインとして取り、各動物について100%に設定した。反復測定による二元配置分散分析(ANOVA)を用いて、相違を分析した。海馬中のヒトα-シヌクレインの基底レベルは、8.1±1.1ng/mlであった(平均±SEM、n=25、インビトロ透析プローブの回収率に対して補正されない)。GM37の投与により、比較用抗体、ヒト9E4、および対照アイソタイプ、抗HELの両方と比較して、F28マウスの海馬中のヒトα-シヌクレインのより大きな減少が誘発された。GM37で処理された動物または対照抗体の間のα-シヌクレインのレベルのかなりの差を示す時点が、星印によって示される(実施例8)。
図18図19に示されるラットAAVヒトα-シヌクレインモデルにおける抗体処理(下向き矢印)、ウイルス注入および行動評価(実施例9)についての時系列の概略図を示す。
図19】抗体GM37が、ラットAAVモデルにおける長期治療後にパーキンソン病様運動障害を低減し得ることを示す。運動非対称性に対するAAV-ヒト-α-シヌクレインラットにおけるGM37またはPBSによる長期治療の効果が、シリンダー試験において評価される。各ラットを、5分間監視することによって、前足の使用について試験した。右前足の使用(注入と同側)および左前足の使用(反対側+右前足)のパーセンテージを、GFP-PBSラットと比較して各動物について計算した(y軸に示されるように)**p<0.05および0.01。PBSで処理されたラットは依然として、足の使用にかなりの非対称性を有する一方、抗体GM37で処理された動物は、もはや有意な障害を有さない(実施例9)。
図20A-20C】抗体GM37による長期治療が、マウス線条体への病理学的α-シヌクレイン線維性シードの注入によって誘発される病理学的α-シヌクレインリン酸化を低減し得ることを示す。図20Aは、シード注入および細胞計数に関する相対的な処理時間を示す概略図を示す。抗体GM37を、マウスの背側線条体への組み換えα-シヌクレイン線維性シードの注入の1日前、次に、6週間にわたって週に1回投与した。投与計画は、15mg/kg静脈内(iv)または30mg/kg腹腔内(ip)のいずれかであった。図20Bは、注入部位および用量に基づいた血漿中のGM37の曝露レベルを示す。週に1回、試料を新たな抗体用量の注入前に取った。図20Cは、試験の最後における、用量および注入部位に基づいたGM37の曝露レベル(csf)を示す。図20Dは、細胞の数を、GM37またはPBS対照による処理後の黒質中の6つの部分ごとに計数されるリン酸化α-シヌクレイン陽性封入体と比較する。15mg/kg静脈内(iv)および30mg/kg腹腔内(ip)の両方のGM37で処理されたマウスでは、PBSで処理されたマウスと比較して、リン酸化α-シヌクレイン封入体が、細胞内でかなり減少していた(実施例10)。
図21】ヒトα(配列番号10)、β(配列番号37)およびγ(配列番号38)シヌクレインタンパク質のアラインメントを示す。α-シヌクレインと異なるアミノ酸残基がハイライトされる。ギャップはドットで示される。SwissProt番号が括弧内に示される。
図22】α-シヌクレインオルソログ(カニクイザル、配列番号39;ラット、配列番号40;マウス、配列番号41)のアラインメントを示す。ヒトα-シヌクレイン(配列番号10)と異なるアミノ酸残基がハイライトされる。SwissProt番号が括弧内に示される。
図23】GM37(GM37野生型(wt)と名付けられる、および3つのGM37変異体(GM37 var 1、2および3と名付けられる)の一過性発現を示す。星印は、データが、タンパク質A精製および中和後に決定されることを示す。†は、データが、発現培養物の規模(0.4L)に対して、タンパク質Aおよび中和後に得られる収量から計算されることを示す。
図24】ヒトα-シヌクレインへの4つの抗体GM37 wt、GM37 var 1、GM37 var 2およびGM37 var 3の結合を測定する競合ELISAを示す。α-シヌクレインで被覆されたプレートを用いて、増加する濃度のα-シヌクレイン(0~1000nM)を含む各抗体(0.3μg/ml)の溶液中でのプレインキュベーション後に残っている抗体の量を検出する。全ての4つの抗体は、α-シヌクレインへの同様の結合を示す。
図25】GM37wtおよび変異体1~3の結合速度動態パラメータを固定化組み換えヒトα-シヌクレインと比較する表を示す。SPRを用いて結合を測定し、1:1の結合アルゴリズム(BIAcore(登録商標)T200)を用いて結合速度を決定した。
図26】病理学的α-シヌクレイン線維性シードで処理されたマウス初代ニューロン中のリン酸化α-シヌクレインレベルに対するα-シヌクレイン抗体の効果を比較する。初代ニューロンを、4つのGM37、GM37 var 1、GM37 var 2およびGM37 var 3(2μg)の存在下または非存在下で、シード(10ng)で処理した。ニューロンを、3週間後に固定および染色し、α-シヌクレインホスホセリン129陽性スポットについてCellomics ARRAYSCAN(商標)によって分析した。シード単独でまたはシードおよびアイソタイプ対照抗体(B12)で処理された細胞は、かなり増加したレベルのリン酸化を示す。GM37wtおよび3つの変異体で処理された細胞は、α-シヌクレインのリン酸化を阻害することができ、それらは全て、シードを与えられなかった細胞と同じレベルのリン酸化を示す。データが、5つのウェル中で、ウェルにつき7つの画像から決定される平均±SDとして示される。N=2。
図27】wt GM37、var1、var2およびvar3の温度依存的凝集を比較する。抗体のそれぞれの試料を、時間とともに温度を着実に上昇させ、凝集のレベルを、多角度光散乱(Prometheus NT.48,NanoTemper Technologies)によって同時に測定した。凝集開始の温度は、GM37およびGM37-変異体について同様であるが、凝集の最も低いレベルが、GM37-Var2について観察される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
本明細書において使用される際、「α-シヌクレイン」という用語は、「α-シヌクレインタンパク質」と同義であり、α-シヌクレインタンパク質アイソフォーム(例えば、P37840、1-3としてUniProtにおいて同定される)のいずれかを指す。α-シヌクレインのアミノ酸の番号付けは、以下に示されるように配列番号10に対して示され、メチオニン(M)は、アミノ酸残基1である:
【化1】
【0029】
本発明は、α-シヌクレイン、特に、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能な抗体および抗体のフラグメントに関する。特に、抗体およびそのフラグメントは、ヒトα-シヌクレインの112~117内のエピトープに特異的に結合する能力を示す。
【0030】
本発明の文脈における「抗体」(Ab)という用語は、分子(「抗原」)のエピトープに特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、または本発明のある実施形態によれば、免疫グロブリン分子のフラグメントを指す。天然抗体は、典型的に、通常、少なくとも2つの重(H)鎖および少なくとも2つの軽(L)鎖から構成される四量体を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)および、3つの領域(CH1、CH2およびCH3)から構成される重鎖定常領域から構成される。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4サブタイプ)、IgA(IgA1およびIgA2サブタイプ)、IgMおよびIgEを含む任意のアイソタイプのものであり得る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖は、κ鎖およびλ鎖を含む。重鎖および軽鎖可変領域が、典型的に、抗原認識に関与する一方、重鎖および軽鎖定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む、宿主組織または宿主因子への免疫グロブリンの結合を仲介し得る。VHおよびVL領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存される配列の領域が散在する「相補性決定領域」と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4で配置される3つのCDR領域および4つのFR領域から構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含有する。特に関連があるのは、自然界に存在し得るものと異なる物理的環境中で存在するように「単離され」ているか、またはアミノ酸配列中の天然抗体と異なるように修飾された抗体およびそれらの抗原結合フラグメントである。
【0031】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的結合が可能な抗原決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面基(surface grouping)からなり、通常、特定の三次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープおよび線状エピトープは、後者ではなく、前者への結合が、変性溶媒の存在下で常に失われる点で区別される。エピトープは、特異的抗原結合ペプチドによって有効に遮断されるアミノ酸残基(言い換えると、アミノ酸残基は、特異的抗原結合ペプチドのフットプリント内にある)などの、結合に直接関与するアミノ酸残基および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含み得る。「112~117エピトープ」という用語は、112~117ヒトα-シヌクレインの6つのアミノ酸残基のうちの少なくとも4つを含有するヒトα-シヌクレインの領域を指し、112~117エピトープは、ヒトα-シヌクレインの1~111のいずれかの残基(106~111のいずれかの残基を含む)も、ヒトα-シヌクレインの118~140のいずれかの残基(残基118~120を含む)も含まない。本明細書において使用される際、抗体が、112~117エピトープの6つのアミノ酸残基のうちの少なくとも4つに結合することによって、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能である場合、抗体は、「112~117エピトープ」内のエピトープに特異的に結合することが可能であるといわれている。
【0032】
本明細書において使用される際、「抗体の抗原結合フラグメント」という用語は、エピトープに特異的に結合することが可能な抗体のフラグメント、部分、領域(region)または領域(domain)(それがどのように産生されるかにかかわらず(例えば、切断により、組み換えにより、合成的になど))を意味し、したがって、「抗原結合」という用語は、例えば、「抗体の抗原結合フラグメント」が「抗体のエピトープ結合フラグメント」と同じであることが意図されるように、「エピトープ結合」と同じことを意味することが意図される。抗原結合フラグメントは、このような抗体のCDR領域の1、2、3、4、5または6つ全てを含有してもよく、このようなエピトープに特異的に結合することが可能であるが、このような抗体のものと異なるこのようなエピトープに対して特異性、親和性または選択性を示し得る。しかしながら、好ましくは、抗原結合フラグメントは、このような抗体のCDR領域の6つ全てを含有するであろう。抗体の抗原結合フラグメントは、単一のポリペプチド鎖(例えば、scFv)の一部であるか、もしくはそれを含んでもよく、またはアミノ末端およびカルボキシル末端(例えば、二重特異性抗体、Fabフラグメント、Fabフラグメントなど)をそれぞれ有する2つ以上のポリペプチド鎖の一部であるか、もしくはそれを含んでもよい。抗原結合能力を示す抗体のフラグメントは、例えば、無傷の抗体のプロテアーゼ切断によって得られる。より好ましくは、Fvフラグメントの2つの領域、VLおよびVHが、別個の遺伝子によって天然にコードされるが、またはこのような遺伝子配列をコードするポリヌクレオチド(例えば、それらのコードcDNA)が、VLおよびVH領域が結合して一価抗原結合分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:5879-5883を参照)としてそれらが作製されるのを可能にするフレキシブルリンカーによって、組み換え方法を用いて結合され得る。あるいは、単一のポリペプチド鎖のVLおよびVH領域が一緒に結合するのを可能にするには短すぎるフレキシブルリンカー(例えば、約9個未満の残基)を用いることによって、二重特異性抗体(bispecific antibody)、二重特異性抗体(diabody)、または同様の分子(2つのこのようなポリペプチド鎖が一緒に結合して、二価抗原結合分子を形成する)を形成することができる(二重特異性抗体の説明については、例えばPNAS USA 90(14),6444-8(1993)を参照)。本発明の範囲内に包含される抗原結合フラグメントの例としては、(i)Fab’またはFabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1領域からなる一価フラグメント、または国際公開第2007059782号パンフレットに記載されている一価抗体;(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1領域から本質的になるFdフラグメント;(iv)VLおよびVH領域から本質的になるFvフラグメント、(v)VH領域から本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov;2i(ll):484-90)とも呼ばれるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989));(vi)ラクダ科動物(camelid)またはナノボディ(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;5_(l):l ll-24)および(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つの領域、VLおよびVHが、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、VLおよびVH領域が組み合わされて、一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖抗体または単一鎖Fv(scFv)として知られている、例えばBird et al.,Science 242,423-426(1988)およびHuston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)を参照)としてそれらが作製されるのを可能にする合成リンカーによって、組み換え方法を用いて結合され得る。本発明の文脈におけるこれらのおよび他の有用な抗体フラグメントは、本明細書においてさらに説明される。抗体という用語は、特に規定されない限り、キメラ抗体およびヒト化抗体などの抗体様ポリペプチド、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組み換え技術などの任意の公知の技術によって提供される、抗原(抗原結合フラグメント)に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメントも含むことも理解されるべきである。生成される抗体は、任意のアイソタイプを有し得る。本明細書において使用される際、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)を指す。このような抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ;所望のエピトープに結合することが可能な好適なフラグメントは、無傷の抗体と同じように有用性について容易にスクリーニングされ得る。
【0033】
「二重特異性抗体」という用語は、それぞれ独立した標的を標的にする2つの独立した抗原結合フラグメントを含有する抗体を指す。これらの標的は、異なるタンパク質上に存在するエピトープ、または同じ標的上に存在する異なるエピトープであり得る。二重特異性抗体分子は、親単一特異性二価抗体分子のHCの定常領域における補償的アミノ酸改変を用いて作製され得る。得られるヘテロ二量体抗体は、2つの異なる親単一特異性抗体から与えられる1つのFabを含有する。Fc領域におけるアミノ酸改変は、時間を経ても安定した二重特異性を有するヘテロ二量体抗体の向上した安定性をもたらす(Ridgway et al.,Protein Engineering 9,617-621(1996)、Gunasekaran et al.,JBC 285,19637-1(2010)、Moore et al.,MAbs 3:6 546-557(2011)、Strop et al.,JMB 420,204-219(2012)、Metz et al.,Protein Engineering 25:10 571-580(2012)、Labrijn et al.,PNAS 110:113,5145-5150(2013)、Spreter Von Kreudenstein et al.,MAbs 5:5 646-654(2013))。二重特異性抗体は、ScFv融合を用いて生成される分子も含み得る。次に、2つの単一特異性scfvは、独立して、単一の二重特異性分子を生成するために安定したヘテロ二量体を形成することが可能なFc領域に結合される(Mabry et al.,PEDS 23:3 115-127(2010)。二重特異性分子は、二重の結合能を有する。例えば、CNS疾患を治療するために血液脳関門を横切って治療用抗体を送達するために、治療標的および経細胞輸送表面受容体の両方を標的にする。
【0034】
GM37、GM-37、GM37野生型(wt)、mab37および6004-37という用語は、本明細書において同義的に使用され、全て同じ抗体を指す。
【0035】
抗体GM37という用語は、CDR1~3配列番号1~3において示される重鎖および配列番号4~6において示される軽鎖CDR1~3を含むかそれからなる抗体またはその抗原結合フラグメントを含むことが意図される。一実施形態において、抗体GM37またはその抗原結合フラグメントは、配列番号7の重鎖可変領域および/または配列番号8の軽鎖可変領域を含むかまたはそれからなり得る。例えば、抗体GM37は、配列番号8の可変領域および配列番号17のκ定常領域からなる軽鎖と一緒に、配列番号7の可変領域および配列番号18の定常領域からなる重鎖を含むIgG抗体であり得る。
【0036】
タンパク質、これらの場合、抗体の脱アミノ化は、製造および貯蔵中に、また生体内でも、自然に起こり得るため、最終的な薬剤の品質を管理するのが難しい。脱アミノ化はまた、場合によっては、分子の活性に影響を与え得る。脱アミノ化は、アスパラギン残基において起こるが、関連するアスパラギンの位置は、確実に予測するのが難しいことがあるが、場合によっては、アスパラギン-グリシンモチーフによって影響され得る。いくつかの考えられる脱アミノ化モチーフが、GM37抗体上で見られるが、脱アミノ化の見込みがある1つの部位は、重鎖の残基54であることが分かった。別のアミノ酸によるアスパラギンのその後の置換は、簡単ではなく、GM37の3つの変異体(GM37変異体(var)1、2および3)が、元のGM37(GM37野生型(wt))の活性を保持することが分かった。
【0037】
GM37変異体という用語は、脱アミノ化された変異体1、2または3を指し、ここで、変異体1は、本明細書において上述されるGM37抗体と比較して、N54S置換を有し、変異体2は、N54Q置換を有し、変異体3は、N54Hを有する。
【0038】
ここで、抗体GM37変異体(var)1、2および3は、GM37からのCDR1および3配列番号1および3に示される重鎖および配列番号4~6に示されるGM37からの軽鎖CDR1~3を含むかまたはそれからなるが、変異体1が、配列番号33のCDR2を有し、変異体2が、配列番号34のCDR2を有し、変異体3が、配列番号35のCDR2を有するように、それらの重鎖CDR2が異なる、抗体またはその抗原結合フラグメントを含むことが意図される。
【0039】
一実施形態において、抗体GM37変異体またはそれらの抗原結合フラグメントは、変異体1、2および3のそれぞれについて配列番号30、31および32の重鎖可変領域、および配列番号8の軽鎖可変領域を含むかまたはそれからなり得る。抗体GM37は、配列番号8の可変領域および配列番号17のκ定常領域からなる軽鎖と一緒に、配列番号30、31または32の可変領域および配列番号18の定常領域からなる重鎖を含むIgG抗体であり得る。
【0040】
GM285、GM-285、mab285および6004-285という用語は、本明細書において同義的に使用され、全て同じ抗体を指す。
【0041】
抗体GM285という用語は、CDR1~3配列番号20~22に示される重鎖および配列番号23~25に示される軽鎖CDR1~3を含むかまたはそれからなる抗体またはその抗原結合フラグメントを含むことが意図される。一実施形態において、抗体GM37またはその抗原結合フラグメントは、配列番号26の重鎖可変領域および/または配列番号27の軽鎖可変領域を含むかまたはそれからなり得る。例えば、抗体GM37は、配列番号27の可変領域および配列番号29のκ定常領域からなる軽鎖と一緒に、配列番号26の可変領域および配列番号28の定常領域からなる重鎖を含むIgG抗体であり得る。
【0042】
GM285抗体は、ヒトα-シヌクレイン(配列番号10)の配列112~115(ILED;配列番号19)内のエピトープに特異的に結合する。
【0043】
本明細書において特に規定されない限り、この領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、IMGT(登録商標)、国際ImMunoGeneTics情報システム(登録商標)または、Kabat,E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesmann,K.S.& Foeller,C.(1991).Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th edit.,NIH Publication no.91-3242、米国保健福祉省(U.S.Department of Health and HumanServices).Chothia,C.& Lesk,A.M.(1987).Canonical structures for the hypervariable domains of immunogloblins.J.Mol.Biol.196、901-917)にしたがって行われる。
【0044】
「抗α-シヌクレイン抗体」または「α-シヌクレイン抗体」(記載される文脈に応じて、本明細書において同義的に使用される)は、本明細書において上に定義されるα-シヌクレインまたはα-シヌクレインフラグメント、特に、配列番号9および/または19に対応するα-シヌクレインの配列に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0045】
本明細書において使用される際の「ヒト抗体」という用語(「humAb」または「HuMab」と略記され得る)は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異によって、または遺伝子再構成中に、または体細胞突然変異によって誘発される突然変異)。
【0046】
本明細書において使用される際の「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一の分子組成物の抗体分子の調製物を指す。従来のモノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、2つ以上のFab領域から構成され得、それによって、2つ以上の標的に対する特異性を高める。「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、任意の特定の産生方法(例えば、組み換え、トランスジェニック、ハイブリドーマなど)によって限定されることは意図されていない。
【0047】
「ヒト化」という用語は、一般に組み換え技術を用いて調製される、非ヒト種に由来する免疫グロブリンから得られる抗原結合部位、およびヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づいた残りの免疫グロブリン構造を有する分子を指す。抗原結合部位は、ヒト定常領域に融合された完全な非ヒト抗体可変領域、またはヒト可変領域の適切なヒトフレームワーク領域に移植されたこのような可変領域の相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含み得る。このようなヒト化分子のフレームワーク残基は、野生型(例えば、完全ヒト)であってもよく、またはそれらは、配列がヒト化のための基盤として機能したヒト抗体に見られない1つまたは複数のアミノ酸置換を含むように修飾され得る。ヒト化は、分子の定常領域がヒト個体における免疫原として働く可能性を低下させるかまたはなくすが、外来(foreign)可変領域に対する免疫応答の可能性は残る(LoBuglio,A.F.et al.(1989)“Mouse/Human Chimeric Monoclonal Antibody In Man:Kinetics And Immune Response”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)86:4220-4224)。別の手法は、ヒト由来の定常領域を提供することだけでなく、可変領域を改変して、それらをヒト型にできる限り近くなるように再形成することにも焦点を当てている。重鎖および軽鎖の両方の可変領域が、該当する抗原に対する応答が異なり、結合能を決定する3つの相補性決定領域(CDR)を含み、これらの相補性決定領域(CDR)には、所与の種において比較的保存され、かつCDRの足場を提供すると考えられる4つのフレームワーク領域(FR)が隣接することが知られている。非ヒト抗体が、特定の抗原に対して調製される場合、可変領域は、非ヒト抗体に由来するCDRを、改変されるヒト抗体中に存在するFRに移植することによって、「再形成」または「ヒト化」され得る。様々な抗体に対するこの手法の適用は、Sato,K.et al.(1993)Cancer Res 53:851-856.Riechmann,L.et al.(1988)“Reshaping Human Antibodies for Therapy”,Nature 332:323-327;Verhoeyen,M.et al.(1988)“Reshaping Human Antibodies:Grafting An Antilysozyme Activity”,Science 239:1534-1536;Kettleborough,C.A.et al.(1991)“Humanization Of A Mouse Monoclonal Antibody By CDR-Grafting:The Importance Of Framework Residues On Loop Conformation”,Protein Engineering 4:773-3783;Maeda,H.et al.(1991)“Construction Of Reshaped Human Antibodies With HIV-Neutralizing Activity”,Human Antibodies Hybridoma 2:124-134;Gorman,S.D.et al.(1991)“Reshaping A Therapeutic CD4 Antibody”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:4181-4185;Tempest,P.R.et al.(1991)“Reshaping A Human Monoclonal Antibody To Inhibit Human Respiratory Syncytial Virus Infection in vivo”,Bio/Technology 9:266-271;Co,M.S.et al.(1991)“Humanized Antibodies For Antiviral Therapy”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:2869-2873;Carter,P.et al.(1992)“Humanization Of An Anti-p185her2 Antibody For Human Cancer Therapy”,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)89:4285-4289;およびCo,M.S.et al.(1992)“Chimeric And Humanized Antibodies With Specificity For The CD33 Antigen”,J.Immunol.148:1149-1154によって報告されている。ある実施形態において、ヒト化抗体は、全てのCDR配列(例えば、マウス抗体に由来する全ての6つのCDRを含むヒト化マウス抗体)を保存する。他の実施形態において、ヒト化抗体は、元の抗体に対して改変された1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)を有し、これらは、元の抗体からの1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも呼ばれる。抗原をヒト化する能力は周知である(例えば、米国特許第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,859,205号明細書;同第6,407,213号明細書;同第6,881,557号明細書を参照)。
【0048】
本明細書において使用される際、抗体またはその抗原結合フラグメントは、別のエピトープと比べてそのエピトープと、より高頻度で、より迅速に、より長い期間および/またはより高い親和性または結合活性で反応または会合する場合、別の分子(すなわち、エピトープ)の領域に「特異的に」結合するといわれる。一実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、別の分子よりその標的(ヒトαシヌクレイン)に少なくとも10倍強く;好ましくは、少なくとも50倍強く、より好ましくは少なくとも100倍強く結合する。好ましくは、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、生理学的条件下で、例えば、生体内で結合する。したがって、ヒトα-シヌクレインの残基112~117(ILEDMP(配列番号9))内のエピトープに「特異的に結合する」ことが可能な抗体は、このような特異性でおよび/またはこのような条件下で、ヒトα-シヌクレインの残基112~117内のエピトープに結合することが可能な抗体またはその抗原結合フラグメントを包含する。このような結合を決定するのに好適な方法は、当業者に公知であり、例示的な方法が、添付の実施例に記載されている。本明細書において使用される際、所定の抗原への抗体の結合の文脈における「結合」という用語は、典型的に、抗原をリガンドとしておよび抗体を検体として用いてBIAcore(登録商標)3000またはT200機器のいずれかにおいて例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定した際の約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下のKDに対応する親和性での結合を指し、所定の抗原または密接に関連している抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に対するその親和性より少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性がより低くなる量は、抗体のKDに依存するため、抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が非常に特異的である)場合、抗原に対する親和性が、非特異的抗原に対する親和性より低くなる量は、少なくとも10,000倍であり得る。
【0049】
本明細書において使用される際の「kd」(秒-1または1/秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも呼ばれる。
【0050】
本明細書において使用される際の「ka」(M-1×秒-1または1/M秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数を指す。
【0051】
本明細書において使用される際の「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、kdをkaで除算することによって得られる。
【0052】
本明細書において使用される際の「KA」(M-1または1/M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合平衡定数を指し、kaをkdで除算することによって得られる。
【0053】
一実施形態において、本発明は、以下の特性:
i.1~5nMまたは1~2nMなどの、0.5~10nMのα-シヌクレインに対する結合親和性(KD);
ii.α-シヌクレイン原線維のプロテアーゼ切断を阻害する能力;
iii.F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を改善する能力;
iv.インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレインのレベルを減少させる能力;
v.慢性的に投与されるときの、パーキンソン病のラットモデルにおける運動機能を回復させる能力
vi.α-シヌクレインのシーディング(インビトロでのおよび/またはパーキンソン病のマウスモデルにおける不溶性リン酸化α-シヌクレインの蓄積など)を防ぐ能力;および/または
vii.ヒトの脳における切断α-シヌクレインに結合する能力
の1つまたは複数を示す抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0054】
α-シヌクレインに対する結合親和性(KD)は、例えば実施例2に記載されている当該技術分野において周知の方法を用いて決定され得る。
【0055】
「α-シヌクレイン原線維のプロテアーゼ切断を阻害する能力」という用語は、初代皮質ニューロン中のヒトαシヌクレインのフラグメント1~119~122のカルパイン-1誘発性形成を阻害する能力を含む(実施例5を参照)。
【0056】
「F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を改善する能力」という用語は、例えば電気生理学的に測定した際に誘発されるfEPSPの傾きによって示されるように、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける海馬のCA1領域におけるシナプス伝達および可塑性の低下を改善する能力を含む(実施例6を参照)。
【0057】
「インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレインのレベルを減少させる能力」という用語は、インビボ微小透析を用いて測定した際、海馬覚醒、自由行動F28-sncaトランスジェニックマウスにおけるヒトαシヌクレインのレベルを低下させる能力を含む(実施例7を参照)。
【0058】
「慢性的に投与されるときの、パーキンソン病のラットモデルにおける運動機能を回復させる能力」という用語は、パーキンソン病のラット組み換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)モデルにおける運動非対称性を減少させるかまたはなくす能力を含む(実施例8を参照)。
【0059】
いくつかの抗体において、CDRのごく一部、すなわち、SDRと呼ばれる、結合に必要とされるCDR残基のサブセットが、ヒト化抗体において結合を保持するのに必要とされる。関連するエピトープに接触せず、SDR中にないCDR残基が、過去の研究に基づいて(例えばCDR H2中の残基H60~H65は、必要とされないことが多い)、Chothia超可変ループの外側にあるKabat CDRの領域から(Kabat et al.(1992)SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST,National Institutes of Health Publication No.91-3242;Chothia,C.et al.(1987)“Canonical Structures For The Hypervariable domains Of Immunoglobulins”,J.Mol.Biol.196:901-917を参照)、分子モデリングによっておよび/または実験により、またはGonzales,N.R.et al.(2004)“SDR Grafting Of A Murine Antibody Using Multiple Human Germline Templates To Minimize Its Immunogenicity”,Mol.Immunol.41:863-872に記載されるように特定され得る。1つまたは複数のドナーCDR残基が存在しないかまたは全ドナーCDRが省略される位置におけるこのようなヒト化抗体において、この位置を占めるアミノ酸は、受容体抗体配列において(Kabat番号付けによって)対応する位置を占めるアミノ酸であり得る。含まれるCDR中のドナーアミノ酸に対する受容体のこのような置換の数は、競合する考慮事項のバランスを反映する。このような置換は、ヒト化抗体中のマウスアミノ酸の数を減少させ、結果として、潜在的な免疫原性を低下させるのに潜在的に有利である。しかしながら、置換は、親和性の変化も引き起こすことがあり、親和性の著しい低下は回避されるのが好ましい。CDR内の置換の位置および置換するアミノ酸も、実験により選択され得る。
【0060】
CDR残基の単一のアミノ酸改変が、機能的結合の喪失をもたらし得るということ(Rudikoff,S.etc.(1982)“Single Amino Acid Substitution Altering Antigen-Binding Specificity”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79(6):1979-1983)は、別の機能的CDR配列を系統的に同定するための手段を提供する。このような変異体CDRを得るための1つの好ましい方法において、CDRをコードするポリヌクレオチドが突然変異を起こされて(例えばランダム突然変異によって、または部位特異的方法(例えば、突然変異遺伝子座をコードするプライマーによるポリメラーゼ連鎖媒介性増幅)によって)、置換アミノ酸残基を有するCDRを生成する。元の(機能的)CDR配列中の関連する残基の同一性を、置換される(非機能的)変異体CDR配列の同一性と比較することによって、その置換についてのBLOSUM62.iij置換スコアが特定され得る。BLOSUMシステムは、信頼できるアラインメントについて配列のデータベースを分析することによって作成されるアミノ酸置換のマトリックスを提供する(Eddy,S.R.(2004)“Where Did The BLOSUM62 Alignment Score Matrix Come From?”,Nature Biotech.22(8):1035-1036;Henikoff,J.G.(1992)“Amino acid substitution matrices from protein blocks”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:10915-10919;Karlin,S.et al.(1990)“Methods For Assessing The Statistical Significance Of Molecular Sequence Features By Using General Scoring Schemes”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:2264-2268;Altschul,S.F.(1991)“Amino Acid Substitution Matrices From An Information Theoretic Perspective”,J.Mol.Biol.219,555-565。現在、最先端のBLOSUMデータベースは、BLOSUM62データベース(BLOSUM62.iij)である。表1は、BLOSUM62.iij置換スコアを示す(スコアが高くなるほど、置換がより保存的になり、ひいては置換が機能に影響を与えない可能性が高くなる)。得られるCDRを含む抗原結合フラグメントが、α-シヌクレインに結合できない場合、例えば、BLOSUM62.iij置換スコアは、不十分に保存的であると見なされ、より高い置換スコアを有する新たな置換候補が選択され、生成される。したがって、例えば、元の残基がグルタミン酸塩(E)であり、非機能的置換残基がヒスチジン(H)である場合、BLOSUM62.iij置換スコアは0であり、より保存的な変化(アスパラギン酸塩、アスパラギン、グルタミン、またはリジンなどへの)が好ましい。
【0061】
【表1】
【0062】
したがって、本発明は、改良されたCDRを同定するためのランダム突然変異の使用を想定している。本発明の文脈において、保存的置換は、以下の3つの表の1つまたは複数に反映されているアミノ酸の種類の範囲内の置換によって定義され得る。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
より保存的な置換基(substitution grouping)としては、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンが挙げられる。
【0067】
アミノ酸のさらなる基は、例えば、Creighton(1984)Proteins:Structure and Molecular Properties(2d Ed.1993),W.H.Freeman and Companyに記載されている原理を用いて配合され得る。
【0068】
ファージディスプレイ技術が、CDR親和性を増加させる(または低下させる)のに代わりに使用され得る。親和性成熟と呼ばれるこの技術は、突然変異または「CDRウォーキング(walking)」を用い、再選択(re-selection)は、標的抗原またはその抗原性の抗原結合フラグメントを使用して、初期抗体または親抗体と比較した際に、抗原に対するより高い(またはより低い)親和性で結合するCDRを有する抗体を同定する(例えばGlaser et al.(1992)J.Immunology 149:3903を参照)。単一のヌクレオチドではなくコドン全体の突然変異誘発は、アミノ酸突然変異の半ランダム化レパートリーをもたらす。変異体クローンのプールからなるライブラリーが構築され得、変異体クローンのそれぞれが、単一のCDR中の単一のアミノ酸改変により異なり、各CDR残基に対して各可能なアミノ酸置換を提示する変異体を含む。抗原に対する増加した(または低下した)結合親和性を有する突然変異体は、固定化突然変異体を標識抗原と接触させることによってスクリーニングされ得る。当該技術分野において公知の任意のスクリーニング方法が、抗原に対する増加したまたは低下した親和性を有する突然変異体抗体を同定するのに使用され得る(例えば、ELISA)(Wu et al.1998,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)95:6037;Yelton et al.,1995,J.Immunology 155:1994を参照)。軽鎖をランダム化するCDRウォーキングが、使用可能であり得る(Schier et al.,1996,J.Mol.Bio.263:551を参照)。
【0069】
このような親和性成熟を達成するための方法は、例えば:Krause,J.C.et al.(2011)“An Insertion Mutation That Distorts Antibody Binding Site Architecture Enhances Function Of A Human Antibody”,MBio.2(1)pii:e00345-10.doi:10.1128/mBio.00345-10;Kuan,C.T.et al.(2010)“Affinity-Matured Anti-Glycoprotein NMB Recombinant Immunotoxins Targeting Malignant Gliomas And Melanomas”,Int.J.Cancer 10.1002/ijc.25645;Hackel,B.J.et al.(2010)“Stability And CDR Composition Biases Enrich Binder Functionality Landscapes”,J.Mol.Biol.401(1):84-96;Montgomery,D.L.et al.(2009)“Affinity Maturation and Characterization Of A Human Monoclonal Antibody Against HIV-1 gp41”,MAbs 1(5):462-474;Gustchina,E.et al.(2009)“Affinity Maturation By Targeted Diversification Of The CDR-H2 Loop Of A Monoclonal Fab Derived From A Synthetic Naive Human Antibody Library And Directed Against The Internal Trimeric Coiled-Coil Of Gp41 Yields A Set Of Fabs With Improved HIV-1 Neutralization Potency And Breadth”,Virology 393(1):112-119;最後に、W.J.et al.(2009)“Affinity Maturation Of A Humanized Rat Antibody For Anti-RAGE Therapy:Comprehensive Mutagenesis Reveals A High Level Of Mutational Plasticity Both Inside And Outside The Complementarity-Determining Regions”,J.Mol.Biol.388(3):541-558;Bostrom,J.et al.(2009)“Improving Antibody Binding Affinity And Specificity For Therapeutic Development”,Methods Mol.Biol.525:353-376;Steidl,S.et al.(2008)“In Vitro Affinity Maturation Of Human GM-CSF Antibodies By Targeted CDR-Diversification”,Mol.Immunol.46(1):135-144;およびBarderas,R.et al.(2008)“Affinity Maturation Of Antibodies Assisted By In Silico Modeling”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)105(26):9029-9034に記載されている。
【0070】
したがって、包含される抗体またはそれらの抗原結合フラグメントのCDR変異体の配列は、置換によって;例えば置換される4つのアミノ酸残基、3つのアミノ酸残基、2つのアミノ酸残基または1つのアミノ酸残基によって、親抗体、GM37、GM37 var 1~3、または285のCDRの配列と異なり得る。本発明の一実施形態によれば、CDR領域中のアミノ酸が、上記の3つの表において定義されるように、保存的置換で置換され得ることがさらに想定される。
【0071】
本明細書において使用される際の「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」という用語は、疾患または障害の進行または重症度を改善し、遅らせ、軽減し、または抑制すること、またはこのような疾患または障害の1つまたは複数の症状または副作用を改善し、遅らせ、軽減し、または抑制することを意味する。本発明の趣旨では、「治療」または「治療すること」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るための手法をさらに意味し、ここで、「有益なまたは所望の臨床結果」としては、限定はされないが、部分的であるかまたは全体的であるか、検出可能かまたは検出不可能かにかかわらず、症状の軽減、障害または疾患の程度の減少、安定した(すなわち、悪化していない)疾患または障害状態、疾患または障害状態の進行の遅延または緩徐化、疾患または障害状態の改善または緩和、および疾患または障害の寛解が挙げられる。
【0072】
「有効量」は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに適用される場合、意図される生物学的効果または所望の治療結果(限定はされないが臨床結果を含む)を達成するのに、必要な投与量および期間にわたる、十分な量を指す。「治療的に有効な量」という語句は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに適用される場合、障害もしくは疾患の状態の進行、または障害もしくは疾患の症状の進行を改善し、緩和し、安定させ、抑制し、遅らせ、軽減し、または遅延させるのに十分な、抗体、またはその抗原結合フラグメントの量を表すことが意図される。一実施形態において、本発明の方法は、他の化合物と組み合わせた、抗体、またはその抗原結合フラグメントの投与を提供する。このような場合、「有効量」は、意図される生物学的効果を引き起こすのに十分な組合せの量である。
【0073】
本発明の抗α-シヌクレイン抗体またはその抗原結合フラグメントの治療的に有効な量は、個体の病状、年齢、性別、および体重、ならびに抗α-シヌクレイン抗体が個体における所望の応答を引き起こす能力などの要因に応じて変化し得る。治療的に有効な量はまた、抗体または抗体部分の何らかの毒性または有害作用を、治療的に有益な効果が上回る量である。
【0074】
上に示されるように、本発明は、特に、ヒトα-シヌクレインのアミノ酸112~117(配列番号9(ILEDMP))内のエピトープに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体に関する。一実施形態において、抗体は、α-シヌクレインの112~117アミノ酸内のエピトープへの結合について抗体GM37と競合することが可能である。
【0075】
GM37、その変異体GM37 var 1~3およびGM285によって例示される本発明の抗体、ならびにそれらのα-シヌクレイン結合フラグメントは、α-シヌクレインの残基1~119/122からなる毒性α-シヌクレインフラグメントに結合し、(例えば、α-シヌクレインフラグメントに細胞外で結合し、それによってそれが細胞に取り込まれるのを防ぐことによってその毒性を中和することが可能である。意外なことに、α-シヌクレインのアミノ酸112~117内のエピトープに結合することが可能な本発明の抗体は、ヒト脳において毒性α-シヌクレイン種に結合する際に抗体9E4などの先行技術の抗体より優れており、細胞外α-シヌクレインを除去し、インビボでα-シヌクレインによって誘発されるシナプス伝達障害を正常化するのに優れた効果を与える。本発明の抗体は、パーキンソン病のラットモデルにおける関連する運動表現型の出現を改善することもできる。
【0076】
本発明の抗体は、好ましくは、ヒトまたはヒト化抗体である。
【0077】
本発明は、患者におけるα-シヌクレイン凝集体形成を減少させる方法であって、このような治療を必要とする患者に、治療的に有効な量の本発明の抗体を投与する工程を含む方法も提供する。
【0078】
さらに、抗体は、薬学的に許容できる担体、希釈剤および/または安定剤と一緒に組成物中にあり得る。本発明の抗体は、治療に使用され得る。特に、本発明の抗体は、パーキンソン病(特発性、遺伝性パーキンソン病を含む)、ゴーシェ病、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症などのシヌクレイノパチーを治療するのに使用され得る。
【0079】
本発明によって想定される治療は、長期であってもよく、患者は、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれ以上治療され得る。
【0080】
本発明のその抗原結合フラグメントの抗体は、様々な細胞株、例えばヒト細胞株、非ヒト哺乳動物細胞株、および昆虫細胞株、例えばCHO細胞株、HEK細胞株、BHK-21細胞株、マウス細胞株(骨髄腫細胞株など)、線維肉腫細胞株、PER.C6細胞株、HKB-11細胞株、CAP細胞株およびHuH-7ヒト細胞株において生産され得る(内容が参照により本明細書に援用される、Dumont et al,2015,Crit Rev Biotechnol.Sep 18:1-13.)。
【0081】
本発明の抗体は、例えばKohler et al.,Nature 256,495(1975)によって最初に記載されているハイブリドーマ方法によって産生されるモノクローナル抗体であってもよく、または組み換えDNA方法によって産生され得る。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al.,Nature 352,624-628(1991)およびMarks et al.,J.MoI.Biol.222,581-597(1991)に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。モノクローナル抗体は、任意の好適な源から得られる。したがって、例えば、モノクローナル抗体は、例えば、表面において抗原を発現する細胞、または該当する抗原をコードする核酸の形態で、該当する抗原で免疫されたマウスから得られるマウス脾臓Bリンパ球細胞から調製されるハイブリドーマから得られる。モノクローナル抗体はまた、免疫されたヒトまたは非ヒト哺乳動物(ラット、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、霊長類など)の抗体発現細胞に由来するハイブリドーマから得られる。
【0082】
一実施形態において、本発明の抗体は、ヒト抗体である。α-シヌクレインに対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の部分を有するトランスジェニックまたは染色体導入マウスを用いて生成され得る。このようなトランスジェニックおよび染色体導入マウスは、本明細書においてそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含む。
【0083】
HuMAbマウスは、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的突然変異と一緒に、再配列されていないヒト重鎖可変および定常(μおよびY)ならびに軽鎖可変および定常(κ)鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座(minilocus)を含む(Lonberg,N.et al.,Nature 368,856-859(1994))。したがって、マウスは、マウスIgMまたはIgκの減少した発現を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子が、クラススイッチおよび体細胞突然変異を起こして、高親和性ヒトIgG、κモノクローナル抗体を生成する(Lonberg,N.et al.(1994)、上記参照;Lonberg,N.,Handbook of Experimental Pharmacology 113,49-101(1994)、Lonberg,N.and Huszar,D.,Intern.Rev.Immunol.Vol.13 65-93(1995)およびHarding,F.and Lonberg,N.,Ann.N.Y.Acad.Sci 764 536-546(1995)に概説されている)。HuMAbマウスの作製は、Taylor,L.et al.,Nucleic Acids Research 20,6287-6295(1992)、Chen,J.et al.,International Immunology 5,647-656(1993)、Tuaillon et al.,J.Immunol.152,2912-2920(1994)、Taylor,L.et al.,International Immunology 6,579-591(1994)、Fishwild,D.et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に詳細に記載されている。米国特許第5,545,806号明細書、米国特許第5,569,825号明細書、米国特許第5,625,126号明細書、米国特許第5,633,425号明細書、米国特許第5,789,650号明細書、米国特許第5,877,397号明細書、米国特許第5,661,016号明細書、米国特許第5,814,318号明細書、米国特許第5,874,299号明細書、米国特許第5,770,429号明細書、米国特許第5,545,807号明細書、国際公開第98/24884号パンフレット、国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22645号パンフレット、国際公開第92/03918号パンフレットおよび国際公開第01/09187号パンフレットも参照されたい。
【0084】
HCo7、HCo12、HCo17およびHCo20マウスは、それらの内因性軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているように)、それらの内因性重鎖遺伝子におけるCMD破壊(国際公開第01/14424号パンフレットの実施例1に記載されているように)、およびKCo5ヒトκ軽鎖導入遺伝子(Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように)を有する。さらに、HCo7マウスは、HCo7ヒト重鎖導入遺伝子(米国特許第5,770,429号明細書に記載されているように)を有し、HCo12マウスは、HCo12ヒト重鎖導入遺伝子(国際公開第01/14424号パンフレットの実施例2に記載されているように)を有し、HCo17マウスは、HCo17ヒト重鎖導入遺伝子(国際公開第01/09187号パンフレットの実施例2に記載されているように)を有し、HCo20マウスは、HCo20ヒト重鎖導入遺伝子を有する。得られるマウスは、内因性マウス重鎖およびκ軽鎖遺伝子座の破壊のためにバックグラウンドのホモ接合体においてヒト免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖導入遺伝子を発現する。
【0085】
KMマウス株において、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているようにホモ接合的に破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、国際公開第01/09187号パンフレットの実施例1に記載されているようにホモ接合的に破壊されている。このマウス株は、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を保有する。このマウス株は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されているように、染色体14フラグメントhCF(SC20)から構成されるヒト重鎖導入染色体も保有する。HCo12-Balb/c、HCo17-Balb/cおよびHCo20-Balb/cマウスは、国際公開第09/097006号パンフレットに記載されているように、HCo12、HCo17およびHCo20を、KCo5[J/K](Balb)に交差させることによって生成され得る。
【0086】
KMマウス株において、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているようにホモ接合的に破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、国際公開第01/09187号パンフレットの実施例1に記載されているようにホモ接合的に破壊されている。このマウス株は、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を保有する。このマウス株は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されているように、染色体14抗原結合フラグメントhCF(SC20)から構成されるヒト重鎖導入染色体も保有する。
【0087】
これらのトランスジェニックマウスに由来する脾細胞は、周知の技術にしたがって、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成するのに使用され得る。本発明のヒトモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、または他の種に由来する本発明の抗体はまた、該当する免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列についてトランスジェニックな別の非ヒト哺乳動物または植物の生成、および回収可能な形態での抗体の産生によって遺伝子導入的に生成され得る。哺乳動物におけるトランスジェニック産生に関連して、抗体は、ヤギ、ウシ、または他の哺乳動物の乳汁中で産生され、それから回収され得る。例えば米国特許第5,827,690号明細書、米国特許第5,756,687号明細書、米国特許第5,750,172号明細書および米国特許第5,741,957号明細書を参照されたい。
【0088】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプのものであり得る。アイソタイプの選択は、典型的に、ADCC誘導などの所望のエフェクター機能によって導かれる。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、κまたはλのいずれかが使用され得る。必要に応じて、本発明の抗α-シヌクレイン抗体のクラスは、公知の方法によってスイッチされ得る。例えば、元はIgMであった本発明の抗体は、本発明のIgG抗体にクラススイッチされ得る。さらに、クラススイッチ技術は、あるIgGサブクラスを別のIgGサブクラスに、例えばIgGlからIgG2に変換するのに使用され得る。したがって、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療的使用のために、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体へのアイソタイプスイッチによって変更され得る。一実施形態において、本発明の抗体は、IgG1抗体、例えばIgG1、κである。抗体は、そのアミノ酸配列が、他のアイソタイプと比べてそのアイソタイプに最も相同性が高い場合、特定のアイソタイプのものであるといわれる。
【0089】
一実施形態において、本発明の抗体は、完全長抗体、好ましくは、IgG抗体、特に、IgG1、κ抗体である。別の実施形態において、本発明の抗体は、抗体フラグメントまたは一本鎖抗体である。
【0090】
抗体およびその抗原結合フラグメントは、例えば従来の技術を用いた抗原結合断片化によって得られ、抗原結合フラグメントは、全抗体について本明細書に記載されるのと同じように有用性についてスクリーニングされ得る。例えば、F(ab’)2抗原結合フラグメントは、抗体をペプシンで処理することによって生成され得る。得られるF(ab’)2抗原結合フラグメントは、ジスルフィド架橋を還元するように処理されて、Fab’抗原結合フラグメントを生成し得る。Fab抗原結合フラグメントはIgG抗体をパパインで処理することによって得られ;Fab’抗原結合フラグメントは、IgG抗体のペプシン消化により得られる。F(ab’)抗原結合フラグメントはまた、チオエーテル結合またはジスルフィド結合により、以下に記載されるFab’を結合することによって生成され得る。Fab’抗原結合フラグメントは、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる抗体抗原結合フラグメントである。Fab’-抗原結合フラグメントは、F(ab’)2抗原結合フラグメントを、ジチオスレイトールなどの還元剤で処理することによって得られる。抗体抗原結合フラグメントはまた、組み換え細胞におけるこのような抗原結合フラグメントをコードする核酸の発現によって生成され得る(例えばEvans et al.,J.Immunol.Meth.184、123-38(1995)を参照)。例えば、F(ab’)2抗原結合フラグメントの一部をコードするキメラ遺伝子は、このような切断された抗体抗原結合フラグメント分子を生成するために、H鎖のCH1領域およびヒンジ領域をコードするDNA配列、続いて翻訳停止コドンを含み得る。
【0091】
一実施形態において、抗α-シヌクレイン抗体は、一価抗体、好ましくは、ヒンジ領域の欠失を有する国際公開第2007059782号パンフレット(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている一価抗体である。したがって、一実施形態において、抗体は、一価抗体であり、前記抗α-シヌクレイン抗体は、i)前記一価抗体の軽鎖をコードする核酸構築物を提供する工程であって、前記構築物が、選択された抗原特異的抗α-シヌクレイン抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列およびIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする前記ヌクレオチド配列およびIgのCL領域をコードする前記ヌクレオチド配列が、作動可能に一緒に連結され、IgG1サブタイプの場合、CL領域をコードするヌクレオチド配列は、ポリクローナルヒトIgGの存在下でまたは動物もしくはヒトに投与されるとき、CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとともにジスルフィド結合または共有結合を形成することが可能なアミノ酸をCL領域が含まないように修飾されている工程と;ii)前記一価抗体の重鎖をコードする核酸構築物を提供する工程であって、前記構築物が、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列およびヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、CH領域をコードするヌクレオチド配列は、ヒンジ領域に対応する領域および、Igサブタイプによって必要とされるように、CH3領域などのCH領域の他の領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下でまたは動物ヒトに投与されるとき、ヒトIgのCH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとともに、ジスルフィド結合または共有結合または安定した非共有重鎖間結合の形成に関与するアミノ酸残基を含まないように修飾されており、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードする前記ヌクレオチド配列および前記IgのCH領域をコードする前記ヌクレオチド配列が、作動可能に一緒に連結される工程と;iii)前記一価抗体を生成するために細胞発現系を提供する工程と;iv)(iii)の細胞発現系の細胞内で(i)および(ii)の核酸構築物を共発現することによって、前記一価抗体を生成する工程とを含む方法によって構築される。
【0092】
同様に、一実施形態において、抗α-シヌクレイン抗体は、
(i)本明細書に記載される本発明の抗体の可変領域または前記領域の抗原結合部分、および
(ii)免疫グロブリンのCH領域またはCH2およびCH3領域を含むその領域
を含む一価抗体であり、ここで、CH領域またはその領域は、ヒンジ領域に対応する領域および、免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合、CH3領域などのCH領域の他の領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCH領域とともにジスルフィド結合を形成するか、または同一のCH領域とともに他の共有結合または安定した非共有重鎖間結合を形成することが可能なアミノ酸残基を含まないように修飾されている。
【0093】
さらなる実施形態において、一価抗α-シヌクレイン抗体の重鎖は、ヒンジ領域全体が欠失しているように修飾されている。
【0094】
別のさらなる実施形態において、前記一価抗体の配列は、それがN結合型グリコシル化のための受容体部位を含まないように修飾されている。
【0095】
本発明は、抗α-シヌクレイン結合領域(例えば、抗α-シヌクレインモノクローナル抗体のα-シヌクレイン結合領域)が、2つ以上のエピトープを標的にする二価または多価二重特異性骨格の一部である「二重特異性抗体」も含む(例えば、第2のエピトープは、二重特異性抗体が、血液脳関門などの生物学的障壁を越える改良されたトランスサイトーシスを示し得るように、活性な輸送受容体のエピトープを含み得る)。したがって、別のさらなる実施形態において、抗シヌクレイン抗体の一価Fabは、異なるタンパク質を標的にするさらなるFabまたはscfvに結合されて、二重特異性抗体を生成し得る。二重特異性抗体は、二重機能、例えば抗シヌクレイン結合領域によって与えられる治療機能、および血液脳関門などの生物学的障壁を越える輸送を促進するために受容体分子に結合し得る輸送機能を有し得る。
【0096】
本発明の抗α-シヌクレイン抗体、およびその抗原結合フラグメントは、一本鎖抗体も含む。一本鎖抗体は、重鎖および軽鎖Fv領域が結合されたペプチドである。一実施形態において、本発明は、本発明の抗α-シヌクレイン抗体のFvにおける重鎖および軽鎖が、ペプチド一本鎖において(典型的に、約10、12、15つまたはそれ以上のアミノ酸残基の)フレキシブルペプチドリンカーと結合される一本鎖Fv(scFv)を提供する。このような抗体を産生する方法が、例えば米国特許第4,946,778号明細書、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)、Bird et al.,Science 242,423-426(1988)、Huston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)およびMcCafferty et al.,Nature 348,552-554(1990)に記載されている。一本鎖抗体は、単一のVHおよびVLのみが使用される場合、一価であり、2つのVHおよびVLが使用される場合、二価であり、または3つ以上のVHおよびVLが使用される場合、多価であり得る。
【0097】
本明細書に記載される抗α-シヌクレイン抗体およびその抗原結合フラグメントは、任意の好適な数の修飾アミノ酸の包含および/またはこのような共役置換基との結合によって修飾され得る。これに関連する適合性は、一般に、非誘導体化親抗α-シヌクレイン抗体に関連するα-シヌクレイン選択性および/または抗α-シヌクレイン特異性を少なくとも実質的に保持する能力によって決定される。1つまたは複数の修飾アミノ酸の包含は、例えば、ポリペプチド血清半減期を増加させ、ポリペプチド抗原性を低下させ、またはポリペプチド貯蔵安定性を増加させるのに有利であり得る。アミノ酸は、例えば、組み換え産生の際に翻訳と同時に(co-translationally)もしくは翻訳後に(post-translationally)修飾されるか(例えば、哺乳類細胞における発現の際のN-X-S/TモチーフにおけるN結合型グリコシル化)または合成手段によって修飾される。修飾アミノ酸の非限定的な例としては、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、プレニル化(例えば、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸などが挙げられる。アミノ酸の修飾の当業者の指針となるのに十分な言及は、文献全体を通して十分にある。例のプロトコルが、Walker(1998)Protein Protocols On CD-Rom,Humana Press,Totowa,NJに見られる。修飾アミノ酸は、例えば、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸、または有機誘導化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択され得る。
【0098】
抗α-シヌクレイン抗体はまた、例えばそれらの血中半減期を増加させるために、ポリマーへの共有結合によって化学修飾され得る。例示的なポリマー、およびそれらをペプチドに結合するための方法が、例えば米国特許第4,766,106号明細書、米国特許第4,179,337号明細書、米国特許第4,495,285号明細書および米国特許第4,609,546号明細書に示されている。さらなる例示的なポリマーとしては、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)(例えば、約1,000~約40,000、例えば約2,000~約20,000、例えば、約3,000~12,000g/molの分子量を有するPEG)が挙げられる。
【0099】
本発明の抗体は、診断法においてまたは画像診断用リガンドとしてさらに使用され得る。
【0100】
一実施形態において、1つまたは複数の放射性標識アミノ酸を含む抗α-シヌクレイン抗体が提供される。放射性標識抗α-シヌクレイン抗体は、診断および治療目的の両方に使用され得る(放射性標識分子への結合は、別の考えられる特徴である)。このような標識の非限定的な例としては、限定はされないが、ビスマス(213Bi)、炭素(11C、13C、14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co、60Co)、銅(64Cu)、ジスプロシウム(165Dy)、エルビウム(169Er)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、金(198Au)、ホルミウム(166Ho)、水素(H)、インジウム(111In、112In、113In、115In)、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、イリジウム(192Ir)、鉄(59Fe)、クリプトン(81mKr)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、窒素(13N、15N)、酸素(15O)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、カリウム(42K)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルビジウム(81Rb、82Rb)、ルテニウム(82Ru、97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ナトリウム(24Na)、ストロンチウム(85Sr、89Sr、92Sr)、硫黄(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、スズ(113Sn、117Sn)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb、177Yb)、イットリウム(90Y)および亜鉛(65Zn)が挙げられる。放射性標識アミノ酸および関連するペプチド誘導体を調製するための方法は、当該技術分野において公知である(例えばJunghans et al.,Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686(2nd edition,Chafner and Longo,eds.,Lippincott Raven(1996))ならびに米国特許第4,681,581号明細書、米国特許第4,735,210号明細書、米国特許第5,101,827号明細書、米国特許第5,102,990号明細書(米国再発行特許第35,500号明細書)、米国特許第5,648,471号明細書および米国特許第5,697,902号明細書を参照。例えば、放射性同位体が、クロラミンT法によって結合され得る(Lindegren,S.et al.(1998)“Chloramine-T In High-Specific-Activity Radioiodination Of Antibodies Using N-Succinimidyl-3-(Trimethylstannyl)Benzoate As An Intermediate”,Nucl.Med.Biol.25(7):659-665;Kurth,M.et al.(1993)“Site-Specific Conjugation Of A Radioiodinated Phenethylamine Derivative To A Monoclonal Antibody Results In Increased Radioactivity Localization In Tumor”,J.Med.Chem.36(9):1255-1261;Rea,D.W.et al.(1990)“Site-specifically radioiodinated antibody for targeting tumors”,Cancer Res.50(3 Suppl):857s-861s)。
【0101】
本発明は、蛍光標識(希土類キレート(例えば、ユウロピウムキレート)など)、フルオレセイン型標識(例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン)、ローダミン型標識(例えば、ALEXA FLUOR(登録商標)568(Invitrogen)、TAMRA(登録商標)またはダンシルクロリド)、VIVOTAG 680 XL FLUOROCHROME(商標)(Perkin Elmer)、フィコエリトリン;ウンベリフェロン、Lissamine;シアニン;フィコエリトリン、Texas Red、BODIPY FL-SE(登録商標)(Invitrogen)またはそれらの類似体(これらは全て、光学的検出に好適である)を用いて検出可能に標識される抗α-シヌクレイン抗体およびその抗原結合フラグメントも提供する。化学発光標識が、用いられてもよい(例えば、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびイクオリン)。このような診断および検出はまた、本発明の診断用分子を、限定はされないが、様々な酵素、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む酵素を含む検出可能な物質に、または限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族複合体に結合することによって行われ得る。
【0102】
化学発光標識が、用いられてもよい(例えば、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびイクオリン)。このような診断および検出はまた、本発明の診断用分子を、限定はされないが、様々な酵素、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む酵素を含む検出可能な物質に、または限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族複合体に結合することによって行われ得る。常磁性標識も用いられ得、好ましくは、ポジトロン放出型断層撮影法(PET)または単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)を用いて検出される。このような常磁性標識としては、限定はされないが、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、イリジウム(Ir)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(M)、ネオジム(Nd)、オスミウム(Os)、酸素(O)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、サマリウム(Sm)、ナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、タングステン(W)、およびジルコニウム(Zi)、特に、Co+2、CR+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、Fe+3、Ga+3、Mn+3、Ni+2、Ti+3、V+3、およびV+4の常磁性イオン、様々なポジトロン放出型断層撮影法を用いたポジトロン放出金属、および非放射性常磁性金属イオンを含有する化合物が挙げられる。
【0103】
したがって、一実施形態において、本発明の抗α-シヌクレイン抗体は、蛍光標識、化学発光標識、常磁性標識、放射性同位体標識または酵素標識で標識され得る。標識抗体は、被験体の脳における前記α-シヌクレインの存在または量を検出または測定するのに使用され得る。この方法は、前記α-シヌクレインに結合された抗α-シヌクレイン抗体のインビボイメージングの検出または測定を含んでもよく、前記α-シヌクレインに結合された前記抗α-シヌクレイン抗体のエクスビボイメージングを含み得る。
【0104】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの1つまたは複数のポリペプチド鎖をコードする発現ベクターに関する。このような発現ベクターは、本発明の抗体および抗原結合フラグメントの組み換え産生に使用され得る。
【0105】
本発明の文脈における発現ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクター、および合成核酸ベクター(好適な組の発現制御要素を含む核酸配列)を含む、任意の好適なDNAまたはRNAベクターであり得る。このようなベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組合せに由来するベクター、およびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが挙げられる。一実施形態において、抗α-シヌクレイン抗体コード核酸は、例えば、線形発現要素(linear expression element)(例えば、Sykes and Johnston,Nat Biotech 12,355-59(1997)に記載されているように)、圧縮(compacted)核酸ベクター(例えば米国特許第6,077,835号明細書および/または国際公開第00/70087号パンフレットに記載されているように)、pBR322、pUC 19/18、またはpUC 118/119、「ミッジ(midge)」最小サイズ核酸ベクターなどのプラスミドベクター(例えば、Schakowski et al.,MoI Ther 3,793-800(2001)に記載されているように)を含む裸のDNAまたはRNAベクターにおいて、またはCaPO沈殿構築物などの沈殿核酸ベクター構築物(例えば、国際公開第00/46147号パンフレット、Benvenisty and Reshef,PNAS USA 83,9551-55(1986)、Wigler et al.,Cell 14,725(1978)、およびCoraro and Pearson,Somatic Cell Genetics 2,603(1981)に記載されているように)として含まれる。このような核酸ベクターおよびその使用法は、当該技術分野において周知である(例えば米国特許第5,589,466号明細書および米国特許第5,973,972号明細書を参照)。
【0106】
一実施形態において、ベクターは、細菌細胞における抗α-シヌクレイン抗体またはその抗原結合フラグメントの発現に好適である。このようなベクターの例としては、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster,J Biol Chem 264,5503-5509(1989)、pETベクター(Novagen,Madison,WI)など)などの発現ベクターが挙げられる。
【0107】
発現ベクターは、さらにまたは代わりに、酵母系における発現に好適なベクターであり得る。酵母系における発現に好適な任意のベクターが用いられてもよい。好適なベクターとしては、例えば、α因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHなどの構成的または誘導性プロモータを含むベクターが挙げられる(F.Ausubel et al.,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley InterScience New York(1987)、Grant et al.,Methods in Enzymol 153,516-544(1987)、Mattanovich,D.et al.Methods Mol.Biol.824,329-358(2012)、Celik,E.et al.Biotechnol.Adv.30(5),1108-1118(2012)、Li,P.et al.Appl.Biochem.Biotechnol.142(2),105-124(2007)、Boeer,E.et al.Appl.Microbiol.Biotechnol.77(3),513-523(2007)、van der Vaart,J.M.Methods Mol.Biol.178,359-366(2002)、およびHolliger,P.Methods Mol.Biol.178,349-357(2002)に概説されている)。
【0108】
本発明の発現ベクターにおいて、抗α-シヌクレイン抗体コード核酸は、任意の好適なプロモータ、エンハンサー、および他の発現促進要素を含むかまたはそれらと結合され得る。このような要素の例としては、強力な発現プロモータ(例えば、ヒトCMV IEプロモータ/エンハンサーならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモータ)、有効なポリ(A)終止配列、大腸菌(E.coli)におけるプラスミド産物の複製起点、選択可能なマーカーとしての抗生物質抵抗性遺伝子、および/または好都合なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)が挙げられる。核酸は、CMV IEなどの構成的プロモータとは対照的に誘導性プロモータも含み得る(当業者は、このような用語が、実際に、特定の条件下における遺伝子発現の程度の記述語であることを認識するであろう)。
【0109】
本発明のその抗原結合フラグメントの抗体は、様々な細胞株、例えばヒト細胞株、非ヒト哺乳動物細胞株、および昆虫細胞株、例えばCHO細胞株、HEK細胞株、BHK-21細胞株、マウス細胞株(骨髄腫細胞株など)、線維肉腫細胞株、PER.C6細胞株、HKB-11細胞株、CAP細胞株およびHuH-7ヒト細胞株において生産され得る(内容が参照により本明細書に援用される、Dumont et al,2015,Crit Rev Biotechnol.Sep 18:1-13.)。
【0110】
さらに他の態様において、本発明は、本明細書に定義される本発明の抗体またはその抗原結合領域または本明細書に定義される本発明の二重特異性分子を産生するトランスフェクトーマ(transfectoma)などの、組み換え真核生物または原核生物宿主細胞に関する。宿主細胞の例としては、酵母、細菌、および哺乳類細胞(CHOまたはHEK細胞など)が挙げられる。例えば、一実施形態において、本発明は、本発明の抗α-シヌクレイン抗体またはその抗原結合フラグメントの発現のための配列コードを含む細胞ゲノムに安定に組み込まれた核酸を含む細胞を提供する。別の実施形態において、本発明は、本発明の抗α-シヌクレイン抗体の発現のための配列コードを含む、プラスミド、コスミド、ファージミド、または線形発現要素などの、融合されていない核酸を含む細胞を提供する。
【0111】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗α-シヌクレイン抗体を産生するための方法であって、a)本明細書において上述されるように本発明のハイブリドーマまたは宿主細胞を培養する工程と、b)培地から本発明の抗体を精製する工程とを含む方法に関する。
【0112】
一実施形態において、本発明は、調製物であって、このような用語が本明細書において使用される際、本明細書に定義される抗α-シヌクレイン抗体を含み、α-シヌクレインに結合することが可能でないかまたは調製物の抗α-シヌクレイン機能性を実質的に変更しない自然発生する抗体を実質的に含まない調製物に関する。したがって、このような調製物は、自然発生する血清、またはこのような血清の精製誘導体を包含せず、抗α-シヌクレイン抗体と、調製物の抗α-シヌクレイン抗体の機能性を変更しない別の抗体との混合物を含み;ここで、このような機能性は、
(i)α-シヌクレインに対する抗α-シヌクレイン抗体の結合親和性(KD);
(ii)α-シヌクレイン原線維のプロテアーゼ切断を阻害する、抗α-シヌクレイン抗体の能力;
(iii)F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を改善する、抗α-シヌクレイン抗体の能力;
(iv)インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレインのレベルを減少させる、抗α-シヌクレイン抗体の能力;および
(v)慢性的に投与されるときの、パーキンソン病のラットモデルにおける運動機能を回復させる、抗α-シヌクレイン抗体の能力、
(vi)α-シヌクレインのシーディング(インビトロでのおよび/またはパーキンソン病のマウスモデルにおける不溶性リン酸化α-シヌクレインの蓄積など)を防ぐ能力;および/または
(vii)ヒトの脳における切断α-シヌクレインに結合する能力
からなる群から選択される。
【0113】
本発明は、特に、天然抗α-シヌクレイン抗体の構造と比べてそのアミノ酸配列の構造変化を(そのCDR、可変領域、フレームワーク残基および/または定常領域のいずれかに)有するこのような抗α-シヌクレイン抗体の調製物であって、前記構造変化により、抗α-シヌクレインモノクローナル抗体が、前記天然抗α-シヌクレイン抗体によって示される機能性と比べて著しく変化した機能性(すなわち、機能性の20%超の相違、40%超の相違、60%超の相違、80%超の相違、100%超の相違、150%超の相違、2倍超の相違、4倍超の相違、5倍超の相違、または10倍超の相違)を示し;ここで、このような機能性は、
(i)α-シヌクレインに対する抗α-シヌクレインモノクローナル抗体の結合親和性(KD);
(ii)α-シヌクレイン原線維のプロテアーゼ切断を阻害する、抗α-シヌクレインモノクローナル抗体の能力;
(iii)F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を改善する、抗α-シヌクレインモノクローナル抗体の能力;
(iv)インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレインのレベルを減少させる、抗α-シヌクレインモノクローナル抗体の能力;および/または
(v)慢性的に投与されるときの、パーキンソン病のラットモデルにおける運動機能を回復させる、抗α-シヌクレインモノクローナル抗体の能力;
(vi)α-シヌクレインのシーディング(インビトロでのおよび/またはパーキンソン病のマウスモデルにおける不溶性リン酸化α-シヌクレインの蓄積など)を防ぐ能力;および/または
(vii)ヒトの脳における切断α-シヌクレインに結合する能力
であり、特に、このような変化した機能性は、構造変化の結果であり、したがってそれと切り離すことができない。
【0114】
自然発生する抗体を「実質的に含まない」という用語は、このような調製物におけるこのような自然発生する抗体の、または調製物のα-シヌクレイン結合特性を実質的に変更しないこのような調製物におけるある濃度のこのような自然発生する抗体の包含の完全な非存在を指す。抗体は、それが自然発生する対応物を有さないか、またはそれを自然に伴う成分から分離もしくは精製されている場合、「単離」されているといわれる。
【0115】
「自然発生する抗体」という用語は、それがこのような調製物に関する場合、生きたヒトまたは他の動物内で、それらの免疫系の機能の自然な結果として誘発される抗体(自然発生する自己抗体を含む)を指す。
【0116】
したがって、本発明の調製物は、抗α-シヌクレイン抗体、およびα-シヌクレインによって保有されないエピトープに結合することが可能な意図的に加えられるさらなる抗体を含有するこのような調製物を除外せず、実際は明確にそれを包含する。このような調製物は、特に、調製物が、パーキンソン病(特発性および遺伝性のパーキンソン病を含む)、ゴーシェ病、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症などのシヌクレイノパチーを治療する際に向上した有効性を示すその実施形態を含む。
【0117】
さらに他の態様において、本発明は、
(i)本明細書に定義される抗α-シヌクレイン抗体またはその抗原結合フラグメント、または調製物であって、このような用語が本明細書において定義される際、このような抗α-シヌクレイン抗体またはその抗原結合フラグメントを含む調製物、および
(ii)薬学的に許容できる担体
を含む医薬組成物に関する。
【0118】
医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,2013に開示されているものなどの従来の技術にしたがって、薬学的に許容できる担体または希釈剤ならびに任意の他の公知の補助剤および賦形剤とともに製剤化され得る。
【0119】
薬学的に許容できる担体または希釈剤ならびに任意の他の公知の補助剤および賦形剤は、本発明の選択された化合物および選択された投与方法に好適であるべきである。医薬組成物の担体および他の成分のための適合性は、本発明の選択された化合物または医薬組成物の所望の生物学的特性に対する大きな悪影響がないことに基づいて決定される(例えば、エピトープ結合に対するそれほど大きくない影響(10%以下の相対的阻害、5%以下の相対的阻害など))。
【0120】
本発明の医薬組成物は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、洗浄剤(例えば、Tween-20またはTween-80などの非イオン性洗浄剤)、安定剤(例えば、糖またはタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、組織固定剤、可溶化剤、および/または医薬組成物に含めるのに好適な他の材料も含み得る。希釈剤は、組合せの生物学的活性に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液である。さらに、医薬組成物または製剤は、他の担体、または非毒性の、非治療的、非免疫原性安定剤なども含み得る。組成物は、タンパク質、キトサンのような多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えば、ラテックス機能化(latex functionalized)セファロース、アガロース、セルロースなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)などの、大型のゆっくりと代謝される高分子も含み得る。
【0121】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、および投与方法に対する所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変化され得る。選択された投与量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、またはそのアミド、投与経路、投与時期、用いられる特定の化合物の排せつ速度、治療期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、病態、全体的な健康および過去の病歴、ならびに医療分野において周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に応じて決まる。
【0122】
医薬組成物は、予防的および/または治療的処置のための非経口、局所、経口または経鼻手段を含む、任意の好適な経路および方法によって投与され得る。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、非経口的に投与される。本明細書において使用される際の「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、通常、注射による、腸内および局所投与以外の投与方法を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外および胸骨内注射および注入を含む。インビボおよびインビトロで本発明の化合物を投与するさらなる好適な経路が、当該技術分野において周知であり、当業者によって選択され得る。一実施形態において、その医薬組成物は、静脈内または皮下注射または注入によって投与される。
【0123】
薬学的に許容できる担体としては、本発明の化合物と生理学的に適合性の、あらゆる好適な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが挙げられる。
【0124】
本発明の医薬組成物に用いられ得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油、およびゴマ油などの植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントガムおよび注射可能な有機酸エステル(オレイン酸エチルなど)、および/または様々な緩衝液が挙げられる。他の担体が、医薬品分野において周知である。
【0125】
薬学的に許容できる担体は、滅菌注射用溶液または分散体の即時調製用の滅菌水溶液または分散体および滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が想定される。
【0126】
適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散体の場合、所要の粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0127】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる酸化防止剤、例えば(1)水溶性酸化防止剤(アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);(2)油溶性酸化防止剤(パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど);および(3)金属キレート剤(クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)も含み得る。
【0128】
本発明の医薬組成物は、組成物中に糖類、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトール、グリセロールなど)または塩化ナトリウムなどの等張剤も含み得る。
【0129】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物の保存可能期間または有効性を向上させ得る、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤または緩衝液などの、選択された投与経路に適切な1つまたは複数の補助剤も含有し得る。本発明の化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤などの速放性から化合物を保護する担体とともに調製され得る。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性、生体適合性ポリマー(エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸など)を単独でまたはワックスまたは当該技術分野において周知の他の材料とともに含み得る。このような製剤の調製のための方法は、一般に、当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0130】
一実施形態において、本発明の化合物は、インビボでの適切な分配を確実にするように製剤化され得る。非経口投与用の薬学的に許容できる担体は、滅菌注射用溶液または分散体の即時調製用の滅菌水溶液または分散体および滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が想定される。補助的な活性化合物も、組成物に組み込まれ得る。
【0131】
注射用の医薬組成物は、典型的に、製造および貯蔵の条件下で、滅菌性かつ安定性でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬剤濃度に好適な他の規則構造として製剤化され得る。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、および注射可能な有機酸エステル(オレイン酸エチルなど)を含有する、水性または非水性溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体の場合、所要の粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール(グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収が、抗体の吸収を遅らせる物質、例えば、一ステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされ得る。滅菌注射用溶液は、例えば上に列挙されるような成分の1つまたは組合せを含む適切な溶媒中に所要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて、その後の滅菌精密ろ過によって調製され得る。一般に、分散体は、塩基性分散媒および例えば上に列挙される成分からの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0132】
滅菌注射用溶液は、上に列挙されるような成分の1つまたは組合せを含む適切な溶媒中に所要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて、その後の滅菌精密ろ過によって調製され得る。一般に、分散体は、塩基性分散媒および上に列挙される成分からの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0133】
治療の上記の方法および本明細書に記載される使用における投与計画は、最適な望ましい反応(例えば、治療反応)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、いくつかの分割量が、時間をかけて投与されてもよく、または用量が、治療状況の要件によって示されるように比例的に減少または増加されてもよい。非経口組成物は、投与のしやすさおよび投与の均一性のために単位剤形で製剤化され得る。本明細書において使用される際の単位剤形は、治療される被験体のための統一された投与量として適した物理的に別個の単位を指し;各単位は、所要の医薬担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の独自の特性および得られる具体的な治療効果、ならびに(b)個体における敏感性(sensitivity)の治療のためのこのような活性化合物の配合の技術分野に固有の制限に左右され、それらに直接依存する。
【0134】
抗α-シヌクレイン抗体の有効投与量および投与計画は、治療される疾患または病態に応じて決まり、当業者によって決定され得る。いずれの日も所定の投与量が投与され、投与量は、約0.0001~約100mg/kg、より通常は約0.01~約5mg/kg宿主体重の範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重または1~10mg/kg体重の範囲内であり得る。したがって、例示的な投与量としては、約0.1~約10mg/kg/体重、約0.1~約5mg/kg/体重、約0.1~約2mg/kg/体重、約0.1~約1mg/kg/体重、例えば約0.15mg/kg/体重、約0.2mg/kg/体重、約0.5mg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約1.5mg/kg/体重、約2mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、または約10mg/kg/体重が挙げられる。
【0135】
当該技術分野において通常の技能を有する医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師は、医薬組成物に用いられる抗α-シヌクレイン抗体の用量を、所望の治療効果を得るために必要とされるより少ないレベルから開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加し得る。一般に、本発明の組成物の好適な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最低用量である化合物の量であろう。このような有効用量は、一般に、上述される要因に応じて決まる。投与は、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下投与であり得る。必要に応じて、医薬組成物の有効1日用量は、任意選択的に単位剤形で、1日を通して適切な間隔で、別々に投与される2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の分割用量として投与され得る。本発明の化合物は、単独で投与されることが可能であるが、上述されるように医薬組成物として化合物を投与するのが好ましい。
【0136】
本発明の標識抗体は、疾患または障害を検出、診断、または監視するために、診断目的で使用され得る。本発明は、限定はされないが、パーキンソン病、特発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症または多系統萎縮症を含む、神経変性または認知疾患または障害の検出または診断を提供し、(a)α-シヌクレインに特異的に結合する1つまたは複数の抗体を用いて、被験体の細胞または組織試料内のα-シヌクレイン種およびフラグメントの存在を測定する工程と;(b)抗原のレベルを、制御レベル、例えば正常な組織試料におけるレベルと比較し、それによって、抗原の制御レベルと比較した、抗原の測定レベルの増加が、疾患または障害を示すか、または疾患または障害の重症度を示す工程とを含む。
【0137】
本発明の抗体は、当該技術分野において周知の免疫組織化学法を用いて、生物学的試料内のα-シヌクレインモノマー、オリゴマー、線維性形態またはα-シヌクレインのフラグメントを測定するのに使用され得る。タンパク質を検出するのに有用な他の抗体ベースの方法としては、酵素結合免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)およびメソスケールディスカバリープラットフォーム(mesoscale discovery platform)ベースのアッセイ(MSD)などの免疫測定法が挙げられる。好適な抗体標識が、このようなキットおよび方法に使用され得、当該技術分野において公知の標識としては、酵素標識(アルカリホスファターゼおよびグルコースオキシダーゼなど);放射性同位体標識(ヨウ素(125I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(121In)、およびテクネチウム(99mTc)など);および発光標識(ルミノールおよびルシフェラーゼなど);および蛍光標識(フルオレセインおよびローダミンなど)が挙げられる。
【0138】
標識抗α-シヌクレイン抗体またはそれらのα-シヌクレイン結合フラグメントの存在は、診断目的で、インビボで検出され得る。一実施形態において、診断は、a)有効量のこのような標識分子を被験体に投与する工程;b)投与後、所定の時間間隔にわたって待機して、標識分子を、Aβ堆積の部位(もしあれば)で濃縮させ、非結合標識分子が、バックグラウンドレベルになるまで除去されるのを可能にする工程;c)バックグラウンドレベルを決定する工程;およびd)バックグラウンドレベルを超える標識分子の検出が、被験体が疾患または障害に罹患していることを示すか、または疾患または障害の重症度を示すように、被験体中の標識分子を検出する工程を含む。このような実施形態によれば、分子は、当業者に公知の特定のイメージングシステムを用いた検出に好適なイメージング部分で標識される。バックグラウンドレベルは、検出された標識抗体の量を、特定のイメージングシステムのために予め決定された標準値と比較することを含む、当該技術分野において公知の様々な方法によって決定され得る。本発明の診断法に使用され得る方法およびシステムとしては、限定はされないが、コンピュータ断層撮影法(CT)、ポジトロン放出型断層撮影法(PET)などの全身スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、および超音波検査法が挙げられる。
【0139】
さらなる態様において、本発明は、医療に使用するための、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0140】
さらなる態様において、本発明は、シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするのに使用するための、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0141】
一実施形態において、モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントは、パーキンソン病、特発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症または多系統萎縮症を治療するのに使用するためのものである。
【0142】
さらなる態様において、本発明は、シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造における、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントの使用に関する。
【0143】
さらなる態様において、本発明は、有効投与量の本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む、パーキンソン病または他のシヌクレイノパチーの治療、診断またはイメージングに関する。
【0144】
好ましくは、本発明のそれらの態様の使用および方法において、治療は、長期であり、好ましくは、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれ以上にわたる。
【0145】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントを含むキットを提供する。
【0146】
【表5】
【0147】
本発明の実施形態
本文および実施例から明らかであろうように、本発明はさらに、以下の実施形態に関する。
【0148】
1.α-シヌクレインにおけるアミノ酸112~117(配列番号9(ILEDMP))内のエピトープに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0149】
2.前記エピトープへの結合について抗体GM37と競合する、実施形態1に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0150】
3.GM37、GM37変異体1、GM37変異体2またはGM37変異体3である、実施形態1に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0151】
4.α-シヌクレインにおけるアミノ酸112~115(配列番号19(ILED))内のエピトープに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0152】
5.GM285である、実施形態1または4に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0153】
6.抗体が、無傷の抗体を含むかまたはそれからなる、先行する実施形態に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0154】
7.Fvフラグメント(例えば一本鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えばFabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)フラグメント)およびドメイン抗体(例えば単一のV可変領域またはV可変領域)からなる群から選択される抗原結合フラグメントを含むかまたはそれからなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0155】
8.モノクローナル抗体が、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の抗体からなる群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0156】
9.抗体または抗原結合フラグメントが、以下の特性:
(i)1~5nMまたは1~2nMなどの、0.5~10nMのα-シヌクレインに対する結合親和性(K);
(ii)α-シヌクレイン原線維のプロテアーゼ切断を阻害する能力;
(iii)F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を改善する能力;
(iv)インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレインのレベルを減少させる能力;
(v)慢性的に投与されるとき、パーキンソン病のラットモデルにおける運動機能を回復させる能力;
(vi)α-シヌクレインのシーディング(インビトロでのおよび/またはパーキンソン病のマウスモデルにおける不溶性リン酸化αシヌクレインの蓄積など)を防ぐ能力;および/または
(vii)ヒトの脳における切断α-シヌクレインに結合する能力
の1つまたは複数を示す、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0157】
10.ヒトまたはヒト化抗体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0158】
11.以下のCDR:
a)GFTFSSYAMT(配列番号1)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列;
b)AIRS(N/S/Q/H)GDRTD YADSVKG(配列番号2、33、34、35)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列;または
c)AKNWAPFDS(配列番号3)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体または実施形態1~3および6~10に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0159】
12.配列番号1および3ならびに配列番号2および33、34または35のうちの1つのCDRを含む重鎖可変領域を含む、実施形態11に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0160】
13.
【化2】
からなる群から選択される重鎖可変領域を含むかまたはそれからなる、実施形態11に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0161】
14.以下のCDR:
a)ASQSVSSSYLA(配列番号4)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列;
b)GASSRAT(配列番号5)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列;または
c)QQYGSSPWT(配列番号6)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体または実施形態1~3および6~13に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0162】
15.配列番号4、5および6のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、実施形態14に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0163】
16.アミノ酸配列:
【化3】
を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態14に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0164】
17.アミノ酸配列:
【化4】
を含むかまたはそれからなる軽鎖を含む、実施形態14に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0165】
18.配列番号8のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号7、33、34または35のいずれかで示されるアミノ酸を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態1~3および6~17に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0166】
19.図27に示されるように凝集またはアンフォールドを防ぐように増加された安定性などの、増加した熱安定性を有し、GM37 wtと比較して65℃超の温度で2%~10%高く安定性であり、GM37 wtと比較して65℃超の温度で2%~8%高く安定性であり、またはGM37 wtと比較して65℃超の温度で2%~5%高く安定性である、配列番号8のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖および配列番号34で示されるアミノ酸を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態1~3および6~18に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0167】
20.以下のCDR:
a)AASGFTFSRFTMT(配列番号20)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列;
b)AISGSGGGTS YADSVKG(配列番号21)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列;または
c)AKNWAPFDY(配列番号22)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体または実施形態1~10に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0168】
21.配列番号20、21および22のCDRを含む重鎖可変領域を含む、実施形態20に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0169】
22.アミノ酸配列
【化5】
を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態20に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0170】
23.以下のCDR:
d)RASQSVSRSYLA(配列番号23)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列;
e)GASSRAT(配列番号24)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列;または
f)QQYGSSPWT(配列番号25)または4つ以下のアミノ酸差、または3つ以下のアミノ酸差、または2つ以下のアミノ酸差、または1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体または実施形態1~10および20~22のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0171】
24.配列番号23、24および25のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、実施形態23に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0172】
25.
【化6】
のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態24に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0173】
26.配列番号27のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号26のいずれかで示されるアミノ酸を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0174】
27.Fc領域を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0175】
28.物質の生体内半減期を増加させるための部分をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0176】
29.生体内半減期を増加させるための部分が、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒト血清アルブミン、グリコシル化基、脂肪酸およびデキストランからなる群から選択される、実施形態28に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0177】
30.抗体ポリペプチドが、検出可能な部分をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0178】
31.検出可能な部分が、蛍光標識、化学発光標識、常磁性標識、放射性同位体標識または酵素標識である、実施形態30に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0179】
32.検出可能な部分が、放射性同位体を含むかまたはそれからなる、実施形態30または31に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0180】
33.放射性同位体が、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As,89Zr、123Iおよび201Tlからなる群から選択される、実施形態32に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0181】
34.検出可能な部分が、常磁性同位体を含むかまたはそれからなる、実施形態30に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0182】
35.常磁性同位体が、157Gd、55Mn、162Dy、52Crおよび56Feからなる群から選択される、実施形態34に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0183】
36.検出可能な部分が、SPECT、PET、MRI、光学または超音波イメージングなどのイメージング技術によって検出可能である、実施形態30~35のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0184】
37.検出可能な部分が、結合部分を介して、間接的に抗体またはその抗原結合フラグメントに結合される、実施形態30~36のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0185】
38.結合部分が、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10,四酢酸(DOTA)の誘導体、デフェロキサミン(DFO)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)の誘導体および1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)の誘導体からなる群から選択される、実施形態37に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0186】
39.先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合フラグメントまたはその成分ポリペプチド鎖をコードする単離核酸分子。
【0187】
40.分子がcDNA分子である、実施形態39に記載の核酸分子。
【0188】
41.抗体重鎖またはその可変領域をコードする、実施形態30または31に記載の核酸分子。
【0189】
42.抗体軽鎖またはその可変領域をコードする、実施形態39~41のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0190】
43.実施形態39~42のいずれか1つに記載の核酸分子を含むベクター。
【0191】
44.実施形態39~42のいずれか1つに記載の核酸分子または実施形態43に記載のベクターを含む組み換え宿主細胞。
【0192】
45.実施形態1~27のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合フラグメントを産生するための方法であって、コードされた抗体またはその抗原結合フラグメントの発現を可能にする条件下で、実施形態44に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
【0193】
46.実施形態1~35のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントと、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【0194】
47.医療に使用するための、実施形態1~35に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0195】
48.シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするのに使用するための、実施形態1~35に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0196】
49.パーキンソン病(特発性および遺伝性のパーキンソン病を含む)、ゴーシェ病、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症を治療するのに使用するための、実施形態48に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0197】
50.シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造における、実施形態1~35に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【0198】
51.パーキンソン病(特発性および遺伝性のパーキンソン病を含む)、ゴーシェ病、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症を治療するための薬剤の製造における、実施形態50に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【0199】
52.被験体におけるシヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングする方法であって、実施形態46に記載の医薬組成物を、有効量で前記被験体に投与する工程を含む方法。
【0200】
53.パーキンソン病(特発性および遺伝性のパーキンソン病を含む)、ゴーシェ病、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症を治療するための、実施形態48に記載の使用のための抗体、またはその抗原結合フラグメント、または実施形態50に記載の使用、または実施形態52に記載の方法。
【0201】
54.治療が長期である、実施形態52または53に記載の使用のための抗体、またはその抗原結合フラグメント;または使用;または方法。
【0202】
55.長期治療が、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれ以上にわたる、実施形態52に記載の使用のための抗体、またはその抗原結合フラグメント;または使用;または方法。
【0203】
56.被験体がヒトである、実施形態47~55のいずれか1つに記載の使用のための抗体、またはその抗原結合フラグメント;または使用;または方法。
【0204】
57.実施形態1~35に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含むキット。
【0205】
58.医療に使用するための、実施形態57に記載のキット。
【0206】
59.被験体の脳または体液中の前記α-シヌクレインの存在または量を検出または測定するのに使用するための、実施形態30~35に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0207】
60.前記検出または測定が、前記α-シヌクレインに結合された前記抗シヌクレイン抗体のインビボイメージングを含む、実施形態59に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0208】
61.前記検出または測定が、前記α-シヌクレインに結合された前記抗シヌクレイン抗体のエクスビボイメージングを含む、実施形態30~35に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【実施例
【0209】
実施例1:抗体スクリーニング
1.免疫原およびリガンド産生
以下のタンパク質を、図1に示される免疫原として使用するための取得または産生した。マウスを3つの免疫原で免疫した:完全長組み換えヒトα-シヌクレイン原線維;アミノ酸1~60を含有するヒトα-シヌクレイン組み換えタンパク質(Rpeptide,Bogart,Georgia)およびアミノ酸1~119を含有するヒトα-シヌクレイン組み換えタンパク質。完全長α-シヌクレインから原線維を作製するために、Rpeptide(Bogart,Georgia)製の凍結乾燥製品(カタログ番号S-1001-2)を使用した。これを、1mg/mlのタンパク質の濃度で、20mMのトリスおよび300mMのNaCl緩衝液に溶解させた。原線維を作製するために、7日間にわたって37℃で、Vortemp 56シェーカーインキュベータ(Labnet International,Edison,NJ,USA)において200rpmで各ウェル中に直径70μmのセラミックビーズを含む96ウェルプレート中で、タンパク質溶液を170μlのアリコートでインキュベートし、原線維の形成の後、チオフラビンTを加え、ウェルの1つにおける蛍光を測定した。アミノ酸1~60を含有する組み換えα-シヌクレインを、水に溶解させて、1mg/mlの濃度を得た。
【0210】
アミノ酸1~119を含有する組み換えα-シヌクレインを、以下の構築物を用いて作製した:6つのアミノ酸ヒスチジンタグをコードする合成遺伝子、続いて、Xa因子切断部位およびヒトα-シヌクレインアミノ酸1~119をコードする配列:
【化7】
を、Genscriptによって合成し、pET24a(+)発現ベクター(Novagen)におけるNdeI-XhoI部位へとクローニングした。
【0211】
発現ベクターを、大腸菌(E.coli)BL21へと形質転換させ、Novagen製のovernight express自己誘導システム(User protocol TB383 rev.H1005)を用いて、単一コロニーを発現のために採取した。規模は、500mlの最終培養物体積であった。細胞を6000gで10分間の遠心分離によって採取し、続いて、BugBusterタンパク質抽出試薬(User protocol TB245 Rev.0304)を用いて溶解させた。溶解の後、試料を遠心分離によって取り除き、上清をさらなる精製に使用した。
【0212】
Hisタグ化タンパク質を、20mMのリン酸ナトリウムpH7.5、1MのNaCl(A-緩衝液)中で平衡化された5mlのHisTrapカラム(GE healthcare)上で精製した。試料の適用およびA-緩衝液を用いた洗浄の後、タンパク質を、20カラム体積にわたってA-緩衝液中の0.25Mのイミダゾールの勾配になるまで溶離した。5mlの画分を収集し、SDS-PAGEによって分析した。該当するタンパク質を含む画分をプールし、濃縮し、10mMのトリスpH7.4、300mMのNaCl中でS200(26/60)サイズ排除カラム(GE healthcare)に適用した。再度、画分を、SDS-PAGEにおける予測サイズを有するバンドの存在に応じてプールした。
【0213】
N末端タグを除去するために、精製されたhisタグ化α-シヌクレイン1~119を、Novagenキット(69037-3FRX)を用いて、1:50の分配量で、Xa因子とともにインキュベートした。一晩のインキュベーションの後、Xa因子を、Xarrestアガロースを用いてバッチ式に除去した。切断されたα-シヌクレイン1~119を、上述されるように許容(permissive)HisTrapクロマトグラフィーによって最後に精製した。通過画分(flow through)から、精製されたα-シヌクレイン1~119が得られ、それを、centricon濃縮装置を用いて約400μg/mlになるまで濃縮した。
【0214】
α-シヌクレイン(Rpeptide)を、2mg/mlで、PBS中で再水和し、ペルオキシナイトライト(peroxynitirite)(100μL/mgのタンパク質)を、混合しながら滴下して加えた。次に、ニトロシル化α-シヌクレインを、5LのPBS中で透析し、-20℃で貯蔵した。
【0215】
ドーパミンを用いて、α-シヌクレインを酸化した。10mMのPBS、pH7.4中で調製されたドーパミン-HCL(Sigma P5244)の等体積の200uMの溶液および10mMのPBS、pH7.4中のα-シヌクレイン(Rpeptide)の28μMの溶液を組み合わせた。得られた14uMのα-シヌクレイン/100uMのドーパミンを、37℃でO/N(一晩)インキュベートした。次に、酸化されたα-シヌクレインを、PBS中で透析し、-20℃で貯蔵した。
【0216】
様々な天然およびキメラ形態のシヌクレインタンパク質を、抗α-シヌクレイン抗体の多様なライブラリーをスクリーニングするために産生した。スクリーニング構築物は、以下のものを含んでいた:ヒト、マウス、ラットおよびカニクイザルα-シヌクレイン、ヒトβ-シヌクレイン、ヒトγ-シヌクレイン(図21および22)および最後に、α-シヌクレインの残基120~140が欠如したα-シヌクレイン誘導体。さらに、一連の4つのシャッフル構築物(shuffle construct):A-Syn-AAKK-BAP、A-Syn-BAAK-BAP、A-Syn-BBAA-BAP、A-Syn-BBKK-BAP(配列番号11~14)を産生した。これらの構築物は、ヒトα-シヌクレイン(A)、ヒトβ-シヌクレイン(B)およびニワトリα-シヌクレイン(K)の線形伸長(linear stretch)を含んでいた。リガンドのそれぞれの部位特異的ビオチン化を促進するために、リガンドのC末端に融合されたビオチン受容体ペプチド(BAP)タグを含む遺伝子をクローニングした。ビオチン化は、可溶性ELISAフォーマットに使用されるビーズへのリガンドの結合を可能にした。様々なα-シヌクレインBAPタグ融合構築物(ASynBAP)を保有する哺乳動物発現ベクターを構築した。リガンドを、一過性トランスフェクション(Genmab A/S)を用いて、HEK 293細胞内で発現させた。
【0217】
2.免疫化
抗体HuMab-シヌクレインは、完全にマウスである抗体の発現を防ぐよう、マウス免疫グロブリン(Ig)重鎖およびマウスκ軽鎖をダブルノックアウトされた、HuMAbマウス株HCo17-BALB/cおよびHCo12-BALB/cマウスの免疫化から得られた(ヒトモノクローナル抗体;Medarex Inc.,San Jose,CA,USA)。様々なマウス株を、ヒトIg重鎖およびヒトIg κ軽鎖遺伝子座の挿入によってトランスジェニックにし、これは、ヒトVH(重鎖の可変領域)およびVL(軽鎖の可変領域)遺伝子の数が異なる。
【0218】
48匹のマウスを、14日間の間隔を空けて、20μgの抗原で腹腔内に(IP)および同じ免疫原で皮下に(SC、尾基底に)交互に免疫した。4回のIPおよび4回のSCで、最大で8回の免疫化を行った。
【0219】
第1の免疫化を、完全フロイントアジュバント(CFA;Difco Laboratories,Detroit,MI,USA)中のα-シヌクレイン免疫原で行い、次の免疫化を不完全フロイントアジュバント(IFA)中で行った。血清抗体価が十分であることが分かった(1/50以下の血清の希釈物が、少なくとも2回連続の、隔週のスクリーニング事象において、本明細書において上述される抗原特異的スクリーニングアッセイにおいて陽性であることが分かった)とき、マウスに、融合の4および3日前に、100μLのPBS中の10μgのα-シヌクレイン免疫原タンパク質を静脈内に(IV)2回さらに投与した(boost)。
【0220】
免疫化プロトコルが、図1に示される。
【0221】
抗体37は、アミノ酸1~60および1~119を含むα-シヌクレインC末端切断型と交互に、ヒト完全長α-シヌクレイン-原線維を使用した免疫化プロトコルから得られた。
【0222】
抗体285は、ヒトα-シヌクレイン-モノマー1~140を最初の4回の免疫化に使用した免疫化プロトコルから得られた。抗体価がない場合、免疫化を、原線維(ip/sc)を用いて続け、あるいは、免疫化を、モノマーを用いて続けた。
【0223】
3.HuMabハイブリドーマ生成
上に定義される十分な抗原特異的抗体価発現を有するHuMAbマウスを殺処分し、腹部大動脈および大静脈に隣接する脾臓およびリンパ節を採取した。マウス骨髄腫細胞株との脾細胞およびリンパ節細胞の融合は、基本的に製造業者の指示にしたがって、CEEF 50 Electrofusion System(Cyto Pulse Sciences,Glen Burnie,MD,USA)を用いた電気融合によって行った。融合細胞を、HyQ mADCF-Mab(Perbio)中の10%のFetal Clone I Bovine血清(Perbio)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Cambrex)、0.5U/mLのペニシリン、0.5U/mLのストレプトマイシン(Cambrex)、50μMの2-メルカプトエタノール(Invitrogen)、600ng/mLのインターロイキン6(IL-6)(Strathmann)、1×HAT(Sigma)および0.5mg/mLのカナマイシン(Invitrogen)を含有する融合培地に播種した。10日後、上清を収集し、細胞を、HyQ mADCF-Mab中の10%のFetal Clone I Bovine血清、0.5U/mLのペニシリン、0.5U/mLのストレプトマイシン、600ng/mLのIL-6および1×proHT(Cambrex)を含有する収集培地で洗浄した。ハイブリドーマ培養物の上清を、一次スクリーニングアッセイによってスクリーニングした。上清を、8つの異なるリガンドへの結合について特性評価した。これらは、4つのオルソログ:ヒト、マウス、ラットおよびカニクイザル、ヒトα-シヌクレインβ-シヌクレインおよびヒトγ-シヌクレイン(配列番号37~41)を含み、最後に、それらを、α-シヌクレインの残基120~140が欠如したヒトα-シヌクレイン誘導体に結合するそれらの能力について試験した。
【0224】
抗α-シヌクレイン抗体のスクリーニングを、自動液体分注システム(automated liquid handling system)(Genmab A/S)を用いて、ハイスループット懸濁ELISAフォーマットを用いて行った。プレートの読み取りを、2つのシステムによって行い、Applied Biosystems製のFMAT 8200を用いて、384ウェルプレートを読み取り、Molecular Devices製のImageXpress Velos Cytometerを用いて、1536ウェルプレートを読み取った。
【0225】
一次スクリーニングにおいて、クローンを、8つの異なるリガンドに結合するそれらの能力によって特性評価した。これらは、一連の4つのシャッフル構築物:A-Syn-AAKK-BAP、A-Syn-BAAK-BAP、A-Syn-BBAA-BAP、A-Syn-BBKK-BAP(配列番号11~14)、α-シヌクレイン120~140欠失-BAP、ニトロ化ヒトα-シヌクレイン-BAPおよび酸化ヒトα-シヌクレイン-BAPを含んでいた。
【0226】
簡潔に述べると、α-シヌクレイン特異的抗体を潜在的に含有する血清または上清を、ビーズに加えて、α-シヌクレインおよび/またはα-シヌクレイン由来の構築物への結合を可能にする。抗α-シヌクレイン抗体の結合は、蛍光コンジュゲート、DyLight649共役ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)を用いて検出される。2つの公知のマウス抗α-シヌクレイン抗体、LB509およびSyn211が、陽性対照としてスクリーニングに含まれていた。α-シヌクレイン抗体の特異的検出を確実にするために、抗α-シヌクレイン血清プールが、384ウェルフォーマット抗体価スクリーニングにおいて陰性対照として使用される一方、ヒトChromPure IgGが、1536ウェルフォーマット8-ビーズに基づくアッセイにおいて使用される。
【0227】
最も良好な一次ウェルからのハイブリドーマ細胞を、40%のCloneMedia(Genetix,Hampshire,UK)および60%のHyQ 2×完全培地(Hyclone,Waltham,USA)から作製された半固形培地に播種した。各一次ウェルについて、Genetix黒色6-ウェルプレートのウェルを播種した。各ウェルから、ClonePixシステム(Genetix)を用いて25個のサブクローンを採取した。サブクローンを収集培地中に採取した。7日後、サブクローンの上清を、シヌクレイン特異的ヒトIgG結合について再度スクリーニングし、ヒトIgG濃度を、Octet(Fortebio,Menlo Park,USA)を用いて測定した。各一次ウェルから、最も良好なサブクローンを選択し、600ng/mLのIL-6、0.5U/mLのペニシリン、0.5U/mLのストレプトマイシンおよび1×proHTのみを含有する展開培地(expansion medium)中で展開させた。このサブクローンを、1つの96ウェルプレートウェルから1つの24ウェルプレートウェルへ、4つの24ウェルプレートウェルへ、6つの6ウェルプレートウェルへと展開させた。このプロセスによって得られたクローンを、初代クローン(PC)と表した。
【0228】
さらなる抗体結合研究を、Octet 384RED(Fortebio,Menlo Park,USA)を用いて行った。2μg/mlのHuMab抗体溶液を、試料希釈剤(ForteBio,art.No.18-5028)中での希釈によって作製した。アミン反応性センサー(ForteBio,art.no.18-0008)を、HuMabの固定化に使用した。アミン反応性センサーへのカップリングの前に、HuMabを、MES pH6.0緩衝液(18-5027)中で希釈した。カップリングを、30℃および1000rpmで、以下のとおりに行った:アミン反応性センサーを、PBS中で予め湿らせ、続いて、300秒間にわたって(製造業者の指示にしたがって)EDC/NHS(ForteBio.Art.no.18-1033/18-1034)活性化溶液で活性化した。活性化センサーを、600秒間、HuMabで固定化した。
【0229】
組み換えヒト、カニクイザルおよびマウスα-シヌクレインへの、Octet中の37および285の結合、およびヒトβまたはγ-シヌクレインへの結合の欠如が図2に示される。
【0230】
4.シヌクレイン特異的HuMab可変領域の配列分析および発現ベクターにおけるクローニング
製造業者の指示にしたがって、SMART RACE cDNA Amplificationキット(Clontech)を用いて、全RNAを、0.2~5×106個のハイブリドーマ細胞から調製し、5’-RACE-相補的DNA(cDNA)を、100ngの全RNAから調製した。VHおよびVLコード領域を、PCRによって増幅させ、ライゲーション非依存クローニング(Aslanidis,C.and P.J.de Jong,Nucleic Acids Res 1990;18(20):6069-74)によって、p33G1fおよびp33κ発現ベクター(ヒトIgG1/κ定常領域コード配列を含む)中で、フレーム内で、直接クローニングした。各抗体について、16個のVLクローンおよび16個のVHクローンをシークエンシングした。適切なオープンリーディングフレーム(ORF)を有するクローンを、さらなる研究および発現のために選択した。重鎖および軽鎖の全ての組合せのベクターを、293fectinを用いて、FreestyleTM 293-F細胞中で一時的に共発現させた。
【0231】
GM37の場合、VH領域のシークエンシングにより、位置106におけるCDR3領域中の余分なシステインが同定された。誤った折り畳みの可能性およびジスルフィド結合形成による抗体活性の低下の可能性を推定するために、システインを、位置106でセリンへと突然変異させた。
【0232】
比較用抗体9E4を、ハイブリドーマPTA-8221に由来するVHおよびVL配列(米国特許出願公開第20080175838号明細書)(配列番号42および43)に基づいて作製した。
【0233】
5.抗体の発現/精製
抗体を、一過性トランスフェクション剤としてpTT5ベクターおよびPEIpro(National Research Council of Canada)を用いた、HEK293 6E細胞中でのトランスフェクションによって産生した。簡潔に述べると、重鎖および軽鎖を、PEIpro(VWR)を用いてHEK293細胞へとトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後、細胞にTN1(Sigma)を補充した。生存率が50%に近づくまで細胞を増殖させ、抗体の収量をeasy IgG titre(Thermo)によって測定した。培養物の上清を、0.2μmのデッドエンドフィルタ上でろ過し、5mLのタンパク質Aカラム(rProtein A FF,Amersham Bioscience)に充填し、0.1Mのクエン酸-NaOH、pH3で溶離した。溶出液を、2Mのトリス-HCl、pH9で直ちに中和し、12.6mMのNaHPO、140mMのNaCl、pH7.4(B.Braun)に対して一晩(O/N)透析した。透析の後、試料を、0.2μmのデッドエンドフィルタ上で滅菌ろ過した。純度をSDS-PAGEによって決定し、濃度を比濁法および280nmでの吸光度によって測定した。精製された抗体を分割し、-80℃で貯蔵した。
【0234】
実施例2:表面プラズモン共鳴を用いた抗体の特性評価
α-シヌクレインへの抗体のリアルタイムの結合を、BIAcore(登録商標)3000を用いて測定した。捕捉表面を、CM5チップ(BIAcore(登録商標))の第1のフローセル(Fc1)および第2のフローセル(Fc2)中で、ポリクローナルウサギ抗マウス抗体(Mouse Antibody Capture Kit(GE Healthcare,Cat.no:BR-1008-38)の一部)をアミンカップリングすることによって調製した。マウス抗体を、約500RUのリガンドレベルを達成するのに必要な濃度で、Fc2中で捕捉した。検体(ASynBAP)を30μl/分でFc1~2中に注入する前に、ベースラインを10分間安定させた。ASynBAPを、それぞれ100~3200nMおよび25~3200RUで試験した。それぞれの一連の滴定における最高濃度は、二連で試験した。各サイクルの最後に、表面を10mMのグリシン-HCl、pH1.7(30秒の注入)で再生して、捕捉されたマウス抗体および検体を除去した。HBS-EP(GE Healthcare,Cat.No:BR-1001-88)を、全ての実験において試験緩衝液および試料希釈剤として使用し、アッセイを25℃で行った。全ての試料を、収集する前に4℃に保持した。
【0235】
捕捉抗体が固定されたが、α-シヌクレイン抗体が捕捉されていない、Fc1に記録された応答値を、Fc2における応答値から差し引いた。1:1または2:1の結合アルゴリズムを、BIAevaluationソフトウェアバージョン4.1.1を用いてデータセットに適合させた。結果が図3、4および5に見られ、これらの図は、ヒトα-シヌクレインへの抗体37、285および9E4の結合を示す。
【0236】
実施例3:エピトープマッピング
α-シヌクレインに対する抗体のエピトープマッピングを、Pepscan(Pepscan Zuidersluisweg 2 8243 RC Lelystad,the Netherlands)において一連の重複直鎖ペプチドを用いて行った。合成された20量体ペプチドのそれぞれに対する抗体の結合を、Pepscanに基づくELISAにおいて試験した。α-シヌクレインの全コード配列をカバーする直鎖ペプチドアレイ、ならびに酸化メチオニンまたはニトロシル化チロシンを含む全てのペプチドを、(4℃で一晩)一次抗体溶液とともにインキュベートした。洗浄後、ペプチドアレイを、25℃で1時間にわたって1/1000希釈率の抗体ペルオキシダーゼコンジュゲート(SBA,cat.nr.2010-05)とともにインキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンゾチアゾリンスルホネート(ABTS)および2μl/mlの3パーセントのH2O2を加えた。1時間後、発色を測定した。発色を、電荷結合素子(CCD)-カメラおよび画像処理システムを用いて定量化した。データ処理のために、標準的な96ウェルプレートELISAリーダーと同様に、0~3000mAUのCCDカメラ範囲からの値を得た。結果を定量化し、Peplabデータベースに保存した。時々、ウェルは、偽陽性値をもたらす気泡を含み、カードを手動で調べて、気泡によって生じる値を0として採点する。それぞれ配列ILEDMPまたはILEDを含有するペプチドへの抗体37および285の結合データが、図7に見られる。
【0237】
実施例4:レビー小体認知症に罹患した患者に由来する帯状皮質のヒト脳ホモジネートからのα-シヌクレインの免疫沈降
ヒトDLBまたは健常対照(で印を付けられる)に由来する帯状皮質の粗ホモジネートからのα-シヌクレインに結合し、破壊する抗体の能力を、免疫沈降によって分析した。ヒト帯状皮質に由来する凍結した試料(Tissue Solutions Ltd,Scotlandから入手した)を、低温保持装置中で切断し、100mgの試料を、プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤(Roche)を含有する1600μlのcellytic M細胞融解試薬(Sigma C2978)に加えた。5000rpmで4×30秒間、Precellysビーズホモジナイザー(Bertin technologies,France)を用いて試料が完全に溶解されるまで、脳組織を均質化した。溶液を3000×gで遠心分離し、上清を免疫沈降のための粗ホモジネートとして使用した。
【0238】
免疫沈降のために、10μgの抗体を、製造業者の指示(Life Technologies,Paisley,UK)を用いて、磁気Dynabeadsタンパク質Gビーズと混合した。粗脳ホモジネートを、溶解緩衝液(Sigma)中で30倍希釈した。抗体結合dynabeadsを、500ulの希釈されたホモジネートと混合し、回転器中で連続混合しながら、室温で90分間インキュベートした。インキュベーションの後、ビーズを洗浄緩衝液中で洗浄し、結合抗原を、製造業者の指示(Dynabeads G protocol,Life Technologies,Paisley UK)にしたがって、非変性溶出緩衝液を用いて溶離した。免疫沈降の収量を、検出マウスモノクローナル抗ヒトα-シヌクレイン抗体(4B12,Thermo Scientific)を用いたウエスタンブロット法によって視覚化した。破壊されているα-シヌクレインの様々な分子量形態を表すバンドのパターンは、37、37v2および285抗体が、主要なα-シヌクレイン種、完全長α-シヌクレイン(FL asyn 1~140)およびC末端末端切断種(1~135および1~119/122)を免疫沈降させ得る一方、抗体9E4は、切断種1~119/122を免疫沈降させることができない点で、37、37変異体2および285抗体と、比較用抗体9E4とで異なる(図9)。
【0239】
実施例5:細胞培養物中の抗体によるα-シヌクレイン原線維のプロテアーゼ切断の阻害
組み換えα-シヌクレインモノマーおよび原線維は、培養物中で初代ニューロンによって取り込まれ得る。図10に概略的に示されるように、ニューロン中へのα-シヌクレインの取り込みの後、それは、アミノ酸119/122における主要なプロテアーゼ感受性部位で、カルパインIなどの細胞内プロテアーゼによってプロセシングされ得る。プロテアーゼによるα-シヌクレインの切断を調べるために、マウス初代皮質ニューロンを、Elvang et al.2009(Elvang et al..J Neurochem.2009;110(5):1377-87)に記載されるように調製し、星状膠細胞の増殖を阻害するために、DIV3(インビトロで3日間)で、シタラビンで処理した。DIV4(インビトロで4日間)で、ニューロンを、0.7μMの最終濃度の(カップホーン超音波処理器中で、50%の電力で5分間)超音波処理された予め形成されたα-シヌクレイン原線維(PFF)で、単独でまたは示される濃度の抗体と一緒に処理した。24時間のインキュベーションの後、培地を収集し、細胞を溶解させた。ウエスタンブロットを、4B12抗体(図11A)(Pierce MA1-90346)および二次抗マウス抗体を用いて、培地および細胞溶解物の両方において行った。4B12+抗マウスでプローブした後、ブロットを剥がし、抗ヒト-IgG抗体で再度プローブした。4B12でのブロット上では、PFFのみで処理された細胞からの培地において、14および12kDaにおいて強いバンドがあることが分かり、ここで、14kDaが、完全長α-シヌクレイン(FL-asyn)を表し、12kDaが、C末端切断フラグメント1~119/122(CT-asyn)を表す。それに加えて、SDS抵抗性オリゴマー種を表す可能性が最も高い、より高い分子量のバンドがあった。アイソタイプ対照抗体B12による併用処理は、タンパク質分解または取り込みのこのパターンを変化させなかった。
【0240】
37と一緒に原線維で処理された細胞からの培地において、主に、完全長α-シヌクレイン(14kD)およびごく少量の末端が切断されたバンド(12kD)があった。37と一緒に原線維で処理された細胞からの細胞溶解物において、完全長α-シヌクレインのみがあり、これは、37がFL-α-シヌクレインの切断を防ぐことを示す。さらに、FL-α-シヌクレインの総量が、PFFのみまたはB12対照抗体で処理された細胞に関して減少される。いくつかのグループ(Games et al,Am J of Pathol,Vol.182,No.3,March,2013;Ritchie et al,Health,Vol.4,Special Issue,1167-1177,2012;Mishizen-Eberz,Biochemistry,2005,44,7818-7829;Dufty et al,Am J of Pathol,Vol.170,No.5,May 2007)によって、α-シヌクレインがカルパイン-1によって切断され得ることが示された。原線維化(fibrillized)α-シヌクレインのためのカルパイン-1の切断部位が、領域114~122にあることが分かった(Mishizen-Eberz,J of Neurochem,86,836-847,2003)。インビボで、トランスジェニック動物およびヒト脳内で、1~119/122が、α-シヌクレインにおける主な切断産物であるようであり、切断は、アスパルテ(asparte)119またはアスパラギン122の後にある可能性が高く、これは、アスパラギン酸塩へと脱アミド化され、カルパインまたは同様の切断特異性を有する別のプロテアーゼによって切断される。これらの結果は、抗体37が、α-シヌクレインのC末端切断を阻害することができることを示す。抗体37のエピトープは、酵素カルパイン-1結合部位と重なるため、α-シヌクレインへの37の結合は、カルパイン-1によって仲介される結合および切断を直接阻害し得る(図10および11)。
【0241】
285のエピトープは、37のエピトープを重なり、プロテアーゼ切断を阻害することも予測され得る。37v2のアミノ酸配列は、CDRにおいて1つのアミノ酸における37が異なるに過ぎず、37と同様の結合を有するため、37v2も、37と同様にプロテアーゼ切断を阻害することが予測されるであろう。抗体の効果が用量依存的であるかどうかを調べるために、初代皮質ニューロンへのPFFおよび抗体の同時添加による24時間実験を設定した。PFFの濃度は安定していたが(10μg/ml)、試験される対照抗体B12、および抗体37、37v2および285の濃度は、10、5、1および0.1ug/mlであった。ウエスタンブロット上のα-シヌクレインを、1904/4B12抗体(Abcam)を用いて検出し、この抗体は、領域103~108内のエピトープを有するため、FLおよびC末端切断α-シヌクレインの両方に結合する(図11B)。図11Bから分かるように、GM37、37v2およびGM285はいずれも、プロテアーゼ切断の用量依存的阻害を有し、高い濃度の抗体で切断のほぼ完全な阻害を有する。
【0242】
実施例6:細胞培養物中のα-シヌクレイン凝集のシーディングの抗体に仲介される阻害
いくつかの研究により、組み換えαシヌクレイン線維状凝集体の外からの添加が、細胞内に入り、内因性α-シヌクレインを動員し(recruit)、LBに類似した、インビトロおよびインビボでのα-シヌクレイン凝集およびリン酸化を誘発し得ることが示されている(Volpicelli-Daley et al.2011,Luk et al.2012a,Luk et al.2012b,Recasens et al.2013,Peelaerts et al.2015)。組み換えα-シヌクレインシードによる内因性マウスα-シヌクレインのシーディングを調べるために、上記のように調製されたマウス初代皮質ニューロンが、96ウェルプレート(ウェル当たり15,000個の細胞)中で平板培養される。インビトロ培養の5日目(DIV)に、培地の50%を交換し、シトシンアラビノシド(1uMの最終濃度)を補充する。インビトロ培養の6日目(DIV6)に、培地の半分を、αシヌクレイン線維性材料、粗原線維シードまたは純粋なシードのいずれかを含むグリア馴化培地と交換する。粗原線維シードは、細菌から単離された組み換えモノマーヒトα-シヌクレインから作製され、モノマーを、Amicon Ultra 100.000カットオフフィルタ(Millipore cat.No UFC510096)に通してろ過し、PBS、pH7.4中1mg/mlの濃度に調整した。原線維粗シードを作製するために、モノマー溶液を、プラトーに達するまで(Thioflavin Sによる毎日の測定によって評価される)、連続混合(800rpm)しながら37Cで、thermomixer中でインキュベートした。蒸発を最小限に抑えるために、溶液を覆うように1滴の鉱油を加えた。インキュベーションの合計時間は5~7日間であり、純粋なシードは、粗原線維シードを遠心分離してそれらを精製したものから作製され、凝集されたペレットを、新鮮なPBS中で再懸濁させ、超音波処理する。抗体を、α-シヌクレイン粗シードとともにDIV6で1回加える。初代ニューロン中の培地の半分を、毎週、グリア馴化培地と交換して、それらをDIV21まで維持する。ニューロンを固定し、アミノ酸S129(abcam 51253)におけるα-シヌクレインのリン酸化に特異的なウサギ抗体、続いて蛍光標識抗ウサギ抗体を用いてホスホ-シヌクレインについて染色し、蛍光を、自動蛍光顕微鏡法、Cellomics Arrayscanを用いて定量化する。核を1つのチャネル内で検出し、有効な細胞の数を定義する。リン酸化α-シヌクレインスポットを、細胞の細胞質を表す核の周りの所定の環形成領域において別のチャネル内で検出した。細胞当たりのスポットの平均数を計算した。細胞染色の例が、図12Aに示される。リン酸化αシヌクレインスポットは、非処理のニューロンでは見られない。粗シードまたは純粋なシード(ウェル当たり1~10ng)とともにインキュベートされたニューロンは、αシヌクレインのリン酸化を誘発する(図12A)。神経突起において、リン酸化シヌクレインは、スポットまたは斑点として現われ、神経突起内のホスホ-シヌクレインの一部は細長く見える。
【0243】
分別試験のために、細胞をリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)中で収集し、遠心分離した。ペレットを、プロテアーゼ阻害剤を含む1%のtriton緩衝液中で再懸濁させた。試料を、15分間にわたって氷上に保持した後、超音波処理した。試料を、4Cで30分間にわたって100,000×gで遠心分離した。上清を収集し、可溶性画分として表示した。ペレットをtriton緩衝液中で1回洗浄し、1%のSDS緩衝液中で再懸濁させた後、超音波処理した。試料を30分間にわたって100,000×gで遠心分離した。上清を不溶性画分として収集する。タンパク質濃度を測定し、試料を4~12%のSDS_PAGEゲル上で試験し、膜上にブロットし、αシヌクレインおよびリン酸化αシヌクレイン(S129P)を、それぞれ4B12/1904抗体(Thermo scientific:MA1-90346-ヒトシヌクレイン)、S129P-asyn抗体(abcam 51253)およびマウスシヌクレイン抗体(細胞シグナル伝達-D37A6)によって検出する。
【0244】
図12Bは、粗シードを用いたおよび用いない、初代ニューロンに由来する可溶性および不溶性画分のウエスタンブロットを示す。図12Bから分かるように、シードの添加は、細胞の不溶性画分内の内因性マウスα-シヌクレインおよびp-S129-α-シヌクレインおよびリン酸化マウスα-シヌクレインの多量体の蓄積をもたらす。
【0245】
抗体がシーディングを阻害し得るかどうかを試験するために、αシヌクレインシヌクレインシードを、6.6nM(10ng/ウェル)の濃度で使用した。異なる濃度の抗体およびα-シヌクレインシードを、DIV6で一緒に加えて、用量反応を形成した(133nMの最も高い抗体濃度から出発して133pMまで)。ニューロンを再度固定し、ホスホ-シヌクレイン(abcam 51253)について染色し、細胞からの蛍光を、自動蛍光顕微鏡法、Cellomics arrayscanを用いて定量化した。細胞当たりのスポット/斑点を、Cellomics arrayscanにおいて計数した。図12Cから分かるように、抗体37、37v2および抗体285はいずれも、用量依存的にニューロン内のαシヌクレインリン酸化を低減し、37、37v2および285について同様の最大阻害率(約70~75%)および約5nMのEC50を有していた。最も高い濃度(133nM)における抗体による処理後の可溶性および不溶性画分への細胞タンパク質の分別は、図12Dから分かるように、抗体37、37v2および285がいずれも、組み換え粗シードの切断およびC末端切断フラグメント(CT a-syn)の蓄積を阻害し、不溶性画分内のリン酸化内因性マウスα-シヌクレインの蓄積および凝集形態のマウスα-シヌクレインを低減したことを示す。
【0246】
実施例7.インビボでのα-シヌクレイン抗体の急性の電気生理学的効果
高い発現レベルのヒトα-シヌクレインが、マウスα-シヌクレインプロモータの制御下で野生型α-シヌクレインを過剰発現するモデルである、F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中に存在する(Westerlund M,et al.Mol Cell Neurosci.2008 Dec;39(4):586-91)。4~6月齢の雄F28-sncaトランスジェニックマウスおよび月齢をマッチさせた対照マウスにおける海馬のCA1領域におけるシナプス伝達および可塑性の評価を、インビボで電気生理学的に行った。データは、基底シナプス伝達が、月齢をマッチさせた対照マウスと比較してF28-sncaトランスジェニックマウスにおいて著しく低下したことを示す(図13)。
【0247】
4~6月齢のF28-sncaトランスジェニックマウスおよび月齢をマッチさせた対照雄マウス(CRO育種、Taconic Europe A/S)を、制御された温度(22±1.5℃)および湿度条件(55~65%)において単一の小屋に収容し、12:12時間の明/暗サイクル(06:00hで照明をオンにする)で飼育した。食物および水は自由に摂取可能であった。
【0248】
動物に、ウレタン(1.2g/kg)の腹腔内(i.p.)注射で麻酔をかけた。次に、マウスを定位フレームに取り付け、マウスの体温を加熱パッドによって37.5℃に調整し、頭蓋骨を露出させた。白金線を、基準として働くように前頭骨に設置し、PaxinosおよびFranklin(Paxinos and Franklin’s the Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates,4th Edition,2001)の図解にしたがって以下の配置で、海馬中への記録および刺激電極の挿入のためにさらなる孔を空けた:記録、ブレグマの1.5~1.7mm後方、正中線の1.0~1.2mm側方、脳の表面の1.4~1.7mm下;刺激、ブレグマの1.8~2.0mm後方、正中線の1.5~1.7mm側方、脳の表面の1.5~1.7mm下。動物を、記録の全期間を通して定位フレームに置いたままにし、それらの麻酔のレベルを定期的に調べた。
【0249】
電場電位(fEPSP)を、30秒ごとのシャファー側枝の電気刺激によってCA1において誘発し、記録電極の深さを、マイナスのfEPSPが単極方形パルスに応答して記録されるまで調整した。誘発されたfEPSPの傾きを、fEPSPの最大振幅の30~70%で測定した。
【0250】
最適なfEPSPが誘発されたら、基底シナプス伝達を、刺激強度と誘発されたfEPSPの傾きとの間の関係(入出力関係)によって評価した。様々な強度の刺激は、0、25、50、75、100、150、200、300、400、および500μAであり、これを低い方から順に連続して加え、各強度で2~3回繰り返す。基底シナプス伝達は、月齢をマッチさせた対照マウスと比較してF28-sncaトランスジェニックマウスにおいて著しく低下したことが分かった。
【0251】
F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の確認された障害を用いて、αシヌクレインに仲介される影響を阻止する能力についてGM37、GM285および比較用h9E4を試験した。
【0252】
15mg/kg(腹腔内(i.p.))の用量での単回用量の抗体の投与の3~6時間後に、全ての実験において記録を行った。基底シナプス伝達を、可能であれば各動物の両方の海馬において記録し、個々の実験として記録した。
【0253】
h9E4による急性治療は、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害のかなりの改善を誘発した(Tg-snca+h9E4対Tg-snca+PBS、p=0.002、図14)。しかしながら、h9E4による改善は、PBSで処理された同腹仔における基底シナプス伝達との著しい差によって示されるように(p=0.007)、部分的であるに過ぎなかった。
【0254】
GM37による急性治療は、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害のかなりの改善を誘発した(Tg-snca+GM37対Tg-snca+PBS、p=0.004、図15)。GM37で処理されたトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達は、PBSで処理された同腹仔における基底シナプス伝達とそれほど異なっておらず、これは、障害の完全な改善を示す(図15)。
【0255】
GM285も、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害のかなりの改善を誘発した(図16)。GM285で処理されたトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達は、PBSで処理された同腹仔における基底シナプス伝達とそれほど異なっておらず、これは、障害の完全な改善を示す。
【0256】
実施例8.覚醒自由行動動物の脳におけるヒトα-シヌクレインを評価するための微小透析
プッシュプル微小透析方法を用いて、脳間質液(ISF)におけるヒトα-シヌクレインのレベルを評価した。マウスを、制御された温度(22±1.5℃)および湿度条件(55~65%)において単一の小屋に収容し、12:12時間の明/暗サイクル(06:00hで照明をオンにする)で飼育した。食物および水は自由に摂取可能であった。この試験を、F28-sncaトランスジェニックマウス(50~54週齢)の海馬において行った。海馬における微小透析を可能にするために、マウスにイソフルランで麻酔をかけ、大脳内ガイドカニューレ(CMA)を、脳内に定位に埋め込み、PaxinosおよびFranklin 2001の図解にしたがって、微小透析プローブを海馬内で位置決めした(プローブ先端の配置:ブレグマの3.1mm後方および2.8mm側方、および硬膜に対して1.3mm)。固定ねじおよびアクリルセメントをガイドカニューレの固定に使用した。カニューレの埋め込みの後、マウスを、透析前の2~3日間にわたって外科手術から回復させた。
【0257】
実験の当日、2mmの、1000kDaカットオフCMAプローブを、ガイドカニューレに挿入した。プローブを、2つの流路を有する微小透析蠕動ポンプ(MAB20;Microbiotech)に連結し、プッシュプルモードで操作した。微小透析プローブの入口管を、プローブに人工脳脊髄液をかん流させる蠕動ポンプ(aCSF;mM単位:147NaCl、2.7KCl、1.2CaCl、0.85MgCl)に連結した。かん流液を管から引き出すことによる、プローブからのかん流液損失を防ぐために、蠕動ポンプをさらに出口管に連結した。かん流緩衝液として、25%のウシアルブミン画分V(Sigma)を、使用当日に人工CSFで0.2%に希釈し、0.1μmの膜に通してろ過した。ポンプの実際の流量を、プローブを連結させずに測定した。試料管を、所与の期間にわたってサンプリングする前および後に秤量し、流量を計算した。次に、ポンプを、1μL/分の一定流量に設定した。120分のサンプリング計画を、実験期間を通して使用した。組織損傷の干渉を避けるために、実験期間を、プローブ埋め込みの14~48時間後に設定した。実験の開始の14~16時間後、GM37、ヒト9E4またはアイソタイプ対照(抗HEL)を、15mg/kgで腹腔内(i.p.)に注射し、さらなる6つの試料(12時間の収集)を収集した。透析液を-80℃で貯蔵した。ヒトαシヌクレインの濃度を、ELISA(Covance ELISAキット)によって決定した。
【0258】
抗体処理の前の2~3つの基底値(4時間~6時間)の平均を、ベースラインとして取り、各動物について100%に設定した。統計的関連性を評価するために、データを、反復測定による二元配置分散分析(ANOVA)を用いて評価した。海馬中のヒトα-シヌクレインの基底レベルは、8.1±1.1ng/mlであった(平均±SEM、n=25、インビトロ透析プローブ回収に対して補正されていない)。GM37の投与は、比較用抗体、ヒト9E4、およびアイソタイプ対照(抗HEL)の両方と比較して、F28マウスの海馬中のヒトα-シヌクレインの大幅な減少を誘発した(図17)。
【0259】
実施例9:インビボでのα-シヌクレイン抗体の慢性効果。抗体GM37が、ラットパーキンソン病モデルにおける運動表現型を改善する。
ラット中脳中のドーパミン作動性ニューロンに対するヒトα-シヌクレインの標的化された過剰発現が、組み換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)を用いて実現可能であり、これは、黒質中のドーパミン性細胞の進行性消失ならびに運動障害に関連している。
【0260】
既に記載されているように、成体雌スプラーグドーリーラット(225~250g)を用いて、サイトメガロウイルスプロモータからのエンハンサー要素とともにニワトリβ-アクチンプロモータを含有するAAV2/5血清型のアデノ随伴ウイルス、続いて、ヒトα-シヌクレインcDNAおよびWPRE要素の注入によって、黒質(SN)中のヒトα-シヌクレインを発現させた(Xu L,Daly T,Gao C,Flotte TR,Song S,Byrne BJ,Sands MS,Ponder KP(2001)。このモデルにおいて、ヒトα-シヌクレイン発現が、ドーパミン作動性ニューロンの神経変性につながることが示されている(Maingay M,et al.CNS Spectr.2005 Mar;10(3):235-44)。このモデルにおいてαシヌクレイン治療用抗体の効果を試験するために、抗体処理を、ウイルス注入の2~4日前に開始し、試験の終了まで続けた(図18)。同じ体積(5ml/kg:IP)におけるPBS投与を、対照として使用した。GM37を、15mg/kg(IP)の用量で週に2回投与した。ヒト野生型α-シヌクレインの遺伝子または緑色蛍光タンパク質(GFP)を含有するウイルス粒子(rAAV2/5)を、SNの片側に注射した。動物に、2.0ml/kg皮下(s.c.)で、Hypnorm(登録商標)とDormicum(登録商標)との組合せで麻酔をかけ、定位フレームに設置した。動物の体温を加熱パッドによって37.5℃に調整し、頭蓋骨を露出させた。PaxinosおよびWatson(Paxinos & Watson,1998)の図解にしたがって、以下の配置で右SNの上に孔を空けた:ブレグマの5.5mm後方および2.0mm側方。3μLのrAAV2/5-α-synまたはrAAV2/5-GFPの単回注入を、定位注入器(stereotaxic injector)に連結されたHamilton製シリンジを用いて、硬膜の7.2mm下の深さで、および0.2μL/分の流量で行った。SNにおけるベクターの拡散を可能にするために、針をさらに5分間所定の位置に置いておいた。外科手術の後、動物をホームケージに戻し、加熱された環境に置き、ここで、動物を麻酔から回復させた。シリンダー試験における運動非対称性の試験を、AAV注入の前、ならびにAAV注入の3、7および10週間後に評価した。示されたデータは、左前足および右前足の両方の全使用と比較した右前足の使用の比率に対応している。シリンダーにおける各動物の動作を合計5分間撮影し、5分間にわたって左前足および右前足を用いた接触の回数の手動の採点を、ウイルス注入の10週間後の試験最終日に行った。10週の時点でAAV-GFPが注入されたラット(p=0.012)と比較してAAV-synにおいて、著しい障害が存在する。GM37処理された動物の動作がGFPラットと異なる(gm37に対してそれぞれp=0.163およびp=0.407)ため、GM37処理された動物の改善の傾向が示された。この発見は、抗体GM37が、このラットモデルにおいてパーキンソン病の運動表現型を改善することができることを示す(図18および19)。
【0261】
実施例10:インビボでのαシヌクレイン抗体の慢性効果。抗体GM37が、内因性マウスαシヌクレイン凝集のシーディングおよびリン酸化を阻害する。
野生型マウスの背側線条体への、組み換えタンパク質から作製されたαシヌクレインにより予め形成された原線維の注入は、内因性マウスαシヌクレインを動員し、皮質、へんとう体および黒質中のニューロンの内部のSer-129リン酸化凝集体の形成を誘発する(Luk et al.2012,Science.2012 Nov 16;338(6109):949-53)。α-シヌクレイン特異的モノクローナル抗体GM37が、インビボでのα-シヌクレイン原線維に誘発されるリン酸化αシヌクレイン封入体形成の出現を減少させ得るかどうかを調べるために、合計45匹のマウスを使用した。マウスに、30mg/kg腹腔内(i.p)でGM37、GM37 15mg/kg静脈内(i.v.)、またはビヒクルip(PBS)を投与した。1日後、マウスに麻酔をかけ、既に記載されているように作製された2ulの組み換えヒトα-Syn粗シード(実施例6)(動物当たり合計2μgの粗シード)を片方の脳半球に定位で注入した。粗シードを注入するために、孔を空けることによって頭蓋骨を切開し、接種材料が背側線条体(硬膜の+2.6mm下)に向けられるように右前脳内に単一のガラスピペットを挿入した(配置:ブレグマの+0.5mm前方、正中線の+2.0mm側方)。回復の後、45日で殺処分するまで抗体の腹腔内(i.p.)または静脈内(i.v.)注入をマウスに週に1回受けさせた。15匹のマウス/群の群に、GM37 15mg/kgを静脈内に(iv)、GM37 30mg/kgを腹腔内に(ip)、またはPBS(10ml/kg)を腹腔内に(ip)週に1回投与した。
【0262】
血漿中の抗体濃度を測定するために、頬の血液を、次の注入の直前に週に1回、すなわち、最後の注入の7日後に抜き取った。血漿を2000gの回転によって得て、室温で15分間インキュベートし、続いて、上清を-20℃で凍結させた。CSF試料を、試験の終了時に取り、-20℃で凍結させた。血漿およびCSF試料を分析して、MSDによってヒトIgGの濃度を決定した。簡潔に述べると、マウス抗ヒトIgG(クローンMH16-1(M1268)を、捕捉のために使用し、ウェル中で血漿またはCSFをインキュベートし、続いて、スルホ-TAGヤギ抗ヒト(MSD cat no:R32AJ-1)を検出抗体として使用した。プレートを、MSDによって電気化学発光から分析した。
【0263】
血漿中の抗体レベルが、図20Bに示され、6週間の間の抗体血漿濃度および血漿中の抗体の蓄積の用量依存的増加を示す。csf中の抗体レベルが、図20Cに示され、血漿中の約0.1%の抗体レベルがcsf中で測定され得ることを示す。
【0264】
αシヌクレイン線維性シードの注入の時点から45日で、マウスに麻酔をかけ、PBSを経心臓的にかん流させた後、中性緩衝パラホルムアルデヒド(4%)をかん流させた。脳を取り出し、中性緩衝パラホルムアルデヒド中で後固定のために一晩インキュベートした。免疫組織化学を、Neuroscience associatesによって厚さ45μMの連続切片において行った。簡潔に述べると、MultiBrain(登録商標)技術を用いて、最大で25個のマウス脳を、ブロックごとに一緒に、3つのブロック中に埋め込み、前頭面中で、厚さ45μmの凍結切片を作製し、抗原保存溶液を含むカップに収集した。6つ置きの切片を、Ser-129リン酸化α-シヌクレインに対する抗体(抗αシヌクレイン(ホスホS129)抗体[Psyn/81A]ab184674)で染色して、Ser129リン酸化αシヌクレイン反応性構造を明らかにした。
【0265】
6つ置きの切片からの黒質全体をカバーする5~7つの切片からの、10倍の倍率の画像から免疫反応性陽性細胞を手動で計数することによって、pSyn病変の定量化を行った。計数を盲検で行った。へんとう体および黒質における細胞計数を、一元配置ANOVA、続いてボンフェローニt検定によって分析し、ここで、GM37抗体の効果をPBS処理と比較した。
【0266】
図20Cから分かるように、抗体GM37による処理は、腹腔内(ip)または静脈内(iv)処理のいずれかによるPBS対照と比較して、黒質における細胞内封入体の数を著しく減少させた。データは、抗体GM37が、ニューロン間のその伝播を阻止し、および/またはミクログリアへの取り込みによってISFからのクリアランスを促進することによって、ニューロンへの細胞外病理学的α-シヌクレインの侵入を阻止することによって、PDの治療効果を与え得ることを示す。封入体のこの出現が、ドーパミン作動性ニューロンの損失および動物モデルにおけるパーキンソン病様運動障害の発現に関連しているため、抗体GM37による処理は、ドーパミン性細胞の損失およびPDの運動障害の発現に対する治療効果を与え得る。
【0267】
実施例11:GM37およびGM37変異体の製造可能性
抗α-シヌクレイン抗体は、患者に使用するための臨床グレード材料を製造するのに使用される製造条件を模倣する条件下で、哺乳動物細胞培養物中で産生される。このように産生されたタンパク質は、抗体の治療有効性ならびに経時的な抗体の安定性に影響を与える生物物理学的特性の両方に影響を与え得る翻訳後修飾を起こすことが周知である。数十年の研究から確認された経験的知識により、特定の分子の発現性(developability)のリスクを生じることが知られている一連の翻訳後修飾が確認された。これらの翻訳後修飾は、重鎖および軽鎖タンパク質の一次配列中に存在するアミノ酸鎖と相関することが示されている。これらの配列を同定し、それらが治療用抗体の製造可能性および発現性に与える潜在的リスクを決定し得るアルゴリズムが作成された。
【0268】
抗体の一次配列のインシリコ分析が、治療薬として開発される可能性のために分子のリスクを回避する(derisk)のに使用され得る。特に、VHおよびVL領域の詳細な分析が、経時的なその安定性に対する潜在的リスクにもなり得る分子活性に重要であると考えられる独自のアミノ酸を特定し得る。配列特異的脱アミド化は、タンパク質構造に対する潜在的リスクとして特定された。タンパク質脱アミド化は、グルタミンまたはアスパラギン残基のアミド側鎖上で発生し、それらをカルボン酸基へと変換し得る(Lorenzo et al.PLOSone,DOI:10.1371,Dec.(2015))。中性pHにおける非酵素的脱アミド化が、アスパラギンについてより早く起こり、したがって、グルタミンより高いリスクが考えられる。この活性は、配列内の後続のアミノ酸によってさらに影響され、数日または数年の率で起こり得る。脱アミド化を起こすタンパク質の実際の結果物は、その安定性および活性の両方に対する変化の影響を決定するために、実験的に評価する必要がある。
【0269】
本発明者らは、GM37のVH領域内の脱アミド化のための部位を特定した。アミノ酸残基54は、位置55におけるグリシン(G)が後続するアスパラギン(N)である。N54は、自然発生的な脱アミド化の高いリスクがある。このリスクを低下させるために、本発明者らは、アスパラギン(N)をセリン(S)、グルタミン(Q)またはヒスチジン(H)で置き換えた一連の3つの変異体を作製した。全ての3つの変異体を、一過性トランスフェクション方法を用いて哺乳動物細胞培養物中で生成した(実施例1.5)。全ての3つの変異体は、GM37wtと同様の発現および精製特性を示した(図23)。
【0270】
8つの産物のそれぞれについて、400mlの一過性トランスフェクションを、最小で2週間にわたって培養物中に入れていたCHOK1SV GS-KO細胞を用いて行った。細胞を、トランスフェクションの24時間前に継代培養した。全てのトランスフェクションを、Gene Pulse XCell(Bio-Rad)を用いたエレクトロポレーションによって行った。各トランスフェクションについて、生細胞を、2.86×10個の細胞/mlになるまで6mMのL-グルタミンを補充した予め温めたCD-CHO培地中で再懸濁させた。適切な重鎖および軽鎖を含有する、40μgのそれぞれの確立されたSGV DNAを、各キュベット(Bio-Rad、GenePulserキュベット、0.4cmの間隙、165-2088)に分割し、700μlの細胞懸濁液を加えた。細胞を、300V、900μFで電気穿孔した。トランスフェクトされた細胞を、エルレンマイヤーフラスコ中の予め温めた培地に移し、予め温めた培地で2回すすいだキュベットの内容物もフラスコに移した。トランスフェクタント培養物を、36.5℃、5%のCO、85%の湿度、140rpmで6日間、振とう培養器中でインキュベートした。細胞生存性を、Cedex HiRes自動細胞計数器(Rosche)を用いて、採取時に測定した。
【0271】
ヒトα-シヌクレインへの結合における残基54の重要性を評価するために、本発明者らは、2つの異なる実験において変異体が結合する能力を分析した。競合ELISAフォーマットを用いて、本発明者らは、残基54における変化が溶液中のα-シヌクレインに結合するGM37の能力に与え得る影響を評価した。シヌクレインで被覆されたELISAプレートへの抗体の結合を阻害することが可能なシヌクレインの濃度を評価することによって、本発明者らは、全ての3つの変異体がGM37wtと同じ結合を維持しており、1~2nMのIC50をもたらす高い親和性でα-シヌクレインに結合することを示した(図24)。室温で60分間にわたって、0~1000nMの範囲のヒトα-シヌクレインを用いて、一定の濃度(0.3μg/ml)の以下の抗体、GM37(GM37 wtと呼ばれる)、GM37変異体1、GM37変異体2およびGM37変異体3のそれぞれのプレインキュベーションを用いて競合アッセイを行った。残りの非結合抗体を捕捉し、電気化学発光(MSD,Gathersburg,MD)によって、抗ヒト検出抗体を用いて、100ng/mlの組み換えヒトα-シヌクレインで被覆されたELISAプレート上で測定した。相互作用のIC50は、GM37 wt、GM37変異体1、GM37変異体2およびGM37変異体3についてそれぞれ、1.9nM、1.6nM、2.1nMおよび1.4nMである(Prism Graphpad(登録商標)を用いて決定した際)。
【0272】
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、本発明者らは、GM37 wt(2バッチ)および3つの変異体の結合のリアルタイム速度を評価した(実施例2)。ヒトα-シヌクレインをスライド(リガンド)に捕捉し、抗体をそれぞれ、検体として複数の濃度で試験した。複数の濃度における抗体の存在下での結合曲線の分析は、抗体を緩衝液から除去したときと同様に、オンレート(on rate)が全ての4つの抗体について同じであったことを示し、測定されたオフレート(off-rate)は、抗体間の統計学的差異を示さなかった。1:1の結合アルゴリズムを用いて、全ての4つの抗体は、ほぼ同一の結合定数を有する(図25)。
【0273】
N54における変化がGM37の機能活性に対して与える影響を評価するために、本発明者らは、初代ニューロンの培養物中のシヌクレインシーディング活性を阻止する抗体の能力を分析した(実施例6)。シーディングのレベルが、ホスホ-シヌクレインに特異的な抗体を用いて測定される。全ての3つの抗体が、ホスホ-シヌクレインシグナルによって測定した際に、シーディングを阻止することができた(図26)。さらに、阻害のレベルは、全ての4つの抗体について同じであった。この細胞に基づくデータは、VH領域におけるアミノ酸54が、ヒトα-シヌクレインに対する結合親和性に、または初代細胞に基づくアッセイにおけるシーディングの阻害に必要とされないという結合データをさらに確認する。さらに、本発明者らは、これらの抗体の3つ全てが、標準的な発現および精製方法を用いた生産が可能であったことを見出した。興味深いことに、変異体N54Qの1つは、他の変異体を上回る生産の向上を示し、これは、抗体が大規模で商業的に生産される場合、非常に重要である。これらのデータは、有効性の低下に対する懸念を伴わずに、アスパラギン(N)を別のアミノ酸で置き換えることによって、脱アミド化の潜在的リスクを低下させる可能性を裏付けるものである。
【0274】
抗体wt GM37、var1、var2およびvar3のそれぞれの試料を、時間と
ともに温度を着実に上昇させ、凝集のレベルを、多角度光散乱(Prometheus
NT.48,NanoTemper Technologies)によって同時に測定し
た。凝集開始の温度は、GM37およびGM37-変異体について同様であることが分か
ったが、凝集の最も低いレベルは、GM37-Var2について観察された(図27)。

本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体であって、
ヒトα-シヌクレイン(配列番号10)のアミノ酸112~117(配列番号9(ILE
DMP))内のエピトープに結合する抗体、または前記エピトープに結合するその抗原結
合フラグメント。
[2]
前記抗体が、前記エピトープへの結合について、配列番号8の軽鎖可変領域および配列
番号7、30、31または32の重鎖可変領域を含む抗体と競合することが可能である、
請求項1に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[3]
ヒトα-シヌクレイン(配列番号10))のアミノ酸112~115(配列番号19(
ILED)内のエピトープに特異的に結合することが可能である、請求項1に記載のモノ
クローナル抗体、または前記エピトープに結合するその抗原結合フラグメント。
[4]
前記抗体が、前記エピトープへの結合について、配列番号26の重鎖可変領域および配
列番号27の軽鎖可変領域を含む抗体と競合することが可能である、請求項1または3に
記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[5]
無傷の抗体を含むかまたはそれからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のモノク
ローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[6]
前記モノクローナル抗体が、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4
の抗体からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のモノクローナル
抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[7]
Fvフラグメント(例えば一本鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグ
メント(例えばFabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメ
ント)およびドメイン抗体(例えば単一のVH可変領域またはVL可変領域)からなる群
から選択される抗原結合フラグメントを含むかまたはそれからなる、請求項1~6のいず
れか一項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[8]
前記抗体または抗原結合フラグメントが、以下の特性:
a)1~5nMまたは1~2nMなどの、0.5~10nMのα-シヌクレインに対す
る結合親和性(KD);
b)α-シヌクレイン原線維のプロテアーゼ切断を阻害する能力;
c)F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を改
善する能力;
d)インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレインのレ
ベルを減少させる能力;
e)慢性的に投与されるとき、パーキンソン病のラットモデルにおける運動機能を回復
させる能力;
f)α-シヌクレインのシーディング(インビトロでのおよび/またはパーキンソン病
のマウスモデルにおける不溶性リン酸化αシヌクレインの蓄積など)を防ぐ能力;および
/または
g)ヒトの脳における切断α-シヌクレインに結合する能力
の1つまたは複数を示す、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、ま
たはその抗原結合フラグメント。
[9]
ヒト、ヒト化、組み換えまたはキメラ抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載
のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[10]
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(b)配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
(d)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体または請求項1~2および5~9のいずれか一項に記載のモ
ノクローナル抗体、またはそのフラグメント。
[11]
配列番号7の重鎖可変領域または配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項10に記載
のモノクローナル抗体。
[12]
配列番号7の可変領域からなる重鎖および配列番号8の可変領域からなる軽鎖を含む、
請求項11に記載のモノクローナル抗体。
[13]
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(b)配列番号33のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
(d)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体または請求項1~2および5~9のいずれか一項に記載のモ
ノクローナル抗体、またはそのフラグメント。
[14]
配列番号30の重鎖可変領域または配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項13に記
載のモノクローナル抗体。
[15]
配列番号30の可変領域からなる重鎖および配列番号8の可変領域からなる軽鎖を含む
、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
[16]
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(b)配列番号34のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
(d)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体または請求項1~2および5~9のいずれか一項に記載のモ
ノクローナル抗体、またはそのフラグメント。
[17]
配列番号31の重鎖可変領域または配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項16に記
載のモノクローナル抗体。
[18]
配列番号31の可変領域からなる重鎖および配列番号8の可変領域を含む、請求項17
に記載のモノクローナル抗体。
[19]
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(b)配列番号35のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
(d)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体または請求項1~2および5~9のいずれか一項に記載のモ
ノクローナル抗体、またはそのフラグメント。
[20]
配列番号32の重鎖可変領域または配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項19に記
載のモノクローナル抗体。
[21]
配列番号32の可変領域からなる重鎖および配列番号8の可変領域を含む、請求項20
に記載のモノクローナル抗体。
[22]
(a)配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(b)配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(c)配列番号22のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
(d)配列番号23のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(e)配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;および
(f)配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含む、モノクローナル抗体または請求項1、3および5~9のいずれか一項に記載のモ
ノクローナル抗体、またはそのフラグメント。
[23]
配列番号26の重鎖可変領域または配列番号27の軽鎖可変領域を含む、請求項22に
記載のモノクローナル抗体。
[24]
配列番号26の可変領域からなる重鎖および配列番号27の可変領域を含む、請求項2
3に記載のモノクローナル抗体。
[25]
請求項1~24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を含む調製物であって、前
記調製物が、α-シヌクレインに結合することが可能でないかまたは前記調製物の抗α-
シヌクレイン機能性を実質的に変更しない自然発生する抗体を実質的に含まず、前記機能
性が、
(i)α-シヌクレインに対する前記抗α-シヌクレイン抗体の結合親和性(KD);
(ii)α-シヌクレイン原線維のプロテアーゼ切断を阻害する、前記抗α-シヌクレ
イン抗体の能力;
(iii)F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障
害を改善する、前記抗α-シヌクレイン抗体の能力;
(iv)インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレイン
のレベルを減少させる、前記抗α-シヌクレイン抗体の能力;
(v)慢性的に投与されるときの、パーキンソン病のラットモデルにおける運動機能を
回復させる、前記抗α-シヌクレイン抗体の能力、
(vi)α-シヌクレインのシーディング(インビトロでのおよび/またはパーキンソ
ン病のマウスモデルにおける不溶性リン酸化αシヌクレインの蓄積など)を防ぐ能力;ま
たは
(vii)ヒトの脳における切断α-シヌクレインに結合する能力
からなる群から選択される調製物。
[26]
請求項1~24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を含む調製物であって、前
記モノクローナル抗体が、天然抗α-シヌクレイン抗体の構造と比べて、そのアミノ酸配
列の構造変化を有し、前記構造変化により、前記モノクローナル抗体が、前記天然抗α-
シヌクレイン抗体によって示される機能性と比べて変化した機能性を示し、前記機能性が

(i)α-シヌクレインに対する前記抗α-シヌクレインモノクローナル抗体の結合親
和性(KD);
(ii)α-シヌクレイン原線維のプロテアーゼ切断を阻害する、前記抗α-シヌクレ
インモノクローナル抗体の能力;
(iii)F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障
害を改善する、前記抗α-シヌクレインモノクローナル抗体の能力;
(iv)インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレイン
のレベルを減少させる、前記抗α-シヌクレインモノクローナル抗体の能力;
(v)慢性的に投与されるときの、パーキンソン病のラットモデルにおける運動機能を
回復させる、前記抗α-シヌクレインモノクローナル抗体の能力;
(vi)α-シヌクレインのシーディング(インビトロでのおよび/またはパーキンソ
ン病のマウスモデルにおける不溶性リン酸化αシヌクレインの蓄積など)を防ぐ能力;ま
たは
(vii)ヒトの脳における切断α-シヌクレインに結合する能力
からなる群から選択される調製物。
[27]
請求項1~24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体または請求項25~26の
いずれか一項に記載の調製物、および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物。
[28]
請求項10~24のいずれか一項に記載の抗体またはフラグメントをコードする核酸。
[29]
治療に使用するための、請求項1~24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、
またはその抗原結合フラグメント、または請求項25~26のいずれか一項に記載のその
調製物。
[30]
シヌクレイノパチーを治療するのに使用するための、請求項1~24のいずれか一項に
記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは請求項25~26の
いずれか一項に記載のその調製物。
[31]
パーキンソン病、特発性および遺伝性のパーキンソン病、ゴーシェ病(GD)、びまん
性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合され
たアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症または多系統萎縮症を治
療するのに使用するための、請求項30に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結
合フラグメント。
[32]
薬剤の製造に使用するための、請求項1~24のいずれか一項に記載のモノクローナル
抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは請求項25~26のいずれか一項に記載の
その調製物。
[33]
パーキンソン病(特発性および遺伝性のパーキンソン病を含む)、ゴーシェ病(GD)
、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、
複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症または多系統萎
縮症を治療するのに使用するための、請求項32に記載の薬剤。
[34]
被験体におけるパーキンソン病または他のシヌクレイノパチーを治療する方法であって
、請求項1~24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグ
メント、または請求項25~26に記載の調製物または請求項27に記載の医薬組成物を
、有効量で前記被験体に投与する工程を含む方法。
[35]
前記治療が長期である、請求項34に記載の方法。
[36]
前記長期治療が、少なくとも2週間にわたる、請求項35に記載の方法。
[37]
前記被験体がヒトである、請求項34に記載の方法。
[38]
治療に使用するための、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体、またはその抗原
結合フラグメント、または請求項25~26のいずれか一項に記載の調製物、または請求
項27に記載の医薬組成物を含むキット。
[39]
検出可能に標識される、請求項1~24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、
またはその抗原結合フラグメント。
[40]
前記検出可能な標識が、蛍光標識、化学発光標識、常磁性標識、放射性同位体標識また
は酵素標識である、請求項39に記載のモノクローナル抗体、その抗原結合フラグメント

[41]
被験体の脳における前記α-シヌクレインの存在または量を検出または測定するのに使
用するための、請求項39~40のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、その抗原
結合フラグメント、調製物または医薬組成物。
[42]
前記検出または測定が、前記α-シヌクレインに結合された前記抗シヌクレイン抗体の
インビボイメージングを含む、請求項39~41のいずれか一項に記載のモノクローナル
抗体、その抗原結合フラグメント、調製物または医薬組成物。
[43]
前記検出または測定が、前記α-シヌクレインに結合された、前記抗シヌクレイン抗体
または前記その抗原結合フラグメントのエクスビボイメージングを含む、請求項39~4
1のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、その抗原結合フラグメント、調製物また
は医薬組成物。
[44]
シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造に使用する
ための、請求項1~24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結
合フラグメント、または請求項25~26のいずれか一項に記載の調製物、または請求項
27に記載の医薬組成物、または請求項39~40のいずれか一項に記載のモノクローナ
ル抗体またはその抗原結合フラグメント、または調製物または医薬組成物の使用。
[45]
前記薬剤が、パーキンソン病(特発性および遺伝性のパーキンソン病を含む)、ゴーシ
ェ病(GD)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病
(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症お
よび多系統萎縮症を治療するのに使用するためのものである、請求項44に記載のモノク
ローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント、または調製物または医薬組成物の使用

[46]
被験体におけるパーキンソン病または他のシヌクレイノパチーを治療、診断またはイメ
ージングする方法であって、請求項1~24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体
、またはその抗原結合フラグメント、または請求項25~26のいずれか一項に記載の調
製物、請求項27に記載の医薬組成物、または請求項39~40のいずれか一項に記載の
モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント、調製物または医薬組成物を、有
効量で前記被験体に投与する工程を含む方法。
[47]
前記治療が長期である、請求項46に記載の方法。
[48]
前記長期治療が、少なくとも2週間にわたる、請求項47に記載の方法。
[49]
前記被験体がヒトである、請求項48に記載の方法。
[50]
被験体の脳または体液中の前記α-シヌクレインの存在または量を検出または測定する
のに使用するための、請求項39~40のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、そ
の抗原結合フラグメント、調製物または医薬組成物。
[51]
前記検出または測定が、前記α-シヌクレインに結合された前記抗シヌクレイン抗体の
インビボイメージングを含む、請求項50に記載のモノクローナル抗体、その抗原結合フ
ラグメント、調製物または医薬組成物。
[52]
前記検出または測定が、前記α-シヌクレインに結合された、前記抗シヌクレイン抗体
または前記その抗原結合フラグメントのエクスビボイメージングを含む、請求項51に記
載のモノクローナル抗体、その抗原結合フラグメント、調製物または医薬組成物。
[53]
ヒト細胞株、非ヒト哺乳動物細胞株、昆虫、酵母または細菌細胞株などの細胞株におい
て生産または製造された、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体、またはその抗原
結合フラグメント。
[54]
CHO細胞株、HEK細胞株、BHK-21細胞株、マウス細胞株(骨髄腫細胞株など
)、線維肉腫細胞株、PER.C6細胞株、HKB-11細胞株、CAP細胞株およびH
uH-7ヒト細胞株において生産される、請求項53に記載の抗体、またはその抗原結合
フラグメント。
[55]
配列番号18に定義される定常領域および配列番号17に定義されるκ定常領域を含む
、請求項1~21のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、その抗原結合フラグメン
ト。
[56]
配列番号28に定義される定常領域および配列番号29に定義されるκ定常領域を含む
、請求項22~24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、その抗原結合フラグメ
ント。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8】
図2-9】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図12-5】
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図20-3】
図20-4】
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
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