(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】易引裂性無延伸樹脂フィルム、及びそれを用いた包装材用積層フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220120BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220120BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20220120BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20220120BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20220120BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/36
B32B7/022
C08L67/02
C08L45/00
C08L33/00
(21)【出願番号】P 2018528524
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2017025744
(87)【国際公開番号】W WO2018016439
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2016142077
(32)【優先日】2016-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 悟史
(72)【発明者】
【氏名】富田 次郎
(72)【発明者】
【氏名】大澤 誉史
(72)【発明者】
【氏名】太田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】原 拓也
【審査官】荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-220220(JP,A)
【文献】特開2014-061633(JP,A)
【文献】特開2004-196951(JP,A)
【文献】特開平07-292183(JP,A)
【文献】国際公開第2004/101273(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/118255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/18
B65D65/40
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂と、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂のSP値との差が1.1~4.0(cal/cm
3)
0.5である
、シクロオレフィン樹脂、アクリル樹脂及びポリスチレンからなる群から選択される第2樹脂とのブレンドからな
り、
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂の割合が60重量%~80重量%であり、前記第2樹脂の割合が40重量%~20重量%であり、
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂中に前記第2樹脂が粒子状に分散し、
長手方向及び垂直方向のそれぞれにおける引裂強度が0.25N以下である易引裂性無延伸樹脂フィルム。
【請求項2】
第2樹脂のTgが、ポリエチレンテレフタレート系樹脂のTgよりも25℃以上高い請求項1
に記載の易引裂性無延伸樹脂フィルム。
【請求項3】
第2樹脂とポリエチレンテレフタレート系樹脂の、270℃せん断速度121.6(1/秒)における溶融粘度比が0.3~1.6である請求項1
又は2に記載の易引裂性無延伸樹脂フィルム。
【請求項4】
粒子の平均アスペクト比が1~5である請求項1~
3のいずれか1項に記載の易引裂性無延伸樹脂フィルム。
【請求項5】
ヒートシール面となる内層フィルムと、請求項1~
4のいずれか1項に記載の易引裂性無延伸樹脂フィルムとを少なくとも有する包装材用積層フィルム。
【請求項6】
ヒートシール面となる内層フィルムと、イソフタル酸成分の共重合比率が0~5モル%であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる表層フィルムと、前記内層フィルム及び前記表層フィルムの間に請求項1~
4のいずれか1項に記載の易引裂性無延伸樹脂フィルムとを少なくとも有する包装材用積層フィルム。
【請求項7】
内層フィルムが、イソフタル酸成分の共重合比率が10モル%~20モル%であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる請求項
5又は
6に記載の包装材用積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易引裂性無延伸樹脂フィルム、及びそれを用いた包装材用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種薬剤や食品等を充填し、ヒートシールにより密封する包装材として用いるための樹脂製の積層フィルムが知られている。例えば、(特許文献1)には、ポリエステルフィルム、バリア層を有するポリエステルフィルム、直線引裂き性ポリエステルフィルム、ヒートシール性を有するポリオレフィンフィルムの順に積層させた積層フィルムからなる電子レンジ加熱用包装材が開示されている。
【0003】
また、貼付剤、特に粘着剤層中に薬物を含有させた経皮吸収用貼付剤についても、従来は、保存中での品質保持等の観点から、密閉性の包装材を用いて密封包装されている。しかしながら、油状成分を粘着剤中に含有する貼付剤を包装材で包装した場合、包装材の内面に貼付剤が接触することによって油状成分が包装材に吸着又は移行して粘着剤中の油状成分の含有量が変化し、粘着特性が変化するという問題がある。また、経皮吸収用貼付剤の場合には、含有する薬物の経皮吸収性の低下や含有薬物自体の吸着による薬理効果の低下等の問題が指摘されている。このような問題に対して、包装材の内面をエチレン/ビニルアルコール共重合体又はアクリロニトリル/メチルアクリレート共重合体から形成することが提案されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、エチレン/ビニルアルコール共重合体又はアクリロニトリル/メチルアクリレート共重合体は高価であり、その代替となるものが求められていた。これに対し、(特許文献3)には、ヒートシール性を有するポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる内層フィルム及び基材フィルムからなり、前記内層フィルムのヒートシール面が、イソフタル酸成分の共重合比率が10モル%~20モル%であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂で構成される包装材が開示されている。上記(特許文献3)の包装材は、貼付剤の粘着剤中に含まれる油状成分が包装材に吸着又は移行することを防止すると共に、優れたヒートシール特性を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-151945号公報
【文献】特開平5-305108号公報
【文献】特開2014-61663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
包装材用の積層フィルムでは、上記ヒートシール性等の諸特性に加えて、包装材を開封する際に良好な開封性を有すること(易引裂性)も重要である。上記(特許文献3)の包装材は、ヒートシール性には優れるが、引裂強度が比較的高く、なお改善の余地があった。
【0007】
そこで本発明は、例えば上記(特許文献3)の包装材を構成する一層として好適に用いられる、易引裂性を有する樹脂フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、上記の易引裂性を有する樹脂フィルムを利用して、包装材用の積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエチレンテレフタレート系樹脂と、上記ポリエチレンテレフタレート系樹脂に対して非相溶であるような、特定範囲のSP値の差を有する樹脂とをブレンドした無延伸フィルムによって課題が解決されることを見出し、発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
【0009】
(1)ポリエチレンテレフタレート系樹脂と、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂のSP値との差が1.1~4.0(cal/cm3)0.5である第2樹脂とのブレンドからなる易引裂性無延伸樹脂フィルム。
(2)ポリエチレンテレフタレート系樹脂の割合が60重量%~80重量%であり、第2樹脂の割合が40重量%~20重量%である前記(1)に記載の易引裂性無延伸樹脂フィルム。
(3)第2樹脂のTgが、ポリエチレンテレフタレート系樹脂のTgよりも25℃以上高い前記(1)又は(2)に記載の易引裂性無延伸樹脂フィルム。
(4)第2樹脂とポリエチレンテレフタレート系樹脂の、270℃せん断速度121.6(1/秒)における溶融粘度比が0.3~1.6である前記(1)~(3)のいずれかに記載の易引裂性無延伸樹脂フィルム。
(5)第2樹脂が、シクロオレフィン樹脂又はアクリル樹脂である前記(1)~(4)のいずれかに記載の易引裂性無延伸樹脂フィルム。
(6)ポリエチレンテレフタレート系樹脂中に第2樹脂が粒子状に分散し、前記粒子の平均アスペクト比が1~5である前記(1)~(5)のいずれかに記載の易引裂性無延伸樹脂フィルム。
(7)長手方向及び垂直方向のそれぞれにおける引裂強度が0.25N以下である前記(1)~(6)のいずれかに記載の易引裂性無延伸樹脂フィルム。
(8)ヒートシール面となる内層フィルムと、前記(1)~(7)のいずれかに記載の易引裂性無延伸樹脂フィルムとを少なくとも有する包装材用積層フィルム。
(9)ヒートシール面となる内層フィルムと、イソフタル酸成分の共重合比率が0~5モル%であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる表層フィルムと、前記内層フィルム及び前記表層フィルムの間に前記(1)~(7)のいずれかに記載の易引裂性無延伸樹脂フィルムとを少なくとも有する包装材用積層フィルム。
(10)内層フィルムが、イソフタル酸成分の共重合比率が10モル%~20モル%であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる前記(8)又は(9)に記載の包装材用積層フィルム。
【0010】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2016-142077号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、易引裂性を有する樹脂フィルムを得ることができる。本発明のように無延伸でありながら易引裂性を有する樹脂フィルムは従来知られていない。また、本発明によれば、上記の易引裂性無延伸樹脂フィルムを用いて、薬剤や食品等の包装材として好適な積層フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る包装材積層フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る包装材積層フィルムの別の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2樹脂とのブレンドからなり、易引裂性を有する無延伸の樹脂フィルムである。ポリエチレンテレフタレート系樹脂と第2樹脂とは、SP値の差が1.1~4.0(cal/cm3)0.5の範囲内であることを特徴とする。SP値の差が1.1(cal/cm3)0.5以上であることによって、ポリエチレンテレフタレート系樹脂と第2樹脂とが非相溶状態となり、ポリエチレンテレフタレート系樹脂中に小滴状の第2樹脂が分散した状態が形成されてフィルムの引裂強度が低下する。一方、SP値の差が4.0(cal/cm3)0.5を超えるような樹脂はフィルムの成形性に劣っており、第2樹脂として不適である。
【0015】
本発明の易引裂性無延伸樹脂フィルムを構成するポリエチレンテレフタレート系樹脂とは、ポリエチレンテレフタレートを主体とするホモポリマー又は共重合ポリエステルを指し、具体的には、ジカルボン酸成分及びグリコール成分のそれぞれのモノマーの80モル%以上がテレフタル酸及びエチレングリコールから構成されるポリエステルをいう。テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸(IA)、オルソフタル酸、p-β-オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6-ジカルボン酸、ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸及びセバシン酸からなる群から選択される少なくとも一種を配合することが好ましい。ジカルボン酸成分として、イソフタル酸が添加された共重合体であることがより好ましく、イソフタル酸の添加量はジカルボン酸成分全体の1モル%~15モル%、特に1モル%~5モル%であることが好ましい。また、その他の多価カルボン酸として、トリメリット酸やピロメリット酸を微量含んでも良い。
【0016】
また、グリコール成分は、エチレングリコールのみから構成されることが好ましいが、本発明の本質を損なわない範囲で、それ以外のグリコール成分、例えば、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等から選択される一種又は二種以上を含んでいても良い。
【0017】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂とブレンドする第2樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂のSP値(溶解パラメータ)との差が1.1~4.0(cal/cm3)0.5の範囲内であれば特に限定されるものではなく、各種樹脂から適宜選択して用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂のSP値が12.4(cal/cm3)0.5であることから、第2樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸エチル(SP値:9.7)、ポリアクリル酸ブチル(9.2)、ポリアクリロニトリル(14.4)、ポリイソプレン(8.7)、ポリ塩化ビニリデン(11.2)、ポリ塩化ビニル(11.0)、ポリスチレン(10.6)、ポリビニルアルコール(16.0)、ポリブタジエン(8.4)、ポリメタクリル酸メチル(9.9)、シクロオレフィン樹脂(COC:共重合比により10.0~10.4、COP:9.3)等から選択される一種以上を挙げることができる。ポリエチレンテレフタレート系樹脂のSP値との差は、より好ましくは1.3~3.7(cal/cm3)0.5の範囲内である。
【0018】
なお、本発明におけるSP値は、分子構造から推算するFedorsの計算式を用いて算出した値をいう。Fedorsの計算式では、Tgが25℃を超える化合物について、最小繰り返し単位中の主鎖骨格原子数に応じてモル体積を補正する方法もあるが、本発明においてはこのようなTgによる補正は行わない。
【0019】
上記の中でも、ポリエチレンテレフタレート系樹脂とブレンドした場合にフィルムの引裂強度が小さく、また、無延伸フィルムを形成し易いことから、第2樹脂としてアクリル樹脂及びシクロオレフィン樹脂が特に好ましい。アクリル樹脂は、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体であり、上述のようにポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル等を用いることができる。また、シクロオレフィン樹脂としては、例えば、シクロオレフィンと非環状オレフィンとの付加共重合体(シクロオレフィンコポリマー、COC)、1種又は2種以上のシクロオレフィンの開環メタセシス重合体、前記開環メタセシス重合体を水素化して得られる重合体(シクロオレフィンポリマー、COP)等を挙げることができる。シクロオレフィンとしては、ノルボルネン系オレフィン、テトラシクロドデセン系オレフィン、ジシクロペンタジエン系オレフィン及びこれらの誘導体等が挙げられる。この誘導体としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、アルキリデン基(好ましくは炭素数1~20)、アラルキル基(好ましくは炭素数6~30)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~10)、アセチル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、芳香環、エーテル結合、エステル結合等による置換誘導体が挙げられる。
【0020】
以上のほか、ポリスチレンも第2樹脂として好適に用いることができる。
【0021】
また、第2樹脂を選択する場合、第2樹脂のTgは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂のTgよりも25℃以上、特に30℃以上高いことが好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂と第2樹脂のTgの差が大きいと、ブレンド物をフィルム化する際に、第2樹脂が先に硬化するため、ポリエチレンテレフタレート系樹脂と第2樹脂との界面の密着性が低下して、引裂強度がより低下する。なお、Tgは示差走査型熱量計(DSC)にて、昇温速度10℃/minにて求めることができる。
【0022】
さらに、第2樹脂とポリエチレンテレフタレート系樹脂の、270℃せん断速度121.6(1/秒)における溶融粘度比が0.3~1.6、その中でも0.8~1.5であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂と第2樹脂の溶融粘度差を小さく、溶融粘度比(分散相の溶融粘度/マトリックスの溶融粘度、すなわち第2樹脂の溶融粘度/ポリエチレンテレフタレート系樹脂の溶融粘度)を1に近くすることにより、ブレンドした場合の分散性が高まり、フィルムがより裂け易くなるため好ましい。なお、上記の溶融粘度は、JIS K7199「熱可塑性プラスチックのキャピラリーレオメータによる流れ特性試験方法」に基づき求めることができる。
【0023】
以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂及び第2樹脂をブレンドし、押出等の公知の手段によりフィルム化することにより本発明の易引裂性無延伸樹脂フィルムを得ることができる。具体的には、ブレンドするポリエチレンテレフタレート系樹脂と第2樹脂のチップを押出機に投入する前に混合し、この混合チップを押出機に投入して溶融・混合する方法や、ポリエチレンテレフタレート系樹脂のチップと第2樹脂のチップとを混合せずに、それぞれ別々の押出機に投入して溶融し、これら別々の押出機で溶融したポリエチレンテレフタレート系樹脂と第2樹脂とをダイから押出す前に混合してダイに導く方法等があり、いずれの方法を用いても良い。混練温度は、第2樹脂の種類によっても異なるが、255℃以上295℃未満とすることが好ましく、より好ましくは255℃以上285℃未満である。また、ブレンド樹脂の押出機内での滞留時間は5分~20分とすることが好ましい。
【0024】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂と第2樹脂とのブレンドの割合は、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の割合を60重量%~80重量%、好ましくは65重量%~75重量%とし、第2樹脂の割合を40重量%~20重量%、好ましくは35重量%~25重量%とすると、分散状態が理想的となり、フィルムの引裂強度をより低下させることができる。
【0025】
また、得られた易引裂性無延伸樹脂フィルムを顕微鏡で観察した場合、ポリエチレンテレフタレート系樹脂中に第2樹脂が粒子状に分散した状態であり、第2樹脂の粒子のフィルム平面内における平均アスペクト比(長軸/短軸)が1~5、好ましくは1~3、特に1~2であることが好ましい。第2樹脂がフィルムの長手方向(MD方向)と垂直方向(TD方向)でほぼ同程度の粒子形状(低アスペクト比)で分散することにより、フィルムの引裂強度を引裂き方向によらずさらに小さくすることができる。なお、上記の平均アスペクト比は、フィルムのMD方向及びTD方向の断面を顕微鏡で観察し、その各々においてランダムに10個選択した第2樹脂の粒子のフィルムのMD方向に沿った平均長さとTD方向に沿った平均長さを求め、それらの比から平均アスペクト比を求める。
【0026】
以上の方法により得られた本発明の樹脂フィルムは、易引裂性を有する無延伸の樹脂フィルムであり、好ましくは長手方向及び垂直方向のそれぞれにおける引裂強度が0.25N以下、好ましくは0.2N以下である。しかし、これに限定されるものではなく、フィルムの構成及び用途に応じて、これ以上の引裂強度を有していても良い。なお、本発明における引裂強度は、JIS K7128に基づきトラウザー試験方法により引張試験機を用いて測定した値をいう。
【0027】
本発明の易引裂性無延伸樹脂フィルムの厚みは、フィルムの用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではない。例えば、1μm~30μm、好ましくは2μm~25μm、より好ましくは3μm~20μmとすることができる。
【0028】
次に、以上のような易引裂性無延伸樹脂フィルムを用いた包装材用積層フィルムについて説明する。
図1に、本発明の包装材用積層フィルムの一実施形態を示す。この包装材用積層フィルム1Aは、ヒートシール面となる内層フィルム20と、上述の易引裂性無延伸樹脂フィルム10とから構成されている。易引裂性無延伸樹脂フィルム10の、内層フィルム20が積層する側とは反対側の面には、必要に応じて、後述する表層フィルムや、基材フィルム等の一つ以上の層をさらに積層することができ、積層フィルムの層数は特に限定されるものではない。また、易引裂性無延伸樹脂フィルム10と内層フィルム20の間にも、粘着剤層等の別の層を適宜備えることができる。この包装材用積層フィルム1Aは、包装材として、内側に食品や貼付剤等の薬剤等を充填し、内層フィルム20のヒートシールによって密封して用いることができる。積層フィルム中の一層として易引裂性無延伸樹脂フィルム10を備えているため、引裂きによる開封が容易になる。
【0029】
内層フィルム20としては、ヒートシール性を有していれば良く、さらに、密封する対象によって、耐薬品性、油状成分に対する非吸着性を有することが好ましい。このような内層フィルム20の材質は、各種の樹脂から適宜選択することができ、具体例として、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。その中でも、イソフタル酸成分の共重合比率が10モル%~20モル%であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂が、ヒートシール性に優れるため特に好ましく用いられる。なお、ここでいうイソフタル酸成分の共重合比率とは、ジカルボン酸成分全体に占めるイソフタル酸の割合をいう。
【0030】
ヒートシール面となる内層フィルム20として用いる、イソフタル酸成分の共重合比率が10モル%~20モル%であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、油状成分の非収着性に優れていると共に、優れたヒートシール性を有する。このため、前記イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、貼付剤中の油状成分の包装材への移行を防止できる包装材のヒートシール面を構成する材料として適している。
【0031】
内層フィルム20には、ヒートシール特性及び非収着性を損なわない範囲で各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防カビ剤、硬化触媒、可塑剤、顔料、充填剤、SiO2等の滑材等が挙げられる。これらの添加剤の添加量は、添加剤の種類によって異なるが、合計して内層フィルム中0~10重量%の範囲内とすることが好ましい。
【0032】
内層フィルム20の厚みは、厚過ぎると積層フィルム全体の引裂性が低下し、逆に薄過ぎるとヒートシール強度が低下する傾向があるため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。例えば、1μm~20μm、好ましくは2μm~10μm、より好ましくは3μm~8μmとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0033】
包装材用積層フィルム1Aを製造するに当たっては、従来公知である種々の成形法を用いることができる。例えば、易引裂性無延伸樹脂フィルム10を構成するブレンド物と内層フィルム20を構成する樹脂とを同時に多層Tダイから共押出して成膜する方法や、予め製膜した内層フィルム20上に、易引裂性無延伸樹脂フィルム10を溶融押出して貼り合わせる押出ラミネーション法、あるいは、易引裂性無延伸樹脂フィルム10及び内層フィルム20を別々に製造し、それらを接着剤を介して貼り合わせるドライラミネーション法等を適宜採用することができる。内層フィルム20を成膜する場合、その方法としてはTダイ成形やインフレーション成形等の公知の成膜方法を用いることができる。その際、熱溶融状態のフィルムが急速冷却により固化されることが好ましい。急速冷却することにより、樹脂の結晶化が抑制され、ヒートシール特性に優れたフィルムが得られる。また、内層フィルム20は無延伸あるいは低倍率で延伸された状態であることが好ましい。内層フィルム20がポリエチレンテレフタレート系樹脂により構成される場合は、高倍率で延伸されることにより配向結晶化が起こりヒートシール性が低下する可能性がある。
【0034】
包装材として実際に用いる場合には、易引裂性無延伸樹脂フィルム10上にさらに基材フィルム等の一つ又は複数の層を設けることができる。基材フィルムとしては、特に限定されるものではないが、透明性、印刷適性、耐薬品性及び強度に優れるという点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリプロピレンのフィルム等を使用することができる。基材フィルムの厚み(下記のガスバリア層を除く)は、5μm~20μmとすることが好ましく、10μm~15μmとすることが特に好ましい。
【0035】
さらに、酸素や水蒸気の透過を防ぐことを目的として、ガスバリア層を積層することも好ましい。ガスバリア層としては、アルミニウム箔等を使用することができる。アルミ箔は、酸素や水蒸気に対するバリア性だけではなく、遮光性にも優れており好適に使用することができる。ガスバリア層を積層する場合、その厚みは2μm~20μmが好ましく、5μm~10μmの範囲が特に好ましい。
【0036】
包装材用積層フィルム1A、及び上記基材フィルム、ガスバリア層等から構成される包装材は、三方又は四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピローパウチ類等に製袋することにより包装袋とすることができる。製袋は公知の製袋法を用いて行うことができる。
【0037】
上記包装材にて包装される貼付剤は、支持体と粘着剤層からなり、粘着剤層には薬物を配合し、薬物を経皮吸収させて各種疾患の治療又は予防を行うことができる。ここにいう薬物は特に限定されず、全身性作用薬、局所作用薬のいずれをも用いることができる。そのような薬物としては、例えば、副腎皮質ステロイド剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗リウマチ剤、睡眠剤、抗精神病剤、抗うつ剤、気分安定剤、精神刺激剤、抗不安剤、抗てんかん剤、片頭痛治療剤、パーキンソン病治療剤、ムスカリン受容体拮抗剤、レストレスレッグス症候群治療剤、脳循環・代謝改善剤、抗認知症剤、自律神経作用剤、筋弛緩剤、降圧剤、利尿剤、血糖降下剤、高脂血症治療剤、痛風治療剤、全身麻酔剤、局所麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、ビタミン剤、狭心症治療剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、抗ヒスタミン剤、メディエーター遊離抑制剤、ロイコトリエン拮抗剤性ホルモン剤、甲状腺ホルモン剤、抗甲状腺剤、抗腫瘍剤、制吐剤、鎮暈剤、気管支拡張剤、鎮咳剤、去痰剤、禁煙補助剤、抗骨粗鬆症剤等が挙げられる。これらの薬物は、遊離体の形態で用いても良く、塩の形態で用いても良い。また、これらの薬物は、単独で、又は2種以上を混合して用いても良い。
【0038】
支持体としては、貼付した際に著しい違和感がないものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリエステル、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、アイオノマー樹脂等の合成樹脂からなる単独フィルム、又はこれらのラミネートフィルム、あるいはゴム製、上記合成樹脂製、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル製、もしくはナイロン等のポリアミド製の多孔性フィルム又はシート、不織布、織布又はこれらと上記合成樹脂フィルムとのラミネート物等が挙げられる。
【0039】
貼付剤は、経皮吸収製剤であって、経皮吸収性薬物を含有する粘着剤層を支持体の片面に形成してなるものが好ましい。また、該粘着剤層の他方の面に、剥離処理した離形フィルムを積層させても良い。
【0040】
貼付剤の形態としては、平面上の扁平な形態であり、平面形状は、略矩形の他、三角形、五角形等の多角形、すなわち略直線で輪郭付けられる形状や、楕円、円形等の曲線で輪郭付けられる形状、それらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
貼付剤の大きさは、貼付剤の用途や適用箇所等に応じて、適宜選択することができる。例えば、貼付剤の形状が略矩形である場合、一般的には、その一辺の長さが15mm~90mmであり、他辺の長さも15mm~90mmである。
【0042】
貼付剤の総厚みは、通常、50μm~2000μmであり、好ましくは、100μm~1000μmの範囲である。また、貼付剤は支持体と粘着剤層から構成されるが、支持体は、厚みが通常、1μm~1000μmであり、粘着剤層は通常、10μm~200μmであり、好ましくは、15μm~150μmである。
【0043】
粘着剤層には、油状成分が含有されていても良い。含有される油状成分は、粘着剤層を可塑化してソフト感を付与して皮膚刺激性を低減させたり、薬物の経皮吸収性を調整したりするために用いられる。油状成分は、室温(25℃)で液状であるもの、又は2種以上を混合して用いる場合には、最終的に混合物が室温(25℃)で液状となるものが好ましい。このような油状成分としては、例えば、オレイルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;グリセリン、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール;カプリル酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル等の脂肪酸エステル;セバチン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル等の多塩基酸エステル;トリイソステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ソルビタン、ジカプリル酸プロピレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等の多価アルコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;スクアラン、流動パラフィン等の炭化水素;オリーブ油、ヒマシ油等の植物油;シリコーン油;N-メチルピロリドン、N-ドデシルピロリドンのようなピロリドン類;デシルメチルスルホキシドのようなスルホキシド類等が挙げられる。これらの油状成分は、単独で、又は2種以上混合して用いても良い。
【0044】
本発明における貼付剤用の包装袋の形状は、貼付剤を包装できるような形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、正方形、長方形等の略矩形の他、三角形、五角形等の多角形、円形、楕円形、その他の図形等が挙げられる。また、貼付剤用の包装袋の形状と包装される貼付剤の形状とは、貼付剤の個別包装(密封)が可能である限り、同一であっても異なるものであっても良い。
【0045】
続いて、本発明の包装材用積層フィルムの別の実施形態を
図2に示す。
図2の包装材用積層フィルム1Bは、ヒートシール面となる内層フィルム20と、表層フィルム30と、それら内層フィルム20及び表層フィルム30の間に、易引裂性無延伸樹脂フィルム10とを有している。
【0046】
表層フィルム30は、樹脂等により構成することができ、耐熱性、耐薬品性、非吸着性等の特性を有していることが好ましい。このような表層フィルム30の材質としては、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。その中でも、イソフタル酸成分の共重合比率が0~5モル%であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、油状成分に対する高い非吸着性を有するため好ましく用いられる。上記の低変性率のポリエチレンテレフタレートは、ペットボトル用材料として汎用的に大量に使用されているため安価に調達可能であり、経済性に優れる。
【0047】
図2のように、表層フィルム30を設ける場合、その厚みは特に限定されるものではないが、例えば1μm~20μmとすることが好ましい。
【0048】
包装材用積層フィルム1Bを製造する際には、公知の方法により製膜することができ、例えば、表層フィルム30、易引裂性無延伸樹脂フィルム10及び内層フィルム20の3層を同時に多層Tダイから共押出して成膜する方法、表層フィルム30及び内層フィルム20の間に易引裂性無延伸樹脂フィルムを溶融押出して貼り合わせる押出ラミネーション法、あるいは表層フィルム30、易引裂性無延伸樹脂フィルム10及び内層フィルム20の3層を別々に作製し、それらを接着剤を介して貼り合わせるドライラミネーション法等により製造することができる。
【0049】
図1に示す実施形態と同様に、包装材用積層フィルム1Bには、さらに基材フィルムやガスバリア層等を積層し、実際に用いる包装材とすることもできる。それら各層の構成については、
図1の実施形態に準ずる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(易引裂性無延伸樹脂フィルムの製造及び引裂試験)
易引裂性無延伸樹脂フィルムの製造に使用した材料を表1に示す。表1中の各記号の意味は次のとおりである。
PET/IA2: イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(イソフタル酸成分の共重合比率2モル%)
PMMA: ポリメタクリル酸メチル
COC: シクロオレフィンコポリマー(エチレンとノルボルネンとの共重合体、表中のカッコ内は共重合比(重量%)を示す)
PEN: ポリエチレンナフタレート
PP:ポリプロピレン
PS:ポリスチレン
EVOH: エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(表中のカッコ内は共重合比(モル%)を示す)
Tg:ガラス転移点(℃)
溶融粘度: 270℃せん断速度121.6(1/秒)における値(Pa・s)
【0052】
【0053】
表1に示す各材料を、表2に示す各フィルム構成で押出機を用いて混練・押出し、目的の樹脂フィルムを製造した。押出成形温度は270℃とした。得られた樹脂フィルムの厚さは20μmであった。製造した各樹脂フィルムについて、以下の条件で引裂試験を実施した。その結果を表2に示す。表2中、MDは縦方向(流れ方向)、TDは垂直方向の引裂強度を示している。
試験方法: トラウザー試験方法
試験片: トラウザー試験片(縦:150mm、横:50mm、スリット長さ:75mm)
試験条件: 試験速度200mm/分、測定温度25℃(室温)
【0054】
【0055】
表2に示すとおり、第2樹脂として、PET/IA2のSP値との差が1.1~4.0(cal/cm3)0.5の範囲内である樹脂を用いた実施例1~5、及び実施例19~22の樹脂フィルムは、SP値の差が小さいPEN、及びSP値の差が大きいPPとブレンドした場合に比べて、いずれも引裂強度が小さく、易引裂性の樹脂フィルムとして良好な特性を有していた。ただし、第2樹脂の割合が50重量%の実施例3はフィルムの成形性が不安定であった。
【0056】
(包装材用積層フィルムの製造及び引裂試験)
次に、
図2に示す3層構造の包装材用積層フィルムを製造し、引裂試験を行った。積層フィルムの製造に使用した材料は、内層フィルムを除いて表1と同じである。内層フィルムには、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(イソフタル酸成分の共重合比率15モル%、PET/IA15)を使用した。
【0057】
表層フィルムはPET/IA2単体から構成し、ヒートシール面となる内層フィルムはPET/IA15に滑材として平均粒径2.5μmの球状シリカを添加して構成した(添加量は内層フィルム全体の10重量%)。表層フィルム及び内層フィルムに挟まれる易引裂性無延伸樹脂フィルム(芯層)は、表3に示す各ブレンドにより構成した。積層フィルムを製造するに際しては、3層を同時に多層Tダイから共押出して成膜することにより行った。得られた積層フィルムの厚みは17μm(層比は、表層:芯層:内層=3.6:9.8:3.6)であった。比較例7として表層フィルムと内層フィルムのみからなる2層構成のフィルムを、芯層を含む積層フィルムと同じ厚み17μm(層比は、表層:内層=13.4:3.6)で成膜した。
【0058】
製造した実施例6~18及び比較例7の包装材用積層フィルムについて、以下の条件で引裂試験を実施した。その結果を表3に示す。
試験方法: トラウザー試験方法
試験片: トラウザー試験片(縦:150mm、横:50mm、スリット長さ:75mm)
試験条件: 試験速度200mm/分、測定温度25℃(室温)
【0059】
【0060】
表3に示すとおり、芯層として本発明の易引裂性無延伸樹脂フィルムを用いた場合には、積層フィルム全体としても、いずれも低い引裂強度を達成することができた。溶融粘度比が0.3~1.6の範囲外である実施例6、7及び13や、第2樹脂のTgが低い実施例12では、それ以外の実施例に比べて引裂強度は若干高くなったが、比較例に比べると十分に低い値であった。さらに、実施例14及び実施例16について、製造した積層フィルムの断面を顕微鏡観察した結果、第2樹脂の粒子がPET/IA2中に分散した状態が観察された。粒子の平均アスペクト比は、MD方向及びTD方向の断面を顕微鏡で観察し、その各々においてランダムに10個選択した第2樹脂の粒子のフィルムのMD方向に沿った平均長さとTD方向に沿った平均長さを求め、それらの比を算出して平均アスペクト比とした。測定した結果を表4に示す。
【0061】
【0062】
(参考例:さらに多層化したフィルムの引裂性評価)
参考例2~7として、上記実施例8~11及び17並びに比較例7の包装材用積層フィルム(厚み17μm)上に、さらに、接着剤層、7μmアルミニウム箔、接着剤層及び12μm延伸PETフィルムをこの順に積層した。参考例1は、参考例2~7における包装材用積層フィルムに替えて、ポリアクリロニトリルフィルムを積層させたものである。得られた積層体について、以下の条件で引裂試験を実施した。その結果を表5に示す。
試験方法: トラウザー試験法
試験片: トラウザー試験片(100mm×100mmの4方シール平パウチ、スリット長さ10mm)
試験条件: 試験速度200mm/分、測定環境23℃-50%RH
n数: 10
【0063】
【0064】
表5に示すように、積層体を構成する一層に本発明の包装材用積層フィルムを用いた参考例3~7は、PANフィルムを積層させた参考例1と同程度の易引裂性を示し、高価なPANフィルムに代替し得ることが示された。
【符号の説明】
【0065】
1A、1B 包装材用積層フィルム
10 易引裂性無延伸樹脂フィルム
20 内層フィルム
30 表層フィルム
【0066】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。