(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】PMラインスタートモータ、およびそのためのスイッチオン方法
(51)【国際特許分類】
H02P 1/48 20060101AFI20220120BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20220120BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H02P1/48
H02K11/33
H02K3/28 Z
(21)【出願番号】P 2018532250
(86)(22)【出願日】2016-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2016078402
(87)【国際公開番号】W WO2017108301
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-07-31
(31)【優先権主張番号】102015226210.3
(32)【優先日】2015-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591040649
【氏名又は名称】カーエスベー ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディート ゲゼルシャフト アウフ アクチェン
【氏名又は名称原語表記】KSB SE & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】フート,ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】シルマー,ハンス‐ゲオルク
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-522485(JP,A)
【文献】特開2001-327132(JP,A)
【文献】特表2008-520175(JP,A)
【文献】特開平01-214293(JP,A)
【文献】特開2006-271071(JP,A)
【文献】特開昭58-039276(JP,A)
【文献】特表2007-515617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 1/00-1/58
H02P 4/00
H02P 6/00-6/34
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/08-31/00
H02K 3/28
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5kWの出力を有するPMラインスタートモータであって、
回転子と、固定子巻線を有する固定子とを備えるモータにおいて、
前記固定子巻線は、可変極回転磁界巻線として具現化されており、
シーケンスコントローラをさらに備え、前記シーケンスコントローラは、前記モータのスイッチオンプロセス中に前記可変極回転磁界巻線のターゲットにされた巻線切り替えを実行するように設計されており、前記ターゲットにされた巻線切り替えは、前記モータの始動のための第1の巻線段から前記モータの同期動作のための第2の巻線段へ行われ、
前記シーケンスコントローラは、前記第1の巻線段から前記第2の巻線段への前記切り替えの間のフェーズを与えるようにさらに設計されており、前記フェーズでは前記第1の巻線段も前記第2の巻線段も電力が供給されず、前記第2の巻線段への前記切り替えの時間は、供給系統電圧の位相と前記回転子による誘導回転子電圧の位相とが同じ位相整合を有したときに行われることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記可変極回転磁界巻線の前記第1の巻線段及び前記第2の巻線段は、互いに別々に動作することができ、
前記第1の巻線段は、いくつかの起動極ペアp1を有し、前記いくつかの起動極ペアp1の個数と前記第2の巻線段のいくつかの動作極ペアp2の個数とは異なる、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1の巻線段は前記モータの非同期始動のために働き、前記第2の巻線段は前記モータの同期動作のために働く、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1の巻線段の前記いくつかの起動極ペアp1は、前記回転子のいくつかの極ペアp3とは異なり、前記第2の巻線段の動作極ペアp2の個数は、前記回転子の極ペアp3の個数に等しい、請求項2または3に記載のモータ。
【請求項5】
前記第1の巻線段の起動極ペアp1の個数は、前記第2の巻線段の動作極ペアp2の個数よりも少ない、請求項2から4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記第1の巻線段に接続される第1のスイッチと、前記第2の巻線段に接続される第2のスイッチとをさらに備え、前記第1および前記第2のスイッチは、シーケンスコントローラによって作動することができる、請求項1から5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記巻線から遠く離れている前記第1および第2のスイッチの端部は、電源スイッチを介して互いに接続されるとともに供給ラインに接続され、前記電源スイッチは、前記シーケンスコントローラによって作動することができる、請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
電圧を減少させる安定器回路は、突入電流またはリスタート電流を制限するために、供給系統電圧ラインと前記固定子巻線の間に配置され、前記安定器回路は、安定器インピーダンスまたはソフトスタータによって実装される、請求項1から7のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項9】
前記固定子巻線は、ダーランダー巻線の形態で具現化される、請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項10】
前記固定子巻線は、互いから隔離されているとともに異なる個数の極のためにそれぞれ設計されている2つの巻線を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項11】
前記モータまたは前記シーケンスコントローラは、オーバー同期方式における前記PMラインスタートモータの同期定格回転速度n1に基づいて、切り替え実行するように設計されており、前記定格回転速度n1は、
n1=fsupply system/p2であり、ただし、
fsupply systemは、供給系統周波数であり、
p2は、前記第2の巻線段の動作極ペアの個数である、
請求項2から10のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項の特徴を有するPMラインスタートモータのスイッチオン方法であって、
(i)非同期始動フェーズを開始するように第1の巻線段をスイッチオンするステップと、
(ii)前記非同期始動フェーズを終了させるために前記第1の巻線段を切断するステップと、
(iii)前記モータの前記同期動作のために設計されている第2の巻線段を接続するステップと
を含む方法。
【請求項13】
ステップ(ii)と(iii)の間に、
(iv)最も滑らかな可能な供給系統接続を可能にする切り替え時間を決定するために、前記供給系統電圧および誘導回転子電圧を監視するステップをさらに含み、切り替え時間は、前記誘導回転子電圧と前記供給系統電圧との間
で周波数の等しさがあり、および前記供給系統電圧と前記周波数の等しさの差が小さい、すなわち所定の閾値に届かないときに、
可能な限り最も滑らか
な供給系統接続を可能にする、請求項12に記載のスイッチオン方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石励磁を用いるラインスタートモータ(以下、PMラインスタートモータとも呼ばれる)、およびそのためのスイッチオン方法に関する。
【0002】
永久磁石ラインスタートモータは、代替として、場合によっては永久磁石励磁を用いるラインスタートモータ、ラインスタート永久磁石モータ、またはLSPMモータとも呼ばれており、回転子内にさらなる永久磁石を収容するかご形回転子を備える三相非同期モータである。非同期起動後に、このモータは、それ自体を給電周波数と同期させ、次いで同期動作で運転する。原理上、前記モータは、最小の回転子および励磁損失を有し、これによって高効率という結果になる。したがって、前記モータは、ロバストな非同期機械の利点と低損失同期モータの利点とを組み合わせる。
【0003】
この種のモータは、非同期起動トルクを発生させる非同期モータの能力と、回転磁界と同期した回転速度で運転することができる同期モータの能力とを有する。
【0004】
PMラインスタートモータは、適切なスイッチオン方法を用いて、供給系統およびシャフト組立体内の突入サージを減少させるために、約4から5kWの定格出力からの三相供給系統に接続されなければならない。
【0005】
例えば、スターデルタ起動、起動変圧器、またはソフトスタータなどのかご形モータから知られたスイッチオン方法は、スイッチオン中のモータ電圧を最初に減少させる方法を構成する。便宜上、これらの方法は、PMラインスタートモータに使用することができない。この理由は、PMラインスタートモータの物理による。
【0006】
PMラインスタートモータは、かご形モータとPM同期モータの組み合わせを構成する。スイッチオン後、PMラインスタートモータは、最初、かご形モータのような起動ケージを用いて始動する。始動プロセス後、同期回転速度への最終的な引入れが続き、そのとき以降、PMラインスタートモータは、対応する高効率でのPM同期モータとしての動作に従って運転する。
【0007】
非同期始動プロセス中、PM回転子は、三相供給系統が事実上ショートを構成する固定子巻線内に滑り周波数電圧システムを誘導する。これは、所望の起動ケージの非同期トルクに加え、さらなる発電機タイプの制動トルクという結果になり、原理的にこれは、始動プロセスを妨げる。2つのトルク成分の重ね合わせは、
図1にスケッチされている。
【0008】
発電機タイプの制動トルクのプロファイルは、顕著な制動サドルを有する。この発電機タイプの制動サドルは、とても限られた範囲内のみでその大きさのオーダーの観点で構造的に影響を受け得るとともに、供給系統電圧に依存もしないものであり、この発電機タイプの制動サドルが、電圧の減少を伴うスイッチオンおよび始動プロセス時の実際の問題を構成する。
【0009】
非同期トルクが電圧の減少に伴って二次的に低下するが、発電機タイプの制動サドルがそのレベルの観点で変わらないままであるので、対応する減少した電圧での始動プロセスは、早ければ発電機タイプの制動サドルで終わることができる。電圧の減少を伴う非同期駆動トルクは、発電機タイプの制動サドルに打ち勝つほど十分に大きくない。状況次第では、したがって、これは、電圧の減少を伴うスイッチオンフェーズにおけるモータの同期よりも遅いリミットサイクル(同期よりも遅い回転速度範囲内の回転速度点あたりの変動)をもたらす。実際には、発電機タイプの制動サドルにスタックされるこの現象は、早ければ80から85%への電圧減少から起こる。したがって、電圧減少スイッチオン方法単独では、PMラインスタートモータの使用に適さない。したがって、目的は、有効に使用することができ、前述の欠点に打ち勝つPMラインスタートモータのためのスイッチオン方法を開発することである。
【発明の概要】
【0010】
「ラインスタート」のようなそれらの名称とは全く反対に、PMラインスタートモータが、当初、U-f変換器における回転速度可変動作のために特に開発されたので、これまでのところ、この目的は、解決される必要はなかった。ほんの近年に入って、効率クラスのモータに対する必要性に関連して、ラインスタートの機能が再発見された。しかしながら、これまでのところ、市販のPMラインスタートモータは、約5kWまでのより低い出力範囲をカバーするのに過ぎなかった。しかしながら、この出力範囲のため、スイッチオン方法は、まだ必要とされておらず、結果として、そのようなモータは、上で説明した問題にさらされていない。
【0011】
本発明は、請求項1に記載の特徴を有するPMラインスタートモータの助けを借りてこの問題を解決する。
【0012】
したがって、好ましくは少なくとも5kWの出力を有するPMラインスタートモータは、回転子と、固定子巻線を有する固定子とを備え、固定子巻線は、可変極回転磁界巻線として具現化されている。
【0013】
これによって、スイッチオン方法におけるモータの始動を妨げる発電機タイプの制動サドルを防ぐことができる。
【0014】
好ましくは、可変極回転磁界巻線は、互いに別々に動作することができる第1の巻線段と第2の巻線段とを備え、第1の巻線段は、いくつかの起動極ペアp1と以下呼ばれるいくつかの極ペアを有し、いくつかの起動極ペアp1は、第2の巻線段のいくつかの動作極ペアp2と以下呼ばれるいくつかの極ペアに等しくない。
【0015】
典型的には、第1の巻線段は、モータの非同期始動のために働き、第2の巻線段はモータの同期動作のために働く。発電機タイプの制動サドルが形成できないように第1の巻線段が測定されるときここでそれは有利である。
【0016】
起動フェーズにおける発電機タイプの制動サドルの抑制は、モータの非同期始動のために使用される第1の巻線段が、PM回転子のいくつかの極ペアp3に対応しないいくつかの起動極ペアp1を有するときに可能である。起動フェーズでは、いくつかの起動極ペアp1を有する固定子巻線および起動ケージは、したがって、純粋な非同期モータとして動作する。PM回転子は、異なる個数の極ペアのために切り離される。この切り離しは、発電機タイプの制動サドルの形成を防ぐ。したがって、それは、PM回転子が始動プロセスにおける起動トルクを打ち消す制動トルクを発生させるという結果にならない。
【0017】
始動後、好ましくはPM回転子の同じ個数の極ペアp3を有する第2の巻線段への切り替えがある。本発明の有利な実施形態では、したがって、第2の巻線段の動作極ペアp2の個数は、PM回転子の極ペアp3の個数に等しい。第2の巻線段が、PMラインスタートモータの同期動作のために用意されることは当業者に明らかである。
【0018】
本発明のさらに有利な修正形態によれば、第1の巻線段の起動極ペアp1の個数は、第2の巻線段の動作極ペアp2の個数よりも少ない。したがって、例えば、固定子巻線の第1および第2の巻線段の極ペアの個数は、割合1:2を仮定することができる。しかしながら、これは、第1の巻線段p1の起動極ペアの個数が、第2の巻線の動作極ペアp2の個数よりも多いことも可能である本発明の変形例を除外しない。
【0019】
本発明のさらなる発展例によれば、モータは、シーケンスコントローラをさらに備え、このシーケンスコントローラは、モータのスイッチオンプロセス中に、可変極回転磁界巻線のターゲットにされた巻線切り替えを実行するように設計されている。ここで、好ましくは、ターゲットにされる巻線切り替えは、モータの始動のための第1の巻線段からモータの同期動作のための第2の巻線段へ行われる。
【0020】
本発明のさらなる有利な構成によれば、シーケンスコントローラは、第1の巻線段から第2の巻線段への切り替えの間のフェーズまたは期間を与えるようにさらに設計されており、このフェーズまたは期間では第1の巻線段も第2の巻線段も電力が供給されず、好ましくは、第2の巻線段への切り替えの時間は、好ましくは供給系統電圧への位相整合に応じて行われる。
【0021】
切り替え時間は、誘導電圧(回転子電圧)に対しての供給系統電圧の位相整合の観察中に生じ得るリスタート電流サージにかなり大きい影響を及ぼす。
【0022】
この場合には、本発明によるモータは、それぞれの巻線段と供給系統電圧ラインとの間に配置されるラインを選択的に閉鎖または中断するために、第1の巻線段に接続される第1のスイッチと、第2の巻線段に接続される第2のスイッチとをさらに備えることができる。ここで、好ましくは、第1および第2のスイッチは、シーケンスコントローラによって作動され得る。設けられるスイッチは、特に、接触子であり得る。
【0023】
本発明のオプションの発展例によれば、関連した巻線に接続されない第1および第2のスイッチのそれぞれの端部は、電源スイッチを介して互いに接続されるとともに供給ラインに接続される。ここで、好ましくは、電源スイッチは、シーケンスコントローラによって作動されることができるようにも構成される。
【0024】
一実施形態によれば、モータは、例えば、第1の巻線から第2の巻線への切り替え中に生じ得る突入電流またはリスタート電流を制限するために、供給系統電圧ラインと固定子巻線の間の電圧を減少させる安定器回路を有してもよい。ここで、安定器回路は、安定器インピーダンスまたはソフトスタータによって実装されることが可能である。
【0025】
さらなるオプションの特徴によれば、固定子巻線は、ダーランダー巻線の形態で具現化される。
【0026】
ダーランダー巻線の形態の固定子巻線の実装は、能動的部分のより良い使用が実現されるので有利である。
【0027】
しかしながら、ダーランダー巻線の形態の固定子巻線の一体形成物の代替として、固定子巻線は、互いから隔離されている2つの巻線を有することもでき、これは、異なる個数の極のためにそれぞれ設計されている。
【0028】
本発明の有利な実施形態によれば、モータは、オーバー同期方式におけるPMラインスタートモータの同期定格回転速度n1に基づいて、第1の巻線から第2の巻線への切り替えを実行するように設計されている。ここで、定格回転速度n1は、供給系統周波数fsupply systemと第2の巻線段の動作極ペアp2の個数との比である。
【0029】
これによって、第1の巻線段から第2の巻線段への切り替え中に、最小の可能なリスタート電流サージを実現する。
【0030】
本発明は、上述の実施形態のいずれか1つの特徴を有するPMラインスタートモータのスイッチオン方法であって、
(i)非同期始動フェーズを開始するように第1の巻線段をスイッチオンするステップと、
(ii)非同期始動フェーズを終了させるために第1の巻線段を切断するステップと、
(iii)モータの同期動作のために設計されている第2の巻線段を接続するステップと
を含む方法にさらに関する。
【0031】
ステップ(ii)と(iii)の間に、好ましくは、上記スイッチオン方法は、
(iv)最も滑らかな可能な供給系統接続を可能にする切り替え時間を決定するために、供給系統電圧および誘導回転子電圧を監視するステップをさらに含み、
好ましくは、切り替え時間は、回転子電圧と供給系統電圧との間でおおよその周波数の等しさがあり、および供給系統電圧と周波数の等しさの差が小さい、すなわち所定の閾値に届かないときに、最も滑らかな可能な供給系統接続を可能にする。
【0032】
本発明およびその発展例は、好ましい例示的な実施形態の添付図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】従来のPMラインスタートモータの非同期始動中の準定常トルクプロファイルを示す図である。
【
図2】本発明による接続されたPMラインスタートモータの構造的な回路図である。
【
図3】モータの始動中に
図2に示されたスイッチのスイッチングシーケンスを示す図である。
【
図4】巻線切り替えを伴う本発明によるPMラインスタートモータの始動プロセスのM(n)グラフである。
【
図5】本発明によるPMラインスタートモータの回路接続の変形例を示す図である。
【
図6】追加のソフトスタータを伴う本発明による接続されたPMラインスタートモータの構造的な回路図である。
【
図7】その可変極固定子巻線がダーランダー巻線である、接続されたPMラインスタートモータの回路図である。
【
図8】オーバー同期巻線切り替えを用いる本発明によるPMラインスタートモータの始動プロセスの定常M(n)のグラフを示す図である。
【
図9】本発明による接続されたPMラインスタートモータの構造的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本明細書の導入部分においてすでにより詳細に説明されており、モータ回転速度に関しての制動トルクのプロファイルを示す。問題は、非同期トルクが電圧の減少に伴って二次的に低下するが、PM回転子によって引き起こされる制動トルクは変わらないままであることである。ここで、望むものがこのように開始時に電圧の低下をもたらすスイッチオン方法を提供することである場合、制動トルクが非同期トルクよりも大きくなり、回転子の加速を打ち消す危険がある。
【0035】
図2は、巻線切り替えを伴う本発明によるPMラインスタートモータの概略回路図を示す。
【0036】
半導体接触子および/または機械的接触子の形態の接触子として、あるいはスイッチング素子として設計されている3つのスイッチの全部を見ることができる。スイッチS1およびS2は、2つの巻線段がPMラインスタートモータのために形成されるように、モータ巻線に給電する。第3のスイッチ(示された供給系統)は、切り替えフェーズ中かつドライブが動作していていないときに、三相供給系統から回路全体を隔離する。スイッチS1に接続される第1の巻線段は、実際的には発電機タイプの制動サドルが形成できないように、非同期始動のために考えられ測定される。第1の巻線段における非同期始動後、モータの同期動作のために特に設計されている第2の巻線段への切り替えがなされる。この場合には、スイッチの全部、すなわち、S1、S2、および「供給系統」は、に接続され、このシーケンスコントローラが、個々のスイッチの作動を制御する。
【0037】
図3は、スイッチオンおよび始動プロセスの全体を示し、これは、本質的に4つのスイッチングフェーズに分割されている。すでに簡単に上で説明されたように、例えばプログラマブル論理コントローラまたは従来のリレーコントローラの形態のシーケンスコントローラは、複数のスイッチからなる所望のイッチングシーケンスを確実にする。典型的にはスイッチングフェーズ1に形成する発電機タイプの制動サドルの抑制は、固定子巻線の第1の巻線段が、PM回転子への異なる個数の極ペアを有するときに可能である。フェーズ2において、固定子巻線は、供給系統からとられる。この場合には、電源スイッチまたはスイッチS1は、同時にまたは連続して、そのそれぞれの開位置にもたらされ得る。フェーズ3において、固定子巻線は、S2を用いて第2の巻線段にスイッチされるが、電源スイッチは、いまだにその開位置に維持されている。次に、第2の巻線段は、PMラインスタートモータの同期動作を実行するために、PM回転子のいくつかの極ペアを有する。最も小さい可能な突入電流サージを発生させるために、フェーズ3において供給系統電圧と誘導電圧の比較を実行することが好都合なである。2つの電圧が異なる周波数を有する場合でも、電源スイッチが閉鎖されるフェーズ4への移行は、2つの電圧の位相整合が互いに対してできる限り好ましい場合にのみ、すなわち、2つの三相電圧システムが可能な最も同じ位相整合を有した場合に生じる。
【0038】
フェーズ4において、したがって、第2の巻線は、S2によって供給系統電圧に接続され、すなわち、このようにして、それは、第1の巻線によって起動された回転子によって引き継がれる。
【0039】
図4は、固定子巻線の2つの巻線段の極ペアの個数が比2:1で挙動する場合について示されたM(n)グラフにおいて、準定常のやり方でこの始動プロセスを示す。この場合には、第1の巻線の起動極ペアp1の個数は、第2の巻線の動作極ペアp2の個数のサイズの2倍であることがやはり当てはまる。ここで、本質的に、横座標に関するモータの回転速度と縦座標に関するモータから生じるトルクを示す2つの曲線が見られ得る。ここで、S1で示された曲線は、第1の巻線段の特性曲線に対応し、S2で示された曲線は、第2の巻線段の特性曲線に対応する。ここで、破線およびWの表示で示された曲線は、負荷特性曲線である。
【0040】
巻線切り替えを伴う本発明によるモータのスイッチオン方法では、特性曲線S1は、回転速度0から前進して、複縦線および上向きの透明な三角形で示された切り替えプロセスにおいて第2の巻線の特性曲線の変化があるまで追跡されている。
【0041】
モータの同期動作について確かに設計されている第2の巻線段の特性曲線S2の発電機タイプの制動サドルは、それによってバイパスされ、もはや制動サドルを有さない特性曲線の範囲内のみで使用される。
【0042】
次に、巻線切り替えを伴う説明されたスイッチオン方法は、始動プロセス、特に電圧の減少を伴う始動プロセスをストールさせる発電機タイプの制動サドルのリスクなしで、スイッチオンおよび始動フェーズ内の電圧を減少させることも可能にさせる。
【0043】
図5は、電源スイッチの代わりに、シーケンスコントローラによって制御できる安定器回路を有する本発明による一実施形態の別の図を示す。安定器回路は、スイッチS1とスイッチS2の両方に接続されている。まさに、
図2に示された回路のように、スイッチオン方法において始動フェーズで生じる発電機タイプの制動サドルを防ぐことが目的である。この目的のため、始動中に、変更可能な固定子巻線の頼ることがなされる。第1の巻線段は、スイッチS1によってスイッチされ、発電機タイプの制動サドルが形成できないように特に非同期始動の間に考えられ測定される。電圧減少安定器回路は、突入電流を制限するために、供給系統と固定子巻線の間に配置することができ、ここで、前記安定器回路は、最も単純な場合には、安定器インピーダンスまたはソフトスタータを伴う。
【0044】
すでに上で説明したように、非同期始動後、第1の巻線段は、スイッチS1によって切断され、第2および最終の巻線段は、スイッチS2を用いてスイッチオンされる。前記第2の巻線段は、同期動作のために特に設計されている。供給系統と固定子巻線の間の電圧制限安定器回路は、第2の巻線段へ変更するときにリスタート電流を制限するために使用することもできる。
【0045】
起動フェーズにおける発電機タイプの制動サドルの抑制は、第1の巻線段における固定子巻線が、PM回転子のいくつかの極ペアp3に対応しないいくつかの起動極ペアp1を有するときに可能である。起動フェーズでは、いくつかの起動極ペアp1を有する固定子巻線および起動ケージは、したがって、純粋な非同期モータとして動作する。PM回転子は、異なる個数の極ペアのために切り離される。始動後、第2の巻線段への切り替えがあり、ここで、固定子巻線は、PM回転子p3のいくつかの動作極ペアp2を有する。したがって、第2の巻線段の固定子巻線は、PMラインスタートモータの同期動作のために与えられるいくつかの極ペアp2を有する。発電機タイプの制動サドルを防ぐために、PMラインスタートモータの固定子巻線は、可変極回転磁界巻線として具現化される。
【0046】
原理的には、異なる個数の極ペアについてそれぞれ設計されている2つの隔離された固定子巻線を有する実施形態が、ここで考えられる。
【0047】
図6は、モータ電圧および突入電流を減少させるとともに、電圧時間の傾斜に従って直接供給系統電圧まで増加する、ソフトスタータを有する本発明の変形例を示す。始動後、この種のソフトスタータは、バイパスされる。
【0048】
図7は、本発明によるPMラインスタートモータの回路接続を示しており、固定子巻線は、ダーランダー巻線の形態で具現化されている。これは、能動的部分のより良い使用が実現されるという利点がある。
【0049】
図7によれば、固定子巻線は、2つの部分的な巻線からなり、その実装された巻線端部U
1、2、3、V
1、2、3、およびW
1、2、3は、いずれの場合にも対称的な三相回路(スターまたはデルタ回路、二重スターまたは二重デルタ回路)を形成するように保護回路によって相互接続することができる。
図7は、突入またはリスタート電流をさらに制限するために、供給系統と固定子巻線の間の電圧制限安定器回路をさらに示す。しかしながら、前記安定器回路はオプションである。
【0050】
第1の巻線段から第2の巻線段への切り替え中に最も小さい可能なリスタート電流サージを得るために、切り替えは、PMラインスタートモータの同期定格回転速度n1=fsupply system/p2に基づいてオーバー同期方式で実行される。スイッチオン方法のこの変形例は、したがって、第1の巻線段の起動極ペアp1の個数が第2の巻線段の動作極ペアp2の個数よりも小さいときにのみ可能である。したがって、スイッチオン方法のこの変形例は、極ペアp2の個数≧2であるPMラインスタートモータに使用することができる。
【0051】
図8は、定常のM(n)グラフに始動プロセスを示しており、特性曲線S1は第1の巻線段の特性曲線を示し、特性曲線S2は第2の巻線段の特性曲線を示すとともに、破線の特性曲線は負荷特性曲線を示す。
【0052】
図8によれば、固定子巻線は、最初、直接またはオプションの安定器回路を介して、第1の巻線段内の三相供給系統に接続される。固定子巻線は、定常動作点が負荷特性曲線が同期定格回転速度n
1=f
supply system/p
2よりも上になるように、第1の巻線段に対して設計されるものとする。次のステップでは、固定子巻線は、供給系統から切断され、シーケンスコントローラによる第2の巻線段への最初の切り替えがある。次に、固定子巻線は、PM回転子のいくつかの極ペアを有し、PM回転子は、現在の回転速度に応じて周波数p
2・nを有する回転子電圧を固定子巻線に誘導する。
【0053】
モータが供給系統にまだ接続されていないので、駆動は、負荷特性曲線に従って制動される。これは、特性曲線S1および負荷特性曲線WLoadの交点に位置する動作点の変化で認識することができ、負荷特性曲線WLoad上でより低い回転速度の方向に移動する。
【0054】
そして、典型的には、最も滑らかな可能な供給系統接続のための供給系統電圧および誘導回転子電圧を監視することが、シーケンスコントローラのタスクである。おおよその周波数の等しさがあり、供給系統電圧と回転子電圧の間の差ができる限り小さいとき、PMラインスタートモータの固定子巻線は、直接または安定器回路を介して、第2の巻線段内の三相供給系統に接続される。したがって、動作点は、このプロセスにおける特性曲線S2の発電機タイプの制動サドルを通過する必要なく、第1の巻線の特性曲線S1から第2の巻線の特性曲線S2の範囲へ移行する。
【0055】
図8において、遠心ポンプドライブが仮定されるとともに、ダーランダーの原理に従って固定子巻線が考えられる場合、第1の巻線段はデルタで実行することができ、第2の巻線段は、二重スターで実行することができる。
【0056】
図9は、このための主電気回路の保護回路を示す。
図8にオプションで示されている突入電流およびリスタート電流をさらに減少させるための可能な安定器回路の他に、たった3つの主接触子が、この回路の変形の実行のために必要とされる。
【0057】
例えばPLC(プログラマブル論理コントローラ)による実装できるシーケンスコントローラは、スイッチオン方法の必要なスイッチングシーケンスを確実にする。
【0058】
第1のステップにおいて、固定子巻線は、第1の巻線段にスイッチオンされる。安定器回路が突入電流を制限することが必要であるならば、これは、続いて切断される。
【0059】
第2のステップにおいて、それに続いて、非同期始動フェーズが、切断される。典型的には、これは、第1の巻線段への電力供給を中断することによって実行される。
【0060】
第3のステップにおいて、固定子巻線は、第1の巻線段から第2の巻線段へ変更される。スイッチまたは接触子S1およびS2は、このためにそれに応じて変更される。第2の巻線段については、電気的なスターポイントは、スイッチまたは接触子S3によって確立される。
【0061】
そして、供給系統電圧および誘導回転子電圧は、最も滑らかな可能な再接続を可能にするために監視される。
【0062】
そして、この接続は、その後、適切な時間に実行される。この場合には、したがって、第2の巻線段は、供給系統電圧に接続される。安定器回路がリスタート電流または突入電流を減衰させる必要があるならば、この安定器回路は、続くステップで切断される。