(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】皮膚抗酸化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9728 20170101AFI20220120BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220120BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20220120BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220120BHJP
A61K 38/44 20060101ALI20220120BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220120BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220120BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220120BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20220120BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220120BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20220120BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220120BHJP
A61K 36/064 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61K8/49
A61K8/365
A61Q19/00
A61K38/44
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/70 401
A61P17/18
A61Q19/08
A61K36/064
(21)【出願番号】P 2018564833
(86)(22)【出願日】2017-06-26
(86)【国際出願番号】 KR2017006691
(87)【国際公開番号】W WO2018004212
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-02-13
(31)【優先権主張番号】10-2016-0080431
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン チョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ノク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ ヨン
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104721129(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104523555(CN,A)
【文献】特表2015-536979(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02236127(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 -90/00
A61K 9/00 - 9/72
A61K 47/00 -47/69
A61K 38/00 -38/58
A61P 1/00 -43/00
A61K 36/00 -36/05
A61K 36/07 -36/9068
A61K 35/00 -35/768
A61K 36/06 -36/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母発酵物、
アルファ-ケトグルタル酸及びナイアシンアミドを含み、
前記アルファ-ケトグルタル酸は、全体皮膚抗酸化組成物100重量%を基準として0.00001ないし30重量%で含まれ、
前記ナイアシンアミドは、全体皮膚抗酸化組成物100重量%を基準として0.000001ないし5重量%で含まれ、
アルファ-ケトグルタル酸及びナイアシンアミドが
1:1の重量比で含有されている皮膚抗酸化組成物。
【請求項2】
前記酵母発酵物は、チオレドキシンを含む請求項1に記載の皮膚抗酸化組成物。
【請求項3】
前記酵母発酵物は、サッカロミケス属酵母による製造物である請求項1に記載の皮膚抗酸化組成物。
【請求項4】
前記酵母発酵物は、全体皮膚抗酸化組成物100重量%を基準として0.000001ないし30重量%で含まれる請求項1に記載の皮膚抗酸化組成物。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の皮膚抗酸化組成物を含む皮膚外用剤組成物。
【請求項6】
前記皮膚外用剤組成物は、軟膏、ペースト、ローション、クリーム、ゲル、溶液、懸濁液、乳濁液、パッチまたはスプレーからなる群から選択される剤形である請求項
5に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項7】
請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の皮膚抗酸化組成物を含む化粧料組成物。
【請求項8】
前記化粧料組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、せっけん、クレンジング、パッチ、パック、ファーンデーション及びスプレーからなる群から選択される剤形である請求項
7に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年06月27日付韓国特許出願第10-2016-0080431号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として含む。
本発明は、向上された抗酸化特性を有する皮膚用抗酸化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の肌は、人体の一次防御膜として温度及び湿度の変化、紫外線、公害物質のような外部環境の刺激から体内の器官を保護してくれる機能をする。
人間の肌は、年を取ることにつれ、様々な内外的要因によって変化する。すなわち、内的には新陳代謝を調節する各種ホルモンの分泌が減少し、免疫細胞の機能と細胞の活性が低下されて生体に必要な免疫タンパク質及び生体構成タンパク質の生合成が減る。また、外的には紫外線に対する過度な露出、フリーラジカル及び活性有害酸素などの発生量が増加することで、皮膚の厚さが減少し、しわが増え、弾力が減少されるだけでなく、肌の血色も悪くなり、皮膚トラブルがよく発生し、しみ、そばかす及び斑点も増加するなど、様々な変化を引き起こす。
近年、様々な有害環境によるストレス及び太陽光線によって発生する活性酸素種(Reactive Oxygen Species;ROS)の増加は、皮膚を構成する物質の分解及び変性を加速する。これによって、皮膚基質が破壊され、薄くなり、皮膚老化の諸症状を引き起こすだけでなく、生体の老化を促進させ、癌を発生させるなど、多くの疾病の原因となっている。
【0003】
具体的には、体内酵素系、還元代謝、化学薬品、公害物質及び光化学反応などの各種物理的、化学的及び環境的要因などによって活性酸素種が生成される。発生した活性酸素種は、脂質、タンパク質、糖、DNAなどの細胞構成成分を破壊することにより、細胞老化または癌を始めとする各種疾病を引き起こすものと知られている。また、これら活性酸素種による脂質過酸化の結果で生成される脂質過酸化物を始めとする様々な体内過酸化物も細胞に対する酸化的破壊を引き起こして各種機能障害をもたらすことにより、多様な疾病の原因となる。よって、活性酸素種による酸化を抑制する抗酸化物質に対する開発及び研究が種々行われている。
抗酸化物質は、動物及び植物界に広く分布しており、グルタチオン(glutathione;GSH)、ビリルビン(bilirubin)、ビタミンC、ビタミンE、カテキン、クェルセチン、フラボノイド(β-カロチン、リコペン、ルテイン、アントシアニン、ラスベステロール)、イソフラボン(ゼニステイン、ダイドゼイン)などの非酵素性抗酸化物質とスーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)、ペルオキシダーゼ(peroxidase)、チオレドキシン(thioredoxin;TRX)などの酵素性抗酸化物質が知られている。
特に、活性酸素種は、皮膚老化と大きく係っているため、抗酸化物質を皮膚外用剤に配合することで皮膚の酸化及び老化防止効果を達成しようとする幾つかの試みがあった。
一例として、韓国公開特許第2016-0016382号には、皮膚外用剤組成物にニアオリ抽出物を含めて、抗酸化及び抗菌作用を得られることを開示している。
また、韓国公開特許第2015-0087146号は、タベルソニン(tabersonine)を含む皮膚改善用組成物を利用して皮膚特性の改善及び抗酸化作用を表すことができることを開示している。
これらの特許は、皮膚の酸化防止にある程度の特性を有するが、その効果は十分ではない。つまり、天然抗酸化物質を皮膚に適用する際、実質的に十分な効果を期待することができず、合成抗酸化物質を使う場合は、抗酸化力は優れているが、人体安全性(safety)、加工安定性(stability)などに対する懸念により、その使用が制限される。したがって、人体の皮膚に有害でなく、優れた抗酸化効果を示す組成物の開発が必要とされているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第2016-0016382号公報
【文献】韓国公開特許第2015-0087146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、前記問題点を解決するために多角的な研究を行った結果、皮膚抗酸化組成物に酵母発酵物とともに抗酸化物質の機能回復を担う化合物を含むことにより、抗酸化効果がより優れることを確認した。
本発明の目的は、優れた抗酸化特性を有する皮膚抗酸化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、酵母発酵物とアルファ-ケトグルタル酸またはナイアシンアミドの一以上を含む皮膚抗酸化組成物を提供する。
前記酵母発酵物は、チオレドキシンを含むことを特徴とする。
前記酵母発酵物は、サッカロミケス属酵母を利用して製造されることを特徴とする。
前記酵母発酵物は、全体皮膚抗酸化組成物100重量%を基準として0.000001ないし30重量%で含まれることを特徴とする。
前記アルファ-ケトグルタル酸は、全体皮膚抗酸化組成物100重量%を基準として0.000001ないし50重量%で含まれることを特徴とする。
前記ナイアシンアミドは、全体皮膚抗酸化組成物100重量%を基準として0.000001ないし10重量%で含まれることを特徴とする。
前記アルファ-ケトグルタル酸とナイアシンアミドの混合物は、5000:1ないし1:5000の重量比で混合されることを特徴とする。
また、本発明は、前記皮膚抗酸化組成物を含む皮膚外用剤組成物を提供する。
さらに、本発明は、前記皮膚抗酸化組成物を含む化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明による皮膚抗酸化組成物は、酵母発酵物内に含まれた抗酸化物質が活性酸素種を消去して、抗酸化効果を表し、高い還元力を有する化合物を通して酸化された抗酸化物質の活性を復旧することにより、これを含む皮膚抗酸化組成物の抗酸化効果の持続性を高めることができる。
皮膚外用剤、化粧料で製品化され、皮膚に使用する際の抗酸化特性を最大限に発揮させ、酸化による皮膚老化を防止し、肌の状態を改善させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書における「抗酸化効果または抗酸化特性」とは、細胞内代謝または紫外線などの影響による酸化ストレスによって反応性が高いフリーラジカルまたは活性酸素種による細胞の酸化を抑制することを指し、フリーラジカルまたは活性酸素種を取り除いて、これによる細胞損傷を減少させることを含む。
本発明は、優れた抗酸化効能を有する皮膚抗酸化組成物を提供する。
活性酸素種は、正常的な細胞内の活性作用過程で生成され、細胞の成長と生存に非常に重要である。酸化ストレスは、活性酸素種の生成とこれを取り除く抗酸化反応の間の不具合で、DNA、タンパク質、脂質と反応して損傷させる現象であり、これは老化、癌、糖尿病、動脈硬化症など、各種慢性疾患の核心原因として知られている。このような酸化ストレスは、酸素を利用して生存する生命体にとっては避けられない。放射線、オゾン、重金属、微細粉塵、紫外線、タバコなどの汚染物質、ウイルス、細菌感染によって引き起こされる炎症など、外部から流入される有害刺激は、体内酸化ストレスの急激な増加をもたらす。生体は活性酸素種に対する防御器具として酸化還元応答を基本とする多様な種類の抗酸化システムを備えており、このうち、代表的なものがチオレドキシンシステムである。
チオレドキシン(thioredoxin;TRX)は、分子量が10,000ないし13,000の低分子タンパク質で、リボヌクレオチド還元酵素がリボヌクレオチドを還元する時、水素イオンを供与する助酵素である。チオレドキシンは、-Cys-Gly-Pro-Cys-という活性部位を有し、2つのシステイン残基の間でジスルフィド(S-S)結合を作る酸化型と、ジチオール(-SH-SH)を作る還元型が存在する細胞内の酸化還元制御因子である。このようなチオレドキシンは、細胞内で活性酸素種を還元させて消去するが、この時、チオレドキシンは酸化されるので、これ以上抗酸化作用を行うことができず、体内で自から生産し難いため、新しいチオレドキシンの供給が求められる。
【0009】
本発明では、皮膚抗酸化組成物の持続的な抗酸化効果を確保するために、抗酸化効果を有する酵母発酵物とともに、抗酸化物質の還元に必要なNADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate hydrate)を生成する化合物を含む皮膚抗酸化組成物を提供する。
具体的に、本発明による皮膚抗酸化組成物は、酵母発酵物とアルファ-ケトグルタル酸(α-ketoglutaric acid)またはナイアシンアミド(niacinamide)の一以上の混合物を含む。
本発明による皮膚抗酸化組成物の酵母発酵物は、原料に酵母を添加し、発酵過程を経て得られた産物として、チオレドキシンを含む。
前記酵母発酵物は、原料にサッカロミケス(Saccharomyces)属酵母を利用して発酵させた発酵物であって、当該分野で通常行う方法を通じて直接製造したり、市販の製品を購入して使うことができる。前記原料は特に制限されないが、例えば、米、もち米、玄米、黒米、米ぬか、麦、小麦、ライ麦、燕麦、えんばく、アワ、きび、とうもろこし、そば、鳩麦、黍、じゃがいも、さつまいも、カッサバ、エム(ヤム)、タピオカなどが挙げられる。
本発明では、酵母発酵物としてPharma Food International有限会社で製造したサッカロミケス発酵物(Saccharomyces Ferment)を使うことができる。前記サッカロミケス発酵物は、未加工清酒とサッカロミケス(Saccharomyces)属酵母の混合物を発酵した後、得られた発酵物を濾過させて製造されたものであってもよい。
前記サッカロミケス属酵母は、サッカロミケスセレビシエ(Saccharomyces Cerevisiae)、サッカロミケスカールスベルゲンシス(Saccharomyces Carlsbergensis)、サッカロミケスパストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)などが挙げられる。
【0010】
前記チオレドキシンは、酵母が原料内の有機物を分解させて生成したものであり、各種酸化ストレスによって過度に生成された活性酸素種を還元させ、これによる酸化を抑制する重要な役割をする。特に、前記チオレドキシンの活性部位に存在する1対のシステイン残基は、原核生物から真核生物に至るまで保存され、地球上の全ての生物体が共有するタンパク質であるため、体外で生産されたものであっても人体への有害性が非常に少ない。
前記チオレドキシンの含量は、酵母発酵物1gを基準として0.001ないし0.005g、好ましくは、0.0015ないし0.003gとすることができる。前記チオレドキシンの含量が前記範囲未満の場合は、チオレドキシンの抗酸化効果を得にくく、前記範囲を超える場合は、精製に多くの時間と費用が要求されるため、最終的に得られる製品の経済性が損ねる。
前記酵母発酵物は、全体皮膚抗酸化組成物100重量%を基準として0.000001ないし30重量%、好ましくは、0.000001ないし10重量%で使うことができる。前記酵母発酵物の含量が前記範囲未満の場合は抗酸化特性が微弱で、前記範囲を超える場合、皮膚に適用する時の安全性または加工時の問題が発生することがある。
【0011】
本発明による皮膚抗酸化組成物は、前述した酵母発酵物とともにアルファ-ケトグルタル酸、ナイアシンアミドそれぞれの単独またはこれらの混合物を含む。前記アルファ-ケトグルタル酸またはナイアシンアミドは、体内抗酸化作用によって酸化されたチオレドキシンを還元させるためのNADPH供給源の役割を果たす。
前記アルファ-ケトグルタル酸は、体内エネルギー代謝であるTCA回路の中間代謝の産物としてアデノシン三リン酸(ATP)の生成過程でATP合成酵素(ATP synthase)を阻害し、中間体であるNAD+(nicotinamide adenine dinucleotide)の消費を減少させる。これによって、残るNAD+は、NADPHを形成して還元力を有し、チオレドキシンの再使用ができるようになる。
前記アルファ-ケトグルタル酸は、直接合成したり、市販製品を利用することができ、これに制限されない。
前記アルファ-ケトグルタル酸は、全体皮膚抗酸化組成物100重量%を基準として0.000001ないし50重量%、好ましくは、0.00001ないし30重量%で使うことができる。前記アルファ-ケトグルタル酸の含量が前記範囲未満の場合、その効果が弱く、前記範囲を超える場合、人体に副作用を起こすことがあり、均一な溶解が得られず、剤形中の配合が困難となることがある。
【0012】
前記ナイアシンアミドは、ニコチンアミドまたはピリジン-3-カルボン酸とも知られているビタミンB3の生理活性アミドで、抗酸化効果を有するだけでなく、NADPHの前駆物質として体内でNADPHに変わって、チオレドキシンの還元を手伝う役割を果たす。
前記ナイアシンアミドは、市販品を購入したり、直接合成したものを使ってもよく、これに制限されない。
前記ナイアシンアミドは、全体皮膚抗酸化組成物100重量%を基準として0.000001ないし10重量%、好ましくは、0.000001ないし5重量%で使うことができる。含量が前記範囲未満の場合は、前記ナイアシンアミドの使用によって得られる効果が弱く、前記範囲を超える場合、皮膚に刺激を引き起こす可能性が生じ、剤形の安定化に影響を及ぼすことがある。
前述したように、前記アルファ-ケトグルタル酸、ナイアシンアミドは、それぞれ単独でまたは混合して使用することができる。アルファ-ケトグルタル酸とナイアシンアミドの混合物は、重量比が5000:1ないし1:5000、好ましくは、1000:1ないし1:1000、より好ましくは、200:1ないし1:200、最も好ましくは、50:1ないし1:50とすることができる。前記重量比が前記範囲を脱する場合、改善効果が十分得られか、副作用が発生することがある。
【0013】
前述した組成を含む皮膚抗酸化組成物は、肌に適用する時、優れた抗酸化効果を示すだけでなく、その効果が持続的に維持されることによって、酸化による皮膚老化を防止し、皮膚特性を改善することができる。
本発明の皮膚抗酸化組成物は、前記組成以外に通常利用される成分を含んでもよく、例えば、乳脂成分、補湿剤、軟化剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、気泡除去剤、粘増剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤などが挙げられる。
また、本発明は、前記皮膚抗酸化組成物を含む皮膚外用剤組成物を提供する。
前記皮膚抗酸化組成物を皮膚外用剤組成物として使用する場合、皮膚科学分野で許容可能な担体、媒質または基剤を含有して製剤化してもよい。さらに、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性活性剤、親油性活性剤、脂質小嚢または皮膚用外用剤に通常使われる任意の他の成分のような皮膚科学分野で通常使われる補助剤を含んでもよい。また、前記成分は皮膚科学分野で一般に使われる量で導入することができる。
前記皮膚外用剤組成物は、これに制限されないが、軟膏、ペースト、ローション、クリーム、ゲル、溶液、懸濁液、乳濁液、パッチまたはスプレーからなる群から選択される剤形とすることができる。
【0014】
前記皮膚外用剤組成物において、本発明による皮膚抗酸化組成物の有効量は、前記皮膚外用剤組成物の構成、剤形の種類、使用者の年齢、体重、健康状態、性別、投与時間、投与経路及び投与方法などによって種々設定することができる。一例として、本発明の皮膚抗酸化組成物の含量は、全体皮膚外用剤組成物100重量%を基準として0.0001ないし10重量%、好ましくは、0.0001ないし1重量%で含むことができる。本発明の皮膚抗酸化組成物を0.0001重量%未満で含む場合、十分な抗酸化効果が十分でなく、10重量%を超えて含む場合、かゆみ、じんま疹、アレルギーなどの副作用が発生することがある。
また、本発明は、前記皮膚抗酸化組成物を含む化粧料組成物を提供する。
前記皮膚抗酸化組成物を化粧料組成物として使う場合、化粧品学分野で許容可能な担体、媒質または基剤を含んで剤形化されてもよい。さらに、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性活性剤、親油性活性剤、脂質小嚢または化粧料に通常使われる任意の他の成分のような化粧品学分野で通常使われる補助剤を含んでもよい。また、前記成分は化粧品学分野で一般に使われる量で導入することができる。
前記化粧料組成物は、一般的な乳化剤形及び可溶化剤形の形態で製造することができる。乳化剤形の化粧品としては、栄養化粧水、クリーム、エッセンスなどがあり、可溶化剤形の化粧品としては柔軟化粧水が挙げられる。具体的に、前記化粧料組成物は、これに制限されないが、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、溶液、懸濁液、乳濁液、パッチまたはスプレーからなる群から選択される剤形を有することができる。より詳細には、柔軟化粧水、栄養化粧水、ローション、エッセンス、クリーム、ゲル、パック、パッチ、マスク、ミストなどのスキンケア製品、メーキャップベース、ファーンデーション、パウダー、マスカラ、リップスティックなどのメーキャップ製品、クレンジングオイル、クレンジングクリーム、クレンジングローション、クレンジングウォーター、ポイントメーキャップリムーバーなどのメーキャップを落とす製品、せっけん、クレンジングフォーム、ボディーウォッシュなどの洗浄製品などで製剤化されてもよい。
【0015】
前記抗酸化組成物を化粧品として製品化する場合、有効成分が短期間内に皮膚に留まるようになるメーキャップ除去剤、洗浄剤のようなウォッシュ-オフ(wash-off)タイプの化粧品の場合には、比較的高い濃度の前記抗酸化組成物を含んでもよい。一方、有効成分が長期間皮膚に留まるようになる化粧水、ローション、クリーム、エッセンスなどのリーブ-オン(leave-on)タイプの化粧品の場合は、ウォッシュ-オフタイプの化粧品に比べて低い濃度の前記抗酸化組成物を含んでもよい。一例として、本発明の皮膚抗酸化組成物の含量は、全体化粧料組成物100重量%を基準として0.0001ないし10重量%、好ましくは、0.0001ないし1重量%で含むことができる。本発明の皮膚抗酸化組成物を0.0001重量%未満で含む場合、十分な抗酸化効果が得られず、10重量%を超えて含む場合、かゆみ、じんま疹、アレルギーなどの副作用が発生することがある。
本発明において、剤形が軟膏、ペースト、クリームまたはゲルの場合は、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが利用されてもよい。
【0016】
本発明において、剤形がパウダーまたはスプレーの場合は、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、ケイ酸カルシウムまたはポリアミドパウダーが利用されてもよく、特に、スプレーの場合は、さらにクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体を含んでもよい。
本発明において、剤形が溶液または乳濁液の場合は、担体成分として溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が利用され、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、グリセリン、カーボマー、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエイト、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、水添ポリデセン、セテアリルグルコシド、ソルビダンステアレート、ポリエチレングリコール、セテアリルアルコールなどが挙げられる。
本発明において、剤形が懸濁液の場合は、担体成分として水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液相の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガまたはトラカントなどが利用されてもよい。
【0017】
本発明において、剤形がクレンジングの場合、界面活性剤含有クレンジング剤形または界面活性剤非含有クレンジング剤形に分けられることがあり、皮膚に塗布した後、拭いたり、剥がしたり、水で洗い出すこともできる。前記界面活性剤含有クレンジングの場合は、担体成分として脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホサクシネートモノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレイト、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが利用されてもよい。また、前記界面活性剤含有クレンジング剤形は、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、クレンジングタオル及びクレンジングパックであり、前記界面活性剤非含有クレンジング剤形は、クレンジングクリーム、クレンジングローション、クレンジングウォーター及びクレンジングゲルであり、これに限定されない。
本発明において、剤形がせっけん、ボディーウォッシュである場合、皮膚に塗布した後で拭いだり、剥がしたり、水で洗い出すこともできる。具体例として、前記せっけんは、液状せっけん、パウダーせっけん、固形せっけん及びオイルせっけんであってもよい。
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。これら実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれら実施例に制限されないということは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0018】
実験例1:抗酸化酵素関連遺伝子の発現評価
細胞内の抗酸化に係る酵素のSOD2及びNRF2の遺伝子発現改善効果を調べるために、mRNA発現量をRT-PCRを通して定量した。
前記SOD2(superoxide dismutase 2)は、人体内で生成される抗酸化酵素の一種で、活性酸素種である過酸化物陰イオン(superoxide anion、O2-*)を不均化(dismutation)反応を通して過酸化水素を作り、最終的に水と酸素に分解して活性酸素種を消去する。また、前記NRF2(nuclear factor erythroid 2-related factor 2)は、酸化ストレスが加えられれば、抗酸化酵素及び解毒酵素の遺伝子上部に存在するARE(antioxidant response element)に結合し、細胞内での抗酸化防御システムの活性を促進させることによって、これら二つの酵素の遺伝子発現量を通して細胞内の抗酸化効果を評価するに利用した。
本実験例1で使われた細胞は、皮膚角質細胞(keratinocytes(NHK))でLonza社(Lonza、Inc。Walkersville、MD、USA)で購入した正常人の角質細胞(Human epidermal neonatal keratinocyte cells)を継代培養した後、37℃、5% CO2条件下のCO2培養器(CO2 incubator)で培養した。細胞培養は、Lonza社(Lonza、Inc。Walkersville、MD、USA)の指針書にしたがった。500mlのKBM-Gold培地にKGM-Gold SingleQuotキットを添加して使用した。
【0019】
皮膚角質細胞培養液に酵母発酵物、アルファ-ケトグルタル酸、ナイアシンアミドを下記表1に記載した濃度で処理した後、24時間培養した。培養液を取り除いた後、トリゾール(Trizol reagent、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を利用して細胞内の全体RNA(総RNA)を分離した。分離されたRNAは、キアゼン社のRNAキット(Qiagen RNeasy kit、Qiagen、Valencia、CA)を使ってもう一度精製した後、エジラント社のバイオアナライザー2100モデル機器(Agilent 2100 BioAnalyzer、Agilent Technologies、Santa Clara、CA、USA)を利用してRNAの質(quality)を確認した。前記分離されたRNAからインビトロゼン社の逆転写キット(Superscript Reverse Transcriptase(RT)II kit、Invitrogen、Carlsbad、CA)を利用してcDNAを合成し、リアルタイム逆転写重合酵素連鎖反応(real time-reverse transcription polymerase chain reaction、Q-RT-PCR)方法でtaqman probe(SOD2、NRF2、RPLPO)を利用してPCR反応溶液で増幅させた。
最終PCR生成物を1.0%アガロースゲル(agarose gel)で電気泳動した後、サイバー-グリーン(Cyber Green)で染色して、320nmのUV下で定量した。前記過程を実施して抗酸化酵素と係る遺伝子の発現率を求め、その結果を下記表2に示す。
【0020】
【表1】
【表2】
前記表2に示すように、本発明による実施例の場合、何も処理していない対照群と酵母発酵物のみで処理した比較例1に比べて、抗酸化酵素遺伝子の発現を顕著に増加させることを確認することができた。また、アルファ-ケトグルタル酸とナイアシンアミドを併用して処理した実施例3の場合、アルファ-ケトグルタル酸とナイアシンアミドそれぞれ単独で使用した実施例1、2より高い発現率を表し、アルファ-ケトグルタル酸とナイアシンアミドの併用使用によるシナジー効果を確認することができた。
【0021】
剤形例1:皮膚外用剤の製造
1.軟膏
下記表3の組成によって、通常の方法で本発明の皮膚抗酸化組成物を含む軟膏を製造した。
【表3】
【0022】
2.ゲル
下記表4の組成によって、通常の方法で本発明の皮膚抗酸化組成物を含むゲルを製造した。
【表4】
【0023】
剤形例2:化粧品の製造
1.栄養クリーム
下記表5の組成によって、通常の方法で本発明の皮膚抗酸化組成物を含む栄養クリームを製造した。
【表5】
【0024】
2.栄養化粧水
下記表6の組成によって、通常の方法で本発明の皮膚抗酸化組成物を含む栄養化粧水を製造した。
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の皮膚抗酸化組成物は、優れた抗酸化効果を示し、化粧品、医薬品などの多様な製品に用いることができる。