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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】桁から切り離した床版の取扱方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20220120BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20220120BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D19/12
E01D1/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019220475
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021088895
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】596118530
【氏名又は名称】テクノス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502345278
【氏名又は名称】株式会社誠和ダイア
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】森田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】谷内 健治
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝
(72)【発明者】
【氏名】田近 正春
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-292404(JP,A)
【文献】特開平02-311605(JP,A)
【文献】特開2017-053117(JP,A)
【文献】特開2018-091062(JP,A)
【文献】特開2014-201933(JP,A)
【文献】特開2004-019114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁の上に設けられて桁と接合されたコンクリート製の床版を桁から切り離す床版切離しステップと、
桁から切り離した床版を当該桁の上に固定手段を用いて固定する床版固定ステップと、を備え
固定手段は、一対の位置決め部材と、連結部材と、締付装置とを備え、
床版固定ステップは、
床版を桁から切り離した後、床版を桁上に載置した状態のまま、桁上側に残っているコンクリート部分において桁の幅方向両側の側縁面より幅方向外側にはみ出しているはみ出しコンクリート部分を除去するはみ出しコンクリート部分除去ステップと、
桁から切り離した床版の切断面において桁の幅方向両側の側縁面の上方に位置していた部分である側部面にそれぞれ位置決め部材を配置して、はみ出しコンクリート部分除去ステップで除去された後のコンクリート部分残存面及び桁の上部側における幅方向両側の側縁面を挟み込んだ状態で、当該位置決め部材を、床版の切断面における前記側部面にそれぞれ取付ける位置決め部材取付ステップと、
前記側部面に取付けられた一方の位置決め部材に一端が連結されて他端が桁の下方を経由して前記側部面に取付けられた他方の位置決め部材に連結された連結部材に、締付装置を用いて締付力を付与することにより、床版の切断面を桁上の切断面に押し付けて床版を桁上に固定する締付け固定ステップと、
を備えたことを特徴とする桁から切り離した床版の取扱方法。
【請求項2】
桁の上に設けられて桁と接合されたコンクリート製の床版を桁から切り離す床版切離しステップと、
桁から切り離した床版を当該桁の上に固定手段を用いて固定する床版固定ステップと、を備え、
固定手段は、一対の連結部と、連結部材と、締付装置とを備え、
床版切離しステップの前に、床版の下面における桁の幅方向両側の側縁面の上方の近傍位置にそれぞれ連結部を取付ける連結部取付ステップを備え、
床版切離しステップにおいては、連結部が取付けられた位置よりも下方に位置される床版と桁との境界近傍位置を切断し、
床版固定ステップにおいては、桁から切り離された床版を桁上に載置した状態で、前記床版の下面に取付けられた一方の連結部に一端が連結されて他端が桁の下方を経由して前記床版の下面に取付けられた他方の連結部に連結された連結部材に、締付装置を用いて締付力を付与することにより、床版の切断面を桁上の切断面に押し付けて床版を桁上に固定することを特徴とする桁から切り離した床版の取扱方法。
【請求項3】
床版を道路として供用した状態で、床版切離しステップにより床版を桁から切り離すとともに、桁から切り離した床版を床版固定ステップにより当該桁の上に固定手段を用いて固定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の桁から切り離した床版の取扱方法。
【請求項4】
床版固定ステップにおいて桁の上に固定手段を用いて床版を固定した後、当該固定手段を外して床版を撤去するまでの間、桁の上に固定手段を用いて固定された床版を道路として供用したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の桁から切り離した床版の取扱方法。
【請求項5】
床版切離しステップにおいては、床版の下面に切断装置を設置して、当該切断装置により床版と桁との境界近傍のコンクリート部分の位置である境界近傍位置を水平方向に切断することにより、床版を桁から切り離したことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の桁から切り離した床版の取扱方法。
【請求項6】
床版切離しステップにおいて切断された床版を桁上に載置した状態のまま床版の切断面と桁上の切断面との間に充填材を充填したことを特徴とする請求項に記載の桁から切り離した床版の取扱方法。
【請求項7】
はみ出しコンクリート部分除去ステップで除去された後のコンクリート部分残存面及び桁の上部側における幅方向両側の側縁面を挟み込むように位置される一対の位置決め部材が、桁に固定された床版に加わる設計上の水平力に抵抗可能に構成されたとともに、
締付装置により連結部材に付与される締付力が、桁に固定された床版に加わる設計上の鉛直力に抵抗可能なように設定されたことを特徴とする請求項に記載の桁から切り離した床版の取扱方法。
【請求項8】
締付装置により連結部材に付与される締付力が、桁に固定された床版に加わる設計上の水平力、及び、桁に固定された床版に加わる設計上の鉛直力に抵抗可能なように設定されたことを特徴とする請求項に記載の桁から切り離した床版の取扱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桁の上に接合されたコンクリート製の床版を新しい床版に更新する床版更新工事において、桁から切り離した床版の取扱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路橋、鉄道橋、水路橋等の橋梁のコンクリート製の床版を新しい床版に更新する床版更新工事においては、現存の桁を再利用することから、桁の上に設けられて桁と接合された床版を切断して桁から切り離して撤去した後、桁の上に新しい床版を接合するようにしている。
当該床版更新工事においては、桁の上面に取付けられた床版と桁の上面との境界近傍位置を、ワイヤーソー等の切断手段を備えた切断装置を用いて切断する切断方法が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-145797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床版更新工事においては、更新予定範囲の床版を、切断装置を用いて切断して桁から切り離す床版切断工事と桁から切り離した床版を撤去する床版撤去工事とを繰り返した後に、床版が撤去された桁の上に新しい床版を接合する床版接合工事を行なわなければならないため、更新予定範囲の床版更新工事にかかる時間が長くなってしまう。
即ち、床版切断工事から床版接合工事が終了するまでの期間、道路を通行止めにしなくてはならないので、連続する通行止め期間が長期化して、道路の通行止めに伴う道路管理者及び道路使用者の不利益が大きくなってしまうという課題があった。
本発明は、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようにした、桁から切り離した床版の取扱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る桁から切り離した床版の取扱方法は、桁の上に設けられて桁と接合されたコンクリート製の床版を桁から切り離す床版切離しステップと、桁から切り離した床版を当該桁の上に固定手段を用いて固定する床版固定ステップと、を備え、固定手段は、一対の位置決め部材と、連結部材と、締付装置とを備え、床版固定ステップは、床版を桁から切り離した後、床版を桁上に載置した状態のまま、桁上側に残っているコンクリート部分において桁の幅方向両側の側縁面より幅方向外側にはみ出しているはみ出しコンクリート部分を除去するはみ出しコンクリート部分除去ステップと、桁から切り離した床版の切断面において桁の幅方向両側の側縁面の上方に位置していた部分である側部面にそれぞれ位置決め部材を配置して、はみ出しコンクリート部分除去ステップで除去された後のコンクリート部分残存面及び桁の上部側における幅方向両側の側縁面を挟み込んだ状態で、当該位置決め部材を、床版の切断面における前記側部面にそれぞれ取付ける位置決め部材取付ステップと、前記側部面に取付けられた一方の位置決め部材に一端が連結されて他端が桁の下方を経由して前記側部面に取付けられた他方の位置決め部材に連結された連結部材に、締付装置を用いて締付力を付与することにより、床版の切断面を桁上の切断面に押し付けて床版を桁上に固定する締付け固定ステップと、を備えたので、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようになる。また、固定手段を用いて、床版を桁上に確実に固定できるようになり、当該桁の上に固定された床版を道路として供用できるようになるため、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようになる。
また、本発明に係る桁から切り離した床版の取扱方法は、桁の上に設けられて桁と接合されたコンクリート製の床版を桁から切り離す床版切離しステップと、桁から切り離した床版を当該桁の上に固定手段を用いて固定する床版固定ステップと、を備え、固定手段は、一対の連結部と、連結部材と、締付装置とを備え、床版切離しステップの前に、床版の下面における桁の幅方向両側の側縁面の上方の近傍位置にそれぞれ連結部を取付ける連結部取付ステップを備え、床版切離しステップにおいては、連結部が取付けられた位置よりも下方に位置される床版と桁との境界近傍位置を切断し、床版固定ステップにおいては、桁から切り離された床版を桁上に載置した状態で、前記床版の下面に取付けられた一方の連結部に一端が連結されて他端が桁の下方を経由して前記床版の下面に取付けられた他方の連結部に連結された連結部材に、締付装置を用いて締付力を付与することにより、床版の切断面を桁上の切断面に押し付けて床版を桁上に固定することを特徴とするので、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようになる。また、床版切断工事後の床版固定工事に係る時間を短縮できるとともに、床版固定工事を簡単にできる。
また、床版を道路として供用した状態で、床版切離しステップにより床版を桁から切り離すとともに、桁から切り離した床版を床版固定ステップにより当該桁の上に固定手段を用いて固定したので、床版切離しステップ及び床版固定ステップにおいて、道路の通行止めを行わなくても良くなり、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようになる。
また、床版固定ステップにおいて桁の上に固定手段を用いて床版を固定した後、当該固定手段を外して床版を撤去するまでの間、桁の上に固定手段を用いて固定された床版を道路として供用したので、床版固定ステップを終了してから床版撤去ステップに移行するまでの期間も、道路の通行止めを行わなくても良くなり、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようになる。
また、床版切離しステップにおいては、床版の下面に切断装置を設置して、当該切断装置により床版と桁との境界近傍のコンクリート部分の位置である境界近傍位置を水平方向に切断することにより、床版を桁から切り離したことを特徴とするので、床版切離しステップと床版固定ステップとを連続して行えるようになり、床版切離しステップと床版固定ステップとにおいて道路の通行止めを行わなくても良くなるので、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようになる。
また、床版切離しステップにおいて切断された床版を桁上に載置した状態のまま床版の切断面と桁上の切断面との間に充填材を充填したことを特徴とするので、床版を桁から切り離した後、当該床版を固定手段を用いて桁上に固定するまでの間、床版が桁上に安定に載置された状態となり、また、床版をより安定に桁上に固定できるようになるので、作業性、安全性がより向上する
た、はみ出しコンクリート部分除去ステップで除去された後のコンクリート部分残存面及び桁の上部側における幅方向両側の側縁面を挟み込むように位置される一対の位置決め部材が、桁に固定された床版に加わる設計上の水平力に抵抗可能に構成されたとともに、締付装置により連結部材に付与される締付力が、桁に固定された床版に加わる設計上の鉛直力に抵抗可能なように設定されたことを特徴とするので、桁から切り離した床版を固定手段を用いて桁上に安全かつ安定な状態に固定でき、桁に固定された床版を道路として安全かつ安定に供用できるようになる
た、締付装置により連結部材に付与される締付力が、桁に固定された床版に加わる設計上の水平力、及び、桁に固定された床版に加わる設計上の鉛直力に抵抗可能なように設定されたことを特徴とするので、桁から切り離した床版を固定手段を用いて桁上に安全かつ安定な状態に固定でき、桁に固定された床版を道路として安全かつ安定に供用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】橋梁を床版の上方から見た図。
図2】床版と桁との境界近傍切断位置を示す図。
図3】(a)は床版を桁から切り離した状態を示す図、(b)は桁から切り離した床版の下面に位置決め部材が取付けられた状態、及び、桁の上方において桁の幅方向両側縁面より外側に突出するはみ出しコンクリート部分を除去した状態を示す図、(c)は桁から切り離された床版が固定手段により桁の上に固定された状態を示す図。
図4】固定手段を用いて箱形の桁の上に床版を固定した状態を示す拡大図。
図5】固定手段を用いてI形の桁の上に床版を固定した状態を示す拡大図。
図6】位置決め部材を示す斜視図。
図7】位置決め部材を示す図であって、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は底面図(尚、背面図は正面図と左右対称になる)。
図8】位置決め部材の他例を示す斜視図。
図9】(a)は床版を桁から切り離す前に一対の連結部を床版の下面の所定位置に取付けた状態を示す図、(b)は床版を桁から切り離した状態を示す図、(c)は桁から切り離された床版が固定手段により桁の上に固定された状態を示す図。
図10】床版の下面に取付けられた切断装置を床版の上方から見た平面図。
図11】床版の下面に取付けられた切断装置を図1の右側から見た側面図。
図12】床版の下面に取付けられた切断装置を図1の下側から見た正面図。
図13】従動プーリを示す図であって、(a)は無頭ボルトによる回転中心軸を備えたプーリを示す断面図、(b)は有頭ボルトによる回転中心軸を備えたプーリを示す断面図。
図14】取付手段を示す図であって、(a)は第1取付部材を示す斜視図、(b)は第2取付部材を示す斜視図。
図15】床版の下面に取付けられた第1取付部材の拡大図。
図16】駆動側配列プーリ群の他例を示す側面図。
図17】切断方向に並ぶように配置された複数の従動プーリ及び駆動プーリにより構成されたガイド手段を備えた切断装置を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図。
図18】ローラコンベヤを有したガイド手段を備えた切断装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)はローラコンベヤで案内されるワイヤーソーを示す斜視図。
図19】ローラを有したガイド手段を備えた切断装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)はローラで案内されるワイヤーソーを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1乃至図8に基づいて実施形態1に係る桁から切り離した床版の取扱方法を説明する。
実施形態1に係る桁から切り離した床版の取扱方法は、道路橋、鉄道橋、水路橋等の橋梁100の桁2の上に設けられて桁2と接合されたコンクリート製の床版3を新しい床版に更新する床版更新工事において、床版3を道路として供用した状態で、床版3を桁2から切り離す床版切離しステップと、桁2から切り離した床版3を当該桁2の上に固定手段4Aを用いて固定する床版固定ステップとを行い、さらに、床版固定ステップ終了後、固定手段4Aを外して床版3を撤去する床版撤去ステップに移行するまでの間、床版3を道路として供用するようにした。
尚、桁2としては、図2乃至図7に示すように、箱形(断面ロ形)の桁2A、I形(断面I形)の桁2B等がある。
また、例えば図2に示すように、床版3は、箱形の桁2A,2Aを介して橋脚2Xにより支持されている。
【0008】
床版切離しステップにおいては、例えば後述するように、床版3の下面3uにワイヤーソー10を有した切断装置1(図10等参照)を設置して、当該切断装置1により、床版3と桁2との境界近傍のコンクリート部分の位置である境界近傍位置3Aを水平方向に切断することにより、床版3を桁2から切り離す。
その後、桁2から切り離した床版3を、床版固定ステップにおいて、当該桁2の上に固定手段4Aを用いて固定する床版固定作業を行う。
この場合、床版3の下面3u側において、切断装置1による切断作業と固定手段4Aを用いた床版固定作業とを繰り返しながら行っていくことが好ましい。例えば、切断装置1による切断作業を数十cm~数m程度行った後に、当該切断された床版3の部分を固定手段4Aを用いて固定する床版固定作業を行うという作業サイクルを繰り返し行うことによって、床版3の下面3u側において、床版切離しステップと床版固定ステップとを連続して行えるようになり、床版切離しステップと床版固定ステップとにおいて道路の通行止めを行わなくても良くなるので、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようになる。
そして、床版3を新しい床版に取替える際には、道路を通行止めとして、床版撤去ステップにおいて、固定手段4Aを外して床版3を撤去する床版撤去工事を行った後、床版3が撤去された桁2の上に新しい床版を接合する床版接合工事を行う。
従って、床版3を道路として供用したままの状態で、切断作業と床版固定作業とを行え、さらに、床版3を撤去するまでの間、桁2の上に固定手段4Aを用いて固定された床版3の上を、道路として供用できる。
即ち、床版切離しステップから床版撤去ステップに移行するまでの期間、床版3を道路として供用でき、道路の通行止めを行わなくても良くなるので、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れ、道路の通行止めに伴う道路管理者及び道路使用者の不利益を少なくできるようになる。
【0009】
床版切離しステップで行われる切断作業は、更新予定部分の床版3を、例えば図2の想像線に示すような、床版3と桁2との境界近傍のコンクリート部分の位置である境界近傍位置3Aで水平方向に切断することにより、床版3を桁2から切り離す。
境界近傍位置3Aは、例えば図2に示すように、桁2の上面2tの幅方向両側の側縁面2a,2aより上方に向けて傾斜する傾斜下面3utに形成された床版3の下面3uにおいてハンチと呼ばれるテーパ部分における桁2の上面2tとの境界近傍位置である。
【0010】
次に、図3乃至図8に基づいて、床版固定ステップについて説明する。
尚、図3(a),(b)では、わかりやすくするために、床版3と桁2とを上下方向に大きく離した状態で図示しているが、実際には、床版切離しステップでの切断作業後は、切断された床版3を桁2上に形成される切断面2bに載置した状態のまま、床版固定ステップでの床版固定作業を行う。
【0011】
床版固定ステップは、はみ出しコンクリート部分除去ステップと、位置決め部材取付ステップと、締付け固定ステップとを備える。
【0012】
図4図5に示すように、床版固定ステップにおいて使用する固定手段4Aは、例えば、一対の位置決め部材5,5と、連結部材6と、締付装置7とを備えて構成される。
【0013】
はみ出しコンクリート部分除去ステップでは、床版切離しステップの切断作業により桁2から切り離された床版3を桁2上の切断面2b上に載置した状態のまま、桁2の上側に残っているコンクリート部分において桁2の幅方向両側の側縁面2a,2aより幅方向外側にはみ出しているはみ出しコンクリート部分2c,2cを除去する。
即ち、はみ出しコンクリート部分除去ステップでは、図3(a),(b)に示すように、桁2上において桁2の幅方向両側の側縁面2a,2aより幅方向外側に突出するはみ出しコンクリート部分2c,2cを、桁2の側縁面2a,2aと同一平面上に設定される切断面cで切断して除去することによって、桁2の幅方向両側の側縁面2a,2aと同一平面上にコンクリート部分残存面2d,2dを形成する。
【0014】
位置決め部材取付ステップでは、桁2から切り離した床版3の切断面(下面)3bにおいて桁2の幅方向両側の側縁面2a,2aの上方に位置していた部分である側部面3c,3c(図3(a)参照)に、それぞれ位置決め部材5,5を配置する。
そして、これら一対の位置決め部材5,5により、はみ出しコンクリート部分除去ステップで除去された後のコンクリート部分残存面2d,2d及び桁2の上部側における幅方向両側の側縁面2a,2aを挟み込んだ状態となるよう、当該位置決め部材5,5を、アンカーボルト19等の固定部材を用いて、上述した側部面3c,3cに、それぞれ取付ける(図3(b)参照)。
【0015】
図6及び図7に示すように、位置決め部材5は、上述した床版3の切断面(下面)3bにおける側部面3cに接触する板面11を有して当該側部面3cにアンカーボルト19等の固定部材で固定される固定板部12と、固定板部12の板面11と直交して上述したコンクリート部分残存面2d及び桁2の上部側における幅方向両側の側縁面2aと接触させる板面13を有した規制板部14と、固定板部12と規制板部14とに連結された補強板部15と備えた構成である。
例えば、固定板部12、規制板部14、補強板部15は、ぞれぞれ、鋼鉄製のブロック板により形成され、位置決め部材5は、これら鋼鉄製のブロック板により形成された固定板部12、規制板部14、補強板部15が溶接などによって連結されて構成される。
固定板部12には、アンカーボルト19を貫通させるボルト通し孔16が形成され、かつ、補強板部15には、連結部材6の一端61、又は、連結部材6の他端62を連結するための貫通連結孔17が形成されている。
即ち、位置決め部材5の固定板部12がアンカーボルト19等の固定部材によって上述した床版3の切断面3bにおける側部面3cに取付けられる。
【0016】
尚、例えば図6に示す位置決め部材5のように、ボルト通し孔16は、固定板部12の長手方向に沿った長孔状の孔により形成され、固定板部12の長手方向の両端側に1つずつ設けられていてもよいし、あるいは、例えば図8に示す位置決め部材5のように、固定板部12の長手方向の両端側に設けられるボルト通し孔のうちの1つのボルト通し孔16aが、固定板部12の短手方向に沿った長孔状の孔により形成された構成としてもよい。
例えば、床版3内に配筋された図外の鉄筋が橋梁100の幅方向に沿って延長するように設けられている場合、図6に示す位置決め部材5では、各ボルト通し孔16,16の延長方向の真上に鉄筋が存在した場合、当該位置決め部材5を床版3の側部面3cに固定することが困難となる。
一方、図8に示す位置決め部材5を用いれば、一方のボルト通し孔16aの延長方向と鉄筋の延長方向とが交差する方向となるため、一方のボルト通し孔16aを利用して、鉄筋を避けた位置にアンカーボルト19を打設できるようになり、当該位置決め部材5を床版3の側部面3cの所定の位置に固定することができるようになる。
【0017】
締付け固定ステップでは、上述した床版3の切断面3bにおける側部面3c(図3(a)参照)に取付けられた一方の位置決め部材5に連結部材6の一端61が連結されて、連結部材6の他端62が桁2の下方を経由して上述した床版3の切断面3bにおける側部面3cに取付けられている他方の位置決め部材5に連結される。
そして、当該連結部材6に、締付装置7を用いて締付力を付与することにより、床版3の切断面3bを桁2上の切断面2bに押し付けて床版3を桁2上に固定するようにした。
【0018】
連結部材6は、図4及び図5に示すように、例えばワイヤーロープ6Aとレバーブロック(登録商標)7Aのチェーン7Bとで構成されたロープ状部材を用いた。この場合、図4に示すように、ワイヤーロープ6Aの一端により形成される連結部材6の一端61が引っ掛けフック等の係止部材65を介して一方の位置決め部材5の貫通連結孔17に連結されるとともに、ワイヤーロープ6Aの他端がレバーブロック7Aのチェーン7Bの一端に設けられた下フック66に連結されて、かつ、レバーブロック7Aの上フック67により形成される連結部材6の他端62が引っ掛けフック等の係止部材68を介して他方の位置決め部材5の貫通連結孔17に連結される。
【0019】
締付装置7は、床版3の側部面3cに取付けられた一方の位置決め部材5に一端61が連結されて、他端62が桁2の下方を経由して上述した床版3の側部面3cに取付けられている他方の位置決め部材5に連結された連結部材6に、締付力(張力)を付与して、床版3の切断面3bと桁2上の切断面2bとが互いに押し付けられた状態が維持されるように、桁2及び床版3の両者を締め付けることによって、床版3を桁2上に固定する装置である。
当該締付装置7は、図4及び図5に示すように、例えばレバーブロック7Aにより構成される。
【0020】
また、図4図5に示すように、ワイヤーロープ61が桁2に接触して桁2を損傷しないように、ワイヤーロープ61と桁2の幅方向両側の下端縁との間には桁2を保護するための緩衝材69,69を設置することが好ましい。
【0021】
尚、はみ出しコンクリート部分除去ステップで除去された後のコンクリート部分残存面2d,2d及び桁2の上部側における幅方向両側の側縁面2a,2aを挟み込むように位置される一対の位置決め部材5,5がそれぞれ床版3の側部面3c,3cに取付けられたことによって、桁2に固定された床版3に加わる設計上の水平力に抵抗可能に構成されているとともに、締付装置7により連結部材6に付与される締付力が、桁2に固定された床版3に加わる設計上の鉛直力に抵抗可能なように設定されている。
【0022】
実施形態1に係る桁から切り離した床版の取扱方法によれば、桁2の上に設けられて桁2と接合されたコンクリート製の床版3を桁2から切り離す床版切離しステップと、桁2から切り離した床版3を当該桁2の上に固定手段4Aを用いて固定する床版固定ステップと、を備え、床版3を道路として供用した状態で、床版切離しステップにより床版3を桁2から切り離すとともに、桁2から切り離した床版3を床版固定ステップにより当該桁2の上に固定手段4Aを用いて固定したので、床版切離しステップ及び床版固定ステップにおいて、床版3を道路として供用できるようになるので、道路の通行止めを行わなくても良くなる。
また、床版固定ステップを終了してから床版撤去ステップに移行するまでの期間も、床版3を道路として供用でき、道路の通行止めを行わなくても良くなる。
従って、実施形態1に係る方法によれば、床版切離しステップから床版撤去ステップに移行するまでの期間、床版3を道路として供用できるようになり、道路の通行止めを行わなくても良くなるので、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れ、道路の通行止めに伴う道路管理者及び道路使用者の不利益を少なくできる。
つまり、本願発明によれば、従来のように、床版の更新予定範囲において、床版切断工事と床版撤去工事とを繰り返した後に、床版が撤去された桁の上に新しい床版を接合する床版接合工事を行なわなければならず、床版切断工事から床版接合工事が終了するまでの間、連続して長期間、道路を通行止めにしなければならないというような事態を回避できるようになるため、道路の通行止めに伴う道路管理者及び道路使用者の不利益を最小限に抑えることができるようになる。
特に、後述するように、床版3の下面3uにワイヤーソー10を有した切断装置1(図10等参照)を設置して、当該切断装置1により、床版3と桁2との境界近傍のコンクリート部分の位置である境界近傍位置3Aを水平方向に切断することにより、床版3を桁2から切り離すようにすれば、床版3の下面3u側において、床版切離しステップと床版固定ステップとを連続して行えるようになり、床版切離しステップと床版固定ステップとにおいて道路の通行止めを行わなくても良くなるので、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようになる。
【0023】
また、実施形態1によれば、桁2から切り離した床版3を固定手段4Aを用いて固定することで、桁2に固定された床版3に加わる設計上の水平力に抵抗可能に構成されたとともに、桁2に固定された床版3に加わる設計上の鉛直力に抵抗可能に構成されたので、桁2から切り離した床版3を固定手段4Aを用いて桁2上に安全かつ安定な状態に固定でき、桁2に固定された床版3を道路として安全かつ安定に供用できるようになる。
【0024】
実施形態2
次に、図9に基づいて実施形態2に係る桁から切り離した床版の取扱方法を説明する。尚、図9において、実施形態1の図3と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2では、床版3を桁2から切り離す前に、連結部材6の両端61,62を連結するための連結部8,8を、床版3の下面3uにおける傾斜下面3utに予め取付けておく。
実施形態2においては、固定手段4Bは、例えば、一対の連結部8,8と、連結部材6と、締付装置7とを備えて構成される。
連結部材6は、実施形態1と同様に、例えばワイヤーロープ6Aとレバーブロック7Aのチェーン7Bとで構成されたロープ状部材を用いた(図4図5参照)。
また、締付装置7は、実施形態1と同様に、例えばレバーブロック7Aにより構成される(図4図5参照)。
図9(a)に示すように、連結部8は、連結部材6の一端61、又は、連結部材6の他端62を連結するための貫通連結孔81を備え、床版切離しステップの前に、床版3の下面3uの傾斜下面3utにおける桁2の幅方向両側の側縁面2a,2aの近傍位置にそれぞれアンカーボルト82等の固定部材で取付けられる部材により構成される。
【0025】
即ち、実施形態2においては、連結部取付ステップと、床版切離しステップと、床版固定ステップとを備える。
【0026】
連結部取付ステップでは、床版切離しステップの前に、床版3の下面3uの傾斜下面3utにおける桁2の幅方向両側の側縁面2a,2aの上方の近傍位置にそれぞれ連結部8,8を予め取付けておく。
そして、床版切離しステップにおいては、連結部8,8が取付けられた位置よりも下方に位置される床版3と桁2との境界近傍位置3Aを切断して、床版3を桁2から切り離す(図9(a),(b)参照)。
即ち、連結部取付ステップでは、床版3の下面3uの傾斜下面3utにおいて、境界近傍位置3Aよりも上方の位置に、連結部8,8を取付けておく。
尚、図9(b)では、わかりやすくするために、床版3と桁2とを上下に大きく離した状態で図示しているが、実際には、床版切離しステップでの切断作業後は、切断された床版3を桁2上に形成される切断面2bに載置した状態のまま、床版固定ステップでの床版固定作業を行う。
【0027】
そして、床版固定ステップにおいては、図9(c)に示すように、床版切離しステップで桁2から切り離された床版3を桁2上に載置した状態で、床版3の傾斜下面3utの所定位置に予め取付けられている一方の連結部8の貫通連結孔81に一端が連結されて他端が桁の下方を経由して床版3の傾斜下面3utの所定位置に予め取付けられている他方の連結部8の貫通連結孔81に連結された連結部材6に、締付装置7を用いて締付力(張力)を付与することにより、床版3が桁2上に固定される。即ち、床版3の切断面3bを桁2上の切断面2bに押し付けて床版3の切断面3bと桁2上の切断面2bとが互いに押し付けられた状態が維持されるように、桁2及び床版3の両者を締付装置7を用いて締め付けることによって、床版3が桁2上に固定される。
【0028】
尚、締付装置7により連結部材6に付与される締付力が、桁2に固定された床版3に加わる設計上の水平力、及び、桁2に固定された床版3に加わる設計上の鉛直力に抵抗可能なように設定されている。
【0029】
実施形態2によれば、実施形態1と同様に、床版切離しステップから床版撤去ステップに移行するまでの期間、道路の通行止めを行わなくても良くなるので、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れ、道路の通行止めに伴う道路管理者及び道路使用者の不利益を少なくできる。
【0030】
また、実施形態2によれば、床版切離しステップでの切断工事の前に、予め、床版3の下面3uの傾斜下面3utにおける桁2の幅方向両側の側縁面2a,2aの近傍位置にそれぞれ連結部8,8を取付けておくため、実施形態1と比べて、床版切断工事後の床版固定工事に係る時間を短縮できるとともに、床版固定工事を簡単にできる。
【0031】
また、実施形態2によれば、締付装置7により連結部材6に付与される締付力が、桁2に固定された床版3に加わる設計上の水平力、及び、桁2に固定された床版3に加わる設計上の鉛直力に抵抗可能なように設定されているので、桁2から切り離した床版3を固定手段4Bを用いて桁2上に安全かつ安定な状態に固定でき、桁2に固定された床版3を道路として安全かつ安定に供用できるようになる。
【0032】
実施形態3
床版切離しステップにおいて切断された床版3を桁2上に載置した状態のまま床版3の切断面3bと桁2上の切断面2bとの間にグラウト等の充填材を充填するようにすれば、床版3を桁2から切り離した後、当該床版3を固定手段を用いて桁2上に固定するまでの間、床版3が桁2上に安定に載置された状態となり、また、床版3をより安定に桁2上に固定できるようになるので、作業性、安全性がより向上する。
【0033】
実施形態4
図示しないが、固定手段は、例えば、桁の幅方向両側の各側面2e(図3(a)参照)と対向するように、床版3の傾斜下面3utから桁2の下端位置を超えて下方に延長するように床版3に取付けられた少なくとも一対のねじ棒と、当該一対のねじ棒の下端側を貫通させる貫通孔を有して桁の下面と対向するようにナットにより一対のねじ棒に取付けられた押圧板とを備えた構成としてもよい。
即ち、位置決め部材あるいは連結部として機能する一対のねじ棒と、連結部材として機能する一対のねじ棒及び押圧板と、ねじ棒の下端側ねじ部に螺着されて締付装置として機能するナットとを備えた固定手段を用いてもよい。
当該固定手段によれば、ナットを締め付けて押圧板を桁2の下面に押し付けることにより、床版3を桁2上に固定することができるようになる。
【0034】
尚、床版3を桁2上に固定するための固定手段は、上述した実施形態1,2,4で説明した以外の構成のものを用いても構わない。
また、各実施形態1,2において用いる連結部材は、ロープ状部材であればよく、例えば、チェーンやナイロンスリング等のロープ状部材を用いても良い。
また、各実施形態1,2において用いる締付装置は、ロープ状部材に張力を付与できる張力付与装置であればよく、例えば、チェーンベルト、ラッシングベルト等の張力付与装置を用いても良い。
【0035】
次に、上述した切断ステップを実現するための切断装置の具体例について説明する。
当該切断装置を使用することにより、床版3を道路として供用したままの状態で、水平方向切断作業を行えるようになる。
【0036】
切断装置の具体例1
切断装置の具体例1を、図10乃至図15に基づいて説明する。
尚、図10は橋梁の床版を更新する際の解体工事において、床版の下面に取付けられた切断装置を床版の上方から見た平面図であるので、床版の下方に位置する切断装置及び桁は、本来、点線で示すべきであるが、構成を明確に表すため実線で示した。
【0037】
例えば、橋梁100の床版3を更新する際の解体工事において、図12に示すように、ワイヤーソー10を備えた切断装置1を用いて、桁2の上面2tにずれ止め2K等の定着部材を介して取付けられた構造物としての鉄筋コンクリート製の床版3と桁2の上面2tとの境界近傍位置3Aを切断する場合に、切断装置1を床版3の下面3uに取付けて切断装置1を床版3に支持させた状態でワイヤーソー10を駆動して、床版3における桁2の上面2tとの境界近傍位置3Aを切断するようにしたことにより、切断装置1を床版3の下面3u側に設置して床版3を切断できるとともに、切断して撤去する部分以外の再利用する部分である桁2を損傷する可能性を低くできるようにした切断方法である。
尚、境界近傍位置3Aは、例えば、桁2の上面2tの幅方向両端側より上方に向けて傾斜する傾斜下面3utに形成された床版3のハンチ(テーパ)部分における桁2の上面2tとの境界近傍部分である。
また、床版3の下面3uは、ハンチ部分の傾斜下面3ut以外の下面である。
尚、本明細書において、幅方向は、図10図12において「W」で示した方向、上下方向は、図11図12において「上下」で示した方向と定義して説明する。
また、図11,3において、符号4は足場板などの作業台である。
【0038】
切断装置1は、ワイヤーソー10と、ワイヤーソー10のガイド部と、ワイヤーソー10の駆動装置と、ガイド部及び駆動機構を床版3の下面3uに取付けるための取付手段とを備える。
【0039】
ワイヤーソー10は、例えば、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだビーズを一定間隔に装着した無端環状のワイヤー(ダイヤモンドワイヤー)により構成される。
【0040】
切断装置1は、ワイヤーソー10が、例えば、床版3の境界近傍位置3Aであるハンチ部分の一方の傾斜下面3utと他方の傾斜下面3utとに亘って貫通するように形成された貫通孔3aに通されるとともに、駆動プーリ20、複数の従動プーリに掛け渡されて無端環状に構成され、駆動プーリ20が回転しながら移動してワイヤーソー10を牽引することにより、ワイヤーソー10がコンクリート部分に食い込んで境界近傍位置3Aを切断するように構成されている。
【0041】
ワイヤーソー10のガイド部は、ガイド手段と、ガイド手段を支持する支持手段とを備える。
【0042】
ガイド手段は、例えば、駆動プーリ20と、複数の従動プーリ群とを備える。
【0043】
複数の従動プーリ群は、例えば図10図11に示すように、ワイヤーソー10を切断方向にガイドする切断側配列プーリ群21と、ワイヤーソー10の循環経路を構成する切断方向に沿った切断側経路と駆動側経路との境界に設けられた少なくとも2つの経路変換用プーリ22,22と、ワイヤーソー10を駆動側にガイドする駆動側配列プーリ群23とを備える。
切断側配列プーリ群21は、例えば図10に示すように、桁2の上面2tの幅方向両側において、桁2の上面2tの延長方向に沿って間隔を隔てて配置された2個のプーリ、即ち、合計4個の従動プーリ25,25…により構成される。尚、切断側配列プーリ群21、及び、駆動側配列プーリ群23を構成する従動プーリの数は、複数個であればよい。
【0044】
切断側配列プーリ群21を構成する複数の各従動プーリ25,25…は、例えば図13(a)に示すように、回転中心軸25aと、回転中心軸25aを回転中心として回転可能なように設けられたプーリ本体(回転体)25bと、回転中心軸25aとプーリ本体25bとの間に位置されるように、プーリ本体25bの中心孔に組み込まれたベアリング25cとを備え、回転中心軸25aがブラケット25Zに固定された構成である。
尚、当該従動プーリ25は、図13(a)に示すように、回転中心軸25aとして無頭のボルトを使用し、当該回転中心軸25aの上端(一端)がプーリ本体25bの上面25rより上方に突出しないように構成されている。そして、当該回転中心軸25aの上端(一端)には、ベアリング押さえとして機能する低頭ねじ25dの雄ねじ部25eが螺着される雌ねじ部25fが形成されている。
当該従動プーリ25は、例えば、ブラケット25Zを介して後述する支持体28の延長方向に固定位置を変更できるように当該支持体28に固定される。例えば、従動プーリ25がブラケット25Zに固定され、当該ブラケット25Zが支持体28の延長方向に固定位置を変更できるよう図外のねじ等を用いて当該支持体28に固定される(図15参照)。
【0045】
即ち、ブラケット25Zに形成された貫通孔25gに回転中心軸25aの他端側を貫通させて当該回転中心軸25aの他端側のねじ部に座金25hを挿入してナット25iを締結することにより、回転中心軸25aをブラケット25Zに固定する。そして、回転中心軸25aの一端側から当該回転中心軸25aに、スペーサ25jを挿入した後、ベアリング25cが組み込まれたプーリ本体25bを挿入し、その後、回転中心軸25aの一端(上端)に低頭ねじ25dを締結することにより、ブラケット25Zに固定された従動プーリ25が構成される。
尚、プーリ本体25bの円形外周面には、ワイヤーソー10が挿入されてワイヤーソー10を循環移動させるためのガイド溝25mが形成されている。
また、低頭ねじ25dの低頭部25tの上面の中心には、六角レンチ等の工具を挿入して低頭ねじ25dを回転させるための工具挿入孔25kが形成されている。
【0046】
駆動側配列プーリ群23を構成する複数の各従動プーリ27,27…、及び、経路変換用プーリ22は、通常構成のプーリを使用すれば良い。
即ち、従動プーリ27,22は、例えば図13(b)に示すように、回転中心軸として有頭のボルト27aが使用された構成のプーリを用いればよい。
即ち、当該従動プーリ27,22は、ボルト27aを、ベアリング押さえ27cの中心孔、ベアリング25cが組み込まれたプーリ本体25bにおける軸受孔、スペーサ25jの中心孔、ブラケット25Zの貫通孔25gに貫通させた後、ボルト27aの先端側に座金25hを挿入してナット25iを締結することにより構成される。
尚、駆動側配列プーリ群23を構成する複数の各従動プーリ27,27…、及び、経路変換用プーリ22として、図13(a)に示した構成のプーリを使用しても良い。
【0047】
従動プーリ25の低頭ねじ25dの低頭部25tの高さ寸法h1(図13(a)参照)は、プーリ27,22の回転中心軸を構成する有頭のボルト27aの頭部27bの高さ寸法h2(図13(b)参照)よりも小さい。
即ち、切断側配列プーリ群21を構成する複数の各従動プーリ25,25…は、プーリ本体25bの上面25rから上方への突出量が、プーリ27,22と比べて小さくなるように構成されている。
【0048】
支持手段は、切断側配列プーリ群21を構成する各従動プーリ25,25…を支持する第1支持装置と、駆動側配列プーリ群23を構成する各従動プーリ27,27…、2つの経路変換用プーリ22,22、駆動プーリ20、及び、ワイヤーソー10の駆動装置を支持する第2支持装置と、経路変換用プーリ22を支持する第3支持装置とを備える。
【0049】
第1支持装置は、例えば図10に示すように、床版3の下面3uよりも下方において床版3の下面3uに沿って延長するように設けられた複数本の支持体28,28により構成される。
第2支持装置は、例えば図11に示すように、床版3の下面3uよりも下方において床版3の下面3uに沿って延長するように設けられた複数本の支持体28,28と、垂直方向に延長するように設けられた複数本の支持体29,29とが組み合わされた支持枠289により構成される。
第3支持装置は、例えば図12図14(b)に示すように、支持体29に対して上下方向に移動可能に設けられた支持体30により構成される。
支持体28,29,30は、例えば、断面矩形状の金属管等の長尺材により形成される。
【0050】
ワイヤーソー10の駆動装置は、駆動プーリ20と、駆動プーリ20を回転させるとともに、駆動プーリ20を直線往復移動させる駆動制御装置32とを備えて構成される。
駆動制御装置32は、例えば、駆動プーリ20の回転中心軸20Cに連結された回転駆動源としての図外のプーリ回転用モータ、駆動プーリ20の回転中心軸20Cを回転可能に支持する図外の軸受、駆動プーリ20を支持体29に沿って上下方向に往復動させる直線移動機構33とを備える。
【0051】
直線移動機構33は、例えば、支持体29側に設けられた図外のラックと、筐体側に設けられてラックと噛み合う図外のピニオンと、ピニオンを回転させる駆動源としての図外のプーリ移動用モータ(例えば油圧モータ)と、当該プーリ移動用モータの制御回路等とを備えて構成される。
即ち、ピニオンを回転させることで、ラックの延長方向、即ち、支持体29の上下延長方向に駆動プーリ20が往復動可能となるように構成されている。
【0052】
ガイド部及び駆動機構を床版3の下面3uに取付けるための取付手段は、第1支持装置を構成する複数本の支持体28,28を床版3の下面3uに取付けるための複数の第1取付部材41,41…と、第2支持装置を構成する支持枠289、及び、第3支持装置を構成する支持体30を床版3の下面3uに取付けるための複数の第2取付部材42とを備える。
【0053】
第1取付部材41は、例えば、図14(a),図15に示すように、床版3の下面3uにアンカーボルト40等で取付けられる床側取付部材43と、支持体28に取付けられる支持体側取付部材44とを備え、支持体側取付部材44が床側取付部材43の上下延長板43bに対して上下方向に移動可能となるように取付けられていることにより、支持体28の上下を位置調整して従動プーリ25の上下位置を調整可能な上下位置調整機構を備えた構成となっている。構成されている。
即ち、第1取付部材41は、ガイド手段としての従動プーリ25を床版3の下面3uに固定するとともに、従動プーリ25の上下位置を調整するための上下位置調整機構を備えた構成となっている。
【0054】
床側取付部材43は、アンカーボルト40等で床版3の下面3uに固定される固定板43aと、固定板43aの板面より当該板面と直交する下方に延長する上下延長板43bと、上下延長板43bの下端より上下延長板43bの板面と直交する方向に延長する落下防止板43cとを備える。
固定板43aにはアンカーボルト40を貫通させる貫通孔43dが形成され、上下延長板43bには上下延長板43bの延長方向に延長するように形成された長孔43eが形成され、落下防止板43cには上下調整用のねじ47が螺着される貫通ねじ孔44f(図15参照)が形成されている。
【0055】
支持体側取付部材44は、図外のブラケット及びボルト,ナット等の連結具で支持体28に連結された連結板44aと、連結板44aの一端より連結板44aの板面と直交する方向に延長して板面と上下延長板43bの板面とが接触した状態で上下延長板43bに連結される上下移動連結板44bとを備える。上下移動連結板44bには、連結ボルト45が貫通する貫通孔44c(図15参照)が形成されている。
【0056】
第1取付部材41は、支持体側取付部材44の上下移動連結板44bの上端が床側取付部材43の固定板43a側に位置されるように、上下移動連結板44bの板面と床側取付部材43の上下延長板43bの板面とを接触させ、かつ、支持体側取付部材44の連結板44aの下面を形成する板面と落下防止板43cの上面を形成する板面とを対向させた状態で、連結ボルト45を上下移動連結板44bの貫通孔44c及び上下延長板43bの長孔43eに通して、長孔43eより突出する連結ボルト45の先端側にナット46を締結することにより、支持体側取付部材44と床側取付部材43とが連結される。
そして、上下調整用のねじ47を、例えば、二重ナット48,49のねじ孔及び落下防止板43cの貫通ねじ孔44fに貫通させて、ねじ47の先端47t(図15参照)を連結板44aの下面を形成する板面に接触させることにより、第1取付部材41が構成される。
【0057】
従って、当該第1取付部材41の固定板43aがアンカーボルト40等で床版3の下面3uに固定されたことによって、支持体28,28が床版3に固定され、切断側配列プーリ群21を構成する複数の各従動プーリ25,25…が床版3に支持された構成となる。
そして、当該第1取付部材41が床版3に固定された状態で、連結ボルト45の先端側に締結されたナット46を緩めて、上下調整用のねじ47を上下動させることにより、連結板44aに連結された支持体28、及び、支持体28にブラケット25Zを介して固定された従動プーリ25の上下位置を調整できるようになる。
【0058】
例えば、図10の左側の3つの第1取付部材41の上下位置調整機構を調整して、図10の左側の支持体28のレベルを調整することによって、当該支持体28上にブラケット25Zを介して固定された図10の左側の2つの従動プーリ25,25を切断面上に位置させることができる。
また、図10の右側の3つの第1取付部材41の上下位置調整機構を調整して、図10の右側の支持体28のレベルを調整することによって、当該支持体28上にブラケット25Zを介して固定された図10の右側の2つの従動プーリ25,25を切断面上に位置させることができる。
【0059】
そして、上下位置調整が完了したら、連結ボルト45の先端側のナット46を締結するとともに、二重ナット48,49を締結することにより、従動プーリ25の上下位置が固定されることになる。
即ち、当該第1取付部材41は、従動プーリ25がブラケット25Zを介して連結された連結板44aを上下移動可能とした、長孔43e、連結ボルト45,ナット46,上下調整用のねじ47等を有し、従動プーリ25の上下位置を調整可能とした上下位置調整機構を備えている。
【0060】
支持枠289、及び、支持体30を床版3の下面3uに取付けるための第2取付部材42は、例えば、図14(b),図12に示すように、床版3の下面3uにアンカーボルト40等で取付けられる床側取付部材50と、ボルト51と、ボルト51の延長方向に移動自在となるようボルト51に連結された支持体側取付部材52とを備える。
床側取付部材50にはアンカーボルト40を貫通させる貫通孔50aが形成され、支持体側取付部材52にはボルト51を貫通させるための貫通孔52aが形成されている。
【0061】
例えば、図14(b)に示すように、ボルト51の上端(一端)が例えば床側取付部材50の下面に溶接された袋ナット56等の連結具によって床側取付部材50に連結され、ボルト51の下端(他端)を、ナット53のねじ孔、床側取付部材50の貫通孔50a、ナット54のねじ孔、ナット55のねじ孔に貫通させることにより、第2取付部材42が構成される。
そして、支持枠289の支持体29の上端(一端)が図外のブラケット及びボルト,ナット等の連結具によって床側取付部材50の下面に連結される。
また、支持体30がスライダ31を介して支持体29に上下方向に移動可能に取付けられており、当該スライダ31と支持体側取付部材52とが例えばブラケット57等の連結具を介して連結される。
さらに、図12に示すように、経路変換用プーリ22が、ブラケット22Zを介して支持体30に連結される。
【0062】
従って、当該第2取付部材42の床側取付部材50がアンカーボルト40等で床版3の下面3uに固定されたことによって、支持枠289,支持体30が床版3に固定され、駆動側配列プーリ群23を構成する各従動プーリ27,27…、2つの経路変換用プーリ22,22、駆動プーリ20、及び、ワイヤーソー10の駆動装置が、床版3に支持された構成となる。
そして、当該第2取付部材42が床版3に固定された状態で、経路変換用プーリ22が、ブラケット22Z,支持体30,スライダ31,ブラケット57を介して連結された支持体側取付部材52を上下移動させることによって、経路変換用プーリ22の上下位置を調整できるようになる。
即ち、当該第2取付部材42は、経路変換用プーリ22が連結された支持体側取付部材52を上下移動可能としたボルト51とナット53,54,55とを有し、経路変換用プーリ22の上下位置を調整可能とした上下位置調整機構を備えている。
【0063】
従って、第1取付部材41の上下位置調整機構、及び、第2取付部材42の上下位置調整機構を操作することで、ガイド手段としての従動プーリ25,22の上下位置を調整し、これら従動プーリ25,22に掛け渡されるワイヤーソー10を切断面上に位置させることができ、予定の境界近傍位置3Aを正確に切断できるようになる。
【0064】
以上説明した切断方法によれば、切断装置1が床版3の下面3uに固定された状態で、プーリ回転用モータとプーリ移動用モータとを駆動させて、駆動プーリ20を回転させて複数の従動プーリと駆動プーリ20とに掛け渡されたワイヤーソー10を循環移動させるとともに、駆動プーリ20を上下方向に移動させてワイヤーソー10を牽引することによって、ワイヤーソー10が境界近傍位置3Aのコンクリートに食い込むので、コンクリートが切断される。
この際、取付手段としての第1取付部材41及び第2取付部材42の上下位置調整機構により、境界近傍位置3Aに合わせて従動プーリ25,22の上下位置を調整することができ、予定の境界近傍位置3Aを正確に切断できるようになる。
【0065】
尚、ワイヤーソー10による切断動作が進行するにつれて図10のワイヤーソー10の下側の部分が図10の上方側に移動する。そして、ワイヤーソー10の下側の部分が図10の下側の両方の従動プーリ25,25の位置まで到達したならば、ワイヤーソー10の駆動を停止してワイヤーソー10の図10の下側の部分を下側の両方の従動プーリ25,25から外して、下側の両方の従動プーリ25,25を図10の下方に移動させた後に、ワイヤーソー10の駆動を再開する。その後、ワイヤーソー10が図10の左上側の従動プーリ25に到達したならば、ワイヤーソー10の駆動を停止してワイヤーソー10の図10の左上の部分を左上の従動プーリ25から外して、当該左上の従動プーリ25を図10の上方に移動させた後に、ワイヤーソー10の駆動を再開することにより、図10の下の貫通孔3aから上の貫通孔3aまでの間の床版3の境界近傍位置3Aを切断できる。
そして、所定範囲の床版3を桁2から切り離した後、当該切り離した床版3をクレーンで楊重可能な適当な大きさに分割して、クレーンで撤去する。
【0066】
以上説明したように、上述した切断方法によれば、桁2の上面2tに取付けられた床版3と桁2の上面2tとの境界近傍における床版3の境界近傍位置3Aとなるコンクリート部分をワイヤーソー10を有した切断装置1を用いて切断する際に、ワイヤーソー10の駆動機構及びガイド手段を床版3の下面3uに取付けた状態で、ワイヤーソー10を駆動することにより、床版3の境界近傍位置3Aを切断するようにした。
即ち、当該切断方法によれば、切断装置1を床版3の下面3uにのみ取付けた状態でワイヤーソー10を駆動することにより、床版3と桁2の上面2tとの境界近傍における床版3の境界近傍位置3Aを切断するようにしたので、床版更新工事において、切断装置1を床版3の下面3u側に設置して床版3を切断することにより、床版3の周辺の利用、すなわち、道路の利用を損なうことなく、かつ、切断して撤去する部分以外の再利用する部分である桁2を損傷する可能性を低くできるようになる。
【0067】
また、切断装置1によれば、ガイド手段は、ワイヤーソー10が掛け渡される複数のプーリ(従動プーリ群、及び、駆動プーリ)により構成されたので、予定の切断位置にワイヤーソー10を精度良く案内できるようになる。
【0068】
また、切断装置1によれば、ワイヤーソー10と、ワイヤーソー10の駆動機構と、ワイヤーソー10をガイドするガイド手段としての駆動プーリ20及び従動プーリ群と、ガイド手段及び駆動機構を床版3の下面3uに取付けるための取付手段としての第1取付部材41及び第2取付部材42を備えたので、床版更新工事において、床版3の下面3u側に設置して床版3を切断できるようになり、床版3の周辺の利用、すなわち、道路の利用を損なうことなく、かつ、切断して撤去する部分以外の再利用する部分である桁2を損傷する可能性を低くできる切断装置を提供できる。
【0069】
また、切断装置1によれば、ワイヤーソー10をガイドするガイド手段としての従動プーリ25,22を備え、取付手段としての第1取付部材41及び第2取付部材42が従動プーリ25,22の上下位置を調整する上下位置調整機構とを備えたので、第1取付部材41及び第2取付部材42により切断装置1が床版3の下面3uに固定された状態で、従動プーリ25の上下位置と経路変換用プーリ22の上下位置とを揃えることができるので、ワイヤーソー10による切断位置のレベル(上下高さ位置)を自由に設定できるようになる。
例えば、桁2と桁2とを接続する添接板が設置された添接板設置区間において、当該添接板及び添接板を固定するボルト等の支障物を逃げるように従動プーリ25を上方位置に設定できるようになり、桁2を損傷する可能性が低くなる。
【0070】
また、切断装置1によれば、従動プーリ25の回転中心軸25aの上端が当該プーリ25の上面25rより上方に突出しないように構成され、当該回転中心軸25aの上端には、ベアリング押さえとして機能する低頭ねじ25dが設けられたので、プーリ25(プーリ本体25b)の上面25rから上方への突出量が、通常構成のプーリ27,22と比べて小さくなる。
従って、例えば、従動プーリ25を、床版3のハンチ(テーパ)部分の傾斜下面3utの下方に位置させる場合において、上述した添接板設置区間で上述した添接板やボルト等の支障物を逃げるように従動プーリ25を上方に設置したい場合に、従動プーリ25を床版3の傾斜下面3utや下面3uにより近付けることができるようになって、上述した添接板やボルト等の支障物よりも上方の位置を切断できるようなり、桁2を損傷する可能性が低くくなる。
即ち、従動プーリ25を床版3の傾斜下面3utや下面3uにより近付けることができるようになり、境界近傍位置を決める際の設定範囲の自由度が増すという効果が得られる。
【0071】
尚、添接板やボルト等の支障物を逃げるようにプーリを上方に設置できない場合、当該添接板やボルト等の支障物を切断しないように、ワイヤーソーによる切断動作を中止させたりする必要があり、作業効率が悪くなる。
一方、切断装置1によれば、従動プーリ25,22の上下位置を調整可能とする上下位置調整機構、及び、低頭ねじ25dを備えた従動プーリ25を用いて従動プーリ25を床版3の傾斜下面3utや下面3uにより近付けることができるようにした構成を備えているので、上述した添接板やボルト等の支障物を逃げるように従動プーリ25を設置できるようになり、ワイヤーソー10による切断動作を中止させることなく、効率的に切断作業を行えるようになる。
【0072】
切断装置の具体例2
具体例1の切断装置1は、ワイヤーソー10を経路変換用プーリ22を介して経路変換用プーリ22の真下に位置させた従動プーリ27又は駆動プーリ20に導くように構成したが、図16に示すように、ワイヤーソー10を経路変換用プーリ22を介して経路変換用プーリ22の斜め下方に位置させた従動プーリ27又は駆動プーリ20に導くように構成された駆動側配列プーリ群23Aを備えた構成の切断装置としてもよい。尚、斜め下方は、どのような方向であってもよい。即ち、斜め下方の方向は、自在な方向に設定できる。
【0073】
当該切断装置によれば、ワイヤーソー10の長さを長くできるため、ワイヤーソー10による切断対象範囲を大きくすることが可能となる。
【0074】
切断装置の具体例3
具体例1の切断装置1では、ワイヤーソー10を切断方向にガイドする切断側配列プーリ群21と、少なくとも2つの経路変換用プーリ22,22と、ワイヤーソー10を駆動側にガイドする駆動側配列プーリ群23と、駆動プーリ20とを有した構成のガイド手段を備えた切断装置1を例示したが、図17に示すように、ガイド手段が、床版3の下面3uと対向する位置において切断方向に並ぶように配列された複数の従動プーリ25,25…及び駆動プーリ20により構成された切断装置1であってもよい。
即ち、ワイヤーソー10が、切断方向に配列された駆動プーリ20及び複数の従動プーリ25,25…に掛け渡されて、駆動プーリ20が回転しながら切断方向に移動してワイヤーソー10を牽引することにより、ワイヤーソー10が床版3の境界近傍位置3Aを切断するように構成された切断装置1であってもよい。
【0075】
当該切断装置1によれば、床版3の下方に作業スペースを確保できない現場などにおいて有効に活用できる切断装置1を提供できる。
【0076】
切断装置の具体例4
切断装置1の具体例1で説明したガイド手段を構成する切断側配列プーリ群21の代わりに、図18に示すように、ローラコンベヤ5A,5Aと従動プーリ25,25とで構成されてワイヤーソー10を切断方向に案内するガイド手段を備えた切断装置としてもよい。
ローラコンベヤ5A,5Aは、桁2の上面2tの幅方向の両方の端縁に沿って、即ち、切断方向に沿って延長するように設けられる。
ローラコンベヤ5Aは、所定の間隔を隔てて並ぶように配置されて回転中心軸5bを回転中心として回転可能に設けられた複数のローラ5a,5a…を備えて構成される。
また、各ローラ5a,5a…の各回転中心軸5b,5b…は、例えば、桁2の上面2tの延長方向と直交するように、同一平面上に配置される。
ローラコンベヤ5Aを構成する複数のローラ5a,5a…は、例えば回転中心軸5bの両端部がローラ5aの両端側に設置された側板5c,5cに回転可能に支持された構成である。
また、ローラコンベヤ5Aは、例えば、第1取付部材41,41…に連結された並列配置の支持体28,28Aの上に側板5c,5cが固定されて設けられる。
【0077】
当該切断装置によれば、ローラコンベヤ5Aにより、ワイヤーソー10を予定の切断位置に精度良く導くことができて、切断精度が向上するとともに、ワイヤーソー10が駆動された場合、切断動作中のワイヤーソー10の下面とローラコンベヤ5Aの各ローラ5a,5a…の回転可能な円周面とが接触し、ワイヤーソー10による切断進行に伴って、ワイヤーソー10がローラ5a,5a…の回転可能な円周面上で形成される切断面上を滑らかに移動するようになるので、ワイヤーソー10による切断動作がスムーズになる。
尚、断動作中のワイヤーソー10は、従動プーリ25,25により経路変換用プーリ22,22に導かれる。
【0078】
切断装置の具体例5
切断装置1の具体例1で説明したガイド手段を構成する切断側配列プーリ群21の代わりに、図19に示すように、ガイドローラ5B,5Bと従動プーリ25,25とで構成されてワイヤーソー10を切断方向に案内するガイド手段を備えた切断装置としてもよい。
ガイドローラ5B,5Bは、桁2の上面2tの幅方向の両方の端縁に沿って、即ち、切断方向に沿って延長するように設けられる。
各ガイドローラ5B,5B…の各回転中心軸5g,5g…は、例えば、桁2の上面2tの延長方向に沿って延長するように、同一平面上に配置される。
ガイドローラ5Bは、例えば回転中心軸5gの両端部がガイドローラ5Bの両端側に設置された端板5f,5fに回転可能に支持された構成である。
また、ガイドローラ5Bは、例えば、第1取付部材41,41…に連結された並列配置の支持体28Aの上に端板5f,5fが固定されて設けられる。
【0079】
当該切断装置によれば、ガイドローラ5Bにより、ワイヤーソー10を予定の切断位置に精度良く導くことができて、切断精度が向上するとともに、ワイヤーソー10が駆動された場合、切断動作中のワイヤーソー10の下面とガイドローラ5Bの回転可能な円周面とが接触し、ワイヤーソー10による切断進行に伴って、ワイヤーソー10がガイドローラ5Bの回転可能な円周面上で形成される切断面上を滑らかに移動するようになるので、ワイヤーソー10による切断動作がスムーズになる。
尚、断動作中のワイヤーソー10は、従動プーリ25,25により経路変換用プーリ22,22に導かれる。
【0080】
即ち、具体例4及び具体例5の切断装置によれば、ガイド手段が、切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な円周面を有したローラ(ローラ5a,ガイドローラ5B)を備えた構成としたので、ローラにより、ワイヤーソー10を予定の切断位置に精度良く導くことができて、切断精度が向上するとともに、ワイヤーソー10がローラ上を滑らかに移動し、ワイヤーソー10による切断動作をスムーズに行えるようになる。
また、具体例4及び具体例5の切断装置によれば、切断側配列プーリ群21を用いた場合と比べて、切断動作の途中でワイヤーソー10を従動プーリ25から外す作業を少なくできるので、作業者の作業の簡易化が図れるようになる。
【0081】
尚、ガイド手段は、切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な円周面を有したローラの代わりに、切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な球面を有した複数の球体を備えた構成としてもよい。
【0082】
また、ガイド手段は、切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な円周面を有したローラの代わりに、ベルトコンベヤを備えた構成としてもよい。
【0083】
切断装置の具体例6
具体例4及び具体例5の切断装置では、図18及び図19に示すように、桁2の幅方向の両方の端縁に沿って切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な円周面を有したローラコンベヤ5A,5Aやガイドローラ5B,5Bを配置した構成のものを例示したが、桁2の幅方向の一端縁に沿って切断動作中のワイヤーソー10の下面と接触する回転可能な円周面を有したローラを配置するとともに、桁2の幅方向の他端縁に沿って切断動作中のワイヤーソー10をガイドするプーリを配置した構成の切断装置を用いて、床版3の境界近傍位置3Aを切断するようにしてもよい。
当該切断装置によれば、ローラ及びプーリにより、ワイヤーソー10を予定の切断位置に精度良く導くことができて、切断精度が向上するとともに、ワイヤーソー10がローラ上を滑らかに移動し、ワイヤーソー10による切断動作をスムーズに行えるようになる。
【0084】
尚、各具体例の切断装置では、取付手段が、ガイド手段の上下位置を調整するための上下位置調整機構を備えた構成を例示したが、取付手段に上下調整機構を設けずに、ガイド手段を構成するプーリ、ローラコンベヤ5A、ガイドローラ5Bを個別に上下調整できるような上下位置調整機構を備えた構成としてもよい。
【0085】
また、各具体例の切断装置では、切断装置1を下面3uに取り付けた構成を例示したが、切断装置1を、床版3のハンチ部分の傾斜下面3utに取付けるようにしても良い。例えば、第1取付部材41を床版3のハンチ部分の傾斜下面3utに取付けるようにしても良い。
【0086】
また、各具体例の切断装置では、プーリ、ローラコンベヤ5A、ガイドローラ5B等のガイド手段を、桁2の幅方向の両方の端縁に沿った位置にそれぞれ設けるようにした例を示したが、当該ガイド手段を、桁2の幅方向の両方の端縁のうちの一方の端縁に沿った位置にのみ設けるようにしてもよい。
【0087】
尚、上述した各実施形態では、床版3を道路として供用した状態で、床版3を桁2から切り離す床版切離しステップと、桁2から切り離した床版3を当該桁2の上に固定手段4Aを用いて固定する床版固定ステップとを行う例を示したが、床版3を道路として供用せずに通行止めとした状態で床版切離しステップと床版固定ステップとを行うようにしてもよい。このようにした場合でも、従来のように床版切断工事と桁から切り離した床版を撤去する床版撤去工事とを繰り返し行う場合と比べて、床版切離し工事を先行して進めることができるようになり、床版撤去工事を一気に行えるようになるため、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようになる。
【0088】
また、上述した各実施形態では、床版の下面に切断装置を設置して、当該切断装置により床版と桁との境界近傍のコンクリート部分の位置である境界近傍位置を水平方向に切断することにより、床版を桁から切り離す例を説明したが、床版の上方に切断装置を設置して床版切離しステップを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 切断装置、2 桁、2a 桁の幅方向両側の側縁面、2b 桁上の切断面、
2c はみ出しコンクリート部分、2d コンクリート部分残存面、3 床版、
3A 境界近傍位置、3b 床版の切断面、3c 床版の切断面における側部面、
3u 床版の下面、3ut 床版の傾斜下面、4A,4B 固定手段、
5 位置決め部材、6 連結部材、7 締付装置、8 連結部、
61 連結部材の一端、62 連結部材の他端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図19