(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】破損表示機能付きの耐損傷性手袋
(51)【国際特許分類】
A41D 19/00 20060101AFI20220120BHJP
A41D 19/04 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A41D19/00 Z
A41D19/00 P
A41D19/04 B
(21)【出願番号】P 2019536568
(86)(22)【出願日】2018-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2018051599
(87)【国際公開番号】W WO2018138095
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-20
(32)【優先日】2017-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/069954
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519238392
【氏名又は名称】スマーテリアルズ テクノロジー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】ミルチン,ニコラウス
(72)【発明者】
【氏名】ボテ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ラリッサ
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-531931(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0082391(KR,A)
【文献】国際公開第2007/068873(WO,A1)
【文献】特開平05-230702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00
A41D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と縁部を含む多
層カバーであって、
前記本体は、
a.外側のラテックス層
b.内側のラテックス層
c.粒子を含む中間層であって、前記粒子が、
官能化されていない状態においては、
i.平均粒径≦100μm及び
ii.露出されたOH基を含む表面
によって特徴付けられる前記中間層
を含み、
前記縁部は凝集させられた外側及び内側のラテックス層から本質的になり、前記粒子が、疎水性基を含む化合物で化学的に官能化されることで特徴付けられる前記多層カバー。
【請求項2】
前記粒子は、シリカから形成された無機粒子を含む又は本質的にそれらからなる、請求項1に記載の多層カバー。
【請求項3】
前記粒子が、
a.平均粒径≦1μm、又は、
b.前記粒子の90%が粒径≦1μmを有すること、
で特徴付けられる、請求項1又は2に記載の多層カバー。
【請求項4】
疎水性基を含む前記化合物が、7-オクテニルトリメトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、アリルトリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、3-トリメトキシシリルプロパン-1-チオール、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、及び3-N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドから選択される化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層カバー。
【請求項5】
前記粒子が、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、及びN-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド、又は3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランから選択される親水基を含む化合物を用いてさらに官能化される、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層カバー。
【請求項6】
前記官能化された粒子が、両親媒性粒子表面を有する請求項1~5のいずれか一項に記載の多層カバー。
【請求項7】
前記粒子が、少なくとも2つの異なる化合物を用いて官能化される、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層カバー。
【請求項8】
a.第1の化合物は疎水性表面を産出するのに適した化合物から選択され、第1の化合物は7-オクテニルトリメトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、アリルトリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、3-トリメトキシシリルプロパン-1-チオール、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、及び3-N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドから選択される化合物であり、かつ
b.第2の化合物は親水性表面を産出するのに適した化合物から選択され、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド及び3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランから選択される物質である、
請求項7に記載の多層カバー。
【請求項9】
前記内側及び/又は外側のラテックス層が、中間層に面するラテックス層の正面上での水との接触角<90°で特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層カバー。
【請求項10】
前記多層カバーがその全寸法にわたって均一に広がる100μm~800μmの厚さによって特徴付けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の多層カバー。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の多層カバーを含む又は本質的にそれらからなる手袋。
【請求項12】
多層カバーの生産方法であって、以下の工程:
a.成形具を供給する工程と、
b.前記成形具を第1の凝固剤液体に浸漬深さd
1まで浸漬し、前記成形具を引き上げ乾燥する工程と、
c.前記成形具を第1のラテックス分散液に浸漬深さd
2まで浸漬し、前記成形具を引き上げ乾燥し、第1のラテックスで覆われた成形具を産出する工程と、
d.化学的に官能化された粒子を前記第1のラテックスで覆われた成形具に浸漬深さd
3まで塗布し、粒子で処理された成形具を産出する工程であり、
前記粒子は、
官能化されていない状態において、平均粒径≦100μm及び2~5/nm
2の密度で露出されたOH基を含む表面によって特徴付けられ、
疎水性基を含む化合物を用いて化学的に官能化される前記工程と
e.前記粒子で処理された成形具を第2のラテックス分散液に浸漬深さd
4まで浸漬し、前記粒子で処理された成形具を引き上げ乾燥し;第2のラテックスでカバーされた成形具を産出する工程であり、
d
1≧d
2>d
3及びd
1≧d
4>d
3であり;
f.前記
第2のラテックスでカバーされた成形具から塗布された層を除去し、多層カバーを産出する工程と、
を含む前記
多層カバーの生産方法。
【請求項13】
前記第1及び第2のラテックス分散液並びに化学的に官能化された粒子は加硫システムを含み、工程eにおいて前記第2のラテックス分散液から前記粒子で処理された成形具の引き上げに続き、加硫工程は100℃と200℃の間で実行される、請求項12に記載の
多層カバーの生産方法。
【請求項14】
前記粒子がシリカ粒子である、請求項12又は13のいずれか一項に記載の
多層カバーの生産方法。
【請求項15】
a.前記粒子が、
7-オクテニルトリメトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、アリルトリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、3-トリメトキシシリルプロパン-1-チオール、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、及び3-N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドから選択される化合物の表面への共有結合によって官能化され、及び
b.前記粒子がポリエチレングリコール、ポリグリセリン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド、及び3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランから選択される第2の化合物の共有結合によってさらに官能化される、
請求項12~14のいずれか一項に記載の
多層カバーの生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て多層手袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨て手袋は多くの異なる、時には相反する要求を満たす必要がある。医療従事者、実験室要員及び救急隊員が着用する手袋は、衛生及び汚染防止対策として、素手を覆う物理的障壁を提供する。手袋は有害物質や感染性物質との直接の皮膚への接触から着用者を保護する必要がある。手袋は耐久性に優れるが柔軟性を有する必要があり、感触をあまりに妥協せずに良好なグリップを提供しなければならない。手袋は、また、皮膚に非刺激性でなければならない。特定の手袋、特に手術用手袋は無菌で個別に包装する必要がある。手袋は頻繁に交換されるため、それでも高品質を示しながら比較的安価であることが必要である。
【0003】
大量生産で製造された手袋は一定の割合で穴の欠陥を示す。穴の欠陥を持つ手袋の割合を減らすことが重要な課題である。穴は生産工程後の許可のない扱いによる破壊又はメスや針による破損などの手袋を使用する間の事故により発生する可能性もある。残念ながら、これらの穴は通常容易には見えず、したがってすぐには気付かれない。安全性を向上するための一般的なアプローチは1つをもう一方の上にし、2つの手袋を着用することである。しかしながら、これは外側の手袋の滑り及び垂れのような他の問題を引き起こす。
【0004】
二層手袋は、上記の欠点なしに2つの手袋を着用することと同じ物理的障壁を提供することができる。このような二層手袋の非常に関連性のある特徴は、例えば目に見える信号によって、層の1つに穴があることを着用者にすぐに知らせる表示機能である。
【0005】
手袋は通常、いくつかの凝集層からなる。これらは複数の浸漬工程から生成し、単一の厚い層と区別することはできない。ただし、変更は存在する。EP0561651A1(US5438709及びUS6280673としても公開されている)は、手袋の滑らかな表面特性を達成するためのポリビニルアルコールコーティングのための効率的な浸漬方法を特許請求している。US2003/0124354A1は、同じ材料又は異なる材料に浸漬することによるか、又は異なる色のラテックス浴に浸漬することによるかいずれかの様々な工程での成形具の浸漬を記載している。本明細書中に引用されたこれら及び他の任意の米国特許は、参照により本明細書に援用される。
【0006】
破損の場合に使用者に警告する穿孔表示の統合は、ポリマー層の空間的分離を必要とする。2つの別々の層を有する手袋の製造方法は、通常、複雑で費用がかかる。1つの工程でこのようなラテックス品を製造するアプローチが例示的にUS5965276に記載されている。ここではゲンチアナ・バイオレットなどの粒子を、隣接している内側と外層を分離するために、層の間に追加の浸漬工程において適用する。別の例では、亜鉛ステアリン酸への中間浸漬を提案して、同じ結果を主張している。1つの問題は、この工程は、凝固剤への別の浸漬を必要とすることである。もう一つの問題は、これらの物質が健康に有害であることである。ラテックス層へ化学的に結合されていないので、これらの物質が取り除かれる又は洗い流され得る。手袋の破損の場合には、皮膚と開手術部が接触し、患者を危険にさらす可能性がある。
【0007】
穿孔表示を可能にする別のアプローチでは、染色されたマイクロカプセルが中間層に使用されている(US2011/0287553)。WO2007068873では中間層を形成するためにシリカ粒子の使用を提案している。シリカ粒子を使用する手順は層を分離するという所望の効果を生み出すが、それは二重手袋システムの品質挙動を達成することができない。シリカの制御された適用は困難であり、粒子はラテックス層に結合せずそしてそれらのわずかな親水性は浸漬のための懸濁液中での安定化を支持せず、また粒子を疎水性ラテックス層に均一に適用することもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第0561651号
【文献】米国特許出願公開第2003/0124354号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当該技術分野の上記の状況に基づき、本発明の目的は、費用対効果の高い、破損表示機能を含む耐久性に優れる耐損傷性手袋を生産するための迅速かつ信頼性の高い方法を提供することである。この問題は独立請求項の主題によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の説明
本明細書の文脈における用語「ラテックス」はゴム状ポリマーに関する。ラテックスゴムの非限定的な例としては、天然ゴム、カウチョウク、ポリイソプレン、ニトリル含有ポリマー、ニトリルゴム、及びポリクロロプレンが含まれる。
【0011】
用語「ラテックス分散液」とは、固化できる上記に挙げられたラテックスの1つである水性高分子分散液に関する。
【0012】
多層カバー
本発明の第1の態様によれば、多層形状カバーが提供される。特定の実施形態では、カバーは人間の手のような形をしており、手袋として機能することができる。多層カバーは、本体と縁部とを備える。本体は、カバーが手袋形状であるカバーの内側上にある外層から分離されているが隣接している別個の内側のラテックス層及び外側ラテックス層を含む。粒子を含む中間層は外層と内層を分離する。縁部は本質的に凝集した第一及び第二のラテックス層からなる(
図1)。官能化されていない状態では、粒子は以下によって特徴付けられる。
- 平均粒径≦100μm
- 露出したOH基を含む表面。
【0013】
中間層では、粒子は疎水性基を含む化合物で化学的に官能化されている。
【0014】
粒子
特定の実施形態では、粒子は微小粒子である。特定の実施形態では、粒子はナノ粒子である。
【0015】
特定の実施形態では、粒子は有機粒子である。特定の実施形態では、粒子は、ポリスチレン、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド co-グリコリド)(PLGA)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトン、ポリグルタミン酸、ポリリンゴ酸、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(メタクリル酸)から選択される材料を含む又は本質的にそれらからなる有機粒子である。
【0016】
特定の実施形態では、粒子は無機粒子である。特定の実施形態では、粒子は、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化鉄、金、銀、ガドリニウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、又は類似のフッ化物から選択される材料を含む又は本質的にそれらからなる無機粒子である。
【0017】
特定の実施形態では、粒子はシリカ、二酸化チタン、又は二酸化ジルコニウムを含む又は本質的にそれらからなる粒子である。特定の実施形態では、粒子はシリカを含む又は本質的にそれらからなる粒子である。
【0018】
特定の実施形態では、粒子は平均粒径≦10μmによって特徴付けられる。特定の実施形態では、粒子は平均粒径≦1μmによって特徴付けられる。特定の実施形態では、粒子は平均粒径≦0.1μmによって特徴付けられる。
【0019】
特定の実施形態では、粒子はメラミン樹脂粒子である。特定の実施形態では、粒子はポリスチレン粒子である。特定の実施形態では、粒子はポリメチルメタクリレート粒子である。特定の実施形態では、粒子はゼオライトイミダゾレート構造体(ZIFs)である。ZIFは、イミダゾレートリンカーによって結合された四面体配位遷移金属イオン(例えば、Fe、Co、Cu、Zn)から構成される。特定の実施形態では、粒子はカーボンナノチューブである。特定の実施形態では、粒子はグラフェン粒子である。
【0020】
特定の実施形態では、粒子はシリカ粒子であり、具体的には平均粒径≦50μmを有するシリカ粒子、具体的には平均粒径≦25μmを有するシリカ粒子、具体的には平均粒径≦15μmを有するシリカ粒子である。特定の実施形態では、シリカ粒子は平均粒径0.01μm≦d≦1μmを有する。特定の実施形態では、シリカ粒子は、小さな粒子(0.01μm≦d≦1μm)及び大きな粒子(5μm≦d≦25μm)の混合物である。
【0021】
粒子はラテックス層間の「スペーサ」として働き、したがって、2つの層の間の分離を確保する(
図3)。粒子の他の利点は、ラテックスよりも著しく頑丈であるので、それらが刺傷又は切断からの保護を付加できることである。粒子は、第1のラテックスで覆われた成形具の表面を浸漬深さd
3まで覆う。
【0022】
特定の実施形態では、粒子は、材料に関係なく、平均粒径≦15μmを有する。特定の実施形態では、粒子は平均粒径≦10μmを有する。特定の実施形態では、粒子は平均粒径0.01μm≦d≦0.1μmを有する。特定の実施形態では、粒子は平均粒径0.1μm≦d≦1μmを有する。特定の実施形態では、粒子は小さな粒子(0.1μm≦d≦1μm)及び大きな粒子(5μm≦d≦25μm)の混合物である。粒子の粒径<10μmでは、懸濁液中の粒子の安定性が増加する。
【0023】
特定の実施形態では、粒子は平均粒径≦100μmによって特徴付けられる。特定の実施形態では、粒子は平均粒径10μm~100μmによって特徴付けられる。特定の実施形態では、粒子は平均粒径20~50μmによって特徴付けられる。特定の実施形態では、粒子は平均粒径≦25μmを有する。1~100μm、具体的には20~50μmの範囲で言及されたサイズの粒子は、層の間で大きなキャビティを作製し、破損の場合、特定の実施形態では、層の間の液体フローを促進することによって利点をもたらし得る。
【0024】
特定の実施形態では、粒子は有色である。有色の粒子は、外層の穿孔の視認性を増加させる(表示機能)。
【0025】
粒子に関する用語「平均粒径」は、具体的には、算術平均又は粒子の粒径分布の中央値を指す。このような平均サイズは、当業者に知られる方法、例えば、走査電子顕微鏡、静的若しくは動的光散乱(SLS、DLS)又はサイズ排除クロマトグラフィのような方法によって決定され得る。他の方法が明示的に言及されない場合、発明を定義するのにここに与えられた粒径は、動的光散乱によって決定されると考えられる。
【0026】
特定の実施形態では、粒子は、1~10/nm2の密度を有する露出したOH基を含む表面によって特徴付けられる。特定の実施形態では、粒子は、2~5/nm2の密度を有する露出したOH基を含む表面によって特徴付けられる。特定の実施形態では、粒子は、2.2~2.5/nm2の密度を有する露出したOH基を含む表面によって特徴付けられる。特定の実施形態では、粒子は、2.2/nm2の密度を有する露出したOH基を含む表面によって特徴付けられる。
【0027】
特定の実施形態では、粒子は、2~5/nm2の密度を有する露出したSiOH基(シラノール)を含む表面によって特徴付けられる。特定の実施形態では、粒子は、2.2~2.5/nm2の密度を有する露出したSiOH基を含む表面によって特徴付けられる。
【0028】
自由なシラノール基は、さまざまな方法によって定量され得る。非限定的な例として、SiOH密度を決定する方法は、次のとおりである:
≡SiOHを塩素処理する方法、≡SiOHをフェニルリチウム、ジアゾメタン、及びハロゲン化アルキルマグネシウムと反応させる方法、≡SiOHをB2H6と反応させる方法、≡SiOHをとLiAlH4反応させる方法、赤外分光法。
粒子表面上のSiOH密度を定量する正確かつ容易な方法は、ジグリムの存在下で、以下の式にしたがってLiAlH4とともに反応させることである。
4SiOH+LiAlH4→LiOSi+Al(OSi)3+4H2
【0029】
この方法は、形成された水素の量を決定し、この結果としてシラノール基の密度を決定する測定圧を含む。攻撃的な試薬として機能する水素化物イオンが非常に小さく、高い反応性があるので、表面上の全てのシラノール基は、架橋されたものを含めて検知される。特に明記しない限り、ここで述べられたSi-OH密度は、この方法によって決定される。
【0030】
粒子官能化
粒子は疎水性基、又は疎水性基及び親水性基で官能化される。官能化された粒子は、単官能粒子(特異的な疎水性基で官能化される)、多官能粒子(異なる疎水性基、又は疎水性基及び親水性基で官能化される)の形状であってよく、又は異なる単官能粒子からなる粒子混合物として提供されてよい。
【0031】
疎水性基/疎水性層での官能化は、粒子の塗布の間、第1のラテックスで覆われた成形具への接着及び、次の加硫の間、ラテックスへの固着/カップリングを可能にする/支援する。特定の実施形態では、これは、官能化された粒子とラテックスの間の共有結合の形成によって達成される。
【0032】
ラテックスに粒子を結合することは、ラテックス層の破損の場合、製品の構造一体性が与えられ、粒子が放出されないことを保証する。
【0033】
特定の実施形態では、粒子は、不飽和又は硫黄を含む化合物、具体的には7-オクテニルトリメトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、アリルトリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、3-トリメトキシシリルプロパン-1-チオール、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン及び3-N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドから選択された化合物で官能化される。
【0034】
特定の実施形態では、官能化された粒子は疎水性粒子表面を有する。
【0035】
特定の実施形態では、粒子は、親水基を含む化合物でさらに官能化される。特定の実施形態では、粒子は、ポリエチレングリコール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド及び/又は3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランから選択された親水基を含む化合物でさらに官能化される。
【0036】
親水性基/親水性層を用いた官能化は、水中での粒子の分散性を改善し、水懸濁液中の粒子を安定化させる。それはまた、ラテックス層上面の塗布を促進しさえするので、次のラテックス浸漬工程の間、凝固剤として働く。
【0037】
親水性基/親水性層を用いた官能化は、中間層の表示機能も改善する。親水性の粒子表面は、破損の場合に中間層が液体リザーバとして働くように、中間層への水性液体の流入を可能にする。水中での濡れ性を増加することによって、水(又は環境からの湿気)は、より効率的に中間層へ吸収され、それによって可視のスポットが迅速に増加し、大きな面積へ広がる。内層が暗色の場合、液体リザーバの充填レベルはより明白になる。
【0038】
例示部分で述べられた測定指示を使用すると、穿孔表示の有効性に関する中間層における修飾済粒子の効果が評価可能である。色の変化により、50mm
2の破損を示す明白に識別可能な領域が100秒以内に形成される場合、これはよい穿孔表示だと考えられる(
図9)。
【0039】
特定の実施形態では、官能化された粒子は両親媒性の粒子表面を有する。
【0040】
両親媒性の粒子表面は、疎水性の粒子表面と親水性の粒子表面の両方の利点を有する。それは、水懸濁液中の粒子の安定化又は十分な安定化、第1のラテックスに覆われた成形具への接着を可能にし、第2のラテックスカバーの塗布用凝固剤としての役割を果たし、及び加硫中にラテックスカバーへの化学結合を支援する。両親媒性粒子は、中間層が液体リザーバとして働くように、破損の場合には中間層への水性液体の流入を可能にする。
【0041】
特定の実施形態では、官能化された粒子は、少なくとも2つの異なる物質で官能化される。
【0042】
第1の物質は、疎水性表面を産出するのに適切な物質から選択される。特定の実施形態では、第1の物質は、不飽和又は硫黄を含む物質、具体的には7-オクテニルトリメトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、アリルトリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、3-トリメトキシシリルプロパン-1-チオール、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン及び3-N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドから選択された物質である。
【0043】
第2の物質は、親水性表面を産出するのに適切な物質から選択される。特定の実施例では、第2の物質はポリエチレングリコール及びN-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド又は3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランから選択される。
【0044】
特定の実施形態では、粒子はアルキルシラン表面コーティングを含む。本明細書の文脈における用語「シラン」は、ケイ素原子(シリコン骨格)及び水素の骨格構造からなる飽和化学化合物を指す。ケイ素原子は多数の単結合の四面体の中心として互いに結合される。各ケイ素原子は4つの結合(Si-H又はSi-Si結合のいずれか)を有し、各水素原子はケイ素原子と接合する(H-Si結合)。市販のシランは合成的に誘導される。本明細書の文脈における用語「アルキルシラン」は、1以上のアルキル基を含むシランから誘導された化学化合物を指す。アルキルシランの非限定的な例は、メチルシラン、トリメチル(トリフルオロメチル)シラン、トリメチルシランカルボニトリル、ジメチルシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、テトラメチルシラン及びヘキサメチルジシランである。
【0045】
特定の実施形態では、長い疎水性基及びトリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、7-オクテニルトリメトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン又はアリルトリメトキシシランのような不飽和結合を有するシランが、粒子の疎水性を実現するために使用される。ビニル基は、加硫中にポリイソプレン鎖への粒子の共有結合の形成に使用される。
【0046】
特定の実施形態では、チオール基(-SH)、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを含むシランが、粒子の疎水性を実現するために使用される。チオール(メルカプト)基は、ポリイソプレン鎖への粒子の共有結合の形成に使用される。
【0047】
特定の実施形態では、粒子はシリカ粒子である。
【0048】
特定の実施形態では、シリカ粒子はアルキルシラン表面コーティングを含む。
【0049】
シランとしてトリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シランを用いたシリカ粒子の官能化のプロトコルの一例は、下記例部分で提示される。
【0050】
特定の実施形態では異なる単官能化シリカ粒子は、順に又は同時に(混合物として)塗布される。
【0051】
PEG又はシランのいずれかを有するシリカ粒子の官能化に関するプロトコルの一例は、下記例部分で提示される。
【0052】
特定の実施形態では、親水性の単官能化シリカ粒子(特定の親水性基で官能化された)は疎水性のシランでさらに官能化され、疎水性基及び親水性基で官能化された多官能化粒子がもたらされる。
【0053】
特定の実施形態では、PEG、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド又は3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランで官能化されたシリカ粒子は、疎水性のシラン、具体的にはメチルシラン、トリメチル(トリフルオロメチル)シラン、トリメチルシランカルボニトリル、ジメチルシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、テトラメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、7-オクテニルトリメトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び/又はアリルトリメトキシシランから選択される疎水性のシランで官能化される。この第2の官能化は、疎水性基及び親水性基で官能化される多官能化粒子をもたらす。
【0054】
特定の実施形態では、粒子は疎水性基及び親水性基で官能化される多官能化粒子である。特定の実施形態では、粒子は疎水性基及び親水性基で官能化された二官能化粒子である。特定の実施形態では、粒子はPEG及びシラン、具体的にはPEG並びにメチルシラン、トリメチル(トリフルオロメチル)シラン、トリメチルシランカルボニトリル、ジメチルシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、テトラメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、7-オクテニルトリメトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド及び/又はアリルトリメトキシシランから選択されたシランで官能化された多官能化又は二官能化粒子である(
図8)。
【0055】
特定の実施形態では、シリカ粒子は、PEG及び疎水性シラン、具体的にはビニルシランで官能化される。
【0056】
PEGとシランの両方を用いたシリカ粒子の官能化のプロトコルの一例は、下記例部分で提示される。
【0057】
特定の実施形態では、PEGは分子量200を有する。特定の実施形態では、PEGは分子量2000を有する。特定の実施形態では、PEGは分子量10,000を有する。特定の実施形態では、PEGは分子量20,000を有する。特定の実施形態では、PEGは20,000よりも大きい分子量を有する。特定の実施形態では、異なる分子量を有するPEGの混合物が使用される。特定の実施形態では、PEGは単分散のPEG(mdPEG)である。
【0058】
特定の実施形態では、シランはトリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シランである。特定の実施形態では、シランはアリルトリメトキシシランである。特定の実施形態では、シランは3-(アミノプロピル)トリエトキシシランである。特定の実施形態では、シランはヘキサデシルトリメトキシシランである。特定の実施形態では、シランはビニルトリメトキシシランである。特定の実施形態では、シランはトリエトキシビニルシランである。特定の実施形態では、シランは3-トリメトキシシリルプロパン-1-チオールである。特定の実施形態では、シランはビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドである。特定の実施形態では、シランは3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランである。特定の実施形態では、シランは3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランである。特定の実施形態では、シランはN-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドである。
【0059】
特定の実施形態では、シランで官能化された粒子は第1のラテックス層に化学的に結合される。第1のラテックス層で覆われた成形具は、調合された粒子懸濁液に浸漬される。粒子は、ラテックスに接着する。接着は、シラン被覆粒子の疎水性によって増加される。続いて、粒子の外側表面上の官能基は、成形具を覆うラテックス及び粒子を水酸化ナトリウム溶液(1moll
-1)に浸漬することで除去される。溶液から粒子で覆われた表面を除去するのに、それは洗浄溶液に浸漬され、それは水若しくはエタノール又はその混合物であり得る。同様に処理されたラテックス表面を有するサンプルが
図6に示される。結果として、シリカ粒子表面はSi-O-H基で覆われ、したがって外側上のそれらの親水性を再び獲得する。粒子の外側表面の官能化は消去される。第2のラテックス分散液に浸漬する場合、第2のラテックス層への粒子の粘着及び接着が防止される。その結果、第1のラテックス層へ結合された粒子を有する多層カバーがもたらされる。
【0060】
特定の実施形態では、多官能化粒子は、第1又は第2のラテックス層(内側及び/又は外側)に化学的に結合される。粒子は、内側(中間)の層に面するラテックスの面に結合される。第1のラテックス層で覆われる成形具は、調製された粒子懸濁液に浸漬される。それらの親水性の官能化により、粒子は濡れ性に関して表面を最適化する。そのように、よい穿孔表示が保証される。処理されたラテックス表面に関し、水との接触角が
図10に示される。接触角<90°は、穿孔表示が働くのに必要とされ;より小さな接触角<45°が望ましい。合理的な時間内に実行する穿孔表示のために、前記接触角は少しの時間、すなわち10s以内に達成されることになっている。
【0061】
特定の実施形態では、シリカ粒子は疎水性基を有するシランを使用する第2のラテックス層と化学的に結合する。特定の実施形態では、これらのシランはトリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン又は7-オクテニルトリメトキシシランである。特定の実施形態では、シリカ粒子は不飽和結合を使用する第2のラテックス層と化学的に結合する。特定の実施形態では、シリカ粒子は化学的付加用のアミン基を含む。
【0062】
特定の実施形態では、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランで被覆された粒子は、追加の工程においてラテックス表面に共有結合で結合される。UV照射を使用することで、5-アジド-2-ニトロ安息香酸n-ヒドロキシスクシンイミドエステルは、ポリイソプレンの不飽和結合に光架橋される。そのような官能化されたポリイソプレンはコーティング粒子に露出され、5-アジド-2-ニトロ安息香酸n-ヒドロキシスクシンイミドエステルとアミン基の間での結合形成をもたらす。
【0063】
要約すると、理想的に浸漬コーティングを介して製造されたエラストマー層によって取り込まれた粒子は、
- ラテックス層への最初の塗布に関して好ましい水懸濁液の中で安定化させられ、
- 浸漬コーティングの間ラテックス層に接着し、
- 次のラテックス浸漬の間に凝固剤として働き、
- 安全を目的としてラテックスに結合し、
- 粒子層内の液体流入を支援し、穿孔表示を可能にする。
【0064】
概略
特定の実施形態では、多層カバーは、その全寸法にわたって均一に広がる100μm~800μmの厚さによって特徴付けられる。
【0065】
あわせて、外側のラテックス層及び内側のラテックス層は、多層カバーの全寸法にわたって均一に広がる少なくとも100μmの厚さを有する。特定の実施形態では、外側及び内側のラテックス層は、全寸法にわたって均一に広がる50μmの厚さによって特徴付けられる。特定の実施形態では、外側及び内側のラテックス層は、両方ともその全寸法にわたって均一に広がる、30μm~70μm、具体的には40μm~60μmの厚さによって特徴付けられ、その上、あわせてそれらは少なくとも100μmの厚さを示す。特定の実施形態では、外側のラテックス層はその全寸法にわたって均一に広がる40μmの厚さによって特徴付けられ、内側のラテックス層はその全寸法にわたって均一に広がる60μmの厚さによって特徴付けられる。特定の実施形態では、外側のラテックス層は、その全寸法にわたって均一に広がる60μmの厚さによって特徴付けられ、内側のラテックス層はその全寸法にわたって均一に広がる40μmの厚さによって特徴付けられる。
【0066】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、外側のラテックス層は、その全寸法にわたって均一に広がる100μm~500μmの厚さによって特徴付けられ、内側のラテックス層はその全寸法にわたって均一に広がる80μm~300μmの厚さによって特徴付けられる。本発明のこの態様の特定の実施形態では、外側のラテックス層は、その全寸法にわたって均一に広がるおよそ200μmの厚さによって特徴付けられ、内側のラテックス層はその全寸法にわたって均一に広がるおよそ100μmの厚さによって特徴付けられる。
【0067】
本発明の範囲内で、ラテックスカバーが手袋である例において、先端又は母指球(親指の根元の領域)を有する又は有しない指の表面の内側及び外側のような特定の位置及び/又は手のひらで強化されるラテックスカバーもある。これらの位置において、ラテックス層の厚さ、特に外側のラテックス層では、ラテックスカバーの残りの寸法にわたって広がる厚さを超過し得る。特定の実施形態では、これらの強化された領域の厚さは、他の部分における厚さのおよそ1.5倍である。特定の実施形態では、これらの強化された領域の厚さは、他の部分における厚さのおよそ2倍である。特定の実施形態では、特定の位置で厚さを増加させることは、ラテックス溶液の追加量の局所塗布によって実現される。特定の実施形態では、厚さの増加は、前記第1の(又は前記第2の)凝固剤液体よりも高濃度の凝固剤を有する凝固液体の局所塗布によって実現され、それはより厚いラテックス層を形成させる(ダイアグラムAと比較して)。凝固剤溶液の塗布は、浸漬工程において及び薄い織物/ブラシを用いて塗布又は除去されることが可能である。
【0068】
特定の実施形態では、外層及び内側のラテックス層は離散的領域で凝集させられる。特定の実施形態では、離散的領域は、各指先の1mm2~5cm2の領域である。特定の実施形態では、離散的領域は、各指先の4mm2~2.5cm2の領域である。特定の実施形態では、離散的領域は、各指先の9mm2~1cm2の領域である。特定の実施形態では、離散的領域は、各指先のおよそ25mm2の領域である。
【0069】
特定の実施形態では、離散的領域は、手袋のサイズ、ロット番号、生産又は有効期限の日付、官庁のラベル又は会社のロゴを示すようなパターン、記号、文字又は数を形成する。
【0070】
特定の実施形態では、中間層は複数の層からなる。中間層の内部の複数の層は、粒子層及びラテックス層の対を含む。粒子層は、疎水性基からなる化合物を用いて化学的に官能化された粒子を含む。それらの官能化の前に、粒子は平均粒径≦100μm及び露出されたOH基からなる表面を有する。
【0071】
特定の実施形態では、中間層は前項において述べられているような複数の二重層からなり、内側のラテックス層又は中間層の内側のラテックス層及び隣接するラテックス層は意図的に穿孔される。これは、水性液体を吸収可能なリザーバをもたらす。多層カバーが手袋である場合、穿孔された内側のラテックス層は、毛管作用によって湿気(例えば汗)が肌から手袋の中間層に輸送されることができるという利点がある。これは、手袋の滑りを防止し、したがって手袋を使用する間に行われる全ての動作のグリップ保証及び安全性を改善する。当業者は、手袋が粒子を含む中間層によって分離された2つの損傷のないラテックス層を含む場合、そのような手袋のみが穿孔表示機能を有することを知っている。
【0072】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、多層カバーは破損表示の手段を含む(破損表示機能)。破損表示機能は、ラテックス層の1つ、通常は外層に穿孔がある多層カバーの使用者(例えば本発明による二重層ラテックス手袋を着用している人)に通知する。非限定的な例の方法により、破損表示機能は、1つの層の穿孔の後に外側と内側のラテックス層の間の毛管作用によって引き起こされることができる。破損の発生は、可視効果(上述された外側及び内側のラテックス層の凝集)又は音響信号(RFID技術によって可能にされる、下記参照)の形式で通信されることができる。
【0073】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、多層カバーは、位置検出の手段を含む。位置検出の手段は、多層カバーが既定の範囲外に位置する場合、多層カバーの使用者(例えば本発明による二重層ラテックス手袋を着用している人)に通知する。これは、音響信号の形式で通信されることができる(RFID技術によって可能にされる、下記参照)。
【0074】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、中間層はRFID(無線周波数識別)タグからなる。本明細書の文脈において、RFIDタグは、対象物(タグが付けられている)に関する情報を、電磁場を使用するRFIDリーダに提供することができる装置である。RFIDリーダは、タグを問い合せるようにコードされた無線信号を送信する。RFIDタグはメッセージを受信し、その識別及び固有情報で応答する。本明細書の文脈において、RFIDタグは、外側のラテックス層の穿孔についての情報を得るのに使用されることができる(破損表示機能)。タグは、保護ラテックスカバーの位置についての情報を得るために使用することもできる。これは、特定のラテックスカバー(例えば、手術中に使用される手術用手袋)が、特定の領域(例えば無菌ゾーン)を離れることができない場合において重要である。ユーザは、音響信号によって位置の変化又は穿孔に関して通知されることができる。これは、視覚的信号が気付かれにくい場合(例えば、汚れた手袋)に利点であり得る。
【0075】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、前記外層及び前記内側のラテックス層は離散的領域、具体的には、各指先のおよそ25mm2の領域で凝集させられる。
【0076】
手袋
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による多層カバーを含む又はそれらから本質的になる手袋を提供する。
【0077】
方法
第3の態様によれば、本発明は、多層カバーを生産する方法を提供する。方法は、以下の工程を含む:
【0078】
a.成形具を提供する工程。成形具は生産されるラテックスカバーの反対であり、後者が実際に使用される場合、ラテックスカバーによって覆われる対象物又は体の部位の形に似ている。特定の実施形態では、成形具は施釉した又は素焼きのセラミックで作製される。
【0079】
b.成形具を第1の凝固剤液体中に浸漬深さd
1まで浸漬し、そして、成形具を引き上げ乾燥する工程。浸漬工程の間の異なる浸漬深さは、
図1で説明される。
【0080】
c.成形具を第1のラテックス分散液に浸漬深さd
2まで浸漬し、そして、成形具を引き上げ乾燥する工程。この工程は、第1のラテックスで覆われた成形具を産出する。この工程において確立されたラテックス層は、第1のラテックス層である(
図2:3)。
【0081】
d.化学的に官能化された粒子を第1のラテックスで覆われた成形具に浸漬深さd3まで塗布する工程。この工程は、粒子で処理された成形具を産出する。粒子は、疎水性基を含む化合物を用いて化学的に官能化される。
官能化されていない状態で、粒子は以下に特徴付けられる。
- 平均粒径≦100μm
- 露出したOH基を含む表面。
特定の実施形態では、ラテックスで覆われた成形具は、官能化された粒子の懸濁液に浸漬深さd3まで浸漬され、そして、引き上げられ乾燥される。特定の実施形態では、ラテックスに覆われた成形具は、続いて2以上の異なる粒子懸濁液に浸漬深さd3まで浸漬され、そして、引き上げられ乾燥される。これらの異なる粒子懸濁液は、各々異なる物質及び/若しくはサイズの粒子、又はさまざまな基で官能化された粒子を含んでよい。特定の実施形態では、粒子の懸濁液は水又はエタノール又は水とエタノールの混合物において9.4%(v/v)の粒子を含む。特定の実施形態では、粒子の懸濁液における浸漬は、室温で1~10秒間、具体的には2~3秒間実行される。
特定の実施形態では、懸濁液における浸漬工程は、中間加熱を用い又は用いずに繰り返される。
特定の実施形態では、ラテックスで覆われた成形具は、第2の凝固剤液体に浸漬深さd3まで浸漬され、そして引き上げられ、粒子は浸漬された表面に塗布され、粒子で処理された成形具は乾燥される。
【0082】
e.粒子で処理された成形具を第2のラテックス分散液に浸漬深さd
4まで浸漬し、そして粒子で処理された成形具を引き上げ、乾燥する工程。この工程は、第2のラテックスで覆われた成形具を産出する。この工程で確立されたラテックス層は、第2のラテックス層である(
図2:5)。
浸漬工程の間の浸漬深さは、d
1≧d
2>d
3及びd
1≧d
4>d
3(
図1)として指定される。
d
1≧d
2:第1のラテックス分散液に浸漬される全成形具の表面は、第1の凝固剤液体を用いてあらかじめ処理される。これは、ラテックスの均質な硬化を支援し、(凝固剤溶液は成形具の剥離剤を含むので)成形具からの多層カバーの容易な(将来の)除去を保証する。
d
2>d
3及びd
4>d
3:第1のラテックス層部分のみが、シリカ粒子で処理される。全第1のラテックス層(処理された領域と処理されていない領域を含む)は、第2のラテックス分散液に浸漬される。処理された領域において、第1及び第2のラテックス層の凝集は防止され、2つの別のラテックス層がもたらされる(
図2の下の円)。処理されていない領域において、第1及び第2のラテックス層は凝集し、第1のラテックス層を形成する(
図2の上の円)。
縁部は、d
2、d
3及びd
4の浸漬深さによって定義される。d
2=d
4の場合、縁部は凝集層のみからなる。凝集及び分離された領域も、
図4で説明される。
d
2>d
4の場合、第1のラテックス分散液における浸漬により、前記縁部は単一ラテックス層によって拡張される。d
2<d
4の場合、第2のラテックス分散液における浸漬により、前記縁部は単一ラテックス層によって拡張される。d
2≠d
4の場合、前記単一のラテックス層はそれぞれ分散液の色を有する。
【0083】
f.第2のラテックスで覆われた成形具にコーティングを塗布し、コーティングされた成形具を産出する工程。この工程は、当該方法によって生産されるラテックスカバーの容易な着用を可能にする。非限定的な例の方法によって、この工程は、タルク粉を塗布する、でんぷんを塗布する、ポリマーでコーティングする又は穏やかに塩素処理する工程を実行する、から選択される手順を含む。ポリマーを用いたコーティングは、ラテックスカバーを滑りやすくする薄いポリマー層を付加することを含む。塩素処理は、ラテックスをより頑丈で滑らかにするように、第2のラテックスで覆われた成形具の塩素(塩酸混合物として又は塩素ガスとして)への露出を含む。
【0084】
g.コーティングされた成形具から塗布された層を除去し、それによって第1のラテックス層を外側のラテックス層に及び第2のラテックス層を内側のラテックス層にする工程。この工程は、本発明によって多層カバーを産出する。
【0085】
特定の実施形態では、粒子は2~5/nm2の密度を有する露出されたOH基を含む表面によって特徴付けられる。特定の実施形態では、粒子は2.2~2.5/nm2の密度を有する露出されたOH基を含む表面によって特徴付けられる。
【0086】
特定の実施形態では、工程dは、第1のラテックスで覆われた成形具を、化学的に官能化された粒子を含む水懸濁液に浸漬深さd3まで浸漬することによって達成される。特定の実施形態では、水懸濁液中の化学的に官能化された粒子の濃度は、0.5mol %である。
【0087】
特定の実施形態では、化学的に官能化された粒子は、工程dにおいて、1:20より少ないラテックス分散液の懸濁液の体積比を有するラテックス分散液を付加することによって0.2及び7mol/L、具体的には1mol/Lの濃度を有する水懸濁液から塗布される。粒子懸濁液の一部であるラテックスは、浸漬工程の間に粒子の接着を促進することを援助できる。
【0088】
特定の実施形態では、工程b、c及びeにおいて、浸漬は各々5~10分間、50℃~70℃の間の温度で実行される。特定の実施形態では、浸漬は各々5~10分間、およそ60℃で実行される。
【0089】
特定の実施形態では、乾燥する工程は60℃~80℃のオーブンの中で2~20分間乾燥する工程を含む。特定の実施形態では、乾燥する工程は、5~15分間実行される。特定の実施形態では、乾燥する工程は、およそ10分間実行される。
【0090】
特定の実施形態では、ラテックスカバーが塩素に露出される塩素処理工程は、成形具からの多層カバーの除去の後に実行される。この工程において、凝固剤液体の残留物は、ラテックスカバーの外側の表面から除去され、外側の表面が滑らかになる。
【0091】
特定の実施形態では、成形具は手形である。
【0092】
特定の実施形態では、成形具は工程bの前におよそ60℃にあらかじめ温められる。
【0093】
特定の実施形態では、粒子はそれらの塗布の前におよそ60℃にあらかじめ温められる。
【0094】
特定の実施形態では、凝固剤液体は、凝固剤として塩化ナトリウムを含む。特定の実施形態では、凝固剤液体は、凝固剤として酢酸、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、ギ酸、硝酸亜鉛又はそれらの混合物を含む。
【0095】
特定の実施形態では、凝固剤液体は、Ca(NO3)2水溶液である。特定の実施形態では、凝固剤液体はNaCl水溶液である。特定の実施形態では、凝固剤液体はNa2CO3水溶液である。特定の実施形態では、凝固剤液体はKNaC4H4O6水溶液である。特定の実施形態では、凝固剤液体はMgSO4水溶液である。
【0096】
本明細書の文脈において、硝酸カルシウム及び炭酸カルシウムの濃度は、%(v/v)で与えられる。(Ca(NO3)2
*4H2O又はCaCO3)で計量された物質の重量は、物質の濃度を考慮に入れた体積に変換される。
【0097】
特定の実施形態では、凝固剤液体中の硝酸カルシウムの濃度は、0.14%~18.3%(v/v(Ca(NO3)2
*4H2O又はCaCO3に基づいて計算されるカルシウム部分))に及ぶ。これは、およそ10mmol/l~およそ1.4mol/lの濃度範囲と等しい。特定の実施形態では、Ca(NO3)2
*4H2Oの濃度は、0.5%~3%(v/v)に及ぶ。特定の実施形態では、Ca(NO3)2
*4H2Oの濃度は、およそ2.3%である。発明者は、2.3%(v/v)の硝酸カルシウム濃度が望ましいことを実証した。
【0098】
特定の実施形態では、凝固剤液体は成形具の剥離剤を含む。本明細書の文脈における用語「成形具の剥離剤」は、ラテックスを取り外せないように成形具に接着するのを防ぎ、生産工程の終わりに成形具から多層カバーの除去を可能にする/促進する物質を指す。成形具の剥離剤は、成形具からの除去後、保護ラテックスカバーの凝集も防ぐ。
【0099】
特定の実施形態では、成形具の剥離剤は炭酸マグネシウムである。特定の実施形態では、成形具の剥離剤は塩化ナトリウムである。特定の実施形態では、成形具の剥離剤はポリジメチルシロキサンである。特定の実施形態では、成形具の剥離剤はジエチルポリシロキサンを修飾されたポリアルキレンオキシドである。特定の実施形態では、成形具の剥離剤はステアリン酸又はステアリン酸塩である。特定の実施形態では、成形具の剥離剤は、脂肪酸、金属酸化物、具体的には酸化亜鉛、エチレン、具体的にはエチレンビスオレアミド、グリコール、具体的にはポリエチレングリコール及びポリアルキレングリコール、アルキルホスフェートのアンモニウム塩、ポリエチレン、グリセリン、非晶質ポリプロピレン及び分岐のないアルコールから選択される。
【0100】
特定の実施形態では、成形具の剥離剤は炭酸カルシウムである。特定の実施形態では、凝固剤液体中の炭酸カルシウムの濃度はおよそ10%(v/v)である。これは、およそ2.7mol/lの濃度と等しい。特定の実施形態では、炭酸カルシウムは平均粒径<30μmを有する炭酸カルシウム粒子の形である。
【0101】
特定の実施形態では、第1及び第2のラテックス分散液は、25%~70%ラテックスを含む。ラテックスは、天然又は合成ラテックスであってよい。
【0102】
特定の実施形態では、第2のラテックス分散液のラテックス含有量は、第1のラテックス分散液のラテックス含有量より少ない。これは、第1のラテックス層より薄い第2のラテックス層をもたらす。特定の実施形態では、第1のラテックス分散液はおよそ60%(v/v)のラテックスを含み、第2のラテックス分散液はおよそ30%(v/v)のラテックスを含む。概略として、高いラテックス濃度を有するラテックス分散液の使用は、第1及び第2の層のよりよい分離をもたらす。工程c及びfが繰り返される、すなわち、2~3回実行される場合、ラテックス濃度は、上記のものより低くなり得る。工程cが2回繰り返される場合、第1のラテックス分散液は30%(v/v)まで低くなり得る。工程cが3回繰り返される場合、第1のラテックス分散液は20%(v/v)まで低くなり得る。工程fが2回繰り返される場合、第2のラテックス分散液は15%(v/v)まで低くなり得る。工程cが3回繰り返される場合、第2のラテックス分散液は10%(v/v)まで低くなり得る。
【0103】
特定の実施形態では、第1及び第2のラテックス分散液は、0.2%~5%(v/v)のNH3を含む。特定の実施形態では、第1及び第2のラテックス分散液は、およそ3%(v/v)のNH3を含む。
【0104】
特定の実施形態では、第2のラテックス分散液は着色剤を含む。特定の実施形態では、第1のラテックス分散液は着色剤を含む。特定の実施形態では、着色剤はUranin又はHeliogen Blueである。本明細書の文脈における用語「Uranin」は、フルオレセイン化合物のジナトリウム塩形態(フルオレセインのCAS No.:2321-07-5)を指す。Uraninは、「D&Cイエロー8」としても知られている。本明細書の文脈における用語「Heliogen Blue」は、分子式C32H16CuN8
-4(PubChem CID:54609463)によって特定される化合物に基づく着色剤を指す。そのような着色剤の非限定的な例は、Heliogen Blue 7560、Heliogen Blue 7800、Heliogen Blue D 7490、Heliogen Blue D 7560、Heliogen Blue D 7565、Heliogen Blue G、Heliogen Blue L 7460、Heliogen Blue L 7560及びHeliogen Blue LGである。
【0105】
穿孔が外側のラテックス層に生じる場合、例えば湿潤環境から又は周囲の大気から広まる湿気は穿孔を介して進入し、外側及び内側のラテックス層の間に蓄積するだろう、言い換えれば、水/湿気は中間(粒子)層に蓄積するだろう。毛管作用によって、外側及び内側のラテックス層は明白に凝集/固着し、知覚される色は内層のそれになるだろう。外側及び内側のラテックス層の間のコントラストが高い場合、この可視効果はより目立つ。破損表示機能が望まれる例において、外側及び/又は内側のラテックス層並びに/若しくは粒子において着色剤を含むことは、したがって、有益である。破損表示機能が望まれる例において、内側と外側両方のラテックス層は最初は液体及び大気不浸透性でなければならず、例えば偶然又は不正によって穿孔される場合、初めて浸透性になることが当業者には明白である。
【0106】
特定の実施形態では、第1及び第2のラテックス分散液は加硫システムを含む。加硫システムの追加は、ラテックスの硬化を改善し、ラテックスの将来の劣化の可能性からの保護を提供する。加硫中に、ラテックスは個々のポリマー鎖間の架橋の形成によって修飾される。特定の実施形態では、加硫システムは硫黄硬化システムである。特定の実施形態では、加硫システムは、硫黄、酸化亜鉛、防腐剤及び酸化防止剤を含む。加硫システムが使用される例では、加硫工程は、工程eにおける第2のラテックス分散液からの粒子処理された成形具の引き上げに続いて実行される。加硫工程は、120℃~200℃の間、具体的にはおよそ140℃の温度で実行される。
【0107】
本発明の代替態様は上述された方法に関するものであって、第2のラテックス分散液は泡を含み、したがって、穿孔された第2/内側のラテックス層を産出する。穿孔された内側のラテックス層が望まれる例において、毛管作用に依存する破損表示機能はもはや可能ではないことが当業者にとって明白である。
【0108】
代わりに、上に概説されるような方法が実施され、第3のラテックス層が付加される。特定の実施形態では、第3のラテックス層は泡を含むラテックス溶液を使用して塗布される。
【0109】
特定の実施形態では、方法は工程fの前に、工程eの次に追加の工程e2及びe3を含む:
e2.第2のラテックスに覆われた成形具を凝固剤液体に浸漬深さd3まで浸漬し、第2のラテックスに覆われた成形具を引き上げ乾燥する工程。
e3.第2のラテックスに覆われた成形具を、泡を含む第3のラテックス分散液に浸漬深さd2まで浸漬し、第2のラテックスに覆われた成形具を引き上げ乾燥し、第3のラテックスに覆われた成形具を産出する工程。
【0110】
これらの例では、方法は、多層ラテックスカバーを産出し、それは穿孔された内側のラテックス層及び穿孔されていない中間及び外側のラテックス層を含み、後者2つは破損表示機能を支援する。工程fでは、単語「第2」は「第3」に取り替えられる。
【0111】
特定の実施形態では、工程d及びeは数回繰り返され、3以上のラテックス層を有する多層ラテックスカバーを産出する。内側のラテックス層若しくは内側のラテックス層及び隣接するラテックス層は、意図的に穿孔され得る。
【0112】
特定の実施形態では、方法は工程eの前、工程dの次に工程d2を含み、工程d2は前記粒子から(及び、第2の凝固剤液体が使用された場合、前記第2の凝固剤液体又はその乾燥された残余物から)離散的領域の洗浄/色抜きの工程を含む。
【0113】
特定の実施形態では、第1のラテックス浸漬工程の後、接着カバーが成形具に塗布され、カバーする離散的領域及び前記接着カバーが粒子の塗布の後に剥離される。
【0114】
両方のアプローチは、粒子のない離散的領域、例えば指先をもたらす。
【0115】
粒子のない離散的領域は、局所的にラテックス層の分離を回避し、ラテックス層はこれらの離散的領域で凝集する(
図6)。層の凝集は滑りを防ぎ、手袋を着用している人の触覚を改善する。
【0116】
特定の実施形態では、離散的領域は、各指先の1mm2~5cm2の領域である。特定の実施形態では、離散的領域は、各指先の4mm2~2.5cm2の領域である。特定の実施形態では、離散的領域は、各指先の9mm2~1cm2の領域である。特定の実施形態では、離散的領域は、各指先の領域である。特定の実施形態では、離散的領域は、各指先のおよそ25mm2の領域である。
【0117】
特定の実施形態では、離散的領域はパターン、記号、文字又は数を形成する。
【0118】
特定の実施形態では、第1及び第2のラテックス分散液並びに化学的に官能化された粒子は、加硫システムを含む。工程eにおいて、第2のラテックス分散液からの粒子で処理された成形具の引き上げに続く加硫システムは、100℃~200℃の間の温度、具体的にはおよそ140℃で実行される。
【0119】
特定の実施形態では、工程d及びeは数回繰り返され、2を超えるラテックス層を有する多層ラテックスカバーを産出する。
【0120】
特定の実施形態では、シリカ粒子は粒子として、特に成形具の具体的な実施形態として以前に与えられたサイズ範囲で使用される。
【0121】
特定の実施形態では、粒子は、7-オクテニルトリメトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、アリルトリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、3-トリメトキシシリルプロパン-1-チオール、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン及び3-N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドから選択される化合物の表面への共有結合によって官能化される。
【0122】
特定の実施形態では、粒子は、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド及び3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランから選択される第2の化合物の共有結合によってさらに官能化される。
【0123】
当業者は、反応条件に依存して、OH部分を含むシリカ(又は他の固体)粒子表面に、主に単結合であるが二重結合又は三重結合でさえ言及されるシランを形成するだろうと理解する。
【0124】
単一分離可能な特性の代案がここで「実施形態」として挙げられる場合、ここで開示される発明の不連続な実施形態を形成するのに、そのような代案は自由に組み合わせられて良いことが理解される。
【0125】
その発明は、次の例及び図によってさらに説明され、さらなる実施形態及び効果が描かれ得る。これらの例は、発明を説明するのが目的であり、その範囲を制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【
図1】
図1は、浸漬工程の間の浸漬深さを示す。1:成形具、2:第1の凝固剤液体、3:第1のラテックス分散液/第1のラテックス層、4:粒子懸濁液、5:第2のラテックス分散液/第2のラテックス層、d
1-d
4:浸漬深さ。
【
図2】
図2は、浸漬工程の終わりでの成形具上の二重層ラテックス手袋を示す。手袋の異なる層は、左の円の中で示される。1:成形具、2:凝固剤層、3:第1のラテックス層、4:粒子層、5:第2のラテックス層。上の円は、第1及び第2のラテックス層が凝集させられる手袋の領域を示す。下の円は第1及び第2のラテックス層が分離される手袋の領域を示す。
【
図3】
図3は、内側と外側のラテックス層の間に位置するシリカ粒子を示す。粒子は、内側のラテックス層に固定される。
【
図4A】
図4A~Bは、二重層の指サックを示す。矢印は、凝集及び分離された領域(A)並びに切断面(外及び内層、B)を示す。
【
図4B】
図4A~Bは、二重層の指サックを示す。矢印は、凝集及び分離された領域(A)並びに切断面(外及び内層、B)を示す。
【
図5】
図5はラテックス層を示し、それは官能化されたシリカ粒子で浸漬-コーティングされ、水-エタノール混合物で洗浄された。粒子はラテックス層に接着する。この状態は、層の1つに化学的に結合された粒子を用いる二重層システムの生産に関する中間工程である。その後、この成形ブランクは、第2のラテックス分散液に浸漬され、乾燥及び加硫される工程によってさらに処理される。
【
図6】
図6は、凝集させられた指先を有する二重層の指サックを示す。
【
図8】
図8は、i)トリエトキシビニルシラン(VTES)及びPEG2000で官能化されたシリカ粒子及びii)VTESのみを有するシリカ粒子の拡散反射率赤外線フーリエ変換分光法(KBrペレット剤中)を使用して測定された赤外スペクトルを示す。VTES(灰色)及びPEG2000(白)のバンドがIRスペクトルの中でマークされる。
【
図9A】
図9A~Cは、2つの天然ゴム層及び官能化されたシリカ粒子の中間層を含む浸漬-コーティングされた多層カバーを示す。VTES+PEG2000で官能化されたシリカ粒子からなるカバーに示される水滴(穿孔の後2s、10s、20s、30s、40s、50s、60s、120s、180s)の時間依存的流入。
【
図9B】
図9A~Cは、2つの天然ゴム層及び官能化されたシリカ粒子の中間層を含む浸漬-コーティングされた多層カバーを示す。シリカ粒子(トリエトキシビニルシラン(VTES)+PEG2000、VTES、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES))の表面官能化に依存する穿孔表示有効性(PIE、経時的に色の変化する有効面積)。
【
図9C】
図9A~Cは、2つの天然ゴム層及び官能化されたシリカ粒子の中間層を含む浸漬-コーティングされた多層カバーを示す。VTES+PEG2000、VTES及びAPTESで官能化されたシリカ粒子の外層(1)、内層(2)及び中間層を示すカバーの断面の光学顕微鏡イメージ。
【
図10】
図10は、官能化されたシリカ粒子トリエトキシビニルシラン(VTES)+PEG2000、VTES、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)でカバーされた天然ゴム表面上の水滴を例示的に示し、シリカ粒子の表面官能化に依存する接触角をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0127】
実施例1A:硝酸カルシウム濃度の最適化(図7A)
単一ラテックス層の厚さでの硝酸カルシウム濃度[%(v/v)、Ca(NO
3)
2
*4H
2Oに基づいて計算された]の効果が分析された。ラテックス:60%(v/v);炭酸カルシウム:10%(v/v)。
【0128】
実施例1B:炭酸カルシウム濃度の最適化(図7B)
単一ラテックス層の厚さでの炭酸カルシウム濃度[%(v/v)]の効果が分析された。ラテックス:60%(v/v);硝酸カルシウム:2.3%(v/v)。
【0129】
実施例1C:ラテックス分散液の最適化(図7C)
単一ラテックス層の厚さでラテックス濃度[%(v/v)]の効果が分析された。炭酸カルシウム:10%(v/v);硝酸カルシウム:2.3%(v/v)。
【0130】
発明による手袋生産用標準プロトコル
1)例として、剥離剤溶液を有する凝固剤:
- 1.5lの水
- 110gの硝酸カルシウム
- 600gの炭酸カルシウム(CaCO3)
2)ラテックス1濃度:30%
3)シリカ粒子懸濁液
4)ラテックス2濃度:60%
【0131】
シランを用いた粒子官能化
(例として、1gの粒子及びシランとしてトリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シランが記載される)
1.シリカ粒子は、30mlのエタノール及び30mlのNaOH溶液(1moll-1)で懸濁され、超音波によって処理される。
2.10mlのエタノール、10mlのNaOH溶液(1moll-1)及び5mlのシランが加えられる。
3.溶液は室温で2時間攪拌される。
4.粒子は遠心分離機にかけられ、エタノールで2回洗浄される。
5.懸濁液は30℃で12時間乾燥される。
6.粒子は、機械的に処理され(threated)粉末を得る。
7.粒子は、70%水及び30%アルコールの混合物で懸濁される。
【0132】
PEG又はシランのいずれかを用いた粒子官能化
SiO2粒子は水の中で懸濁され、適正量のシラン又はPEGと混合される。pHは9~10に調節され、懸濁液は75℃で約2~4時間攪拌される。そして、分散液は75℃で数時間乾燥され溶媒を除去する。そして粉末は各々H2O及びEtOHで2回洗浄され、遠心分離機にかけられる。生じる粒子は、75℃で数時間乾燥され最終生成物を得る。
【0133】
PEG及びシランを用いた粒子官能化
PEGとして、PEG200、PEG2000、PEG10000、PEG20000、その他は使用された。シランとして、下記の内の1つが使用された:トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、アリルトリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、3-トリメトキシシリルプロパン-1-チオール、3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド)。
【0134】
反応は、以下のように実行された:
対応するシランの量(10mol%又はそれ以上)が、シリカ粒子のH2O/EtOH(1:1 v/v)懸濁液に添加された。pHを9~10に調節した後(NaOH又はNH4OH)、懸濁液は5分間攪拌された。その後、PEG(10~70mol%)が添加され、反応混合物はPEGが溶解されるまで攪拌された。混合物は、そして、75℃で8時間攪拌された。溶媒を除去した後、粒子がH2O及びEtOHで数回洗浄され未反応化合物を除去された。そして、粒子は70℃で24時間乾燥され最終生成物を得た。
【0135】
穿孔表示有効性(PIE)の測定
1.有色の成形具上に、二重層のカバーを置く
2.針で穴を開ける
3.穿孔の上端に水滴を置く(過剰な水)
4.層と平行に少しの機械的圧力を印加することで水の流入を引き起こす(穿孔を変形させる)
5.規定の時間後(穿孔後、2s、10s、20s、30s、40s、50s、60s、120s、180s)、校正用に規定の長さ目盛りとともに写真を撮影する。
6.ソフトウェアImageJ(Schneider,C.A.;Rasband,W.S.;Eliceiri,K.W.(2012),Nature methods 9(7):671-675)を用いて撮影工程で影響を受けた面積を計測することにより、PIEを定量する。層の間であり、ラテックスと成形具の間ではない水のみを必ず考慮する。
【0136】
接触角の測定
接触角は、ステンレススチールからなる32G針を装備するKyowa Dropmeter(DMs-401)を使用して決定される。2.0μlの精製水の水滴は、水平に配置されたサンプル表面上に置かれた(液滴技術)。写真は、水滴の表面への付着後10秒で撮影され評価された。データ収集と分析は、interFAce Measurement及び分析ソフトウェアFAMASにおいて半角法を使用して実行された。
【0137】
材料
Neotex FA:天然ラテックス、十分なアンモニア、天然の関連物質を備えた60%ポリイソプレン
ProChemie-Latex:60%FA、天然の関連物質を備えたポリイソプレン
Vulcanizer:Suprotex L 4204-2,Weserland.eu
炭酸カルシウム(CaCO3),CAS-No.471-34-1,S3-Chemicals
硝酸カルシウムテトラハイドレード(Ca(NO3)2
*4H2O),CAS-No.13477-34-4,S3-Chemicals,98%
タルク粉:diacleanshop,CAS-No.14807-96-6,EG-No.238-877-9
シリカ粒子:Kremer Pigmente,spheric,<50μm
シリカ粒子、ヒュームド、CAS112945-52-5,Sigma Aldrich、0.007μm
シリカ粒子、ヒュームド、CAS112945-52-5 Sigma Aldrich、0.2-0.3μm
シリカ粒子:ヒュームドシリカ OX50 (Aerosil(登録商標)),CAS112945-52-5,(ex 7631-86-9)
トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン,CAS1067-53-4,Sigma Aldrich
アリルトリメトキシシラン,CAS2551-83-9, ABCR
3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン,CAS919-30-2,Sigma Aldrich
ヘキサデシルトリメトキシシラン,CAS16415-12-06,Sigma Aldrich
ビニルトリメトキシシラン,CAS2768-02-7,Sigma Aldrich
トリエトキシビニルシラン,CAS78-08-0,Merck
3-トリメトキシシリルプロパン-1-チオール,CAS4420-74-0,Evonik
ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド,CAS40372-72-3, ABCR
3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン,CAS2530-85-0,ABCR
3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン,CAS65994-07-2,ABCR
N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド,CAS104275-58-3,ABCR
Heliogen(登録商標) Blue:Kremer Pigmente,青色顔料
Uranin:Kremer Pigmente,黄色顔料
PEG 200,PEG 2000,PEG 10000,PEG 20000,CAS25322-68-3,Carl Roth