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特許7012112保護シート自動剥離装置および保護シート自動剥離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】保護シート自動剥離装置および保護シート自動剥離方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 41/00 20060101AFI20220120BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B65H41/00 B
B29C70/54
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020063251
(22)【出願日】2020-03-31
(62)【分割の表示】P 2019534430の分割
【原出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020109046
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2018039128
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232645
【氏名又は名称】日本飛行機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(72)【発明者】
【氏名】吉▲崎▼理沙
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津武人
(72)【発明者】
【氏名】地西徹
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-125285(JP,A)
【文献】特開2005-298140(JP,A)
【文献】特開2001-328039(JP,A)
【文献】特開2008-285325(JP,A)
【文献】実開昭61-197056(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 41/00
B29C 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護シートが貼り付けられているプリプレグシートが供給される配膳部と、
前記プリプレグシートを進行方向に送り出すプリプレグシート搬送部と、
前記プリプレグシートの先端位置が所定位置まで送り出されたことを検出する先端位置検出部と、
前記プリプレグシートまたは/および前記保護シートにエアを噴射するエア噴射部と、
前記エア噴射部のエアにより剥離した保護シートを把持しつつ、前記進行方向と逆方向に送り出す保護シート把持・搬送部と、
前記保護シートが剥離され、進行方向に送り出されたプリプレグシートを取り出す取り出し部と、
前記各部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記配膳部にある保護シートが貼り付けられているプリプレグシートを、前記プリプレグシート搬送部に、送り出させる処理と、
前記先端位置検出部に、プリプレグシート先端位置が剥離開始位置まで送り出されたことを検出させ、検出すると前記プリプレグシート搬送部の送り出しを停止させる処理と、
前記エア噴射部に、前記プリプレグシート端面に沿って正面から第1エアを噴射させる処理と、
前記エア噴射部に、前記保護シートの剥離境界に向けて第2エアを噴射させる処理と、
を含む処理を実行する
ことを特徴とする保護シート自動剥離装置。
【請求項2】
前記エア噴射部は、前記第1エアを噴射する第1噴射機構と、前記第2エアを噴射する第2噴射機構とを有し、
前記第1噴射機構は、剥離開始位置にある前記プリプレグシート端面正面に、設置・撤去自在に設けられ、
前記第2噴射機構は、前記保護シートの剥離境界に向けて噴射可能である
ことを特徴とする請求項1記載の保護シート自動剥離装置。
【請求項3】
保護シート自動剥離装置を用い、
保護シートが貼り付けられているプリプレグシートの先端を剥離開始位置に設置する工程と、
前記プリプレグシート端面に沿って正面から第1エアを噴射する工程と、
前記保護シートの剥離境界に向けて第2エアを噴射する工程と、
前記第2エアにより剥離した保護シートを把持する工程と、
前記プリプレグシートを進行方向に送り出しながら、前記把持された保護シートを前記進行方向と逆方向に送り出しつつ、前記保護シートの剥離境界に向けて第2エアと同方向のエアを噴射する工程と、
前記保護シートが剥離され、進行方向に送り出されたプリプレグシートを取り出す工程と、
を備えることを特徴とする保護シート自動剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック(FRP)の成形技術に関し、特に、プリプレグシートから保護シートを剥離する剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリプレグは炭素繊維等の補強材に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させたものである。シート状に形成される。未硬化であると粘性があり、取扱いが難しい。そのため、プリプレグシートには両面に保護シートが貼られている。
【0003】
ところで、特許文献1には、プリプレグシートを自動積層して積層体を形成する積層装置を含むFRP成形システムが提案されている。
【0004】
特許文献1における積層装置の上流側には剥離装置が配置され、剥離装置により保護シートが剥がされたプリプレグシートが、積層装置に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-125285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、積層装置の詳細構成が開示されている一方、剥離装置の具体的構成は開示されていない。積層装置のみが自動化されても、剥離装置の自動化が不充分な場合、システム全体として十分に機能しない。
【0007】
なお、剥離装置の自動化が不充分な場合、作業員による手作業で保護シートを剥す必要がある。手作業での保護シート剥離動作では、手作業による製造コストの上昇、作業者の違いによる品質のばらつき(たとえばプリプレグシートに皺やヨリ発生)、剥離作業と積層装置への搬送作業との分離による作業時間の増加等の課題がある。
【0008】
本願発明は上記課題を解決するものであり、自動化可能な剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の剥離装置は、プリプレグシートに貼られている保護シートを剥離する。保護シートが貼り付けられているプリプレグシートが供給される配膳部と、前記プリプレグシートを進行方向に送り出すプリプレグシート搬送部と、前記プリプレグシートの先端位置が所定位置まで送り出されたことを検出する先端位置検出部と、前記プリプレグシートまたは/および前記保護シートにエアを噴射するエア噴射部と、前記エア噴射部のエアにより剥離した保護シートを把持しつつ、前記進行方向と逆方向に送り出す保護シート把持・搬送部と、前記保護シートが剥離され、進行方向に送り出されたプリプレグシートを取り出す取り出し部と、前記各部を制御する制御部と、を備える。
【0010】
上記各構成により剥離装置の自動化を図ることができる。
【0011】
上記発明において、好ましくは、前記制御部は、前記配膳部にある保護シートが貼り付けられているプリプレグシートを、前記プリプレグシート搬送部に、送り出させる処理と、前記先端位置検出部に、プリプレグシート先端位置が剥離開始位置まで送り出されたことを検出させ、検出すると前記プリプレグシート搬送部の送り出しを停止させる処理と、前記エア噴射部に、前記プリプレグシート端面に沿って正面から第1エアを噴射させる処理と、前記エア噴射部に、前記保護シートの剥離境界に向けて第2エアを噴射させる処理と、前記エア噴射部に、前記第2エアにより剥離した保護シートに向けて第3エアを噴射させる処理と、前記保護シート把持・搬送部に、前記第3エアにより方向づけられた保護シートを把持させる処理と、前記プリプレグシート搬送部に、プリプレグシートを送り出させながら、前記保護シート把持・搬送部に、保護シートを前記進行方向と逆方向に送り出させつつ、前記エア噴射部に、前記保護シートの剥離境界に向けて第4エアを噴射させる処理と、前記取り出し部に、前記保護シートが剥離され、進行方向に送り出されたプリプレグシートを取り出させる処理とを実行する。
【0012】
上記各制御により剥離装置の自動化を図ることができる。
【0013】
上記発明において、好ましくは、前記エア噴射部は、前記第1エアを噴射する第1噴射機構と、前記第2~4エアを噴射する第2噴射機構とを有し、前記第1噴射機構は、剥離開始位置にある前記プリプレグシート端面正面に、設置・撤去自在に設けられ、前記第2噴射機構は、前記プリプレグシートに向かう方向と離れる方向とに噴射方向を変更自在である。
【0014】
第1噴射機構が第1エアを噴射することにより、保護シート剥離が開始する。第2噴射機構が第2および第4エアを噴射することにより、保護シート剥離が継続する。第2噴射機構が第3エアを噴射することにより、剥離した保護シートが方向づけられる。
【0015】
上記発明において、前記第1噴射機構は、噴射ノズルと、該噴射ノズルに設けられた噴射ガイドとを有し、前記噴射ガイドは、剥離開始位置にある前記プリプレグシート先端を両面から挟むように設置される。
【0016】
噴射ガイドがプリプレグシート先端を両面から挟むことにより、第1エア噴射に伴うプリプレグシート先端のバタツキを抑制できる。
【0017】
上記発明において、前記噴射ガイドは、前記プリプレグシート端面に沿って移動可能であり、中心部に比較して両端側の挟み幅が拡幅している。
【0018】
第1噴射機構がプリプレグシート端面に沿って移動可能とすることにより、第1噴射機構を小型化できる。小型化により、設置・撤去が容易になる。
【0019】
噴射ガイドが拡幅部を有することにより、プリプレグシート先端を噴射ガイドが形成する空間に挿入容易となる。
【0020】
上記課題を解決する本発明の剥離方法では、プリプレグシートに貼られている保護シートを剥離する。保護シート自動剥離装置を用い、保護シートが貼り付けられているプリプレグシートの先端を剥離開始位置に設置する工程と、前記プリプレグシート端面に沿って正面から第1エアを噴射する工程と、前記保護シートの剥離境界に向けて第2エアを噴射する工程と、前記第2エアにより剥離した保護シートに向けて第3エアを噴射する工程と、前記第3エアにより方向づけられた保護シートを把持する工程と、前記プリプレグシートを進行方向に送り出しながら、前記把持された保護シートを前記進行方向と逆方向に送り出しつつ、前記保護シートの剥離境界に向けて第4エアを噴射する工程と、前記保護シートが剥離され、進行方向に送り出されたプリプレグシートを取り出す工程と、を備える。
【0021】
上記各工程により剥離装置の自動化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の剥離装置によれば保護シート剥離動作の自動化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る剥離装置を含むFRP成形システムの概念図
図2】剥離装置の動作概略図および制御フロー図
図3】剥離装置の動作説明図(一時停止)
図4】剥離装置の動作説明図(第1エア噴射)
図5】第1エア噴射概念図
図6】剥離装置の動作説明図(第2エア噴射)
図7】第2エア噴射概念図
図8】剥離装置の動作説明図(第3エア噴射・保護シート把持)
図9】剥離装置の動作説明図(第4エア噴射)
図10】剥離装置の動作説明図(取り出し)
図11】噴射ガイドの一例
図12】噴射機構の変形例
【発明を実施するための形態】
【0024】
~全体構成・剥離装置構成~
図1は、FRP成形システム全体システムの概念図である。全体システムは裁断装置1と剥離装置2と、積層装置3と、ホットドレープ装置4、およびオートクレーブ装置5から構成されている。
【0025】
プリプレグシートは炭素繊維等の補強材に未硬化の樹脂を含浸させシート状に形成したものである。裁断装置1は、プリプレグシートを必要な寸法、形状に裁断する。
【0026】
未硬化のプリプレグシートは粘性を有する。そのため、プリプレグシートには両面に保護シートが貼られている。剥離装置1は裁断後のプリプレグシートから保護シートを剥離する。本発明は剥離装置2にかかるものであり、後で詳述する。
【0027】
保護シートが剥がされたプリプレグシートが順次、積層装置3に引き渡される。自動積層装置3は、プリプレグシートを載置台上に1枚ずつ順次積層し、積層体を形成する。
【0028】
積層体は、ホットドレープ装置4に引き渡される。ホットドレープ装置4は型の形状に合う形状に積層体を賦形する。
【0029】
賦形後の積層体は、型と一緒にバギングされ、オートクレーブ装置5に引き渡される。オートクレーブ装置5はバギングされた積層体を加熱・加圧する。これにより硬化したFRPの部品が作製される。
【0030】
裁断装置1、剥離装置2、積層装置3、ホットドレープ装置4、オートクレーブ装置5の自動化を図ることにより、全体システムの自動化を図ることができる。
【0031】
次に、剥離装置2の構成について説明する。各構成の符号は図3~10記載の動作説明図を参考にする。
【0032】
剥離装置2は、配膳部11と、プリプレグシート搬送部12と、先端位置検出部13と、エア噴射部14,15と、剥離状態検出部16と、保護シート把持・搬送部17,18と、取り出し部19と、制御部20とを備えている。
【0033】
配膳部11には、保護シートが貼り付けられている裁断後のプリプレグシートが供給される。
【0034】
プリプレグシート搬送部12は、配膳部11に供給されたプリプレグシートを進行方向に送り出す。搬送路に沿って配列された複数のローラが回転駆動され、駆動ローラと搬送路途中からプリプレグシートが搬送されることによって従動回転するフリーローラとにより、プリプレグシートは把持される。
【0035】
先端位置検出部13は、プリプレグシート搬送部12の先端付近に設けられている。保護シートが貼り付けられているプリプレグシートが搬送されると、プリプレグシートの先端位置が所定位置まで送り出されたことを検出する。
【0036】
先端位置検出部13は、センサである。センサの種類は問わないが、例えばカメラを用いることができる。カメラが撮像する画像を解析することにより、プリプレグシートの先端位置を検出する。例えば、画像を2値化し、その割合を判別する。
【0037】
エア噴射部14,15は、プリプレグシートまたは/および保護シートにエアを噴射する。エア噴射部は、第1噴射機構14と第2噴射機構15とを有する。
【0038】
第1噴射機構14は、剥離開始位置にあるプリプレグシート端面正面に、設置・撤去自在に設けられ、プリプレグシート端面に沿って正面から第1エアを噴射する。
【0039】
第2噴射機構15は、プリプレグシートに向かう方向と離れる方向とに噴射方向を変更自在に、第2~4エアを噴射する。
【0040】
剥離状態検出部16は、エア噴射部14,15によるエアによる保護シートの剥離状態を検出する。剥離状態検出部16は、センサである。センサの種類は問わない。たとえば、先端位置検出部13のカメラを共用してもよい。
【0041】
保護シート把持・搬送部17,18は、エア噴射部のエアにより剥離した保護シートを把持しつつ、プリプレグシートの進行方向と逆方向に送り出す。
【0042】
保護シート把持・搬送部は、ベルトコンベア17と補助ローラ18とを有する。ベルトコンベア17はプリプレグシートの進行方向に対し斜め後方に保護シートを送り出す。補助ローラ18は移動自在に設けられ、ベルトコンベア17駆動時に保護シートを把持する。
【0043】
取り出し部19は、保護シートが剥離され、進行方向に送り出されたプリプレグシートを取り出す。取り出し部19は、搬送路に沿って配列され回転駆動される駆動ローラと、プリプレグシートが搬送されることによって従動回転するフリーローラとを有する。プリプレグシートは駆動ローラとフリーローラとの間に把持される。ローラにはコーティングがされており、保護シートが剥離されたプリプレグシートが粘着しないようにしている。
【0044】
制御装置20は、配膳部11と、プリプレグシート搬送部12と、先端位置検出部13と、エア噴射部14,15と、剥離状態検出部16と、保護シート把持・搬送部17,18と、取り出し部19とを制御する。
【0045】
さらに、制御装置20の構成について説明する。各構成の符号は図3~10記載の動作説明図を参考にする。
【0046】
制御装置20は、プリプレグシート搬送部制御機能22と、プリプレグシート位置検出機能23と、第1噴射機構制御機能24と、第2噴射機構制御機能25と、保護シート剥離状態検出機能26と、保護シート把持・搬送部制御機能27と、取り出し部制御機能29を有する。制御装置20はCPUとメモリから構成される情報処理装置である。プログラムの各処理を実行する。
【0047】
各機能22~29の詳細については、下記、動作および制御に関する記載において詳述する。
【0048】
~動作および制御~
図2は、剥離装置の動作概略図とおよび制御フロー図を並列に並べたものである。剥離装置の重要な動作であるエア噴射と各制御処理がおおよそ対応するように表示している。
【0049】
図3~10は各動作を説明する図である。各動作を説明するとともに、あわせて、対応する制御処理について説明する。
【0050】
図3はプリプレグシート搬送および一時停止に係る動作を説明する図である。
【0051】
プリプレグシート搬送部制御機能22は、配膳部11に保護シートが貼り付けられているプリプレグシートが配置されると、プリプレグシート搬送部12を駆動する(S10)。これにより、プリプレグシートは図示進行方向に送り出される。
【0052】
プリプレグシート位置検出機能23は、先端位置検出部13からプリプレグシートの先端位置が所定位置まで送り出された否かに係る情報を入力する。プリプレグシートの先端位置を検出すると、プリプレグシート搬送部制御機能22はプリプレグシート搬送部12の駆動を停止させる(S20)。これにより、プリプレグシートは所定位置にて停止する。
【0053】
図4は第1エア噴射に係る動作を説明する図である。図5は第1エア噴射に係る詳細動作を説明する図である。
【0054】
プリプレグシートの先端位置が所定位置に停止すると、第1噴射機構制御機能24は、第1噴射機構14をプリプレグシート端面正面に設置する。さらに、第1噴射機構14をプリプレグシート端面に沿って移動させるとともに、端面正面に第1エアを噴射させる(S30)。第1エアにより、プリプレグシート先端から保護シート剥離が開始する。
【0055】
保護シート剥離状態検出機能26は、剥離状態検出部16から保護シート剥離状態に係る情報を入力する。保護シート剥離開始(第1範囲剥離)と判断されると、第1噴射機構制御機能24は、第1噴射機構14の駆動を停止する。
【0056】
図6は第2エア噴射に係る動作を説明する図である。図7は第2エア噴射に係る詳細動作を説明する図である。
【0057】
さらに、第2噴射機構制御機能25は、第2噴射機構15に保護シート剥離境界に向けて、すなわち、プリプレグシートに向かう方向に、第2エアを噴射させる(S40)。第2エアにより、剥離範囲が広がる。
【0058】
図8は第3エア噴射および関連動作に係る動作を説明する図である。
【0059】
保護シート剥離状態検出機能26は、剥離状態検出部16から保護シート剥離状態に係る情報を入力する。保護シートが所定範囲(第2範囲)剥離したと判断されると、第2噴射機構制御機能25は、第2噴射機構15の噴射方向を変え、第2エアにより剥離した保護シートに向けて、すなわち、プリプレグシートから離れる方向に第3エアを噴射させる(S50)。第3エアにより、剥離した保護シートがプリプレグシート進行方向後方に付勢される。
【0060】
保護シート把持・搬送部制御機能27は、第3エア噴射と連動して、補助ローラ18を把持位置に移動させるとともに、ベルトコンベア17を駆動させる(S60)。これにより、剥離した保護シートは把持されて、プリプレグシートの進行方向と逆方向に搬送開始される。
【0061】
なお、保護シート剥離状態検出機能26は、剥離状態検出部16から保護シート剥離状態に係る情報を入力し、剥離範囲の広がりを確認する。所定の剥離範囲が得られない場合は、上記制御を繰り返す(S20→S30→S20→S30→)。
【0062】
また、上記制御例では、保護シート剥離状態検出機能26は常時剥離状態を監視し、保護シート剥離状態に基づいて、第1エアから第2エアへの切替のタイミングおよび第2エアから第3エアへの切替のタイミングを判断しているが、第1噴射機構14および第2噴射機構15の所定動作を設定しておき、保護シート剥離状態検出機能26は、最終的な剥離範囲の広がりを確認してもよい。
【0063】
さらに、上記制御例では、保護シート把持・搬送部17,18が適切に保護シートを把持したか否か確認する制御について言及していないが、別途センサにより、把持状態を確認した後、保護シート把持・搬送部制御機能27による制御を実行してもよい。
【0064】
図9は第4エア噴射および関連動作に係る動作を説明する図である。
【0065】
下記制御の前の任意のタイミングで、第1噴射機構制御機能24は、第1噴射機構14をプリプレグシート端面正面から撤去する。これによりプリプレグシートは搬送再開できる。
【0066】
保護シート搬送と連動して、プリプレグシート搬送部制御機能22はプリプレグシート搬送部12の駆動を再開させる(S70)。
【0067】
また、第2噴射機構制御機能25は、第2噴射機構15の噴射方向を変え、第2噴射機構15に保護シート剥離境界に向けて、すなわち、プリプレグシートに向かう方向に、第4エアを噴射させる(S80)。
【0068】
保護シート把持・搬送部制御機能27は、ベルトコンベア17の駆動を継続させる(S90)。
【0069】
これらの複数の制御により、プリプレグシートの搬送に連動して、保護シートが剥離する。
【0070】
プリプレグシートが所定長搬送されると、取り出し部制御機能29は取り出し部19を駆動する(S100)。これにより、プリプレグシートはプリプレグシート搬送部12から取り出し部19に徐々に受け渡される。
【0071】
図10はプリプレグシート取り出しに係る動作を説明する図である。
【0072】
プリプレグシート位置検出機能23が、先端位置検出部13からプリプレグシートの末端位置が所定位置まで送り出された否かに係る情報を入力してもよい。他の方法により、プリプレグシートの末端位置を検出してもよい。たとえば、プリプレグシートが所定長搬送されると、プリプレグシートの末端位置が所定位置まで送り出されたと判断してもよい。
【0073】
プリプレグシートの末端位置を検出すると、プリプレグシート搬送部制御機能22はプリプレグシート搬送部12の駆動を停止させ、第2噴射機構制御機能25は、第2噴射機構15の駆動を停止し、保護シート把持・搬送部制御機能27は、ベルトコンベア17の駆動を停止し、補助ローラ18を把持開放位置に戻す。
【0074】
取り出し部制御機能29は取り出し部19の駆動を継続する(S100)。これにより、プリプレグシートから保護シートが剥離され、次工程である積層装置3に受け渡される。
【0075】
一方で、プリプレグシート搬送部制御機能22は、次のプリプレグシートが供給されるまで待機する。
【0076】
制御装置20は、配膳部11に次のプリプレグシートが配置されると、上記制御処理を繰り返す。
【0077】
~効果~
上記制御および上記動作により、剥離装置2の自動化を図ることができる。
【0078】
その結果、手作業を無くし製造コストを低減し、高品質(皺やヨリが発生しない)を維持し、剥離動作と積層装置3への搬送動作を一連の動作とし、作業時間の減縮を図ることができる。
【0079】
剥離装置2の自動化により、FRP成形システム全体の自動化を図ることができる。
【0080】
~エア噴射部詳細~
エア噴射部は、第1噴射機構14と第2噴射機構15とを有する。
【0081】
第1噴射機構14は、プリプレグシート端面正面に第1エアを噴射する。第1エアにより、保護シート剥離が開始する。
【0082】
第2噴射機構15は、プリプレグシートに向かう方向と離れる方向とに噴射方向を変更自在である。つまり、保護シート剥離境界に向けて第2エアおよび第4エアを噴射するとともに、剥離した保護シートに向けて第3エアを噴射する。第2エアおよび第4エアにより、保護シート剥離が継続する。第3エアにより、剥離した保護シートが方向づけられる。
【0083】
すなわち、本実施形態は第1~4エアを適切に制御することにより、保護シート剥離動作の自動化を図ることができる。
【0084】
第1噴射機構14は、剥離開始位置にあるプリプレグシート端面正面に、設置・撤去自在に設けられる。これにより、プリプレグシート端面正面に第1エアを噴射できるとともに、プリプレグシートの搬送・取り出しを阻害しない。
【0085】
第1噴射機構14では、小型の噴射ノズル141がプリプレグシート端面に沿って移動する(図5参照)。噴射ノズル141が小型であるため設置・撤去が容易である。
【0086】
第1噴射機構14は、更に、噴射ノズルに設けられた噴射ガイド142を有する(図5参照)。図11は、噴射ガイドの一例である。
【0087】
噴射ガイド142は、剥離開始位置にあるプリプレグシート先端を両面から挟むように設置される。
【0088】
これにより、第1エアがプリプレグシート端面正面に噴射されたときのプリプレグシート先端のバタツキを抑制できる。その結果、保護シート剥離が適切に開始する。
【0089】
噴射ガイド142は、対向する二枚の中央板部と、二枚の中央板部を連結する連結部と、噴射ノズル141を設置するための開口部と、中央板部の対向間隔と比較して挟み幅が拡幅している左右の拡幅部を有する。
【0090】
第1噴射機構14は、適宜、設置・撤去される。噴射ガイド142が拡幅部を有することにより、噴射ガイド142が形成する空間にプリプレグシート先端を挿入容易となる。これにより中央板部の対向間隔を狭くでき、バタツキ抑制効果を担保できる。
【0091】
第2噴射機構15は、プリプレグシートの搬送・取り出しを阻害しないため、プリプレグシートの上下位置に常設されている(図7参照)。幅方向に複数の噴射孔を有し、複数の噴射孔から幅方向に順次エアを噴射するように制御される。
【0092】
なお、これに代えて、第2噴射機構15においても、第1噴射機構14と同様、設置・撤去自在かつ幅方向に移動可能な小型ノズルを用いてもよい。
【0093】
図12は、第1噴射機構14の変形例である。図5および図11に示す本実施形態に係る第1噴射機構14は、幅方向に移動可能な小型ノズルを有するのに対し、設置・撤去自在であれば、変形例は、幅方向に連続していてもよい。噴射ノズルは、幅方向に複数の噴射孔を有し、複数の噴射孔から幅方向に順次エアを噴射するように制御される。これにより、本実施形態に係る第1噴射機構14と同様に、保護シート剥離が適切に開始する。
【0094】
変形例に係る噴射ガイドは、第1エア噴射方向に向かって挟み幅が拡幅している左右の拡幅部を有する。
【符号の説明】
【0095】
1 裁断装置
2 剥離装置
3 積層装置
4 ホットドレープ装置
5 オートクレーブ装置
11 配膳部
12 プリプレグシート搬送部
13 プリプレグシート位置検出部
14 第1噴射機構
15 第2噴射機構
16 保護シート剥離検出部
17 ベルトコンベア(保護シート把持・搬送部)
18 補助ローラ(保護シート把持・搬送部)
19 取り出し部
20 制御部
22 プリプレグシート搬送部制御機能
23 プリプレグシート位置検出機能
24 第1噴射機構制御機能
25 第2噴射機構制御機能
26 保護シート剥離検出機能
27 保護シート把持・搬送部制御機能
29 取り出し部制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12