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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20220203BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20220203BHJP
   B25J 11/00 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B17/00
B25J11/00 Z
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020131571
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2021023812
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】10 2019 121 092.5
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500023831
【氏名又は名称】カール シュトルツ エスエー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン グリューナー
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05454827(US,A)
【文献】特開2009-148557(JP,A)
【文献】特開2012-066102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0020287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
A61B 17/00
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のシャフト(2)と、該シャフト(2)の近位端部(3)に配置されている操作ユニット(4)と、前記シャフト(2)の遠位端部(5)に配置され、器具(7)を備えた器具先端部(6)とを有し、前記器具(7)が軸線方向に変位可能に前記シャフト(2)内で支持されている操作要素(8)を介して操作可能であり、前記操作要素(8)が近位側で前記操作ユニット(4)と作用結合し、前記器具先端部(6)が枢着機構(9)を介して前記シャフト(2)の長手軸線(10)に対し相対的に回動可能であり、前記枢着機構(9)が前記シャフト(2)の前記遠位端部(5)に配置されている複数の回動部材(11)から成り、これら回動部材(11)が前記シャフト(2)の長手方向に延びている操縦ワイヤー(12)を介して近位側の駆動部(13)と次のように結合され、すなわち前記近位側の駆動部(13)の運動が対応的に遠位側の前記回動部材(11)の相対運動を生じさせ、よって前記器具先端部(6)の回動を生じさせるように、結合され、前記近位側の駆動部(13)が空間的に位置調整可能なディスク(14)を有し、該空間的に位置調整可能なディスク(14)で前記操縦ワイヤー(12)が支持されている医療器具において、
前記空間的に位置調整可能なディスク(14)のための前記駆動部(13)が電動駆動部(13)として形成され、前記電動駆動部(13)が、互いに180゜ずらして配置される2つの駆動ユニット(15,16)から成り、これら駆動ユニットの駆動軸が1つの共通の中心軸線(20)上にあり、前記空間的に位置調整可能なディスク(14)がこれら2つの駆動ユニット(15,16)の間に配置され、該駆動ユニット(15,16)が駆動される歯車(18,19)として形成されていることを特徴とする医療器具。
【請求項2】
前記空間的に位置調整可能なディスク(14)が第3の歯車(25)と連結され、該第3の歯車が駆動される前記2つの歯車(18,19)と噛み合い、且つ前記第3の歯車の中心軸線(26)が駆動される歯車として形成されている前記駆動ユニット(15,16)の前記中心軸線(20)と交差していることを特徴とする、請求項に記載の医療器具。
【請求項3】
前記空間的に位置調整可能なディスク(14)が、前記シャフト(2)の前記長手軸線(10)に対し同軸に延びている主軸(21)でカルダン支持されていることを特徴とする、請求項またはに記載の医療器具。
【請求項4】
前記空間的に位置調整可能なディスク(14)が、互いに180゜ずらして配置されている2つの支持ピン(27)を介して、ユニバーサルジョイントディスク(28)で回動可能に支持され、前記ユニバーサルジョイントディスク(28)が、互いに180゜ずらして配置されている2つの支持ピン(29)を介して前記主軸(21)で回動可能に支持され、前記位置調整可能なディスク(14)の前記支持ピン(27)と前記ユニバーサルジョイントディスク(28)の前記支持ピン(29)とが互いに90゜ずらして配置されていることを特徴とする、請求項に記載の医療器具。
【請求項5】
前記空間的に位置調整可能なディスク(14)が、前記シャフト(2)の前記長手軸線(10)のまわりに回転可能に前記第3の歯車(25)で支持されていることを特徴とする、請求項またはに記載の医療器具。
【請求項6】
前記空間的に位置調整可能なディスク(14)が、前記第3の歯車(25)と相対回転不能に連結されている操縦リング(30)内に配置されていることを特徴とする、請求項に記載の医療器具。
【請求項7】
前記空間的に位置調整可能なディスク(14)が、前記シャフト(2)の前記長手軸線(10)のまわりに回転可能に支持リング(32)内で支持され、該支持リング(32)が前記操縦リング(30)内に支持されていることを特徴とする、請求項に記載の医療器具。
【請求項8】
前記第3の歯車(25)の前記回転軸線(26)上に、該第3の歯車(25)に対し180゜ずらして第4の歯車(31)が配置され、該第4の歯車が駆動される前記2つの歯車(18,19)と噛み合っていることを特徴とする、請求項からまでのいずれか一つに記載の医療器具。
【請求項9】
前記空間的に位置調整可能なディスク(14)が、支持リング(42)を介して、前記第4の歯車(31)に対し自由に回転可能に前記第3の歯車(25)と連結されていることを特徴とする、請求項に記載の医療器具。
【請求項10】
前記操縦ワイヤー(12)が、クランプ結合部により前記空間的に位置調整可能なディスク(14)に締め付け固定可能であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の医療器具。
【請求項11】
遠位側にして前記空間的に位置調整可能なディスク(14)の手前に、前記操縦ワイヤー(12)と前記シャフト(2)の前記長手軸線(10)との半径方向間隔を拡大させる扇形ロックワッシャー(22)が前記主軸(21)上に配置されていることを特徴とする、請求項から10までのいずれか一つに記載の医療器具。
【請求項12】
前記駆動される歯車として形成されている前記2つの駆動ユニット(15,16)の前記中心軸線(20)が、前記シャフト(2)の前記長手軸線(10)に対し垂直に配置されていることを特徴とする、請求項から11までのいずれか一つに記載の医療器具。
【請求項13】
前記第3の歯車(25)および前記第4の歯車(31)のギヤリムに、前記操縦ワイヤー(12)および前記操作要素(8)のための繰り抜き部が形成されていることを特徴とする、請求項から12までのいずれか一つに記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空のシャフトと、該シャフトの近位端部に配置されている操作ユニットと、前記シャフトの遠位端部に配置され、器具を備えた器具先端部とを有し、前記器具が軸線方向に変位可能に前記シャフト内で支持されている操作要素を介して操作可能であり、前記操作要素が近位側で前記操作ユニットと作用結合し、前記器具先端部が枢着機構を介して前記シャフトの長手軸線に対し相対的に回動可能であり、前記枢着機構が前記シャフトの前記遠位端部に配置されている複数の回動部材から成り、これら回動部材が前記シャフトの長手方向に延びている操縦ワイヤーを介して近位側の駆動部と次のように結合され、すなわち前記近位側の駆動部の運動が対応的に遠位側の前記回動部材の相対運動を生じさせ、よって前記器具先端部の回動を生じさせるように、結合され、前記近位側の駆動部が空間的に位置調整可能なディスクを有し、該空間的に位置調整可能なディスクで前記操縦ワイヤーが支持されている医療器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屈曲可能な医療器具のために外側に位置する3個、4個またはそれ以上の操縦ワイヤーおよび/または操縦ロープを備えた回動部材は、手で操縦される器具および/またはロボット器具用のものとして実践上公知である。この種の医療器具の遠位端部を感度よく制御するには、より肉厚の少数の操縦ワイヤーおよび/または操縦ロープに比べてより薄い多数の操縦ワイヤーおよび/または操縦ロープのほうが有利であることが判明している。というのは、とりわけすべての屈曲方向において均一な力分布が得られるからであり、さらにより薄い操縦ワイヤーおよび/または操縦ロープは電気導線等のために内部空間により多くのスペースを可能にするからである。
【0003】
この種の医療器具は、たとえば特許文献1から知られている。この公知の医療器具の場合、遠位側回動部材は、4個の操縦ワイヤーを介して、近位側に配置されている空間的に位置調整可能なディスクと次のように連結され、すなわち空間的に位置調整可能なディスクの運動が遠位側の回動部材の対応する相対運動を生じさせ、よって工具先端部の回動を生じさせるように、連結されている。その際、空間的に位置調整可能なディスクの運動は、空間的に位置調整可能なディスクとダイレクトに連結されている一種のジョイスティックを介して手動で行われる。
【0004】
操縦ワイヤー用の駆動部を、4個の操縦ワイヤーすべてが支持されている空間的に位置調整可能なディスクとして構成することには、空間的にコンパクトな構成を可能にし、すべての操縦ワイヤーを応答させることができるようにするために1つの構成部材を運動させればよいという利点がある。
【0005】
しかしながら、この公知の構造の欠点は、一方ではわずかな数量の操縦ワイヤーしか使用しないこと、すなわち4個の操縦ワイヤーしか使用しないこと、他方では操縦ワイヤーのための駆動部として用いられる空間的に位置調整可能なディスクをもっぱら手動でしか操作できないことであり、これにより遠位側の回動部材の感度のよい且つ再現性のある位置調整はほとんど不可能なことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5454827号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、任意の数量の操縦ワイヤーを正確に且つ再現可能に起動させることができる、冒頭で述べた種類の医療器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決手段は、空間的に位置調整可能なディスクのための駆動部が電動駆動部として形成され、前記電動駆動部が、互いに180゜ずらして配置される2つの駆動ユニットから成り、これら駆動ユニットの駆動軸が1つの共通の中心軸線上にあり、前記空間的に位置調整可能なディスクがこれら2つの駆動ユニットの間に配置され、該駆動ユニットが駆動される歯車として形成されていることを特徴としている。
【0009】
空間的に位置調整可能なディスクの本発明による電動駆動部により、遠位側の回動部材または工具先端部を回動させるために操縦ワイヤーを正確に、感度よく最短ステップで且つ再現可能にも起動させることが可能である。さらに、電動駆動部のために使用される操縦ワイヤーの数量は少ない。
【0010】
本発明によれば、電動駆動部、互いに180゜ずらして配置される2つの駆動ユニットから成り、これら駆動ユニットの駆動軸1つの共通の中心軸線上にあり、空間的に位置調整可能なディスクこれら2つの駆動ユニットの間に配置されているが、2つの駆動部のみを使用することにより、空間的に位置調整可能なディスクは、操縦ワイヤーと連結されている工具先端部がシャフトの長手軸線に対し相対的にすべての空間方向に回動可能であるように、移動することができる。両駆動ユニットは駆動される歯車として、特に内歯歯車として形成されている。
【0011】
本発明の有利な実施態様によれば、空間的に位置調整可能なディスクが第3の歯車と連結され、該第3の歯車が駆動される前記2つの歯車と噛み合い、且つ第3の歯車の中心軸線が駆動される歯車として形成されている駆動ユニットの中心軸線と交差していることが提案される。互いに噛み合っている歯車により、駆動される両歯車のそれぞれの運動は空間的に位置調整可能なディスクと連結されている第3の歯車にダイレクトに伝達され、このことは操縦ワイヤーのダイレクトな操作を生じさせる。
【0012】
空間的に位置調整可能なディスクを、第3の歯車との相対回転不能な連結にもかかわらず3次元で位置調整できるようにするため、本発明の有利な実施態様によれば、空間的に位置調整可能なディスクが、シャフトの長手軸線に対し同軸に延びている主軸でカルダン支持されていることが提案される。
【0013】
空間的に位置調整可能なディスクのカルダン支持部を形成するため、本発明によれば、空間的に位置調整可能なディスクが、互いに180゜ずらして配置されている2つの支持ピンを介して、ユニバーサルジョイントディスクで回動可能に支持され、ユニバーサルジョイントディスクが、互いに180゜ずらして配置されている2つの支持ピンを介して主軸で回動可能に支持され、位置調整可能なディスクの支持ピンとユニバーサルジョイントディスクの支持ピンとが互いに90゜ずらして配置されていることが提案される。このような支持は、空間的に位置調整可能なディスクを互いに直角に交差している2つの軸線のまわりにシャフトの長手軸線に対し相対的に回動させることを可能にし、これによって操縦ワイヤーを介して遠位側で工具先端部はすべての空間方向においてシャフトの長手軸線に対し相対的に回動可能である。
【0014】
さらに、工具先端部をシャフトの長手軸線に対し相対的に回動させることに加えてシャフトの長手軸線のまわりにも回転可能であることを可能にするため、本発明によれば、空間的に位置調整可能なディスクが、シャフトの長手軸線のまわりに回転可能に第3の歯車で支持されていることが提案される。これによって操縦ワイヤーのねじれが阻止される。
【0015】
本発明の実施の態様によれば、空間的に位置調整可能なディスクが、第3の歯車と相対回転不能に連結されている操縦リング内に配置されていることが提案される。
【0016】
さらに、本発明により、空間的に位置調整可能なディスクが、シャフトの長手軸線のまわりに回転可能に支持リング内で支持され、該支持リングが操縦リング内に支持されていることが提案される。
【0017】
さらに、本発明により、第3の歯車の回転軸線上に、該第3の歯車に対し180゜ずらして第4の歯車が配置され、該第4の歯車が駆動される前記2つの歯車と噛み合っていることが提案される。この第4の歯車は循環するギヤチェーンを閉鎖しており、したがって均一に循環する、遊びのない力配分の用を成す。
【0018】
空間的に位置調整可能なディスクは、本発明によれば、支持リングを介して、第4の歯車に対し自由に回転可能に第3の歯車と連結されている。その結果、第4の歯車がその回転軸線のまわりに回転しても、空間的に位置調整可能なディスクの回転を生じさせない。
【0019】
空間的に位置調整可能なディスクでの操縦ワイヤーの固定は、本発明によればクランプ結合部を用いて行われ、たとえば空間的に位置調整可能なディスクに形成された貫通孔内で操縦ワイヤーを締め付け固定する止めねじを用いて行われる。
【0020】
本発明の更なる実施態様によれば、遠位側にして空間的に位置調整可能なディスクの手前に、操縦ワイヤーとシャフトの長手軸線との半径方向間隔を拡大させる扇形ロックワッシャーが主軸上に配置されていることが提案される。操縦ワイヤーとシャフトの長手軸線との半径方向間隔の拡大により、たとえば4mmの径から18mmの径への拡大により、空間的に位置調整可能なディスクを備えた操縦ワイヤーの駆動部の組み立て、製造が容易になるばかりでなく、空間的に位置調整可能なディスクの位置調整角を小さくなり、径拡大の大きさに対応する工具先端部の回動角を得ることができる。
【0021】
本発明によれば、空間的に位置調整可能なディスクを操作するための駆動ユニットを配置する第1実施態様により、駆動される歯車として形成されている2つの駆動ユニットの中心軸線が、シャフトの長手軸線に対し垂直に配置されていることが提案される。シャフトの長手軸線が両駆動ユニットの間を通るようにした駆動ユニットのこの配置は、構造的に特に簡潔に実現される。
【0024】
さらに、第3および第4の歯車をシャフトの長手軸線に対し相対的に回動させる場合、これら歯車と操縦ワイヤーとの衝突および場合によっては操作要素との衝突を避けるため、本発明により、第3の歯車および第4の歯車のギヤリムに、操縦ワイヤーおよび操作要素のための繰り抜き部が形成されていることが提案される。
【0025】
本発明の他の構成および利点は、本発明による医療機械の2つの実施形態を例示したにすぎない添付の図面により明らかである。なお、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による医療器具の斜視側面図である。
図2図1の駆動部の第1実施形態の拡大図である。
図3図1の駆動部の第2実施形態の拡大図である。
図4a】駆動部をニュートラルな出発位置で示した、図2の駆動部の拡大斜視詳細図である。
図4b図4aの部分断面図である。
図5】駆動部を第1の作業位置で示した図4aに対応する図である。
図6】駆動部を第2の作業位置で示した図4bに対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は医療器具1の概略図で、医療器具1は、中空のシャフト2と、シャフト2の近位端部3に配置され、概要のみを図示した操作ユニット4と、シャフト2の遠位端部5に配置され、器具7を備えた器具先端部6とを有している。器具7は、軸線方向に変位可能にシャフト2内で支持されている操作要素8を介して操作可能であり、操作要素8は近位側で操作ユニット4と作用結合している。
【0028】
操作ユニット4は、手で操作可能なグリップ機構であり、或いは、ロボットを使用するために設計された、すなわち手による補助なしでも操作可能な構成ユニットである。
【0029】
器具先端部6の器具7は、たとえば図1に図示したような、顎部材を備えた工具であってよく、或いは、内視鏡、アプリケータ等であってもよい。
【0030】
器具先端部6は、枢着機構9を介してシャフト2の長手軸線10に対し相対的に回動可能であり、この場合枢着機構9は、シャフトの遠位端部5に配置されている回動部材11から成り、回動部材11はシャフト2の長手方向に延びている操縦ワイヤー12を介して、シャフト2の近位端部3に配置されている駆動部13と次のように結合されており、すなわち近位側の駆動部13の運動が遠位側の回動部材11の対応的な相対運動を生じさせるように、したがって器具先端部6の回動を生じさせるように、結合されている。
【0031】
上記したように、また下記でも、操縦ワイヤー12という概念のみを使用するが、機能的には操縦ロープも使用することができ、それ故使用する操縦ワイヤー12という概念は操縦ロープと同義であると読み取るべきであり、理解すべきである。
【0032】
軸線方向に変位可能にシャフト2内に支持されている、たとえば2つの顎部材から成る器具7を操作するための操作要素8は、図示した実施形態では、引張り/送り棒として形成されている。
【0033】
図に図示し、以下に説明する医療器具1の場合、操縦ワイヤー12のための駆動部13は、電動駆動部13として形成されている。
【0034】
駆動部13の主要部材は、空間的に位置調整可能なディスク14(図4図6)であり、ディスク14には操縦ワイヤー12が次のように支持されており、すなわち空間的に位置調整可能なディスク14の変位が、空間的に位置調整可能なディスク14で支持されている操縦ワイヤー12を介して工具先端部6の回動を生じさせるように、支持されている。この空間的に位置調整可能なディスク14は、電動駆動部13を介して変位可能である。
【0035】
空間的に位置調整可能なディスク14のために電動駆動部13を使用することにより、遠位側の回動部材11または器具先端部6を回動させるための操縦ワイヤー12を正確に、感度よく、最小ステップで、しかも再現可能に始動させることが可能である。さらに、電動駆動部13のために使用される操縦ワイヤー12の数量は大したものではない。
【0036】
電動駆動部13は、互いに180゜ずらして配置される2つの駆動ユニット15と16から成り、それらの駆動軸は1つの共通の中心軸線20上にあり、空間的に位置調整可能なディスク14はこれら2つの駆動ユニット15と16の間に配置されている。駆動ユニット15と16自体は、モータ17を介して駆動される歯車18と19、好ましくは傘歯車として形成されている。
【0037】
図2および図4ないし図6に図示した電動駆動部13の第1実施形態では、両駆動ユニット15と16の中心軸線20はシャフト2の長手軸線10に対し垂直に配置され、シャフト2の長手軸線10と交差している。
【0038】
図3に図示した択一的な第2の実施形態では、両駆動ユニット15と16の中心軸線20はシャフト2の長手軸線10と一致している。
【0039】
以下に説明する、空間的に位置調整可能なディスク14とその支持態様は、電動駆動部13の両実施形態において同一である。
【0040】
電動駆動部13の、特に両駆動ユニット15と16を介して操作可能な、空間的に位置調整可能なディスク14の構成および作動態様を、以下に図4図5図6を用いて説明する。
【0041】
これらの図から明らかなように、シャフト2内には、シャフト2の長手軸線10に対し同軸に延びている中空の主軸21が配置されている。中空の主軸21は、シャフト2の長手軸線10のまわりに回転可能であり、シャフト2の近位端部3を越えて電動駆動部13の領域まで延びている。この中空の主軸21の内部には、器具7を操作するための操作要素8が軸線方向に変位可能に支持されている。
【0042】
シャフト2の近位端部3においてシャフト2から出ている操縦ワイヤー12は、主軸21上に相対回転不能に配置されている扇形ロックワッシャー22を介して扇形に広げられ、これによって操縦ワイヤー12とシャフト2の長手軸線10との半径方向間隔が拡大される。シャフト2の内部にある操縦ワイヤー12の、シャフト2の長手軸線10を同軸に取り囲んでいる束の直径は、たとえば4mmであるのに対し、扇形ロックワッシャー22の後方で操縦ワイヤーによって形成されている束の直径はたとえば18mmである。図示した実施形態の場合、束は10個の個別の操縦ワイヤー12から成っている。
【0043】
扇形ロックワッシャー22の後方の近位側で、シャフト2の長手軸線10に対し平行に延びている操縦ワイヤー12は空間的に位置調整可能なディスク14に供給される。操縦ワイヤー12を空間的に位置調整可能なディスク14に固定するため、空間的に位置調整可能なディスク14内には、それぞれの操縦ワイヤー12のための貫通孔23が形成され、この場合操縦ワイヤー12は貫通孔23の内部に止めねじ24を介して固定可能であり、且つ空間的に位置調整可能なディスク14と摩擦で結合可能である。
【0044】
駆動される歯車18と19は、第3の歯車25と連結されている。第3の歯車25は、駆動される両歯車18と19と噛み合い、その回転軸線26は、駆動される歯車18と19として形成されている駆動ユニット15と16の中心軸線20およびシャフト2の長手軸線10と交点Sで交わっている。第3の歯車25も好ましくは傘歯車として形成されている。
【0045】
互いに噛み合っている3つの歯車18,19,25により、駆動される両歯車18と19のそれぞれの運動は、第3の歯車25と連結されている空間的に位置調整可能なディスク14へダイレクトに伝達され、これは操縦ワイヤー12のダイレクトな操作を生じさせる。
【0046】
主軸21で空間的に位置調整可能なディスク14をカルダン支持するため、空間的に位置調整可能なディスク14は、互いに180゜ずらして配置されている2つの支持ピン27を介して回動可能にユニバーサルジョイントディスク28で支持されている。この場合ユニバーサルジョイントディスク28は、互いに180゜ずらして配置されている2つの支持ピン29を介して主軸21で支持されている。図4図6の図では、見やすくするためにそれぞれ1つの支持ピン27と1つの支持ピン29のみが図示してある。
【0047】
空間的に位置調整可能なディスク14の支持ピン27と、ユニバーサルジョイントディスク28の支持ピン29とは、互いに90゜ずらして配置されている。この支持は、空間的に位置調整可能なディスク14を、互いに直交する2つの軸線のまわりにシャフト2の長手軸線10に対し相対的に回動させることを可能にし、これによって、操縦ワイヤー12を介して、遠位側で、工具先端部6はすべての空間方向にシャフト2の長手軸線10に対し相対的に回動可能である。
【0048】
さらに図4図6から見て取れるように、空間的に位置調整可能なディスク14は、第3の歯車25と相対回転不能に連結されている操縦リング30内で支持されている。
【0049】
歯車18,19,25によって形成されるギヤチェーンを閉じて、均一に循環する力配分を保証するような閉じたギヤリングを形成させるため、第3の歯車25の回転軸線26上には、該第3の歯車25に対し180゜ずらして第4の歯車31が配置されている。第4の歯車31は駆動される両歯車18と19と噛み合っており、この場合第4の歯車31も好ましくは傘歯車として形成されている。
【0050】
空間的に位置調整可能なディスク14をシャフト2の長手軸線10のまわりに回転させることができるようにするため、空間的に位置調整可能なディスク14は、支持リング32を介して、第3の歯車25と相対回転不能に連結されている操縦リング30内で支持されている。
【0051】
第3の歯車25と相対回転不能に連結されている操縦リング30は、支持リング42を介して第4の歯車31に対し自由に回転可能であり、その結果第4の歯車31がその回転軸線26のまわりで回転しても、操縦リング30および空間的に位置調整可能なディスク14の回転を生じさせない。
【0052】
前述したように、空間的に位置調整可能なディスク14を主軸21でカルダン支持することにより、空間的に位置調整可能なディスク14をシャフト2の長手軸線10に対し相対的に3次元で変位させることができる。これは図5および図6に図示されている。
【0053】
図4に図示したニュートラルな出発位置から出発して、すなわち空間的に位置調整可能なディスク14がシャフト2の長手軸線10に対し垂直に方向づけられている出発位置から出発して、駆動される歯車18と19がモータ17を介して次のように駆動されるならば、すなわち歯車18と19が同じ方向に回転し、たとえば図5で矢印33の方向に右側へ(または矢印33の方向とは逆の方向に左側へ)回転するならば、駆動される歯車18と19のこの回転は、第3の歯車25および第4の歯車31と噛み合っているために、第3の歯車25と、該第3の歯車25と連結されている空間的に位置調整可能なディスク14と、第4の歯車31とから形成されている構成ユニットを、図5に図示したように、駆動される歯車18と19の中心軸線20のまわりに傾動させる。
【0054】
駆動される歯車18と19の中心軸線20と整列している、空間的に位置調整可能なディスク14をユニバーサルジョイントディスク28に回動可能に支持させている支持ピン27が、ユニバーサルジョイントディスク28に対する空間的に位置調整可能なディスク14の相対的なこの傾動を可能にさせる。
【0055】
シャフト2の長手軸線10に対する中心軸線20のまわりでの空間的に位置調整可能なディスク14のこの相対的な傾動により、操縦ワイヤー12を介して、遠位側で器具先端部6は同じようにシャフト2の長手軸線10に対し相対的に回動する。
【0056】
図4に図示したニュートラルな出発位置から出発して、すなわち空間的に位置調整可能なディスク14がシャフト2の長手軸線10に対し垂直に方向づけられている出発位置から出発して、駆動される歯車18と19がモータ17を介して次のように駆動されるならば、すなわち歯車18と19が互いに逆方向に回転し、たとえば歯車18が図6で矢印34の方向に右側へ回転し、歯車19が図6で矢印35の方向に左側へ回転するならば(またはその逆も可)、駆動される歯車18と19のこの回転は、第3の歯車25と噛み合っているために、第3の歯車25と、該第3の歯車25と連結されている空間的に位置調整可能なディスク14とから形成されている構成ユニットを、図6に図示したように、第3の歯車25の回転軸線26のまわりに回転させる。
【0057】
第3の歯車25の回転軸線26と整列している、ユニバーサルジョイントディスク28を主軸21に回動可能に支持させている支持ピン29は、第4の歯車31に対する空間的に位置調整可能なディスク14の自由な回転可能性とともに、支持リング32のために主軸21に対するユニバーサルジョイントディスク28のこの相対回転を可能にさせる。
【0058】
シャフト2の長手軸線10に対する回転軸線26のまわりでの空間的に位置調整可能なディスク14のこの相対的な回転により、操縦ワイヤー12を介して、遠位側で器具先端部6は同じようにシャフト2の長手軸線10に対し相対的に回動する。
【0059】
図5および図6に図示した、空間的に位置調整可能なディスク14の変位に加えて、図示した運動を重畳させることももちろん可能であり、その結果たとえば空間的に位置調整可能なディスクは中心軸線20のまわりに傾動し、同時に回転軸線26のまわりに回転をも行う。駆動部13の個別に起動可能なモータ17により2つの運動経過をこのように組み合わせることによって、空間的に位置調整可能なディスク14をシャフト2の長手軸線10に対し相対的に3次元で位置調整することができ、その結果操縦ワイヤー12を介しての連結により器具先端部6の空間的変位が得られる。
【0060】
扇形ロックワッシャー22を用いて得られる、操縦ワイヤー12とシャフト2の長手軸線10との半径方向間隔の拡大により、空間的に位置調整可能なディスク14を備えた操縦ワイヤー14の駆動部13の組み立て、製造が容易になるばかりでなく、空間的に位置調整可能なディスク14の必要な位置調整角度も比例的に小さくなり、器具先端部6の望ましい大きさの回動角を得ることができる。
【0061】
たとえば、操縦ワイヤー12によって形成される束の4mmの直径がシャフト2内部にして扇形ロックワッシャー22の後方において18mmへ拡大されれば、すなわち4.5倍拡大されれば、空間的に位置調整可能なディスク14の位置調整角は、遠位端部において得られる器具先端部6の回動角に比べて4.5倍縮小する。したがって、工具先端部6を90゜屈曲させるには、空間的に位置調整可能なディスク14を20゜回動させるだけでよい。
【0062】
主軸12をシャフト2の長手軸線10のまわりに回転させ、その結果遠位側で主軸21と連結されている器具先端部6をシャフト2の長手軸線10のまわりに回転させるため、図4図6に図示した医療器具1の実施形態の場合、主軸21に相対回転不能に配置されている扇形ロックワッシャー22はモータ36を介して駆動可能な歯車として形成され、支持リング37を介して操作ユニット4の支持ブロック38で回転可能に支持されている。遠位側で扇形ロックワッシャー22の手前に配置されている他の支持リング39は、主軸21の安定な案内の用を成す。
【0063】
シャフト2の長手軸線10のまわりでの主軸21の回転は、主軸21に相対回転不能に支持されているユニバーサルジョイントディスク28と支持ピン27とを介して、空間的に位置調整可能なディスク14へ伝えられる。主軸21がシャフト2の長手軸線10のまわりで回転している間に、空間的に位置調整可能なディスク14がシャフト2の長手軸線10に対し相対的に傾動および/または回転している事例に対しては、空間的に位置調整可能なディスク14に固定されている操縦ワイヤー12は種々の制御位置を占めるが、器具先端部6がシャフト2の長手軸線10のまわりに回転するにもかかわらず、器具先端部6の遠位側屈曲状態は空間的に同じままである。
【0064】
図3に図示した、駆動ユニット15と16をシャフト2の長手軸線10の長手方向に配置する択一的構成では、駆動される2つの歯車が内歯歯車40と41として形成されていることで、一方では器具7を操作するための操作要素8をシャフト2の長手方向10に配置することができ、他方では操縦ワイヤー12を空間的に位置調整可能なディスク14に供給することができる。この構造では、内歯歯車40と41は図示していない側部歯車を介して駆動される。
【0065】
以上説明したように構成された医療器具1は、多数の薄い操縦ワイヤー12を回動可能な器具先端部6を起動するために使用でき、この起動が、操縦ワイヤー12を近位側で支持している空間的に位置調整可能なディスク14のための電動駆動部13により、感度良好に正確に且つ再現可能に行われることを特徴としている。
【符号の説明】
【0066】
1 医療器具
2 シャフト
3 シャフトの近位端部
4 操作ユニット
5 シャフトの遠位端部
6 器具先端部
7 器具
8 操作要素
9 枢着機構
10 長手軸線
11 回動部材
12 操縦ワイヤー
13 駆動部
14 空間的に位置調整可能なディスク
15 駆動ユニット
16 駆動ユニット
17 モータ
18 駆動される歯車
19 駆動される歯車
20 中心軸線
21 主軸
22 扇形ロックデスク
23 貫通穴
24 止めねじ
25 第3の歯車
26 回転軸線
27 支持ピン
28 ユニバーサルジョイントディスク
29 支持ピン
30 操縦リング
31 第4の歯車
32 支持リング
33 歯車18と19の回転方向
34 歯車18の回転方向
35 歯車19の回転方向
36 モータ
37 支持リング
38 支持ブロック
39 支持リング
40 内歯歯車
41 内歯歯車
42 支持リング
S 交点
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6