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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】振動計の変化の検出及び識別
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/84 20060101AFI20220120BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
G01F1/84
G01H17/00 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020512361
(86)(22)【出願日】2017-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2017049344
(87)【国際公開番号】W WO2019045703
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-04-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カニンガム, ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パッテン, アンドリュー ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ベル, マーク ジェイムズ
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-504031(JP,A)
【文献】特開2017-146313(JP,A)
【文献】特表2009-509163(JP,A)
【文献】特表2014-522972(JP,A)
【文献】特表2016-526667(JP,A)
【文献】特開2010-133959(JP,A)
【文献】特表2015-535612(JP,A)
【文献】米国特許第5926096(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/84
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動計(5)の変化を検出及び識別するための計器電子装置(20)であって、
計器アセンブリ(10)からセンサ信号(100)を受信し、前記センサ信号(100)に基づいて情報を提供するように構成されたインターフェイス(201)と、
前記インターフェイス(201)に通信可能に結合された処理システム(202)であって、前記情報を使用して、
前記振動計(5)の導管(130、130´)の第1位置に関連付けられた第1剛性変化を決定し、
前記振動計(5)の前記導管(130、130´)の第2位置に関連付けられた第2剛性変化を決定し、かつ
前記第1剛性変化及び前記第2剛性変化の組み合わせに基づいて前記導管(130、130´)の一つの状態を判定する、ように構成されている処理システム(202)と、を備える、計器電子装置(20)。
【請求項2】
前記第1位置が、前記振動計(5)の前記導管(130、130´)上の左側ピックオフセンサ(170l)の位置であり、
前記第2位置が、前記振動計(5)の前記導管(130、130´)上の右側ピックオフセンサ(170r)の位置である、請求項1に記載の計器電子装置(20)。
【請求項3】
前記第1剛性変化が、ドライバ(180)と前記導管(130、130´)の前記第1位置との間の前記導管(130、130´)の物理的な剛性変化を表し、
前記第2剛性変化が、前記ドライバ(180)と前記導管(130、130´)の前記第2位置との間の前記導管(130、130´)の物理的な剛性変化を表す、請求項1又は2に記載の計器電子装置(20)。
【請求項4】
前記計器電子装置(20)が、前記導管(130、130´)の剛性対称性を判定するようにさらに構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の計器電子装置(20)。
【請求項5】
前記導管(130、130´)の前記剛性対称性が、前記第1剛性変化及び前記第2剛性変化に基づいて判定される、請求項4に記載の計器電子装置(20)。
【請求項6】
前記処理システム(202)が、前記導管の前記状態の前記判定に基づいて警報を提供するようにさらに構成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の計器電子装置(20)。
【請求項7】
前記導管(130、130´)の前記状態が、前記振動計(5)の前記導管(130、130´)の浸食、腐食、損傷、及び被膜のうちの少なくとも1つを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の計器電子装置(20)。
【請求項8】
前記処理システム(202)が、前記導管(130、130´)の残留可撓性、ダンピング、及び質量のうちの少なくとも1つに基づいて前記導管(130、130´)の前記状態を判定するようにさらに構成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の計器電子装置(20)。
【請求項9】
振動計の変化を検出及び識別するための方法であって、
前記振動計の導管の第1位置に関連付けられた第1剛性変化を決定することと、
前記振動計の前記導管の第2位置に関連付けられた第2剛性変化を決定することと、
前記第1剛性変化及び前記第2剛性変化の組み合わせに基づいて前記導管の一つの状態を判定することと、
を含む方法。
【請求項10】
前記第1位置が、前記振動計の前記導管上の左側ピックオフセンサの位置であり、
前記第2位置が、前記振動計の前記導管上の右側ピックオフセンサの位置である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1剛性変化が、ドライバと前記導管の前記第1位置との間の前記導管の物理的な剛性変化を表し、
前記第2剛性変化が、前記ドライバと前記導管の前記第2位置との間の前記導管の物理的な剛性変化を表す、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記導管の剛性対称性を判定することをさらに含む、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記導管の剛性対称性が、前記第1剛性変化及び前記第2剛性変化に基づいて判定される、請求項12に記載の方法
【請求項14】
前記導管の前記状態の前記判定に基づいて警報を提供することをさらに含む、請求項9乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記導管の前記状態が、前記振動計の前記導管の浸食、腐食、損傷、及び被膜のうちの少なくとも1つを含む、請求項9乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記導管の残留可撓性、ダンピング、及び質量のうちの少なくとも1つに基づいて前記導管の前記状態を判定することをさらに含む、請求項9乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に説明する実施形態は、振動計の変化に関し、より詳細には、振動計の変化を検出及び識別することに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コリオリ質量流量計、液体密度計、気体密度計、液体粘度計、気体/液体比重計、気体/液体相対密度計、及び、気体分子量計のような振動計が一般に知られており、流体の特性を測定するために使用されている。一般に、振動計は、計器アセンブリ及び電子機器部を備える。計器アセンブリ内の物質は、流動又は静止し得る。センサのタイプごとに固有の特性がある場合があり、計器は、最適な性能を達成するためにこの特性を考慮する必要がある。例えば、いくつかのセンサは、特定の変位レベルで振動するために管装置を必要とする場合がある。他の計器アセンブリタイプは、特別な補償アルゴリズムが必要な場合がある。
【0003】
計器電子装置は、他の機能を実行する中でもとりわけ、典型的には、使用されている特定のセンサのための記憶されたセンサ較正値を含む。例えば、計器電子装置は、剛性測定値を含むことがある。基準センサの剛性は、例えば、基準条件下の工場で測定されるような、又は最後に較正されたときの、特定の計器アセンブリのセンサ幾何学的形状に関する基本的な測定値を表す。振動計を顧客の現場に設置した後に測定される剛性と、基準センサの剛性との間の変化は、他の原因に加えて、計器アセンブリ内の導管の被膜、浸食、腐食、又は損傷による計器アセンブリの物理的な変化を表すことがある。計器検証又はヘルスチェックテストでは、これらの変化を検出することができる。
【0004】
計器検証は、測定された剛性と基準剛性との差が範囲内であるかどうかを判定することができる。例えば、比較は、測定された剛性が基準剛性の範囲内であるかどうかを判定することができる。比較により、範囲よりも大きな、又は範囲外の変化が示された場合、振動計は、警報を送信してユーザに障害を調査するように通知することができる。しかしながら、単一の剛性値のこの単純な比較では、障害の根本的な原因を示すことができない場合がある。すなわち、ユーザは、障害が浸食/腐食、損傷(例えば、凍結、過圧など)によるものなのか、被膜によるものなのかが分からない。これは、導管に対する可能性のある根本的な原因又は変化をすべて含むように、及び導管の変化に起因しない原因による誤警報を防止するように範囲が設定されているためである。誤警報の例は、高速又は高ノイズのガス流によって引き起こされる剛性測定値の変動の増加である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
変化を正しく検出することができる場合、変化を、それらが形成される早い段階で検出することができる。さらに、変化を正しく検出することで、誤警報を最小限に抑えることができる。導管に対する変化を識別することができる場合、変化の性質の兆候をユーザに通知することができる。これにより、誤警報による振動計のダウンタイムを防止し、警報後の手順が振動計の状態により適していることを確実にすることができる。したがって、振動計の変化を検出及び識別する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
振動計の変化を検出及び識別するための計器電子装置が提供される。一実施形態によると、計器電子装置は、計器アセンブリからセンサ信号を受信し、センサ信号に基づいて情報を提供するように構成されたインターフェイスと、インターフェイスに通信可能に結合された処理システムと、を備える。処理システムは、情報を使用して、振動計の導管の第1位置に関連付けられた第1剛性変化を決定し、振動計の導管の第2位置に関連付けられた第2剛性変化を決定し、第1剛性変化及び第2剛性変化に基づいて導管の状態を判定するように構成されている。
【0007】
振動計の変化を検出及び識別するための計器電子装置が提供される。一実施形態によると、計器電子装置は、計器検証パラメータの中心傾向値及び計器検証パラメータの分散値を記憶するように構成された記憶システムを含む処理システムを備える。処理システムは、記憶システムから中心傾向値及び分散値を取得し、中心傾向値及び分散値に基づいて確率を決定して、中心傾向値がベースライン値と異なるかどうかを検出するように構成されている。
【0008】
振動計の変化を検出及び識別するための方法が提供される。本方法は、振動計の導管の第1位置に関連付けられた第1剛性変化を決定することと、振動計の導管の第2位置に関連付けられた第2剛性変化を決定することと、第1剛性変化及び第2剛性変化に基づいて導管の状態を判定することと、を含む。
【0009】
振動計の導管の変化を検出及び識別するための方法が提供される。一実施形態によると、本方法は、振動計の計器電子装置内の記憶装置から計器検証パラメータの中心傾向値及び計器検証パラメータの分散値を取得し、中心傾向値及び分散値に基づいて確率を決定して、中心傾向値がベースライン値と異なるかどうかを判定する。
【0010】
態様
一態様によると、振動計(5)の変化を検出及び識別するための計器電子装置(20)は、計器アセンブリ(10)からセンサ信号(100)を受信し、センサ信号(100)に基づいて情報を提供するように構成されたインターフェイス(201)と、インターフェイス(201)に通信可能に結合された処理システム(202)と、を備える。処理システム(202)は、情報を使用して、振動計(5)の導管(130、130´)の第1位置に関連付けられた第1剛性変化を決定し、振動計(5)の導管(130、130´)の第2位置に関連付けられた第2剛性変化を決定し、第1剛性変化及び第2剛性変化に基づいて導管(130、130´)の状態を判定するように構成されている。
【0011】
好ましくは、第1位置は、振動計(5)の導管(130、130´)上の左側ピックオフセンサ(170l)の位置であり、第2位置は、振動計(5)の導管(130、130´)上の右側ピックオフセンサ(170r)の位置である。
【0012】
好ましくは、第1剛性変化は、ドライバ(180)と導管(130、130´)の第1位置との間の導管(130、130´)の物理的な剛性変化を表し、第2剛性変化は、ドライバ(180)と導管(130、130´)の第2位置との間の導管(130、130´)の物理的な剛性変化を表す。
【0013】
好ましくは、計器電子装置(20)は、導管(130、130´)の剛性対称性を決定するようにさらに構成されている。
【0014】
好ましくは、導管(130、130´)の剛性対称性は、第1剛性変化及び第2剛性変化に基づいて決定される。
【0015】
好ましくは、処理システム(202)は、導管の状態の判定に基づいて警報を提供するようにさらに構成されている。
【0016】
好ましくは、導管(130、130´)の状態は、振動計(5)の導管(130、130´)の浸食、腐食、損傷、及び被膜のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
好ましくは、処理システム(202)は、導管(130、130´)の残留可撓性、ダンピング、及び質量のうちの少なくとも1つに基づいて導管(130、130´)の状態を判定するようにさらに構成されている。
【0018】
振動計(5)の変化を検出及び識別するための計器電子装置(20)は、計器検証パラメータの中心傾向値及び計器検証パラメータの分散値を記憶するように構成された記憶システム(204)を含む処理システム(202)を備える。処理システム(202)は、記憶システム(204)から中心傾向値及び分散値を取得し、中心傾向値及び分散値に基づいて確率を決定して、中心傾向値がベースライン値と異なるかどうかを検出するように構成されている。
【0019】
好ましくは、処理システム(202)は、中心傾向値及び分散値に基づいて確率を決定するように構成され、処理システム(202)は、t値を計算し、t値を使用して確率を計算するように構成されている。
【0020】
好ましくは、中心傾向値及び分散値に基づいて確率を決定するように構成されている処理システム(202)は、計器剛性を構成する計器剛性測定値の数に基づいて自由度を計算するように構成されている処理システム(202)を備える。
【0021】
好ましくは、中心傾向値及び分散値に基づいて確率を決定するように構成されている処理システム(202)は、標準偏差及び自由度に基づいて標準誤差を計算するように構成されている処理システム(202)を備える。
【0022】
好ましくは、標準誤差は、次式を使用して計算され、
【0023】
【数1】
【0024】
ここで、
stddevpooledは、計器剛性の標準偏差であり、
nDOFは、自由度である。
好ましくは、分散値は、計器剛性測定値及びベースラインの計器剛性測定値の標準偏差を含むプールされた標準偏差である。
【0025】
好ましくは、確率は、中心傾向値の信頼区間を含む。
【0026】
好ましくは、信頼区間は、ゼロと比較され、信頼区間がゼロを含まない場合、中心傾向値がベースライン値と等しくないことを検出し、信頼区間がゼロを含む場合、中心傾向値がベースライン値と等しいことを検出する。
【0027】
好ましくは、中心傾向値は、計器剛性であり、計器剛性の信頼区間は、次式を使用して計算され、
【0028】
【数2】
【0029】
ここで、
CIは、計器剛性の信頼区間であり、
Stiffnessmeanは、記憶システムから取得された計器剛性(204)であり、
CIrangeは、計器剛性の標準偏差及びt値に基づいて計算された信頼区間の範囲である。
好ましくは、信頼区間の範囲は、次式を使用して計算され、
【0030】
【数3】
【0031】
ここで、
stddevpooledは、計器剛性の標準偏差であり、
tstudent,99,8は、有意水準、及び計器剛性を構成する計器剛性測定値の数から決定された自由度に基づいて計算されたt値である。
【0032】
好ましくは、処理システム(202)は、バイアス不感帯を設定するようにさらに構成され、中心傾向値がバイアス不感帯よりも小さい場合、計器剛性は、中心傾向値と異なっているとしては検出されない。
【0033】
一態様によると、振動計の変化を検出及び識別するための方法は、振動計の導管の第1位置に関連付けられた第1剛性変化を決定することと、振動計の導管の第2位置に関連付けられた第2剛性変化を決定することと、第1剛性変化及び第2剛性変化に基づいて導管の状態を判定することと、を含む。
【0034】
好ましくは、第1位置は、振動計の導管上の左側ピックオフセンサの位置であり、第2位置は、振動計の導管上の右側ピックオフセンサの位置である。
【0035】
好ましくは、第1剛性変化は、ドライバと導管の第1位置との間の導管の物理的な剛性変化を表し、第2剛性変化は、ドライバと導管の第2位置との間の導管の物理的な剛性変化を表す。
【0036】
好ましくは、本方法は、導管の剛性対称性を決定することをさらに含む。
【0037】
好ましくは、導管の剛性対称性は、第1剛性変化及び第2剛性変化に基づいて決定される。
【0038】
好ましくは、本方法は、導管の状態の判定に基づいて警報を提供することをさらに含む。
【0039】
好ましくは、導管の状態は、振動計の導管の浸食、腐食、損傷、及び被膜のうちの少なくとも1つを含む。
【0040】
一態様によると、振動計の導管の変化を検出及び識別するための方法は、振動計の計器電子装置内の記憶装置から計器検証パラメータの中心傾向値及び計器検証パラメータの分散値を取得することと、中心傾向値及び分散値に基づいて確率を決定して、中心傾向値がベースライン値と異なるかどうかを判定することと、を含む。
【0041】
好ましくは、中心傾向値及び分散値に基づいて確率を決定することは、t値を計算することと、t値を使用して確率を計算することと、を含む。
【0042】
好ましくは、中心傾向値及び分散値に基づいて確率を決定することは、計器剛性を構成する計器剛性測定値の数に基づいて自由度を計算することを含む。
【0043】
好ましくは、計器剛性に基づいて確率を決定することは、標準偏差及び自由度に基づいて標準誤差を計算することを含む。
【0044】
好ましくは、標準誤差は、次式を使用して計算され、
【0045】
【数4】
【0046】
ここで、
stddevpooledは、計器剛性の標準偏差であり、
nDOFは、自由度である。
好ましくは、分散値は、計器剛性測定値及びベースラインの計器剛性測定値の標準偏差を含むプールされた標準偏差である。
【0047】
好ましくは、確率は、中心傾向値の信頼区間を含む。
【0048】
好ましくは、信頼区間は、ゼロと比較され、信頼区間がゼロを含まない場合、中心傾向値がベースライン値と等しくないことを検出し、信頼区間がゼロを含む場合、中心傾向値がベースライン値と等しいことを検出する。
【0049】
好ましくは、中心傾向値は、計器剛性であり、計器剛性の信頼区間は、次式を使用して計算され、
【0050】
【数5】
【0051】
ここで、
CIは、計器剛性の信頼区間であり、
Stiffnessmeanは、記憶システムから取得された計器剛性(204)であり、
CIrangeは、計器剛性の標準偏差及びt値に基づいて計算された信頼区間の範囲である。
好ましくは、信頼区間の範囲は、次式を使用して計算され、
【0052】
【数6】
【0053】
ここで、
stddevpooledは、計器剛性の標準偏差であり、
tstudent,99,8は、有意水準、及び計器剛性を構成する計器剛性測定値の数から決定された自由度に基づいて計算されたt値である。
【0054】
好ましくは、本方法は、バイアス不感帯を設定することをさらに含み、中心傾向値がバイアス不感帯よりも小さい場合、中心傾向値は、ベースライン値と異なっているとしては検出されない。
【0055】
一態様によると、振動計の変化を検出及び識別するための方法は、振動計の導管の第1位置に関連付けられた第1剛性変化を決定することと、振動計の導管の第2位置に関連付けられた第2剛性変化を決定することと、第1剛性変化及び第2剛性変化に基づいて導管の状態を判定することと、を含む。
【0056】
好ましくは、第1位置は、振動計の導管上の左側ピックオフセンサの位置であり、第2位置は、振動計の導管上の右側ピックオフセンサの位置である。
【0057】
好ましくは、第1剛性変化は、ドライバと導管の第1位置との間の導管の物理的な剛性変化を表し、第2剛性変化は、ドライバと導管の第2位置との間の導管の物理的な剛性変化を表す。
【0058】
好ましくは、本方法は、導管の剛性対称性を決定することをさらに含む。
【0059】
好ましくは、導管の剛性対称性は、第1剛性変化及び第2剛性変化に基づいて決定される。
【0060】
好ましくは、本方法は、導管の状態の判定に基づいて警報を提供することをさらに含む。
【0061】
好ましくは、導管の状態は、振動計の導管の浸食、腐食、損傷、及び被膜のうちの少なくとも1つを含む。
【0062】
好ましくは、本方法は、導管の残留可撓性、ダンピング、及び質量のうちの少なくとも1つに基づいて導管の状態を判定することをさらに含む。
【0063】
同じ参照番号は、すべての図面で同じ要素を表す。図面は、必ずしも縮尺通りではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、振動計5を示す図である。
図2図2は、一実施形態による、振動計の変化を検出及び識別するための計器電子装置20である。
図3a図3aは、複数の計器検証実行中に決定された剛性変化を示すグラフ300aである。
図3b図3bは、複数の計器検証実行中に決定された剛性対称性変動を示すグラフ300bである。
図4a図4aは、複数の計器検証実行中に決定された剛性変化データ点を示すグラフ400aであり、確率分布が各データ点に割り当てられている。
図4b図4bは、複数の計器検証実行中に決定された剛性対称性変動データ点を示すグラフ400bであり確率分布が各データ点に割り当てられている。
図5a図5aは、複数の計器検証実行中に決定された剛性変化データ点を示すグラフ500aであり、確率が各データ点に割り当てられている。
図5b図5bは、複数の計器検証実行中に決定された剛性対称性変動データ点を示すグラフ500bであり、確率が各データ点に割り当てられている。
図6図6は、一実施形態による、振動計の変化を検出及び識別するための方法600である。
図7図7は、一実施形態による、振動計の変化を検出及び識別するための方法700である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1~7及び以下の説明は、振動計の変化を検出及び識別する実施形態の最良のモードを作成及び使用する方法を当業者に教示するための特定の例を示す。発明の原理を教示する目的で、いくつかの従来の態様は、簡略化又は省略されている。当業者は、本説明の範囲内にあるこれらの例からの変形形態を理解するであろう。当業者は、以下に記載される特徴が様々な仕方で組み合わされて、振動計の変化を検出及び識別する複数の変形形態を形成できることを理解するであろう。結果として、以下に記載される実施形態は、以下に記載される具体的な例に限定されず、特許請求の範囲及びそれらの均等物によってのみ限定される。
【0066】
統計を利用することによって、振動計の変化を正確に検出することができる。例えば、統計ソフトウェアを実行するコンピュータワークステーションと比較して、計器電子装置には限られた計算能力しかないため、統計は、以前は計器電子装置では使用されていなかった。本明細書で使用される統計的方法は、計器電子装置の処理システムのレジスタで利用可能なデータを利用して、埋め込まれたコードが、振動計に変化が存在しない確率を計算できるようにする。この確率を計算することによって、変化が生じていないという帰無仮説を反証することができ、それによって振動計に変化が生じたことを示すことができる。確率は、計器電子装置によって計算されるため、計算リソースが限られている場合でさえ、計器検証が実行されると、この確率を更新することができる。したがって、剛性変化を、例えば、所定の制限と比較することによっては検出されない変化を検出することができる。加えて、変化を正確に検出することにより、誤警報を防止することができる。
【0067】
振動計の変化は、導管の第1位置に関連付けられた第1剛性変化及び導管の第2位置に関連付けられた第2剛性変化に基づいて、振動計の導管の浸食、腐食、損傷などの状態を判定することによって識別することができる。例えば、状態は、第1及び第2剛性変化が剛性の増加又は減少を示すかどうかに基づいて決定されてもよい。さらに、第1及び第2剛性変化の対称性を使用して、状態を判定することができる。一例では、第1剛性変化が減少を示し、第2剛性変化が増加を示し、剛性対称性が「右低」と見なされる場合、判定される状態は、振動計の導管の浸食又は腐食である可能性がある。
【0068】
図1は、振動計5を示す。図1に示すように、振動計5は、計器アセンブリ10及び計器電子装置20を備える。計器アセンブリ10は、プロセス物質の質量流量及び密度に応答する。計器電子装置20は、センサ信号100を介して計器アセンブリ10に接続され、経路26上の密度、質量流量、及び温度情報、並びに他の情報を提供する。
【0069】
計器アセンブリ10は、一対のマニホールド150及び150´と、フランジネック110及び110´を有するフランジ103及び103´と、一対の平行導管130及び130´と、ドライバ180と、抵抗温度検出器(RTD)190と、一対のピックオフセンサ170l及び170rと、を含む。導管130及び130´は、2つの本質的に真っ直ぐな入口区間131、131´と、出口区間134、134´と、を有し、これらは、導管取り付けブロック120及び120´において互いに向かって収束している。導管130、130´は、それらの長さに沿って2つの対称な位置で曲がり、それらの長さ全体にわたって本質的に平行である。ブレースバー140及び140´は、軸W及びW´を画定する役割を果たし、この軸W及びW´を中心として各導管130、130´が振動する。導管130、130´の区間131、131´及び134、134´は、導管取り付けブロック120及び120´に固定して取り付けられ、これらのブロックがマニホールド150及び150´に固定して取り付けられている。これにより、計器アセンブリ10を通る連続した閉じた物質経路が提供される。
【0070】
孔102及び102´を有するフランジ103及び103´が、入口端104及び出口端104´を介して、測定されているプロセス物質を運ぶプロセスライン(図示せず)に接続されると、物質は、フランジ103のオリフィス101を通って計器の入口端104に入り、マニホールド150を通って表面121を有する導管取り付けブロック120に導かれる。マニホールド150内で、物質は分割され、導管130、130´を通して送られる。導管130、130´を出ると、プロセス物質は、表面121´及びマニホールド150´を有するブロック120´内で単一の流れに再結合され、その後、孔102´を有するフランジ103´によってプロセスライン(図示せず)に接続された出口端104´に送られる。
【0071】
導管130、130´は、それぞれ曲げ軸W-W及びW´-W´の周りに実質的に同じ質量分布、慣性モーメント、及びヤング率を有するように選択され、導管取り付けブロック120、120´に適切に取り付けられている。これらの曲げ軸は、ブレースバー140、140´を通過する。 導管のヤング率が温度とともに変化し、この変化が流れ及び密度の計算に影響を与えるため、RTD190は、導管130´に取り付けられて、導管130´の温度を連続的に測定する。導管130´の温度、したがってRTD190を通過する所与の電流に対してRTD190の両端間に現れる電圧は、導管130´を通過する物質の温度によって支配される。RTD190の両端間に現れる温度依存電圧は、周知の方法で計器電子装置20によって使用され、導管温度の変化に起因する導管130、130´の弾性係数の変化を補償する。RTD190は、リード線195によって計器電子装置20に接続されている。
【0072】
導管130、130´の両方は、それらのそれぞれの曲げ軸W及びW´を中心として反対方向に、流量計の第1位相ずれ曲げモードと呼ばれるもので、ドライバ180によって駆動される。このドライバ180は、導管130´に取り付けられた磁石、及び導管130に取り付けられ、両方の導管130、130´を振動させるために交流電流が通過する対向コイルなどの、多くの周知の装置のいずれか1つを含むことができる。適切な駆動信号が、計器電子装置20によってリード線185を介してドライバ180に印加される。
【0073】
計器電子装置20は、リード線195上のRTD温度信号、及び左側及び右側センサ信号165l、165rをそれぞれ運ぶセンサ信号100上に現れる左側及び右側センサ信号を受信する。計器電子装置20は、リード線185上に現れる駆動信号をドライバ180に対して生成し、導管130、130´を振動させる。計器電子装置20は、左側及び右側センサ信号及びRTD信号を処理して、計器アセンブリ10を通過する物質の質量流量及び密度を計算する。この情報は、他の情報とともに、計器電子装置20によって信号として経路26上に印加される。
【0074】
質量流量測定値
【0075】
【数7】
【0076】
は、次式に従って生成することができる。
【0077】
【数8】
【0078】
Δt項は、ピックオフセンサ信号間に存在する時間遅延を含む、動作上導出された(すなわち、測定された)時間遅延値を含み、例えば、この時間遅延は、振動計5を通る質量流量に関連するコリオリ効果に起因する。測定されたΔt項は、振動計5を流れる流れ物質の質量流量を最終的に決定する。Δt項は、ゼロ流量較正定数での時間遅延を含む。Δt項は、典型的には、工場で決定され、振動計5にプログラムされる。ゼロ流量での時間遅延Δt項は、流れ条件が変化している場合であっても変化しない。流量較正係数FCFは、流量計の剛性に比例する。
【0079】
導管が時間とともに変化する可能性があることが問題であり、導管130、130´が腐食、浸食、又はその他の方法で変化するにつれて、最初の工場較正が時間とともに変化する可能性がある。結果として、導管の130、130´の剛性は、振動計5の寿命にわたって最初の代表的な剛性値(又は元の測定された剛性値)から変化する可能性がある。以下で説明するように、計器検証は、導管130、130´の剛性のこのような変化を検出することができる。
【0080】
図2は、一実施形態による、振動計の変化を検出及び識別するための計器電子装置20である。計器電子装置20は、インターフェイス201及び処理システム202を含むことができる。計器電子装置20は、例えば、計器アセンブリ10からの振動応答を受信する。計器電子装置20は、振動応答を処理して、計器アセンブリ10を通って流れる流れ物質の流れ特性を取得する。
【0081】
前述したように、流量較正係数FCFは、流管の物質特性及び断面特性を反映する。流量計を流れる流れ物質の質量流量は、測定された時間遅延(又は位相差/周波数)に流量較正係数FCFを乗算することによって決定される。流量較正係数FCFは、計器アセンブリの剛性特性に関連することができる。計器アセンブリの剛性特性が変化した場合、流量較正係数FCFも変化する。したがって、流量計の剛性変化は、流量計によって生成される流量測定値の精度に影響を与える。
【0082】
インターフェイス201は、図1のセンサ信号100を介してピックオフセンサ170l、170rのうちの1つから振動応答を受信する。インターフェイス201は、例えば、任意の様式のフォーマッティング、増幅、バッファリングなどの、任意の必要な又は所望の信号調整を実行することができる。あるいは、信号調整の一部又はすべてを処理システム202において実行することができる。加えて、インターフェイス201は、計器電子装置20と外部デバイスとの間の通信を可能にすることができる。インターフェイス201は、任意の様式の電子的、光学的、又は無線通信が可能である場合がある。インターフェイス201は、振動応答に基づいて情報を提供することができる。
【0083】
一実施形態におけるインターフェイス201は、デジタイザ(図示せず)と結合され、センサ信号は、アナログセンサ信号を含む。デジタイザは、アナログの振動応答をサンプリングしてデジタル化し、デジタルの振動応答を生成する。
【0084】
処理システム202は、計器電子装置20の動作を行い、計器アセンブリ10からの流れ測定値を処理する。処理システム202は、1つ又は複数の処理ルーチンを実行し、それによって1つ又は複数の流れ特性を生成するために流れ測定値を処理する。処理システム202は、インターフェイス201に通信可能に結合され、インターフェイス201から情報を受信するように構成されている。
【0085】
処理システム202は、汎用コンピュータ、マイクロ処理システム、論理回路、又はなんらかの他の汎用又はカスタマイズされた処理デバイスを備えることができる。加えて又は代替として、処理システム202を複数の処理デバイス間で分散させることができる。処理システム202は、記憶システム204などの任意の様式の一体型又は独立型の電子記憶媒体を含むこともできる。
【0086】
記憶システム204は、流量計パラメータ及びデータ、ソフトウェアルーチン、定数値、並びに変数値を記憶することができる。一実施形態では、記憶システム204は、振動計5の動作ルーチン210及び検証220などの、処理システム202によって実行されるルーチンを含む。記憶システムは、標準偏差、信頼区間などの統計値を記憶することもできる。
【0087】
記憶システム204は、ベースライン計器剛性230を記憶することができる。ベースライン計器剛性230は、振動計5の製造中又は較正中に、あるいは前の再較正中に決定されてもよい。例えば、ベースライン計器剛性230は、振動計5がフィールドに設置される前に、検証220によって決定することができる。ベースライン計器剛性230は、浸食/腐食、損傷(例えば、凍結、過圧など)、被膜などの任意の変化が発生する前の導管130、130´の剛性を表す。ベースライン計器剛性230は、複数のベースライン計器剛性測定値の平均値であってもよい。したがって、ベースライン計器剛性230は、以下でより詳細に説明するように、関連付けられた分散特性を有してもよく、ベースライン計器剛性測定値は、変化してもよい。ベースライン計器剛性測定値の変化が大きいほど、分散が大きくなる。
【0088】
記憶システム204は、計器剛性232を記憶することができる。計器剛性232は、振動計5の動作中に生成される振動応答から決定される剛性値を含む。計器剛性232は、振動計5の適切な動作を検証するために生成されてもよい。計器剛性232は、検証プロセスのために生成されてもよく、計器剛性232は、振動計5の適切かつ正確な動作を検証する目的を果たす。ベースライン計器剛性230と同様に、計器剛性232は、複数の計器剛性測定値の平均値であってもよい。したがって、計器剛性232は、以下でより詳細に論じるように、関連付けられた分散特性を有してもよく、計器剛性測定値は、変化してもよい。計器剛性測定値の変化が大きいほど、分散特性が大きくなる。
【0089】
記憶システム204は、剛性変化234を記憶することができる。剛性変化234は、ベースライン計器剛性230と計器剛性232を比較することによって決定される値とすることができる。例えば、剛性変化234は、ベースライン計器剛性230と計器剛性232の差とすることができる。本例では、負の数は、導管130、130´の剛性が、フィールドに設置されてから増加したことを示している可能性がある。正の数は、ベースライン計器剛性230が決定されてから、導管130、130´の物理的な剛性が減少したことを示している可能性がある。
【0090】
理解できるように、比較は、様々な仕方で実行されてもよい。例えば、剛性変化234は、計器剛性232と、ベースライン計器剛性230の差であってもよい。したがって、剛性の増加は、結果として正の数になり、剛性の減少は、結果として負の数になる。加えて又は代替として、ベースライン計器剛性230及び/又は計器剛性232から導出された値、あるいはそれらに関連した値、例えば、導管の幾何学的形状、寸法などの他の値を用いる比が用いられてもよい。
【0091】
計器剛性232がベースライン計器剛性230と実質的に同じである場合、振動計5、より具体的には、導管130、130´は、製造されたとき、較正されたとき、又は振動計5が最後に再較正されたときから比較的変化していない可能性があると判断することができる。あるいは、計器剛性232がベースライン計器剛性230と著しく異なる場合、導管130、130´が浸食、腐食、損傷(例えば、凍結、過圧など)、被膜、又はその他の状態に起因して変化したなどの、導管130、130´が劣化し、正確かつ確実に動作していない可能性があると判断することができる。
【0092】
上述したように、ベースライン計器剛性230及び計器剛性232は、左側及び右側ピックオフセンサ170l、170rの両方について判定される。すなわち、ベースライン計器剛性230及び計器剛性232は、左側及び右側ピックオフセンサ170l、170r間の導管130、130´の剛性に比例する。結果として、導管130、130´の異なる状態は、同様の剛性変化234を引き起こす可能性がある。例えば、導管130、130´への浸食、腐食、及び/又は損傷は、結果として物理的な剛性に同様の減少をもたらす可能性があり、これは、負の又は「低い」剛性変化234によって示されることがある。したがって、剛性変化234のみに依存する場合、導管130、130´の特定の状態が確認できない場合がある。
【0093】
しかしながら、左側ピックオフセンサ170l及び右側ピックオフセンサ170rはそれぞれ、それ自体の関連付けられた剛性値を有することができる。より具体的には、上述したように、ドライバ180は、導管130、130´に力を印加し、ピックオフセンサ170l、170rは、結果として生じるたわみを測定する。ピックオフセンサ170l、170rの位置での導管130、130´のたわみ量は、ドライバ180とピックオフセンサ170l、170rとの間の導管130、130´の剛性に比例する。
【0094】
したがって、左側ピックオフセンサ170lに関連付けられた剛性は、ドライバ180と左側ピックオフセンサ170lとの間の導管130、130´の物理的な剛性に比例し、右側ピックオフセンサ170rに関連付けられた剛性は、ドライバ180と右側ピックオフセンサ170rとの間の導管130、130´の物理的な剛性に比例する。したがって、ドライバ180と、例えば、右側ピックオフセンサ170rとの間に、浸食、腐食、損傷、被膜などがある場合、右側ピックオフセンサ170rに関連付けられた剛性は、減少する可能性があるが、左側ピックオフセンサ170lに関連付けられた剛性は、変化しない可能性がある。変化を追跡するために、記憶システム204は、左側及び右側ピックオフセンサ170l、170rに関連付けられた剛性値も含むことができる。
【0095】
例えば、図2に示すように、記憶システム204は、ドライバ180と、導管130、130´上の左側ピックオフセンサ170lの位置との間の導管130、130´の物理的な剛性に比例するベースラインLPO剛性240を含む。同様に、記憶システム204は、ドライバ180と、導管130、130´上の右側ピックオフセンサ170rの位置との間の導管130、130´の物理的な剛性に比例するベースラインRPO剛性250も含む。ベースラインLPO及びRPO剛性240、250は、例えば、振動計5の製造中又は較正中、あるいは前の再較正中など、振動計5がフィールドに設置される前に、検証220によって決定されてもよい。
【0096】
記憶システム204は、LPO剛性242及びRPO剛性252も含む。LPO剛性242は、ドライバ180と左側ピックオフセンサ170lの位置との間の導管130、130´の物理的な剛性に比例するが、ベースラインLPO剛性240が決定された後である。同様に、RPO剛性252は、ドライバ180と右側ピックオフセンサ170rの位置との間の導管130、130´の物理的な剛性に比例するが、ベースラインRPO剛性250が決定された後である。
【0097】
また、図2に示すように、記憶システム204は、LPO剛性変化244及びRPO剛性変化254をさらに含む。LPO及びRPO剛性変化244、254は、ベースラインLPO、RPO剛性240、250とLPO、RPO剛性242、252の差に比例する。例えば、負のLPO剛性変化244は、ドライバ180と左側ピックオフセンサ170lとの間の導管130、130´の物理的な剛性が増加したことを示している可能性がある。正のLPO剛性変化244は、ベースラインLPO剛性240が決定された以後、ドライバ180と左側ピックオフセンサ170lとの間の導管130、130´の物理的な剛性が減少したことを示している可能性がある。あるいは、LPO及びRPO剛性変化244、254は、LPO及びRPO剛性242、252とベースラインLPO及びRPO剛性240、250の差であってもよい。したがって、例えば、正のLPO剛性変化244は、ベースラインLPO剛性240が決定された以後、ドライバ180と左側ピックオフセンサ170lとの間の導管130、130´の物理的な剛性が増加したことを示している可能性がある。LPO及びRPO剛性変化244、254は、差から決定されるものとして説明されているが、ベースラインLPO及びRPO剛性240、250並びにLPO及びRPO剛性242、252から導出された又はそれらに関連する任意の値、例えば、剛性値と、導管の幾何学的形状、寸法などの他の値との比を用いることができる。LPO及びRPOの剛性変化244、254は、整数、比、パーセンテージなどの適切な単位で表すことができる。
【0098】
左側及び右側ピックオフセンサ170l、170rに関連付けられた物理的な剛性の増加又は減少は、物理的な剛性変化を引き起こしている導管130、130´の根本的な状態を示している可能性がある。例えば、導管130、130´の内壁の浸食は、導管130、130´の物理的な剛性を減少させる可能性がある。特に、例えば、左側ピックオフセンサ170lとドライバ180との間の導管130、130´の内壁の浸食は、左側ピックオフセンサ170lとドライバ180との間の導管130、130´の物理的な剛性を減少させることがある。逆に、剛性の増加は、例えば、内壁に被膜が形成されたことを示している可能性がある。
【0099】
加えて、ドライバ180と左側ピックオフセンサ170lとの間の導管130、130´の物理的な剛性、及びドライバ180と右側ピックオフセンサ170rとの間の導管130、130´の物理的な剛性の相対的な増加又は減少は、物理的な剛性変化を引き起こす導管130、130´の根本的な状態をさらに示している可能性がある。物理的な剛性のこの相対的な増加又は減少は、記憶システム204の剛性対称性260によって示されてもよい。
【0100】
剛性対称性260は、例えば、LPO剛性変化244とRPO剛性変化254の相対値を示す任意の適切な値であってもよい。例えば、LPO剛性変化244及びRPO剛性変化254は、左側及び右側ピックオフセンサ170l、170rに関連付けられた導管130、130´の物理的な剛性が両方とも増加したが、例えば、左側ピックオフセンサ170lに関連付けられた物理的な剛性が、右側ピックオフセンサ170rに関連付けられた物理的な剛性よりも増加したことを示してもよい。一例では、剛性対称性260は、パーセンテージで表すことができ、以下によって決定することができる。
【0101】
【数9】
【0102】
ここで、
SMVStiffness,LPO%は、本例では、パーセンテージ変化で表されるLPO剛性変化244であり、
SMVStiffness,RPO%は、本例では、パーセンテージ変化で表されるRPO剛性変化254である。
【0103】
剛性変化234、LPO剛性変化244、RPO剛性変化254、及び剛性対称性260は、例えば、測定されている特性に正比例する値、物理的な剛性を表す中間値、物理的な剛性の増加又は減少があったかどうかを示す値などの任意の適切な値であってもよい。例えば、LPO剛性変化244は、剛性変化に比例する正又は負の値であってもよい。処理システム202は、これらの値をさらに処理して、ドライバ180と左側ピックオフセンサ170lとの間の導管130、130´の物理的な剛性の増加又は減少のみが示されるトグルインジケータを生成することができる。以下の真理値表に示すように、これらの値及び/又はトグルインジケータを使用して、導管130、130´の根本的な変化を決定することができる。
【0104】
【表1】
【0105】
見て分かるように、LPO剛性変化244、RPO剛性変化254、及び剛性対称性260の組合せを使用して、導管130、130´の様々な可能性のある変化を区別することができる。例えば、J及びNの両方のケースでは、剛性対称性260の値が「低右」であり、RPO剛性変化254が「低」である。しかしながら、ケースJでは、LPO剛性変化244が「低」であるが、ケースNでは、LPO剛性変化244が「高」である。ケースJは、導管130、130´の可能性のある浸食/腐食として示され、ケースNは、導管130、130´の可能性のある被膜として示されている。
【0106】
上記の表は、LPO剛性変化244、RPO剛性変化254、及び剛性対称性260を利用して、導管130、130´の状態を判定しているが、代替の表、論理、オブジェクト、関係、回路、プロセッサ、ルーチンなどの任意の適切な手段を用いて、導管内の状態を判定することができる。例えば、図2を参照して説明した計器電子装置20を参照すると、LPO剛性変化244及びRPO剛性変化254のみを利用して、導管130、130´の状態を判定することができる。しかしながら、理解できるように、剛性対称性260を利用することにより、導管130、130´の状態のより具体的な判定が可能になる場合がある。
【0107】
加えて又は代替として、LPO剛性変化244、RPO剛性変化254、及び剛性対称性260の実際の値が、導管の状態を判定するためにトグルインジケータの代わりに用いられてもよい。例えば、上記の表によって判定される状態は、例えば、剛性対称性260が比較的小さい「右低」である場合、ケースJが浸食ではなく腐食である可能性が高いと判定するさらなるステップによって補足されてもよい。 すなわち、比較的小さい「右低」剛性対称性260は、導管の入口でより一般的である可能性がある浸食と比較して腐食のより均一な性質によるものである可能性がある。
【0108】
上記の議論は、計器剛性に関連したが、加えて又は代替として、他の計器検証パラメータが用いられてもよい。例えば、残留可撓性がベースライン残留可撓性と比較されてもよい。残留可撓性は、別の振動モードの共振周波数にある1つの振動モードに関連付けられた周波数応答の一部として定義することができる。例えば、様々な振動モード(例えば、曲げ、ねじれなど)の周波数応答は、周波数応答関数(例えば、周波数に対する振幅応答)として特徴付けられてもよい。周波数応答関数は、典型的には、所与の振動モードの共振周波数を中心とし、振幅が共振周波数からの距離に比例して斜めに減少する。例えば、ブレースバーに位置する2つのノードを有する1次曲げモード(例えば、主位相外れ曲げモード)は、1次曲げモードの共振周波数ωを有することができる。4つのノードを有する2次曲げモードは、1次曲げモードの共振周波数ωよりも高い2次曲げモードの共振周波数を有することができる。2次曲げモードの周波数応答関数は、1次曲げモードの共振周波数ωに重なることができる。したがって、2次曲げモードによって引き起こされる1次曲げモードの残留可撓性は、1次曲げモードの共振周波数ωにある2次曲げモードの周波数応答関数の一部である。理解できるように、浸食、腐食、損傷、被膜などが発生すると、各振動モードの周波数応答が変化するため、所与のモードのこの残留可撓性値が変化する可能性がある。したがって、残留可撓性を使用して、振動計の変化を識別することもできる。
【0109】
ダンピングも用いることができる。例えば、計器検証では、測定されたダンピング値をベースラインのダンピング値と比較することができる。ダンピングは、浸食や腐食の影響を受けないため、ダンピングは、被膜を検出するのに有用な場合がある。
【0110】
同様に、左又は右のピックオフセンサ170l、170rに関連付けられた質量は、左又は右のピックオフセンサ170l、170rに関連付けられたベースライン質量と比較することができる。一例では、予測質量が用いられてもよい。一例では、較正された空気及び水の質量値に基づく予測質量、並びにプロセス流体の測定された又は既知の密度は、以下の式、
【0111】
【数10】
【0112】
を使用して計算することができ、
ここで、
mexpectedは、予測質量、すなわち振動計に変化が発生しなかった場合に測定されるべき質量であり、
mfactory,airは、振動計が空気で満たされた場合の測定された質量であり、
ρairは、空気の密度であり、
ρwaterは、水の密度値であり、
ρkwownは、測定される物質の密度である。
予測質量mexpectedを使用して、次式によりパーセントとして表される正規化された質量偏差を計算することができ、
【0113】
【数11】
【0114】
ここで、
mmeasuredは、計器検証中に測定された質量であり、
mDeviationは、予測質量mexpectedからの測定された質量の質量偏差mmeasuredである。
理解できるように、浸食、腐食、損傷、被膜などは、振動計の導管の質量に影響を与える可能性がある。したがって、予測質量は、測定された質量を予測質量と比較することによって、振動計の変化を検出するために使用することができる。
【0115】
上記で論じたように、導管の幾何学的形状も、導管の状態を判定する際に考慮されてもよい。例えば、U字形状の管は、例えば、直線管と比較して、導管内の特定の場所で腐食よりも浸食されやすい場合がある。加えて又は代替として、いくつかのプロセス/導管の組合せは、特定の条件を、より影響を受けやすい場合がある。例えば、導管130、130´は、腐食性物質を用いる高温プロセスと比較して、窒素を用いる極低温プロセスにおいて損傷をより受けやすい場合がある。したがって、LPO剛性変化244、RPO剛性変化254、及び剛性対称性260、又はこれらの値を使用する方法は、例えば、導管の幾何学的形状、構造、寸法、プロセス変数などに関連する要因などの他の値を含むことができる。
【0116】
図2からも分かるように、記憶システム204は、剛性標準偏差236、LPO剛性標準偏差246、及びRPO剛性標準偏差256を記憶することもできる。これらの値は、例えば、ベースライン計器剛性230及び計器剛性232を含む計器剛性測定値から決定することができる。例えば、剛性標準偏差236は、プールされた標準偏差であってもよい。したがって、剛性標準偏差236は、ベースライン計器剛性230を構成する計器剛性測定値を含む、計器剛性232がどれだけ変化したかの尺度である。LPO剛性標準偏差246及びRPO剛性標準偏差256も、プールされた標準偏差であってもよい。
【0117】
図2に示す例は、剛性標準偏差を利用しているが、計器検証パラメータデータにおける変動及び分散の他の尺度が採用されてもよい。例えば、標準偏差の代わりに分散が用いられてもよい。すなわち、剛性標準偏差236、LPO剛性標準偏差246、及びRPO剛性標準偏差256は、例示的な計器検証パラメータの分散値である。加えて、又は代替として、ベースライン計器剛性230及び計器剛性232に用いることができる平均値の代わりに、中心傾向の他の尺度を用いることができる。したがって、ベースライン計器剛性230及び計器剛性232は、例示的な計器検証パラメータの中心傾向値である。
【0118】
記憶装置は、信頼区間270などの他の統計値も記憶することができる。以下でより詳細に説明されるように、信頼区間270は、t値272、有意水準274、及び自由度276に基づいて計算することができる。有意水準274は、例えば、検証220によって設定されるスカラー値であってもよい。有意水準274は、仮説が実際に真である(例えば、振動計に変化が生じなかったときの変化を検出する)ときに、帰無仮説を棄却する確率として定義することができ、典型的には、1%すなわち0.01などの小さな値である。自由度276は、例えば、剛性標準偏差236を決定するために使用されるサンプルの数から計算される。バイアス不感帯278も示されており、これは、振動計のバイアスが誤ったフラグを誘発しないことを確実にするために検証220によって設定することもできるスカラー値である。
【0119】
信頼区間270は、振動計5の物理的な剛性の小さな変化を検出することができる一方で、例えば、以前に計器検証で使用された所定の制限と比較して、誤警報の数も低減させることができる。さらに、信頼区間270は、比較的単純な数学的演算を使用して計算することができ、それによって、処理システム202は、比較的単純な埋め込みコードを用いる検証220を使用して、ロバストな統計技法を用いることができる。
【0120】
所定の警報制限
図3a及び図3bは、複数の計器検証実行中に決定された剛性変化及び剛性対称性変動を示すグラフ300a、グラフ300bを示す。図示するように、グラフ300a、300bは、実行番号軸310a、310bを含む。実行番号軸310a、310bは、0~600の範囲にあり、計器検証の実行番号を示す。例えば、実行番号「100」は、600回の計器検証実行のうちの100回目の計器検証実行を示す。グラフ300aは、剛性軸320aにパーセント変化も含み、これは、例えば、LPO剛性変化244及びRPO剛性変化254のパーセンテージ表現である。グラフ300bは、パーセント剛性差軸320bを含み、これは、例えば、剛性対称性260のパーセンテージ表現である。例えば、0パーセントの剛性差は、例えば、LPO剛性変化244がRPO剛性変化254に等しいことを意味する。また、グラフ300a、300bには、剛性変化データ330a及び剛性差データ330bがそれぞれ示されている。
【0121】
剛性変化データ330a及び剛性差データ330bは、被膜が導管内に存在する様々な流れ物質/流量構成について実行のグループにおいて決定されたデータ点から構成される。より具体的には、4つのデータのグループがあり、これらは、剛性差データ330bから識別可能である。最初の2つのグループは、高水量及び低水量に基づいていてもよい。後の2つのグループは、高空気流及び低空気流に基づいていてもよい。
【0122】
図3aに示すグラフ300aは、所与の計器検証実行についての剛性変化を表すデータ点から構成される剛性変化データ330aを含む。見て分かるように、剛性変化データ330aは、約-0.3%~約2.0%の範囲にある。理解できるように、これは、剛性が変化していることを示しているように見える。しかしながら、警報制限が、例えば4%に設定されている場合は、警報が発生しない可能性がある。
【0123】
図3bに示すグラフ300bは、剛性差、例えば、LPO剛性変化244及びRPO剛性変化254を表すデータ点から構成される剛性差データ330bを含む。見て分かるように、剛性差データ330bは、約-0.4%~約0.6%の範囲にある。やはり見て分かるように、剛性差データ330は、識別可能な傾向に従わない散発的なデータ点を含む。加えて、剛性差データ330bは、剛性対称性値が導管内の物質によって影響を受ける可能性があることを示唆している。
【0124】
グラフ300a、300bは、警報の制限又は範囲が振動計の変化に関連付けられた剛性変化よりも大きい場合、警報が発せられない可能性があることを示している。さらに、警報制限が散発的なデータ点よりも小さい場合、誤警報が発生する可能性がある。以下は、制限をなくし、埋め込みシステムで実行することができる統計を採用することよって、この問題に対処する。
【0125】
埋め込みコードのための統計
結果の確率を計算する統計的方法は、振動計の変化を検出するために使用することができるが、その複雑さのために、計器電子装置20では実行することができない。例えば、P及びT統計は、所与のデータのセットについて帰無仮説が満たされるかどうかを検定するために用いられることがある。帰無仮説の棄却は、状態が振動計に存在するかどうかを判定しているのではなく、状態の欠如があることが偽であると判定する。計器検証の場合、帰無仮説は、「現在の計器検証結果がベースライン計器検証結果と同じ平均値を有する」として定義されてもよい。この帰無仮説が反証される場合、振動計の変化により、現在の結果の平均値がベースライン計器検証結果と同じではないと推定することができる。
【0126】
例として、t検定では、t値は、次式を使用して計算することができ、
【0127】
【数12】
【0128】
ここで、
μは、ある指定された値であり、
【0129】
【数13】
【0130】
は、サンプルの平均値であり、
sは、サンプルの標準偏差であり、
nは、サンプルのサイズである。
計器検証の文脈では、μは、ベースライン剛性値などの基準計器の検証値である。計器検証測定値を使用して、基準計器検証値と比較するためのサンプルの平均値
【0131】
【数14】
【0132】
及びサンプルの標準偏差sを計算する。計器検証測定値の数は、サンプルのサイズnである。t検定は、典型的には、自由度も含み、これは、上記の式[1]では、n-1として定義される。
【0133】
上で論じたように、t検定を使用して帰無仮説を検定することができ、これは、計器検証の場合、サンプルの平均値
【0134】
【数15】
【0135】
が基準計器検証値と等しいかどうかとして定義されてもよい。帰無仮説を検定するために、t値の既知の分布を使用してP値が計算されてもよい。帰無仮説を検定するために、P値を有意水準αと比較する。有意水準αは、典型的には、例えば、0.01、0.05、又は0.10などの小さな値に設定される。P値が有意水準α以下の場合、帰無仮説は、対立仮説のために棄却される。帰無仮説は、「現在の計器検証結果がベースライン計器検証結果と同じ平均値を有する」として定義されているため、対立仮説は、現在の計器検証が同じ平均値を有しておらず、したがって、計器に変化が生じたということである。
【0136】
しかしながら、P値は、限られた計算リソースでは計算するのが困難である。例えば、P値は、オペレーティングシステムと統計ソフトウェアを備えたコンピュータワークステーションで計算することができるが、埋め込みシステムでは簡単に計算することができない。上述の計器電子装置20は、限られた計算リソースを備えた埋め込みシステムである場合がある。加えて、計器電子装置でその場で又はリアルタイムで帰無仮説を棄却する能力は、計器電子装置20が誤警報を送信するのを防止することができる一方で、導管130、130´の変化を正確に検出することもでき、これは、所定の警報制限の使用と比べて著しい改善である。
【0137】
この目的のために、P値の代わりに、計器電子装置20の限られたコンピューティングリソースを活用する信頼区間が使用さる。その結果、信頼区間は、計器電子装置20に埋め込まれたコードを使用して計算することができる。例えば、計器電子装置20は、2つのレジスタに記憶された現在の剛性値及び剛性標準偏差値を有することができる。理解できるように、上述のt値は、有意水準α及び自由度を使用することによって、現在の剛性値を使用して計算することができる。例として、有意水準αは、99%の信頼水準である0.01に設定されてもよい。計器検証テストの数は、5として設定されてもよい。したがって、プールされた自由度は、2・(5-1)=8であると決定される。両側のスチューデントt値は、有意水準αとプールされた自由度から、スチューデントt値関数を使用して次のように計算することができる。
【0138】
【数16】
【0139】
左側及び右側ピックオフセンサ170l、170rに関連付けられた剛性値のプールされた標準偏差も使用することができる。一般的なケースでは、プールされた標準偏差の計算は、複雑である可能性がある。しかしながら、計器電子装置20が測定された剛性標準偏差をレジスタに記憶しているため、プールされた標準偏差は、単に上述の剛性標準偏差236などの記憶された標準偏差とすることができる。プールされた標準誤差を計算することもでき、これは、次のように定義される。
【0140】
【数17】
【0141】
【数18】
【0142】
【数19】
【0143】
上記で決定した標準誤差及びt値を使用して、信頼区間の範囲を次のように計算することができる。
【0144】
【数20】
【0145】
【数21】
【0146】
最後に、信頼区間は、剛性平均値及び信頼区間の範囲を使用して計算することができ、これは、以下で示される。
【0147】
【数22】
【0148】
信頼区間に0.0が含まれているかどうかを判定することによって、信頼区間を使用して帰無仮説を検定することができる。信頼区間に0.0が含まれている場合、帰無仮説は、棄却されず、計器検証が合格となる。信頼区間に0.0が含まれていない場合、帰無仮説が棄却され、計器検証障害が送信される可能性がある。
【0149】
理解できるように、計器電子装置20が剛性値及び剛性標準偏差値を記憶するP値の代わりに信頼区間を使用することによって、計算は、比較的単純になり、埋め込みコードを使用して実行することができる。例えば、P値を計算するのに十分な計算リソースを有していない可能性がある計器電子装置20は、その場の又はリアルタイムの統計分析を実行するための信頼区間を計算することができる。これも理解できるように、信頼区間は、所望の信頼水準で帰無仮説を検定するために使用することができる。
【0150】
信頼区間に加えて、バイアス不感帯をゼロ付近で定義して、計器剛性測定値のバイアスを考慮することができる。計器剛性測定値のバイアスは、取り付け、密度、温度勾配、又は計器検証測定値に影響を与える可能性がある振動計の他の状態に起因する場合がある。t検定におけるこのバイアス不感帯は、ゼロ付近の値であり、その場合、普通ならば信頼区間チェックにより仮説が棄却される小さな変動を有する小さなバイアスは、仮説を棄却しない。したがって、このバイアス不感帯は、計器電子装置20によって送信される誤警報の数を減らす値に設定することができる。
【0151】
ゼロと比較される信頼区間の例では、バイアス不感帯は、ゼロ付近の範囲にあり、ゼロが信頼区間内にないが、バイアス不感帯の一部が信頼区間内にある場合、帰無仮説は、棄却されない。数学的には、この検定は、平均計器剛性値がバイアス不感帯よりも小さいかどうかとして表すことができる。又は、上記の命名法を使用して、
【0152】
【数23】
【0153】
である場合、ここで、dbbiasは、バイアス不感帯であり、帰無仮説を棄却することができない。
【0154】
バイアス不感帯は、単独で、又は他の不感帯と組み合わせて実装することができる。例えば、バイアス不感帯は、変動不感帯と組み合わせて実装することができる。一例では、変動不感帯は、dbvariation=dbbias/tstudent,99,8から決定することができ、ここで、dbvariationは、変動不感帯である。変動不感帯を計器剛性の標準偏差と比較して、帰無仮説を棄却する必要があるかどうかを判定することができる。一例では、バイアス不感帯は、上述したように比較されてもよく、変動不感帯を次のように計器剛性の標準偏差と比較することができる。
【0155】
【数24】
【0156】
の場合、かつs<dbvariationの場合、帰無仮説を棄却することができない。前述の検定は、信頼区間チェックによって帰無仮説が棄却された後に利用することができる。あるいは、
【0157】
【数25】
【0158】
の場合、かつs<dbvariationの場合、平均計器剛性
【0159】
【数26】
【0160】
は、ゼロに設定され、計器剛性変動は、変動不感帯に等しくなる。したがって、信頼区間チェックが実行されると、計器剛性測定値のバイアスのために帰無仮説が棄却されない場合がある。
【0161】
図4a及び図4bは、複数の計器検証実行中に決定された剛性変化データ点及び剛性対称性変動データ点を示すグラフ400a、400bを示し、確率分布が各データ点に割り当てられている。図示するように、グラフ400a、400bは、実行番号軸410a、410bを含む。実行番号軸410a、410bは、0~600の範囲にあり、計器検証の実行番号を示す。グラフ400aは、例えば、LPO剛性変化244及びRPO剛性変化254のパーセンテージ表現である剛性軸420aのパーセント変化も含む。グラフ400bは、例えば、剛性対称性260のパーセンテージ表現であるパーセント剛性差軸420bを含む。
【0162】
図5a及び図5bは、複数の計器検証実行中に決定された剛性変化データ点及び剛性対称性変動データ点を示すグラフ500a、500bであり、確率が各データ点に割り当てられている。図示するように、グラフ500a、500bは、実行番号軸510a、510bを含む。実行番号軸510a、510bは、0~140の範囲にあり、計器検証のための実行番号を示す。グラフ500aは、例えば、LPO剛性変化244及びRPO剛性変化254のパーセンテージ表現である剛性軸520aにおけるパーセント変化も含む。グラフ500bは、例えば、剛性対称性260のパーセンテージ表現であるパーセント剛性差軸520bを含む。
【0163】
グラフ400a、500aは、剛性偏差を表す複数のデータ点から構成される剛性偏差プロット430a、530aを含み、これらは、計器剛性の、記憶システム204に記憶された剛性変化234であってもよい。グラフ400b、500bは、剛性対称性変化を表すデータ点から構成される剛性対称性プロット430b、530bを含む。感嘆符の点として示される変化表示プロット440a~540bも示されており、これらは、信頼区間にゼロが含まれていないことを示す。
【0164】
図4a~図5bにおいて、変化表示プロット440a~540bを使用して、所与のデータ点について帰無仮説の棄却が生じたことを示す。上述したように、帰無仮説は、測定値がベースライン値と等しい場合であるが、この検定は、確率によって実行されることであってもよい。図4a~図5bに示すように、確率は、信頼区間であるが、任意の適切な確率が用いられてもよい。信頼区間は、各データ点に関連付けられたバーで表されている。図4a~図5bに示す例では、バーは、99%の信頼区間を表す。
【0165】
理解できるように、感嘆符の点は、信頼区間がゼロ軸を含まないデータ点に関連付けられている。図5bでは、剛性対称性のゼロ軸は、測定された剛性対称性がベースライン剛性対称値に等しいという帰無仮説を表す。すなわち、ゼロ軸は、振動計の剛性対称性に変化がないことを表す。したがって、信頼区間にゼロ軸が含まれない場合、帰無仮説は、棄却される。これは、例えば、有意水準が0.01に設定されている少なくとも99%の信頼度で、帰無仮説が棄却され、振動計に変化が生じたことを示す。
【0166】
理解できるように、様々なシステム及び方法は、導管130、130´の変化を示すために、上述のLPO剛性変化244、RPO剛性変化254、及び剛性対称性260を使用することができる。例示的な方法は、図6を参照して以下でより詳細に説明される。
【0167】
図6は、一実施形態による、振動計の変化を検出及び識別するための方法600を示す。図6に示すように、方法600は、ステップ610において、振動計の導管の第1位置に関連付けられた第1剛性変化を決定することによって始まる。振動計及び導管は、図1を参照して説明した振動計5及び導管130、130´のうちの1つであってもよい。本例によると、導管の第1位置は、例えば、導管130上の左側ピックオフセンサ170lの位置とすることができるが、任意の適切な位置が用いられてもよい。したがって、第1位置に関連付けられた第1剛性変化は、LPO剛性変化244であってもよく、これは、上で論じたように、ドライバ180と左側ピックオフセンサ170lの位置との間の導管130の物理的な剛性変化を表すことができる。
【0168】
方法600は、ステップ620において、振動計の導管の第2位置に関連付けられた第2剛性変化を決定することができる。ステップ610を参照して上述した例を続けると、導管の第2位置は、導管130上の右側ピックオフセンサ170rの位置とすることができるが、任意の適切な位置を用いることができる。したがって、第2位置に関連付けられた第2剛性変化は、導管130上の右側ピックオフセンサ170rの位置に関連付けられたRPO剛性変化254であってもよく、これは、上述したように、ドライバ180と右側ピックオフセンサ170rの位置との間の導管130の物理的な剛性変化を表してもよい。
【0169】
ステップ630では、方法600は、第1剛性変化及び第2剛性変化に基づいて導管内の状態を判定する。上述した例では、状態は、LPO剛性変化244及びRPO剛性変化254に基づいて決定されてもよい。状態は、浸食、腐食、損傷(例えば、凍結、過圧など)、被膜などの、導管の剛性に影響を与えるものであれば何でもよい。例として、第1及び第2剛性変化は、「低」として示されるLPO剛性変化244及びRPO剛性変化254であってもよい。さらに、LPO剛性変化244及びRPO剛性変化254にやはり基づいてもよい剛性対称性260は、「低右」であってもよい。方法600は、例えば、上述した表と同様の表を用いて、導管130の状態が腐食/浸食であると判定することができる。
【0170】
方法600は、導管の決定された状態のそれぞれに適した手順をさらに識別、提案、又は可能にすることができる。例えば、警報は導管の決定された状態で提供されてもよく、ユーザはその状態に特有のさらなる診断、保守、サービスなどを進めることができる。導管が損傷した場合の手順には、動作から振動計5を取り外し、計器アセンブリ10を修理/交換することが含まれてもよい。被膜の場合、動作から振動計5を取り外すことなく、被膜を低減又は除去する手順がより適切である場合がある。
【0171】
図7は、振動計の変化を検出及び識別するための方法700を示す。図7に示すように、方法700は、ステップ710において、振動計の計器電子装置内の記憶装置から計器検証パラメータの中心傾向値及び計器検証パラメータの分散値を取得することによって開始する。ステップ720で、方法700は、計器検証パラメータ及び分散値に基づいて確率を決定して、中心傾向値がベースライン値と異なるかどうかを判定する。
【0172】
ステップ710において、中心傾向値及び分散値は、例えば、図2を参照して上述した記憶システム204から取得されてもよい。記憶システム204は、処理システム202のレジスタであってもよい。したがって、処理システム202は、レジスタから中心傾向値及び分散値を取得し、単純な数学的演算を実行して確率を決定することができる。一例では、中心傾向値は、計器剛性であってもよく、分散値は、計器剛性の標準偏差であってもよい。
【0173】
計器剛性及び分散値を使用する例では、ステップ720において、処理システム202は、計器剛性を構成する計器剛性測定値の数に基づいてt値を計算し、t値を使用して確率を計算することができる。一例では、t値は、上述したように、有意水準α及び自由度から決定することができる。計器剛性は、例えば、ベースライン計器剛性などのベースライン値が決定された後に取得された計器剛性測定値から決定された平均計器剛性であってもよい。ベースライン値は、ベースライン中心傾向値であってもよい。したがって、ベースライン計器剛性は、ベースライン計器剛性測定値の平均値であってもよい。
【0174】
方法700は、例えば、バイアス不感帯を設定するなどの追加のステップを含むことができる。上述したように、中心傾向値であってもよい計器剛性がバイアス不感帯よりも小さい場合、方法700は、計器剛性とベースライン計器剛性が異なっていないと判定することができる。例えば、計器剛性をバイアス不感帯と比較する前に、信頼区間にゼロが含まれていない可能性があるため、帰無仮説が棄却されたことを示すフラグをセットすることができる。しかしながら、計器剛性がバイアス不感帯よりも小さい場合は、フラグをリセットして、帰無仮説が棄却されなかったことを示すことができる。したがって、方法700は、警報を送信しない場合がある。
【0175】
図1を参照して説明した計器電子装置20、又は他の電子機器、デバイスなどは、振動計の変化を検出及び/又は識別するための方法600、700、あるいは他の方法を実行することができる。したがって、計器電子装置20及び処理システム202は、インターフェイス201から情報を受信し、振動計5の導管130、130´の第1位置に関連付けられた第1剛性変化を決定し、振動計5の導管130、130´の第2位置に関連付けられた第2剛性変化を決定するように構成されてもよい。図1の振動計5を参照すると、第1位置は、振動計5の導管130、130´上の左側ピックオフセンサ170lの位置であってもよい。同様に、第2位置は、振動計5の導管130、130´上の右側ピックオフセンサ170rの位置であってもよい。
【0176】
計器電子装置20はまた、第1剛性変化及び第2剛性変化に基づいて、導管130、130´の状態を判定するように構成されてもよい。計器電子装置20はまた、導管130、130´の、図2に示す剛性対称性260などの剛性対称性を判定するように構成されてもよい。計器電子装置20はまた、導管の状態の判定に基づいて警報を提供するように構成されてもよい。警報は、例えば、経路26を介して信号、メッセージ、パケットなどを送信することによって提供されてもよい。
【0177】
計器電子装置20、特に処理システム202は、計器電子装置20内の記憶装置から計器剛性及び計器剛性の標準偏差を取得することもできる。計器電子装置20又は処理システム202は、計器剛性及び計器剛性の標準偏差に基づいて確率を決定して、計器剛性がベースライン計器剛性と異なるかどうかを判定することができる。
【0178】
上記の説明は、振動計5の変化を検出及び識別することができる計器電子装置20及び方法600、700を提供する。この変化は、導管の第1位置に関連付けられた第1剛性変化及び導管の第2位置に関連付けられた第2剛性変化に基づいて振動計5内の導管130、130´の状態を検出することによって識別することができる。これら及び他のステップは、計器電子装置20、計器電子装置20内の処理システム202、及び/又は方法600、又は他の電子機器、システム、及び/又は方法によって実行することができる。
【0179】
限られた計算リソースで確率を決定することできるように、統計を特定の仕方で用いることによって、変化を検出することができる。例えば、確率は、ゼロが信頼区間内にある場合、帰無仮説が棄却される計器剛性の周りの信頼区間であってもよい。さらに、計器剛性測定値のバイアスが誤警報を誘発しないことを確実にするために、計器電子装置20は、計器剛性をバイアス不感帯と比較することができる。したがって、変化しない制限とは対照的に、継続的に更新することができる確率は、誤警報を引き起こすことなく、振動計5の変化を正確に検出することができる。
【0180】
上記の議論は、図1に示す振動計5を参照しているが、任意の適切な振動計を用いることができる。例えば、2つ以上のドライバ及び2つ以上のピックオフセンサを備えた振動計を用いることができる。したがって、2つのピックオフセンサ及び2つのドライバを有する例示的な振動計では、3つ以上の剛性変化を決定することができる。本例では、ドライバのそれぞれとピックオフセンサのそれぞれとの間の剛性変化を決定することができる。同様に、2つのドライバと2つのセンサとの間の剛性変化間の対称性も決定することができる。
【0181】
上記の実施形態の詳細な説明は、本説明の範囲内であると本発明者らによって企図されたすべての実施形態の網羅的な説明ではない。実際、当業者は、上述の実施形態の特定の要素を様々に組み合わせ、又は削除してさらなる実施形態を作成することができ、そのようなさらなる実施形態が本説明の範囲及び教示に含まれることを認識されるであろう。上記の実施形態を全体的又は部分的に組み合わせて、本説明の範囲及び教示内の追加の実施形態を作成することができることも当業者には明らかであろう。
【0182】
したがって、特定の実施形態が例示を目的として本明細書で説明されているが、当業者が認識するように、本説明の範囲内で様々な等価な修正が可能である。本明細書で提供される教示は、上述された、添付の図に示された実施形態だけでなく、振動計の変化の他の識別に適用することができる。したがって、上述した実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲から決定されるべきである。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7