(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】毛髪スタイリング装置
(51)【国際特許分類】
A45D 1/00 20060101AFI20220120BHJP
A45D 1/02 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A45D1/00 502Z
A45D1/00 503A
A45D1/00 505D
A45D1/00 507D
A45D1/02 C
A45D1/02 A
A45D1/00 501D
(21)【出願番号】P 2020513291
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018073508
(87)【国際公開番号】W WO2019048357
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-03-04
(32)【優先日】2017-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】スプーレンドンク ワウテル ヘンドリク コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】ジルーシャ ニコライ ヴァスィーリョヴィチュ
(72)【発明者】
【氏名】コステカルド ローレンティン
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-254796(JP,A)
【文献】特開2013-085742(JP,A)
【文献】特表昭58-500888(JP,A)
【文献】特開2013-056023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 1/00
A45D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源であって、
毛髪スタイリングのための温度にまで加熱させられることにより、前記熱源の毛髪接触面と毛髪との間の直接の接触を介して伝導により前記毛髪を加熱するための熱源と、
前記熱源からの熱と組み合わせて、前記毛髪による光学的放射の吸収により、毛髪スタイリングのための温度にまで前記毛髪を加熱するための、光放射源と、
を有する毛髪スタイリング装置において、前記熱源が、前記光放射源により提供されるエネルギーから熱を得ることを特徴とする、毛髪スタイリング装置。
【請求項2】
前記熱源は、前記光放射源のヒートシンクに結合されたヒートブリッジを含み、前記ヒートブリッジは、毛髪を加熱するための毛髪接触面を持つ、請求項1に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項3】
前記ヒートブリッジは、前記毛髪が前記光放射源からの光にさらされる前に前記毛髪を加熱するよう構成された、請求項2に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項4】
前記光放射源は、少なくとも0.1秒の継続時間を持つ1回の放射フラッシュを用いて毛髪に放射するよう構成された、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項5】
前記光放射源は、少なくとも2回の放射フラッシュを用いて毛髪に放射するよう構成され、連続するフラッシュ間の間隔は、5秒よりも短い、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項6】
前記光放射源は完全には透明ではないカバーにより被覆され、これにより光学的放射エネルギーが熱エネルギーに変換され、前記熱源が前記カバーを含み、前記カバーは前記毛髪を加熱するための毛髪接触面を持つ、請求項1に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項7】
前記カバーは、毛髪スタイリングのための波長に対しては透明であり、それ以外の波長に対して
は透明ではない、請求項6に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項8】
前記光放射源は、前記熱源により加熱されるカバーにより被覆された、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項9】
第1の部分と第2の部分とを持ち、前記第1の部分と前記第2の部分との間に毛髪が位置づけられ、各前記部分が、それぞれの光放射源を持ち、前記第1の部分における光放射源は、前記第2の部分における光放射源に向かない、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項10】
各前記部分において、光を側方に反射させるための反射材料が、隣接する光放射源の間に配置された、請求項9に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項11】
前記光放射源により出力されるエネルギーの毛髪表面におけるエネルギーフルエンスが、1J/cm
2と10J/cm
2との間の範囲内である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項12】
前記熱源は、前記毛髪が前記光放射源からの光にさらされる前に、100℃を超えない第1の温度にまで、前記毛髪を予加熱する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の毛髪スタイリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば毛髪のクリンピング、カーリング、パーミング及びストレートニングのための、毛髪スタイリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願公開WO2014/108775は、毛髪ストレートニング形成溶液蒸気を用いて毛髪をストレートニングするためのシステムであって、電気供給源に接続された毛髪ストレートニングアイロンを有し、該毛髪ストレートニングアイロンは、それぞれが内面に加熱ブロックを持つ一対の加圧部材を有し、該加圧部材は、ヒンジにより接合され、該加熱ブロックは、該加圧部材のそれぞれの中に収容された蒸気導通トンネルに接続された穴を有し、前記システムは更に、前記アイロンの終端に接続され、前記蒸気導通トンネルへと開く、蒸気導通管と、他方の端において前記蒸気導通管に接続された気化器と、を有し、該気化器は、電気の供給源及び加熱要素により加熱されるよう構成された容器に接続された加熱要素を有する、システムを開示している。本発明の特定の実施例においては、光源からの可視又は不可視の光の放射によって、毛髪が加熱される。ストレートニングアイロンは、窓の背後に配置された光源からの光を通過させるための透明な窓を有しても良い。殆どの光源におけるように、電気エネルギーの殆どが熱に変換される。一般に、LEDについては、ワット-ワット効率、即ち入力される電力に対する発せられる光のパワーが、赤色光の40%から緑色光の15%に亘る。高い効率で光源を動作させ、光源の損傷を防止するためには、熱が取り除かれる必要がある。光源からの熱消散の工程は、2つの段階で達成され得る。第1の段階は、大きな熱エネルギーを吸収する外部のヒートシンクへと、光源から熱エネルギーを輸送することを含む。第2の段階においては、熱が周囲の環境へと放散させられる。このことは主に、自然の又は強制された空気の対流により達成される。強制された空気の対流は一般に、ヒートシンクを冷却するための電動ファンを含む。その結果の加熱された空気は更に、空気導通チャネルを通して運ばれ、ストレートニングアイロンのブレード部に配置された換気開口を通して押し出される。その結果の熱い空気が更に、毛髪を加熱するために利用されても良い。
【0003】
国際特許出願公開WO2017/080957A1(参照により本明細書に組み込まれたものとする)は、150℃よりも高くない第1の温度にまで毛髪を加熱するための熱源と、該熱源からの熱と組み合わせて毛髪スタイリングのために十分に高い該第1の温度を超える第2の温度にまで毛髪の皮質を選択的に加熱するための放射源と、を有する毛髪スタイリング装置を開示している。該熱源は例えば、キューティクルの損傷に対する臨界温度よりも低い例えば120℃である第1の温度にまで直接に又は間接的に加熱される熱プレートにより形成されても良い。該放射源は、数ミリ秒乃至数秒の継続時間の間、スタイリングのために十分に高い約170℃である第2の温度にまで皮質を選択的に加熱する、400nmと600nmとの間、好適には450nmと550nmとの間の波長範囲を発するための、例えば連続波、パルスレーザ光源又はローパスフィルタを備えた高強度パルス光装置により形成されても良い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、数あるなかでも、効率の良い毛髪スタイリング装置を提供することにある。本発明は、独立請求項により定義される。有利な実施例は、従属請求項において定義される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例は、熱源であって、前記熱源の毛髪接触面と毛髪との間の直接の接触を介して伝導により前記毛髪を加熱するための熱源と、前記熱源からの熱と組み合わせて、前記毛髪による光学的放射の吸収により、毛髪スタイリングのために十分に高い温度にまで前記毛髪を加熱するための、光放射源と、を有する毛髪スタイリング装置において、前記熱源が、前記光放射源により提供されるエネルギーから熱を得るものであり、好適には前記熱源が、前記光放射源のみからエネルギーを得る、毛髪スタイリング装置を提供する。有利にも、前記熱源は、前記光放射源のヒートシンクに結合されたヒートブリッジを含んでも良く、前記ヒートブリッジは、毛髪を加熱するための毛髪接触面を持つ。前記光放射源は有利にも完全には透明ではないカバーにより被覆され、これにより光学的放射エネルギーが熱エネルギーに変換されても良く、前記熱源が前記カバーを含み、前記カバーは前記毛髪を加熱するための毛髪接触面を持っても良い。前記カバーは有利にも、毛髪スタイリングに効果的な波長に対しては概ね透明であり、前記カバーは、毛髪スタイリングに効果的ではない波長に対しては概ね透明ではなくても良い。有利にも、前記光放射源は、前記熱源により加熱されるカバーにより被覆されても良い。
【0006】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施例を参照しながら説明され明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例は、本出願人の以前の欧州特許出願EP3216368(整理番号2016PF00294、参照によりここで本明細に組み込まれたものとする)に開示されたタイプのハンドヘルド型毛髪スタイリング装置を想定するものであり、該装置は、
光エネルギーを毛髪に供給するよう構成されたパルス駆動された発光ダイオード(LED)又はLEDのアレイを有し、
出力波長は400乃至900nmであり、ここで400乃至650nmの範囲で好適な結果をもたらし、好適には450乃至550nmの範囲内であり、
パルス幅は50乃至300msであり、好適には50乃至200msであり、例えば100乃至200msの範囲内、又は50msと100msとの間であり、該装置は更に、
前記LEDを駆動するためのLEDパルス駆動回路と、
LEDパルス駆動回路を制御するため、特に電圧、パルス継続時間及びパルスのデューティサイクルを含むパルス電気パラメータを制御する、制御システムと、
前記LEDにより提供されるパルス光への暴露の間、毛髪に接触し、例えば平面状や円筒形のような予め設定された形状に該毛髪を保持するよう構成された、毛髪接触インタフェースと、
毛髪の光暴露の間、迷光を遮断するよう構成された光学的遮蔽部と、
を有する。該光学的遮蔽部は、例えば内側面を反射性に構成することにより毛髪の房から脱出した光の最大限の再利用を提供するよう構成され、放物面形状を持つよう構成される。
【0009】
400nmと900nmとの間の波長範囲、好適には450nmと550nmとの間の波長範囲が、毛髪の選択的な加熱に最適な波長範囲であると考えられる。しかしながら、800nmと1000nmとの間の範囲における高輝度高効率LEDの出力光は、より好適な浸透深さに帰着し得る。斯かる長い波長においては、短い波長を用いる場合よりも吸収が比較的小さいが、斯かる800nmと1000nmとの間の範囲における光を発するLEDによるスタイリングは、高出力の近赤外LEDを用いるよりもコスト効率が高くなり得る。
【0010】
パルス幅は、中出力LEDによる必要とされるフルエンスを実現するため、1.5sまで達しても良い。
【0011】
一度に加熱されるべき毛髪の体積の熱緩和時間定数は、約200msと考えられる。
【0012】
実験において、茶色い毛髪の房が、金属のロッド(直径15mm)に巻きつけられ、3J/cm2のエネルギーフルエンス及び100msのパルス幅を持つ650nmのLEDの132ユニットのアレイにさらされた。このことは、明確なカーリング効果に帰着した。
【0013】
特定範囲の波長(好適には400nmと900nmとの間、更に好適には400nmと500nmとの間)、及び短い時間内(好適には300msより短い)での吸収により、毛髪、特に毛髪のメラニンを、光が選択的に加熱する。光パルスへの暴露の後、体積、吸収率及び初期温度に依存して、毛髪温度が上昇する。
【0014】
処置の最初において、毛髪は室温(例えば20℃)である。次いで、高強度光パルスの後、毛髪温度が上昇する。0.05乃至1.5sの時間フレーム内で、180℃の温度上昇が実現され得る。しかしながら、約0.1sの時間フレーム内で、当該温度上昇を実現するための光フラッシュは、大きな光学的パワーを必要とする。殆どの場合において、(消費者向け装置の)LEDエンジンは、これを為すために十分には強力ではない。更に、LEDが2回フラッシュさせられるか又はより長いパルス継続時間(>0.3s)のものである場合、かなり低いパワー要件で、従って低いコストで、同じ温度上昇が実現され得る。
【0015】
毛髪に光エネルギーを供給するよう構成された発光ダイオード(LED)は、熱も生成する。LEDは非常にエネルギー効率が良いものとして知られるが、最もエネルギー効率の良いLED(2017年)を用い、例えば青色光の場合、電気入力の約50%が光エネルギーとなる。しかしながら、他の光源に比べれば好適であるが、依然として入力エネルギーの50%が浪費される(熱)ことを意味する。本発明の原理によれば、この熱が無駄にされない。熱拡散率は、吸収よりも伝導について低くなり得るが、毛髪に向けられる全ての形態の熱が、光学的な要件を低減させるために用いられ得るため、有益である。
【0016】
従って、LEDは光エネルギーだけでなく、ヒートシンクによりLEDから除去される必要がある熱エネルギーも生成するため、当該熱は、毛髪が光にさらされる前に毛髪を予加熱するために有用な態様で有利に利用され得る。その結果、こうすることにより毛髪が例えば60℃の温度にまで予加熱される場合、LEDは、室温(例えば20℃)から毛髪スタイリングに十分な温度(即ちガラス転移温度より高い温度)にまで加熱する代わりに、当該60℃から毛髪スタイリングに十分な温度にまで加熱するだけで良い。従って、LEDは毛髪に少ない光エネルギーを提供するだけで良く、LEDからの熱が効率良く再利用される。
【0017】
斯くして本発明の一態様は、吸収及び伝導により毛髪を加熱するものである。このことは幾つかの態様で実行され得る。最初に吸収(光エネルギー)により毛髪を加熱し、次いで伝導により光源の生成された熱を毛髪へと供給する。又はこの逆でも良い。最終的にこのことは、LEDの加熱の間、光学系の要件を低減させるか、又はいずれの効率の低下をも少なくとも補償する。本発明の一実施例によれば、最初のLEDからの(例えばヒートシンクからの)浪費される熱を用いて伝導により毛髪を加熱し、その後にのみ、光エネルギーの吸収によって毛髪を加熱することが好適であり、なぜならこのようにすることにより、毛髪が損傷を受け得るような温度である、スタイリング効果を得るために十分に熱い温度にまで、接触面がなる必要がないからである。従って、毛髪が光にさらされる前に伝導により毛髪を予加熱することは、毛髪の健康のためにかなり好適である。また、加熱プレートの温度を変化させるのに時間がかかるため、熱により毛髪が損傷を受けない温度にまでのみ加熱プレートが加熱する場合には、本システムは最終的な温度をかなり迅速に利用することができ、当該温度に加えて、毛髪スタイリングのために必要とされる熱レベルは、単に略同時にスイッチオフされ得る光エネルギーの吸収の結果として実現される。同じ理由のため、光源の両側に伝導性の加熱プレートを持ち(例えば
図1B乃至1Eに示される)、伝導される熱が、光が毛髪に当てられる前及び後の両方で毛髪に加えられるシステム、又は毛髪スタイリングのために有用な帯域幅の外の光を熱に変換し(例えば
図4に示される)、伝導される熱が、光と同時に毛髪に加えられるシステムにおいては、伝導により熱を伝送するための接触面(この場合には例えばLEDの部分的に透明なカバー)が、スタイリングに必要とされる温度よりも低い温度であり、当該温度に加えて、毛髪スタイリングに必要とされる熱レベルは、単に光エネルギーの吸収の結果として実現される。
【0018】
一実施例においては、毛髪を特定の温度にまで光熱的に加熱するため、毛髪から短い距離(<1cm)で高強度光源(LED)がフラッシュさせられる。このことは、短い高強度パルス(<0.1s)を用いて実行され得るが、このことは多くの光学的パワー(>4J/cm2)を必要とする。複数回のフラッシュにより、又はより長い暴露時間(>0.3s)で、毛髪を加熱することが、より効率的である。複数のフラッシュについては、ここでもまた、毛髪の熱緩和時間内でパルス生成することが好適である。このことは光学系の要件を低減させ、新たなベースラインとして上昇させられた毛髪温度が用いられることができる。光のフラッシュの直後(<5s、より好適には<1s、最も好適には<0.3s)、毛髪温度(T0)が上昇させられる。温度上昇は一時的なものに過ぎず、時間とともに低下する。それ故、フラッシュ間の間隔が短いほど、毛髪が冷却させられる時間が少なくなる。その結果、長い間隔(>0.3s)を持つ2つの個々の光フラッシュに比べて、短い間隔(<0.2s)を持つ2つの同一の光フラッシュの後のほうが、毛髪温度は高い。
【0019】
従って、本発明の一実施例の特徴は、毛髪が複数の光フラッシュのうちの2つにおいて加熱され、このとき連続するパルス間の光の間隔が好適には、毛髪の体積の熱緩和時間内(<0.3s)となるようにする点である。
【0020】
より長いパルス継続時間(>0.3s)内で毛髪を加熱するため、光学的な要件が低減させられても良いが、このとき、小さなデューティサイクル(例えば0.1s)に比べて、ダイオードがかなり加熱することとなる(約100℃)。生成された熱は、最終的に、光学的な効果を低下させる。通常、この熱は冷却され環境(空気)に消散させられるが、ここでは、光システムの熱損失を再利用することが、本発明の一態様である。一実施例においては、このことは、LEDのヒートシンクと処置領域との間に熱的に隔離されたブリッジを生成することにより為される。このようにして、光エンジンの生成された熱が、伝導によって毛髪に供給される。このことは、光学系の要件を低減させ、又は、少なくともLEDの加熱の間のいずれの効率低下をも補償する。
【0021】
本発明の実施例は斯くして、光源のヒートシンクが、発光処置領域に隣接して配置された「熱プレート」に熱的に接続される構成を提供し、これにより光システムの熱損失が再利用され、毛髪に導かれることを確実にする。本発明の一実施例によれば、光源のみが熱を生成する。
【0022】
図1A乃至1Eに示された、LEDの熱の再利用の実施例は、毛髪ストレートナ(straightener)の形をとるハンドヘルド型毛髪スタイリング装置20を特徴とし、内部に発光ダイオード(LED)のアレイを備えた露光ユニット21を有する。
図1Aは、該毛髪ストレートナの側面図を示し、
図1Bは、該毛髪ストレートナの一方の脚部の断面図を示す。LEDのヒートシンクは、LED処置領域に隣接するヒートブリッジ22に熱的に接続される。本実施例においては、毛髪は、光にさらされる前にヒートブリッジ22と接触する。このようにして、毛髪はヒートブリッジ22及び露光ユニット21の両方によって加熱され、必要とされるスタイリング温度(120乃至180℃)がヒートブリッジ22による伝導熱と露光ユニット21からの光の吸収との組み合わせによって得られるため、より少ない光学的パワーしか必要とされない。熱プレートの熱拡散率は光子吸収に比べて小さいため、ヒートブリッジ22の接触面積は好適には、かなりの毛髪温度上昇を可能とするために、可能な限り大きい。これらの実施例においては、熱源の毛髪接触面と毛髪との間の直接の接触を介した伝導により毛髪を加熱するための熱源は、ヒートブリッジ22を含む。従って、
図1A乃至1Eは、熱源(ヒートブリッジ22により形成される)からの熱と組み合わせて、毛髪による光放射の吸収によって、毛髪スタイリングのために十分に高い温度にまで毛髪を加熱するための、光放射源(LEDにより形成される露光ユニット21により形成される)を示す。
【0023】
LED光が目に入ることを防ぐため、LEDは該装置が閉じられている場合にのみ、即ち
図1Aの毛髪ストレートナの脚部が、毛髪が該脚部の間にクランプされた位置にある場合にのみ、電力供給され、斯かる位置にあることは、当該ストレートナの脚部が互いに接触した場合にのみ押されるスイッチによって検出されても良い。
【0024】
図1C乃至1Eは、ヒートブリッジ22の部分の間の領域における、毛髪ストレートナ20の上側脚部及び下側脚部におけるLEDの有利な配置を示す。当該配置は、以下の考慮に基づく。毛髪ストレートナの2つの脚部の間に毛髪がクランプされていない場合、又は毛髪が全体の処置領域をカバーしていない場合には、該毛髪ストレートナの上側及び下側脚部におけるLEDが互いを照明する。これらLEDは、反対側の部材からの光を吸収し、加熱し始め、LEDの寿命に悪影響を与えることとなる。次いで、放射が毛髪以外の物質により吸収されると、処置のために利用されないこととなる。それ故、
図1C乃至1Eの実施例においては、対向するLEDが「位相を外されて」配置され、即ち該毛髪ストレートナの一方の脚部におけるLEDが、該毛髪ストレートナの他方の脚部における別のLEDに面しないようにされる。反対側の空の空間に反射性材料が用いられる場合には、光子が再利用され得る。反射された光は好適には、該光が発せられたLEDに導かれて戻らないようにされるべきであるため、該反射性材料は、側方に反射するものであるべきである(ここで側方との概念は、光が発せられたLEDに戻るような光の反射を除く全ての方向をカバーする)。
【0025】
有利にも、各脚部において、毛髪に接触するヒートブリッジ22の対の間の領域は、側面から、又はカバーがヒートブリッジ22をもカバーするために、ヒートブリッジ22により加熱される、透明なカバーを備える。このようにして、熱が毛髪に加えられる領域が増大させられる。好適には、該透明なカバーは完全には透明ではなく、毛髪スタイリングに有用ではない1000nmより大きい波長を吸収する。このようにして、毛髪を処置するのに効果的ではない波長が、処置領域を加熱するために用いられ、この熱は毛髪スタイリングに有用となる。
【0026】
図2Aに示された本発明の第2の実施例は、(例えば国際特許出願公開WO2016/042476又はWO2017/029382に示されたようなタイプの)オートカーラ(auto-curler)を示し、本発明により、毛髪Hが最初に、LEDユニット21からの光Lにさらされ円筒部Cのまわりに巻き付けられる前に、ヒートブリッジ22に沿ってガイドされる。ヒートブリッジ22は、毛髪HがLEDユニット21からの光Lにさらされる前に、LEDユニット21により生成される熱が、毛髪Hを予加熱するために利用されることを確実にする。光Lは該オードカーラの中の毛髪にのみ当てられるため、光が目に到達するリスクがなく、当該装置は本質的に安全である。
【0027】
図2Bに示された代替の実施例においては、円筒部Cは、100℃よりも幾分低い温度、好適には70℃と90℃との間の温度にまで加熱される。本実施例においては、LEDユニット21は、毛髪Hが最初にヒートブリッジ22及び円筒部Cからの熱にさらされるように配置される。毛髪Hがヒートブリッジ22及び円筒部Cによって予加熱されるため、毛髪スタイリングのために十分な温度にまで加熱するためのLEDユニット21からの光エネルギーがあまり必要ではない。更なる改善は、ヒートブリッジ22及び円筒部Cによる予加熱に起因する毛髪温度を測定するための、好適には赤外センサであるセンサSを提供し、フィードフォワード制御装置(図示されていない)が、LEDユニット21をフィードフォワード制御するため、センサSからの信号に依存して光放射源(LEDユニット21)を制御する。
図2Bの実施例においては、熱源22の熱の一部は、LEDユニット21に起因する。
【0028】
図3に示された本発明の他の実施例は、発光ダイオード(LED)を備えた露光ユニット31(例えばロッド型のもの)を有する、ハンドヘルド型カーリング装置30(例えばオードカーラ)を特徴とする。露光ユニット31は、処置されるべき毛髪が巻き付けられる透明な材料によりカバーされる。全ての発せられた光子が毛髪スタイリングのために最適に利用されることを確実にするため、露光ユニット31のまわりの毛髪カーリング装置30の内部は反射性であっても良い。
【0029】
選択肢1:該透明な材料において、発せられるLED光に対して理想的には完全に透明であるが、毛髪を介して反射された又は伝導された熱を吸収する、フィルタが含められる。該フィルタは、外側から内側へとのみ機能する。反対方向には機能しない。
【0030】
選択肢2:該透明な材料において、1000nmよりも短い波長(特に400nmと1000nmとの間、即ち毛髪スタイリングに有用な波長)に対して透明であり、毛髪スタイリングに有用ではない1000nmより大きな波長を吸収するフィルタが含まれる。このようにして、毛髪を処置するのに効果的でない波長が処置領域を加熱するために用いられ、該熱が再び毛髪スタイリングに有用となる。選択肢1及び2において、吸収された熱は該透明な材料を加熱し、それにより熱源の毛髪接触面と毛髪との間の直接の接触を介して伝導により毛髪を加熱するための熱源を形成する。
【0031】
選択肢3:該透明な材料において、発せられるLED光に対して透明であり、LEDのヒートシンクに熱的に接続される、フィルタが含められる。このようにして、該透明な材料は約60℃乃至100℃にまで加熱され、それにより熱源の毛髪接触面と毛髪との間の直接の接触を介して伝導により毛髪を加熱するための熱源を形成する。
【0032】
選択肢4:露光ユニット31の表面のまわりにおいて、LEDのストリップがLEDのヒートシンクのストリップと交番し、熱源の毛髪接触面と毛髪との間の直接の接触を介して伝導により毛髪を加熱するための熱源を形成する。該ストリップは好適には、ロッド型の露光ユニット31の長手方向に向けられる。
【0033】
以上の選択肢1乃至4の1つ以上が組み合わせられても良い。
【0034】
図4の実施例において、光エンジン21を被覆する透明なカバー23(例えばポリカーボネート又はガラスからつくられる)は、光に対して完全には透明ではない(80%以上透明)。このようにして、カバー23は加熱され、伝導を介して毛髪を(予)加熱する。他の実施例においては、光エンジンを被覆する透明なカバー23は、400nmと1000nmとの間の波長、即ち毛髪スタイリングに有用な波長に対してのみ透明である。他の波長はカバー23において吸収され、カバープレートを加熱する。この熱は、伝導を介して毛髪を(予)加熱するために用いられ、従ってここでもまた毛髪スタイリングに有用である。完全には透明でないカバーを用いることの更なる利点は、処置されるときに毛髪から出て行く湿気がカバー上で凝縮しないことであり、もし凝縮するとすると毛髪への光エネルギーの流れを妨げる。
図4に示されるように、カバー23はヒートブリッジ22を被覆しても良く、これによればカバー23はヒートブリッジ22によっても加熱される。この場合には、熱源の毛髪接触面と毛髪との間の直接の接触を介して伝導により毛髪を加熱するための熱源は、ヒートブリッジ22とカバー23との両方を有し、該カバーは熱源の接触面を形成する。
【0035】
一実施例においては、該システムは、毛髪をスタイリングするためにパルス型のLEDを用いる。出力波長は好適には400nmと900nmとの間の範囲内であり、より好適には450nmと550nmとの間の範囲内である。パルス幅は好適には200m以短であり、より好適には100ms以短である。毛髪が損傷を受けることを防止するため、毛髪表面における出力エネルギーフルエンスは、好適には1J/cm2と10J/cm2との間の範囲内であり、好適には3J/cm2と7J/cm2との間、更に好適には4J/cm2と6J/cm2との間である。LEDの熱は「ヒートブリッジ」を介して処置領域に向けてガイドされ、光フィルタ(吸収部)は処置領域に含められても良い。
【0036】
要約すると、本発明の実施例は、吸収及び伝導の両方により毛髪を加熱及びスタイリングする技術を特徴としている。主に毛髪は吸収(光エネルギー)により加熱される。しかしながら、光生成の間に熱も生成される。後者は、本工程において浪費されず、システムへと再利用されて、光学系の要件を低減させるか、又はLEDの加熱の間のいずれの効率低下をも少なくとも補償する。
【0037】
本出願と同じ優先日の欧州特許出願EP17190266.1(整理番号2017PF02406、参照により本明細に組み込まれたものとする)において詳細に示されているように、本発明の実施例は、光エネルギーを毛髪に供給するための光エンジンを有する毛髪スタイリング装置であって、毛髪に与えられる光エネルギーに応答して毛髪から湿気が出て該毛髪スタイリング装置からも出ることを可能とするよう構成された、毛髪スタイリング装置に関する。好適には、該光エンジンは、毛髪スタイリングのための単独のエネルギー源である。換気器が、該光エンジンから湿気を移動させても良い。プロセッサが該光エンジンを制御しても良く、この場合には該換気器は該プロセッサ及び/又は光エンジンを冷却するようにも機能しても良い。該毛髪スタイリング装置は、毛髪が間にガイドされスタイリングされることを可能とするよう配置されたクランプ部材を有しても良く、該クランプ部材の少なくとも1つが該光エンジンを備える。該クランプ部材の少なくとも1つは、湿気が出ることを可能とするための開口を備えても良いし、又は該毛髪スタイリング装置から出るように湿気を運ぶよう空気が入ることを可能とするための開口を備えても良い。該クランプ部材は、該毛髪スタイリング装置から湿気が出ることを可能とするため、一致しない形状を持っても良い。光エンジンを有する毛髪処置領域は、毛髪がガイドされることができる間隙を持っても良く、該間隙は、湿気が出ることを可能とするのに十分に広い。該間隙の幅は、0.3mmと5mmとの間、好適には1mmと2mmとの間であっても良い。
【0038】
本出願と同じ優先日の欧州特許出願EP17190268.7(整理番号2017PF02407、参照により本明細に組み込まれたものとする)において詳細に示されているように、本発明の実施例は、毛髪に放射するための光放射源と、毛髪への放射による効果を測定するためのセンサユニットと、該センサユニットからの信号に依存して該光放射源を制御するためのフィードフォワード制御装置と、を有する毛髪スタイリング装置に関する。該光放射源は、光熱毛髪再整形に必要とされるより低いものであっても良い第1のエネルギー密度を持つ第1のフラッシュを生成しても良く、該第1のフラッシュに応答して得られたセンサ信号に依存して後続するフラッシュを生成するよう該光放射源が制御され、該後続するフラッシュは少なくとも該第1のエネルギー密度を持っても良い。該センサユニットは、毛髪の流れ方向において該光放射源よりも前に配置されたセンサを含んでも良い。該毛髪スタイリング装置は、毛髪がガイドされる方向に沿って、第1のセンサと、該第1のセンサからの信号に依存して制御される第1のLEDユニットと、第2のセンサと、該第2のセンサからの信号に依存して制御される第2のLEDユニットと、を有しても良い。該毛髪スタイリング装置と通して毛髪がガイドされる方向が、該光放射源のどの部分が該第1のLEDユニットとして機能するかを決定しても良い。該毛髪スタイリング装置は、該センサユニットからの信号に依存して該フィードフォワード制御装置により制御される速度で該光放射源に沿って毛髪を動かすための駆動機構を有しても良い。
【0039】
本出願と同じ優先日の欧州特許出願EP17190269.5(整理番号2017PF02408、参照により本明細に組み込まれたものとする)において詳細に示されているように、本発明の実施例は、毛髪をスタイリング温度にするための要素の2次元アレイを持ち、該要素が光放射エネルギーを生成する、毛髪スタイリング装置に関する。該要素は、1つ以上のLED、好適には複数のLEDを含んでも良く、この場合には、該LEDは、相互に異なる形状及びサイズのものであっても良いクラスタで駆動される。該毛髪スタイリング装置は、要素の2次元のアレイに対向する領域光吸収測定を得るためのセンサと、該測位に依存して該要素を個別に制御するための制御ユニットと、を有しても良い。該毛髪スタイリング装置は、2つの側から毛髪に放射しても良く、いずれの側も領域光吸収測定を含んでも良い。該センサは、一時的に光を生成しないLEDを含んでも良い。
【0040】
上述の実施例は本発明を限定するものではなく説明するものであって、当業者は添付する請求項の範囲から逸脱することなく多くの代替実施例を設計することが可能であろうことは留意されるべきである。請求項において、括弧に挟まれたいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「有する(comprise)」なる語は、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。要素に先行する「1つの(a又はan)」なる語は、複数の斯かる要素の存在を除外するものではない。光学放射源を制御するための制御ユニットは、幾つかの別個の要素を有するハードウェアによって、及び適切にプログラムされたプロセッサによって実装されても良い。幾つかの手段を列記した装置請求項において、これら手段の幾つかは同一のハードウェアのアイテムによって実施化されても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。