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  • 特許-改良地盤の改良効果の評価方法 図1
  • 特許-改良地盤の改良効果の評価方法 図2
  • 特許-改良地盤の改良効果の評価方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】改良地盤の改良効果の評価方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20220121BHJP
   E02D 1/08 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
E02D1/00
E02D1/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019003218
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020111951
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】坂井 公俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩平
(72)【発明者】
【氏名】荒木 豪
(72)【発明者】
【氏名】盛川 仁
(72)【発明者】
【氏名】飯山 かほり
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178618(JP,A)
【文献】特開平6-102357(JP,A)
【文献】特開2007-46408(JP,A)
【文献】特開2007-85137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00
E02D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持地盤上の改良地盤の改良効果の評価方法であって、地盤改良前後において、地表面の同じ観測位置で、支持地盤の深度が既知の基準点と、前記基準点と間隔をあけた観測地点との同時の常時微動観測を複数セット行い、前記常時微動観測による常時微動波形から、各観測セットにおける前記基準点からのフーリエスペクトル比を求めて、地盤改良前後の前記フーリエスペクトル比に見られるピーク周期差を求め、別途実施した数値解析結果に基づいて、地盤改良前後の前記ピーク周期差から前記改良地盤の強度および剛性を評価することを特徴とする、改良地盤の改良効果の評価方法。
【請求項2】
前記数値解析結果は、下記(1)式、
ΔH=ΔT・Vs/α --- (1)
但し、(1)式において、
ΔH:支持地盤の深度差、
ΔT:ピーク周期差、
Vs:改良地盤の剛性、
α:定数、
に基づいて求めることを特徴とする、請求項1に記載の、改良地盤の改良効果の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、改良地盤の改良効果の評価方法、特に、地盤改良工において、支持地盤上の改良地盤の強度または剛性を簡易かつ短時間に評価することができる、改良地盤の改良効果の評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤上に、鉄道構造物等の構造物を構築するには、地盤改良工を実施する必要がある。この場合、地盤改良工を実施した後の改良地盤の改良効果を評価する必要がある。
【0003】
図5に示すように、地盤改良工として、支持地盤1上の改良対象層2に複数本の改良杭3を施工した場合には、所定の改良杭3から試験材5をサンプリングし、この試験材5に対して、室内で一軸圧縮試験や三軸試験を行って改良地盤の強度を評価、または現地でボーリング孔を用いたPS検層等を行って改良地盤の剛性を評価していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、支持地盤1上の改良対象層2に改良杭3を施工して、地盤改良を行った場合の改良地盤の改良効果の評価は、所定の改良杭3から試験材5をサンプリングし、この試験材5毎に強度試験を行うか、または現地でのPS検層等を行う必要があったので、多大な費用と時間を要していた。
【0005】
このようなことから、地盤改良工において、支持地盤上の改良地盤の強度または剛性を簡易かつ短時間に評価することができる、改良地盤の改良効果の評価方法の開発が望まれているが、かかる方法は、まだ提案されていないのが現状である。
【0006】
従って、この発明の目的は、地盤改良工において、改良地盤の強度または剛性を簡易かつ短時間に評価することができる、改良地盤の改良効果の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とするものである。
【0008】
請求項1に記載の発明は、支持地盤上の改良地盤の改良効果の評価方法であって、地盤改良前後において、地表面の同じ観測位置で、支持地盤の深度が既知の基準点と、前記基準点と間隔をあけた観測地点との同時の常時微動観測を複数セット行い、前記常時微動観測による常時微動波形から、各観測セットにおける前記基準点からのフーリエスペクトル比を求めて、地盤改良前後の前記フーリエスペクトル比に見られるピーク周期差を求め、別途実施した数値解析結果に基づいて、地盤改良前後の前記ピーク周期差から前記改良地盤の改良効果を評価することに特徴を有するものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記数値解析結果は、下記(1)式、
ΔH=ΔT・Vs/α --- (1)
但し、(1)式において、
ΔH:支持地盤の深度差、
ΔT:ピーク周期差、
Vs:改良地盤の剛性、
α:定数、
に基づいて求めることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、地盤改良工において、支持地盤上の改良地盤の強度または剛性を簡易かつ短時間に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】2観測地点同時の常時微動観測の基本原理説明図である。
図2】フーリエスペクトル比を示すグラフである。
図3】数値解析結果に基づくピーク周期差と支持地盤の深度差との関係を示すグラフである。
図4】この発明による、改良地盤の改良効果の評価方法を示す断面図である。
図5】改良杭による地盤改良法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の、改良地盤の強度評価方法の基本原理を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、2観測地点同時の常時微動観測の基本原理説明図、図2は、フーリエスペクトル比を示すグラフ、図3は、数値解析結果に基づくピーク周期差と支持地盤の深度差との関係を示すグラフである。
【0014】
この発明の、改良地盤の強度評価方法は、図1に示すように、支持地盤1上の、改良前の地盤、すなわち、改良対象層2の地表面における基準点Pと、基準点Pと間隔をあけたA観測地点とに微動計4を設置して、基準点PとA観測地点とにおける常時微動を同時観測する。なお、基準点Pにおける支持地盤1の深度は、既知である。
【0015】
次に、基準点Pと間隔をあけたB観測地点とに微動計4を設置して、基準点PとB観測地点とにおける常時微動を同時観測する。すなわち、地盤改良前における地表面において基準点Pと同時の常時微動観測を2セット行う。
【0016】
次に、常時微動観測による常時微動波形から、2セットの各々のセットにおける基準点Pからのフーリエスペクトル比を求めて、2セットのフーリエスペクトル比に見られるピーク周期差ΔTを求める(図2参照)。
【0017】
次に、数値解析式に基づいて、ピーク周期差ΔTからA観測地点とB観測地点間の支持地盤の深度差ΔHを求める(図3参照)。
【0018】
ここで、数値解析式は、下記(1)式からなっている。
【0019】
ΔH=ΔT・Vs/α --- (1)
但し、(1)式において、
ΔH:地盤改良前の支持地盤の深度差、
ΔT:地盤改良前のピーク周期差、
Vs:地盤改良前の改良地盤の剛性、
α:定数。
【0020】
次に、地盤改良後において、地盤改良前と同じ地表面の観測位置で、地盤改良前と同じ方法により、下記(2)式により、ピーク周期差ΔTからA観測地点とB観測地点間の支持地盤の深度差ΔHを求める。
【0021】
ΔH=ΔT・Vs/α --- (2)
但し、(2)式において、
ΔH:地盤改良後の支持地盤の深度差、
ΔT:地盤改良後のピーク周期差、
Vs:地盤改良後の改良地盤の剛性、
α:定数。
【0022】
地盤改良前後における深度差ΔHと深度差ΔHとは、観測地点が同じであるので、等しく、地盤改良後のピーク周期差ΔTは、地盤改良前のピーク周期差ΔTに比べて小さい(ΔT<ΔT)結果、改良後の地盤の剛性Vsは、改良前の地盤の剛性Vsより大きい(Vs<Vs)。すなわち、地盤改良により、A観測地点とB観測地点の地盤の剛性が地盤改良前に比べて、ΔVsだけ高まったことが分かる。また、比較的一様性の高い改良地盤では、剛性と強度に良好な相関関係があり、地盤の剛性から地盤強度を推定することができる。
【0023】
この発明により、実際に、改良杭による地盤の改良効果を評価するには、図4に示すように、所定の改良杭3に微動計4を設置して常時微動観測を行い、地盤改良前の同じ観測位置での常時微動観測の結果と比較することによって、地盤の改良効果を評価することができる。
【0024】
以上、説明したように、この発明によれば、常時微動観測を行うことによって、地盤改良工における改良地盤の改良効果を、サンプリングでの強度試験やボーリング孔を利用したPS検層を行う場合に比べて、簡易かつ短時間に評価することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:支持地盤
2:改良対象層
3:改良杭
4:微動計
5:試験材
図1
図2
図3
図4
図5