(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】高さ調整具の使用方法及び高さ調整具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/10 20060101AFI20220121BHJP
【FI】
E04G21/10 A
(21)【出願番号】P 2016171824
(22)【出願日】2016-09-02
【審査請求日】2019-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】597095131
【氏名又は名称】株式会社東海建商
(74)【代理人】
【識別番号】100110744
【氏名又は名称】藤川 敬知
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲也
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-189489(JP,A)
【文献】特開平07-158277(JP,A)
【文献】実開平06-002127(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/10
E04G 21/02
G01C 5/00
G01C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状で長手方向に貫通する中心孔を有する長尺の基部と、前記中心孔に回転可能にかつ軸方向に移動不能に挿通されて前記基部の両端から延び、一端側に操作部が固定されており、他端側にドライバー部を設けた長尺棒状のシャフト部とを有する高さ調整具の使用方法において、
前記高さ調整具は、
前記基部には、外面に長手方向の全長にわたってスケール目盛が形成され、
前記基部に外嵌されて長手方向に摺動可能にされると共に任意位置で固定可能にされ、前記基部の長さに比べて十分に短く且つレーザ測量機の受光部が取り付けられる長尺筒状の位置決め部を備え、
前記位置決め部は、長手方向に沿って延びた長方形の窓が設けられると共に外面の上下中間位置にラインが水平に付けられているものであって、
前記高さ調整具における前記位置決め部の位置を、基準高さになるように合わせる第1工程と、
前記スケール目盛及び前記ラインを見ながら、前記基準高さを基準として、前記高さ調整具の前記位置決め部をスライドさせることによりコンクリートの天端高
さになるように合わせる第2工程と、
前記高さ調整具を上下させ、前記レーザ測量機の発光部からのレーザ光が前記受光部の位置になるまで高さ調整することにより前記コンクリートの天端高
さを設定する第3工程と、
を行うことを特徴とする高さ調整具の使用方法。
【請求項2】
棒状で長手方向に貫通する中心孔を有する基部と、前記中心孔に回転可能にかつ軸方向に移動不能に挿通されて前記基部の両端から延び、一端側に操作部が固定されており、他端側にドライバー部を設けたシャフト部とを有する高さ調整具において、前記基部の外面に長手方向に続くスケール目盛が形成されており、前記基部に外嵌されて長手方向に摺動可能にされると共に任意位置で固定可能にされた位置決め部を設けた高さ調整具であって、
樹脂製の棒状本体と、該棒状本体の一端側にて長手方向に延びた前記ドライバー部を挿嵌するための上挿嵌孔と、該上挿嵌孔を囲んだ周囲の複数箇所にて長手方向に延びたスリットにより分離された複数の取付片からなる軸心方向に弾性変形可能にされた変位部と、該変位部の外周側に嵌め合わされて該変位部を外周側から締め付ける筒状の締付部材とを設け、前記棒状本体の他端側にて長手方向に延びたコンクリートの天端位置を決める天端出し治具の先端部が挿入可能な下挿嵌孔と、該下挿嵌孔を挟んだ両側にて前記棒状本体の長手方向に延びた前記天端出し治具の先端近傍位置に設けた一対の羽根部間に挿嵌されて該羽根部に係止可能にされる一対の挟持片と、前記棒状本体の他端側外周面に配置されてアンカーボルトを端部にて吸着して吊り下げ可能な磁石部とを設けた高さ調整補助具が、一端側にて前記ドライバー部に着脱可能に固定されていることを特徴とする高さ調整具。
【請求項3】
前記磁石部の突出面が前記棒状本体の長手方向に対して直角な平坦面になっており、該平坦面が前記下挿嵌孔の底面と面一にされていることを特徴とする請求項2に記載の高さ調整具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅用の基礎コンクリートの天端位置やアンカーボルトの上端位置等の高さ
を調整するために用いられる高さ調整具の使用方法及び高さ調整具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の高さ調整具としては、特許文献1に示すように、断面が矩形で中空の外囲体と、外囲体内で回転可能に保持される丸棒状の芯シャフトとを備えた位置決め本体と、芯シャフトの下端に設けたドライバー先端部態様の係入部と、上端に設けた操作ディスクと、外囲体の外側に摺動可能に装着されたレベル検出器に連係するカーソルとを備えた位置決め具が開示されている。この位置決め具により例えば基礎コンクリートの高さである天端高さを決める場合には、まずカーソル位置が予め基準となる高さ、例えば丁張の高さであるベースから所定高さの位置になるように合わされる。この基準高さを基準として天端高さに相当する位置を計測してペン等で位置決め本体に印を付け、この印にカーソル位置が合わされる。
【0003】
天端高さ調整には例えば
図10に示すような天端出し治具50が用いられる。天端出し治具50は、基礎コンクリートの打設現場において相対向して立設された一対の型枠列間に配設された縦鉄筋の上端側に鉄筋取付部56にて垂直状態で固定される。天端出し治具50の上端に、位置決めされた上記位置決め具の係入部を嵌め合わせて回動させることにより調整部53が上下し、レーザ測量機で受光部位置になるまで高さ調整することにより、天端位置が決められる。
【0004】
さらに、上記一対の型枠列の間には、例えば型枠間を跨いで両上端に固定される板状のアンカーボルト支持部材が設けられ、その中央取付孔にアンカーボルトが高さ調整された状態で鉛直に挿通され、ねじ止めにより吊り下げられる。このアンカーボルトの高さ調整に際しても、所定高さ位置を計測してペン等で位置決め本体に印を付け、この印にカーソル位置が合わされる。アンカーボルトの上端に上記位置決め具を真直ぐになるように繋ぎ合せて手で持って重ね合わせ、位置決め具に取り付けられた受光部にレーザ測量機からのレーザ光を照射することにより高さ調整が行われる。高さ調整後は、位置決めされたアンカーボルトを手で持ったままで位置決め具のみを外して横に置き、アンカーボルトがネジで締められてアンカーボルト支持部材に吊り下げられる。
【0005】
しかし、上記位置決め具については、天端高さ位置及びアンカーボルト位置を予め定規等で測って決め、その位置をマジックなどで印を付け、その印にカーソルを合わせる作業を一々行う必要があり非常に手間であった。また、上記天端位置とアンカーボルトの上端高さは通常一定の関係にあるにもかかわらず、両者の高さを位置決め具にて別々に決めなければならないという無駄な作業も必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、基礎コンクリートの天端位置やアンカ
ーボルトの位置等を簡易にかつ精度よく調整できる高さ調整具の使用方法及び高さ調整具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の構成上の特徴は、棒状で長手方向に貫通する中心孔を有する長尺の基部と、前記中心孔に回転可能にかつ軸方向に移動不能に挿通されて前記基部の両端から延び、一端側に操作部が固定されており、他端側にドライバー部を設けた長尺棒状のシャフト部とを有する高さ調整具の使用方法において、前記高さ調整具は、前記基部には、外面に長手方向の全長にわたってスケール目盛が形成され、前記基部に外嵌されて長手方向に摺動可能にされると共に任意位置で固定可能にされ、前記基部の長さに比べて十分に短く且つレーザ測量機の受光部が取り付けられる長尺筒状の位置決め部を備え、前記位置決め部は、長手方向に沿って延びた長方形の窓が設けられると共に外面の上下中間位置にラインが水平に付けられているものであって、前記高さ調整具における前記位置決め部の位置を、基準高さになるように合わせる第1工程と、前記スケール目盛及び前記ラインを見ながら、前記基準高さを基準として、前記高さ調整具の前記位置決め部をスライドさせることによりコンクリートの天端高さになるように合わせる第2工程と、前記高さ調整具を上下させ、前記レーザ測量機の発光部からのレーザ光が前記受光部の位置になるまで高さ調整することにより前記コンクリートの天端高さを設定する第3工程と、を行うことにある。
【0009】
上記のように構成した発明においては、基礎コンクリート形成現場において予め基準となる丁張り高さ等に位置決め部を合わせておき(第1工程)、基準高さに対して決められた規定の天端高さについて、基部に対して窓を通して背後のスケール目盛を見ながら位置決め部を移動させてラインと合わせることで位置合わせしておく(第2工程)。この状態で、ドライバー部の先端を型枠間の鉄筋に取り付けられた天端出し治具の上端ねじ孔に合わせ、基部を手で持って操作部を回動させることにより、レーザ測量機等を用いて高さ調整具の規定の高さ位置に合わせることができ、天端高さが決められる(第3工程)。その結果、本発明においては、位置決め部の窓によって背後のスケール目盛を視認し、ラインと合わせて長さ寸法を決めることにより、簡単にかつ精度よく天端高さを決めることができるので、作業が簡略にされる。アンカーボルトの高さ調整についても同様に行われる。
【0010】
また、上記目的を達成するために別の本発明の構成上の特徴は、棒状で長手方向に貫通する中心孔を有する基部と、中心孔に回転可能にかつ軸方向に移動不能に挿通されて基部の両端から延び、一端側に操作部が固定されており、他端側にドライバー部を設けたシャフト部とを有する高さ調整具において、基部の外面に長手方向に続くスケール目盛が形成されており、基部に外嵌されて長手方向に摺動可能にされると共に任意位置で固定可能にされた位置決め部を設けたことにある。さらに、別の本発明の構成上の特徴は、樹脂製の棒状本体と、棒状本体の一端側にて長手方向に延びたドライバー部を挿嵌するための上挿嵌孔と、上挿嵌孔を囲んだ周囲の複数箇所にて長手方向に延びたスリットにより分離された複数の取付片からなる軸心方向に弾性変形可能にされた変位部と、変位部の外周側に嵌め合わされて変位部を外周側から締め付ける筒状の締付部材とを設け、棒状本体の他端側にて長手方向に延びたコンクリートの天端位置を決める天端出し治具の先端部が挿入可能な下挿嵌孔と、下挿嵌孔を挟んだ両側にて棒状本体の長手方向に延びた天端出し治具の先端近傍位置に設けた一対の羽根部間に挿嵌されて羽根部に係止可能にされる一対の挟持片と、棒状本体の他端側外周面に配置されてアンカーボルトを端部にて吸着して吊り下げ可能な磁石部とを設けた高さ調整補助具が、一端側にてドライバー部に着脱可能に固定されていることにある。
【0011】
上記のように構成した発明においては、基礎コンクリート形成現場において予め基準となる丁張り高さ等に位置決め部を合わせておき、基準高さに対して決められた規定の天端高さについて、基部に対してスケール目盛を見ながら位置決め部を移動させて位置合わせしておく。この状態で、ドライバー部の先端を型枠間の鉄筋に取り付けられた天端出し治具の上端ねじ孔に合わせ、基部を手で持って操作部を回動させることにより、レーザ測量機等を用いて高さ調整具の規定の高さ位置に合わせることができ、天端高さが決められる。その結果、本発明においては、スケール目盛を見ながら簡単にかつ精度よく天端高さを決めることができるので、作業が簡略にされる。アンカーボルトの高さ調整についても同様に行われる。
さらに、上挿嵌孔にドライバー部の先端側を挿嵌し、変位部の外側から締付部材によって変位部を締め付けることにより、ドライバー部を高さ調整補助具の変位部にて簡易にかつ強固に固定することができ、さらに高さ調整具からの高さ調整補助具の取り外しも簡単になる。これにより、天端出し治具の先端部を下挿嵌孔に挿嵌して先端羽根を挟持片で挟むことができ、高さ調整具を回動させることにより、天端高さを簡単に決めることができる。また、磁石部にアンカーボルトの一端を吸着させることにより、磁石部によってアンカーボルトを吊り下げることができる。そのため、高さ調整具による高さ調整機構を用いることにより、高さ調整補助具による天端高さ調整やアンカーボルト高さ調整を簡便に行うことができる。
【0012】
また、本発明において、磁石部の突出面が棒状本体の長手方向に対して直角な平坦面になっており、平坦面が下挿嵌孔の底面と面一にされていることが好ましい。これにより、天端高さを決めたときに磁石の平坦面の高さが天端高さに一致しているため、この天端高さを基準としたアンカーボルトの先端高さについて、スケール目盛を見ながら位置決め部を移動させることにより簡単にかつ精度よく決めることができ、その後、磁石部にアンカーボルトを吊り下げることにより、アンカーボルトの高さを簡単にかつ精度よく決めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、基部に対してスケール目盛を見ながら位置決め部を移動させることにより、簡単に位置合わせすることができるため、基礎コンクリートの天端高さ調整やア
ンカーボルトの高さ調整等の作業を、従来に比べて簡易にかつ精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例である高さ調整具を示す一部破断正面図である。
【
図3】高さ調整具を拡大して示す拡大平面図である。
【
図4】高さ調整具を拡大して示す拡大底面図である。
【
図5】高さ調整具に高さ調整補助具を取り付けた状態の一部を説明する一部破断面図である。
【
図6】高さ調整具に用いる高さ調整補助具を示す一部破断正面図である。
【
図10】天端出し治具を示す(a)正面図及び(b)平面図である。
【
図11】高さ調整補助具を天端出し治具に装着した状態を説明する側面側から見た説明図である。
【
図12】高さ調整補助具を天端出し治具に装着した状態を説明する底面側から見た説明図である。
【
図13】高さ調整補助具が取り付けられた高さ調整具を用いた基礎コンクリートの天端高さの調整作業を説明するための説明図である。
【
図14】高さ調整補助具が取り付けられた高さ調整具を用いたアンカーボルトの高さ調整作業を説明するための説明図である。
【
図15】高さ調整具による(I)基準高さ、(II)天端高さ、(III)アンカーボルト高さの関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1~
図4は、一実施例であるコンクリートの天端高さやアンカーボルトの高さを調整するために用いられる高さ調整具10を一部破断正面図、右側面図、拡大平面図及び拡大底面図により示したものである。なお、以下の説明において、高さ調整具10の上下,前後方向については、
図1の上下,前後に合わせるものとする。
【0016】
高さ調整具10は、
図1、
図4に示すように、真直の棒状の部材であり、アルミニウム製の中空な四角柱状の長尺の基部11と、基部11の長手方向に貫通する中心孔12に回動可能に挿通される長尺棒状のシャフト部16とを同軸状に設けている。基部11は、下端側に止部13を設けている。また、基部11は、正面及び背面に長手方向の全長にわたってスケール目盛14が刻み込まれている。シャフト部16は、基部11より長い円柱形のアルミニウム製の本体部17と、本体部17の下端から同軸状に延びた本体部17より小径で長さが短い鉄製のドライバー部18と、本体部17の上端に一体で設けた円盤部21とを設けており、円盤部21の上面には円板状の水準器22が同軸で取り付けられている。水準器22の表面中央には気泡の位置の目安となる円形マーク22aが記されている。円盤部21と水準器22の上面の一部に、ゴム製のカバー23が被せられており、これらを合わせた操作部19になっている。シャフト部16は、円盤部21と基部11の下端に設けた上記止部13とに挟まれて基部11に対して回動可能かつ長手方向に移動不能に配設されている。
【0017】
基部11の外壁面には、アルミニウムあるいは樹脂製の薄肉で長尺四角形筒状の位置決め部24が、基部11を囲んで嵌め合わされて長手方向に摺動可能にされており、任意の位置でボルト27により締め付け固定されている。位置決め部24は、正面側に長手方向
に沿って延びた長方形の窓25を設けており、また正面、背面、左右両側面の上下中間位置にライン26が水平に付けられている。窓25によって背後のスケール目盛14を視認可能になっており、ライン26と合わせて長さ寸法を決めることができる。位置決め部24の側壁には、後述するレーザ測量機28の受光部29が取り付け可能になっている。本実施例においては、
図5に示すように、高さ調整具10のドライバー部18に、この高さ調整具10の高さ調整機能の一層効果的な運用を可能にする高さ調整補助具30が一体で取り付けられている。
【0018】
高さ調整補助具30は、
図6~
図9に示すように、樹脂製で棒状の棒状本体31と、その一端側(
図6の上端側)外周面に被せられる樹脂製で円筒状の締付部材46とを設けている。棒状本体31は、円柱形の下側部32と、下側部32の上面32aから同軸状に延びた円筒状の下側部32より小径の上側部39と、下側部32の右外周面32c側に一体で設けられた円柱状の磁石取付部35とを備えている。下側部32と磁石取付部35は、両者の軸方向が互いに平行になっている。下側部32の底面32bの中心には、下挿嵌孔33が軸方向に円柱形状に凹んで設けられて、下側部32の軸方向のほぼ中間まで延びている。また、下側部32は、底面32bの左右両側において軸方向下方に突出した一対の挟持片34を一体で設けている。挟持片34は、底面32bの外周縁に沿って中心角略70°で円弧状に湾曲すると共に径方向に所定の厚みを有する厚板である。
【0019】
磁石取付部35は、上面が下側部32の上面32aと面一になっており、軸方向長さが下側部32の軸方向長さの半分弱となっている。磁石取付部35は、底面35a側から同軸状に円柱状に凹んだ取付孔36を設けており、取付孔36には磁石取付部35と共に磁石部を構成する円柱形の磁石37が挿嵌固定されるようになっている。磁石37は、強力な磁力を有するネオジウム磁石等である。
図6に示すように、磁石37は磁石取付部35の底面35aからわずかに突出しており、磁石37の突出面37aが下挿嵌孔33の底面33aと面一になっている。
【0020】
上側部39は、上端側がわずかに先細の円筒形状で、上端面の中心から底部近傍まで軸方向に延びた円柱形の上挿嵌孔41を同軸的に設けている。
図8に示すように、上挿嵌孔41の底面41aには、高さ調整具10のドライバー部18の頭部を差し込む十字形の差込孔41bが設けられている。また、上側部39は、上挿嵌孔41を囲んだ前後及び左右位置において上下方向に切欠かれて上挿嵌孔41の底面41a近傍まで達する幅の狭い4本のスリット42を設けている。上側部39は、4本のスリット42によって互いに分離された軸方向上下に延びた4個の取付片44を設けている。この4本のスリット42と分離された4個の取付片44により変位部43が構成されている。各取付片44は、先端側の外周が先端に向けてわずかに傾斜した傾斜部44aになっており、傾斜部44aの下方の外周面には軸方向に沿ってねじ溝45が形成されている。変位部43の外周側に、上側部39と共に固定部を構成する締付部材46が嵌め合わされる。
【0021】
締付部材46は、
図6、
図7に示すように、樹脂製の薄肉の円筒形状で、上側の軸方向長さが全体の略1/3を占める上端に向けて軸心方向にわずかに傾斜した円錐台形の傾斜筒部47と、下側の円筒形の嵌合筒部48とを一体で設けている。傾斜筒部47の上端側の内径は、上側部39のねじ溝45部分の外径より小さくなっている。嵌合筒部48は、外径が下側部32の外径と同一であり、内径は上側部39の外径と同等であり、内周面には上側部39のねじ溝45に螺合されるねじ孔部49を設けている。締付部材46は、上側部39に嵌め合わせて、ねじ孔部49をねじ溝45に螺合させることにより、上側部39に取り付けられる。
【0022】
つぎに、高さ調整具10への高さ調整補助具30の取り付けについて、
図5により説明する。高さ調整具10のドライバー部18を上側部39の上挿嵌孔41に挿嵌して頭部を
差込孔41bに差し込んだ状態で、締付部材46の嵌合筒部48のねじ孔部49をねじ溝45に螺合させて回動させる。これにより、傾斜筒部47が、上側部39の4個の取付片44に径方向内方への押圧力を加えて変形させることができ、変位部43を縮径させるようになっている。その結果、ドライバー部18が4個の取付片44によって締め付けられて、高さ調整具10が上側部39に強固に固定される。このように、本実施例によれば、高さ調整補助具30の棒状本体31の上挿嵌孔41に高さ調整具10のドライバー部18先端側を挿嵌し、変位部43の外側から締付部材46によって上側部39を締め付けることにより、高さ調整具10を上側部39に簡易にかつ強固に固定することができ、さらに高さ調整具10の上側部39からの取り外しも簡単である。
【0023】
つぎに、高さ調整具10に固定された高さ調整補助具30の、コンクリートの天端高さ調整に使用される天端出し治具50への取付けについて説明する。天端出し治具50としては、例えば
図10に示すようなものが一般的に使用されている。この天端出し治具50は、樹脂製で長尺棒状の本体51と、本体51の上端側に螺着されて上下動可能にされている丸棒状の調整部53と、本体51の下端に固定されている円環状の鉄筋取付部56とを設けている。本体51は、上半分が下半分より太く、図示しないねじ孔を有する取付部52になっている。
【0024】
調整部53は、外周面の上端から所定寸法離れた箇所にて径方向の両方に対称に広がる三角板状の一対の羽根部54を設けており、羽根部54の下側の外周面に軸方向に延びたねじ部55を設けている。調整部53は、ねじ部55により上記取付部52に上下に移動可能に螺着されている。調整部53は、上端がコンクリートの天端を合わせる第1基準面になっており、上端面にはドライバー部18の頭部を嵌め合わせ可能な取付溝53aを設けている。羽根部54は、レベラーを流し込むための基準となる第2基準面を表すものである。鉄筋取付部56は、本体51の下端側の周方向一箇所にて軸方向を本体51の長手方向に揃えて一体で取り付けられた円筒状であり、半円弧形に延びて先端内側に係止内爪57aを有する第1締付片57と、第1締付片57の反対側に半円弧形に延びて先端外側に係止外爪58aを有する第2締付片58を設けている。鉄筋取付部56は、第1締付片57と第2締付片58で鉄筋を囲んで嵌め合わせて、係止内爪57aを係止外爪58aに係止させることにより、鉄筋に強固に締め付け固定される。
【0025】
図11,
図12に示すように、鉄筋(図示しない)に鉛直に固定された天端出し治具50の本体51が、高さ調整具10に固定された高さ調整補助具30の下側部32に設けた下挿嵌孔33に挿嵌され、下側部32の底面32bに当接した一対の羽根部54間に一対の挟持片34を嵌め合わせることにより、羽根部54が挟持片34に係止される。そのため、高さ調整具10の操作部19を回動させることにより、羽根部54も一体となって回動する。その結果、調整部53が上下動することにより、天端出し治具50の天端高さ調整が簡易に行われる。
【0026】
つぎに、高さ調整具10を用いた天端出し治具50による天端高さの設定例について、
図13,
図15により説明する。住宅用の基礎コンクリートの打設現場において相対向して立設された一対の型枠列1間に立設された縦鉄筋2の上端側に天端出し治具50が鉄筋取付部56にて固定される。天端出し治具50の本体51が高さ調整具10に固定された高さ調整補助具30の下挿嵌孔33に挿嵌され、一対の羽根部54が挟持片34間に挟まれる。高さ調整具10の位置決め部24の位置は、予め基準となる高さK、例えば丁張の高さである250mmになるように合わされている。この基準高さKを基準として、位置決め部24をスライドさせることにより、天端高さ例えば基準高さKから150mm下の位置K1になるように合わされる。位置決め部24に取り付けられた受光部29による基準高さKと天端高さK1の関係と、レーザ測量機28による調整については、
図15に概略的に示す。この状態で、高さ調整具10の操作部19を回動させることにより天端出し
治具50の調整部53が上下し、レーザ測量機28からのレーザ光が受光部29位置になるまで高さ調整することにより、天端位置が決められる。
【0027】
つぎに、高さ調整具10を用いたアンカーボルトの高さの設定例について、
図14,
図15により説明する。高さ調整具10の位置決め部24の天端高さに相当する位置K1を基準として、位置決め部24をスライドさせることにより、アンカーボルト61の上端位置に相当する位置K2に位置決め部24が位置合わせされる。本実施例においては、磁石37の突出面37aが下挿嵌孔33の底面33aと面一になっており、天端高さを決めたときに磁石37の突出面37aの高さが天端高さに一致している。そのため、この天端高さK1を基準として、予め決められている天端高さとアンカーボルトの先端高さの差である例えば100mm上の位置K2に位置決め部24を移動させることにより、高さ調整具10によってアンカーボルトの高さを簡単に決めることができる。高さ調整具10の位置決め部24に取り付けられた受光部29による天端高さK1とアンカーボルト高さK2の関係と、レーザ測量機28による調整については、
図15に概略的に示す。
【0028】
図14に示すように、一対の型枠列1間に取付部5と支持基部6と挟持部7を有するアンカーボルト支持部材4が配置され、一方の型枠列1の上端に取付部5側にてねじで固定されている。支持基部6の背面側にはアンカーボルト61を挟んで支持可能な挟持部7が配設されている。支持基部6の長手方向に延びたスリット6aには、挟持部7のボルト7aが差し込まれて前面側に突出しており、ボルト7aには締付用のナット8が螺着されている。鉛直にされたアンカーボルト61が、挟持部7と支持基部6背面側に挟まれた状態でナット8を締め付けることにより支持基部6に固定されるようになっている。アンカーボルト61が挟持部7に挟まれた状態で、高さ調整補助具30が取り付けられた高さ調整具10とアンカーボルト61とを手で持ち、棒状本体31の下端側に設けた磁石37にアンカーボルト61の端部を吸着させて吊り下げる。
【0029】
この状態でアンカーボルト61を吊り下げた高さ調整具10を上下させながら、レーザ測量機28を用いて高さ調整具10に取り付けられた受光部29の位置K2になるまで高さ調整されることにより、アンカーボルト61が規定高さにされる。高さが決められた後、挟持部7のボルト7aをナット8で締め付けることにより、アンカーボルト61がアンカーボルト支持部材4に位置決め固定される。その後、アンカーボルト61から高さ調整具10及び高さ調整補助具30が取り外される。その結果、本実施例によれば、高さ調整具10を上下させるのみで、天端出し治具50の天端高さ調整作業や、アンカーボルト61の位置決め作業を従来に比べて簡易にかつ精度良く行うことができる。また、高さ調整具10がアルミニウム等で作られて軽量であるため、上記高さ調整作業の負担が軽減される。
【0030】
なお、上記実施例においては、高さ調整具10の上端の操作部19に水準器22が一体で設けられているが、これに代えて水準器のみを基部11に取り付けることも可能である。また、上記実施例のアンカーボルト支持部材4に代えて、中央の取付孔にアンカーボルトが挿入され、高さ調整された後にアンカーボルトに螺着されたナットで位置決めするようなアンカーボルト支持部材であってもよい。
【0031】
なお、上記実施例においては、高さ調整具10の高さ調整機能の一層円滑な運用を可能にする高さ調整補助具30が一体で取り付けられているが、必要に応じて高さ調整補助具30を除き高さ調整具10のみでの実施も可能である。この場合は、高さ調整具10のドライバー部18を天端出し治具50の上端の取付溝53aに嵌め合わせることにより、天端高さの調整が可能になる。
【0032】
また、上記実施例においては、高さ調整補助具30は、下側部の外周側に磁石取付部を
設けているが、これに代えて磁石取付部を下側部の底部に設けることも可能である。さらに、上記実施例においては、高さ調整補助具30は、磁石37の突出面37aが下挿嵌孔33の底面33aと面一になっているが、これに限らない。
【0033】
また、上記実施例に示した高さ調整補助具については、
図10に示したものに限らず、長尺棒の一端側に細い丸棒を取り付けたもので、丸棒を上挿嵌孔に挿嵌固定できるものであってもよい。その他、上記実施例に示した高さ調整具、高さ調整補助具の各部の構造については一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…高さ調整具、11…基部、14…スケール目盛、16…シャフト部、18…ドライバー部、19…操作部、24…位置決め部、25…窓、26…ライン、29…受光部、30…高さ調整補助具、31…棒状本体、32…下側部、33…下挿嵌孔、34…挟持片、35…磁石取付部、37…磁石、39…上側部、41…上挿嵌孔、42…スリット、43…変位部、44…取付片、45…ねじ溝、46…締付部材、49…ねじ孔部、50…天端出し治具、51…本体、53…調整部、54…羽根部、61…アンカーボルト。