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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】位置調節機構および支持装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/08 20060101AFI20220121BHJP
【FI】
A61G13/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018004267
(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公開番号】P2019122521
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】304034772
【氏名又は名称】株式会社イソメディカルシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】荒川 浩志
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-161523(JP,A)
【文献】特開2009-073574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材にスライド移動可能に支持されたスライド部材と、
前記ベース部材に設けられ、前記スライド部材のスライド方向に配列された複数の凸部を有するギヤ部と、
前記凸部に係合可能に前記スライド部材に設けられ、前記凸部に係合した場合に前記スライド部材の移動を規制する爪部材と、を備え、
前記ギヤ部は、前記スライド方向に直交するスライド直交方向に並んで配置された第1ギヤ部と第2ギヤ部とを含み、
前記爪部材は、前記第1ギヤ部の凸部に係合可能な第1爪部材と、前記第2ギヤ部の凸部に係合可能な第2爪部材とを含み、
前記第1ギヤ部と前記第2ギヤ部、および/または、前記第1爪部材と前記第2爪部材は、前記第1爪部材が前記第1ギヤ部の凸部に係合した状態で前記第2爪部材が前記第2ギヤ部の凸部に係合せず、かつ、前記第2爪部材が前記第2ギヤ部の凸部に係合した状態で前記第1爪部材が前記第1ギヤ部の凸部に係合しないように、前記スライド方向にずれて配置され
スライド部材は、
前記第1爪部材を前記第1ギヤ部に対して近接または離間する方向に移動可能に支持するとともに、前記第2爪部材を前記第2ギヤ部に対して近接または離間する方向に移動可能に支持するホルダと、
前記スライド直交方向における前記第1爪部材と前記第2爪部材の間に配置され、前記スライド方向および前記スライド直交方向の両方に直交する軸線を中心として回動可能に設けられたロック部材と、を備え、
前記ロック部材は、前記第1爪部材および前記第2爪部材のうち、前記凸部に係合したものとだけ係合可能に構成され、前記第1爪部材に係合した場合に前記第1爪部材の前記第1ギヤ部から離間する方向への移動を規制し、前記第2爪部材に係合した場合に前記第2爪部材の前記第2ギヤ部から離間する方向への移動を規制することを特徴とする位置調節機構。
【請求項2】
前記凸部は、前記スライド方向の一方側の面である第1面と、前記スライド方向の他方側の面である第2面とを有し、
前記第1面は、前記スライド方向に略直交する面であり、
前記第2面は、前記凸部の頂部に向かうにつれて前記第1面に近づくように傾斜した面であることを特徴とする請求項1に記載の位置調節機構。
【請求項3】
前記第1爪部材を前記第1ギヤ部に向けて付勢する第1付勢部材と、
前記第2爪部材を前記第2ギヤ部に向けて付勢する第2付勢部材と、を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の位置調節機構。
【請求項4】
スライド部材は、
前記第1爪部材を前記第1ギヤ部に対して近接または離間する方向に移動可能に支持するとともに、前記第2爪部材を前記第2ギヤ部に対して近接または離間する方向に移動可能に支持するホルダと、
前記第1爪部材および前記第2爪部材と係合し、前記第1爪部材および前記第2爪部材を前記第1付勢部材および前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記第1ギヤ部および前記第2ギヤ部から離間する方向に移動させる解除部材と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の位置調節機構。
【請求項5】
前記解除部材は、前記第1爪部材および前記第2爪部材を覆う第1カバー部を有することを特徴とする請求項4に記載の位置調節機構。
【請求項6】
前記ホルダは、前記第1爪部材および前記第2爪部材を支持するホルダ本体と、前記ホルダ本体から前記スライド方向に延び、前記ホルダ本体とともに前記第1ギヤ部および前記第2ギヤ部を覆う板状の第2カバー部とを有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の位置調節機構。
【請求項7】
前記ギヤ部および前記爪部材は、樹脂からなることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の位置調節機構。
【請求項8】
位置調節機構であって、
ベース部材と、
前記ベース部材にスライド移動可能に支持されたスライド部材と、
前記ベース部材に設けられ、前記スライド部材のスライド方向に配列された複数の凸部を有するギヤ部と、
前記凸部に係合可能に前記スライド部材に設けられ、前記凸部に係合した場合に前記スライド部材の移動を規制する爪部材と、を備え、
前記ギヤ部は、前記スライド方向に直交するスライド直交方向に並んで配置された第1ギヤ部と第2ギヤ部とを含み、
前記爪部材は、前記第1ギヤ部の凸部に係合可能な第1爪部材と、前記第2ギヤ部の凸部に係合可能な第2爪部材とを含み、
前記第1ギヤ部と前記第2ギヤ部、および/または、前記第1爪部材と前記第2爪部材は、前記第1爪部材が前記第1ギヤ部の凸部に係合した状態で前記第2爪部材が前記第2ギヤ部の凸部に係合せず、かつ、前記第2爪部材が前記第2ギヤ部の凸部に係合した状態で前記第1爪部材が前記第1ギヤ部の凸部に係合しないように、前記スライド方向にずれて配置された位置調節機構と、
前記ベース部材を含む基台と、
前記基台に第1軸線を中心として揺動可能に支持され、支持面の角度を変更可能な支持板と、
一端が前記第1軸線に平行な軸線を中心として前記支持板に回動可能に連結され、他端が前記第1軸線に平行な軸線を中心として前記スライド部材に回動可能に連結されたリンク部材と、を備えたことを特徴とする支持装置。
【請求項9】
位置調節機構であって、
ベース部材と、
前記ベース部材にスライド移動可能に支持されたスライド部材と、
前記ベース部材に設けられ、前記スライド部材のスライド方向に配列された複数の凸部を有するギヤ部と、
前記凸部に係合可能に前記スライド部材に設けられ、前記凸部に係合した場合に前記スライド部材の移動を規制する爪部材と、を備え、
前記ギヤ部は、前記スライド方向に直交するスライド直交方向に並んで配置された第1ギヤ部と第2ギヤ部とを含み、
前記爪部材は、前記第1ギヤ部の凸部に係合可能な第1爪部材と、前記第2ギヤ部の凸部に係合可能な第2爪部材とを含み、
前記第1ギヤ部と前記第2ギヤ部、および/または、前記第1爪部材と前記第2爪部材は、前記第1爪部材が前記第1ギヤ部の凸部に係合した状態で前記第2爪部材が前記第2ギヤ部の凸部に係合せず、かつ、前記第2爪部材が前記第2ギヤ部の凸部に係合した状態で前記第1爪部材が前記第1ギヤ部の凸部に係合しないように、前記スライド方向にずれて配置され、
スライド部材は、
前記第1爪部材を前記第1ギヤ部に対して近接または離間する方向に移動可能に支持するとともに、前記第2爪部材を前記第2ギヤ部に対して近接または離間する方向に移動可能に支持するホルダと、
前記スライド直交方向における前記第1爪部材と前記第2爪部材の間に配置され、前記スライド方向および前記スライド直交方向の両方に直交する軸線を中心として回動可能に設けられたロック部材と、を備え、
前記ロック部材は、前記第1爪部材および前記第2爪部材のうち、前記凸部に係合したものとだけ係合可能に構成され、前記第1爪部材に係合した場合に前記第1爪部材の前記第1ギヤ部から離間する方向への移動を規制し、前記第2爪部材に係合した場合に前記第2爪部材の前記第2ギヤ部から離間する方向への移動を規制する位置調節機構と、
前記ベース部材を含む基台と、
前記基台に第1軸線を中心として揺動可能に支持され、支持面の角度を変更可能な支持板と、
一端が前記第1軸線に平行な軸線を中心として前記支持板に回動可能に連結され、他端が前記第1軸線に平行な軸線を中心として前記スライド部材に回動可能に連結されたリンク部材と、を備え、
前記ロック部材は、前記第1爪部材および前記第2爪部材の前記スライド方向における中央よりも前記第1軸線の近くに係合することを特徴とする支持装置。
【請求項10】
前記位置調節機構、前記基台、前記支持板および前記リンク部材は、X線透過材料からなることを特徴とする請求項または請求項に記載の支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースにスライド移動可能に支持されたスライド部材の位置調節機構、および、当該位置調節機構を備えた支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースにスライド移動可能に支持されたスライド部材の位置調節機構として、例えば、特許文献1には、ベース(底板)にスライド可能に支持されたスライド部材(エンドフェンス)と、ベースに設けられたラックギヤと、スライド部材に設けられた爪部とを備え、ラックギヤと爪部とが係合することで、スライド部材のベースに対する位置が規制される機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-229536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、位置が規制された状態のスライド部材に対し、そのスライド方向に比較的大きな荷重がかかる場合には、ラックギヤや爪部の強度などを考慮して、これらをある程度大きく丈夫に形成する必要がある。しかしながら、ラックギヤや爪部を大きく形成すると、スライド部材の位置を細かく調節することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、強度を確保しつつ、スライド部材の位置を細かく調節することができる位置調節機構、および、当該位置調節機構を備えた支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するための本発明は、ベース部材と、前記ベース部材にスライド移動可能に支持されたスライド部材と、前記ベース部材に設けられ、前記スライド部材のスライド方向に配列された複数の凸部を有するギヤ部と、前記凸部に係合可能に前記スライド部材に設けられ、前記凸部に係合した場合に前記スライド部材の移動を規制する爪部材と、を備え、前記ギヤ部は、前記スライド方向に直交するスライド直交方向に並んで配置された第1ギヤ部と第2ギヤ部とを含み、前記爪部材は、前記第1ギヤ部の凸部に係合可能な第1爪部材と、前記第2ギヤ部の凸部に係合可能な第2爪部材とを含み、前記第1ギヤ部と前記第2ギヤ部、および/または、前記第1爪部材と前記第2爪部材は、前記第1爪部材が前記第1ギヤ部の凸部に係合した状態で前記第2爪部材が前記第2ギヤ部の凸部に係合せず、かつ、前記第2爪部材が前記第2ギヤ部の凸部に係合した状態で前記第1爪部材が前記第1ギヤ部の凸部に係合しないように、前記スライド方向にずれて配置されたことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、ギヤ部や爪部材を大きく丈夫に形成しても、第1ギヤ部と第2ギヤ部、および/または、第1爪部材と第2爪部材がスライド方向にずれて配置されていることで、第1爪部材が第1ギヤ部の各凸部に係合した場合にスライド部材を複数の位置に規制することができるとともに、第2爪部材が第2ギヤ部の各凸部に係合した場合にもスライド部材を別の複数の位置に規制することができる。これにより、ギヤ部や爪部材の強度を確保しつつ、スライド部材の位置を細かく調節することができる。
【0008】
前記した位置調節機構において、前記凸部は、前記スライド方向の一方側の面である第1面と、前記スライド方向の他方側の面である第2面とを有し、前記第1面は、前記スライド方向に略直交する面であり、前記第2面は、前記凸部の頂部に向かうにつれて前記第1面に近づくように傾斜した面である構成とすることができる。
【0009】
これによれば、爪部材が凸部に係合した状態でスライド部材をスライド方向の一方に向けて移動させようとすると、爪部材が凸部の第2面を滑ることで、スライド部材を移動させることができる。一方、爪部材が凸部に係合した状態でスライド部材をスライド方向の他方に向けて移動させようとしても、爪部材が凸部の第1面に引っ掛かることで、スライド部材の移動を規制することができる。
【0010】
前記した位置調節機構は、前記第1爪部材を前記第1ギヤ部に向けて付勢する第1付勢部材と、前記第2爪部材を前記第2ギヤ部に向けて付勢する第2付勢部材と、を備えた構成とすることができる。
【0011】
これによれば、スライド部材の移動により爪部材と凸部との位置が合った場合には、付勢部材の付勢力により爪部材を凸部に自動的に係合させることができる。これにより、位置調節機構の操作性を向上させることができる。
【0012】
前記した位置調節機構において、スライド部材は、前記第1爪部材を前記第1ギヤ部に対して近接または離間する方向に移動可能に支持するとともに、前記第2爪部材を前記第2ギヤ部に対して近接または離間する方向に移動可能に支持するホルダと、前記第1爪部材および前記第2爪部材と係合し、前記第1爪部材および前記第2爪部材を前記第1付勢部材および前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記第1ギヤ部および前記第2ギヤ部から離間する方向に移動させる解除部材と、を備えた構成とすることができる。
【0013】
これによれば、解除部材を操作することで第1爪部材および第2爪部材の両方をギヤ部から離間させることができる。これにより、第1爪部材および第2爪部材のどちらが凸部に係合していても、解除部材を操作することで爪部材と凸部との係合を解除することができるので、位置調節機構の操作性をより向上させることができる。
【0014】
前記した位置調節機構において、前記解除部材は、前記第1爪部材および前記第2爪部材を覆う第1カバー部を有する構成とすることができる。
【0015】
これによれば、機構内に塵埃などが入り込むのを抑制することができる。
【0016】
前記した位置調節機構において、スライド部材は、前記第1爪部材を前記第1ギヤ部に対して近接または離間する方向に移動可能に支持するとともに、前記第2爪部材を前記第2ギヤ部に対して近接または離間する方向に移動可能に支持するホルダと、前記スライド直交方向における前記第1爪部材と前記第2爪部材の間に配置され、前記スライド方向および前記スライド直交方向の両方に直交する軸線を中心として回動可能に設けられたロック部材と、を備え、前記ロック部材は、前記第1爪部材および前記第2爪部材のうち、前記凸部に係合したものとだけ係合可能に構成され、前記第1爪部材に係合した場合に前記第1爪部材の前記第1ギヤ部から離間する方向への移動を規制し、前記第2爪部材に係合した場合に前記第2爪部材の前記第2ギヤ部から離間する方向への移動を規制する構成とすることができる。
【0017】
これによれば、ロック部材により爪部材を凸部と係合した状態に規制することができる。また、ロック部材を、凸部に係合した爪部材側には回動でき、凸部に係合しない爪部材側には回動できない構成とすることができる。これにより、ロック部材を回動できる側に回動させることで、ロック部材によるロックを確実に効かせることができる。
【0018】
前記した位置調節機構において、前記ホルダは、前記第1爪部材および前記第2爪部材を支持するホルダ本体と、前記ホルダ本体から前記スライド方向に延び、前記ホルダ本体とともに前記第1ギヤ部および前記第2ギヤ部を覆う板状の第2カバー部とを有する構成とすることができる。
【0019】
これによれば、爪部材を支持するホルダ本体をコンパクトな構成としつつ、スライド部材が移動してもホルダ本体および第2カバー部により第1ギヤ部と第2ギヤ部を覆うことができる。これにより、スライド部材をコンパクトな構成としつつ、ギヤ部(機構内)に塵埃などが入り込むのを抑制することができる。
【0020】
前記した位置調節機構において、前記ギヤ部および前記爪部材は、樹脂からなる構成とすることができる。
【0021】
これによれば、樹脂からギヤ部や爪部材を形成した場合であっても、ギヤ部や爪部材の強度を確保しつつ、スライド部材の位置を細かく調節することができる。
【0022】
また、本発明は、前記した位置調節機構と、前記ベース部材を含む基台と、前記基台に第1軸線を中心として揺動可能に支持され、支持面の角度を変更可能な支持板と、一端が前記第1軸線に平行な軸線を中心として前記支持板に回動可能に連結され、他端が前記第1軸線に平行な軸線を中心として前記スライド部材に回動可能に連結されたリンク部材と、を備えた支持装置として構成することができる。
【0023】
これによれば、スライド部材の位置を細かく調節可能な位置調節機構により支持板の角度を細かく調節することができる。
【0024】
また、本発明は、前記ロック部材を備えた位置調節機構と、前記ベース部材を含む基台と、前記基台に第1軸線を中心として揺動可能に支持され、支持面の角度を変更可能な支持板と、一端が前記第1軸線に平行な軸線を中心として前記支持板に回動可能に連結され、他端が前記第1軸線に平行な軸線を中心として前記スライド部材に回動可能に連結されたリンク部材と、を備え、前記ロック部材が、前記第1爪部材および前記第2爪部材の前記スライド方向における中央よりも前記第1軸線の近くに係合する支持装置として構成することができる。
【0025】
これによれば、スライド部材の位置を細かく調節可能な位置調節機構により支持板の角度を細かく調節することができる。また、支持板の支持面に荷重がかかった場合に爪部材がギヤ部から浮き上がろうとするのを、ロック部材で効果的に押さえることができる。
【0026】
前記した支持装置において、前記位置調節機構、前記基台、前記支持板および前記リンク部材は、X線透過材料からなる構成とすることができる。
【0027】
これによれば、身体などを支持装置で支えたままX線撮影を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、位置調節機構について、ギヤ部や爪部材の強度を確保しつつ、スライド部材の位置を細かく調節することができる。また、支持装置について、支持板の角度を細かく調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る支持装置を備えた半側臥位用手術架台の斜視図である。
図2】支持板の傾斜角度を変えた状態の半側臥位用手術架台の斜視図である。
図3】半側臥位用手術架台の側面図である。
図4】基台と位置調節機構の構成を示す斜視図(a)と、第1ギヤ部と第2ギヤ部の配置を示す図(b)である。
図5図3に示した状態の支持装置の平面図である。
図6図5のX-X断面図である。
図7図5のY-Y断面図である。
図8】位置調節機構の拡大斜視図である。
図9】ロック部材を示す図である。
図10】支持板の傾斜角度を大きくした状態を示す図であり、図5のX-X断面に相当する断面図(a)と、Y-Y断面に相当する断面図(b)である。
図11】解除部材を操作した状態を示す図であり、図5のX-X断面に相当する断面図(a)と、Y-Y断面に相当する断面図(b)である。
図12】変形例に係る、基台と爪部材の斜視図(a)と、第1爪部材と第2爪部材の配置を示す側面図(b)である。
図13】他の変形例に係る支持装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、発明の一実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る支持装置1は、例えば、2つが支持台2に連結され、支持台2とともに半側臥位用手術架台Sを構成している。半側臥位用手術架台Sは、支持装置1および支持台2に、図示しない面ファスナなどを用いてマット3,4を取り付けた上で、患者の身体(胴体)を乗せて使用する。支持装置1は、基台10と、基台10に揺動可能に支持された支持板20とを備えており、図2に示すように、支持板20を揺動させてその傾斜角度を変えることで、患者の身体を半側臥位の状態で支えることができるように構成されている。また、支持板20は、傾斜角度を多段的に変更可能であり、これによって、例えば、患者の身体の向きを調節したり、患者の体型に合わせて支持板20の傾斜角度を調節したりすることができるように構成されている。
【0031】
支持装置1は、基台10と、支持板20と、一対のリンク部材30と、位置調節機構100とを備えている。
図3および図4(a)に示すように、基台10は、第1部分11と、第1部分11から延びるように設けられた板状の第2部分12および第3部分13とを有している。
【0032】
第1部分11は、位置調節機構100が配置される凹部14を有している。第2部分12は、第1部分11から支持台2側に向けて長く延び、その先端が係合端部10Aとなっている。また、第2部分12は、その先端部分に支持板20が連結される一対の支持部15を有している。第3部分13は、第2部分12よりも短く形成され、第2部分12の下に所定の間隔をあけて配置されている。第2部分12と第3部分13の間には、係合凹部10Bが形成されている。第2部分12は、第3部分13と対向する位置に上下に貫通した一対のネジ孔16を有している。また、第2部分12は、側面視における支持部15とネジ孔16との間に下に向けて凸となる複数の被ガイド凸部17を有している(1つのみ図示)。
【0033】
図3に示すように、支持台2は、基部210と、台部220とを備えている。基部210は、台部220が図示しない面ファスナなどにより取り付けられる第1取付部211と、支持装置1が取り付けられる第2取付部212とを有している。第2取付部212には、第1ガイド213と、第2ガイド214と、ガイド溝215が設けられている。第1ガイド213は、第2取付部212の上面から突出し、上端部が基台10側に向けて延びるL字状に形成され、第2ガイド214は、第2取付部212の、第1部分11と対向する端面の上端部から突出するように形成されている。ガイド溝215は、被ガイド凸部17が係合可能な溝であり、第1ガイド213と第2ガイド214の間に形成されている。第1ガイド213、第2ガイド214およびガイド溝215は、後述するスライド部材120のスライド方向に直交するスライド直交方向に沿って長く延びている(図2参照)。
【0034】
支持装置1は、スライド直交方向から、係合端部10Aを第1ガイド213に係合するとともに、係合凹部10Bを第2ガイド214に係合し、さらに、被ガイド凸部17をガイド溝215に係合することで、支持台2に連結されている。支持装置1は、ガイド213,214およびガイド溝215に沿ってスライド移動可能となっている。これにより、支持装置1は、台部220に対するスライド直交方向の位置を調節したり、隣接する他の支持装置1との間隔を調節したりすることができるようになっている。支持装置1は、ネジ孔16に取り付けた固定ネジ18を締めることで支持台2に固定され、固定ネジ18を緩めることで支持台2に対して移動可能となる。
【0035】
支持板20は、板状に形成され、上面が身体などを支持する支持面21となっている。支持板20は、一端が基台10に設けられた一対の支持部15に第1軸線A1を中心として揺動可能に支持されている。これにより、支持板20は、第1軸線A1を中心に揺動させることで、支持面21の水平面に対する角度(向き)を変更可能な構成となっている。図5に示すように、支持面21には、スライド直交方向の両端部に、長尺の凹部22が1つずつ形成されている。凹部22は、マット3(図3参照)を取り付けるための図示しない面ファスナが配置される部分である。また、支持板20には、スライド直交方向の一方の側面から突出するグリップ23が設けられている。グリップ23は、支持板20を揺動操作する際に把持される部分である。
【0036】
リンク部材30は、長尺状に形成され、位置調節機構100を挟むように、位置調節機構100の両側に1つずつ配置されている。図3に示すように、リンク部材30は、その長手方向の一端が、第1軸線A1に平行な第2軸線A2を中心として、支持板20の長手方向中央付近に回動可能に連結されている。また、リンク部材30は、その長手方向の他端が、第1軸線A1に平行な第3軸線A3を中心として、位置調節機構100のスライド部材120に回動可能に連結されている。
【0037】
図4(a),(b)に示すように、位置調節機構100は、ベース部材110と、スライド部材120と、ギヤ部130と、爪部材140とを備えている。
ベース部材110は、長尺のブロック状に形成され、図示しないネジなどにより基台10の凹部14に固定されている。言い換えると、本実施形態では、支持装置1の基台10が、ベース部材110を含んで構成されている。なお、基台10とベース部材110は、一体に形成されていてもよい。ベース部材110には、スライド直交方向の側面の上端部から突出して、スライド方向に延びる一対のスライドガイド111が形成されている。
【0038】
スライド部材120は、ベース部材110にスライド移動可能に支持されている。詳しくは、スライド部材120は、爪部材140を支持するホルダ160を備え、ホルダ160は、一対のL字状のガイド係合部121を有している。スライド部材120は、ガイド係合部121をスライドガイド111に係合させることでベース部材110に取り付けられており、スライドガイド111に沿ってスライド移動可能となっている。スライド部材120の詳細については後述する。
【0039】
ギヤ部130は、スライド直交方向に並んで配置された第1ギヤ部131と第2ギヤ部132とを含み、ベース部材110に設けられている。詳しくは、第1ギヤ部131および第2ギヤ部132は、それぞれ、スライド方向に配列された複数の、具体的には、3つの凸部133(ギヤ歯)を有している。凸部133は、ベース部材110に形成されたスライド方向に延びる凹部の底面から突出するように設けられている。凸部133は、それぞれ、スライド方向の一方側の面(第1軸線A1に近い側の面)である第1面135と、スライド方向の他方側の面(第1軸線A1から遠い側の面)である第2面136とを有している。第1面135は、スライド方向に略直交する面であり、第2面136は、凸部133の頂部134に向かうにつれて第1面135に近づくように傾斜した面である。
【0040】
爪部材140は、ギヤ部130の凸部133に係合可能となるようにスライド部材120に設けられている。爪部材140は、凸部133に係合した場合に、スライド部材120の移動を規制する。爪部材140は、第1ギヤ部131の凸部133に係合可能な第1爪部材141と、第2ギヤ部132の凸部133に係合可能な第2爪部材142とを含む。第1爪部材141および第2爪部材142は、それぞれ、凸部133に係合可能(詳しくは、嵌合可能)に構成された爪部141A,142Aと、爪部141A,142Aの上面の中央付近から上に延びるように設けられた棒状部141B,142Bとを有している。棒状部141B,142Bは、爪部141A,142Aに差し込んで取り付けられたピン状の部材であり、上端部に他の部分よりも径が大きい頭部141C,142Cを有している。なお、本実施形態において、第1爪部材141と第2爪部材142は、同一の部品である。
【0041】
第1ギヤ部131と第2ギヤ部132は、スライド方向にずれて配置されている。具体的には、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132は、第1ギヤ部131の凸部133の頂部134と、第2ギヤ部132の凸部133の頂部134とが、スライド方向に半ピッチずれた状態で配置されている。一方、第1爪部材141と第2爪部材142は、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132のようにスライド方向にずれて配置されておらず、スライド方向に揃った状態で配置されている。具体的には、第1爪部材141と第2爪部材142は、スライド方向において同じ位置に配置されている。
【0042】
位置調節機構100は、スライド方向において、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132がずれて配置され、第1爪部材141と第2爪部材142が揃えて配置されていることで、図6に示す第1爪部材141の爪部141Aが第1ギヤ部131の凸部133に係合した状態では、図7に示すように、第2爪部材142の爪部142Aが第2ギヤ部132の凸部133に係合しないようになっている。さらに、位置調節機構100は、図10(b)に示す第2爪部材142の爪部142Aが第2ギヤ部132の凸部133に係合した状態では、図10(a)に示すように、第1爪部材141の爪部141Aが第1ギヤ部131の凸部133に係合しないようになっている。
【0043】
図8に示すように、スライド部材120は、ホルダ160と、解除部材170と、ロック部材180とを備えている。
ホルダ160は、ホルダ本体161と、第2カバー部162とを有している。
ホルダ本体161は、第1爪部材141および第2爪部材142を支持する。具体的に、ホルダ本体161は、第1爪部材141を上下にスライド移動可能に支持するとともに、第2爪部材142を上下にスライド移動可能に支持する。これにより、図6および図10(a)に示すように、第1爪部材141は、第1ギヤ部131に対して近接または離間する方向に移動可能となっており、図10(b)および図7に示すように、第2爪部材142は、第2ギヤ部132に対して近接または離間する方向に移動可能となっている。また、ホルダ本体161のスライド直交方向の側壁には、リンク部材30が第3軸線A3を中心として回動可能に連結されている(図3参照)。
【0044】
図6および図7に示すように、ホルダ本体161の上壁と第1爪部材141の爪部141Aとの間には、第1付勢部材151が配置され、ホルダ本体161の上壁と第2爪部材142の爪部142Aとの間には、第2付勢部材152が配置されている。第1付勢部材151および第2付勢部材152は、一例として、圧縮コイルバネであり、若干押し縮められた状態で配置されている。これにより、第1付勢部材151は、第1爪部材141を第1ギヤ部131に向けて付勢し、第2付勢部材152は、第2爪部材142を第2ギヤ部132に向けて付勢する。
【0045】
第2カバー部162は、ホルダ本体161からスライド方向に延びる板状の部分である。第2カバー部162は、スライド部材120がベース部材110に取り付けられた状態で、ホルダ本体161とともに第1ギヤ部131および第2ギヤ部132を覆う。
【0046】
解除部材170は、ギヤ部130と爪部材140との係合を解除するための部材であり、解除部材本体171と、第1カバー部172とを有している。
図8に示すように、解除部材本体171は、板状の部材であり、第1爪部材141および第2爪部材142と係合している。詳しくは、解除部材本体171は、第1爪部材141の棒状部141Bが挿通された第1孔173と、第2爪部材142の棒状部142Bが挿通された第2孔174とを有している。第1孔173および第2孔174は、スライド方向に長い長円状の孔である。第1孔173および第2孔174の短手方向の幅は、棒状部141B,142Bの径と略同じであって、かつ、頭部141C,142Cの径よりも小さくなっている。これにより、第1爪部材141および第2爪部材142は、頭部141C,142Cが解除部材本体171の第1孔173または第2孔174の短手方向の縁部に引っ掛かって係合するようになっている。解除部材本体171は、スライド方向の一端が第1軸線A1(図5参照)に平行な第4軸線A4を中心としてホルダ本体161に回動可能に支持されている。
【0047】
このような構成により、解除部材170は、解除部材本体171のスライド方向の他端を持ち上げるように回動させることで、第1爪部材141および第2爪部材142を、第1付勢部材151および第2付勢部材152の付勢力に抗して、第1ギヤ部131および第2ギヤ部132から離間する方向に移動させることができるようになっている(図11参照)。
【0048】
図6および図7に示すように、第1カバー部172は、下が開口した箱状に形成され、解除部材本体171の第1孔173および第2孔174を覆うように解除部材本体171の上面に取り付けられている。これにより、第1カバー部172は、解除部材本体171の第1孔173または第2孔174を通って解除部材本体171から突出する、第1爪部材141および第2爪部材142の上端部を覆う。
【0049】
ロック部材180は、ギヤ部130と爪部材140とを係合した状態にロックするための部材であり、図9に示すように、長尺の板状に形成されている。ロック部材180は、スライド直交方向における第1爪部材141と第2爪部材142の間に配置されている。ロック部材180は、その長手方向の中央付近が、スライド方向およびスライド直交方向の両方に直交する第5軸線A5を中心として、ホルダ本体161に対し回動可能に設けられている。ロック部材180は、当該ロック部材180を回動操作するための操作部181と、操作部181に対し第5軸線A5を挟んで反対側に設けられたロック部182とを有している。ロック部182の側面には、第1付勢部材151または第2付勢部材152との干渉を避けるための一対の凹部183が形成されている。
【0050】
ロック部材180は、第1爪部材141および第2爪部材142のうち、爪部141A,142Aが第1ギヤ部131または第2ギヤ部132の凸部133に係合したものとだけ係合可能に構成されている。詳しくは、本実施形態において、第1爪部材141および第2爪部材142は、爪部141A,142Aが凸部133に係合した状態(図9の第1爪部材141参照)では、爪部141A,142Aの上面が、ロック部材180の下面よりも下に位置するように設けられ、爪部141A,142Aが凸部133に係合しない状態(図9の第2爪部材142参照)では、爪部141A,142Aの上面が、ロック部材180の下面よりも上に位置するように設けられている。これにより、ロック部材180は、爪部141A,142Aが凸部133に係合した状態の爪部材140側については、ロック部182が回動可能となり、当該爪部材140に係合可能に構成されている。ロック部材180が爪部材140に係合した場合には、ロック部182が当該爪部材140の爪部141A,142Aの上に配置される。一方、ロック部材180は、爪部141A,142Aが凸部133に係合しない状態の爪部材140側については、ロック部182の側面が当該爪部材140の爪部141A,142Aの側面に当たって回動できないので、当該爪部材140に係合できないように構成されている。なお、爪部141A,142Aには、ロック部材180の図9に示すようなロック位置への回動を許容するための逃げ部141D,142Dが形成されている。
【0051】
ロック部材180は、第1爪部材141に係合した場合には、ロック部182が第1爪部材141の爪部141Aの上に配置されることで、第1爪部材141の第1ギヤ部131から離間する方向への移動を規制する。また、図示は省略するが、ロック部材180は、第2爪部材142に係合した場合には、ロック部182が第2爪部材142の爪部142Aの上に配置されることで、第2爪部材142の第2ギヤ部132から離間する方向への移動を規制する。
【0052】
図5に示すように、第5軸線A5は、第1爪部材141および第2爪部材142のスライド方向における中央(第3軸線A3を示す一点鎖線参照)よりも第1軸線A1から遠い位置に配置されている。このため、ロック部材180は、第1爪部材141または第2爪部材142に係合した場合には、第1爪部材141および第2爪部材142のスライド方向における中央よりも第1軸線A1の近くに係合する。具体的には、ロック部182の大部分が、爪部141A,142Aの、第1爪部材141および第2爪部材142のスライド方向における中央よりも第1軸線A1に近い部分の上に配置される。
【0053】
本実施形態において、位置調節機構100を構成する、ベース部材110、スライド部材120、ギヤ部130および爪部材140は、X線透過材料からなる。X線透過材料としては、例えば、MCナイロン(登録商標)などのX線透過性を有する樹脂を用いることができる。また、本実施形態においては、位置調節機構100だけでなく、基台10、支持板20、リンク部材30、および、これらを連結する図示しないネジやピンなどの連結部材も、X線透過材料からなる。つまり、本実施形態の支持装置1は、X線透過材料から形成されている。また、本実施形態においては、支持装置1だけでなく、支持台2およびマット3,4も、X線透過材料からなる。つまり、本実施形態の半側臥位用手術架台Sは、X線透過材料から形成されている。
【0054】
次に、以上のように構成された支持装置1の作用効果について説明する
図6に示すように、第1爪部材141の爪部141Aが第1ギヤ部131の凸部133に係合(嵌合)した状態のとき、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132がスライド方向にずれて配置されていることで、図7に示すように、第2爪部材142の爪部142Aは、第2付勢部材152の付勢力により第2ギヤ部132の凸部133に押し当てられて接触はしているが、係合(嵌合)はしていない。
【0055】
この状態においては、図9に示すように、ロック部材180は、凸部133に係合した第1爪部材141側には回動できるが、凸部133に係合しない第2爪部材142側には、ロック部182の側面が爪部142Aの側面に当たってしまうので回動できない。これにより、ロック部材180を回動できる側(第1爪部材141側)に回動させることで、ロック部材180によるロックを確実に効かせることができる。ロック部材180を第1爪部材141側に回動させてロック部182を第1爪部材141の爪部141Aに係合させ、当該爪部141Aの上に配置することにより、第1爪部材141の第1ギヤ部131から離間する方向への移動が規制されるので、第1爪部材141を凸部133と係合した状態に規制することができる。これにより、支持板20の角度を所定の角度に固定することができる。また、ロック部材180によるロックが効いている場合には、解除部材170の回動も規制される。
【0056】
なお、爪部材と凸部との係合状態に関わらず、ロック部材がどちらにも回動できる場合には、ロック部材を誤って凸部に係合しない爪部材側に回動させてしまったときにロックをかけたはずなのに効いていないという事態が生じうる。しかし、本実施形態では、ロック部材180が、凸部133に係合した爪部材140側には回動でき、凸部133に係合しない爪部材140側には回動できないように設けられているので、ロック部材180を回動しさえすればロックがかかるため、前記したような事態が生じるのを防止することができる。
【0057】
図6に示すように、第1爪部材141が凸部133に係合した状態で、支持板20に支持面21から荷重がかかると、リンク部材30を介してスライド部材120が押されることで、スライド部材120に、スライド部材120をスライド方向の他方、具体的には、図6の右側に向けて移動させようとする力が作用する。しかし、本実施形態では、凸部133の第1面135がスライド方向に略直交する面となっているので、第1爪部材141の爪部141Aが第1面135に引っ掛かることで、スライド部材120の移動を規制することができる。これにより、支持板20がリンク部材30を介してしっかりと支えられ、支持板20により荷重をしっかりと支えることができる。
【0058】
ところで、支持板20に荷重がかかった場合、第1爪部材141には、爪部141Aと第1ギヤ部131との接触部分を中心として、図6の時計回りに回ろうとする力が作用し、第1爪部材141が第1ギヤ部131から浮き上がろうとする。しかし、本実施形態では、ロック部材180のロック部182が第1爪部材141のスライド方向における中央(一点鎖線参照)よりも第1軸線A1の近くに係合するので、第1爪部材141が第1ギヤ部131から浮き上がろうとするのを、ロック部材180で効果的に押さえることができる。
【0059】
ロック部材180によるロックを解除する場合には、ロック部材180の操作部181を図9の時計回りに回動させ、ロック部材180をスライド方向に平行な中立姿勢とする。これにより、ロック部182と第1爪部材141の爪部141Aとの係合が解除され、第1爪部材141の、第1ギヤ部131から離間する方向への移動が可能となる。
【0060】
ロック部材180によるロックを解除した後、図6に示す、第1爪部材141が凸部133に係合した状態から、支持板20の他端を持ち上げて揺動させようとすると、リンク部材30を介してスライド部材120が引っ張られるので、スライド部材120に、スライド部材120をスライド方向の一方、具体的には、図6の左側に向けて移動させようとする力が作用する。そうすると、本実施形態では、凸部133の第2面136が傾斜面となっているので、図10(a)に示すように、第1爪部材141の爪部141Aが第2面136を滑ることで、スライド部材120を移動させることができる。これにより、支持板20が揺動し、その傾斜角度を大きくすることができる。
【0061】
一方、図7に示す状態から、スライド部材120が図7の左側に向けて移動すると、第2爪部材142の爪部142Aが第2ギヤ部132の凸部133の第2面136を滑って凸部133の頂部134を乗り越える。そして、図10(b)に示すように、第2爪部材142の爪部142Aが第2ギヤ部132の凸部133に係合(嵌合)する。このとき、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132がスライド方向にずれて配置されていることで、図10(a)に示すように、第1爪部材141の爪部141Aは、第1付勢部材151の付勢力により第1ギヤ部131の凸部133に押し当てられて接触はするが、係合(嵌合)はしない。
【0062】
本実施形態の位置調節機構100は、付勢部材151,152を備えるので、スライド部材120の移動により、第2爪部材142の爪部142Aと第2ギヤ部132の凸部133との位置が合った場合には、第2付勢部材152の付勢力により第2爪部材142の爪部142Aを第2ギヤ部132の凸部133に自動的に係合させることができる。これにより、爪部材を凸部に係合させる操作を別途行う必要がないので、位置調節機構100の操作性を向上させることができる。
【0063】
図10に示す状態において、ロック部材180は、凸部133に係合した第2爪部材142側には回動できるが、凸部133に係合しない第1爪部材141側には、ロック部182の側面が爪部141Aの側面に当たってしまうので回動できない。そして、ロック部材180を第2爪部材142側に回動させてロック部182を第2爪部材142の爪部142Aに係合させ、当該爪部142Aの上に配置することにより、第2爪部材142の第2ギヤ部132から離間する方向への移動が規制されるので、第2爪部材142を凸部133と係合した状態に規制することができる。これにより、支持板20の角度を固定することができる。
【0064】
図11(a),(b)に示すように、支持板20の傾斜角度を小さくする場合には、ロック部材180によるロックを解除した上で、解除部材170の他端を持ち上げて回動させる。そうすると、解除部材本体171に係合する第1爪部材141および第2爪部材142が持ち上げられ、第1爪部材141および第2爪部材142を第1ギヤ部131および第2ギヤ部132から離間させることができる。これにより、第2爪部材142と凸部133との係合を解除することができる。そして、解除部材170の他端を持ち上げたままの状態で、支持板20を第1軸線A1を中心に図11の時計回りに揺動させることで、支持板20の傾斜角度を小さくすることができる。
【0065】
本実施形態では、解除部材170を操作することで第1爪部材141および第2爪部材142の両方をギヤ部130から離間させることができる。そのため、第1爪部材141および第2爪部材142のどちらが凸部133に係合していても、解除部材170を操作することで爪部材140と凸部133との係合を解除することができるので、位置調節機構100の操作性をより向上させることができる。また、係合を解除するための操作用の部材を、第1爪部材および第2爪部材のそれぞれに対応させて1つずつ設ける場合と比較して、位置調節機構100の構成を簡単にしたり、部品点数を減らしたりすることができる。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態の位置調節機構100によれば、ギヤ部130や爪部材140を大きく丈夫に形成しても、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132がスライド方向にずれて配置されていることで、第1爪部材141が第1ギヤ部131の各凸部133に係合した場合にスライド部材120を複数の位置に規制することができるとともに、第2爪部材142が第2ギヤ部132の各凸部133に係合した場合にもスライド部材120を別の複数の位置に規制することができる。これにより、位置調節機構100について、ギヤ部130や爪部材140の強度を確保しつつ、スライド部材120の位置を細かく調節することができる。
【0067】
また、本実施形態の支持装置1は、このようなスライド部材120の位置を細かく調節可能な位置調節機構100を備えるので、支持装置1について、位置調節機構100により支持板20の角度を細かく調節することができる。これにより、患者の身体の向きを適切な向きに調節したり、患者の体型に合わせて支持板20の傾斜角度を調節したりすることができる。
【0068】
また、ギヤ部130や爪部材140を大きく丈夫に形成できることで、ギヤ部130および爪部材140が樹脂からなる構成においても、ギヤ部130や爪部材140の強度を確保しつつ、スライド部材120の位置を細かく調節したり、支持板20の角度を細かく調節したりすることができる。補足すると、一般的に、樹脂は、金属よりも強度が弱いため、樹脂からギヤ部や爪部材を形成する場合には、金属から形成する場合よりも、凸部や、爪部材の凸部に係合する部分(爪部)を大きく頑丈に形成する必要があるが、そうすると、従来の位置調節機構では、凸部(ギヤ歯)間のピッチが大きくなって、スライド部材の位置を細かく調節することができなくなる。しかし、本実施形態では、樹脂からなるギヤ部130や爪部材140を大きく頑丈に形成しても、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132がスライド方向にずれて配置されていることで、スライド部材120の位置を細かく調節したり、支持板20の角度を細かく調節したりすることができる。
【0069】
また、支持装置1を構成する基台10、支持板20、リンク部材30および位置調節機構100がX線透過材料からなるので、患者の身体などを支持装置1で支えたままX線撮影を行うことができる。また、X線透過材料の強度が金属よりも弱い場合であっても、前記したとおり、ギヤ部130や爪部材140の強度を確保しつつ、支持板20の角度を細かく調節することが可能となる。
【0070】
また、解除部材170が第1爪部材141および第2爪部材142の上端部を覆う第1カバー部172を有するので、解除部材本体171に形成された第1孔173や第2孔174から、ホルダ160内(機構内)に塵埃などが入り込むのを抑制することができる。
【0071】
また、ホルダ本体161と、ホルダ本体161から延びる板状の第2カバー部162とにより第1ギヤ部131および第2ギヤ部132を覆うので、ホルダ本体だけでギヤ部を覆う場合と比較して、爪部材140を支持するホルダ本体161をコンパクトな構成としつつ、スライド部材120が移動してもホルダ本体161および第2カバー部162により第1ギヤ部131および第2ギヤ部132を覆うことができる。これにより、スライド部材120を全体としてコンパクトな構成としつつ、ギヤ部130(機構内)に塵埃などが入り込むのを抑制することができる。
【0072】
以上、発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施形態に限定されるものではない。
例えば、前記実施形態では、付勢部材151,152が圧縮コイルバネであったが、これに限定されず、板バネなどの圧縮コイルバネ以外のバネ部材であってもよい。また、付勢部材は、圧縮コイルバネや板バネなどのバネ部材に限定されず、ゴムや発泡弾性体などの弾性体であってもよい。また、位置調節機構は、付勢部材を備えない構成であってもよい。なお、付勢部材を備えない場合であっても、例えば、スライド部材のホルダにバネ性を有する部分を一体に形成し、このバネ性を有する部分により爪部材をギヤ部に向けて付勢するように構成してもよい。また、爪部材を板バネなどで形成し、爪部材がギヤ部の凸部に係合した場合に爪部材自身の付勢力により爪部材の凸部に係合した部分をギヤ部に向けて付勢するように構成してもよい。言い換えると、爪部材と付勢部材が一体に形成されていてもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、ロック部材180が第1爪部材141および第2爪部材142のスライド方向における中央よりも第1軸線A1の近くに係合する構成であったが、これに限定されない。例えば、ロック部材は、第1爪部材および第2爪部材のスライド方向における中央よりも第1軸線から離れた位置に係合する構成であってもよい。
【0074】
また、前記実施形態では、凸部133が、スライド方向に略直交する第1面135と、傾斜した第2面136とを有することで、位置調節機構100が、スライド部材120の動作方向を一方に制限するラチェット機構を備える構成であったが、これに限定されない。位置調節機構は、ラチェット機構を備えない構成であってもよい。例えば、凸部は、第1面および第2面の両方が頂部に向かうにつれて他方の面に近づくように傾斜した面であってもよいし、第1面および第2面の両方がスライド方向に略直交する面であってもよい。
【0075】
また、前記実施形態では、図4に示したように、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132がスライド方向にずれて配置され、第1爪部材141と第2爪部材142がスライド方向に揃えて配置された構成であったが、これに限定されない。例えば、図12(a),(b)に示すように、位置調節機構は、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132がスライド方向に揃えて配置され、第1爪部材141と第2爪部材142がスライド方向にずれて配置された構成であってもよい。具体的には、スライド部材120のホルダ160が、第1爪部材141と第2爪部材142をスライド方向にずれた位置で保持する構成であってもよい。なお、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132をスライド方向に揃えて配置する場合には、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132は、スライド直交方向に隣接する凸部133を共有する構成であってもよい。言い換えると、第1ギヤ部131と第2ギヤ部132は、つながった状態で一体に形成されていてもよい。また、位置調節機構は、第1ギヤ部と第2ギヤ部、または、第1爪部材と第2爪部材のいずれか一方がスライド方向にずれて配置された構成に限定されず、第1ギヤ部と第2ギヤ部、および、第1爪部材と第2爪部材の両方がそれぞれスライド方向にずれて配置された構成であってもよい。
【0076】
また、前記実施形態では、ベース部材110(位置調節機構100)が基台10に設けられていたが、これに限定されない。例えば、図13に示すように、位置調節機構を構成するベース部材310とスライド部材320は、リンク部材430に設けられていてもよい。図13に示す支持装置1は、基台410と、第1軸線A1を中心として基台410に揺動可能に支持された支持板420と、一対のリンク部材430(一方のみ図示)とを備え、一対のリンク部材430は、それぞれ、ベース部材310と、ベース部材310にスライド移動可能に支持されたスライド部材320とを備えている。ベース部材310は、一端が第2軸線A2を中心として支持板420に回動可能に連結され、スライド部材320は、第3軸線A3を中心として基台410に回動可能に連結されている。ベース部材310には、ギヤ部330が設けられ、スライド部材320には、爪部材340が設けられている。位置調節機構は、一例として、一方のリンク部材430のベース部材310に設けられたギヤ部330(第1ギヤ部)と、他方のリンク部材430のベース部材310に設けられたギヤ部330(第2ギヤ部)が、スライド部材320のスライド方向にずれて配置されている。
【0077】
また、前記実施形態では、2つのギヤ部(第1ギヤ部131および第2ギヤ部132)と、これに対応した2つの爪部材(第1爪部材141および第2爪部材142)とを備えた位置調節機構100を例示したが、これに限定されない。例えば、位置調節機構は、3つ以上のギヤ部と、3つ以上(ギヤ部の数に対応した数)の爪部材とを備えた構成であってもよい。このような構成において、複数のギヤ部同士および/または複数の爪部材同士がスライド方向にずれて配置されることで、ギヤ部や爪部材の強度を確保しつつ、スライド部材の位置をより細かく調節したり、支持板の角度をより細かく調節したりすることができる。
【0078】
また、前記実施形態は、半側臥位用手術架台Sに用いられる支持装置1を例示したが、支持装置の用途は、手術架台に限定されないことはいうまでもない。同様に、位置調節機構の用途も、支持装置1に限定されないことはいうまでもない。
【0079】
また、前記実施形態では、ギヤ部130および爪部材140がX線透過性を有する樹脂から形成されていたが、これに限定されず、金属などから形成されていてもよい。また、位置調節機構のベース部材やスライド部材、そして、支持装置の基台や支持板、リンク部材についても、例えば、その用途などに応じて、樹脂以外から形成されていてもよい。
【0080】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 支持装置
10 基台
20 支持板
21 支持面
30 リンク部材
100 位置調節機構
110 ベース部材
120 スライド部材
130 ギヤ部
131 第1ギヤ部
132 第2ギヤ部
133 凸部
134 頂部
135 第1面
136 第2面
140 爪部材
141 第1爪部材
142 第2爪部材
151 第1付勢部材
152 第2付勢部材
160 ホルダ
161 ホルダ本体
162 第2カバー部
170 解除部材
172 第1カバー部
180 ロック部材
A1 第1軸線
A2 第2軸線
A3 第3軸線
A5 第5軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13