(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】パレット洗浄システム
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20220121BHJP
【FI】
B08B3/02 A
B08B3/02 C
(21)【出願番号】P 2018076223
(22)【出願日】2018-04-11
【審査請求日】2019-11-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507157285
【氏名又は名称】株式会社ショウワ
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】藤村 俊秀
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-101501(JP,A)
【文献】特開2002-206857(JP,A)
【文献】実開昭61-000888(JP,U)
【文献】国際公開第2008/029486(WO,A1)
【文献】特開2010-123691(JP,A)
【文献】特開2008-034708(JP,A)
【文献】特許第3741710(JP,B1)
【文献】特開2001-170576(JP,A)
【文献】特開平06-007758(JP,A)
【文献】特開2009-299117(JP,A)
【文献】特開2000-051801(JP,A)
【文献】特開2004-273842(JP,A)
【文献】特開2008-227385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理パレットを一枚ずつ水平姿勢で順送りしつつ、洗浄したのち遠心脱水及び乾燥を行い、その処理済みパレットを上下多段に積み重ねて集荷するパレット洗浄システムにおいて、
処理ラインは、前記洗浄と遠心脱水及び乾燥を行うラインであって、平面視コ字形に配設され、上流側に洗浄機、下流側に遠心脱水・乾燥機を介在させてなり、
前記処理ラインの上流側に位置する始端部と、前記処理ラインの下流側に位置する終端部との間に操作アーム先端にクランプ具を備えた垂直多軸ロボットが設置され、
前記処理ラインに対峙する形で、搬入ライン、搬出ライン、不良排除ラインが配設され、
前記搬入ラインと前記搬出ラインは、直線状に平行配置され、
前記搬入ラインの終端部は、前記垂直多軸ロボット側に位置すると共に、前記処理ラインの始端部に対向して近接配置され、さらに、
前記搬出ラインの始端部は、前記垂直多軸ロボット側に位置すると共に、前記搬入ラインの終端部の側方に配置され、且つ、
前記搬入ラインの始端部は、前記搬出ラインの終端部よりもライン方向に突出するように配置され、
前記不良排除ラインは、前記搬入ライン及び前記搬出ラインに対して直角方向に配設され、
前記不良排除ラインの始端部は、前記処理ラインの終端部と前記搬出ラインの始端部との間に配置され、
前記処理ラインの始端部及び終端部、前記搬入ラインの終端部、前記搬出ラインの始端部、前記不良排除ラインの始端部は、前記垂直多軸ロボットにおける操作アームの旋回及び屈伸によるクランプ具の到達範囲内に配置され、
前記垂直多軸ロボットが、前記搬入ラインの終端部に到達した未処理パレットを前記クランプ具で一枚ずつ掴み上げて前記処理ラインの始端部へ移すと共に、該処理ラインの終端部に到達した処理済みパレットを掴み上げて搬出ラインの始端部に所定段数まで積み重ねるように構成され、
前記クランプ具の到達範囲内に不良排除ラインの始端部が配置し、前記処理ラインの終端部に来る処理済みパレットに小石やゴミの如き異物が挟まり、亀裂や欠損の不良が検出された際に、前記垂直多軸ロボットがその不良パレットを掴み上げて前記不良排除ラインの始端部に所定段数まで積み重ねるように構成されてなるパレット洗浄システム。
【請求項2】
前記クランプ具は、固定当接材と、該固定当接材に対して遠近動作する可動当接材との間でパレットを挟着するものである請求項
1に記載のパレット洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役に使用後のパレットをコンベアライン上で順送りしつつ、自動的に洗浄・脱水・乾燥を施して集荷するパレット洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
荷役用のパレットとして、近年では旧来の木製のものに代わって、丈夫なプラスチック製のものが一般的になっている。このようなプラスチック製のパレットは、多数回の繰り返し使用を行うことから、その使用中に生じた汚れを除去するために、ある程度の反復使用後、あるいは用途によっては一回の使用の都度に、回収して洗浄した上で再使用に供するのが普通である。
【0003】
このパレット洗浄を自動的に行うシステムとして、従来より、フォークリフト等によって上下多段の積重ね状態で運び込まれる未処理パレットをチェーンコンベア等の搬送ライン上に載せ、まずアンスタッカーにて一枚ずつに分けて水平姿勢で順送りしつつ、洗浄機にてノズルから噴射する洗浄液による洗浄と要すればリンス水による濯ぎを行ったのち、遠心脱水及び熱風乾燥を順次行い、その処理済みパレットをスタッカーにて上下多段に積み重ねて集荷する方式が多用されている(例えば、非特許文献1,2)。また、処理速度の小さい洗浄システムでは、上記同様にアンスタッカーにて一枚ずつに分けたパレットを遠心分離機にて回転洗浄及び遠心脱水し、次いで熱風乾燥してスタッカーで段積みして集荷する方式も採用されている(例えば、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】インターネット・ウエブ・パレット洗浄機|製品紹介|業務用洗浄機の株式会社ショウワ、検索日:2018年3月9日、http://www.e-showa.net/product/pallet.html
【文献】インターネット・ウエブ・パレット洗浄|洗浄ソリューション|株式会社クレオ(CREO)、検索日:2018年3月9日、http://www.a-creo.co.jp/solution/pallette/
【文献】インターネット・ウエブ・株式会社プラテック-機種紹介-パレット洗浄機、検索日:2018年3月9日、http://www.platec-pallet.jp/product/pallet.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年においては、パレット洗浄システムとしての高能率化が要望され、処理速度をより高めることが求められている。この処理速度を高める場合、従来のパレット洗浄システムでは、洗浄・脱水・乾燥の各処理部において処理後のパレットを搬出して直ちに次のパレットを搬入するために、各処理部の手前にコンベア架台を介在させ、先のパレットの処理中に次位のパレットを該コンベア架台上で待機させる必要があるが、これに伴って搬送ラインが非常に長くなることから、設置スペースの制約によってシステムを構築できない場合が多々あった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて、搬送ラインのコンパクトな配置構成により、長大な設置スペースを要することなく、高い処理速度に対応可能なパレット洗浄システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明は、未処理パレットP1を一枚ずつ水平姿勢で順送りしつつ、洗浄したのち遠心脱水及び乾燥を行い、その処理済みパレットP2を上下多段に積み重ねて集荷するパレット洗浄システムにおいて、
処理ラインL1は、前記洗浄と遠心脱水及び乾燥を行うラインであって、平面視コ字形に配設され、上流側に洗浄機2、下流側に遠心脱水・乾燥機3を介在させてなり、
前記処理ラインL1の上流側に位置する始端部L1aと、前記処理ラインL1の下流側に位置する終端部L1bとの間に操作アーム12先端にクランプ具5を備えた垂直多軸ロボット1が設置され、
前記処理ラインL1に対峙する形で、搬入ラインL2、搬出ラインL3、不良排除ラインL4が配設され、
前記搬入ラインL2と前記搬出ラインL3は、直線状に平行配置され、
前記搬入ラインL2の終端部L2bは、前記垂直多軸ロボット1側に位置すると共に、前記処理ラインL1の始端部L1aに対向して近接配置され、さらに、
前記搬出ラインL3の始端部L3aは、前記垂直多軸ロボット1側に位置すると共に、前記搬入ラインL2の終端部L2bの側方に配置され、且つ、
前記搬入ラインL2の始端部L2aは、前記搬出ラインL3の終端部L3bよりもライン方向に突出するように配置され、
前記不良排除ラインL4は、前記搬入ラインL2及び前記搬出ラインL3に対して直角方向に配設され、
前記不良排除ラインL4の始端部L4aは、前記処理ラインL1の終端部L1bと前記搬出ラインL3の始端部L3aとの間に配置され、
前記処理ラインL1の始端部L1a及び終端部L1b、前記搬入ラインL2の終端部L2b、前記搬出ラインL3の始端部L3a、前記不良排除ラインL4の始端部L4aは、前記垂直多軸ロボット1における操作アーム12の旋回及び屈伸によるクランプ具5の到達範囲内に配置され、
前記垂直多軸ロボット1が、前記搬入ラインL2の終端部L2bに到達した未処理パレットP1を前記クランプ具5で一枚ずつ掴み上げて前記処理ラインL1の始端部L1aへ移すと共に、該処理ラインL1の終端部L1bに到達した処理済みパレットP2を掴み上げて搬出ラインL3の始端部L3aに所定段数まで積み重ねるように構成され、
前記クランプ具5の到達範囲内に不良排除ラインL4の始端部L4aが配置し、前記処理ラインL2の終端部L2bに来る処理済みパレットP2に小石やゴミの如き異物が挟まり、亀裂や欠損の不良が検出された際に、前記垂直多軸ロボット1がその不良パレットP3を掴み上げて前記不良排除ラインL4の始端部L4aに所定段数まで積み重ねるように構成されてなるものとしている。
【0010】
請求項2の発明は、上記請求項1のパレット洗浄システムにおいて、クランプ具5は、固定当接材51と、該固定当接材51に対して遠近動作する可動当接材52との間でパレットPを挟着するものである構成としている。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明の効果について図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係るパレット洗浄システムによれば、処理ラインL1は、洗浄と遠心脱水及び乾燥を行うラインであって、平面視コ字形に配設され、上流側に洗浄機2、下流側に遠心脱水・乾燥機3を介在させてなり、処理ラインL1の上流側に位置する始端部L1aと、処理ラインL1の下流側に位置する終端部L1bとの間に操作アーム12先端にクランプ具5を備えた垂直多軸ロボット1が設置され、処理ラインL1に対峙する形で、搬入ラインL2、搬出ラインL3、不良排除ラインL4が配設され、搬入ラインL2と搬出ラインL3は、直線状に平行配置され、搬入ラインL2の終端部L2bは、垂直多軸ロボット1側に位置すると共に、処理ラインL1の始端部L1aに対向して近接配置され、さらに、搬出ラインL3の始端部L3aは、垂直多軸ロボット1側に位置すると共に、搬入ラインL2の終端部L2bの側方に配置され、且つ、搬入ラインL2の始端部L2aは、搬出ラインL3の終端部L3bよりもライン方向に突出するように配置され、不良排除ラインL4は、搬入ラインL2及び搬出ラインL3に対して直角方向に配設され、不良排除ラインL4の始端部L4aは、処理ラインL1の終端部L1bと搬出ラインL3の始端部L3aとの間に配置され、処理ラインL1の始端部L1a及び終端部L1b、搬入ラインL2の終端部L2b、搬出ラインL3の始端部L3a、不良排除ラインL4の始端部L4aは、垂直多軸ロボット1における操作アーム12の旋回及び屈伸によるクランプ具5の到達範囲内に配置されている。これにより、搬入ラインL2の終端部L2bに上下多段の積重ね状態で搬入された未処理パレットP1を一枚ずつ処理ラインL1の始端部L1aへ移載する操作と、処理ラインL1の終端部L1bに到達した処理済みパレットP2を搬出ラインL3の始端部L3aに所定段数まで積み重ねる操作と、処理ラインL1の終端部に来る処理済みパレットP2に小石やゴミの如き異物が挟まり、亀裂や欠損の不良が検出された際、その不良パレットP3を垂直多軸ロボット1によって不良排除ラインL4の始端部L4aに移載する操作とを、一基の垂直多軸ロボット1によって迅速に行えるから、従来のパレット洗浄システムにおけるアンスタッカー及びスタッカーが不要であることに加え、処理速度を高める際に従来ではアンスタッカー及びスタッカーの各手前に介在させていた待機用のコンベア架台も不要となり、もって従来構成に比較して搬送ラインの全長を大幅に短縮でき、長大な設置スペースを要さずに高い処理速度を達成できる。
【0014】
請求項2の発明によれば、垂直多軸ロボット1における操作アーム12先端のクランプ具5が固定当接材51とこれに対して遠近動作する可動当接材52との間でパレットPを挟着するものであるから、パレットPの着脱を確実に行える上、該パレットPのサイズの違いにも対応できるという利点かある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパレット洗浄システムの概略平面図である。
【
図2】同洗浄システムに用いる垂直多軸ロボットの動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るパレット洗浄システムの一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、処理対象のパレットは、未処理パレットにP1、処理済みパレットにP2、不良パレットにP3、これらを総称してPの符号を付している。
【0017】
図1において、L1は、上流側に洗浄機2、下流側に遠心脱水・乾燥機3を介在させた処理ラインであり、平面視略コ字形に配設されている。そして、該処理ラインL1の始端部L1aと終端部L1bとの間に、垂直多軸ロボット1が設置されている。また、処理ラインL1に対峙する形で、搬入ラインL2及び搬出ラインL3と不良排除ラインL4とが配設されている。
【0018】
搬入ラインL2と搬出ラインL3は直線状で並行配置しており、外側にある搬入ラインL2の終端部L2bが処理ラインL1の始端部L1aに略対向して近接配置すると共に、内側にある搬出ラインL3の始端部L3aが搬入ラインL2の終端部L2bの側方に配置しており、且つ搬入ラインL2の始端部L2aは搬出ラインL3の終端部L3bよりもライン方向に突出するように配置している。一方、不良排除ラインL4は、搬入ラインL2及び搬出ラインL3に対して直角方向に配設され、その始端部L4aが処理ラインL1の終端部L1bと搬出ラインL3の始端部L3aとの間に配置している。そして、処理ラインL1の始端部L1a及び終端部L1b、搬入ラインL2の終端部L2b、搬出ラインL3の始端部L3a、不良排除ラインL4の始端部L4aは、垂直多軸ロボット1における操作アーム12の旋回及び屈伸によるクランプ具5の到達範囲内、つまり
図1の二重仮想線で示す領域Z内に配置している。
【0019】
搬入ラインL2の始端部L2bには、通常のフォークリフトやAGF(自動搬送フォークリフト)によって未処理パレットP1が上下多段(通常10~20段程度)の積重ね状態で搬入される。そして、該搬入ラインL2の終端部L2bに到達した積重ね状態の未処理パレットP1は、垂直多軸ロボット1のクランプ具5によって頂部側から一枚ずつ掴み上げられ、水平姿勢で処理ラインL1の始端部L1aへ移載される。また、洗浄・脱水・乾燥を経て処理ラインL1の終端部L1bに到達した処理済みパレットP2は、その到達の都度に同クランプ具5にて掴み上げられて搬出ラインL3の始端部L3a上に積み重ねられ、所定段数(通常10~20段程度)に達した段階で終端部L3b側へ移送され、該終端部L3bより通常のフォークリフトやAGFによって搬出される。更に、処理ラインL1の終端部L1bに到達した処理済みパレットP2に小石やゴミの如き異物が挟まり、亀裂や欠損の不良が検出された際には、不良パレットP3として同クランプ具5にて掴み上げられて不良排除ラインL4の始端部L4a上に積み重ねられ、所定段数に達した段階で終端部L4b側へ移送され、該終端部L4bより排出ラインL3と同様にして搬出される。
【0020】
なお、処理ラインL1の始端部L1a及び終端部L1bは各1基のチェーンコンベア架台4にて構成されている。また、搬入ラインL2は同様のチェーンコンベア架台4の3~5基の連設、搬出ラインL3は同4~6基の連設、不良排除ラインL4は同2基の連設、によって各々構成されている。これらチェーンコンベア架台4は、架台40の上部に、モーターMを介して同期駆動する平行2条の搬送チェーン41,41と、その両側に配置するガイド板42,42とを備えており、長さが1500~2000mm程度、チェーン間距離が700~1000mm程度に設定されている。なお、処理ラインL1の洗浄機2から遠心脱水・乾燥機3に至る搬送路は、図示を省略しているが、チェーンコンベア架台4と略同様構造のチェーンコンベア架台を連設して構成されるが、二箇所の90°の方向転換部では既知の昇降機構を介して未処理パレットP1自体の向きを代えずに移送するようになっている。
【0021】
処理ラインL1の洗浄機2は、内部の図示を省略しているが、従来よりパレット洗浄に使用されている一般的な構成であり、チェーンコンベアによって未処理パレットP1を水平姿勢で連続的に搬送しつつ、周囲から噴射される洗浄液による洗浄と、同様に噴射されるリンス水による濯ぎとを順次行うようになっている。また、遠心脱水・乾燥機3は、同様に内部の図示を省略しているが、やはり従来よりパレット洗浄に使用されている一般的な構成であり、搬入した未処理パレットP1を水平姿勢で把持して持ち上げ、高速回転による遠心力で水切りしたのち、槽内の熱風雰囲気で乾燥させてチェーンコンベア上に降ろして搬出するようになっている。更に、不良パレットP3の検出は、一般的な光学的検出手段、例えば処理ラインL1の適宜位置や垂直多軸ロボット1の操作アーム12に設けたカメラによる映像の解析により、自動的に行われる。なお、洗浄機2の前面側にはコントローラ6が設置されており、該コントローラ6へのプログラム入力により、垂直多軸ロポット1の各部の駆動及び動作制御、洗浄機2及び遠心脱水・乾燥機3の駆動制御、各チェーンコンベアの駆動制御等を自動的に行うようになっている。
【0022】
垂直多軸ロボット1は、一般的な6軸ロボットであり、
図2で詳細に示すように、基台10の上部に設けた旋回台座11上に、屈伸可能な上腕部12aと下腕部12bを有する操作アーム12が垂直面内揺動可能に枢支され、その上腕部12aの先端に回転可能で且つ首振り可能に設けた手首部12cに、クランプ具5が旋回可能に軸支されている。しかして、該ロボット1の6軸は、下側から、旋回台座11の旋回軸、操作アーム12の揺動軸、該操作アーム12の屈伸軸、その上腕部12aに対する手首部12cの回転軸、該手首部12cの首振り軸、クランプ具5の旋回軸より構成される。
【0023】
この垂直多軸ロボット1のクランプ具5は、横長の基部5aの一端側に固着された板状の固定当接材51と、該基部5aの他端側に出退可能に設けたスライダー5bに固着された板状の可動当接材52との間で、
図2で示すようにパレットPを両側から挟着して保持するものであり、基部5aの側部にはタッチセンサー53が付設されている。そして、該クランプ具5によるパレットPの把持操作では、可動当接材52が固定当接材51に対して図示仮想線の如く離れた状態で、対象となるパレットPに上方から被さり、タッチセンサー53が該パレットPの上面に接触した際に、可動当接材52が固定当接材51側へ接近動作することにより、両当接材51,52間で該パレットPを挟持して持ち上げる。また、挟持したパレットPの開放操作では、該パレットPを所定部位へ移動させたのち、上記とは逆に可動当接材52が固定当接材51に対して離間動作することで、該パレットPを開放したのち、クランプ具5の全体を上方へ離脱する。なお、この着脱操作において固定当接材51がパレットPの側縁部に干渉するのを避けるため、把持時には固定当接材51がパレットPの側縁から若干離間するようにクランプ具5を位置させる一方、離脱時には固定当接材51の離間動作と同時に固定当接材51がパレットPの側縁から離れるようにクランプ具5全体を若干側方変位させるのがよい。
【0024】
上記構成のパレット洗浄システムでは、従来のパレット洗浄システムにおけるアンスタッカー及びスタッカーを廃した形で、搬入ラインL2の終端部L2bに上下多段の積重ね状態で搬入された未処理パレットP1を一枚ずつ処理ラインL1の始端部L1aへ移載する操作と、処理ラインL1の終端部L1bに到達した処理済みパレットP2を搬出ラインL3の始端部L3aに所定段数まで積み重ねる操作とを、一基の垂直多軸ロボット1によって迅速に行える上、従来では処理速度を高めるためにアンスタッカー及びスタッカーの各手前に介在させていた待機用のコンベア架台も不要となり、従来構成に比較して搬送ラインの全長を大幅に短縮して、且つ搬送ライン全体を非常にコンパクトに構成できるから、長大な設置スペースを要することなく高い処理速度を達成できる。
【0025】
そして、このパレット洗浄システムにおける処理ラインL1、搬入ラインL2及び搬出ラインL3の配置構成については特に制約されないが、特に実施形態のように、平面視略コ字形に配設された処理ラインL1の始端部L1aと終端部L1bとの間に垂直多軸ロボット1を設置すれば、搬送ライン全体の配置構成が非常に機能的でコンパクトになり、スペース効率が著しく向上するという利点がある。また、実施形態のように、不良排除ラインL4を追加して、その始端部L4aをクランプ具5の到達範囲内に配置すれば、処理ラインL1の終端部に来る処理済みパレットP2に小石やゴミの如き異物が挟まり、亀裂や欠損の不良が検出された際、その不良パレットP3を垂直多軸ロボット1によって不良排除ラインL4の始端部L4aに移載し、所定段数に積み重ねた上で排出できるという利点がある。
【0026】
垂直多軸ロボット1としては、実施形態で例示したものに限らず、搬入ラインL2の終端部L2bにある段積み状態の未処理パレットP1を一枚ずつ処理ラインL1の始端部L1aへ移載すると共に、処理ラインL1の終端部L1bに来た処理済みパレットP2を搬出ラインL3の始端部L3aへ積上げ移載できる構成であれば、その軸数、各軸部の構造及び配置、操作アーム12の仕様等に制約はない。そして、操作アーム12先端のクランプ具5についても、実施形態で例示した以外の種々のクランプ機構を採用できるが、実施形態のように固定当接材51とこれに対して遠近動作する可動当接材52との間でパレットPを挟着する方式では、パレットPの着脱を確実に行える上、該パレットPのサイズの違いにも対応できるという利点がある。
【0027】
なお、実施形態では処理ラインL1の遠心脱水・乾燥機3が遠心脱水に続いて槽内で熱風乾燥するものとしたが、本発明では処理ラインL1に個別の遠心脱水機と熱風乾燥機とを順次に設けてもよい。一方、各搬送ラインL1~L4のコンベアとしては、例示したチェーンコンベアに限らず、ネットコンベア、ベルトコンベア、ローラーコンベア等の種々のコンベア機構を採用できるが、処理ラインL1では配送面に水溜まりを生じない構成とする必要がある。また、各搬送ラインL1~L4は、連続した長いコンベア架台にて構成してもよいが、実施形態のように同様構造の短いコンベア架台をユニットとして複数基を連設する方式とすれば、設置スペースの広さや形等の状況に応じてラインの配置形態を様々に設定できるという利点がある。その他、本発明のパレット洗浄システムの細部構成については、実施形態以外に種々設計変更可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 垂直多軸ロボット
2 洗浄機
3 遠心脱水・乾燥機
4 チェーンコンベア架台
5 クランプ具
51 固定当接材
52 可動当接材
L1 処理ライン
L1a 始端部
L1b 終端部
L2 搬入ライン
L2a 始端部
L2b 終端部
L3 搬出ライン
L3a 始端部
L3b 終端部
L4 不良排除ライン
L4a 始端部
L4b 終端部
P パレット
P1 未処理パレット
P2 処理済みパレット
P3 不良パレット
Z 領域(クランプ具の到達範囲)