(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】再生油製造装置及び再生油製造方法
(51)【国際特許分類】
C10M 175/00 20060101AFI20220121BHJP
B01D 17/04 20060101ALI20220121BHJP
B01D 17/12 20060101ALI20220121BHJP
B04C 5/20 20060101ALI20220121BHJP
B04C 5/26 20060101ALI20220121BHJP
B01D 17/035 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
C10M175/00
B01D17/04 503A
B01D17/12 A
B01D17/12 C
B01D17/12 Z
B04C5/20
B04C5/26
B01D17/035 A
(21)【出願番号】P 2018211859
(22)【出願日】2018-11-10
【審査請求日】2021-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598140434
【氏名又は名称】株式会社コンヒラ
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 正行
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-130862(JP,A)
【文献】登録実用新案第3006068(JP,U)
【文献】特開2011-136300(JP,A)
【文献】特開2018-044752(JP,A)
【文献】特開2013-060573(JP,A)
【文献】特開2004-305794(JP,A)
【文献】特開2003-154205(JP,A)
【文献】特開2000-279707(JP,A)
【文献】特開2001-354992(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104531327(CN,A)
【文献】中国実用新案第200964406(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 175/00
B01D 17/035
B01D 17/04
B01D 17/12
B04C 5/20
B04C 5/26
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む廃油から水分を除去することにより、再生油を製造する再生油製造装置であって、
前記廃油を収容する第1容器と、
前記第1容器に設置され、前記第1容器に収容された前記廃油を加熱する第1加熱器と、
前記第1容器に設置され、気体の供給を受けることにより、前記第1容器に収容された前記廃油に気泡を噴出する気泡噴出器
と、
廃油を収容する第2容器と、
前記第1容器と前記第2容器との間で、廃油を循環させる循環経路と、
前記循環経路に配置され、前記循環経路を通じて廃油を循環させる循環ポンプと、を備える、再生油製造装置。
【請求項2】
前記気泡噴出器は、孔の群が形成された気泡噴出体を有し、前記気体の供給を受けることにより、前記孔の群を通じて前記気泡を前記廃油に噴出する、請求項1に記載の再生油製造装置。
【請求項3】
前記気泡噴出器は、前記第1容器に収容された前記廃油の下部に前記気泡を噴出する、請求項1又は2に記載の再生油製造装置。
【請求項4】
前記第1加熱器は、前記第1容器に収容された前記廃油を、60°C~90°Cの範囲内の温度に加熱する能力を有する、請求項1から3のいずれかに記載の再生油製造装置。
【請求項5】
前記第2容器に設置され、前記第2容器に収容された前記廃油を加熱する第2加熱器を、さらに備える、請求項
1から4のいずれかに記載の再生油製造装置。
【請求項6】
前記循環経路のうち、前記第2容器から前記第1容器に前記廃油を供給する廃油供給経路に設置され、前記第1容器に供給される前記廃油に含まれるスラッジを粉砕するスラッジ粉砕器を、さらに備える、請求項
1から5のいずれかに記載の再生油製造装置。
【請求項7】
前記気泡噴出器に前記気体を供給する気体供給器と、
前記循環経路に設置され、循環する前記廃油に含まれる水分の濃度を計測する水分計と、
前記水分計が計測する水分の濃度が、所定の基準を下回ると、前記第1加熱器及び前記気体供給器の動作を停止させる動作制御器と、をさらに備える請求項
1から6のいずれかに記載の再生油製造装置。
【請求項8】
前記循環ポンプは、前記第2容器から前記第1容器へ廃油を供給する第1ポンプと、前記第1容器から前記第2容器へ廃油を供給する第2ポンプと、を有し、
前記再生油製造装置は、
前記第1容器に収容される前記廃油の液面の高さを計測する液面計と、
前記液面計が計測する前記廃油の液面の高さが、所定の範囲内となるように前記第1及び第2ポンプを制御する、循環ポンプ制御器と、をさらに備える、請求項
1から7のいずれかに記載の再生油製造装置。
【請求項9】
前記第1容器から放出される、水分を含む気体から、水分を分離する水分離器を、さらに備える、請求項1から
8のいずれかに記載の再生油製造装置。
【請求項10】
前記水分離器は、
前記第1容器から放出される、オイルミスト及び水分を含む気体から、オイルミスト及び水分を分離する前段サイクロンセパレータと、
前記前段サイクロンセパレータから排出される、オイルミスト及び水分が分離された気体を冷却することにより、前記気体に含まれる蒸気を液体の水に凝縮する気体冷却器と、
前記気体冷却器から排出される気体から、更に水分を分離する後段サイクロンセパレータと、を有する、請求項
9に記載の再生油製造装置。
【請求項11】
水分を含む廃油から水分を除去することにより、再生油を製造する再生油製造方法であって、
第1容器に前記廃油を収容することと、
前記
第1容器に収容された前記廃油を加熱することと、
前記
第1容器に収容された前記廃油に気泡を噴出することと、
前記第1容器と第2容器との間で前記廃油を循環させることと、を備える、再生油製造方法。
【請求項12】
前記第2容器に収容された前記廃油を加熱することを、さらに備える請求項11に記載の再生油製造方法。
【請求項13】
前記気泡を噴出することは、前記
第1容器に収容された前記廃油の下部に前記気泡を噴出することを含む、請求項
11又は12に記載の再生油製造方法。
【請求項14】
前記廃油を加熱することは、前記
第1容器に収容された前記廃油を、60°C~90°Cの範囲内の温度に加熱することを含む、請求項
11から13
のいずれかに記載の再生油製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃油から再生油を製造する再生油製造装置及び再生油製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、廃油再生業者により、廃油の再生が行われている。再処理される廃油は、船舶・工場・ガソリンスタンド等からの潤滑油、機械切削油などである。これらは、大量の水を含んでおり、例えば使用済みの工作機械用クーラント油(切削油)であれば、95%程度の水分を含んでいる(すなわち、油5%、水95%程度)。廃油再生業者は、収集した廃油から水分を除去する処理を行い、水2%以上程度を含む「JIS再生油規格2級(水分5%以下)」の再生油を生成し、比較的安価で販売している。販売先は、石灰工場、製紙工場、セメント工場などである。
【0003】
しかし、石灰工場においても、高級石灰(製鉄の還元剤として使用される)の製造には、水分を1%以内に抑えた「JIS再生油規格1級」の再生油が求められる。水分が多いと、燃焼状態に影響し、高温燃焼ができなくなる。
【0004】
再生油を製造する既存の技術は、収集した廃油を、廃油タンクに収容し加熱することにより水分を蒸発させ、さらに2段の遠心分離機(例えば、デカンタ型及び通常型の遠心分離機)に掛けることにより、水分をさらに分離し、水分が分離された油を再生油として処理油タンクに貯蔵するものである。遠心分離器は、油と水の比重差を利用して、双方を分離する装置である。しかし、この方式では、水分が5%以下である「JIS再生油規格2級」の再生油しか製造することができないという問題点があった。
【0005】
高度な水分の除去を妨げているのは、廃油に含まれるエマルジョン化した油成分にある。廃油には切削油も混じっており、切削油はエマルジョン化されている。また、廃油の多くを占める潤滑油には、界面活性剤が添加されており、潤滑油のエマルジョン化を助けている。エマルジョン化した油は、水分と微細に混じり合っており、油と水の比重差を利用して、双方を分離することは困難である。また、廃油を加熱して水分を蒸発させることにより、「JIS再生油規格1級」の再生油を製造するには、多大な燃料コストを要する。このように、「JIS再生油規格1級」の再生油を製造するには、高額の製造コストを要するという問題点があった。
なお、この種の技術として、特許文献1に開示される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、エマルジョン化した油成分を含む廃油を処理し、水分の少ない再生油を安価に製造することを可能にする再生油製造装置及び再生油製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、水分を含む廃油から水分を除去することにより、再生油を製造する再生油製造装置であって、第1容器と、第1加熱器と、気泡噴出器とを、備えている。第1容器は、前記廃油を収容する。第1加熱器は、前記第1容器に設置され、前記第1容器に収容された前記廃油を加熱する。気泡噴出器は、前記第1容器に設置され、気体の供給を受けることにより、前記第1容器に収容された前記廃油に気泡を噴出する。
【0009】
この構成によれば、第1容器に収容された廃油を第1加熱器により加熱することができ、それにより、廃油に含まれる水分の蒸発が促される。さらに、気体を気泡噴出器に供給することにより、加熱された廃油に気泡を噴出させることができる。そうすることにより、加熱された廃油の内部において、廃油が気泡に触れ、廃油に含まれる水分が蒸気となって気泡に取り込まれる。その結果、廃油に含まれる水分が、効率よく除去され、エマルジョン化した油成分を含む廃油であっても、効率よく水分が除去される。また、当該構成は、比較的簡素である。すなわち、エマルジョン化した油成分を含む廃油を処理し、水分の少ない再生油を安価に製造することが可能である。なお、「空気」は「気体」の好ましい一例である。
【0010】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による再生油製造装置であって、前記気泡噴出器は、孔の群が形成された気泡噴出体を有し、前記気体の供給を受けることにより、前記孔の群を通じて前記気泡を前記廃油に噴出する。
この構成によれば、孔の群が形成された気泡噴出体により、廃油に気泡の群を噴出することができる。
【0011】
本発明のうち第3の態様によるものは、第1又は第2の態様による再生油製造装置であって、前記気泡噴出器は、前記第1容器に収容された前記廃油の下部に前記気泡を噴出する。
この構成によれば、第1容器に収容された廃油の下部に気泡が噴出するので、気泡は廃油内を上昇するのにともない、広い範囲で廃油に触れることとなる。すなわち、廃油の攪拌等を要することなく、広い範囲で廃油を気泡に接触させることができる。それにより、廃油に含まれる水分が、さらに効率よく除去される。
【0012】
本発明のうち第4の態様によるものは、第1から第3のいずれかの態様による再生油製造装置であって、前記第1加熱器は、前記第1容器に収容された前記廃油を、60°C~90°Cの範囲内の温度に加熱する能力を有する。
この構成によれば、廃油から水分を除去する上で望ましい温度に、第1容器内の廃油を加熱することができるので、廃油に含まれる水分を、さらに効率よく除去することができる。
【0013】
本発明のうち第5の態様によるものは、第1から第4のいずれかの態様による再生油製造装置であって、廃油を収容する第2容器と、前記第1容器と前記第2容器との間で、廃油を循環させる循環経路と、前記循環経路に配置され、前記循環経路を通じて廃油を循環させる循環ポンプと、をさらに備えている。
この構成によれば、廃油を循環させながら、廃油から水分を除去して再生油を製造できるので、再生油の製造効率が向上する。
【0014】
本発明のうち第6の態様によるものは、第5の態様による再生油製造装置であって、前記第2容器に設置され、前記第2容器に収容された前記廃油を加熱する第2加熱器を、さらに備えている。
この構成によれば、第1容器内にあって第1加熱器により加熱された廃油と、第2容器から第1容器に供給される廃油との間の温度差を、縮小化することができる。それにより、第1容器内にある廃油の温度の均一性が向上する。
【0015】
本発明のうち第7の態様によるものは、第5又は第6の態様による再生油製造装置であって、前記循環経路のうち、前記第2容器から前記第1容器に前記廃油を供給する廃油供給経路に設置され、前記第1容器に供給される前記廃油に含まれるスラッジを粉砕するスラッジ粉砕器を、さらに備えている。
この構成によれば、廃油に含まれ、ゲル化した固形物であるスラッジが粉砕された上で、廃油が第1容器に供給されるので、水分除去の効率がさらに向上する。
【0016】
本発明のうち第8の態様によるものは、第5から第7のいずれかの態様による再生油製造装置であって、前記気泡噴出器に前記気体を供給する気体供給器と、前記循環経路に設置され、循環する前記廃油に含まれる水分の濃度を計測する水分計と、前記水分計が計測する水分の濃度が、所定の基準を下回ると、前記第1加熱器及び前記気体供給器の動作を停止させる動作制御器と、をさらに備えている。
この構成によれば、製造する再生油の水分濃度の目標値に、所定の基準を設定することにより、水分濃度が目標値を達成した再生油の製造が完了したときに、再生油から水分を除去する処理を自動停止させることができる。
【0017】
本発明のうち第9の態様によるものは、第5から第8のいずれかの態様による再生油製造装置であって、前記循環ポンプは、前記第2容器から前記第1容器へ廃油を供給する第1ポンプと、前記第1容器から前記第2容器へ廃油を供給する第2ポンプと、を有している。また、前記再生油製造装置は、前記第1容器に収容される前記廃油の液面の高さを計測する液面計と、前記液面計が計測する前記廃油の液面の高さが、所定の範囲内となるように前記第1及び第2ポンプを制御する、循環ポンプ制御器と、をさらに備えている。
この構成によれば、第1容器に収容される廃油の液面の高さを、所定の範囲に保持することができる。
【0018】
本発明のうち第10の態様によるものは、第1から第9のいずれかの態様による再生油製造装置であって、前記第1容器から放出される、水分を含む気体から、水分を分離する水分離器を、さらに備えている。
この構成によれば、第1容器から放出される気体に含まれる水分が除去される。
【0019】
本発明のうち第11の態様によるものは、第10の態様による再生油製造装置であって、前記水分離器は、前段サイクロンセパレータと、気体冷却器と、後段サイクロンセパレータと、を有している。前段サイクロンセパレータは、前記第1容器から放出される、オイルミスト及び水分を含む気体から、オイルミスト及び水分を分離する。気体冷却器は、前記前段サイクロンセパレータから排出される、オイルミスト及び水分が分離された気体を冷却することにより、前記気体に含まれる蒸気を液体の水に凝縮する。後段サイクロンセパレータは、前記気体冷却器から排出される気体から、更に水分を分離する。
この構成によれば、第1容器から放出される気体に含まれる水分が、効率よく除去される。
【0020】
また、上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第12の態様によるものは、水分を含む廃油から水分を除去することにより、再生油を製造する再生油製造方法であって、容器に前記廃油を収容することと、前記容器に収容された前記廃油を加熱することと、前記容器に収容された前記廃油に気泡を噴出することと、を備えている。
【0021】
この構成によれば、容器に収容された廃油が加熱されることにより、廃油に含まれる水分の蒸発が促進され、加熱された廃油に気泡が噴出することにより、加熱された廃油の内部において、廃油が気体に触れ、廃油に含まれる水分が蒸気となって気体に取り込まれる。その結果、廃油に含まれる水分が、効率よく除去され、エマルジョン化した油成分を含む廃油であっても、効率よく水分が除去される。また、当該構成は、比較的簡素である。すなわち、エマルジョン化した油成分を含む廃油を処理し、水分の少ない再生油を安価に製造することが可能である。なお、「空気」は「気体」の好ましい一例である。
【0022】
本発明のうち第13の態様によるものは、第12の態様による再生油製造方法であって、前記気泡を噴出することは、前記容器に収容された前記廃油の下部に前記気泡を噴出することを含んでいる。
この構成によれば、容器に収容された廃油の下部に気泡が噴出するので、気泡は廃油内を上昇するのにともない、広い範囲で廃油に触れることとなる。すなわち、廃油の攪拌等を要することなく、広い範囲で廃油を気泡に接触させることができる。それにより、廃油に含まれる水分が、さらに効率よく除去される。
【0023】
本発明のうち第14の態様によるものは、第12又は第13の態様による再生油製造方法であって、前記廃油を加熱することは、前記容器に収容された前記廃油を、60°C~90°Cの範囲内の温度に加熱することを含んでいる。
この構成によれば、廃油から水分を除去する上で望ましい温度に、容器内の廃油が加熱されるので、廃油に含まれる水分が、さらに効率よく除去される。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、エマルジョン化した油成分を含む廃油を処理し、水分の少ない再生油を安価に製造することを可能にする再生油製造装置及び再生油製造方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施の形態による再生油製造装置の構成を例示するブロック図である。
【
図2】
図1の再生油製造装置の構成要素である蒸発タンクの外観を例示する斜視図である。
【
図3】
図2の蒸発タンクの内部構造を例示する縦断面図である。
【
図4】
図2の蒸発タンクに設置される気泡噴出器の構成を例示する、斜視断面図である。
【
図5】
図2の蒸発タンクの内部構造を例示する、B-B切断線に沿った平面断面図である。
【
図6】
図1の再生油製造装置についてなされた実証試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態による再生油製造装置の構成を例示するブロック図である。この再生油製造装置101は、蒸発タンク1、循環タンク3、循環経路5,7、循環ポンプ9,11、スラッジ粉砕機13、制御器15、及び再生油貯蔵タンク17を有している。蒸発タンク1は、水分を含んだ廃油を収容し、収容された廃油をバブリングしつつ加熱することにより、水分を効率よく蒸発させ、廃油を再生油に転換するタンクである。循環タンク3は、水分を含んだ廃油を収容するタンクである。再生油に転換すべき廃油は、まず循環タンク3に供給される。循環タンク3に収容された廃油は、循環経路5,7を通じて、蒸発タンク1と循環タンク3との間を循環する。循環ポンプ9,11は、循環経路5,7に配置され、循環経路5,7を通じて廃油を循環させるポンプである。廃油を循環タンク3から蒸発タンク1へ供給する循環経路7には、好ましくは、廃油に含まれるスラッジを粉砕するスラッジ粉砕機13が設けられる。制御器15は、再生油製造装置101に設置される各種の計器による計測値に基づき、再生油製造装置101の各部を制御する。
【0027】
蒸発タンク1において廃油の再生油への転換が進行するのに伴い、蒸発タンク1に循環経路5,7により連結されている循環タンク3においても、収容される廃油が再生油に近づいて行く。循環する廃油が含有する水分の濃度が、基準濃度を下回り、目標とする再生油が出来上がると、再生油となった廃油は、循環タンク3から配管19を通じて再生油貯蔵タンク17に移送される。配管19には、廃油を循環タンク3から再生油貯蔵タンク17へ送る、移送ポンプ21が設置されている。蒸発タンク1から循環タンク3へ廃油を供給する循環経路5には、廃油に含まれる水分の濃度を計測する水分計23が設けられている。制御器15は、水分計23が計測する水分濃度が、基準濃度を下回ると、蒸発タンク1における加熱及びバブリングを停止させるとともに、移送ポンプ21を起動することにより、循環タンク3内にある再生油となっている廃油を、再生油貯蔵タンク17へ移送する。
【0028】
次に、
図1に例示される再生油製造装置101の各部の構成及び動作について詳述する。
図2は、再生油製造装置101の構成要素である蒸発タンク1の外観を例示する斜視図である。蒸発タンク1は、図示の例では円筒状であり、タンク下部25とタンク上部27とに分割されている。タンク下部25とタンク上部27とは、互いに接し合う双方のフランジ同士をボルト締めすることにより、分離可能に締結されている。タンク下部25は有底であり、タンク上部27の上端は、そのフランジに蓋29がボルト締めされることにより、開閉可能に閉塞されている。蓋29には蒸気を放出するための蒸気排出口31が設けられている。タンク下部25の底部には、空気を送り込むための給気管33が連結されている。給気管33を配置する空間を確保するために、タンク下部25の底部には、タンク下部25を持ち上げる台座35が取り付けられている。
【0029】
タンク下部25の側壁には、循環経路5が連結されることにより、廃油が排出される廃油排出口37が設けられている。タンク下部25の側壁には、タンク下部25の内部に配設される加熱蒸気管38の端部が露出している。加熱蒸気管38は、蒸発タンク1に収容される廃油を加熱する加熱蒸気の通路である。加熱蒸気管38には、通過する加熱蒸気の圧力を指示する圧力計40が設置されている。一方、タンク上部27の側壁には、循環経路7が連結されることにより、廃油が供給される廃油供給口39が設けられている。タンク上部27の側壁には、さらに、収容する廃油の液面の高さを計測する液面計41が連結されている。タンク上部27の側壁には、さらに、収容する廃油の温度を計測する温度センサ42(
図1参照)を設置するための孔44が形成されている。
【0030】
図3は、蒸発タンク1の内部構造を例示する縦断面図である。タンク下部25の底部26には、給気管33を通じて供給される空気を、細かい気泡として廃油の中に噴出する気泡噴出器43が、設置されている。気泡噴出器43は、気泡を噴出することにより、収容されている廃油をバブリングする。タンク下部25の内部にはさらに、底部26の付近に、加熱蒸気管38が配設されている。加熱蒸気管38は、収容されている廃油を加熱する加熱器として機能する。加熱蒸気管38は、廃油の加熱を促進する上で好ましい例として、気泡噴出器43の上方に配置されている。
【0031】
図4は、蒸発タンク1に設置される気泡噴出器43の構成を例示する、斜視断面図である。図示の例では、気泡噴出器43は、タンク下部25の底部26の上に設置された環状体45と、環状体45の上に設置された気泡噴出体47とを有し、それにより内部に空気室48を形成する。図示の例では、気泡噴出体47は板状である。底部26、環状体45及び気泡噴出体47は、一例として、互いに溶接により固定されている。気泡噴出体47には、多数の気泡噴出孔49が形成されている。気泡噴出孔49の(径,間隔)の好ましい組み合わせは、例えば、(1.5mm,8mm)、(2.5mm,15mm)、(5mm,38mm)、(8mm,65mm)である。中でも、(2.5mm,15mm)、(5mm,38mm)が、特に好ましい。
【0032】
タンク下部25の底部26の中央には、貫通孔51が形成されている。給気管33は、その内部の給気路が貫通孔51に連通するように、底部26に連結されている。そのため、ブロワー53(
図1参照)により、給気管33に送り込まれる空気は、貫通孔51を通過し、気泡噴出器43の空気室48に送られる。空気室48に送られた空気は、多数の気泡噴出口49を通じて、蒸発タンク1に収容された廃油の内部に、細かい無数の気泡を噴出する。
【0033】
図5は、
図3のB-B切断線に沿った蒸発タンク1の平面断面図である。図示の例では、加熱蒸気管38は、タンク下部25の内部において、蛇行するように配置されている。それにより、加熱すべき廃油との接触面積が広く確保されている。また、加熱蒸気管38は、気泡噴出孔49の上方に配置されている。なお、
図5には、タンク下部25の中心線、及び加熱蒸気管38の中心線が、一点鎖線により表されている。
【0034】
図1に戻って、蒸発タンク1と同様に循環タンク3にも、加熱蒸気管55が設置されている。加熱蒸気管55は、循環タンク3に収容された廃油を加熱する。それにより、蒸発タンク1で加熱された廃油と、循環タンク3から蒸発タンク1に供給される廃油との間の温度差を、小さくすることができるので、蒸発タンク1内にある廃油の温度の均一性が向上する。また、蒸発タンク1内の廃油を加熱する加熱蒸気の負荷が軽減される。廃油が加熱される温度は、蒸発タンク1と循環タンク3との間で、好ましくは共通に設定される。
【0035】
循環タンク3内の廃油は、循環ポンプ11により、循環経路7を経由して蒸発タンク1に供給される。蒸発タンク1内では、廃油は加熱蒸気管38により、好ましくは60°C~90°Cの範囲、特に好ましくは、80°C~90°Cの範囲の温度に加熱される。これにより、廃油に含まれる水分の蒸発が促される。さらに、気泡噴出器43から、無数の細かい気泡が廃油の中に噴出されるので、加熱された廃油の内部において、廃油が気泡に触れ、廃油に含まれる水分が蒸気となって気泡に取り込まれる。特に、気泡噴出器43が、蒸発タンク1内の下部に配置されているので、気泡は廃油内を上昇するのに伴い、広い範囲で廃油と接触する。その結果、廃油に含まれる水分が、効率よく気泡に取り込まれ、廃油から除去される。また、エマルジョン化した油成分を含む廃油であっても、効率よく水分が除去される。このことは、後述するように、実証実験により実証済みである。
【0036】
一例を示すと、蒸発タンク1は、200リットルの廃油を収容するタンクであり、ブロワー53が送出する空気の圧力は、大気圧を基準として、0.2気圧ないしそれ未満である。また、循環タンク3は、一例として1000リットルの廃油を収容するタンクである。
【0037】
循環タンク3内の廃油は、循環経路7に設置されたスラッジ粉砕機13によりスラッジが粉砕された上で、蒸発タンク1に供給される。スラッジは、廃油に含まれ、ゲル化した固形物である。かかる固形物が粉砕された上で、廃油が蒸発タンク1に供給されるので、廃油の水分除去の効率がさらに向上する。
【0038】
蒸発タンク1内の廃油は、循環ポンプ9により、循環経路5を経由して循環タンク3に戻される。このように、循環タンク3に収容された、再生処理対象としての廃油は、蒸発タンク1と循環タンク3との間を循環し、循環しつつ蒸発タンク1において水分が除去される。
【0039】
蒸発タンク1において水分を取り込んだ気泡は、廃油の液面まで上昇し、さらに液面の上の空気に混じり合う。従って、蒸発タンク1内の廃油液面の上方の空間には、水分を含んだ空気により満たされている。この水分を含んだ空気は、蒸気排出口31を通じて、水分離器57に送られる。水分離器57は、空気から水分を除去する装置である。水分離器57は、好ましい例として、前段サイクロンセパレータ59、気体冷却器61及び後段サイクロンセパレータ63を有している。サイクロンセパレータ自体及び気体冷却器自体は、従来周知の装置であるので、それらの構成については詳細な説明を略する。
【0040】
前段サイクロンセパレータ59は、蒸気排出口31を通じて送られた空気から、オイルミスト及び水分を分離する。気体冷却器61は、前段サイクロンセパレータ59から排出される、オイルミスト及び水分が分離された空気を冷却することにより、空気に含まれる蒸気を凝縮し液体の水に転換する。後段サイクロンセパレータ63は、気体冷却器61から排出される空気から、更に水分を分離する。本願発明者の実験によれば、このように水分離器57を、前段サイクロンセパレータ59、気体冷却器61及び後段サイクロンセパレータ63の三段構成とすることが、蒸発タンク1から排出される、オイルミスト及び蒸気を含む空気から水分を効率よく除去する上で、効果的であり望ましい。水分離器57により水分を除去された空気は、大気に放出される。一方、空気から分離された水分は、排水タンク65に一時的に収容され、最終的に水分タンク67に排出される。
【0041】
制御器15は、液面計41の計測値を読み取ることにより、蒸発タンク1内の廃油の液面を、下限レベル69と上限レベル71(
図3参照)との間に保持するように、循環ポンプ9,11を制御する。一例として、蒸発タンク1は200リットルの廃油を収容するためのものであり、下限レベル69は150リットルの廃油の液面高さに相当し、上限レベル71は200リットルの廃油の液面高さに相当する。
【0042】
制御器15は、さらに、蒸発タンク1に設置された温度センサ42の計測値を読み取ることにより、蒸発タンク1内の廃油の温度を、所定の範囲に保持するように、加熱蒸気管38のバルブ73の開度を調整する。同様に、循環タンク3にも温度センサ75が設置されており、制御器15は、温度センサ75の計測値を読み取ることにより、加熱蒸気管55のバルブ77の開度を調節する。
【0043】
制御器15には操作ボタン(図視略)が設けられており、例えば、ブロワー操作ボタンを操作することにより、ブロワー53を起動及び停止することができる。制御器15は、さらに水分計23の計測値を読み取り、循環する廃油の水分濃度が目標値を下回ると、バルブ73,77を閉塞することにより、蒸発タンク1及び循環タンク3内の廃油の加熱を停止し、さらにブロワー53を停止させる。制御器15は、その後、移送ポンプ21を起動することにより、循環タンク3内に収容される、再生油となった廃油を再生油貯蔵タンク17に移送する。再生油貯蔵タンク17は、一例として6000リットルの廃油を収容するタンクである。再生油貯蔵タンク17は、例えば、再生油を搬送するために、ポンプによりタンクローリーに再生油を移送するのに用いることができる。
【0044】
図1において、制御器15に連結する信号線(点線で表している)が連結されているバルブは、制御器15によって操作される。また、制御器15に連結する信号線(点線で表している)が連結されている圧力計は、その計測値が制御器15によって読み取られ、バルブ等の制御に用いられる。制御器15は、一例として、プログラムを記憶し、記憶したプログラムに従って動作するコンピュータを有している。
【0045】
図6は、再生油製造装置101についてなされた実証試験の結果を示すグラフである。実証試験は、
図1の再生油製造装置101を試作することにより行われた。蒸発タンク1には150リットルの廃油が収容され、循環タンク3には800リットルの廃油が収容された。循環経路7にはスラッジ粉砕機13が設けられなかった。蒸発タンク1内の廃油の温度は83°Cであり、循環タンク3内の廃油の温度は85°Cに保持された。気泡噴出孔49の(径,間隔)は、(5mm,38mm)であった。処理前の廃油は、3.0%の濃度の水分を含んでおり、JIS再生油規格2級に相当する。また、この廃油に含まれる水分の大部分は、エマルジョン化し、油成分に溶け込んでいる。
【0046】
図6のグラフが示すように、処理開始後わずか20分で、水分計23が指し示す廃油中の水分濃度は、約0.1%以下にまで減少した。このように、廃油にエマルジョン化した油成分が含まれていても、短時間で効率よく廃油から水分を除去することができることが実証された。また、廃油の中のスラッジにも水分が含まれることから、スラッジ粉砕機13を設けることにより、さらに短時間で水分を除去できることが予測される。
【0047】
再生油製造装置101は、水分が5%以下である「JIS再生油規格2級」の再生油から、さらに水分を除去するのに、特に優れた効果を発揮するものであるが、水分が5%を超える廃油、例えば水分が95%である廃油から、水分を除去して再生油を製造する目的にも使用可能である。また、再生油製造装置101は、陸上に設置し、各種の工場等において生成される廃油を処理し、再生油を製造する装置として実施するだけでなく、船舶に設置し、船舶内に生成される廃油を処理し、再生油を製造する装置として実施することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 蒸発タンク(第1容器)、 3 循環タンク(第2容器)、 5,7 循環経路、 9,11 循環ポンプ、 13 スラッジ粉砕機、 15 制御器(動作制御器、循環ポンプ制御器)、 17 再生油貯蔵タンク、 19 配管、 21 移送ポンプ、 23 水分計、 25 タンク下部、 26 底部、 27 タンク上部、 29 蓋、 31 蒸気排出口、 33 給気管、 35 台座、 37 廃油排出口、 38 加熱蒸気管(第1加熱器)、 39 廃油供給口、 40 圧力計、 41 液面計、 42 温度センサ、 44 孔、 43 気泡噴出器、 45 環状体、 47 気泡噴出体、 48 空気室、 49 気泡噴出孔、 51 貫通孔、 53 ブロワー(気体供給器)、 55 加熱蒸気管(第2加熱器)、 57 水分離器、 59 前段サイクロンセパレータ、 61 気体冷却器、 63 後段サイクロンセパレータ、 65 排水タンク、 67 水分タンク、 69 下限レベル、 71 上限レベル、 73 バルブ、 75 温度センサ、 77 バルブ、 101 再生油製造装置。