IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジキンの特許一覧

<>
  • 特許-切り替え弁 図1
  • 特許-切り替え弁 図2
  • 特許-切り替え弁 図3
  • 特許-切り替え弁 図4
  • 特許-切り替え弁 図5
  • 特許-切り替え弁 図6
  • 特許-切り替え弁 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】切り替え弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/34 20060101AFI20220121BHJP
   F16K 11/044 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
F16K1/34 A
F16K11/044 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018565543
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2018002865
(87)【国際公開番号】W WO2018143158
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2017015383
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】石橋 圭介
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】藤本 良平
(72)【発明者】
【氏名】駿藤 紀文
(72)【発明者】
【氏名】山路 道雄
(72)【発明者】
【氏名】吉金 康弘
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06619321(US,B2)
【文献】特開2012-107709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を制御する制御空間を有する弁本体と、
前記制御空間内を移動して流体を制御する弁体と、
前記制御空間の上側外部へ流体が流出するのを防ぐためのカウンタープレートを含む切り替え弁であって、
前記弁体は、弁封鎖時に前記弁本体に設けられた下側弁座と当接する下側弁当たり部および弁解放時に前記カウンタープレートに設けられた上側弁座と当接する上側弁当たり部が形成されており、
前記カウンタープレートは、下向きに開口した第1凹所および該第1凹所に向かって開口した前記第1凹所の水平断面積よりも水平断面積が小さな第2凹所を有し、
前記第2凹所に前記上側弁座が圧入され
前記下側弁当たり部および前記上側弁当たり部の中間部にガイド部が設けられ、前記第1凹所の側面が前記ガイド部に外接し、
前記第1凹所の側面と前記ガイド部の側面の間に隙間があることを特徴とする切り替え弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス等の流体成分分析アナライザーシステム等に搭載される流体制御機器に用いられる切り替え弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のFiG.4(本明細書の図6)およびFig.8(本明細書の図7)に示すようなスチームセレクタが知られており、このスチームセレクタは、大きくは、モジュールボディ(33)、弁棒(86)、バルブボディ(58)およびピストン(59)から構成されている。
【0003】
このような切り替え弁において、ピストン(59)によって弁棒(86)を上下に動かすと、弁棒(86)が下に押し下げられ、弁棒の下部に形成された弁体に配置されたシールプラグ(99)が左側弁の前側弁座(104)に密着して流体制御チャンバ(50)へ流体が侵入できないクローズ状態となり、弁棒(86)が上に押し上げられると後ろ側シールプラグ(98)が後ろ側弁座に密着して流体制御チャンバ(50)内の流体が右隣の制御チャンバ(50)に送られて流路(26)を通って切り替え弁外に放出されるオープン状態となる。
【0004】
このようなスチームセレクタを幾つも並べ、多くの種類のガスを迅速に切り替えて分析装置に送ることによって効率的な分析ができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許6,619,321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
切り替え弁として、特許文献1には図7に示すように、弁棒(86)の弁体に前側シールプラグ(99)と後ろ側シールプラグ(98)がカシメによって取り付けられている。
【0007】
この構造の弁棒では、弁棒製作時に芯出しを行いながら2か所でカシメを行うことが必要となる。この際、長い弁棒を必要とする形状に加工した上でカシメを行う必要があり、また、それぞれのカシメにおいて、芯出しを行いながらカシメを行う必要があるため、加工が難しく、さらに弁棒が持つ長い弁軸の先端部にある弁体に対してこの作業を行うことはさらの芯出し作業を難しくする。
【0008】
2つのシールプラグの芯が十分に出ていないと、シールプラグと弁座の密接時にどちらかのシールプラグに流体のリークの原因となる偏摩耗が発生して、その結果、シールプラグの寿命が短くなり、弁棒の取り換えも頻繁に必要となる。
【0009】
さらに、弁棒がピストンによって上下移動する際に、弁体をガイドする機能を有する構造がないために、弁棒の上下移動によっても弁棒の弁軸のぶれが発生して、弁棒の先端に設けられたシールプラグの偏摩耗を助長する。
【0010】
この発明の目的は、シールプラグに相当する弁当たり部及び弁座の構成を変えて、切り替え弁の製作を容易にしてコスト削減し、切り替え弁の寿命を長くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(1)は、流体を制御する制御空間を有する弁本体と、制御空間内を移動して流体を制御する弁体と、制御空間の上側外部へ流体が流出するのを防ぐためのカウンタープレートを含む切り替え弁であって、弁体は、弁封鎖時に前記弁本体に設けられた下側弁座と当接する下側弁当たり部および弁解放時に前記カウンタープレートに設けられた上側弁座と当接する上側弁当たり部が形成されており、カウンタープレートは、下向きに開口した第1凹所および該第1凹所に向かって開口した第1凹所の水平断面積よりも水平断面積が小さな第2凹所を有し、第2凹所に前記上側弁座が圧入されていることを特徴とする切り替え弁である。
【0012】
従来の特許文献1にある切り替え弁では、下側弁当たり部および上側弁当たり部が弁体にカシメによって取り付けられていたため、両弁当たり部の芯が一致しなければならないという問題がある。
【0013】
この芯を一致させるのに要する手間を省くために、本発明(1)では、カウンタープレートに上側弁座を圧入し、カシメ部材の位置を弁体側からカウンタープレート側に変更することによって、弁軸の軸芯と上側弁座の軸芯を一致させている。
【0014】
上側弁座は、比較的加工のし易いカウンタープレート側に形成された凹所に上側弁座の部材を圧入することによって構成されているため、高い機械加工精度で製造が可能で、芯ずれを小さくできる。
【0015】
この構成によって、弁体における芯ずれの調整は、下側弁当たり部についてのみ調整すればよく、弁棒の製造に係るコスト削減につながり、弁当たり部の偏摩耗もなくなるので切り替え弁の寿命を長くすることができる。
【0016】
本発明(2)は、下側弁当たり部および上側弁当たり部の中間部にガイド部が設けられ、第1凹所の側面がガイド部に外接することを特徴とする本発明(1)に記載の切り替え弁である。
【0017】
本発明(2)の下側弁当たり部および上側弁当たり部の中間部に設けられたガイド部は、カウンタープレートの第1凹所の内壁に接している。
【0018】
弁本体に固定されたカウンタープレートの第1凹所の内壁に弁体のガイド部が案内されて弁体が移動するので、弁棒の軸の芯ぶれも小さくなり、上側弁当たり部の偏摩耗もなくなるので切り替え弁の寿命をさらに長くすることができる。
【0019】
本発明(3)は、第1凹所の側面とガイド部の側面の間に隙間があることを特徴とする本発明(2)に記載の切り替え弁である。
【0020】
第1凹所の水平断面が円であり、ガイド部の水平断面が多角形であり、第1凹所の水平断面の円が、ガイド部の水平断面の多角形に外接している。この円と多角形の辺の間の隙間から流体が制御空間上部のベント空間に、弁体が移動中に流れ込むことになり、上側弁座と上側弁当たり部とが接触してない開状態の場合は、制御空間とベント空間とが連通状態になる。
【発明の効果】
【0021】
この切り替え弁によると、弁座と弁体の芯ずれを小さくして製作できるので、製作が容易となりコストが削減される。さらに弁当たり部の偏摩耗を防止できるので切り替え弁の寿命も長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明による切り替え弁が搭載された切り替え弁モジュールの1実施形態を示す縦断面図であり、弁閉鎖(クローズ)時の状態を示す。
図2】この発明による切り替え弁が搭載された切り替え弁モジュールの1実施形態を示す縦断面図であり、弁開放(オープン)時の状態を示す。
図3】この発明による切り替え弁の弁本体の1実施形態を示す縦断面図である。
図4】この発明による切り替え弁のカウンタープレートと上側弁座の1実施形態を示す縦断面図である。
図5】この発明による切り替え弁のカウンタープレートとガイド部の水平断面図である。
図6】従来の切換え弁の縦断面図である。
図7】従来の切換え弁で使用する弁棒の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等および各種製造条件は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0024】
図1に示すように、この発明による切り替え弁が搭載された切り替え弁モジュール(10)は、弁本体(11)およびベース(50)とからなる。
【0025】
弁本体(11)には、弁棒(20)、カウンタープレート(30)、アクチュエータボディ(44)、ピストン(40)、円筒体部(41)、スプリング(43)、蓋(61)およびボルト(62)を備えている。その他、シールが必要な各部材間はOリングでシーリングされており、図面上でOリングを符号なしの黒塗り楕円で示している。
【0026】
ベース(50)には、分析ガス流入口(51)、駆動ガス流入口(58)、ベントライン(53)および分析ガス流出口(57)が開口し、ベース(50)内部には、分析ガス流入流路(52)、ベントライン連通流路(54)、駆動ガス流入流路(59)、分析ガス移行流路(55)および分析ガス流出流路(56)が設けられている。ガスの流れる方向を矢印で示している。なお、図1の左を左、右を右というものとする。
【0027】
弁本体(11)の左右には、図3に示すように、下から順に制御空間(31)、ベント空間(60)および駆動空間(42)がそれぞれ形成されている。制御空間(31)にカウンタープレート(30)は収まって弁本体(11)に固定されている。
【0028】
ベント空間(60)にアクチュエータボディ(44)は収まって弁本体(1)に固定されている。駆動空間(42)にはアクチュエータ(44)の筒状体部(41)は収まり弁本体(11)に固定されており、筒状体部(41)の内部にピストン(40)は移動可能に収められている。
【0029】
弁本体(11)の上端面には、駆動空間(42)を塞ぐように蓋(61)がかぶせられており、蓋(61)は、ボルト(62)で弁本体(11)に固定されている。
【0030】
カウンタープレート(30)、アクチュエータボディ(44)、ピストン(40)および蓋(61)には弁棒(20)の弁軸(21)が貫通する同芯の貫通孔(24)が開いている。
【0031】
弁棒(20)は、弁軸(21)と弁体(22)から形成され、弁体(22)には、上から順に上側弁当たり部(25)、ガイド部(23)および下側弁当たり部(24)が形成されている。下側弁当たり部(24)は別部材(ディスクパッキン)とされて、カシメによって固定されている。
【0032】
弁棒(20)の軸方向の長さは、切り替え弁が閉状態のときには、弁軸(21)の上端面が蓋(61)よりも上に突出せず、切り替え弁が開状態のときに、弁軸(21)の上端面が蓋(61)よりも上に突出するように調整されていてもよい。これによって、切り替え弁が閉状態なのか、開状態なのか目視でわかるようにすることも可能である。
【0033】
カウンタープレート(30)には、図4に拡大して示すように下向きに開口した第1凹所(32)および第1凹所(32)に向かって開口した第1凹所(32)水平断面積よりも水平断面積が小さな第2凹所(33)が形成されている。
【0034】
カウンタープレート(30)の第2凹所(33)に、上側弁座(35)が圧入されている。
【0035】
圧入された上側弁座(35)は環状になっており、その中央部分には弁棒が挿通できる貫通孔が形成されている。
【0036】
この切り替え弁が搭載された切り替え弁モジュール(10)は、常時は閉状態で、スプリング(43)に付勢されたピストンが、弁棒(20)を下向きに移動させ、下側弁当たり部(24)が弁本体(11)下部に形成された下側弁座(12)に密着して、分析ガス流入流路から来る分析ガスの制御空間(31)への流入を遮断して閉状態としている。
【0037】
分析ガス流入口(51)からの分析ガスをこの切り替え弁モジュール(10)を通して分析装置を送るステップとして、最初にベントライン(53)は(図示しない)真空ポンプ等に接続され、それによって内部のガスは排気されている場合と、ベントラインの一部が大気に解放されている場合とがある。ベントライン(53)は、ベントライン連通路(54)を介してベント空間(60)へと連通しており、真空引きをしている場合は、ベント空間(60)の内部にあるガスは排気される。大気に解放されている場合は、ベント空間(60)まで大気と同じ状態となっている。
【0038】
左側の切り替え弁では、分析ガス流出口(57)が、ベントラインの役割も果たしている。
【0039】
次に、駆動ガスが、駆動ガス流入口(58)から駆動ガス流入流路(59)を通じて駆動空間(63)へ送られ、駆動空間(63)の内圧を上昇させてピストン(40)を上方に押し上げる。
【0040】
ピストン(40)の上昇とともにピストン(40)に固定された弁棒(20)が上昇して、下側弁当たり部(24)が下側弁座(12)から離接して分析ガスが制御空間(31)を満たし、上側弁当たり部(25)が上側弁座(35)に密接して分析ガスのベント空間(60)への流出が止まる。図2は、上側弁当たり部(25)が上側弁座(35)に密接した状態を示したものである。
【0041】
分析ガスはさらに送られ続けられるので、分析ガスは、制御空間(31)および分析ガス移行流路(55)を通って隣の制御空間(31)に入り、分析ガス流出流路(56)を通り、分析ガス流出口(57)から流出して分析機器へ送られる。
【0042】
図4は、カウンタープレート(30)と上側弁座(35)を分離させたときの図である。カウンタープレート(30)には、下向き開口した第1凹所(32)と第2凹所(33)が設けられ、上側弁座(35)が第2凹所(33)に圧入嵌合される、
第2凹所(33)および上側弁座(35)は機械加工等で精度高く形成されるので、上側弁座(35)の芯ずれは非常に小さくなる。
【0043】
図5Aは、カウンタープレート(30)とガイド部(23)の水平断面を示す。ガイド部(23)の断面は、この図では正6角形であるが、正多角形でなくともよい。正6角形の頂点が第1凹所(32)の側面をガイドとしているので、弁棒(20)が垂直に移動しても弁体(20)の軸の水平方向のずれが抑えたれるので、芯ずれがさらに小さくなる。
【0044】
別の実施例である図5Bに示すように、ガイド部(23)の水平断面が多角形ではなく、円形であり、その円の何か所かに凹部(溝)や孔を有してもよい。この隙間は、制御空間(31)、第1凹所(32)およびカウンタープレート(30)の上の上部空間であるベント空間(60)を連通するための流路であればよく、カウンタープレート(30)側に凹所を設けても良い。
【0045】
ガイド部(23)またはカウンタープレート(30)に設ける連通させるための溝等は、弁体の一部分のみに圧力がかからないようにするため、弁体(22)の全体に均等に圧力がかかるようにするのが好ましい。
【0046】
図5A図5Bに示す形状は実施例にすぎず、水平断面の形状はこれらに限定されるものではない。
【0047】
このように、ガイド部(23)は、弁体(22)の芯ずれを防止する部分であるとともに、ベントライン(53)を真空引きした場合、制御空間(31)、第1凹所(32)およびカウンタープレート(30)の上の上部空間であるベント空間(60)だけでなく、分析ガス移行流路(55)までのガスを、分析ガスを流す前に排気することができる。
【0048】
また、本発明に係る切り替え弁を備える切り替え弁ジュール(10)を複数個連結して使用することによって、多くの種類のガスの切り替えを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
10:切り替え弁モジュール
11:弁本体
12:下側弁座
20:弁棒
21:弁軸
22:弁体
23:ガイド部
24:下側弁当たり部
25:上側弁当たり部
30:カウンタープレート
31:制御空間
32:第1凹所
33:第2凹所
34:貫通孔
35:上側弁座
40:ピストン
41:筒状体部
42:駆動空間
43:スプリング
44:アクチュエータボディ
50:ベース
51:分析ガス流入口
52:分析ガス流入流路
53:ベントライン
54:ベントライン連通路
55:分析ガス移行流路
56:分析ガス流出流路
57:分析ガス流出口
58:駆動ガス流入口
59:駆動ガス流入流路
60:ベント空間
61:蓋
62:ボルト
63:駆動空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7