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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】救急搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 80/00 20180101AFI20220121BHJP
【FI】
G16H80/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019139798
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021022293
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2020-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】516207861
【氏名又は名称】株式会社クレシア
(74)【代理人】
【識別番号】100101708
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 信宏
(72)【発明者】
【氏名】黒木 月光
【審査官】岡 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-000281(JP,A)
【文献】特開2001-084318(JP,A)
【文献】特開2010-015443(JP,A)
【文献】特開2017-162219(JP,A)
【文献】特開2019-028911(JP,A)
【文献】特開2013-041479(JP,A)
【文献】特開2014-215640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に協力関係にある複数の第1種及び第2種の医療施設、介護施設、居住施設のそれぞれに、これら施設相互間並びにこれら施設と協力関係にある救急センターとの間で情報を送受信するために設置された通信端末と、救急搬送用車両に設置された通信端末と、これらの各通信端末から通信ネットワークを介してアクセス可能に構成された前記救急センター内に設置された情報管理装置とから構成され、主治医のいる要介護高齢者を救急患者として搬送要請する必要が生じた場合に、適切な第1種の医療施設に迅速に搬送できるようにした救急搬送システムであって、
前記介護施設若しくは居住施設における要介護高齢者に救急患者として搬送要請の必要が生じた際に、前記介護施設若しくは居住施設から前記第2種の医療施設の主治医に連絡をして主治医から救急センターに搬送要請が行われる場合と、前記介護施設若しくは居住施設から直接に救急センターに搬送要請が行われる場合とに応じて、
前記情報管理装置が、当該装置の記憶部に記憶保存された前記各施設情報及び各施設における登録者の医療登録情報である事前登録情報に基づいて、要請元施設から受信した搬送要請情報により、前記第2種の医療施設に登録された患者、前記介護施設に登録された利用者、前記居住施設に登録された居住者のうちのいずれかである救急患者を判別し、該当する登録者のいる要請元施設に向かうように前記救急搬送用車両へ指示情報を送信するとともに、
前記第1種の医療施設に対して、前記救急患者の事前登録情報並びに主治医からの搬送要請に際して主治医からの追加情報が送信されていた場合には当該追加情報も添付して受け入れ可否問い合わせ情報を送信し、回答があった医療施設からの受信回答情報に基づいて適正な医療施設を決定し、救急患者を収容した救急搬送用車両に搬送先として決定した医療施設へ搬送する指示情報を送信するとともに、この決定情報を併せて主治医にも送信し、主治医が当該決定情報について関与し判定する場合には主治医の判断情報が送信されてくると、当該判断情報を最終決定情報として救急搬送用車両に搬送指示情報として送信し、
救急搬送用車両若しくは受け入れ先医療施設からの救急患者搬送終了通知情報を受信すれば、当該患者の主治医及び受け入れ可否を問い合わせた他の医療施設へ搬送終了通知情報を送信することを特徴とする救急搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救急患者を迅速に医療施設へ搬送するための救急搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、救急患者が発生した場合、119番通報により救急搬送要請をして、救急車で救急患者を病院に搬送する。しかし、救急患者を受入可能な病院が見つかるまでに時間がかかり、救急車が病院に到着するのが遅くなるという事態が起きている。このような事態を避けるために、救急患者を迅速に病院に搬送できるように支援する救急搬送支援システムが特許文献1に提案されている。
【0003】
上記提案の救急搬送支援システムは、複数の病院について救急搬送の受入対応結果をデータベースに記憶しておき、救急隊員から救急搬送の受入対応状況の問い合わせがあった場合、前記データベースのデータを用いて、受入対応状況を時系列にまとめて救急隊員に知らせる。これにより、救急搬送を受け入れる病院に手間をかけさせることなく、救急隊員が正確な受入対応状況を把握することができる。その結果、救急隊員が適切な病院を判断し、救急車で救急患者を迅速に搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5843305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記提案の救急搬送支援システムは、不特定多数の人を搬送対象としている。このため、救急患者の所在地が分かり難く、救急車で迎えに行くのに時間がかかることがある。また、救急患者についての情報、例えば既往歴、現在の治療状況、服用薬等に関する情報がないため、病院で適切な処置をできない可能性がある。
【0006】
本発明は、救急患者を受入可能な医療施設に迅速に搬送することができ、かつ医療施設で救急患者に対して適切な処置をすることができる救急搬送システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成した。すなわち、本発明に係る救急搬送システムは、相互に協力関係にある複数の第1種及び第2種の医療施設、介護施設、居住施設のそれぞれに、これら施設相互間並びにこれら施設と協力関係にある救急センターとの間で情報を送受信するために設置された通信端末と、救急搬送用車両に設置された通信端末と、これらの各通信端末から通信ネットワークを介してアクセス可能に構成された前記救急センター内に設置された情報管理装置とから構成され、主治医のいる要介護高齢者を救急患者として搬送要請する必要が生じた場合に、適切な第1種の医療施設に迅速に搬送できるようにした救急搬送システムであって、
前記介護施設若しくは居住施設における要介護高齢者に救急患者として搬送要請の必要が生じた際に、前記介護施設若しくは居住施設から前記第2種の医療施設の主治医に連絡をして主治医から救急センターに搬送要請が行われる場合と、前記介護施設若しくは居住施設から直接に救急センターに搬送要請が行われる場合とに応じて、
前記情報管理装置が、当該装置の記憶部に記憶保存された前記各施設情報及び各施設における登録者の医療登録情報である事前登録情報に基づいて、要請元施設から受信した搬送要請情報により、前記第2種の医療施設に登録された患者、前記介護施設に登録された利用者、前記居住施設に登録された居住者のうちのいずれかである救急患者を判別し、該当する登録者のいる要請元施設に向かうように前記救急搬送用車両へ指示情報を送信するとともに、
前記第1種の医療施設に対して、前記救急患者の事前登録情報並びに主治医からの搬送要請に際して主治医からの追加情報が送信されていた場合には当該追加情報も添付して受け入れ可否問い合わせ情報を送信し、回答があった医療施設からの受信回答情報に基づいて適正な医療施設を決定し、救急患者を収容した救急搬送用車両に搬送先として決定した医療施設へ搬送する指示情報を送信するとともに、この決定情報を併せて主治医にも送信し、主治医が当該決定情報について関与し判定する場合には主治医の判断情報が送信されてくると、当該判断情報を最終決定情報として救急搬送用車両に搬送指示情報として送信し、
救急搬送用車両若しくは受け入れ先医療施設からの救急患者搬送終了通知情報を受信すれば、当該患者の主治医及び受け入れ可否を問い合わせた他の医療施設へ搬送終了通知情報を送信することを特徴としている。
【0008】
この救急搬送システムは、互いに協力関係にある第1種及び第2種の医療施設、介護施設、居住施設間で構築される。医療施設には、第1種の総合病院や第2種の通常の医院のほか診療所等も含み、介護施設には、通常の高齢者施設、介護サービス付き老人ホームのような居住タイプの施設が含まれ、居住施設には、個人宅、一般老人ホームや在宅医療等居宅が含まれる。そして、これらの施設における要介護の高齢者である患者、利用者、および居住者について、登録された施設に関する情報および登録者の医療に関する情報を含む事前登録情報が蓄積されている。これにより、以下の対応が可能になる。
【0009】
救急患者の搬送要請があって救急搬送用車両が要請元施設へ行く際、救急搬送用車両のスタッフが事前登録情報から要請元施設に関する情報を得られる。これにより、救急搬送用車両が要請元施設の施設に早く到着することができる。
【0010】
また、各医療施設に救急患者の受入状況の問い合わせをするときに事前登録情報を添付することで、各医療施設において事前登録情報から救急患者の医療に関する情報を得られる。これにより、救急患者を受け入れた医療施設で、救急患者に対して適切な処置をすることができる。
【0011】
前記医療に関する情報には、例えば、主治医、既往歴、現在の治療状況、および服用薬に関する情報が含まれる。
【0012】
前記情報管理装置は、前記各医療施設に対して前記受入状況の問い合わせをする際に、前記事前登録情報に加えて、前記救急患者の主治医による追加情報を添付してもよい。前記追記情報には、例えばバイタル、既往歴、現在の治療状況、および紹介状に関する情報が含まれる。また、搬送要請発生時の被搬送者の現時点での容態に関する情報も含ませることができる。
このように追加情報を添付することにより、より詳細な医療に関する情報が得られる。
【0013】
前記受入状況の問い合わせは、受入医療施設が決定されるまで前記各医療施設で共有されるのが好ましい。
また、前記各医療施設からの前記回答は、少なくとも受入医療施設が決定されるまで前記情報管理装置に蓄積されるのが好ましい。
【0014】
本発明に係る救急搬送システムにおいて、前記介護施設を複数有し、かつ前記事前登録情報に登録者の介護に関する情報が含まれ、
前記情報管理装置は、前記医療施設、前記介護施設、および前記居住施設の何れかから要介護者の受入要請があった場合、前記複数の介護施設に対して前記事前登録情報を添付して受入状況の問い合わせを行い、その回答内容に基づいて適正な介護施設を決定してもよい。
受入状況の問い合わせ時に事前登録情報を添付することで、各介護施設において要介護者の介護に関する情報が容易に得られる。これにより、各介護施設からの受入状況の回答が早く得られ、適正な介護施設を迅速に決定することができる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された救急搬送システムによれば、本願でいう第2種の医療施設(通常の医院、診療所などの入院設備や高度な医療設備を持たない施設)に登録された患者、介護施設(高齢者施設や老人ホームのような居住タイプ施設)に登録された利用者、居住施設(医療や介護を行わない一般老人ホームや在宅医療居宅)に登録された居住者のいずれかに救急医療措置が必要な緊急事態が生じた場合に、これら施設から直接に救急センターへ連絡する場合、若しくは当該登録された患者、利用者、居住者との関係でかかり付けの主治医を通じて救急センターへ連絡する場合において、救急センターに設置された情報管理装置が送信されてくる情報をもとに、予め登録された事前登録情報に基づいて、救急患者と要請元の施設を判別して救急搬送用車両を要請元施設へ向かわせる指示を送信するとともに、提携先の第1種の医療施設(総合病院のような救急患者を受け入れ可能な設備や医療体制を備えた遺漏施設)へ当該救急患者に対する事前登録情報(主治医、既往歴、現在の治療状況、服用薬に関する情報等)を添付して受け入れ可否の問い合わせ情報を発信し、その回答情報を受信して受け入れ先の医療施設を決定し、救急搬送車両に決定された医療施設への搬送指示を発信するという一連の対応処理を円滑に行うことができる。また、救急患者が適切に決定された医療施設に搬送されると、情報管理装置が、救急搬送車両若しくは受け入れ先医療施設からの救急患者搬送終了通知情報を受信し、当該患者の主治医及び受け入れ可否を問い合わせた他の医療施設へも搬送終了通知情報を送信して搬送が完了しとこと及び搬送先の医療施設が明確になり、この確認通知が行われることにより、主治医と搬送先の医療施設で担当する医師との間での紹介状のやりとりや病院間の調整確認を円滑に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の救急搬送システムの構成を示す図である。
図2】救急搬送システムを利用して救急患者の搬送を行う流れの一例を示すフローチャートである。
図3】要請元施設の端末における発信時の画面の一例を示す図である。
図4】異なる要請元施設における端末の発信時の画面の一例を示す図である。
図5】医療施設の端末における受入問い合わせ受信時の画面の一例を示す図である。
図6】医療施設の端末における受入詳細情報画面の一例を示す図である。
図7】救急搬送用車両の端末における回答一覧画面の一例を示す図である。
図8】要請元施設の端末における受信時の画面の一例を示す図である。
図9】要請元施設の端末における異なる受信時の画面の一例を示す図である。
図10】救急搬送システムを利用して救急患者の搬送を行う流れの異なる例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面と共に説明する。
【0018】
図1は本発明の救急搬送システムの構成を示す図である。この救急搬送システムは、互いに協力関係にある第一種および第二種の医療施設1,2、介護施設3、および居住施設4の間で構築される。第一種の医療施設1は、総合病院等のような、救急患者を受入可能な設備や医療体制を備えた医療施設である。第二種の医療施設2は、医院、診療所等のような、前記設備や医療体制を持たない医療施設である。介護施設3には、通常タイプの高齢者施設、介護サービス付き老人ホームのような居住タイプの施設の両方が含まれる。居住施設4は、基本的に医療および介護を行わない居住のための施設であり、個人宅、一般老人ホームや所謂在宅医療居宅等が含まれる。
【0019】
救急搬送システムは救急センター5を備え、この救急センター5に情報管理装置6が設置されている。そして、この情報管理装置6と、医療施設1,2、介護施設3、および居住施設4にそれぞれ設けられた端末(図示せず)とが、通信ネットワーク7を介して接続されている。端末は、例えばパソコン、タブレット、スマートフォン等である。通信ネットワーク7は、インターネット、電話回線、衛星回線等の何れであってもよく、また複数種を組み合わせたものであってもよい。
【0020】
救急センター5には救急搬送用車両8が配備されている。この救急搬送用車両8に設けられた端末も、通信ネットワーク7を介して情報管理装置6に接続されている。救急搬送用車両8は、救急センター5以外の場所に配備されていてもよい。
【0021】
医療施設1,2には、この救急搬送システムの管理対象となる患者が登録されている。同様に、介護施設3には利用者が登録されている。また、居住施設4には、居住者が登録されている。
【0022】
情報管理装置6の記憶部6aに、前記患者、利用者、および居住者についての事前登録情報が記憶保存される。事前登録情報は、登録時またはその後に本人または家族または主治医から報告された情報で、本人番号、氏名、生年月日、住所、本人および家族の電話番号、登録施設情報、および主治医情報等である。前記登録施設情報は、登録されている施設の施設番号、施設名、連絡先等である。また、前記主治医情報は、主治医名、既往歴、現在の治療状況、服用薬等である。
【0023】
情報管理装置6は、記憶部6aの他に、外部の端末と通信するための通信部、データ入力を行うための入力部、各種情報を表示する表示部、上記各部の動作を制御する制御部等を有する(図示省略)。
【0024】
次に、この救急搬送システムを利用した救急搬送の仕組みについて説明する。介護施設3または居住施設4で救急患者が発生した場合、主治医を介して救急センター5に利用要請するケースと、直接に救急センター5に利用要請するケースとがある。
【0025】
[主治医発信ケース]
図2は、主治医を介して救急センター5に利用要請するケースにおける流れを示すフローチャートである。このケースでは、介護施設3または居住施設4(以下、「要請元施設」とする)で救急患者が発生すると(A1)、要請元施設の端末から主治医に連絡する(A2)。具体的には、端末で事前にインストールされている「救急搬送システム」を選択すると、例えば図3または図4に示す画面が現れる。図3は個人宅である居住施設等のように登録者が特定されている施設の端末の画面である。この場合、「主治医連絡」を選択することで、主治医が所属する医療施設1(2)に連絡される。図4は登録者が複数名いる施設の端末の画面である。この場合、患者または利用者または居住者を特定してから「主治医連絡」を選択することで、主治医が所属する医療施設1(2)に連絡される。
【0026】
主治医が所属する医療施設1(2)に連絡が入ると、主治医が救急センター5に利用要請を行う(A3)。その際、救急患者の事前登録情報に加えて、主治医による追加情報を添付する。追加情報は、救急患者のバイタル、既往歴、現在の治療状況、紹介状等に関する情報である。また、主治医が救急患者とのやりとりで把握できた搬送要請時の現状容態等に関する情報も含ませることができる。
【0027】
利用申請は情報管理装置6に送信される。すると、情報管理装置6は、救急搬送用車両8に対して要請元施設へ行くように指示する(A4)。利用要請には事前登録情報が添付されているので、救急搬送用車両のスタッフが、事前登録情報から要請元施設に関する情報(登録施設情報)を得られる。これにより、救急搬送用車両が要請元施設の施設に早く到着することができる。なお、すべての救急搬送用車両8が出動中で搬送業務を行える救急搬送用車両8が無い場合、公共の救急車に搬送を依頼する。
【0028】
また、情報管理装置6は、上記救急搬送用車両8への指示と並行して、すべての第一種の医療施設1に対して救急患者の受入状況の問い合わせを行う(A5)。その際、救急患者の事前登録情報および追加情報を添付する。この受入状況の問い合わせは、受入医療施設が決定されるまで各医療施設1で共有される。
【0029】
図5は医療施設1の端末の受信画面の一例を示す。同図に示すように、受信画面には、(救急患者の)氏名、(救急要請の)発生時刻、年齢、性別、診療科目、到着予定(時刻)、受入状況、詳細が表示される。また、受入先が未定の受入要請がある場合は、「受入要請あり!」等の警告が表示される。
【0030】
図5の画面で「リンク」をクリックすると、図6に示す詳細情報画面が現れる。この詳細情報画面には、事前登録情報および追加情報による救急患者の詳細な情報が表示される。本人連絡先および家族連絡先が表示されるので、本人または家族と電話でやりとりすることが可能である。また、既往歴、治療中情報、紹介状については、「リンク」をクリックすることでさらに詳細な情報が得られる。
【0031】
上記受入状況の問い合わせに対して、各医療施設1から情報管理装置6へ、受入を承認するか承認しないかの回答が返信される(A6)。一定時間たっても回答が無い場合は非承認として処理する。各医療施設1からの回答をまとめた回答一覧が、各医療施設1,2、要請元施設および救急搬送用車両8の端末に通知される。図7は端末に表示された回答一覧の一例である。この回答一覧は、少なくとも受入医療施設が決定されるまで情報管理装置6に蓄積される。
【0032】
承認回答が一つである場合は、その承認回答をした医療施設受入医療施設として決定する。基本的には、情報管理装置6からの受け入れ可否問い合わせ情報を受信した医療施設からの回答情報に基づいて自動的に決定されるが、各問い合わせ受入医療施設に承認回答が複数である場合も含めて、主治医側にも承認回答情報が送信されるので、より適切な判断の下に決定できるように、回答一覧の情報を精査した上で主治医からの判断情報を受信してから情報管理装置6が受入医療施設を決定する(A7)。
【0033】
ただし、回答一覧を通知後、一定時間たっても主治医からの判断情報が送信されてこない場合、情報管理装置6に組み込まれたコンピュータプログラムにより受入医療施設を決定する。このコンピュータプログラムでは、以下の要件を満たす医療施設を選定の基準とする。主治医からの判断情報が送信されてきた場合には、この判断情報を優先して決定されることになる。
(1)救急対応が可能な医療施設であり、かつ救急患者に対応できる診療科目を有すること。
(2)その時点で救急患者を受け入れ可能な状態であること。
(3)要請元施設からの距離が近いこと。
【0034】
上記のように決定された受入医療施設の情報は救急搬送用車両8に通知される。そして、救急搬送用車両8により、要請元施設から受入医療施設へ救急患者を搬送する(A8)。
【0035】
受入医療施設の情報は要請元施設にも通知される。図8は要請元施設の端末に送信された通知の一例である。救急搬送用車両8の到着見込時間が表示されるので、要請元施設で到着見込時間に合わせて準備をすることができる。この例のように、救急患者の状態を入力することができると、その情報を受入医療施設に送ることで、受入医療施設で適切な受入準備することができる。また、救急患者の状態が分かれば、図9のように、主治医または受入医療施設から要請元施設へ、救急搬送用車両8が到着するまでの間に要請元施設で行う応急処置方法を連絡することができる。
【0036】
救急搬送用車両8が受入医療施設に到着すると、救急搬送用車両8から情報管理装置6へ搬送終了通知を行う(A9)。そして、情報管理装置6から主治医へ搬送終了通知を行う(A10)。さらに、情報管理装置6から各医療施設1へ搬送終了通知を行う(A11)。これにより、各医療施設1で受入状況が共有され、以後の救急搬送の受入医療施設の決定に活用される。このように、情報管理装置6が、救急搬送車両8若しくは受け入れ先医療施設からの救急患者搬送終了通知情報を受信し、当該患者の主治医及び受け入れ可否を問い合わせた他の医療施設へも搬送終了通知情報を送信し、搬送が完了しとこと及び搬送先の医療施設が明確になることにより、主治医と搬送先の医療施設で担当する医師との間での紹介状のやりとりや病院間の調整確認を円滑に行うことができるようにもなる。
【0037】
[介護・居住施設発信ケース]
図10は、介護施設3または住居施設4から直接に救急センター5に利用要請するケースにおける通信ネットワーク7によるやりとりの流れを示すフローチャートである。このケースでは、要請元施設で救急患者が発すると(B1)、直接に要請元施設の端末から救急センター5に利用要請する(B2)。具体的には、例えば図3または図4に示す画面で「救急要請」を選択することで、情報管理装置6に送信する。この利用要請には、事前登録情報が添付される。
【0038】
利用申請を受けると、情報管理装置6が主治医に利用要請を通知する(B3)。これと同時に、救急搬送用車両8に対して要請元施設へ行くように指示する(B4)。主治医発信ケースと同様に、すべての救急搬送用車両8が出動中で搬送業務を行える救急搬送用車両8が無い場合、公共の救急車に搬送を依頼する。
【0039】
また、情報管理装置6は、すべての第一種の医療施設1に対して、救急患者の事前登録情報を添付して受入状況の問い合わせを行う(B5)。その後、主治医から追加情報が送信されるごとに、事前登録情報に追加情報が付け加えられる(B6)。
【0040】
以下、受入状況の問い合わせに対して各医療施設1が承認・非承認の回答をしてくると(B7)、主治医発信ケースにおけるステップA6,A7と同様に、承認回答が一つである場合は、その承認回答をした医療施設を受入医療施設に決定する。基本的には、情報管理装置6からの受け入れ可否問い合わせ情報を受信した医療施設からの回答情報に基づいて自動的に決定されるが、各問い合わせ受入医療施設に承認回答が複数である場合も含めて、主治医側にも承認回答情報が送信されるので、より適切な判断の下に決定できるように、回答一覧の情報を精査した上で主治医からの判断情報を受信してから情報管理装置6が受入医療施設を決定する(B8)。そして、ステップA8と同様に、救急搬送用車両8により要請元施設から受入医療施設へ救急患者を搬送する(B9)。救急搬送用車両8が受入医療施設に到着すると、ステップA9,A10,A11と同様に、救急搬送用車両8から情報管理装置6へ搬送終了通知を行い(B10)、情報管理装置6から主治医へ搬送終了通知を行い(B11)、情報管理装置6から各医療施設1へ搬送終了通知を行う(B12)。
【0041】
以上の説明のように、この救急搬送システムは、互いに協力関係にある医療施設1,2、介護施設3、居住施設4の間で構築される。そして、これらの施設の患者、利用者、および居住者について、登録された施設に関する情報および登録者の医療に関する情報を含む事前登録情報が蓄積されている。このことによる救急搬送システムのメリットを以下に列挙する。
【0042】
登録者が救急搬送を必要とする状態となった場合、登録者自身が端末により搬送要請を行うことができる。
登録者が救急搬送を必要とする状態となった場合、登録者の親族や介護者が端末により搬送要請を行うことができる。
介護者が医療従事者である場合、追加情報としてバイタル等の情報を追加することができる。
【0043】
登録者または親族、介護者が搬送要請を行った場合、情報管理装置6から主治医に通知される。これにより、主治医から受入医療施設へ、追加情報を含む救急患者の情報を提供することができる。また、端末が通話機能を有する場合、主治医による状況確認や応急処置の指示が可能である。
【0044】
各医療施設1の受入状況に関する情報を蓄積して管理することで、搬送要請時に、蓄積された情報を各施設へ一斉に発信することができる。これにより、主治医や要請施設でリアルタイムな情報に基づく適正な判断をすることができる。なお、一定時間がたっても応答が得られない場合は、蓄積された情報を基に受け入れ可能性の高い医療施設を選択することで対応する。
【0045】
受入状況の問い合わせに対する各医療施設1の回答情報、および一定時間たっても回答が無いに医療施設1についての情報を蓄積することで、医療施設1の側で受入状況の情報を更新する必要がなくなり、医療施設1での作業が軽減される。
【0046】
搬送要請時に主治医が対応不可能な状態にある場合、情報管理装置6に組み込まれたコンピュータプログラムによって蓄積された情報に基づいて受入医療施設を決定することができる。ただし、この決定を実行するか否かは、救急患者本人または親族、介護者の同意を必要とする。同意が得られない場合は、公共の救急車に緊急搬送を要請する。
【0047】
また、この救急搬送システムは、救急搬送以外に、介護施設3の検索にも利用することができる。すなわち、救急センター5に要介護者を受入可能な介護施設の問い合わせがあった場合、複数の介護施設3に対して事前登録情報を添付して受入状況の問い合わせを行い、その回答内容に基づいて適正な介護施設を決定する。受入状況の問い合わせ時に事前登録情報を添付することで、各介護施設3において要介護者の介護に関する情報が容易に得られる。これにより、各介護施設3からの受入の状況の回答が早く得られ、適正な介護施設を迅速に決定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
上記実施例において、通信ネットワーク7を介して接続される端末が、GPSによる位置情報を発信できるスマートフォン等であれば、登録者が外出先において不調をきたした場合でも、当該位置情報も取得して外出先でも救急搬送を要請することができる。したがって、本発明にかかる救急搬送システムにおける登録者を、日常において介護等を必要としないものの、大病後のリハビリ中や健康的に問題を抱えていて心配な方等にも二次的な利用者としてスマホ上での登録をできるようにして、外出先での安全自己管理に資するような当該救急搬送システムの利用を図れるようにすることも可能である。
また、救急車搭載の端末にもGPS機能を設けることにより、この位置情報を情報管理装置で取得して救急車の位置を把握できれば、搬送先施設への到着時間をより正確に知らせることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1,2 医療施設
3 介護施設
4 居住施設
6 情報管理装置
7 通信ネットワーク
8 救急搬送用車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10