(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】安全機構を有する溶接装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/04 20060101AFI20220121BHJP
【FI】
B29C65/04
(21)【出願番号】P 2019511370
(86)(22)【出願日】2017-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2017070667
(87)【国際公開番号】W WO2018041627
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-04
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】518061421
【氏名又は名称】コンロイ メディカル エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジャンソン,パー
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-121360(JP,A)
【文献】米国特許第06167677(US,B1)
【文献】国際公開第2016/083459(WO,A1)
【文献】特開2015-178252(JP,A)
【文献】特開2006-043727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極(11、12;21、22)、アクチュエータ(15;25)および電力源(20)を含む、安全機構を有する溶接装置(10;30)であって、
前記2つの電極(11;21、22)のうちの少なくとも1つ
は、他方の電極に対して移動可能に構成され、前記2つの電極は互いに接触しないで、密閉される非導電性表面を有する物体(14)が挿入される間隙(13)を画定し、
前記アクチュエータ(15;25)は、作動されているときに、移動可能に構成された
少なくとも1つの前記電極(11;21、22)を動かして、前記物体(14)が前記間隙(13)に挿入されるときに圧搾されるように構成され、
前記電力源(20)は溶接施工を実施するためにエネルギを前記
2つの電極に供給するように構成されており、
前記溶接装置(10;30)はさらに、
1)挿入された前記物体(14)が前記
2つの電極(11、12;21,22)の間で圧搾されるときに締付力を定量化するように構成される検出器(16;26)、
2)前記物体(14)が圧搾されるときに前記
2つの電極間の距離を測定するように構成される距離センサ(17;23)、
および
3)前記物体(14)が圧搾されるときに前記
2つの電極(11、12;21、22)の間に位置する物体の
コンダクタンスを測定するように構成されるコンダクタンスセンサ(24)
を含み、
前記溶接装置
は、
前記検出器(16;26)
、前記距離センサおよび前記コンダクタンスセンサからの入力を処理して、前記
2つの電極間に挿入され
た前記物体が血液バッグチューブであるか、または異物であるかを示す出力を供給するように構成されるプロセッサを含む、
ことを特徴と
し、かつ
前記プロセッサは、距離およびコンダクタンスに関する閾値をメモリに蓄積し、前記プロセッサは、センサ出力と蓄積された前記閾値との比較を出力するように構成される、
溶接装置(10;30)。
【請求項2】
前記プロセッサは、様々な材料の種類に関する締付力プロファイルを蓄積し、前記プロセッサは、
前記検出器に由来する検出器出力と、蓄積された
前記締付力プロファイルとの比較を出力する、請求項
1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記距離センサ(17;23)は、
移動可能に構成された少なくとも1つの前記電極(11;21、22)の、他方の電極に対する動作を観察することによって、前記
2つの電極間の距離を測定するように構成される、請求項1に記載の溶接装置。
【請求項4】
前記距離センサ(17;23)は光学式距離計である、請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項5】
前記物体が画定された
前記間隙(13)より部分的に外側にあるかどうかを検出するために、追加のセンサ(19a)が設けられ、前記プロセッサ(18)はさらに、前記物体(14)が前記画定された間隙(13)より部分的に外側にあることが検出されるときに、前記アクチュエータ(15;25)が作動するのを防ぐように構成される、請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項6】
前記追加のセンサ
(19a)は前記距離センサ(23)と一体
である、請求項
5に記載の溶接装置。
【請求項7】
前記
2つの電極間に挿入された前記物体(14)の位置を検出するように、位置センサ(19b)が設けられ、前記プロセッサ(18)はさらに、前記位置センサが前記
2つの電極(11、12;21、22)の間に前記物体
(14)が設置され
たことを検出するときに、前記アクチュエータ(15;25)を作動させるように構成される、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項8】
前記アクチュエータ(15;25)は、前記位置センサ(19b)が前記間隙(13)内
の前記物体を検出するときに作動される、請求項
7に記載の溶接装置。
【請求項9】
前記2
前記
2つの電極
のうち少なくとも1つ
(12)は固定されている、請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項10】
2つの電極(11、12;21、22)、アクチュエータ(15;25)および電力源(20)を含む、安全機構を有する溶接装置(10;30)であって、
前記2つの電極(11;21、22)のうちの少なくとも1つが他方の電極に対して移動可能に構成され、前記2つの電極は互いに接触しないで、密閉される非導電性表面を有する物体(14)が挿入される間隙(13)を画定し、
前記アクチュエータ(15;25)は、作動されているときに、移動可能に構成された
少なくとも1つの前記電極(11;21、22)を動かして、前記物体(14)が前記間隙(13)に挿入されるときに圧搾されるように構成され、
前記電力源(20)は溶接施工を実施するためにエネルギを前記
2つの電極に供給するように構成されており、
前記溶接装置(10;30)はさらに、
1)挿入された前記物体(14)が前記
2つの電極(11、12;21,22)の間で圧搾されるときに締付力を定量化するように構成される検出器(16;26)、
2)前記物体(14)が圧搾されるときに前記
2つの電極間の距離を測定するように構成される距離センサ(17;23)、
3)前記物体(14)が圧搾されるときに前記
2つの電極(11、12;21、22)の間に位置する
前記物体のコンダクタンスを測定するように構成されるコンダクタンスセンサ(24)、
および
4)前記
2つの電極間に挿入された前記物体(14)の
一部を検出するように構成される位置センサ(19b)
を含み、かつ
前記溶接装置が、
前記検出器(16;26)、前記距離センサ(17;23)、および前記コンダクタンスセンサ(24)からの入力を処理して、前記
2つの電極間に挿入されている
前記物体が血液バッグチューブであるか、または異物であるかを示す出力を供給するように構成されるプロセッサを含む、ことを特徴とし、
前記プロセッサは距離およびコンダクタンスに関する閾値
を蓄積するメモリを含み、前記プロセッサは、
前記距離センサおよび前記コンダクタンスセンサからのセンサ出力と蓄積された前記閾値の比較を出力し、
前記
メモリは、様々な材料の種類に関する締付力プロファイルを蓄積
し、前記プロセッサは、
前記検出器からの検出器出力と、蓄積された前記
締付力プロファイルの比較を出力する、
溶接装置(10;30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してプラスチック溶接のための、より具体的にはプラスチックチューブのための溶接装置に関し、特に操作者の負傷を防ぐための安全機構に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接装置は通常、血液バッグまたは血液バッグに接続されるチューブなどの、血液を包含するように設計された種々の容器を密閉するために使用される。血液バッグおよびチューブはプラスチック材料を使用して製造されるので、超音波またはRF溶接技術が一般的に使用され、このような装置は本出願人によって提供され、
図1に示される。
【0003】
血液バッグおよびチューブは様々な異なる大きさおよび形状があり、使用者は特定の材料、形状、または厚さに応じて異なる溶接装置を利用する必要がある。一般的に、使用者は血液バッグが満杯のときにプラスチックのチューブを密閉しなければならないが、試験試料のために血液バッグの一部を密閉しなければならない場合があり、使用者は要求されるタスクを実施するために異なる溶接装置を利用する必要がある。
【0004】
血液バッグなどの血液を包含するために設計される種々の容器を密閉する際、溶接技術(超音波またはRF)が通常使用される。このような製品(CS546 Qseal-handy)はコンロイメディカル社(Conroy Medical)によって提供され、
図1に図示される。これはバッテリパック2(つまり直流源)、通常は手持ち式の溶接機器1、およびバッテリパックと手持ち式機器とを接続するためのコード/ケーブル3を含む。このような機器はまた、適切なコードを介して、交流電源から電力を得る。Qseal-handyは、血液パックもしくはアフェレーシスディスポーザブルセットのいずれかに含まれる血液バッグに接続される、PVCおよびEVAチューブを密閉するための完全自動システムである。提供者がまだ血液パックもしくはアフェレーシスディスポーザブルセットに接続されているときに、密閉されることがある。
【0005】
従来技術の機器は、異なるチューブを識別することができるが(たとえば、厚さ/直径、材料の弾性など)、たとえば指が意図せず電極間の溶接領域に挿入されたかどうかを検出する性能を持っていない。溶接には高いエネルギが使用されていることから、人体組織はこのような場合において深刻な損傷を受ける可能性がある。
【0006】
従って、たとえば指の形をした人体組織とプラスチックのチューブを識別でき、もしこのような検出がされると作業を中止する、溶接装置を開発する需要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、操作者の負傷を防ぐ安全機構を有する溶接装置を提供することである。
【0008】
目的は以下を含む溶接装置で達成され得る。
【0009】
本発明の従来技術に対する利益と利点は、溶接機に手を加えることによって、装置の操作者が深刻な熱傷を負うことがないということである。
【0010】
さらなる目的および利点は、詳細な説明と図から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】コードレス式の従来技術の溶接装置を示す図である。
【
図5】コンダクタンス測定機器の実施形態を示す図である。
【
図6】溶接施工を実施するための方法を示すフローチャートである。
【
図7】安全面を特徴とする溶接施工の作業を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明およびその説明のために、「プロセッサ」は要求される機能を実施できる任意の機器、つまりデジタル機器およびアナログ機器の両方を包含するように理解されるべきである。
【0013】
図1はコード2を介してバッテリパック3に取り付けられる溶接ユニット1を有する、従来技術の溶接装置を図示する。
【0014】
図2は、バッテリパックを備えたパワーユニット5の形態の第一ユニットと、溶接機4の形態の第二ユニットとの、2つの部品を含むコードレス溶接装置を図示する。パワーユニットは装置のハンドル6にあるスロットに挿入される。背景技術で述べたように、使用者の視点からはバッテリパックがハンドルに備えられたコードレスの実施形態が好ましいが、もちろん、電力は配電網から、もしくは他の任意の外部電源から得ることが可能である。
【0015】
前述のように、従来技術の溶接装置の欠点は、意図せずにかつ不適切に溶接機に手を加えることによって、操作者が負傷するのを避けるための安全システムがないことである。
【0016】
図3は、2つの電極11、12と、アクチュエータ15と、電力源20と、締付力検出器16と、物体が圧搾されるときの電極間の距離を測定するように構成される距離センサ17と、物体が圧搾されるときの電極間のコンダクタンスを測定するように構成されるコンダクタンスセンサ24と、たとえば血液バッグチューブなどの適切な物体が電極間に挿入されているか、もしくはそれが例えば指などの異物であるかを、検出器16およびセンサ17、24の少なくとも1つからの入力に基づいて判断するように構成されるプロセッサ18とを含む、溶接装置10の第一実施形態を示す。
【0017】
ここで
図3を参照しながら、溶接機の操作が概して説明され、特に安全機構が説明される。
【0018】
第一電極11は固定されている他方の電極12に対して移動可能なように配置され、2つの電極は互いに接触しない。間隙13は密閉される物体14が挿入され得る電極の間に画定される。プラスチックチューブまたはプラスチックバッグなどの溶接される物体14は、非導電性表面を備えており、一般的に非導電性材料で製造される。
【0019】
作動されている際に、アクチュエータ15(たとえば、ステップモータ、ブラシレス直流モータなど)は、物体14が間隙13内に挿入されているときに、第一電極11を他方の電極12に向かって動かして間隙13を閉じるように構成される。電力源20は、溶接施工を実施するのに必要な時間および/またはエネルギを制御する、プロセッサ18からの制御信号34が受信されると、溶接施工を実施するためのエネルギを電極に供給するように構成される。
【0020】
溶接施工を実施するのに必要な時間および/またはエネルギを計算するために、物体に関する情報を収集する必要がある。挿入された物体14が電極11、12の間で圧搾されるときに、締付力検出器16は締付力を定量化するように構成され、距離センサ17は電極間の距離を測定するように構成される。締付力は締付力を検出することによって、または電力消費(直流モータへの電流および電圧)に基づいて締付力を計算することによって定量化され得る。
【0021】
定量化された締付力および測定された距離は、物体がどのような特性を有するか、つまり、チューブもしくはシート、厚さおよび材料の種類に関する指標である。より具体的には、締付力Fclampは、移動する電極の変位、つまり電極間の距離(あるいは空間もしくは時間の同等の相対的位置測定)の関数として記録される。従って、力Fclampは、材料の弾性/剛性に応じて、ある特定の材料に関してある特定のプロファイルを有する。
【0022】
プロセッサは定量化された締付力プロファイルと電極間で測定された距離とに基づいて、挿入された物体への溶接施工が実施されるのに必要な時間および/またはエネルギ量を計算する。
【0023】
プロセッサ18はメモリを備えており、メモリは種々の材料に関する締付力プロファイルに対応するデータを含み、検出器およびセンサからの入力データに基づいて制御された溶接を実施するためのものである。従って、プロセッサは、適切な溶接施工に関するメモリからのデータを、電極間の締付力および距離の関数として検索する。データはルックアップテーブルに蓄積されるのが好ましい。さらに、異なる材料に対して別々のルックアップテーブルが実装される場合があり、物体がどの材料から作られているかに関する情報は使用者から得られる場合がある。例えば、バーコード28からの情報を読み込む内蔵式バーコードリーダ27を使用し、情報を有する信号29がプロセッサ18に転送されて、溶接施工に使用される正しいルックアップテーブルを選択する。
【0024】
さらに、溶接装置10は、コンピュータなどの外部装置とのワイヤレス通信を容易にして情報交換するように、トランシーバ回路39などのワイヤレス通信インターフェースを備えている。この種の情報は、適合してそれにより溶接施工を最適にするために、ルックアップテーブルに蓄積される更新されたデータと、新しいルックアップテーブルに蓄積されるデータも含む。間隙に挿入された物体の材料の種類に関する情報はまた、ワイヤレス通信インターフェースを介してプロセッサに供給され得る。
【0025】
距離センサ17は、第一電極11の他方の電極12に対する動作を観察することによって、電極間の距離を測定するように構成される。本実施形態では、これは、第一電極11に取り付けられてアクチュエータ15によって制御される、ロッド15bの動作を観察するように構成されるセンサによって行われる。
【0026】
任意で、物体14が画定された間隙13より部分的に外側にあるかどうかを検出するために、追加のセンサ19aが設けられることがある。この場合プロセッサ18はさらに、物体14が画定された間隙13より部分的に外側にあることが検出されるときに、アクチュエータ15が作動するのを防ぐように構成される。従って、物体14への溶接不良を防ぐ。
【0027】
非常に薄い材料(電極間で測定される距離に基づく)が間隙13の外側にあることを検出するのは、物体がプラスチックシートであることを確認し、適切な溶接施工が使用されていることを保証するために使用され得る。
【0028】
任意で、電極間に挿入された物体14の位置を検出するように、追加の位置センサ19bが設けられる。この場合プロセッサ18は、追加の位置センサが電極11、12の間に物体が設置されていることを検出するときに、前述のアクチュエータ15を作動させるように構成される。従って、追加の位置センサからの信号は、電極間に物体が挿入されていないときに溶接施工が作動するのを防ぐ。追加の位置センサからの信号はまた、アクチュエータが作動されるべきである指標として使用される場合があり、それにより後述される別のボタン31が要求されない。
【0029】
電力源20は、プロセッサ18からの制御信号34によって作動されるバッテリを含み得る。ボタン31を押すこと、もしくは間隙13に物体が存在することを検出することのいずれかによって、アクチュエータ15が作動されるとき、間隙が減少される。第二センサ19aおよび/または第三センサ19bが実装される場合、信号32および33がプロセッサに転送され、プロセッサはアクチュエータが作動する前にアクチュエータにイネーブル信号(36で示される)を送信する。物体14(電極間に挿入されている)が圧搾されると、プロセッサ18は締付力検出器16からの信号(36で示される)および第一センサ17からの信号(35で示される)を受信する。プロセッサ18はその後、溶接施工を実施するのに必要な所要時間および/またはエネルギを計算する。
【0030】
図4は、2つの電極21、22、アクチュエータ25、電力源20、締付力検出器26、距離センサ23、コンダクタンスセンサ24、およびプロセッサ18を含む、溶接装置30の第二実施形態を示す。
【0031】
本実施形態では、各電極21、22は他方に対して移動可能で、動作はアクチュエータ25によって制御され、2つの電極は互いに接触しない。間隙13は密閉される物体14が挿入され得る電極の間に画定される。プラスチックチューブまたはプラスチックバッグなどの物体14は、非導電性表面を備えており、一般的に非導電性材料で製造される。
【0032】
アクチュエータ25は、物体14が間隙13内に挿入されているときに、第一電極21および第二電極22を互いに向かって移動させて間隙13を閉じるように構成される。電力源20は、溶接施工を実施するのに必要な時間および/またはエネルギを制御する、プロセッサ18からの制御信号34が受信されると、溶接施工を実施するためのエネルギを電極に供給するように構成される。
【0033】
溶接施工を実施するのに必要な時間および/またはエネルギを計算するために、物体に関する情報を収集する必要がある。挿入された物体14が電極21、22の間で圧搾されるときに、締付力検出器26は締付力を定量化するように構成され、距離センサ23は電極間の距離を測定するように構成される。材料の種類に関する情報は、バーコードリーダ(図示なし)を使用して、または
図3に関連して前述したワイヤレス通信インターフェースを通して得られ得る。
【0034】
定量化された締付力および測定された距離は、物体がどのような特性を有するか、つまり、チューブもしくはシート、厚さおよび材料の種類に関する指標であるが、バーコードリーダによってもしくはワイヤレス通信インターフェースを通じて供給される外部情報もまた供給され得る。プロセッサは、前述のように、定量化された締付力と電極間で測定された距離とに基づいて、挿入された物体への溶接施工が実施されるのに必要な時間および/またはエネルギ量を計算する。
【0035】
本実施形態では、距離センサ23は、光を使用して1つの電極の他方の電極に対する動作を観察することで、電極間の距離を測定するように構成される、光学式距離計である。
【0036】
任意で、物体14が画定された間隙13より部分的に外側にあるかどうかを検出するために、追加のセンサ(図示なし)が設けられることがある。この場合プロセッサ18はさらに、物体14が画定された間隙13より部分的に外側にあることが検出されるときに、アクチュエータ25が作動するのを防ぐように構成される。従って、物体14への溶接不良を防ぐ。第二センサは第一センサ23と一体でもよい。
【0037】
任意で、電極間に挿入された物体14の位置を検出するように、追加の位置センサ(図示なし)が設けられる。この場合プロセッサ18は、第三センサが電極21、22の間に物体が設置されていることを検出するときに、前述のアクチュエータ25を作動させるように構成される。従って、追加の位置センサからの信号は、電極間に物体が挿入されていないときに溶接施工が作動するのを防ぎ、アクチュエータを作動させるために、別のボタン31を使用する代わりに、信号が使用される場合がある。
【0038】
本発明にしたがって、電極間の間隙に挿入された物体が圧搾されるとき、電極間のコンダクタンスを測定するように構成される、コンダクタンスセンサ24がまた設けられる。
【0039】
従って、安全機構を有する溶接装置は、a)挿入された物体が電極間で圧搾されるときの締付力を定量化するように構成される検出器16、b)物体が圧搾されるときの電極間の距離を測定する距離センサ17、c)物体が圧搾されるときの電極間のコンダクタンスを測定するように構成されるコンダクタンスセンサ24のうちの少なくとも1つを含む。装置はまたプロセッサを含み、プロセッサは、検出器およびセンサの少なくとも1つからの入力を処理して、適切な物体(たとえば血液バッグチューブ)が電極間に挿入されているか、もしくは異物であるか(たとえば指)を示す出力を供給するように構成される。
【0040】
コンダクタンスセンサ24は、
図6に図示されるように、オーム計を電極に渡って接続することによって実装され得る。コンダクタンス(G、ジーメンスで)は、抵抗(R)の逆数で、つまりG=1/Rである。従って、コンダクタンスは容易に計算される。
【0041】
たとえばプラスチックチューブなどの、溶接装置に使用されるように意図される物体のコンダクタンスは低いので、コンダクタンス測定は、チューブと、たとえばより大きなコンダクタンスの桁を示す人体組織(皮膚)とを識別するのに優れた手段となり得る。
【0042】
同様の理由で、加えられる締付力はチューブと他の物体とで異なる。また、チューブの直径は例えば指の直径より著しく小さいので、距離センサの出力もこの目的のために使用され得る。
【0043】
しかしながら、最適な判断は、検出器/センサからの全ての出力の組み合わせに基づく。
【0044】
図5には、コンダクタンスセンサの好ましい実施形態が図示される。
【0045】
これは、電極11、12(もしくは21、22)に結合されるオーム計50を含む。電極間に間隙があるとき、つまり物体が存在しないとき、コンダクタンスGはもちろん0(R=∞、G=1/R)であって、もし物体14が0でないコンダクタンスを示す場合、信号がプロセッサ18に送信される。コンダクタンス測定のためのいかなる他の構成ももちろん等しく可能で、本発明の発想の範囲内である。
【0046】
電力源20は、プロセッサ18からの制御信号34によって作動されるバッテリを含み得る。ボタン31を押すこと、もしくは間隙13に物体が存在することを検出することのいずれかによって、アクチュエータ25が作動されるとき、間隙が減少される。第二センサおよび/または第三センサが実装される場合、信号がプロセッサ18に転送され、プロセッサはアクチュエータが作動する前にアクチュエータにイネーブル信号(38で示される)を送信する。物体14(電極間に挿入されている)が圧搾されると、プロセッサ18は締付力検出器26からの信号(38で示される)および第一センサ23からの信号(37で示される)を受信する。プロセッサ18はその後、溶接施工を実施するのに必要な所要時間および/またはエネルギを計算する。
【0047】
図3および
図4のプロセッサ18はさらに、定量化された締付力が既定値を超えて、溶接施工を開始する前に物体が十分に圧搾されていることが確実になるとき、溶接施工を実施するのに要求される時間および/またはエネルギ量を計算するように構成され得る。
【0048】
プロセッサ18はまた、検出器/センサによって測定される特性の全てを、各特性に関する閾値と比較するように構成される。前述の閾値は、溶接機が、意図された材料に対して常に作業可能で、もしたとえば指が間隙に挿入されると常に作業不可能となることを保証するように選定される。
【0049】
図6は溶接施工を実施する方法を概して説明する、フローチャートを示す。
【0050】
フローは段階40で始まり、段階41で非導電性表面を備えた物体14が2つの電極11、12;21、22の間の間隙13に設置される。段階42で、アクチュエータ15、25が作動され、電極11;21、22のうちの少なくとも1つを、他方の電極に対して移動させて、物体14を電極間で圧搾する。
【0051】
段階43で、物体14が電極11、12;21、22間で圧搾されるときの締付力が定量化され、段階44で、物体14が電極11、12;21、22の間で圧搾されるときの電極間の距離が測定される。
【0052】
段階45で、挿入された物体14に対して溶接施工を実施するのに要求される時間および/またはエネルギが、定量化された締付力と電極間で測定された距離とに基づいて、プロセッサ18で計算され、段階46で、電力源20から放出されるエネルギが、計算された時間および/またはエネルギに基づいて、プロセッサ18によって制御される。
【0053】
段階47では、エネルギは電力源から、プロセッサ18に制御されて、前述の電極に供給され、溶接施工が実施され、フローは段階48で完了する。
【0054】
段階45はさらに、定量化された締付力が既定値を超えて、溶接施工を開始する前に物体が十分に圧搾されていることが確実になるとき、溶接施工を実施するのに要求される時間およびエネルギ量を計算することを含む。
【0055】
プラスチックチューブおよびシートを溶接するのに一般的に使用される溶接技術は、RFエネルギを使用する高周波溶接、あるいは超音波溶接であるが、他の種類の溶接技術が本発明に従う溶接装置に実装されてもよい。
【0056】
【0057】
このように、物体が間隙に設置される(チューブなどの適切な物体、または指などの適切でない物体のいずれか)。アクチュエータが作動され、物体を電極間で圧搾し始める。その過程で締付力、距離、およびコンダクタンスが測定される。もし対象の特性に関して、測定値が設定閾値より高く、プラスチックチューブでないことを示す場合、作業が打ち切られ、つまり溶接が開始されない。
【0058】
一方で、もし測定値が許容範囲内である(つまり閾値より低い)場合、他の必要条件が満たされるとすぐに溶接が開始される。