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特許7012398歯科矯正治療支援装置及び歯科矯正治療支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】歯科矯正治療支援装置及び歯科矯正治療支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/00 20060101AFI20220121BHJP
   A61C 7/08 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
A61C7/00
A61C7/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021082495
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2021-05-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520149515
【氏名又は名称】株式会社歯科専門集患アウトソーシング
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渥美 貴浩
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0027899(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0106518(US,A1)
【文献】特表2012-513787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/00
A61C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の既存患者ごとに、少なくとも治療開始時の歯型及び歯科矯正治療計画が記憶される記憶部と、
新規患者の治療開始時の歯型を収集する情報収集部と、
前記既存患者の治療開始時の歯型と、前記新規患者の治療開始時の歯型と、の類似度を算出する類似度算出部と、
を備え、
前記記憶部には、複数の前記既存患者ごとに当該既存患者の理想の歯型及び治療終了時の歯型が記憶されており、
前記情報収集部は、前記新規患者の理想の歯型及び治療終了時の歯型を収集し、収集された前記新規患者の治療開始時の歯型、理想の歯型及び治療終了時の歯型を新たな前記既存患者の治療開始時の歯型、理想の歯型及び治療終了時の歯型として前記記憶部に記憶させ、
前記類似度算出部は、前記既存患者の理想の歯型と治療終了時の歯型との類似度を達成度として算出し、前記記憶部に記憶させるとともに、前記既存患者の治療開始時の歯型と前記新規患者の治療開始時の歯型との前記類似度と、当該類似度に対応する前記既存患者の前記達成度と、を表示部に表示させる
ことを特徴とする歯科矯正治療支援装置。
【請求項2】
複数の既存患者ごとに、少なくとも治療開始時の歯型及び歯科矯正治療計画が記憶される記憶部と、
新規患者の治療開始時の歯型を収集する情報収集部と、
前記既存患者の治療開始時の歯型と、前記新規患者の治療開始時の歯型と、の類似度を算出する類似度算出部と、
を備え、
前記記憶部には、複数の前記既存患者ごとに当該既存患者の理想の歯型及び治療終了時の歯型が記憶されており、
前記情報収集部は、前記新規患者の理想の歯型及び治療終了時の歯型を収集し、収集された前記新規患者の治療開始時の歯型、理想の歯型及び治療終了時の歯型を新たな前記既存患者の治療開始時の歯型、理想の歯型及び治療終了時の歯型として前記記憶部に記憶させ、
前記類似度算出部は、前記新規患者の理想の歯型と治療終了時の歯型との類似度を達成度として算出し、当該達成度を新たな前記既存患者の前記達成度として前記記憶部に記憶させるとともに、前記既存患者の治療開始時の歯型と前記新規患者の治療開始時の歯型との前記類似度と、当該類似度に対応する前記既存患者の前記達成度と、を表示部に表示させる
ことを特徴とする歯科矯正治療支援装置。
【請求項3】
複数の既存患者ごとに、少なくとも治療開始時の歯型及び歯科矯正治療計画が記憶される記憶部と、
新規患者の治療開始時の歯型を収集する情報収集部と、
前記既存患者の治療開始時の歯型と、前記新規患者の治療開始時の歯型と、の類似度を算出する類似度算出部と、
を備え、
前記類似度算出部は、前記既存患者及び前記新規患者の性別、年齢、身長、体重及び抜歯の有無の少なくとも一つに基づいて、前記既存患者の治療開始時の歯型と、前記新規患者の治療開始時の歯型と、の前記類似度を補正する
ことを特徴とする歯科矯正治療支援装置。
【請求項4】
前記情報収集部は、前記既存患者を担当した担当者のIDを収集し、前記担当者のIDを前記既存患者と関連付けて前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の歯科矯正治療支援装置。
【請求項5】
前記情報収集部は、前記新規患者を担当する担当者のIDを収集し、前記担当者のIDを前記新規患者と関連付けて前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の歯科矯正治療支援装置。
【請求項6】
前記類似度算出部は、前記担当者のIDごとに、当該担当者のIDと関連付けられた前記既存患者の理想の歯型と治療終了時の歯型との類似度を算出するとともに、算出結果の総合評価を算出する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の歯科矯正治療支援装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から請求項6のいずれか一項の歯科矯正治療支援装置として機能させるための歯科矯正治療支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科矯正治療を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科矯正治療では、歯科医師や歯科技工士といった担当者が患者の歯型を見てマウスピース等の歯科矯正器具を作成することが行われている。歯科矯正器具及び歯科矯正治療計画の作成については、例えば、特許文献1の発明が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-503919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯科矯正治療計画の作成は担当者の技能に依存する部分が大きく、未熟な担当者にとっては患者の治療に適した歯科矯正治療計画を作成することは困難であった。
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、参考となる既存患者の情報を提供することによって新規患者の歯科矯正治療を支援することが可能な歯科矯正治療支援装置及び歯科矯正治療支援プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明の歯科矯正治療支援装置は、複数の既存患者ごとに、少なくとも治療開始時の歯型及び歯科矯正治療計画が記憶される記憶部と、新規患者の治療開始時の歯型を収集する情報収集部と、前記既存患者の治療開始時の歯型と、前記新規患者の治療開始時の歯型との類似度を算出する類似度算出部と、を備えることを特徴とする。
また、前記記憶部には、複数の前記既存患者ごとに当該既存患者の理想の歯型及び治療終了時の歯型が記憶されており、前記情報収集部は、前記新規患者の理想の歯型及び治療終了時の歯型を収集し、収集された前記新規患者の治療開始時の歯型、理想の歯型及び治療終了時の歯型を新たな前記既存患者の治療開始時の歯型、理想の歯型及び治療終了時の歯型として前記記憶部に記憶させ、前記類似度算出部は、前記既存患者の理想の歯型と治療終了時の歯型との類似度を達成度として算出し、前記記憶部に記憶させるとともに、前記既存患者の治療開始時の歯型と前記新規患者の治療開始時の歯型との前記類似度と、当該類似度に対応する前記既存患者の前記達成度と、を表示部に表示させることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、治療開始時の歯型同士の類似度が高ければ、その既存患者の歯科矯正治療計画を、新規患者の歯科矯正治療計画の参考とすることができる。これにより、担当者の技能によらずとも、参考となる既存患者の情報を提供することによって新規患者の歯科矯正治療を支援することができる。
また、本発明によれば、各患者の歯型がどのくらい理想の歯型に近づいたか、即ち、達成度を把握することができるため、当該達成度も加味して歯科矯正治療計画等を新規患者に提供することができる。
また、本発明によれば、既存患者の理想の歯型及び治療終了時の歯型も参考となるため、より的確な歯科矯正治療を新規患者に提供することができる。
【0011】
前記した課題を解決するために、本発明の歯科矯正治療支援装置は、複数の既存患者ごとに、少なくとも治療開始時の歯型及び歯科矯正治療計画が記憶される記憶部と、新規患者の治療開始時の歯型を収集する情報収集部と、前記既存患者の治療開始時の歯型と、前記新規患者の治療開始時の歯型との類似度を算出する類似度算出部と、を備えることを特徴とする。
また、前記記憶部には、複数の前記既存患者ごとに当該既存患者の理想の歯型及び治療終了時の歯型が記憶されており、前記情報収集部は、前記新規患者の理想の歯型及び治療終了時の歯型を収集し、収集された前記新規患者の治療開始時の歯型、理想の歯型及び治療終了時の歯型を新たな前記既存患者の治療開始時の歯型、理想の歯型及び治療終了時の歯型として前記記憶部に記憶させ、前記類似度算出部は、前記新規患者の理想の歯型と治療終了時の歯型との類似度を達成度として算出し、当該達成度を新たな前記既存患者の前記達成度として前記記憶部に記憶させるとともに、前記既存患者の治療開始時の歯型と前記新規患者の治療開始時の歯型との前記類似度と、当該類似度に対応する前記既存患者の前記達成度と、を表示部に表示させることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、治療開始時の歯型同士の類似度が高ければ、その既存患者の歯科矯正治療計画を、新規患者の歯科矯正治療計画の参考とすることができる。これにより、担当者の技能によらずとも、参考となる既存患者の情報を提供することによって新規患者の歯科矯正治療を支援することができる。
また、本発明によれば、新規患者の治療終了時に、各患者の歯型がどのくらい理想の歯型に近づいたか、即ち、達成度を把握することができるため、当該達成度も加味して歯科矯正治療計画等を新規患者に提供することができる。
また、本発明によれば、既存患者の理想の歯型及び治療終了時の歯型も参考となるため、より的確な歯科矯正治療を新規患者に提供することができる。
【0013】
前記した課題を解決するために、本発明の歯科矯正治療支援装置は、複数の既存患者ごとに、少なくとも治療開始時の歯型及び歯科矯正治療計画が記憶される記憶部と、新規患者の治療開始時の歯型を収集する情報収集部と、前記既存患者の治療開始時の歯型と、前記新規患者の治療開始時の歯型との類似度を算出する類似度算出部と、を備えることを特徴とする。
また、前記類似度算出部は、前記既存患者及び前記新規患者の性別、年齢、身長、体重及び抜歯の有無の少なくとも一つに基づいて、前記既存患者の治療開始時の歯型と、前記新規患者の治療開始時の歯型と、の前記類似度を補正することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、治療開始時の歯型同士の類似度が高ければ、その既存患者の歯科矯正治療計画を、新規患者の歯科矯正治療計画の参考とすることができる。これにより、担当者の技能によらずとも、参考となる既存患者の情報を提供することによって新規患者の歯科矯正治療を支援することができる。
また、本発明によれば、歯型同士だけでなく性別等も考慮することにより、その新規患者により近い既存患者の情報に基づいた歯科矯正治療計画等を提供することができる。
【0015】
また、前記情報収集部は、前記既存患者を担当した担当者のIDを収集し、当該担当者のIDを当該既存患者と関連付けて前記記憶部に記憶させることが好ましい。
また、前記情報収集部は、前記新規患者を担当する担当者のIDを収集し、当該担当者のIDを当該新規患者と関連付けて前記記憶部に記憶させることが好ましい。
【0016】
歯科矯正治療は、担当者の技能によって、歯科矯正治療計画が異なる傾向がある。本発明によれば、得られた情報を担当者と関連付けることで、より良質な歯科矯正治療計画等を新規患者に提供することができる。
【0017】
また、前記類似度算出部は、前記担当者のIDごとに、当該担当者のIDと関連付けられた前記既存患者の理想の歯型と治療終了時の歯型との類似度を算出するとともに、算出結果の総合評価を算出することが好ましい。
【0018】
本発明によれば、担当者の技能を総合評価として算出することによって、総合評価が高い既存患者の歯科矯正治療計画を新規患者の担当者に提供したり、総合評価が高い担当者に新規患者を担当させたりすることができる。
また、本発明の歯科矯正治療支援プログラムは、コンピュータを、前記歯科矯正治療支援装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、参考となる既存患者を提示することによって新規患者の歯科矯正治療を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る歯科矯正治療支援装置を有する歯科矯正治療支援システムを模式的に示すブロック図である。
図2】実施例1に係るフロー図である。
図3】実施例2に係るフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。各実施形態及び実施例は、適宜組み合わせて適用することができる。
【0022】
図1に示すように、歯科矯正治療支援システム1は、歯科矯正治療の担当者ごとに設けられる担当者端末装置10と、複数の担当者端末装置10とネットワークNWを介して通信可能に接続される歯科矯正治療支援装置20と、を備える。ここで、担当者は、歯科矯正治療用のマウスピース(アライナ)を作成する歯科医師、歯科技工士等である。本実施形態では、患者に複数のマウスピースを提供して歯の矯正を行う歯科矯正治療を例示するが、例えば、ワイヤー矯正など他の歯科矯正治療にも本発明を適用することができる。
【0023】
<担当者端末装置>
担当者端末装置10は、操作部11と、表示部12と、制御部13と、を備える。操作部11は、キーボード、マウス、タッチパネル等によって構成されており、ユーザによる操作結果を制御部13へ出力する。表示部12は、モニタ等によって構成されており、制御部13による制御に基づいて画像(後記する類似度等の歯科矯正治療情報)を表示する。制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力回路等によって構成されている。制御部13は、汎用的なソフトウェア(ブラウザ)上のコンテンツとしての専用のプログラムによって動作し、操作部11による操作結果(歯科矯正治療情報)を歯科矯正治療支援装置20へ送信したり、歯科矯正治療支援装置20によって算出された類似度、達成度等を受信して表示部12に表示させたりする。
【0024】
<歯科矯正治療支援装置>
歯科矯正治療支援装置20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力回路等によって構成されているサーバである。歯科矯正治療支援装置20は、担当者端末装置10によって送信された歯科矯正治療情報31を収集して類似度等を算出し、算出結果等を対応する担当者端末装置10へ送信する。
【0025】
歯科矯正治療支援装置20は、機能部として、情報収集部21と、記憶部22と、類似度算出部23と、を備える。情報収集部21は、担当者端末装置10によって送信された歯科矯正治療情報31を収集し、収集された歯科矯正治療情報31を記憶部22に記憶させる。類似度算出部23は、歯科矯正治療情報31に含まれる歯型情報の類似度等を算出し、算出結果を歯科矯正治療情報31の一種として記憶部22に記憶させるとともに、算出結果等を対応する担当者端末装置10へ送信する。
【0026】
記憶部22には、既存患者(治療済み患者)の歯科矯正治療情報31が記憶されている。歯科矯正治療情報31は、既存患者ごとの情報として、患者の本人ID(氏名、番号等)、性別、生年月日、身長及び体重、担当者(歯科医師、歯科技工士等)のID(氏名、番号等)、を含む。また、歯科矯正治療情報31は、既存患者ごとの情報として、治療費用、治療期間、抜歯の有無及び箇所、治療計画(歯科矯正治療計画)等を含む。歯科矯正治療計画は、例えば、本実施形態のようにマウスピースを用いた歯科矯正において、どのような歯型(後記する理想歯型情報)を治療の最終目的とし、どのくらいの期間で、どの形状のマウスピース(アライナ、歯科矯正器具)を使用する等、歯科矯正の根幹となる計画である。なお、治療費用、治療期間、抜歯の有無及び箇所は、歯科矯正治療計画に含まれる情報でもある。
【0027】
また、歯科矯正治療情報31は、既存患者ごとの歯型情報(三次元歯型モデル情報)として、歯科矯正治療開始時の歯型情報(治療前歯型情報)と、歯科矯正治療開始時における理想の歯型情報(理想歯型情報)と、歯科矯正治療終了時の歯型情報(治療後歯型情報)と、を含む。
【0028】
治療前歯型情報は、患者の治療開始時における歯型を三次元スキャンすることによって得られる、立体的な歯型(歯列)を表す情報である。理想歯型情報は、患者の治療開始時において担当者が歯科矯正治療の目標として決定する、立体的な歯型(歯列)を表す情報である。治療後歯型情報は、患者の治療終了時における歯型を三次元スキャンすることによって得られる、立体的な歯型(歯列)を表す情報である。治療前歯型情報及び理想歯型情報は、歯科矯正治療計画に含まれる情報でもある。
【0029】
また、歯科矯正治療情報31は、新規患者又は既存患者ごとの達成度を含む。達成度は、各患者の治療終了時において、類似度算出部23が、理想歯型情報と治療後歯型情報との類似度により算出される。つまり、当該類似度が高い場合、歯科矯正治療として「達成度が高い」ということになる。
【0030】
また、歯科矯正治療情報31は、当該歯科矯正治療支援システム1を利用した場合に得られる類似度(類似度に関する情報)を含む。後記する類似度算出工程で得られた類似度が高かった既存患者のID(歯科矯正治療を提供する際に採用した一人又は複数人の既存患者のIDや、採用しなかったが類似度が高かった既存患者のIDなど)などを含めてもよい。
【0031】
類似度算出部23は、記憶部22に記憶された全ての既存患者の治療前歯型と、担当者端末10から送信された新規患者の治療前歯型の類似度を算出する。類似度算出部23は、算出された類似度を新規患者の歯科矯正治療情報31の一種として、新規患者のIDと関連付けて記憶部22に記憶させる。また、類似度算出部23は、算出結果を「類似度」として担当者端末装置10の表示部12に表示させる。類似度は、例えば、パーセンテージで算出することができる。類似度算出部23は、類似度の算出手法として、例えば、類似図面検索AIソフト(人工知能を活用した3D類似形状検索システム)等を用いることができる。また、類似度算出部23は、算出された類似度とともに、当該類似度に対応する既存患者の歯科矯正治療情報31(歯科矯正治療計画、理想歯型情報等)を提供する(記憶部21から読み出して担当者端末装置10の表示部12に表示させる)ことができる。
【0032】
なお、類似度算出部23は、例えば、既存患者の情報のうち、指定した担当者が治療した歯科矯正治療情報31のみを抽出して類似度を算出してもよい。また、類似度算出部23は、例えば、既存患者の情報のうち、抜歯有りの歯科矯正治療情報31のみを抽出して類似度を算出してもよい。このように、条件を絞って類似度を算出することで、新規患者に対して、より的確に参考となる既存患者の情報を提示することができる。
【0033】
また、類似度算出部23は、既存患者の理想歯型情報及び治療後歯型情報を読み出し、読み出された理想歯型情報と治療後歯型情報とに基づいて類似度を算出する。つまり、既存患者の歯科矯正治療情報31に基づいて、治療済みの歯科矯正治療に対する「達成度」を算出する。類似度算出部23は、算出された類似度(達成度)を既存患者の歯科矯正治療情報31の一種として、既存患者のIDと関連付けて記憶部22に記憶させる。また、類似度算出部23は、算出結果を担当者端末装置10の表示部12に表示させる。類似度(達成度)は、例えば、パーセンテージで算出することができる。つまり、「達成度」は、既に終了した既存患者の治療が、歯科矯正治療としてどの程度の成果があったのかを定量的に把握することができる。
【0034】
また、歯科矯正治療支援装置20は、歯科矯正治療情報31に達成度と担当者とが関連付けられているため、担当者ごとの達成度の平均値を算出することもできる。これにより、各担当者の技量を定量化し、可視化することができるため、歯科治療計画等の選定の際や、担当者の選定の際に参考にすることができる。
【0035】
また、類似度算出部23は、新規患者の矯正治療が終了した後、当該新規患者の理想歯型情報と治療後歯型情報とから類似度を算出する。つまり、その新規患者の歯科矯正治療の「達成度」を算出する。類似度算出部23は、算出された類似度(達成度)を新規患者の歯科矯正治療情報31の一種として、新規患者のIDと関連付けて記憶部22に記憶させる。また、類似度算出部23は、算出結果を担当者端末装置の表示部12に表示させる。類似度(達成度)は、例えば、パーセンテージで算出することができる。つまり、「達成度」は、終了した新規患者の治療が、歯科矯正治療としてどの程度の成果があったのかを定量的に把握することができる。
【0036】
また、類似度算出部23は、類似度を算出する際に、歯型同士の類似度に加え、当該患者同士の性別、年齢、身長、体重、抜歯の有無の少なくとも一つに基づいて類似度を補正する。歯型情報だけでなく、性別等の要素も加味して類似度を算出することで、その新規患者により近い既存患者の情報に基づいて、歯科矯正治療計画等をより的確に提供する(表示によって提示する)ことができる。例えば、歯型情報のみの評価であると、同じ類似度の患者が複数名提示される場合がある。このような場合は、補正された類似度に基づくことで差別化を図ることができ、より的確な歯科矯正治療計画等を提供することができる。
【0037】
また、類似度算出部23は、記憶部22に記憶された類似度を担当者ごとに読み出し、担当者が担当した複数の既存患者の類似度の総合評価を算出する。類似度算出部23は、算出された総合評価を既存患者の歯科矯正治療情報31の一種として、患者のID及び/又は担当者のIDと関連付けて記憶部22に記憶させる。類似度算出部23は、総合評価の算出手法として、複数の既存患者の類似度の平均値(算術平均)を算出することができる。かかる類似度の総合評価は、既存患者を担当した担当者の治療技術の評価として利用可能である。
【0038】
担当者は、類似度が高い複数の既存患者の歯科矯正治療情報31から、当該既存患者の担当者の総合評価を考慮して一つの既存患者の歯科矯正治療情報31を選択し、選択された歯科矯正治療情報31に含まれる理想歯型情報及び治療法に基づいて、新規患者の理想歯型情報及び治療法を決定することができる。例えば、担当者は、担当者の総合評価が高い既存患者の歯科矯正治療情報31を選択することによって、より良い治療法の歯科矯正治療情報31を参考にすることができる。
【0039】
また、類似度算出部23は、複数の担当者ごとに、類似度が最も高い既存患者の歯科矯正治療情報31を担当者端末装置10へ送信する。担当者端末装置10の制御部13は、送信された既存患者の歯科矯正治療情報31を受信し、受信された既存患者の歯科矯正治療情報31を表示部12に表示させる。
【0040】
担当者は、歯科矯正治療情報31に含まれる既存患者の理想歯型情報及び治療後歯型情報の類似度に基づいて、新規患者を自身で担当するか他の担当者に依頼するかを決定することができる。例えば、担当者は、自身を含む複数の担当者の中で、歯科矯正治療情報31に含まれる既存患者の理想歯型情報及び治療後歯型情報の類似度が最も高い担当者に、新規患者を担当させる旨を決定することができる。
【0041】
[実施例1]
次に、本発明の実施例1について説明する。図2に示すように、実施例1に係る歯科矯正治療支援方法では、既存患者の歯型収集工程S1と、新規患者の歯型収集工程S2と、類似度算出工程S3と、治療計画提供工程S4と、を行う。なお、実施例1では、歯科矯正治療情報31の中に、既存患者の「達成度」は含まれていないものとする。
【0042】
既存患者の歯型収集工程S1は、既存患者の治療前歯型情報を収集する工程である。患者に複数のマウスピースを提供して歯の矯正を行う歯科矯正治療においては、通常、治療前に3D光学スキャナーを使って患者の口を撮影し、歯の形状や歯列の状態をデータとして取得しているため、その情報を治療前歯型情報として利用することができる。本人ID及び治療前歯型情報等を含んだ既存患者の歯科矯正治療情報31は、歯科矯正治療支援装置20の記憶部22に記憶される。既存患者の歯型収集工程S1においては、当該既存患者の歯科矯正治療計画を含む歯科矯正治療情報31も併せて収集され、記憶部22に記憶される。すなわち、歯型収集工程S1は、既存患者の治療前歯型情報及び歯科矯正治療計画を含む歯科矯正治療情報31を収集する歯科矯正治療情報収集工程であるともいえる。かかる歯科矯正治療情報収集工程は、既存患者の治療時期に適宜実行される。
【0043】
新規患者の歯型収集工程S2は、新規患者の治療前歯型情報を収集する工程である。新規患者の歯型収集工程S2においても、既存患者の歯型収集工程S1と同じように、3D光学スキャナーを使って新規患者の口を撮影し、歯の形状や歯列の状態をデータとして取得する。担当者は、本人ID及び治療前歯型情報等を含んだ新規患者の歯科矯正治療情報31を担当者端末装置10から歯科矯正治療支援装置20に送信する。情報収集部21は、得られた新規患者の歯科矯正治療情報31(治療前歯型情報)を記憶部22に格納する。
【0044】
類似度算出工程S3は、既存患者の治療前歯型情報と、新規患者の治療前歯型情報とに基づいて類似度を算出する工程である。類似度算出部23は、例えば、算出された全ての類似度及び当該類似度の既存患者のIDを、新規患者の歯科矯正治療情報31として記憶部22に記憶させてもよく、類似度が高い上位3位までの既存患者のID及び類似度等を、当該新規患者の歯科矯正治療情報31として記憶部22に記憶させてもよい。また、類似度算出部23(歯科矯正治療支援装置20)は、例えば、類似度が高い上位3位までの既存患者の歯科矯正治療情報31を担当者端末10に表示させる。類似度算出部23は、最も類似度が高かった情報のみを担当者端末10に表示させてもよいし、上位10位までを表示させてもよい。
【0045】
治療計画提供工程S4は、担当者が、新規の患者に対して、類似度算出工程S3によって抽出されるとともに、担当者端末装置10の表示部12に単数又は複数の既存患者の歯科矯正治療情報31を表示させることによって、歯科矯正治療計画を含む歯科矯正治療情報31を提供する工程である。例えば、担当者は、類似度が最も高い既存患者の歯科矯正治療情報31を選択し、選択された歯科矯正治療情報31に含まれる理想歯型情報及び歯科矯正治療計画に基づいて、新規患者の理想歯型情報及び歯科矯正治療計画等を決定することができる。
【0046】
実施例1のように、治療開始時の歯型同士の類似度が高ければ、その既存患者の歯科矯正治療計画を、新規患者の歯科矯正治療計画の参考とすることができる。換言すると、治療開始時の歯型同士の類似度が高い場合、矯正時の歯の動き等も同じようになる傾向があるため、当該傾向を利用して質の高い歯科矯正治療計画等を提供することができる。これにより、担当者の技能によらずとも、参考となる既存患者の情報を提供することによって新規患者の歯科矯正治療を支援することができる。
【0047】
仮に、算出された類似度がいずれも低い値であった場合、治療が困難になる可能性が高いため、例えば、歯科矯正専門医への治療を新規患者に勧めることもできる。
【0048】
一方、同じ類似度の既存患者が複数いた場合、前記した類似度補正を取り入れることで、高い類似度の中からさらに的確な情報(新規患者に合致した情報)を提供することができる。
【0049】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2では、「達成度」を用いる点で、実施例1と相違する。図3に示すように、実施例2に係る歯科矯正治療支援方法では、既存患者の歯型収集工程S11と、既存患者の達成度算出工程S12と、新規患者の歯型収集工程S13と、類似度算出工程S14と、治療計画提供工程S15と、新規患者の達成度算出工程S16と、を行う。
【0050】
既存患者の歯型収集工程S11は、実施例1における既存患者の歯型収集工程S1と同じである。既存患者の達成度算出工程S12は、既存患者の歯科矯正治療情報31に基づいて、達成度を算出する工程である。類似度算出部23は、既存患者ごとに、歯科矯正治療情報31の中の理想歯型情報と、治療後歯型情報とを読みだして、両者の類似度を算出する。当該類似度が、歯科矯正治療としてどの程度の成果があったのかを定量的に把握する「達成度」となる。類似度算出部23は、算出された達成度を歯科矯正治療情報31として、当該既存患者と関連付けて記憶部22に記憶させる。本実施例2が、既存患者が新規患者である時期に実行されている場合には、達成度の算出は、後記する新規患者の達成度算出工程S16によって既に行われていることになる。
【0051】
新規患者の歯型収集工程S13及び類似度算出工程S14は、実施例1における新規患者の歯型収集工程S2及び類似度算出工程S3と同じである。治療計画提供工程S15は、担当者が、新規の患者に対して、類似度算出工程S14で抽出された既存患者の歯科矯正治療情報31や、既存患者の達成度を参考にして、治療計画等を提供する工程である。
【0052】
新規患者の達成度算出工程S16は、新規患者の治療終了後に、当該新規患者の理想歯型情報と、治療後歯型情報とを読みだして、両者の類似度を算出する。新規患者の治療終了後、担当者は3D光学スキャナーを使って治療後歯型情報を取得する。情報収集部21は、当該新規患者の治療後歯型情報を記憶部22記憶させる。類似度算出部23は、当該新規患者の理想歯型情報と、治療後歯型情報とを読み出して、両者の類似度を算出するとともに、担当者端末10に算出結果を表示させる。
【0053】
以上説明した実施例2によっても、前記した実施例1と略同等の効果を得ることができる。ここで、実施例2によれば、既存患者の歯科矯正治療情報31の中に「達成度」が含まれているため、抽出された複数の情報の中から、「達成度」の高い既存患者の歯科矯正治療計画等を参考にすることができる。これにより、例えば、同じ類似度の既存患者が複数いて、これらが異なる歯科矯正治療計画である場合において達成度の高い既存患者の情報を選択することが可能となり、新規患者に対して質の高い情報を容易に提供することができる。
【0054】
また、新規患者の達成度算出工程S16では、新規患者の治療が終了した後、当該新規患者の達成度を算出することで、達成度が含まれたデータを記憶部22に記憶させることができる。これにより、質の高いデータを記憶部22に蓄積することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、担当者端末装置10の制御部13が歯科矯正治療支援装置20として機能してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 歯科矯正治療支援システム
10 担当者端末装置
20 歯科矯正治療支援装置
21 情報収集部
22 記憶部
23 類似度算出部
【要約】
【課題】参考となる既存患者の情報を提供することによって新規患者の歯科矯正治療を支援することが可能な歯科矯正治療支援装置を提供する。
【解決手段】歯科矯正治療支援装置20は、複数の既存患者ごとに治療開始時の歯型及び歯科矯正治療計画が記憶される記憶部22と、新規患者の治療開始時の歯型を収集する情報収集部21と、前記既存患者の治療開始時の歯型と、前記新規患者の治療開始時の歯型との類似度を算出する類似度算出部23と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3