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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】流動接触分解触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/08 20060101AFI20220121BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20220121BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220121BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
B01J29/08 M
B01J37/00 F
B01J37/04 102
B01J37/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017068309
(22)【出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2018167213
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】特許業務法人弥生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162008
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 宣明
(72)【発明者】
【氏名】水野 隆喜
(72)【発明者】
【氏名】三津井 知宏
(72)【発明者】
【氏名】江藤 真由美
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-000657(JP,A)
【文献】特表2008-535652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0005565(US,A1)
【文献】特表2010-519031(JP,A)
【文献】特開2009-022842(JP,A)
【文献】特表2015-526279(JP,A)
【文献】特開2009-207948(JP,A)
【文献】特開昭55-162417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C10G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトの粉体と、塩基性塩化アルミニウムからなるアルミナバインダーの原料である溶液と、金属捕捉用の活性成分の原料である、塩化ランタン、塩化セリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酢酸ランタン、酢酸セリウム、酢酸マグネシウム、硫ランタン、硫セリウム、硫マグネシウム、硫カルシウム、硝酸ランタン、硝酸セリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群から選ばれる金属塩の溶液と、が混合されている混合スラリーを得る工程と、
前記混合スラリーを噴霧乾燥することにより流動接触分解触媒の前駆体を得る工程と、
前記前駆体を焼成し、前記金属塩の金属を酸化物とする工程と、を含み、
前記混合スラリーを得る工程は、前記活性成分が触媒の表面に析出する添加量で添加され、
前記混合スラリーを得る工程における前記金属塩の添加量は、混合スラリー中の固形分(分散媒を除いた量)100質量%に対して、金属塩を構成する金属の酸化物換算で3.0質量%~8.0質量%であり、
触媒中には有効成分として亜鉛が含まれない流動接触分解触媒を製造することを特徴とする流動接触分解触媒の製造方法。
【請求項2】
前記混合スラリーは、粘土鉱物を含むことを特徴とする請求項1に記載の流動接触分解触媒の製造方法。
【請求項3】
前記混合スラリーは、活性マトリックス成分を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の流動接触分解触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触分解反応過程において、流動接触分解触媒中のゼオライトの被毒元素である金属を捕捉固定化できる流動接触分解触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料油(炭化水素油)、例えば常圧蒸留残渣油の流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking, FCC)プロセスに用いられる流動接触分解触媒は、固体酸であるゼオライトを含んでいる。さらに流動接触分解触媒は、流動状態で用いる際の耐摩耗性を持たせるためなどの目的でマトリックス成分、例えば炭化水素油の分解活性を持つシリカアルミナなどが添加される。
【0003】
原料油中には不純物(金属汚染物)として金属元素の一つであるバナジウム、あるいは更にニッケルが含まれている場合がある。バナジウムは流動接触分解触媒を再生する再生塔内の雰囲気においてはバナジン酸を形成し、流動接触分解触媒中のゼオライトの結晶破壊や活性低下を引き起こすことが知られている。またニッケルは脱水素反応によりコーク及び水素の生成率を増加させ、またガソリン収率の選択性を悪化させる。このため、バナジウムの捕捉能あるいは更にニッケルの捕捉能を有する構成物を触媒中に組み込む手法や、前記構成物を添加剤として母体触媒と混合する手法が採用されている。
【0004】
特許文献1には、流動接触分解触媒に添加する添加剤として、希土類元素、例えばランタン、ネオジウムをシュウ酸塩として沈殿させた添加剤が記載されている。この添加剤は、希土類元素の沈殿時に粗大粒子を触媒中に形成して偏析しやすいため、シュウ酸塩の表面の希土類元素がバナジウム及びニッケルの捕捉として機能している場合、シュウ酸塩として沈殿させた希土類元素の利用率が低いという課題がある。
【0005】
また特許文献2には、カルシウム、アルミニウム、ランタンなどの固体化合物の物理的混合物を製造し、次いでこの物理的混合物を熟成し、その後に焼成して酸化物組成物を得ること、この酸化物組成物をFCCユニットに添加するかまたはFCC触媒の中に組み込むことが記載されている。この酸化物組成物は各元素を固体の状態で混合しており、また流動接触分解触媒に対して、活性を持たない別粒子として添加されるため、活性を持つ触媒粒子の割合が減ることになり、酸化物組成物及び触媒を含む全体で見たとき、希釈効果による触媒の性能低下を招く課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-136369号公報
【文献】特表平2009-505925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、炭化水素油の接触分解反応過程にて用いられる流動接触分解触媒を製造するにあたり、炭化水素油中の不純物である金属の捕捉性能が高く、流動接触分解触媒の劣化を抑えることができる流動接触分解触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の流動接触分解触媒の製造方法は、ゼオライトの粉体と、塩基性塩化アルミニウムからなるアルミナバインダーの原料である溶液と、金属捕捉用の活性成分の原料である、塩化ランタン、塩化セリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酢酸ランタン、酢酸セリウム、酢酸マグネシウム、硫ランタン、硫セリウム、硫マグネシウム、硫カルシウム、硝酸ランタン、硝酸セリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群から選ばれる金属塩の溶液と、が混合されている混合スラリーを得る工程と、
前記混合スラリーを噴霧乾燥することにより流動接触分解触媒の前駆体を得る工程と、
前記前駆体を焼成し、前記金属塩の金属を酸化物とする工程と、を含み、
前記混合スラリーを得る工程は、前記活性成分が触媒の表面に析出する添加量で添加され、
前記混合スラリーを得る工程における前記金属塩の添加量は、混合スラリー中の固形分(分散媒を除いた量)100質量%に対して、金属塩を構成する金属の酸化物換算で3.0質量%~8.0質量%であり、
触媒中には有効成分として亜鉛が含まれない流動接触分解触媒を製造することを特徴とする。

【発明の効果】
【0009】
本発明は、流動接触分解反応を促進させるゼオライトの粉体と、アルミナバインダーの原料である溶液と、金属捕捉用の活性成分の原料である金属塩の溶液と、が混合されているスラリーを調整した後、噴霧乾燥、焼成して金属捕捉用の活性成分を酸化物に変えている。従って、後述の実施例からも明らかなように、炭化水素油中の不純物である金属によるゼオライトの被毒が抑えられ、言い換えると不純物の金属に対する耐金属性が高くなり、また触媒摩耗率が低い流動接触分解触媒を得ることができる。
【0010】
この理由については、噴霧乾燥前のスラリー中に金属捕捉用の活性成分を別の酸化物粒子として添加するのではなく、金属塩溶液として添加しているため、活性成分が混合スラリー中において均一に混合され、その結果、触媒粒子内における金属捕捉成分(金属塩の状態)が均一にかつ緻密に堆積すると推測できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
[流動接触分解触媒]
先ず、本発明の流動接触分解触媒(以下単に「触媒」という場合がある)の製造方法により製造された流動接触分解触媒について述べておくと、触媒は、一例としてゼオライト(結晶性アルミナシリケート)が例えば10~50質量%、アルミナバインダーが例えば5~50質量%、粘土鉱物が例えば10~40質量%、金属捕捉用の活性成分である金属の酸化物が例えば2~8質量%含まれる。
触媒中には、粘土鉱物が含まれていなくてもよい。また触媒は、活性アルミナなどの活性マトリックス成分が含まれていてもよい。
【0012】
ゼオライトの含有量については、含有量が少ないと高い活性が得られず、また含有量が多すぎると、活性が高すぎて過分解となり、選択性が低下する場合があり、更にゼオライト以外のマトリックス成分の含有量が少なくなるために嵩密度が低くなりすぎたり、耐摩耗性が不十分となる懸念がある。この観点から好ましい含有量の一例を示している。
金属捕捉用の活性成分である金属の酸化物の含有量については、高い金属の捕捉能を得ること、含有量が多すぎるとゼオライトに対して被毒作用が働く懸念があること、の観点から好ましい含有量の一例を示している。
該触媒を使用した接触分解処理は、固定床反応装置に触媒を充填して水素雰囲気下、高温高圧条件で行なわれる。
【0013】
[流動接触分解触媒の製造方法]
<第1工程>
本発明の実施形態に係る触媒の製造方法では、先ずゼオライトの粉体と、アルミナバインダーの原料である溶液と、粘土鉱物と、活性マトリックス成分と、金属捕捉用の活性成分の原料である金属塩の溶液と、が混合された混合スラリー(調合スラリー)を得る第1工程を行う。
この工程のより具体的な一例においては、アルミナバインダーの原料である溶液に、粘土鉱物と、活性マトリックス成分と、ゼオライトの粉体とを添加し、撹拌した後、金属捕捉用の活性成分の原料である金属塩の溶液を添加し、撹拌することにより混合スラリーを得る。この工程は例えば室温で行われる 。
【0014】
混合スラリーを得る操作については、ゼオライトの粉体を添加するという操作に限らず、ゼオライトの粉体を懸濁したスラリー、あるいはゼオライトを粉砕して形成されたスラリーを使用し、例えばアルミナバインダーの原料である溶液に、粘土鉱物と、活性マトリックス成分と、スラリーとを混合する操作が含まれていてもよい。
【0015】
ゼオライトは、流動接触分解プロセスにて炭化水素油に対する接触分解活性を持つゼオライトであれば、特段の限定はない。例えば、フォージャサイトゼオライト、ZSMゼオライト、βゼオライト、モルデナイトゼオライト、天然ゼオライトから選択された1種、または2種以上のゼオライトを含むことができる。好適にはゼオライトは、合成フォージャサイトゼオライトであるUSY型(Ultra-Stable Y-Type)を含むことが望ましい。
アルミナバインダーの原料としては、例えば塩基性塩化アルミニウム([Al(OH)Cl6-n(但し、0<n<6、m≦10))が用いられる。
粘土鉱物としては、カオリン、ハロイサイトなどが使用され、好適にはカオリンが選択される。
活性マトリックス成分としては、活性アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、アルミナ-マグネシア、シリカ-マグネシア-アルミナなどの固体酸を有する物質が挙げられる。
【0016】
金属捕捉用の活性成分としては、ランタン、セリウム、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。当該活性成分の原料である金属塩としては、塩化物、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩などを挙げることができ、塩化物であることが好ましい。従って好ましい金属塩としては、塩化ランタン、塩化セリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどである。塩化物であることが好ましい理由は、バインダーとして使用する塩基性アルミニウム水溶液に含まれるアニオン種が塩素であるため、焼成もしくは洗浄後の残存塩の管理を実施しやすいことなどがあげられる。
【0017】
金属塩、例えば塩化ランタン溶液の添加量(容量)は、余剰のランタンなどの活性成分を触媒の表面に確実に析出させる観点からは、ゼオライトに対するイオン交換容量以上の容量であることが好ましい。しかし、ゼオライトに対するイオン交換容量は、液相中では、ゼオライト中の骨格アルミニウム量により決まる理論容量よりも少ないことが知られている。これは、液相中においてゼオライトのイオン交換サイトが全てイオン交換さることがないということである。従って調合スラリー中においては、ゼオライトに対するイオン交換容量の上限値は、理論容量よりも少ない。このため、調合スラリー中では、イオン交換容量という表現が一義的に決まる(理論容量として決まる)値ではないため、塩化ランタン溶液の添加量(容量)は、調合スラリー中における、ゼオライトに対するイオン交換容量の上限値以上の容量であることが好ましいということになる。具体的な数値を挙げれば、塩化ランタン溶液の添加量は、ゼオライトに対するイオン交換容量の1/2以上であれば好ましく、ゼオライトに対するイオン交換容量の2/3以上であれば、より好ましい。
また金属塩の溶液の添加量は、混合スラリー100質量%に対して、金属塩を構成する金属(活性成分)の酸化物換算で0.5質量%~8.0質量%であることが既述の観点から好ましい。
【0018】
<第2工程>
次いで、第1工程で得られた混合スラリーを噴霧乾燥することにより流動接触分解触媒の前駆体を得る。具体的には混合スラリーを噴霧乾燥機のスラリー貯槽に充填し、150~450℃の範囲の例えば230℃に調整された気流(例えば空気)が流れる乾燥チャンバー内にスラリーを噴霧することにより、噴霧乾燥粒子である流動接触分解触媒の前駆体が得られる。スラリーの噴霧乾燥によって前記気流の温度は低下するが、乾燥チャンバーの出口の温度は、ヒーターなどを用いて110~350℃の範囲の例えば130℃に維持される。
【0019】
<第3工程>
しかる後、電気炉にて例えば300~700℃の範囲の例えば600℃に調整された空気雰囲気下で前記噴霧乾燥粒子の焼成を行う。焼成温度が300℃より過度に低いと、残存水分による操作性が悪くなり、また金属担持状態が均一になりにくいおそれがあり、700℃を過度に超えると、金属が凝集を起こし、分散維持効果が期待できなくなるおそれがあるので好ましくない。
【0020】
噴霧乾燥粒子の焼成を行って得られた焼成粒子に対して洗浄工程、イオン交換工程を行ってもよい。
洗浄工程は、例えば次のようにして行われる。純水に焼成粒子を添加して撹拌し、得られたスラリーを吸引濾過した後、濾過残渣を純水で洗浄し、洗浄粒子ケーキを得る。この洗浄粒子ケーキと純水とを混合し、再懸濁した後、硫酸アンモニウムを添加する。得られたスラリーを撹拌した後、吸引濾過した後、濾過残渣を純水で洗浄し、洗浄粒子ケーキを得る。
【0021】
イオン交換工程は例えば次のようにして行われる。純水と前記洗浄粒子ケーキとを混合し、再懸濁した後、ゼオライトのイオン交換用の多価のカチオン源である例えば塩化ランタン水溶液を添加し、撹拌する。得られたスラリーを吸引濾過した後、濾過残渣粒子を純水で洗浄する。この操作を例えば2回行った後、濾過残渣粒子を加熱して乾燥する。
なお、一連の工程で使用される純水は例えば加温されて使用される。
【実施例
【0022】
[実施例1]
<調合工程>
23.5質量%の塩基性塩化アルミニウム水溶液531.9gと純水1117.3gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン341.6g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末466.8gを順次添加し、よく撹拌した後、塩化ランタン溶液(La濃度:29.1質量%)を171.8g添加した。その後、このスラリーをよく撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度が35質量%、pHが3.8だった。
<噴霧乾燥および焼成工程>
調合スラリーを液滴として、入口温度が230℃、出口温度が130℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が70μmの球状粒子を得た。この乾燥粉末は電気炉にて空気雰囲気下、600℃で1時間焼成し、流動接触分解触媒1を得た。
【0023】
[実施例2]
23.5質量%の塩基性アルミニウム水溶液531.9gと純水1099.8gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン403.7g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末408.5gを順次添加し、よく撹拌した後、塩化ランタン溶液(La濃度:29.1質量%)を110.0g添加した。次いでこのスラリーに塩化マグネシウム溶液(MgO濃度:23.8質量%)を75.6g添加した後、よく撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度35質量%、pH3.9だった。その他の工程は実施例1と同様に行い、流動接触分解触媒2を得た。
【0024】
[実施例3]
23.5質量%の塩基性アルミニウム水溶液531.9gと純水1194.9gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン490.7g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末350.1gを順次添加し、よく撹拌した後、塩化ランタン溶液(La濃度:29.1質量%)を61.9g添加した。次いでこのスラリーに塩化カルシウム溶液(CaO濃度:38.0質量%)を31.6g添加した後、よく撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度35質量%、pH3.8だった。その他の工程は実施例1と同様に行い、流動接触分解触媒3を得た。
【0025】
参考例4]
23.5質量%の塩基性アルミニウム水溶液638.3gと純水1135.7gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン488.2g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末350.1gを順次添加し、よく撹拌した後、塩化ランタン溶液(La濃度:29.1質量%)を17.2g添加した。次いでこのスラリーに塩化マグネシウム溶液(MgO濃度:23.8質量%)を8.4g添加した後、よく撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度35質量%、pH4.2だった。その他の工程は実施例1と同様に行い、流動接触分解触媒4を得た。
【0026】
[参考例5]
23.5重量%の塩基性塩化アルミニウム水溶液531.9gと純水1132.5gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン378.9g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末350.1gを順次添加し、よく撹拌した後、塩化ランタン溶液(La濃度:29.1質量%)を81.6g添加した。ついでこのスラリーに塩化マグネシウム溶液(MgO濃度:23.8質量%)を168.1g添加した後、よく撹拌し調合スラリー(混合スラリー)を得た。よく撹拌し調合スラリーを得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度が35重量%。pHが4.0だった。
その他の工程は、実施例1と同様に行い流動接触分解触媒5を得た。
【0027】
[比較例1]
23.5重量%の塩基性塩化アルミニウム水溶液531.9gと純水1238.1gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン341.6g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末466.8gを順次添加し、よく撹拌し、さらに、酸化ランタン粒子(一次粒子径約10μm)を51g添加した後、よく撹拌し調合スラリーを得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度が35重量%。pHが4.8だった。
その他の工程は、実施例1と同様に行い流動接触分解触媒R1を得た。
【0028】
[比較例2]
23.5重量%の塩基性塩化アルミニウム水溶液531.9gと純水1143.9gを混合した。次いで、この撹拌混合溶液に、カオリン465.8g、活性アルミナ227.7g、超安定化Y型ゼオライト粉末408.5gを順次添加し、よく撹拌し調合スラリーを得た。得られた調合スラリーは、ホモジナイザーを用いて分散処理を行い、固形分濃度が35重量%。pHが4.5だった。
その他の工程は、実施例1と同様に行い流動接触分解触媒R2を得た。
[金属捕捉剤、触媒の組成及び物性値]
上述の実施例及び比較例の流動接触分解触媒の組成(触媒全体に対する各成分の質量%)を表1に示す。
【0029】
【表1】


[触媒の性能評価試験]
各実施例、比較例の触媒について、ACE-MAT(Advanced Cracking Evaluation-Micro Activity Test)を用い、同一原油、同一反応条件下で触媒の性能評価試験を行った。ただし、これらの性能評価試験を行う前に、各触媒の表面に、予めニッケルおよびバナジウムをそれぞれ1000質量ppm(ニッケルの質量を触媒の質量で除算している)および2000質量ppm(バナジウムの質量を触媒の質量で除算している)沈着させ、次いでスチーミングして擬平衡化処理を行った。この触媒を擬平衡化触媒(Ni/V=1000ppm/2000ppm)と表示する。
【0030】
更にまた実施例及び比較例について、ニッケルおよびバナジウムを沈着させずに同様のスチーム処理するメタルフリーの条件で擬平衡化処理を行った触媒についても用意した。この触媒を擬平衡化触媒(メタルフリー)と表示する。
これら擬平衡化処理は、具体的には、各触媒を予め600℃で2時間焼成した後、所定量のナフテン酸ニッケル、およびナフテン酸バナジウムのトルエン溶液を吸収させ、次いで110℃で乾燥後、600℃で1.5時間焼成し、次いで780℃で13時間スチーム処理を行うことにより実施される。
【0031】
そして擬平衡化処理を行わない触媒(新品)、上述の擬平衡化触媒(メタルフリー)及び擬平衡化触媒(Ni/V=1000ppm/2000ppm)の各々について、触媒の全比表面積、マトリックスの比表面積及びゼオライトの比表面積を測定した。比表面積は、BET法で測定した比表面積である。
比表面積の測定結果は表2に示すとおりである。
【0032】
【表2】

触媒の性能評価試験の結果は表3A、表3B(C/O=3.75の場合)に示すとおりである。
【0033】
【表3A】
【0034】
【表3B】
性能評価試験における運転条件は以下の通りである。
原料油:原油の脱硫常圧残渣油(DSAR)+脱硫減圧軽油(DSVGO)(50+50)
触媒/通油量の質量比(C/O):3.75
反応温度:520℃
1)転化率=100-(LCO+HCO+CLO)
2)触媒/油の質量比を3.75にて測定し、同一転化率(=73質量%)での各収率を内挿して求めた。
3)ガソリンの沸点範囲:30~216℃
4)LCOの沸点範囲:216~343℃(LCO:Light Cycle Oil)
5)HCOおよびCLOの沸点範囲:343℃+(HCO:Heavy Cycle Oil、CLO:Clarified Oil)
【0035】
[評価結果]
表2から、実施例及び比較例のいずれの触媒についても、擬平衡化処理を行うことにより、比表面積は減少しているが、ニッケル及びバナジウムが存在したときの比表面積の保持率は実施例の方が高く、実施例の触媒は、これらの金属に対する被毒に強い、即ち耐金属性が大きいということが分かる。
活性評価結果によれば、比較例1および2の試料に比べ、実施例1~3及び参考例4の試料の方が、ニッケルおよびバナジウムを沈着させても転化率の低下幅が小さく、HCOおよびCLO分解性の低下が抑制されている。また、Coke生成に関しても抑制されている。参考例5は、実施例1~3及び参考例4と比較すると、ニッケルおよびバナジウムを沈着させたことによるHCOおよびCLOの分解性の低下の程度が大きく、また、ドライガスの収率が低くなっている。このため触媒の性能という観点からは、金属捕捉用の活性成分の原料である金属塩の含有割合は、例えば8質量%未満であることがよい。