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特許7012454静電吸着チャックの製造方法並びに半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】静電吸着チャックの製造方法並びに半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220121BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220121BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/304 631
H01L21/304 622G
H02N13/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017088042
(22)【出願日】2017-04-27
(65)【公開番号】P2018186217
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄一
(72)【発明者】
【氏名】寺久保 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】三井 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 利洋
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-090945(JP,A)
【文献】特開2008-140823(JP,A)
【文献】特開2016-051836(JP,A)
【文献】特開2016-183067(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057273(WO,A1)
【文献】特開2017-030071(JP,A)
【文献】特開平11-186372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
B23Q 3/15
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電力によって半導体ウェーハを保持する静電吸着チャックの製造方法であって、
内部に少なくとも一対の電極が設けられた合成樹脂シートを基板に接合する工程と、
前記基板を回転させ前記基板に接合された前記合成樹脂シートの表面を回転するといしで研削して平坦化された研削面を形成する工程と、を具備し、
前記研削面を形成する工程において、研削加工される前記合成樹脂シートの表面に前記といしの外側から研削液が供給されると共に、前記といしの研削加工に供していない部分の刃先に向かって噴射角度5~20度、噴出圧力3~20MPaで洗浄液が吹き付けられることを特徴とする静電吸着チャックの製造方法。
【請求項2】
前記研削面を形成する工程の後、前記基板の裏面から前記電極に達する複数の穴を形成し前記穴に金属を埋め込み給電用電極を形成する工程が実行されることを特徴とする請求項1に記載の静電吸着チャックの製造方法。
【請求項3】
前記といしは、粒度♯500~8000のダイヤモンドといしであり、
前記研削面は、TTVが1μm以下、評価領域25mm×25mmのLTVが0.1μm以下に平坦化されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電吸着チャックの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の静電吸着チャックの製造方法で製造された静電吸着チャックを用い、
前記静電吸着チャックの平坦化された前記研削面に半導体ウェーハのデバイス面を当接させて前記電極に電圧を印加して静電力で前記半導体ウェーハを保持する工程と、
前記静電吸着チャックに保持された前記半導体ウェーハの裏面を研削する工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体ウェーハの裏面を研削する工程が実行された後、前記静電吸着チャックに保持された前記半導体ウェーハを前記静電吸着チャックと共に反転させ前記半導体ウェーハの裏面を他の半導体ウェーハのデバイス面に接合する工程と、を具備することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電力によって半導体ウェーハを保持する静電吸着チャック及びその製造方法並びにその静電吸着チャックを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハを薄層化するプロセス等では、半導体ウェーハに樹脂を介してサポートウェーハを接合してサポートウェーハで半導体ウェーハを保持することが行われていた。これにより、薄層化加工時や搬送時等に半導体ウェーハが割れてしまうというリスクが低減される。
【0003】
一方、例えば、特許文献1に開示されているように、静電力(クーロン力)によって半導体ウェーハを保持する静電保持装置がある。この場合は静電保持装置に半導体ウェーハ等の薄板状の保持対象物を直接接合できると共に、電極を除電して静電力を除去することで保持対象物を容易に剥離できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-282671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置の分野では、半導体ウェーハの大型化と共に三次元実装化が進んでいる。半導体装置の集積率を高めるためには、半導体ウェーハを薄層化し、より多層のデバイスを積層することが課題となっている。
【0006】
具体的には、三次元実装される各層の半導体ウェーハは現在、40~50μmの厚さに形成されている。今後、半導体ウェーハが10~20μmに薄層化され、高性能化されて多層化されることが要求されている。
しかしながら、半導体ウェーハの割れ等を防止しつつ更なる薄層化を図るためには、上記した従来技術には、改善すべき問題点があった。
【0007】
例えば、上記した従来技術のように、サポートウェーハで半導体ウェーハを保持する方法では、貼り合わせに使用される樹脂の面内ばらつきが大きいという問題点がある。即ち、接合に使用される樹脂は、通常30~50μmの厚さであり、その面内ばらつきは2~3μmである。このばらつきが薄層化研削時に、そのまま半導体ウェーハの厚さのばらつきとなる。そのため、厚さ10μm程度の半導体ウェーハになると、前記した厚さのばらつきは、デバイス性能や歩留まりに大きな影響を与える。
【0008】
また、サポートウェーハで半導体ウェーハを保持する方法では、半導体ウェーハは、その裏面が研削または研磨され薄層化された後に半導体ウェーハと樹脂との界面で剥離される。そのため、この剥離時に半導体ウェーハが割れてしまうというリスクがある。
【0009】
他方、特許文献1に開示された従来技術のように、静電力によって半導体ウェーハ等の保持対象物を保持する静電保持装置を用いる方法では、前述のとおり、静電力を除去して保持対象物を容易に剥離できる。そのため、剥離時に保持対象物である半導体ウェーハが割れてしまうというリスクを低減することできる。
【0010】
しかしながら、従来技術の静電保持装置では、絶縁体の内部に埋め込まれた電極材によって絶縁体の表面に5~10μmのうねりが発生するという問題点があった。そのため、従来技術の静電保持装置は、それを使える工程が搬送や化学蒸着(CVD)、スパッタリング等に限られており、裏面基準となる微細なフォトリソグラフィーや薄層化研削の工程における保持装置としては利用できなかった。
【0011】
具体的には、静電保持装置のうねりが発生した絶縁体の表面に半導体ウェーハが吸着されると、半導体ウェーハの表面にも5~10μmのうねりが発生する。そのため、フォトリソグラフィーにおいては、半導体ウェーハの表面に焦点深度外となる部分が発生し、良好なパターン形成ができない。
【0012】
また、従来技術の静電保持装置が半導体ウェーハの薄層化研削に用いられる場合には、静電保持装置の表面に発生するうねりによって、半導体ウェーハには5~10μmの仕上げ厚さのばらつきが発生し、製品不良や特性のばらつき等の問題が生ずる。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体ウェーハの剥離が容易で半導体ウェーハの割れを抑制することができると共に、半導体ウェーハを高精度に仕上げて薄層化を図ることができる静電吸着チャック及びその製造方法並びに半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
また、本発明の静電吸着チャックの製造方法は、静電力によって半導体ウェーハを保持する静電吸着チャックの製造方法であって、内部に少なくとも一対の電極が設けられた合成樹脂シートを基板に接合する工程と、前記基板を回転させ前記基板に接合された前記合成樹脂シートの表面を回転するといしで研削して平坦化された研削面を形成する工程と、を具備し、前記研削面を形成する工程において、研削加工される前記合成樹脂シートの表面に前記といしの外側から研削液が供給されると共に、前記といしの研削加工に供していない部分の刃先に向かって噴射角度5~20度、噴出圧力3~20MPaで洗浄液が吹き付けられることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、前記静電吸着チャックを用い、前記静電吸着チャックの平坦化された前記研削面に半導体ウェーハのデバイス面を当接させて前記電極に電圧を印加して静電力で前記半導体ウェーハを保持する工程と、前記静電吸着チャックに保持された前記半導体ウェーハの裏面を研削する工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の静電吸着チャックによれば、基板と、基板の一主面に接合された合成樹脂シートと、合成樹脂シートの内部に配設された少なくとも一対の電極と、を有する。これにより、一対の電極に電圧を印加することにより半導体ウェーハを吸着して保持することができると共に、電極に印加された電圧を除去することにより半導体ウェーハを容易に剥離することができる。よって、剥離時の半導体ウェーハの破損を抑制することできる。
【0018】
また、合成樹脂シートの表面には、半導体ウェーハが当接する平坦化された研削面が形成されている。これにより、静電吸着チャックを、保持面に高い平坦度が要求されるフォトリソグラフィーや薄層化研削の工程に用いることができる。そして、保持面として平坦化された研削面が形成されていることにより、薄層研削においては、半導体ウェーハの厚みを均一的に仕上げて更なる薄層化を図ることができる。
【0019】
また、本発明の静電吸着チャックによれば、研削面は、研削面全体の平坦度を示すTTV(Total Thickness Variation)が1μm以下であり、評価領域25mm×25mmの平坦度を示すLTV(Local Thickness Variation)が0.1μm以下であっても良い。これにより、静電吸着チャックの適用範囲が大幅に拡大され、半導体ウェーハの微細化、高性能化、超薄層化及び多層化に貢献できる。
【0020】
例えば、本発明の静電吸着チャックをフォトリソグラフィーに適用することにより、半導体ウェーハの一括全面露光では、1μmのラインアンドスペースやホールを形成することできる。また、ステッパーでのチップ露光では、0.1μmのラインアンドスペースやホールを形成することができる。このように、本発明によれば、高精度な微細加工が実現される。
【0021】
また、本発明の静電吸着チャックを半導体ウェーハの薄層化研削に適用した場合には、TTV向上により、デバイス間の特性安定性が向上すると共に、薄層化限界の大幅な低減が期待できる。
【0022】
具体的には、従来技術のサポートウェーハを用いて樹脂を介して半導体ウェーハと貼り合わせる方法と比べて、本発明の静電吸着チャックでは、デバイス表面の凹凸を示すTTVを1/3以下の1μm以下に、LTVを1/10以下の0.1μm以下に抑えることができる。また、半導体ウェーハ厚さ10~20μmの超薄層化においても、半導体ウェーハと静電吸着チャックを剥離する際の剥離ストレスがないため、歩留まりの大幅な向上が期待できる。
このように、保持面として圧倒的に平坦な研削面を有する静電吸着チャックで各種プロセスを実施することができる。
【0023】
また、本発明の静電吸着チャックの製造方法によれば、内部に少なくとも一対の電極が設けられた合成樹脂シートを基板に接合する工程と、基板に接合された合成樹脂シートの表面をといしで研削して平坦化された研削面を形成する工程と、を具備する。これにより、半導体ウェーハの剥離が容易で、保持面として好適な平坦度の高い研削面を有する静電吸着チャックが得られる。
【0024】
また、本発明の静電吸着チャックの製造方法によれば、研削面を形成する工程において、粒度♯500~8000のダイヤモンドといしが用いられても良い。これにより、電極を覆う合成樹脂シートを高効率且つ高精度に研削することができ、半導体ウェーハの保持に適した高精度で平坦な研削面が得られる。
【0025】
また、本発明の静電吸着チャックの製造方法によれば、研削面を形成する工程において、といしの研削加工に供していない部分の刃先に、噴出圧力3~20MPaで洗浄液が吹き付けられても良い。これにより、といしの刃先に付着した合成樹脂シートの削り屑を洗浄液で除去しつつ合成樹脂シートを研削することができるので、合成樹脂シートの表面を高精度且つ容易に研削することができ、高平坦な研削面を形成することができる。特に、洗浄液を噴射させる圧力は重要であり、上記の好適な噴出圧力によって、といしの刃先に付着した合成樹脂シートの削り屑を除去することが可能となる。
【0026】
また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、前述した本発明の静電吸着チャックを用い、静電吸着チャックの平坦化された研削面に半導体ウェーハのデバイス面を当接させて電極に電圧を印加して静電力で半導体ウェーハを保持する工程と、静電吸着チャックに保持された半導体ウェーハの裏面を研削する工程と、を具備する。これにより、裏面を研削された後の半導体ウェーハの厚みを高精度に揃えることができ、厚さ10~20μmの超薄層化された半導体ウェーハを高品質且つ高歩留まりで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る静電吸着チャックの概略構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る静電吸着チャックの製造方法を示す図であり、図2(a)は、基板が準備された状態、図2(b)は、基板に合成樹脂シートが接合された状態、図2(c)は、合成樹脂シートが研削される状態、図2(d)は、基板に穴が形成された状態、図2(e)は、基板に給電用電極が形成された状態を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る静電吸着チャックの製造方法を示す図であり、図3(a)は、合成樹脂シートが研削される前の状態、図3(b)は、合成樹脂シートが研削された状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図であり、図4(a)は、半導体ウェーハに静電吸着チャックが取り付けられる状態、図4(b)は、半導体ウェーハの裏面が研削される状態、図4(c)は、半導体ウェーハが積層されて接合される状態、図4(d)は、半導体ウェーハから静電吸着チャックが取り外される状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る静電吸着チャック及びその製造方法並びにその静電吸着チャックを用いた半導体装置の製造方法を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る静電吸着チャック1の概略構成を示す断面図である。図1を参照して、静電吸着チャック1は、静電力によって半導体ウェーハ20(図4参照)を保持するものである。静電吸着チャック1は、半導体ウェーハ20の薄層化プロセス及び薄層化後の再配線プロセスや搬送時等に半導体ウェーハ20を保持し、割れのリスクを排除するためのサポートウェーハとして用いられる。
【0029】
静電吸着チャック1は、基板2と、基板2の一主面に接合された合成樹脂シート3と、合成樹脂シート3の内部に配設された少なくとも一対の電極4と、を有する。
基板2は、高剛性の略円形状の板状体であり、例えば、シリコン基板等である。基板2の表面は、研削または研磨によって平坦化されている。その平坦化された基板2の一方の表面に合成樹脂シート3が接合されている。
【0030】
合成樹脂シート3は、誘電性を有する合成樹脂製のシート部材から形成され、略円板状の形態をなす。合成樹脂シート3の材質としては、各種の合成樹脂を採用し得るが、強度、絶縁性、耐熱性、熱膨張等の観点から、例えば、ポリイミド系の樹脂が望ましい。合成樹脂シート3が高耐熱性のポリイミド系の樹脂から形成されることにより、静電吸着チャック1は、200℃程度以上の高温下においても使えるようになる。例えば、ポリイミド系の樹脂からなる静電吸着チャック1は、フォトリソグラフィーやCVD成膜等、比較的高温のプロセスにおいても有用である。
【0031】
合成樹脂シート3の内部には、合成樹脂シート3の略全面に亘って、例えば、銅、アルミニウム等の金属からなる電極4が配設されている。電極4は、一筆書きのように連続して配置された少なくとも一対の電極4a及び電極4bから構成されている。即ち、合成樹脂シート3は、一対または二対以上の電極4a、4bが合成樹脂で被覆されて絶縁された状態のシートである。
【0032】
また、静電吸着チャック1は、電極4に給電するための給電用電極7を有する。給電用電極7は、例えば、銅、アルミニウム等の金属から形成され、基板2を貫通し、静電吸着チャック1の外部から電極4につながっている。
【0033】
給電装置10によって電極4aと電極4bの間に電圧が印加されることにより、合成樹脂シート3は、半導体ウェーハ20を吸着して保持するための静電力を発揮する。他方、電極4に印加された電圧を除去することにより合成樹脂シート3から半導体ウェーハ20を容易に剥離することができる。よって、剥離時の半導体ウェーハ20の破損を抑制することできる。
【0034】
ここで、静電吸着チャック1は、給電装置10から給電された後、給電装置10から切り離されて給電が停止された後も静電力を維持する自己保持型の静電吸着装置である。静電吸着チャック1は、半導体ウェーハ20が静電力で貼り合わされた後、給電装置10の接続が外されても長時間吸着力が低下せず、数日間に亘って半導体ウェーハ20を保持することができる。
【0035】
静電吸着チャック1が自己保持型であることにより、静電吸着チャック1と半導体ウェーハ20が張り合わされた状態での取り扱いが容易になる。そのため、自己保持型の静電吸着チャック1は、例えば、高速回転するテーブル22(図4(b)参照)上で行われる半導体ウェーハ20の薄層化研削工程等においても好適である。即ち、静電吸着チャック1は、給電装置10の接続が外されても良いので、半導体研削装置には、給電装置10から静電吸着チャック1に給電するための配線や回転接続用コネクタ等を設ける必要がない。また、回転するテーブル22上で電極4への給電がなくなった際に半導体ウェーハ20が外れて飛び出す等、常時通電型の静電吸着装置のような問題も発生しない。
【0036】
なお、上記のとおり、静電吸着チャック1としては自己保持型が好適である。しかしながら、静電吸着チャック1は、静電力を発揮するために常に給電装置10からの通電を必要とする常時通電型の静電吸着装置であっても良い。
【0037】
また、合成樹脂シート3の表面、即ち基板2が接合された面に対して反対側の面には、半導体ウェーハ20が当接するための平坦化された研削面5が形成されている。これにより、保持面に高い平坦度が要求されるフォトリソグラフィーや薄層化研削の工程に静電吸着チャック1を用いることができる。そして、保持面として平坦化された研削面5が形成されていることにより、薄層研削においては、半導体ウェーハ20の厚みを均一的に仕上げて更なる薄層化を図ることができる。
【0038】
詳しくは、研削面5は、研削面5全体の平坦度を示すTTVが1μm以下である。また、研削面5は、半導体ウェーハ20に形成されるチップサイズに相当する評価領域25mm×25mmの平坦度を示すLTVが0.1μm以下である。これにより、静電吸着チャック1の適用範囲が大幅に拡大され、半導体ウェーハ20の微細化、高性能化、超薄層化及び多層化に貢献できる。
【0039】
例えば、静電吸着チャック1をフォトリソグラフィーに適用することにより、半導体ウェーハ20の一括全面露光では、1μmのラインアンドスペースやホールを形成することできる。また、ステッパーでのチップ露光では、0.1μmのラインアンドスペースやホールを形成することができる。このように、静電吸着チャック1によれば、高精度な微細加工が実現される。
【0040】
また、静電吸着チャック1を半導体ウェーハ20の薄層化研削に適用した場合には、TTV向上により、デバイス間の特性安定性が向上すると共に、薄層化限界の大幅な低減が期待できる。
【0041】
具体的には、従来技術のサポートウェーハを用いて樹脂を介して半導体ウェーハ20と貼り合わせる方法と比べて、静電吸着チャック1では、半導体ウェーハ20のデバイス表面の凹凸を示すTTVを従来技術の1/3以下の1μm以下に抑えることができる。また、静電吸着チャック1によれば、半導体ウェーハ20のLTVを従来技術に対して1/10以下の0.1μm以下に抑えることができる。
【0042】
静電吸着チャック1は、半導体ウェーハ20の薄層化において、その厚さ均一性の大幅な改善と薄層化の促進ができることから、三次元集積回路に適用でき、超多層化に貢献できる。
【0043】
また、静電吸着チャック1では、半導体ウェーハ20と静電吸着チャック1を剥離する際の剥離ストレスが極めて小さい。そのため、半導体ウェーハ20を厚さ10~20μmに超薄層化する工程において、歩留まりの大幅な向上が期待できる。
【0044】
また、静電吸着チャック1によれば、薄層化した半導体ウェーハ20への微細なパターン形成を可能にすることで、特に、ビアラストプロセスでの裏面TSV工程でのTSV穴あけ精度の向上や、電極形成と再配線の微細化が達成できる。このように、静電吸着チャック1を三次元集積回路の製造に適用することで、デバイスの高性能化と高集積化に貢献できる。
このように、保持面として圧倒的に平坦な研削面5を有する静電吸着チャック1で半導体装置を製造するための各種プロセスを実施することができる。
【0045】
次に、図2及び図3を参照して、静電吸着チャック1の製造方法について詳細に説明する。
図2(a)ないし図2(e)は、静電吸着チャック1の製造方法を示す図である。図2(a)は、基板2が準備された状態を示し、図2(b)は、基板2に合成樹脂シート3が接合された状態を示し、図2(c)は、合成樹脂シート3が研削される状態を示し、図2(d)は、基板2に穴6が形成された状態を示し、図2(e)は、基板2に給電用電極7が形成された状態を示す。
【0046】
図3は、静電吸着チャック1の製造方法を示す図である。図3(a)は、合成樹脂シート3が研削される前の状態を示し、図3(b)は、合成樹脂シート3が研削された状態を示す。
【0047】
先ず、図2(a)に示すように、研削や研磨によって表面が平坦化された略円板状の高剛性の基板2が準備される。基板2は、図示しないテーブル等の上に載置される。
次いで、図2(b)に示すように、基板2の上面に、内部に電極4を有する合成樹脂シート3が積層される。そして、基板2と合成樹脂シート3は、例えば、熱圧着等によって接合されて一体化する。
【0048】
合成樹脂シート3が基板2の主面に貼り付けられた状態において、合成樹脂シート3の表面には、図3(a)に示す如く、全面で5~10μm程度の表面うねり(凹凸)がある。また、合成樹脂シート3の表面には、電極4の有無により3~5μmの凹凸がある。
【0049】
そこで次に、図2(c)及び図3(b)に示すように、合成樹脂シート3の表面を研削して略平坦な研削面5を形成する工程が行われる。研削面5を形成する工程では、図2(c)に示すように、一体的に接合された基板2及び合成樹脂シート3が、合成樹脂シート3を上にして、研削装置のテーブル12上に載置され保持される。テーブル12は、例えば、ポーラスセラミックス等からなる真空式のチャックテーブルであり、基板2は、真空吸引力によりテーブル12に保持される。
【0050】
そして、といし11によって合成樹脂シート3の上面が研削される。これにより、合成樹脂シート3の上面は、図3(a)に示すような凹凸が除去され、図3(b)に示す如く、平坦化される。これにより、高平坦度の研削面5が形成される。
【0051】
ここで、といし11として、ダイヤモンド系またはセラミックス系のといしを使用できる。といし11の粒度は、♯500~♯8000が好ましく、更に好ましくは、♯3000~♯5000、最も好ましくは、♯4000である。本実施形態では、といし11として、粒度♯4000の多結晶ダイヤモンドをビトリファイドボンドで固めたといしを採用している。これにより、優れた加工性が得られ、また、好適な面粗さで高平坦度の研削面5が得られる。
【0052】
また、優れた平坦度が得られる好適な加工条件として、といし11の送り速度は、10~30μm/minが好ましく、20μm/minが最適である。としい11による切り込み量は、合成樹脂シート3の表面うねりの最大値の2~3倍が望ましい。といし11の回転速度は、1000~2000min-1が好ましく、1450min-1が最適である。基板2の回転速度は、200~400min-1が好ましく、299min-1が最適である。
【0053】
また、研削加工される合成樹脂シート3の表面には、研削装置の図示しない研削液供給装置から研削液供給ノズル13を経由して洗浄液が供給される。研削液としては、例えば、純水等が用いられる。
【0054】
上記は、好適な研削条件であるが、上記の研削方法のみでは、合成樹脂シート3の高精度な研削は極めて困難である。本実施形態に係る静電吸着チャック1の製造方法では、上記の研削方法に加えて、といし11の研削加工に供されていない刃先に高圧の洗浄液が吹き付けられる。詳しくは、研削装置の洗浄液供給装置14から洗浄液供給ノズル15を経由して、といし11の刃先に向かって加圧された純水等の洗浄液が噴出される。
【0055】
ここで、といし11に吹き付けられる洗浄液の圧力、噴射角度、及び洗浄液供給ノズル15からといし11の刃先までの距離が重要となる。これらが好適に設定され、且つ上記の好適な研削条件が採用されることにより、といし11の刃先に付着した合成樹脂シート3の削り屑を洗浄液で除去しつつ合成樹脂シート3を研削することができる。これにより、合成樹脂シート3の表面を高精度且つ容易に研削することができ、高平坦な研削面5を形成することができる。
【0056】
具体的には、洗浄液の噴出圧力は、3~20MPa、好ましくは、6~8MPaが良い。洗浄液の噴射角度は、5~20度が好ましく、更に好ましくは、8~12度である。洗浄液供給ノズル15からといし11の刃先までの距離は、10~30mmであり、好ましくは、15~25mm、更に好ましくは、20mmである。
【0057】
研削面5を形成する工程が実行された後、図2(d)に示すように、基板2に給電用電極7(図2(e)参照)を形成するための複数の穴6が形成される。穴6は、基板2の裏面、即ち合成樹脂シート3が接合されていない主面、から電極4に達するように形成される。
【0058】
具体的には、例えば、YAGレーザ等を用いることにより、穴6の基板2を貫通する部分が形成され、その後、例えば、COレーザ等が用いられて、穴6の合成樹脂シート3を通過する部分が形成される。これにより、穴6が形成された部分において、電極4が露出する。なお、穴6の合成樹脂シート3部分の加工にCOレーザが用いられることにより、COレーザは金属を加工しないので、穴6が電極4に達したら自動的に加工を停止できるという利点がる。
【0059】
次に、図2(e)に示すように、開口された穴6に金属を埋め込み給電用電極7を形成する工程が行われる。給電用電極7は、インクジェット法や印刷法、めっき法を用いて穴6に埋め込まれる。
以上の工程により、半導体ウェーハ20(図4参照)を保持する保持面として表面に高平坦な研削面5を有する静電吸着チャック1が得られる。
【0060】
次に、図4を参照して、静電吸着チャック1を用いた半導体装置の製造方法について詳細に説明する。
図4は、静電吸着チャック1を用いた半導体装置の製造方法を示す図である。図4(a)は、半導体ウェーハ20に静電吸着チャック1が取り付けられる状態、図4(b)は、半導体ウェーハ20の裏面が研削される状態、図4(c)は、半導体ウェーハ20が積層されて接合される状態、図4(d)は、半導体ウェーハ20から静電吸着チャック1が取り外される状態を示す図である。
【0061】
図4(a)ないし(d)に示すように、静電吸着チャック1は半導体ウェーハ20を保持するサポートウェーハとして、半導体ウェーハ20の薄層化プロセス及び積層プロセスに利用される。
【0062】
具体的には、先ず、従来の方法に基づいて、シリコン等からなる半導体ウェーハ20の表面に回路が形成される。なお、半導体ウェーハ20には貫通電極が形成されても良い。また、エッジトリミングが行われて、半導体ウェーハ20の周囲端部の傾斜や丸み等が除去されても良い。
【0063】
そして、図4(a)に示すように、静電吸着チャック1の平坦化された研削面5の上に、回路が形成されたデバイス面20aを下にして半導体ウェーハ20が載置される。
次いで、一対の電極4a及び電極4bに、給電装置10より、プラス電位(+)とマイナス電位(-)がそれぞれ印加される。そうすると、電圧が印加された電極4による静電力によって、半導体ウェーハ20と静電吸着チャック1とが貼り合わされた状態となる。
【0064】
例えば、給電装置10から一対の電極4aに+500V、電極4bに-500Vの電圧を印加し、電圧が印加された状態を30秒間保持することにより、半導体ウェーハ20と静電吸着チャック1は、50kPa以上の吸着力で接合される。これにより、半導体ウェーハ20と静電吸着チャック1との貼り合わせが完了する。
【0065】
前述のとおり、静電吸着チャック1は自己保持型であるので、上記給電の後に給電装置10からの給電を止めて、静電吸着チャック1から給電装置10を切り離しても、半導体ウェーハ20と静電吸着チャック1の吸着力は保持される。
【0066】
次に、一体的に接合された半導体ウェーハ20と静電吸着チャック1は、給電装置10から取り外され、図4(b)に示すように、研削装置のテーブル22にセットされる。テーブル22は、例えば、ポーラスセラミックスからなる板状体等である。半導体ウェーハ20が接合された静電吸着チャック1は、テーブル22に真空吸着されて保持される。
【0067】
そして、半導体ウェーハ20は、研削装置によって裏面が研削若しくは研磨され、薄層化される。詳しくは、テーブル22及びといし21がそれぞれ回転して、といし21の刃先が半導体ウェーハ20の裏面に摺擦されて、半導体ウェーハ20の裏面から所定量のシリコン及び貫通電極が除去される。ここで、研削加工される半導体ウェーハ20の裏面には、研削装置の図示しない研削液供給装置から研削液供給ノズル23を経由して、例えば、純水等の洗浄液が供給される。
【0068】
上記のように、高精度に平坦化された研削面5を有する静電吸着チャック1をサポートウェーハとして利用することにより、通常の研削加工条件で、高精度に薄層化された半導体ウェーハ20を得ることができる。即ち、静電吸着チャック1の研削面5と略同等のTTV及びLTVが実現された高精度に薄層化された半導体ウェーハ20が得られる。
【0069】
なお、半導体ウェーハ20の薄層化プロセスでは、といし21の研削加工に供されていない刃先に高圧の洗浄液が吹き付けられても良い。即ち、研削装置の図示しない洗浄液供給装置から洗浄液供給ノズルを経由して、といし21の刃先に向かって加圧された純水等の洗浄液が噴出されても良い。これにより、といし21の刃先に付着した削り屑を洗浄液で除去しつつ半導体ウェーハ20を研削することができる。よって、半導体ウェーハ20の裏面を高精度且つ容易に研削することができる。
【0070】
半導体ウェーハ20の裏面研削が終わった後、貫通電極の頭出しや頭面の仕上げ等の工程が行われても良い。そして、薄層化された半導体ウェーハ20は、静電吸着チャック1と共にテーブル22から取り外され、図4(c)に示すように、例えば、反転されて、加工済みの他の半導体ウェーハ20Aに積層される。薄層化された半導体ウェーハ20は、静電吸着チャック1に保持されているので、テーブル22からの取り外しや搬送等の際に破損するリスクは少ない。
【0071】
次に、例えば、表面活性化による常温接合等によって、積層された半導体ウェーハ20と半導体ウェーハ20Aが接合される。即ち、既に加工された半導体ウェーハ20Aの表面に、薄層化された半導体ウェーハ20の裏面が接合される。
【0072】
そして、図4(d)に示すように、静電吸着チャック1の電極4が除電され、半導体ウェーハ20から、静電吸着チャック1が取り外される。ここでは、半導体ウェーハ20に過大な負荷を掛けることなく、静電吸着チャック1を容易に取り外すことができる。よって、半導体ウェーハ20の割れや欠け等の損傷は発生し難い。
【0073】
上記の図4(a)ないし(d)に示す半導体ウェーハ20の薄層化プロセス及び積層プロセスが所定回数繰り返され、その後、通常の各種後工程を経て、高密度に積層化された高品質な半導体装置が得られる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 静電吸着チャック
2 基板
3 合成樹脂シート
4、4a、4b 電極
5 研削面
6 穴
7 給電用電極
10 給電装置
11 といし
12 テーブル
13 研削液供給ノズル
14 洗浄液供給装置
15 洗浄液供給ノズル
20 半導体ウェーハ
21 といし
22 テーブル
23 研削液供給ノズル
図1
図2
図3
図4