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  • 特許-橋梁の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】橋梁の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20220204BHJP
   E01D 11/04 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
E01D21/00 B
E01D21/00 A
E01D11/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017173212
(22)【出願日】2017-09-08
(65)【公開番号】P2018044432
(43)【公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2016178767
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】栃木 謙一
(72)【発明者】
【氏名】小林 顕
(72)【発明者】
【氏名】中島 穰
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-041826(JP,A)
【文献】特開2009-299418(JP,A)
【文献】特開2002-220185(JP,A)
【文献】特開平05-106210(JP,A)
【文献】特開昭62-258005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00 - 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜材に吊り支持されたプレストレストコンクリート製の主桁と、該主桁に支持されるコンクリート製の床版と、を有する橋梁の施工方法において、
橋軸方向に分割された施工ブロックごとに前記主桁を順次施工する主桁施工工程と、
前記施工ブロックごとに前記床版を順次施工する床版施工工程と、を有し、
同一の前記施工ブロックにおける前記主桁施工工程と前記床版施工工程とは、前記主桁施工工程が前記床版施工工程よりも先行して行われ、
前記主桁施工工程では、既に施工された前記施工ブロックの前記主桁に支持された移動作業車を移動させながら新たに施工する前記施工ブロックの前記主桁を施工して、前記斜材に吊り支持させ、
前記床版施工工程では、既に施工された同一の前記施工ブロックの前記主桁に設置された門形クレーンを使用して前記床版を施工することを特徴とする橋梁の施工方法。
【請求項2】
連続する前記施工ブロックのうちの後に施工される前記施工ブロックの前記主桁施工工程と、先に施工される前記施工ブロックの前記床版施工工程と、を並行して行うことを特徴とする請求項1に記載の橋梁の施工方法。
【請求項3】
前記床版は、プレキャストコンクリートまたは現場打ちコンクリートにより施工されることを特徴とする請求項1または2に記載の橋梁の施工方法。
【請求項4】
前記主桁は、プレキャストコンクリートまたは現場打ちコンクリートにより施工されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の橋梁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜張橋などの橋梁を張り出し施工で構築する場合の橋梁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広幅員の斜張橋などの橋梁を張り出し施工で構築する場合、一般的に橋軸方向(橋梁の延在方向)に分割された施工ブロックごとに順次施工され、施工ブロックごとに主桁および床版が一体に施工されている(例えば、特許文献1参照)。このような場合、既に構築された施工ブロックの主桁および床版により移動作業車を支持し、新たに構築される施工ブロックの主桁および床版の施工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-299418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施工ブロックごとに主桁および床版を一体に構築するには、耐荷重が大きい大型の移動作業車を使用することになる。このため、移動作業車は、各部材の剛性を大きくする必要があり、重量が大きくなる。これにより、移動作業車を張り出し架設するために必要となる主桁や床版に設けるPC鋼材などの量が増加するなど、移動作業車の架設に大規模な補強が必要となる。
また、移動作業車を使用して主桁および床版を施工ブロックごとに一体に構築するため、前の施工ブロックの主桁および床版の施工を完了し、移動作業車を移動させないと次の施工ブロックの主桁および床版の施工を開始することができず、工期が長くなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、使用する移動作業車の軽量化を図ることができるとともに、工期短縮を図ることができる橋梁の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る橋梁の施工方法は、斜材に吊り支持されたプレストレストコンクリート製の主桁と、該主桁に支持されるコンクリート製の床版と、を有する橋梁の施工方法において、橋軸方向に分割された施工ブロックごとに前記主桁を順次施工する主桁施工工程と、前記施工ブロックごとに前記床版を順次施工する床版施工工程と、を有し、同一の前記施工ブロックにおける前記主桁施工工程と前記床版施工工程とは、前記主桁施工工程が前記床版施工工程よりも先行して行われ、前記主桁施工工程では、既に施工された前記施工ブロックの前記主桁に支持された移動作業車を移動させながら新たに施工する前記施工ブロックの前記主桁を施工して、前記斜材に吊り支持させ、前記床版施工工程では、既に施工された同一の前記施工ブロックの前記主桁に設置された門形クレーンを使用して前記床版を施工することを特徴とする。
【0007】
本発明では、主桁と床版とは別々に施工され、主桁は移動作業車を使用して施工し、床版は移動作業車を使用せずに既に施工された主桁および床版を利用して施工することにより、移動作業車を使用して主桁および床版を一体に施工する場合と比べて移動作業車の耐荷重および大きさを小さくすることができるため、移動作業車の軽量化を図ることができる。
これにより、主桁に移動作業車を設置するために必要となる主桁に設けるPC鋼材などの量を少なくすることができる。
また、床版の施工に移動作業車を使用しないことにより、施工ブロックごとに移動作業車を移動させるサイクルを短くすることができ、工期短縮を図ることができる。
【0008】
また、本発明に係る橋梁の施工方法では、連続する前記施工ブロックのうちの後に施工される前記施工ブロックの前記主桁施工工程と、先に施工される前記施工ブロックの前記床版施工工程と、を並行して行うことが好ましい。
このような構成とすることにより、各施工ブロックの床版施工工程がクリティカルパスから外れるため、工期短縮を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係る橋梁の施工方法では、前記床版は、プレキャストコンクリートまたは現場打ちコンクリートにより施工されてもよい。
このような構成とすることにより、床版をプレキャストコンクリートおよび現場打ちコンクリートのいずれかで施工することができる。これにより、本発明の橋梁の施工方法を床版の形態にかかわらず幅広く適用することができる。
【0010】
また、本発明に係る橋梁の施工方法では、前記主桁は、プレキャストコンクリートまたは現場打ちコンクリートにより施工されてもよい。
このような構成とすることにより、主桁をプレキャストコンクリートおよび現場打ちコンクリートのいずれかで施工することができる。これにより、本発明の橋梁の施工方法を床版の形態にかかわらず幅広く適用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動作業車の軽量化を図るとともに、工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による橋梁の施工途中の様子を示す図である。
図2】主桁施工工程および床版施工工程を説明する図である。
図3】主桁施工工程および床版施工工程を説明する他の図である。
図4】床版施工工程を説明する図である。
図5】下支え式の移動作業車を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による橋梁の施工方法について、図1乃至図4に基づいて説明する。
まず、本実施形態による橋梁について説明する。
図1に示すように、橋梁1は、広幅員の斜張橋で、橋梁1が延設される橋軸方向に間隔をあけて立設された複数の橋脚(不図示)と、橋脚の上部に立設された複数の塔(不図示)と、橋軸方向に隣り合う橋脚の間に橋軸直角方向に間隔をあけて架設されたプレストレストコンクリート製の一対の主桁2,2と、塔に支持され一対の主桁2,2をそれぞれ吊り支持する複数の斜材3,3…と、一対の主桁2,2間に架設されたコンクリート製の複数のクロスビーム4,4…と、複数のクロスビーム4,4…の上部に配置されるプレキャストコンクリート製の床版5と、を有している。
【0014】
隣り合う橋脚間の一対の主桁2,2、複数の斜材3,3…、複数のクロスビーム4,4…、および床版5は、橋脚および塔が構築された後に、橋軸方向に分割された施工ブロックごとに橋軸方向に順次施工されている。これらの施工ブロックは、隣り合う橋脚の一方側から他方側に向かう方向に沿って施工されるとともに、他方側から一方側に向かう方向に沿って施工され、隣り合う橋脚の間において一方側から施工された施工ブロックの各部材と他方側から施工された施工ブロックの各部材とがそれぞれ接続されている。
施工ブロックのうち、橋脚と接続される施工ブロックを第1施工ブロックとし、第1施工ブロックから橋脚から離間する方向に向かって第2施工ブロック、第3施工ブロック…とする。
【0015】
本実施形態では、第1施工ブロックの一対の主桁2,2…を施工する第1主桁施工工程が完了し第1施工ブロックの一対の主桁2,2が構築された後に、第1施工ブロックの床版5を施工する第1床版施工工程および第2施工ブロックの一対の主桁2,2を施工する第2主桁施工工程を行い、第1床版施工工程および第2主桁施工工程が完了し、第1施工ブロックの床版5が構築され、第2施工ブロックの一対の主桁2,2が構築された後に第2施工ブロックの床版5を施工する第2床版施工工程および第3施工ブロックの一対の主桁2,2を施工する第2主桁施工工程を行う。このように、順次施工ブロックごとに一対の主桁2,2および床版5を施工している。
本実施形態では、第n施工ブロックの主桁構築工程と、第n-1施工ブロックの床版構築工程と、を並行して行っている。
【0016】
図2および図3に示すように、各施工ブロックの主桁施工工程は、移動作業車6を使用して行う。
移動作業車6は、既に構築された前の施工ブロック(第n-1施工ブロック)の主桁2の上部に設けられたレール61と、レール61を走行可能な走行部62と、走行部62に支持され第n-1施工ブロックの主桁2からこれから構築する施工ブロック(第n施工ブロック)の主桁2側に突出した上側フレーム63と、上側フレーム63に吊り支持された下側フレーム64と、下側フレーム64の上に設けられた作業足場65および1つの施工ブロック分の主桁2の型枠66と、を有している。移動作業車6は、走行部62がレール61に沿って移動することにより、レール61以外の部分がレール61に沿って移動するように構成されている。このレール61に沿って移動可能な部分を移動部67とする。
移動作業車6は、構築される一対の主桁2,2のそれぞれに1台ずつ使用される。
【0017】
第n施工ブロックの一対の主桁2,2を施工する主桁施工工程は、移動作業車6の型枠66にコンクリートを打設して第n施工ブロックの一対の主桁2,2を施工し、施工された第n施工ブロックの一対の主桁2,2に斜材3,3を連結し、第n施工ブロックの一対の主桁2,2を斜材3,3に吊り支持させて、第n施工ブロックの一対の主桁2,2を構築する。
【0018】
第n施工ブロックの一対の主桁2,2が構築されたら、第n施工ブロックの一対の主桁2,2の上に移動作業車6のレール61を設置し、移動部67を第n施工ブロックの一対の主桁2,2の上に設置されたレール61の上に移動させる。これにより移動作業車6が第n施工ブロックの主桁2,2上部に設置され、第n+1施工ブロックの主桁施工工程を行うことができる。第n+1施工ブロックの主桁施工工程は、第n施工ブロックの主桁施工工程と同様に行う。
【0019】
各施工ブロックの床版施工工程は、門形クレーン7を使用して行う。
門形クレーン7は、既に構築された施工ブロック(第n-1施工ブロック)の一対の主桁2,2の上部に設けられた一対のレール71,71と、一対のレール71,71のそれぞれを走行可能で上方に延びる一対の脚部72,72と、一対の脚部72,72に架設される梁部73と、梁部73に設けられたクレーン74と、を有している。一対の脚部72,72は、施工される第n-1施工ブロックの床版5の橋軸直交方向の両側に配置され、梁部73は、施工される第n-1施工ブロックの床版5の上部に配置されている。
門形クレーン7は、一対の脚部72,72がレール71,71に沿って移動することにより、レール71,71以外の部分がレール71,71に沿って移動するように構成されている。このレール71,71に沿って移動可能な部分を移動部75とする。
【0020】
第n-1施工ブロックの床版5を施工する床版施工工程は、まず、門形クレーン7を使用して第n施工ブロックのクロスビーム4を吊り上げて第n-1施工ブロックの一対の主桁2,2間に設置する。図4に示すように、クロスビーム4の一対の主桁2,2への連結は、第n-1施工ブロックの一対の主桁2,2に設けられたセッティングビーム8,8でクロスビーム4を支持してから行う。
図2および3に戻り、クロスビーム4が一対の主桁2,2と連結されたら、門形クレーン7を使用して第n-1施工ブロックの床版5を吊り上げてクロスビーム4の上に設置する。第n施工ブロックに設置されるクロスビーム4および床版5の部材は、予め工場などで製作されてから現場に搬入されている。
このようにして、第n-1施工ブロックの床版5が構築される。
【0021】
第n-1施工ブロックの床版5が構築され、第n施工ブロックの一対の主桁2,2が構築されたら、第n施工ブロックの一対の主桁2,2の上に門形クレーン7の一対のレール71,71を設置し、移動部75を第n施工ブロックの一対の主桁2,2の上に設置されたレール71,71の上に移動させる。これにより門形クレーン7が第n施工ブロックの主桁2,2の上部に設置され、第n施工ブロックの床版施工工程を行うことができる。第n施工ブロックの床版施工工程は、第n-1施工ブロックの床版施工工程と同様に行う。
【0022】
次に、上述した橋梁の施工方法の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した本実施形態による橋梁の施工方法では、一対の主桁2,2と床版5とは別々に施工され、一対の主桁2,2は移動作業車6,6を使用して施工し、床版5は移動作業車6,6を使用せずに既に施工された施工ブロックの一対の主桁2,2に設置された門形クレーン7を使用して施工している。これにより、移動作業車6,6を使用して一対の主桁2,2および床版5を一体に施工する場合と比べて移動作業車6,6の耐荷重および大きさを小さくすることができるため、移動作業車6,6の軽量化を図ることができる。
これにより、一対の主桁2,2に移動作業車6,6を設置するために必要となる一対の主桁2,2に設ける鋼材などの量を少なくすることができる。
また、床版5の施工に移動作業車6を使用しないことにより、施工ブロックごとに移動作業車6を移動させるサイクルを短くすることができるため、工期短縮を図ることができる。
また、第n施工ブロックの床版構築工程は、第n+1施工ブロックの主桁構築工程と並行して行われていることにより、第n施工ブロックの床版構築工程がクリティカルパスから外れるため、工期短縮を図ることができる。
【0023】
以上、本発明による橋梁の施工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、第n施工ブロックの床版構築工程は、第n+1施工ブロックの主桁構築工程と並行して行われているが、並行して行われていなくてもよい。
また、上記の実施形態では、一対の主桁2,2の間に床版5が設けられているが、主桁2および床版5の数や配置、形態は適宜設定されてよい。
【0024】
また、上記の実施形態では、床版5は、プレキャストコンクリート製であるが、プレキャストコンクリート製に代わって、クロスビーム4上に橋軸方向の桁を並べ、その上に型枠を設置して現場打ちコンクリートによって施工されていてもよい。この場合も、移動作業車6は大型にならず、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
また、上記の実施形態では、移動作業車6は、主桁2の上側の上側フレーム63に吊り支持された下側フレーム64の上に作業足場65が設けられている吊り支持式のものであるが、図5に示す移動作業車6Bのように、主桁2の下側において支持されたフレーム64Bの上に作業足場65Bが設けられている下支え式のものであってもよい。
【0025】
また、上記の実施形態では、主桁2は、現場打ちコンクリートによって施工されているが、プレキャストブロック工法(プレキャストコンクリート)で施工されていてもよい。このような場合、主桁2を構成するプレキャストブロックを製作し、クレーンで吊り上げて主桁2が設けられる位置に配置する。
複数のプレキャスブロックを連結して主桁2を構成する場合は、プレキャストブロックに突起部と凹部とを形成し、このプレキャストブロックの突起部を接着剤を塗布した状態で隣接するプレキャストブロックの凹部に嵌め込み、互いに隣接するプレキャストブロックをPC鋼材で締め付けるようにしてもよい。なお、斜材3は、主桁2を構成するプレキャストブロックがPC鋼材で締め付けられた後に取り付けるようにしてもよい。
【0026】
また、上記の実施形態では、施工ブロックは、隣り合う橋脚の一方側から他方側に向かう方向に沿って施工されるとともに、他方側から一方側に向かう方向に沿って施工され、隣り合う橋脚の間において一方側から施工された施工ブロックの各部材と他方側から施工された施工ブロックの各部材とがそれぞれ接続されているが、隣り合う橋脚のいずれか一方側から他方側に向かう方向のみに沿って施工されてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 橋梁
2 主桁
3 斜材
4 クロスビーム
5 床版
6 移動作業車
7 門形クレーン
図1
図2
図3
図4
図5