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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】錠剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20220204BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20220204BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/167
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/02
A61P43/00 121
A61P29/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017180329
(22)【出願日】2017-09-20
(65)【公開番号】P2018048136
(43)【公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2016183193
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】寺本 勘二
(72)【発明者】
【氏名】石田 和裕
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-139971(JP,A)
【文献】特開2015-193600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00-9/72
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含有し、
錠剤の総質量に対して、下記(B)成分の含有量が48.27~85質量%であり、下記(D)成分の含有量が8.14質量%以上であり、
(B)成分/(A)成分で表される質量比が4~15である、錠剤。
(A)成分:ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選ばれる1種以上
(B)成分:アセトアミノフェン
(C)成分:着色剤
(D)成分:結晶セルロース、デンプンおよびリン酸水素カルシウムからなる群より選ばれる1種以上
【請求項2】
前記(C)成分が三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタンおよび酸化亜鉛からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
10000×(C)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比が0.11~20である、請求項1または2に記載の錠剤。
【請求項4】
(D)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比が0.12~0.48である、請求項1~3のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項5】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含む薬物含有粉体を打錠成形して錠剤を得る工程を有し、
錠剤の総質量に対して、下記(B)成分の含有量が48.27~85質量%であり、下記(D)成分の含有量が8.14質量%以上であり、
(B)成分/(A)成分で表される質量比が4~15である、錠剤の製造方法。
(A)成分:ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選ばれる1種以上
(B)成分:アセトアミノフェン
(C)成分:着色剤
(D)成分:結晶セルロース、デンプンおよびリン酸水素カルシウムからなる群より選ばれる1種以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)の中でもロキソプロフェンおよびその塩(以下、これらをまとめて「ロキソプロフェン(塩)」ともいう。)は、優れた消炎、鎮痛、解熱作用を有し、副作用が比較的少ないことから解熱鎮痛剤の成分として広く使用されている。解熱鎮痛薬や感冒薬等の一般用医薬品には、種々の症状に対する幅広い薬理効果を期待して複数の有効成分が配合されており、ロキソプロフェン(塩)においても様々な薬剤と組み合せて用いることが検討されている。
例えば特許文献1には、カフェイン類、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素、アセトアミノフェン類およびエテンザミドより選ばれる1種または2種以上の薬剤と、ロキソプロフェンナトリウム二水和物とを含有する、経口投与用の医薬組成物が開示されている。
【0003】
ところで、ロキソプロフェン(塩)等は付着性が強いため、製造機器への付着、とりわけ錠剤を製造する際にロキソプロフェン(塩)を含む粉体が打錠機の杵に付着する現象(以下、「杵付着」という。)等が生じやすい。ロキソプロフェン(塩)にアセトアミノフェンを組み合わせた場合も、杵付着の問題が発生する。
杵付着が抑えられた錠剤として、例えば特許文献2には、ロキソプロフェン(塩)と特定量の着色剤とを含有する錠剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-139971号公報
【文献】特開2015-193600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロキソプロフェン(塩)とアセトアミノフェンとの組み合わせにおいて着色剤を併用すると、これらを含有する錠剤を保存した後に服用する際に、不快な臭いが感じられることがあった。特に、錠剤を高温多湿下で保存すると、密閉容器に包装されていても不快臭が発生しやすかった。
【0006】
不快な臭いを抑制する技術としては、コーティング剤を用いて錠剤を被覆する方法が一般的である。
しかし、コーティング剤を用いて錠剤を被覆する方法の場合、コーティング中に摩損が生じることがある。摩損を抑制するために硬度の高い錠剤とすると、溶出性が低下する場合がある。さらに、製造工程が増えるため、製造コストが高い。
一般用医薬品において服用性は重要な因子であり、服用を妨げる要因となり得る不快な臭いをより簡便な方法により抑制する技術が求められる。
【0007】
本発明は、ロキソプロフェン(塩)とアセトアミノフェンとを含有する錠剤を製造する際に生じる打錠時の杵付着が抑えられ、しかも簡便な方法により不快な臭いも抑制された錠剤およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、ロキソプロフェン(塩)とアセトアミノフェンと着色剤との組み合わせにおいて、結晶セルロース、デンプンまたはリン酸水素カルシウムをさらに用いることで、杵付着を抑えつつ、高温多湿下で保存しても不快な臭いが抑制された錠剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] 下記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含有する、錠剤。
(A)成分:ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選ばれる1種以上
(B)成分:アセトアミノフェン
(C)成分:着色剤
(D)成分:結晶セルロース、デンプンおよびリン酸水素カルシウムからなる群より選ばれる1種以上
[2] 前記(C)成分が三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタンおよび酸化亜鉛からなる群より選ばれる1種以上である、[1]に記載の錠剤。
[3] 10000×(C)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比が0.11~20である、[1]または[2]に記載の錠剤。
[4] (D)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比が0.005~5である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の錠剤。
[5] 前記(A)成分の含有量が、錠剤の総質量に対して3~85質量%である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の錠剤。
[6] 前記(B)成分の含有量が、錠剤の総質量に対して3~85質量%である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の錠剤。
[7] 10000×(C)成分/錠剤で表される質量比が、0.01~3である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の錠剤。
[8] 前記(D)成分の含有量が、錠剤の総質量に対して1~85質量%である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の錠剤。
[9] (B)成分/(A)成分で表される質量比が0.25~15である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の錠剤。
[10] カフェイン、無水カフェイン、アリルイソプロピルアセチル尿素および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選ばれる1種以上をさらに含有する、[1]~[9]のいずれか1つに記載の錠剤。
[11] 下記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含む薬物含有粉体を打錠成形して錠剤を得る工程を有する、錠剤の製造方法。
(A)成分:ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選ばれる1種以上
(B)成分:アセトアミノフェン
(C)成分:着色剤
(D)成分:結晶セルロース、デンプンおよびリン酸水素カルシウムからなる群より選ばれる1種以上
[12] 下記(A)成分を含む粉体Aと、下記(B)成分を含む粉体B(ただし、下記(C)成分および(D)成分のそれぞれが、粉体Aおよび粉体Bの少なくとも一方に含まれる)とを臼に充填し、打錠成形して錠剤を得る工程を有する、錠剤の製造方法。
(A)成分:ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選ばれる1種以上
(B)成分:アセトアミノフェン
(C)成分:着色剤
(D)成分:結晶セルロース、デンプンおよびリン酸水素カルシウムからなる群より選ばれる1種以上
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロキソプロフェン(塩)とアセトアミノフェンとを含有する錠剤を製造する際に生じる打錠時の杵付着が抑えられ、しかも簡便な方法により不快な臭いも抑制された錠剤およびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の錠剤は、以下に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含有する。
錠剤の寸法は特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から錠剤の径として5~14mmφが好ましく、6~13mmφがより好ましく、7~12mmφがさらに好ましい。また1錠あたりの錠剤質量は、150mg~550mgが好ましい。
また、錠剤の形状としては特に限定されないが、スミ角平錠、スミ丸平錠、丸みを帯びたR錠もしくは2段階R錠が好ましい。
【0012】
また、錠剤は単層構造(単層錠)であってもよいし、積層構造(積層錠)であってもよい。本発明の効果をより享受しやすい点から、以下に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を併有する層を有する(すなわち、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が同一層に存在する)ことが好ましい。以下、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を併有する層を「薬物層」ともいう。錠剤が単層錠の場合、錠剤は薬物層で構成される。錠剤が積層錠の場合、錠剤は薬物層と薬物層以外の層(任意層)とで構成される。
【0013】
なお、錠剤を、(A)成分と(B)成分とが別々の層に存在し、かつこれらの層が隣接する積層錠とする場合、(C)成分および(D)成分のそれぞれは、少なくとも一方の層に含有させればよい。すなわち、(A)成分が存在する層を「A層」とし、(B)成分が存在する層を「B層」とした場合、(C)成分および(D)成分のそれぞれは、A層およびB層の少なくとも一方に含有させればよく、こうすることで本発明の効果が十分に得られる。特に本発明の効果が得られやすい点で、(C)成分は少なくともA層に含まれていることが好ましい。この場合、(C)成分はB層にも含まれていてもよい。また、(D)成分はA層のみに含まれていてもよいし、B層のみに含まれていてもよいし、A層とB層の両方に含まれていてもよい。
【0014】
特に好ましい錠剤の形態としては、薬物層で構成された単層錠;(A)成分と(C)成分と(D)成分とを含むA層と、(B)成分と必要に応じて制酸剤とを含むB層とが隣接した積層錠;薬物層と、制酸剤を含む任意層とが隣接した積層錠などが挙げられる。
【0015】
<(A)成分>
(A)成分は、ロキソプロフェンおよびその塩(ロキソプロフェン(塩))からなる群より選ばれる1種以上である。
ロキソプロフェン(塩)は、日本薬局方に収載されている解熱鎮痛成分である。
【0016】
ロキソプロフェンの塩としては、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩であれば特に制限されず、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
ロキソプロフェン(塩)は、水和物の状態で存在していてもよい。水和物の状態のロキソプロフェン(塩)の好適例としては、ロキソプロフェンナトリウム二水和物が挙げられる。ロキソプロフェンナトリウム二水和物の場合、原末の水分量は約12質量%である。
なお、(A)成分が水和物の場合、後述する(A)成分の含有量、1回当たりの服用量および他の成分との質量比には、(A)成分中の水分量も含まれるものとする。
【0017】
(A)成分としては、ロキソプロフェンの塩が好ましく、ロキソプロフェンナトリウムがより好ましく、ロキソプロフェンナトリウム二水和物がさらに好ましい。
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(A)成分の含有量は、錠剤の総質量に対して3~85質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
錠剤が積層錠であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が同一層に存在する場合、(A)成分の含有量は、薬物層の総質量に対して3~90質量%が好ましく、5~55質量%がより好ましい。
錠剤が積層錠であって、(A)成分と(B)成分とが別々の層に存在する場合、(A)成分の含有量は、A層の総質量に対して3~90質量%が好ましく、10~65質量%がより好ましい。
(A)成分の含有量が多くなるほど保存後の不快な臭いが顕著となるため、(D)成分の添加による本発明の効果が発揮されやすい。加えて、解熱鎮痛効果が十分に得られる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば製造工程における製造機への付着をより抑制できる。
なお、錠剤が単層錠の場合、薬物層の総質量に対する(A)成分の含有量は、錠剤の総質量に対する(A)成分の含有量と同じである。
【0019】
(A)成分の1回当たりの服用量は、11~170mgが好ましく、22~113mgがより好ましい。(A)成分の1回当たりの服用量が、上記下限値以上であれば解熱鎮痛効果が十分に得られ、上記上限値以下であれば製造工程における製造機への付着をより抑制できる。
【0020】
<(B)成分>
(B)成分は、アセトアミノフェンである。
アセトアミノフェン(N-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド)は、別名パラセタモールとも呼ばれ、日本薬局方に収載されている解熱鎮痛成分である。
【0021】
(B)成分の含有量は、錠剤の総質量に対して3~85質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。
錠剤が積層錠であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が同一層に存在する場合、(B)成分の含有量は、薬物層の総質量に対して5~90質量%が好ましく、20~85質量%がより好ましい。
錠剤が積層錠であって、(A)成分と(B)成分とが別々の層に存在する場合、(B)成分の含有量は、B層の総質量に対して5~90質量%が好ましく、20~85質量%がより好ましい。
(B)成分の含有量が多くなるほど保存後の不快な臭いが顕著となるため、(D)成分の添加による本発明の効果が発揮されやすい。加えて、解熱鎮痛効果が十分に得られる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、錠剤硬度を良好に維持できる。
なお、錠剤が単層錠の場合、薬物層の総質量に対する(B)成分の含有量は、錠剤の総質量に対する(B)成分の含有量と同じである。
【0022】
錠剤中の(A)成分と(B)成分との配合比率は任意に設定できるが、本発明の効果をより得られやすくするためには(B)成分/(A)成分で表される質量比(以下、「B/A比」ともいう。)は、0.25~15が好ましく、1~10がより好ましく、4.5~7がさらに好ましい。B/A比が上記下限値以上であれば、保存後の不快な臭いをより抑制できると共に、錠剤の製造工程における製造機への付着をより抑制できる。一方、B/A比が上記上限値以下であれば、錠剤硬度を良好に維持できる。
【0023】
(B)成分の1回当たりの服用量は、30~500mgが好ましく、50~300mgがより好ましい。(B)成分の1回当たりの服用量が、上記下限値以上であれば解熱鎮痛効果が十分に得られ、上記上限値以下であれば錠剤硬度を良好に維持できる。
【0024】
<(C)成分>
(C)成分は、着色剤である。
(A)成分および(B)成分の組み合わせにおいて、(C)成分を併用することで、錠剤を製造する際に生じる打錠時の杵付着を抑制できる。
【0025】
(C)成分としては、食用着色剤、食用着色剤以外の有機顔料および無機顔料、動植物抽出物などが挙げられる。以下に(C)成分を例示するが、(C)成分は以下に例示するものに限定されない。
食用着色剤としては、例えばオレンジエッセンス、カラメル、カルミン、β-カロテン、食用青色1号、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号などが挙げられる。
有機顔料としては、例えば銅クロロフイリンナトリウム、銅クロロフィル、リボフラビンなどが挙げられる。
無機顔料としては、例えば三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、金箔、薬用炭などが挙げられる。
動植物抽出物としては、例えばカンゾウエキス、アセンヤクタンニン末、ウコン抽出液、緑茶末などが挙げられる。
これらの中でも、打錠成形時における杵付着がより抑えられる点から、無機顔料が好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄等の鉄を主成分とする無機顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛がより好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄がさらに好ましい。
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(C)成分の含有量は、錠剤の総質量に対して0.001~0.2質量%が好ましく、0.005~0.1質量%がより好ましく、0.01~0.05質量%がさらに好ましい。
錠剤が積層錠であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が同一層に存在する場合、(C)成分の含有量は、薬物層の総質量に対して0.002~0.4質量%が好ましく、0.01~0.3質量%がより好ましい。
錠剤が積層錠であって、(A)成分と(B)成分とが別々の層に存在する場合、A層中の(C)成分の含有量は、A層の総質量に対して0~0.3質量%が好ましく、0.01~0.2質量%がより好ましい。また、B層中の(C)成分の含有量は、B層の総質量に対して0~0.4質量%が好ましく、0.01~0.3質量%がより好ましい。ただし、A層中の(C)成分の含有量の合計と、B層中の(C)成分の含有量の合計が、錠剤の総質量に対して0.001~0.2質量%を満たすことが好ましい。
(C)成分の含有量が、上記下限値以上であれば錠剤を製造する際に生じる打錠時の杵付着をより抑制でき、上記上限値以下であれば(C)成分同士の凝集が生じにくくなり、錠剤の外観を良好に維持できる。
なお、錠剤が単層錠の場合、薬物層の総質量に対する(C)成分の含有量は、錠剤の総質量に対する(C)成分の含有量と同じである。
【0027】
錠剤中の(A)成分および(B)成分の合計と、(C)成分との配合比率は任意に設定できるが、本発明の効果をより得られやすくするためには10000×(C)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比(以下、「10000×C/(A+B)比」ともいう。)は、0.11~20が好ましく、0.25~15がより好ましい。10000×C/(A+B)比が、上記下限値以上であれば錠剤を製造する際に生じる打錠時の杵付着をより抑制でき、上記上限値以下であれば(C)成分同士の凝集が生じにくくなり、錠剤の外観を良好に維持できる。
【0028】
(C)成分の1回当たりの服用量は、0.001~0.5mgが好ましく、0.01~0.2mgがより好ましく、0.03~0.1mgがさらに好ましい。(C)成分の1回当たりの服用量が、上記下限値以上であれば錠剤を製造する際に生じる打錠時の杵付着をより抑制でき、上記上限値以下であれば(C)成分同士の凝集が生じにくくなり、錠剤の外観を良好に維持できる。
【0029】
<(D)成分>
(D)成分は、結晶セルロース、デンプンおよびリン酸水素カルシウムからなる群より選ばれる1種以上である。
結晶セルロースは、繊維性植物からパルプとして得たα-セルロースを酸で部分的に解重合し、精製したものである(日本薬局方に収載)。
デンプンとしては特に制限されないが、例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、α化デンプン、部分α化デンプンなどが挙げられる。
リン酸水素カルシウムは、水和物の状態で存在していてもよい。水和物の状態のリン酸水素カルシウムの好適例としては、リン酸水素カルシウム二水和物が挙げられる。リン酸水素カルシウム二水和物の場合、原末の水分量は約21質量%である。なお、(D)成分としてリン酸水素カルシウムの水和物を用いる場合、後述する(D)成分の含有量、1回当たりの服用量および他の成分との質量比には、(D)成分中の水分量も含まれるものとする。
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上述した中でも、保存後の臭いの抑制効果が特に得られやすい点で、(D)成分としては、結晶セルロース、トウモロコシデンプンが好ましい。
【0031】
(D)成分の含有量は、錠剤の総質量に対して1~85質量%が好ましく、1~60質量%がより好ましく、3~50質量%がさらに好ましい。
錠剤が積層錠であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が同一層に存在する場合、(D)成分の含有量は、薬物層の総質量に対して1~85質量%が好ましく、1~60質量%がより好ましく、2~50質量%がさらに好ましい。
錠剤が積層錠であって、(A)成分と(B)成分とが別々の層に存在する場合、A層中の(D)成分の含有量は、A層の総質量に対して0~85質量%が好ましく、1~60質量%がより好ましく、2~50質量%がさらに好ましい。また、B層中の(D)成分の含有量は、B層の総質量に対して0~85質量%が好ましく、1~60質量%がより好ましく、2~50質量%がさらに好ましい。ただし、A層中の(D)成分の含有量の合計と、B層中の(D)成分の含有量の合計が、1~85質量%となることが好ましく、より好ましくは1~60質量%であり、さらに好ましくは3~50質量%である。
(D)成分の含有量が、上記下限値以上であれば保存後の不快な臭いをより効果的に抑制でき、上記上限値以下であれば他の有効成分を十分に含有させることができるため、1回当たりの服用量を抑えることができる。
なお、錠剤が単層錠の場合、薬物層の総質量に対する(D)成分の含有量は、錠剤の総質量に対する(D)成分の含有量と同じである。
【0032】
錠剤中の(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の含有量の合計は、錠剤の総質量に対して10~100質量%が好ましく、35~100質量%がより好ましい。
また、錠剤が積層錠であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が同一層に存在する場合、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の含有量の合計は、薬物層の総質量に対して10~100質量%が好ましく、40~100質量%がより好ましい。
(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の含有量の合計が、上記下限値以上であれば杵付着や保存後の不快な臭いを抑制しつつ解熱鎮痛効果が十分に得られ、上記上限値以下であれば服用性に優れた錠剤とすることができる。
【0033】
錠剤中の(A)成分および(B)成分の合計と、(D)成分との配合比率は任意に設定できるが、本発明の効果をより得られやすくするためには(D)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比(以下、「D/(A+B)比」ともいう。)は、0.005~5が好ましく、0.01~2がより好ましい。D/(A+B)比が、上記下限値以上であれば保存後の不快な臭いをより効果的に抑制でき、上記上限値以下であれば服用性に優れた錠剤とすることができる。
【0034】
(D)成分の1回当たりの服用量は、1~500mgが好ましく、5~300mgがより好ましく、10~200mgがさらに好ましい。(D)成分の1回当たりの服用量が、上記下限値以上であれば保存後の不快な臭いをより効果的に抑制でき、上記上限値以下であれば他の有効成分を十分に含有させることができるため、1回当たりの服用量を抑えることができる。
また、1回当たりの服用量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の合計で、42~1170mgが好ましく、82~713mgがより好ましい。(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の合計の1回当たりの服用量が、上記下限値以上であれば杵付着や保存後の不快な臭いを抑制しつつ解熱鎮痛効果が十分に得られ、上記上限値以下であれば服用性に優れた錠剤とすることができる。
【0035】
<任意成分>
本発明の錠剤は、本発明の効果や保存安定性等の物性を損なわない範囲内であれば、(A)成分、(B)成分および(C)成分以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
任意成分としては、(A)成分および(B)成分以外の生理活性成分、(C)成分および(D)成分以外の添加剤などが挙げられる。
【0036】
生理活性成分としては、例えば(A)成分および(B)成分以外の解熱鎮痛成分(ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、エテンザミド、スルピリン等)が挙げられる。
また、解熱鎮痛成分以外の生理活性成分も配合可能である。解熱鎮痛成分以外の生理活性成分としては、例えば鎮静催眠成分(アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等)、鎮咳去痰成分(コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl-メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン等)、ビタミン成分(ビタミンB1およびその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2およびその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンCおよびその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジンおよびその誘導体並びにそれらの塩類等)、制酸剤(乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等)などが挙げられる。
これら生理活性成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、錠剤がカフェイン、無水カフェインおよびアリルイソプロピルアセチル尿素からなる群より選ばれる1種以上をさらに含めば、保存後の不快な臭いをより抑制でき、保存安定性のより高い錠剤が得られる。特に、効果が得られる点で、カフェインおよび無水カフェインと、アリルイソプロピルアセチル尿素とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0037】
添加剤としては、例えば結合剤、賦形剤、崩壊剤、香料、滑沢剤、甘味剤、酸味剤などが挙げられる。
結合剤としては、例えばショ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、ヒプロメロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールなどが挙げられる。
賦形剤としては、例えば乳糖、乳糖造粒物、マンニトール、コーンスターチ、L-システイン、メチルエチルセルロース、キシリトール、エリスリトール、トレハロース、マルチロール、ラクチトール、ソルビトール、マルチトール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、リン酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられる。
香料としては、例えばメントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)などが挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、タルクなどが挙げられる。
甘味剤としては、例えばサッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロースなどが挙げられる。
酸味剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸およびこれらの塩などが挙げられる。
これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、錠剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをさらに含めば、保存後の不快な臭いをより抑制でき、保存安定性のより高い錠剤が得られる。
【0038】
なお、錠剤が積層錠であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が同一層に存在する場合、任意成分は任意層のみに含まれていてもよいし、任意成分の一部が薬物層に含まれていてもよい。また、(C)成分や(D)成分の一部は任意層にも含まれていてもよい。
錠剤が積層錠であって、(A)成分と(B)成分とが別々の層に存在する場合、任意成分はA層およびB層の少なくとも一方に含まれていてもよいし、A層およびB層以外の層に含まれていてもよい。
【0039】
<水分量>
錠剤中の水分量は、錠剤の総質量に対して1~15質量%が好ましく、1.5~13質量%がより好ましく、1.5~7質量%がより好ましい。
錠剤中の水分量が上記下限値以上であれば、製造直後の錠剤硬度を良好に維持できる。一方、錠剤中の水分量が上記上限値以下であれば、保存後の不快な臭いをより効果的に抑制できる。加えて、錠剤を構成する粉体の流動性が向上し、打錠前の臼への粉体の充填性が良好となり、錠剤の質量偏差が小さくなる。
【0040】
水分量の測定法は電子水分計で、錠剤の粉砕物を120℃で10分間熱したときの乾燥減量から算出することができる。電子水分計としては、例えは株式会社島津製作所製の「MOISTURE BALANCE MOC-120H」などを用いることができる。
錠剤中の水分量は、錠剤の製造時における加水または乾燥により調整できる。なお、(A)成分としてロキソプロフェンナトリウム二水和物等の水和物を用いる場合、錠剤中の水分量には、この水和物により持ち込まれる水分量も含まれる。
【0041】
<製造方法>
本発明の錠剤は、例えば薬物層を構成する粉体(以下、「薬物含有粉体」という。)を打錠成形して薬物層を形成することで得られる。このようにして得られる錠剤は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が同一錠剤中に存在する。各成分は、公知の製造方法により得られたものでもよく、市販のものを用いてもよい。また、各成分は、原末がそのまま用いられてもよく、造粒されたものでもよい。
錠剤の製造方法としては、例えば、臼と杵とを有する打錠機を用いて、薬物含有粉体を打錠成形して錠剤を得る工程(打錠工程)を有するものが挙げられる。
【0042】
薬物含有粉体は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含有する粉体であればよく、必要に応じて任意成分を含有してもよい。
薬物含有粉体は、例えば粉体の(A)成分と、粉体の(B)成分と、粉体の(C)成分と、粉体の(D)成分との粉体混合物でもよいし、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含む造粒物でもよい。
【0043】
薬物含有粉体は、予め混合されたものでもよく、新たに調製されたものでもよい。すなわち、錠剤の製造方法は、粉体の各成分を混合して薬物含有粉体を調製する工程(粉体調製工程)を有してもよい。
【0044】
粉体調製工程は、粉体の(A)成分と、粉体の(B)成分と、粉体の(C)成分と、粉体の(D)成分とを混合して薬物含有粉体を得る。
粉体調製工程における混合方法としては特に限定されず、従来公知の粉体混合方法が挙げられる。
【0045】
粉体調製工程に用いられる各成分は、公知の製造方法により得られたものでもよく、市販のものを用いてもよい。各成分は、原末がそのまま用いられてもよく、造粒されたものでもよい。
造粒したものを用いる場合、造粒方法は公知の造粒方法を採用できる。
【0046】
打錠工程で用いられる打錠機としては、例えばロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所製、「リブラ3L」)などが挙げられる。
打錠圧、回転盤の回転速度等の打錠条件は適宜設定される。
なお、錠剤が積層錠である場合、薬物含有粉体は、臼に最初に充填されてもよく、任意層を構成する成分よりも後に充填されてもよい。
【0047】
(A)成分と(B)成分とが別々の層に存在する積層錠を製造する場合は、薬物含有粉体の代わりに、A層を構成する粉体(以下、「粉体A」ともいう。)とB層を構成する粉体(以下、「粉体B」ともいう。)とを臼に充填し、打錠すればよい。
粉体Aは、臼に最初に充填されてもよく、粉体Bよりも後に充填されてもよい。
【0048】
粉体Aは、(A)成分を含有する粉体であればよく、必要に応じて任意成分を含有してもよい。粉体Bは、(B)成分を含有する粉体であればよく、必要に応じて任意成分を含有してもよい。ただし、(C)成分および(D)成分のそれぞれが、粉体Aおよび粉体Bの少なくとも一方に含まれているものとする。特に本発明の効果が得られやすい点で、(C)成分は少なくとも粉体Aに含まれていることが好ましい。
粉体Aは、粉体の(A)成分や他の粉体の成分との粉体混合物でもよいし、(A)成分を含む造粒物でもよい。粉体Bは、粉体の(B)成分や他の粉体の成分との粉体混合物でもよいし、(B)成分を含む造粒物でもよい。
【0049】
得られた錠剤は、必要に応じてコーティング剤によりコーティング処理を施してもよい。
コーティング剤としては、崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、中でも水溶性高分子化合物や可塑剤が好ましい。
水溶性高分子化合物としては、例えばカルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、単糖類、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖等)、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、還元澱粉糖化物、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、オリゴ糖、スクロース、トレハロース、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物等)などが挙げられる。特に、製造性および防湿性に優れる点からヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリビニルアルコールが好ましい。
可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、トリアセチン、カルナウバロウ等の日本薬局方(広川書店)および医薬品添加物規格(株式会社薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。
これらコーティング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
<作用効果>
本発明によれば、(A)成分と(B)成分との組み合わせにおいて(C)成分を併用するので、錠剤を製造する際に生じる打錠時の杵付着が抑えられる。しかも、これらの組み合わせにおいて、(D)成分をさらに用いるので、高温多湿下で保存しても不快な臭いを抑制できる。
このように、本発明によれば、(A)成分と(B)成分とを含有する錠剤を製造する際に生じる打錠時の杵付着が抑えられ、しかも簡便な方法により不快な臭いが抑制された錠剤を提供できる。
【実施例
【0051】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
各実施例および比較例で使用した原料、打錠条件および評価方法は、以下の通りである。
なお、実施例1~18、24、25は参考例である。
【0052】
[使用原料]
(A)成分またはその代替品((A’)成分)として、以下に示す化合物を用いた。
・ロキソプロフェンナトリウム二水和物:大和薬品工業株式会社製、「日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物」
・イブプロフェン:BASF社製、「Ibuprofen」
【0053】
(B)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・アセトアミノフェン:岩城製薬株式会社製、「ピレチノール」
【0054】
(C)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・三二酸化鉄:癸巳化成株式会社製、「三二酸化鉄」
・黄色三二酸化鉄:癸巳化成株式会社製、「黄色三二酸化鉄」
・酸化チタン:堺化学工業株式会社製、「酸化チタン」
・酸化亜鉛:堺化学工業株式会社製、「酸化亜鉛」
【0055】
(D)成分またはその代替品((D’)成分)として、以下に示す化合物を用いた。
・結晶セルロース:旭化成ケミカルズ株式会社製、「CEOLUS UF-702」(登録商標)
・トウモロコシデンプン:松谷化学工業株式会社製、「局方松谷コーンスターチ」
・リン酸水素カルシウム:協和化学工業株式会社製、「日本薬局方無水リン酸水素カルシウムGSH」
・ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達株式会社製、「NISSO HPC SSL」
【0056】
任意成分として、以下に示す化合物を用いた。
・無水カフェイン:白鳥製薬株式会社製、「無水カフェイン0.2/0.5」
・アリルイソプロピルアセチル尿素:金剛化学株式会社製、「アリプロナール コンゴー」
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:信越化学工業株式会社製、「L-HPC LH-31」(登録商標)
・乳糖造粒物:フロイント産業株式会社製、「乳糖G」
・ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製、「ステアリン酸マグネシウム」
【0057】
[打錠条件]
・打錠機:ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所製、「リブラ3L」)
・盤回転速度:15rpm
・臼杵(実施例1~23、比較例1~3、参考例A):直径9.0mm(2段R)×12本立て、刻印無し(キャップ高さ0.1mm、R1=3.6、R2=10.5)
・臼杵(実施例24、25):直径9.5mm(2段R)×12本立て、刻印無し(キャップ高さ0.1mm、R1=3.8、R2=10)
・予圧:2kN(約20MPa、約200kg/cm
・本圧:10kN(約100MPa、約1000kg/cm
【0058】
[評価方法]
<杵付着試験>
各実施例および比較例において連続打錠した際の杵付着を目視にて確認し、下記評価基準にて評価した。2点以上を合格とした。
5点:2時間連続打錠しても、杵付着を生じない。
4点:1時間30分以上2時間未満の連続打錠で、杵付着を生じる。
3点:1時間以上1時間30分未満の連続打錠で、杵付着を生じる。
2点:30分以上1時間未満の連続打錠で、杵付着を生じる。
1点:30分未満の打錠で、杵付着を生じる。
【0059】
<臭いの評価:定量評価>
得られた錠剤をガラス瓶(4K規格瓶)に入れ、密閉した状態で50℃75%RH条件下にて6週間保存した。
保存前と保存後の錠剤について、臭いセンサー(相互薬工株式会社製、「Fragarance Sensor SF-105」)を用いて臭いの強度を測定し、保存後の臭いの強度から保存前の臭いの強度を差し引くことで、保存前後における臭いの強度の変化量を求め、以下の評価基準にて評価した。5点以上を合格とする。
7:変化量が41Hz未満。
6:変化量が41Hz以上、55Hz未満。
5:変化量が55Hz以上、70Hz未満。
4:変化量が70Hz以上、85Hz未満。
3:変化量が85Hz以上、100Hz未満。
2:変化量が100Hz以上、115Hz未満。
1:変化量が115Hz以上。
【0060】
<臭い評価:官能評価>
定量評価と同様にして錠剤を保存した。
保存後の錠剤について、成人男性5名による官能評価を実施し、以下の評価基準にて評価し、5名の平均値を求めた。4点以上を合格とする。
6:臭いを感じない。
5:ほとんど臭いを感じない。
4:やや臭いが感じられるが、服用には問題ない。
3:やや不快な臭いが感じられる。
2:不快な臭いを感じる。
1:極めて不快な臭いに変化しており、服用が憚られる。
【0061】
[実施例1~23]
混合容器に、1錠当たりの組成が表1~3に示す配合組成となるように、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と任意成分とを投入して混合した後、前記打錠条件にて打錠成形し、薬物層からなる錠剤(単層錠)を得た。
打錠時の杵付着を評価し、得られた錠剤について臭い評価を行った。結果を表1~3に示す。
【0062】
[比較例1~3]
混合容器に、1錠当たりの組成が表4に示す配合組成となるように、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分または(D’)成分とを投入して混合した後、前記打錠条件にて打錠成形し、薬物層からなる錠剤(単層錠)を得た。
打錠時の杵付着を評価し、得られた錠剤について臭い評価を行った。結果を表4に示す。
【0063】
[参考例A]
混合容器に、1錠当たりの組成が表4に示す配合組成となるように、(A’)成分と(B)成分と(C)成分とを投入して混合した後、前記打錠条件にて打錠成形し、薬物層からなる錠剤(単層錠)を得た。
打錠時の杵付着を評価し、得られた錠剤について臭い評価を行った。結果を表4に示す。
【0064】
[実施例24、25]
混合容器に、1錠当たりの組成が表5に示す配合組成となるように、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と任意成分とを投入して混合した後、前記打錠条件にて打錠成形し、薬物層からなる錠剤(単層錠)を得た。
打錠時の杵付着を評価し、得られた錠剤について臭い評価を行った。結果を表5に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
表中、「10000×C/錠剤比」は、10000×(C)成分/錠剤で表される質量比である。「B/A比」は、(B)成分/(A)成分で表される質量比である。「B/A’比」は、(B)成分/(A’)成分で表される質量比である。「10000×C/(A+B)比」は、10000×(C)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比である。「10000×C/(A’+B)比」は、10000×(C)成分/((A’)成分+(B)成分)で表される質量比である。「D/(A+B)比」は、(D)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比である。「D’/(A+B)比」は、(D’)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比である。「D/(A’+B)比」は、(D)成分/((A’)成分+(B)成分)で表される質量比である。「(A)+(B)」は、錠剤中の(A)成分および(B)成分の合計含有量の割合である。「(A’)+(B)」は、錠剤中の(A’)成分および(B)成分の合計含有量の割合である。「(A)+(B)+(C)+(D)」は、錠剤中の(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の合計含有量の割合である。「(A’)+(B)+(C)+(D)」は、錠剤中の(A’)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の合計含有量の割合である。「(A)+(B)+(C)+(D’)」は、錠剤中の(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D’)成分の合計含有量の割合である。
【0071】
表1~3、5の結果より、各実施例では、打錠開始から1時間30分未満では、杵付着は生じなかった。中でも、(C)成分として三二酸化鉄または黄色三二酸化鉄を用いた場合には、打錠開始から2時間打錠しても杵付着が生じなかった。
また、各実施例で得られた錠剤は、保存後の不快な臭いが抑制されたものであった。
【0072】
一方、表4の結果より、(C)成分を用いなかった比較例1の場合、保存後の不快な臭いは感じられなかったが、打錠開始から30分以上1時間未満の連続打錠により杵付着が生じた。
(D)成分を含まない比較例2の錠剤および(D)成分の代わりにヒドロキシプロピルセルロースを含む比較例3の錠剤は、保存すると不快な臭いが感じられた。
なお、(A’)成分としてイブプロフェンと(B)成分と(C)成分との組み合わせの場合は、(D)成分を配合しなくても保存後の不快な臭いは感じられなかった(参考例A)。
これらの結果からも明らかなように、保存後の不快な臭いは、(A)成分と(B)成分との組み合わせにおいて(C)成分を添加すると発生する。
このように、本発明によれば、(A)成分、(B)成分および(C)成分に(D)成分を添加するという簡便な方法により、保存後の錠剤の不快な臭いを抑制できた。