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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】SiCエピタキシャル成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20220121BHJP
   C23C 16/46 20060101ALI20220121BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20220121BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20220121BHJP
   C30B 25/10 20060101ALI20220121BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/46
C23C16/458
C30B29/36 A
C30B25/10
H01L21/68 N
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017225658
(22)【出願日】2017-11-24
(65)【公開番号】P2019096764
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】本山 和道
(72)【発明者】
【氏名】奥野 好成
(72)【発明者】
【氏名】梅田 喜一
(72)【発明者】
【氏名】深田 啓介
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533033(JP,A)
【文献】特開平09-092707(JP,A)
【文献】特表2009-510262(JP,A)
【文献】特開2000-260720(JP,A)
【文献】特開平10-012364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/46
C23C 16/458
C30B 29/36
C30B 25/10
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを載置でき、前記ウェハが載置された際に前記ウェハと接するウェハ設置領域を含む載置面を有するサセプタと、
前記サセプタの前記載置面と反対側に、前記サセプタと離間して設けられたヒータと、
平面視で前記ウェハ設置領域の外周部と重なる位置において、前記サセプタの前記載置面と対向する裏面に接触する円環状の放射部材と、を備え、
前記放射部材は、前記サセプタより放射率が高く、前記ヒータから見て一部が露出しており、
前記放射部材と前記ウェハ設置領域とが平面視で同心円状に配置され、
前記放射部材の外周端と前記ウェハ設置領域の外周端との径方向の距離が、前記ウェハ設置領域の直径の1/6以下である、SiCエピタキシャル成長装置。
【請求項2】
前記ヒータと前記ウェハ設置領域とが平面視で同心円状に配置され、
前記ヒータの外周端と前記ウェハ設置領域の外周端との径方向の距離が、前記ウェハ設置領域の直径の1/12以下である、請求項1に記載のSiCエピタキシャル成長装置。
【請求項3】
前記放射部材の放射率が、前記サセプタの放射率の1.5倍以上である、請求項1又は2に記載のSiCエピタキシャル成長装置。
【請求項4】
前記サセプタの中央部を前記裏面から支持する中央支持部をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載のSiCエピタキシャル成長装置。
【請求項5】
前記放射部材の径方向の幅が、前記ウェハ設置領域の半径の1/10以上1/3以下である、請求項に記載のSiCエピタキシャル成長装置。
【請求項6】
前記放射部材が、前記サセプタに嵌合されている、請求項又はに記載のSiCエピタキシャル成長装置。
【請求項7】
前記サセプタの外周端を前記裏面から支持する外周支持部をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載のSiCエピタキシャル成長装置。
【請求項8】
前記放射部材の径方向の幅が、前記ウェハ設置領域の半径の1/200以上1/5以下である、請求項に記載のSiCエピタキシャル成長装置。
【請求項9】
前記放射部材が、前記ヒータから見て一部が露出した状態で、前記サセプタと前記外周支持部との間に挟まれて保持される、請求項またはに記載のSiCエピタキシャル成長装置。
【請求項10】
前記放射部材の前記ヒータ側の面に凹凸が形成されている、請求項1~のいずれか一項に記載のSiCエピタキシャル成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCエピタキシャル成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、また、バンドギャップが3倍大きく、さらに、熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有する。そのため、炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。
【0003】
SiCデバイスの実用化の促進には、高品質のSiCエピタキシャルウェハ、及び高品質のエピタキシャル成長技術の確立が不可欠である。
【0004】
SiCデバイスは、昇華再結晶法等で成長させたSiCのバルク単結晶から加工して得られたSiC単結晶基板上に、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)等によってデバイスの活性領域となるエピタキシャル層(膜)を成長させたSiCエピタキシャルウェハを用いて作製される。なお、本明細書において、SiCエピタキシャルウェハはエピタキシャル膜を形成後のウェハを意味し、SiCウェハはエピタキシャル膜を形成前のウェハを意味する。
【0005】
SiCのエピタキシャル膜は、1500℃程度の極めて高温で成長する。成長温度は、エピタキシャル膜の膜厚、性質に大きな影響を及ぼす。例えば、特許文献1には、熱伝導率の違いによりエピタキシャル成長時のウェハの温度分布を均一にできる半導体製造装置が記載されている。また特許文献2には、ウェハを支持部で支持することで、エピタキシャル成長時のウェハの温度分布を均一にできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-129764号公報
【文献】特開2012-44030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SiCエピタキシャルウェハを6インチ以上のサイズに大型化する試みが進められている。このような大型のSiCエピタキシャルウェハを製造する際に、特許文献1及び2に記載の半導体装置では、ウェハの面内方向の温度差を十分抑制できなかった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、エピタキシャル成長時の温度分布を均一にできるSiCエピタキシャル成長装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ウェハの外周部の温度が中央部の温度より低くなることを見出した。そこで、ウェハが載置されるサセプタの裏面の所定の位置に、吸熱性及び放熱性に優れる放射部材を接触させることで、エピタキシャル成長時の温度分布を均一にできることを見出した。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0010】
(1)第1の態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、ウェハを載置できる載置面を有するサセプタと、前記サセプタの前記載置面と反対側に、前記サセプタと離間して設けられたヒータと、平面視で前記サセプタに載置されるウェハの外周部と重なる位置において、前記サセプタの前記載置面と対向する裏面に接触する環状の放射部材と、を備え、前記放射部材は、前記サセプタより放射率が高く、前記ヒータから見て一部が露出している。
【0011】
(2)上記態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、前記ヒータと前記サセプタに載置されるウェハとが平面視で同心円状に配置され、前記ヒータの外周端と前記サセプタに載置されるウェハの外周端との径方向の距離が、前記ウェハの直径の1/12以下であってもよい。
【0012】
(3)上記態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、前記放射部材と前記サセプタに載置されるウェハとが平面視で同心円状に配置され、前記放射部材の外周端と前記サセプタに載置されるウェハの外周端との径方向の距離が、前記ウェハの直径の1/6以下であってもよい。
【0013】
(4)上記態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、前記放射部材の放射率が、前記サセプタの放射率の1.5倍以上であってもよい。
【0014】
(5)上記態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、前記サセプタの中央部を前記裏面から支持する中央支持部をさらに備えてもよい。
【0015】
(6)上記態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、前記放射部材の径方向の幅が、前記サセプタに載置されるウェハの半径の1/10以上1/3以下であってもよい。
【0016】
(7)上記態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、前記放射部材が、前記サセプタに嵌合されていてもよい。
【0017】
(8)上記態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、前記サセプタの外周端を前記裏面から支持する外周支持部をさらに備えてもよい。
【0018】
(9)上記態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、前記放射部材の径方向の幅が、前記サセプタに載置されるウェハの半径の1/200以上1/5以下であってもよい。
【0019】
(10)上記態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、前記放射部材が、前記ヒータから見て一部が露出した状態で、前記サセプタと前記外周支持部との間に挟まれて保持されていてもよい。
【0020】
(11)上記態様にかかるSiCエピタキシャル成長装置は、前記放射部材の前記ヒータ側の面に凹凸が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
また本発明の一態様に係るSiCエピタキシャル成長装置によれば、エピタキシャル成長時の温度分布を均一にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置の模式図である。
図2】SiCエピタキシャル成長装置の要部を拡大した断面模式図である。
図3】第1実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置において、放射部材がサセプタに嵌合した一例の要部を拡大した模式図である。
図4】第1実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置において、放射部材の一面に凹凸が形成されている一例の要部を拡大した模式図である。
図5】放射部材の一面側を平面視した図である。
図6】第2実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置の要部を拡大した断面模式図である。
図7】第2実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置において、放射部材がサセプタと外周支持部との間に挟まれて保持された一例の要部を拡大した模式図である。
図8】実施例1~3及び比較例1のウェハ表面の温度分布を示す図である。
図9】実施例2、実施例4及び比較例1のウェハ表面の温度分布を示す図である。
図10】実施例4、比較例1及び比較例2のウェハ表面の温度分布を示す図である。
図11】実施例4、実施例5及び比較例1のウェハ表面の温度分布を示す図である。
図12】実施例6、実施例7及び比較例1のウェハ表面の温度分布を示す図である。
図13】実施例8、実施例9及び比較例3のウェハ表面の温度分布を示す図である。
図14】実施例10及び比較例3のウェハ表面の温度分布を示す図である。
図15】実施例10、比較例3及び比較例4のウェハ表面の温度分布を示す図である。
図16】実施例10、実施例11及び比較例4のウェハ表面の温度分布を示す図である。
図17】実施例12、実施例13及び比較例5のウェハ表面の温度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0024】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置100の断面模式図である。図1に示すSiCエピタキシャル成長装置100は、成膜空間Kを形成するチャンバー1を備える。チャンバー1は、ガスを供給するガス供給口2と、ガスを排出するガス排出口3とを有する。成膜空間K内には、サセプタ10とヒータ12と放射部材14とが設けられている。またサセプタ10は、中央支持部16によって支持される。以下、サセプタ10の載置面に対して垂直な方向をz方向、載置面で直交する任意の二方向をx方向、y方向とする。
【0025】
図2は、SiCエピタキシャル成長装置100の要部を拡大した断面模式図である。図2では、理解を容易にするためにウェハWを一緒に図示している。
【0026】
サセプタ10は、載置面10aにウェハWを載置できる。サセプタ10は、公知のものを用いることができる。サセプタ10は、1500℃を超える高温に対して耐熱性を有し、原料ガスと反応性が低い材料により構成される。例えば、Ta、TaC、TaCコートカーボン、TaCコートTa、黒鉛等が用いられる。成膜温度領域において、TaC及びTaCコートカーボンの放射率は0.2~0.3程度であり、黒鉛の放射率は0.7程度である。
【0027】
ヒータ12は、サセプタ10の載置面10aと対向する裏面10b側に離間して設けられている。ヒータ12は公知のものを用いることができる。ヒータ12は、z方向からの平面視で、サセプタ10及びウェハWに対して同心円状に配置されていることが好ましい。サセプタ10及びウェハWに対して同じ中心軸に対して同心円状に配置されることで、ウェハWの均熱性を高めることができる。
【0028】
ヒータ12の外周端12cとウェハWの外周端Wcとの径方向の距離は、ウェハWの直径の1/12以下であることが好ましい。またヒータ12の外周端12cとウェハWの外周端Wcとは、z方向からの平面視で一致していることがより好ましい。ヒータ12の径方向の大きさがウェハWより小さいと、ウェハWの表面温度の均熱性が低下する。またヒータ12の径方向の大きさがウェハWより大きいと、z方向からの平面視でヒータ12が外周方向に突出することになり、SiCエピタキシャル成長装置100が大型化する。装置を大型化することは、費用が増大するため望ましくない。
【0029】
放射部材14は、サセプタ10より放射率が高い材料により構成されている。放射部材14の放射率は、サセプタ10の放射率の1.5倍以上であることが好ましく、7倍以下であることが好ましい。例えば、サセプタ10がTaCコートカーボン(放射率0.2)の場合、放射部材14には黒鉛(放射率0.7)、SiCコートカーボン(放射率0.8)、SiC(放射率0.8)等を用いる。放射率は吸熱率と等しく、放射部材14はサセプタ10等と比較して吸熱する。
【0030】
放射部材14は、中央に開口部を有する環状の部材である。放射部材14は、z方向からの平面視でウェハWの外周部と重なる位置にある。ここで、ウェハWの外周部とは、ウェハWの外周端Wcから10%内側の領域を意味する。放射部材14は、z方向からの平面視でウェハWの外周部の少なくとも一部と重なっていればよい。吸熱性に優れる放射部材14がウェハWの外周側に位置することで、ウェハWの外周部の温度が中央部に対して低くなることを抑制できる。
【0031】
放射部材14は、ヒータ12から見て一部が露出した状態で、サセプタ10の裏面10bに接触している。放射部材14の一部が露出していることで、ヒータ12からの輻射熱を効率的に吸熱できる。また放射部材14は、サセプタ10の裏面10bと接触していることで、熱伝導によりウェハWの外周部の温度を高めることができる。放射部材14がサセプタ10の裏面10bと接触していないと、外周部の温度を充分に高めることができない。放射部材14がサセプタ10の裏面10bに放射される放射光を遮蔽し、熱吸収効率が低下するためと考えられる。またサセプタ10と放射部材14とが非接触であることで、放射部材14が吸熱した熱を効率的にサセプタ10へ伝えることができないためと考えられる。
【0032】
放射部材14の外周端14cとウェハWの外周端Wcとの径方向の距離は、ウェハWの直径の1/6以下であることが好ましい。また放射部材14の外周端14cとウェハWの外周端Wcとは、z方向からの平面視で一致していることがより好ましい。エピタキシャル成長時にウェハWの面内で外周端Wcが低温になる。放射部材14がウェハWの外周端Wcに近い位置にあることで、ウェハWの外周端Wcの温度が低くなることを抑制できる。
【0033】
サセプタ10が中央支持部16により支持されている場合において、放射部材14の径方向の幅L1は、ウェハWの半径の1/10以上1/3以下であることが好ましい。放射部材14の径方向の幅L1が当該範囲内であれば、ウェハWの面内方向の温度をより均一にすることができる。
【0034】
放射部材14は、サセプタ10の裏面10bに接着してもよいし、サセプタ10に嵌合してもよい。図3は、第1実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置において、放射部材14がサセプタ10に嵌合した一例の要部を拡大した模式図である。
【0035】
図3に示すサセプタ10は、第1部材10Aと第2部材10Bとからなる。第1部材10Aは、主要部10A1と突出部10A2とを有する。突出部10A2は、主要部10A1から径方向に突出する。第2部材10Bは、主要部10B1と突出部10B2とを有する。突出部10B2は、主要部10B1からz方向に突出する。
【0036】
また放射部材14も第1部14Aと第2部14Bからなる。第1部14Aは放射部材14の主要な部分であり、第2部14Bは第1部14Aから径方向に延在する。放射部材14の第2部14Bは、第1部材10Aの突出部10A2と第2部材10Bの主要部10B1との間の隙間に嵌合される。放射部材14は、放射部材14の自重でサセプタ10に支持されている。この場合、放射部材14の径方向の幅L1は、放射部材14のサセプタ10の裏面10bに露出している部分の幅を意味する。接着剤を用いずに放射部材14とサセプタ10とを接触させると、接着剤が不要になる。接着剤を使用することも可能だが、線熱膨張率の差により応力が発生し、剥離する場合がある。そのため、接着剤によらない方法で、放射部材14は固定されることが望ましい。
【0037】
図4は、第1実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置において、放射部材14の一面14bに凹凸が形成されている一例の要部を拡大した模式図である。図4に示すよう放射部材14は、凹部15を複数備える。放射部材14の一面14bに凹凸形状が形成されていると、放射部材14の実効的な放射率が高まる。ヒータ12からの放射光(輻射熱)を吸収する面積が広がるためである。放射部材14の一面14bが平坦面とした場合の面積をSとし、放射部材14の一面14bが実際の面積をSとした場合に、面積比率(S/S)は2以上であることが好ましく、16以上であることがより好ましい。
【0038】
また凹部15のアスペクト比は、1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。凹部15のアスペクト比が大きいと、凹部15内に入射した放射光が凹部15から抜け出すことができなくなり、吸熱効率をより高めることができる。
【0039】
図5は、放射部材14の一面14b側を平面視した図である。図5の座標で示すr方向が径方向であり、θ方向が周方向である。図5に示すように、凹部15の形状は特に問わない。例えば、図5(a)に示す凹部15Aは同心円状に形成されている。図5(b)に示す凹部15Bは、中心から放射状に形成されている。図5(c)に示す凹部15Cは、周方向及び径方向に点在している。図5(d)に示す凹部15Dは、外周に向うほど間隔が狭くなる同心円状に形成されている。凹部15Dの間隔が外周側ほど狭いと、外周端の温度を効率的に高めることができる。
【0040】
中央支持部16は、サセプタ10の中央をサセプタ10の裏面10b側から支持する。中央支持部16は、エピタキシャル成長温度に対して耐熱性のある材料により構成される。中央支持部16は中央からz方向に延在する軸として回転可能でもよい。中央支持部16を回転させることで、ウェハWを回転させながらエピタキシャル成長を行うことができる。
【0041】
上述のように、第1実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置100によれば、ウェハWの面内方向の均熱性を高めることができる。放射部材14が吸熱し高温になることで、ウェハWの外周部の温度が低下することが抑制される。
【0042】
「第2実施形態」
図6は、第2実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置101の要部を拡大した断面模式図である。第2実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置101は、サセプタ10が中央支持部16ではなく、外周支持部18によって支持されている点のみが異なる。その他の構成は、第1実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置100と同様であり、同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省く。
【0043】
外周支持部18は、サセプタ10の外周をサセプタ10の裏面10b側から支持する。外周支持部18は、中央支持部16と同様の材料により構成される。
【0044】
第2実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置101は、放射部材14の径方向の幅L2の好ましい範囲が、第2実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置101と異なる。サセプタ10が外周支持部18によって支持されることにより、外周支持部18もヒータからの輻射を受けるためである。
【0045】
サセプタ10が外周支持部18により支持されている場合において、放射部材14の径方向の幅L2は、ウェハWの半径の1/200以上1/5以下であることが好ましい。放射部材14の径方向の幅L2が当該範囲内であれば、ウェハWの面内方向の温度をより均一にすることができる。外周支持部18は、ヒータ12からの輻射を受け、発熱する。そのため、中央支持部16によりサセプタ10を支持する場合と比較して、放射部材14の径方向の幅L2を小さくすることができる。
【0046】
図7は、第2実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置において、放射部材14がサセプタ10と外周支持部18との間に挟まれて保持された一例の要部を拡大した模式図である。図6に示す外周支持部18は、支柱18Aと突出部18Bとを有する。支柱18Aは、z方向に延在する部分であり、外周支持部18の主要部である。突出部18Bは、支柱18Aから面内方向に突出した部分である。突出部18Bには嵌合溝18B1が設けられている。
【0047】
外周支持部18でサセプタ10を支持すると、外周支持部18でサセプタ10との間に嵌合溝18B1により隙間ができる。この隙間に放射部材14を挿入することで、放射部材14は、自重でサセプタ10と外周支持部18との間に支持される。
【0048】
第2実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置101において、ヒータ12の外周端12cとウェハWの外周端Wcとの位置関係、及び、放射部材14の外周端14cとウェハWの外周端Wcとの位置関係は、第1実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置100と同様に設定できる。また放射部材14のヒータ12側の面に凹凸を設けてもよい。
【0049】
上述のように、第2実施形態にかかるSiCエピタキシャル成長装置101によれば、ウェハWの面内方向の均熱性を高めることができる。放射部材14が吸熱し高温になることで、ウェハWの外周部の温度が低下することが抑制される。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例
【0051】
(実施例1)
図2に示す構成のSiCエピタキシャル成長装置を用いた際のウェハ表面の温度状態をシミュレーションにより求めた。シミュレーションには、汎用FEM熱解析ソフトウエアANSYS Mechanicalを用いた。
【0052】
シミュレーションは、サセプタ10の放射率を0.2(TaCコートカーボン相当)とし、放射部材14の放射率を0.8(SiCコートカーボン相当)とした。放射部材14の径方向の幅L1は10mmとした。またz方向からの平面視において、ウェハWの外周端Wc、放射部材14の外周端14c及びヒータ12の外周端12cは一致させた。またヒータ12とサセプタ10の裏面10bとの距離は、15mmとした。当該条件の基、ウェハの表面温度の面内分布を測定した。
【0053】
(実施例2)
実施例2は、放射部材14の径方向の幅L1を20mmとした点が実施例1と異なる。その他の条件は実施例1と同様にした。
【0054】
(実施例3)
実施例3は、放射部材14の径方向の幅L1を30mmとした点が実施例1と異なる。その他の条件は実施例1と同様にした。
【0055】
(比較例1)
比較例1は、放射部材14を設けなかった点が実施例1と異なる。その他の条件は実施例1と同様にした。
【0056】
図8は、実施例1~3及び比較例1のウェハ表面の温度分布を示す図である。横軸がウェハの中央からの径方向の位置であり、縦軸がその地点でのウェハの表面温度である。図8に示すように、放射部材14をサセプタ10の裏面に接触させることで、ウェハの外周側での温度低下が抑制された。
【0057】
(実施例4)
実施例4は、放射部材14の放射率を0.3とした点が実施例2と異なる。その他の条件は、実施例2と同様とした。
【0058】
図9は、実施例2、実施例4及び比較例1のウェハ表面の温度分布を示す図である。横軸がウェハの中央からの径方向の位置であり、縦軸がその地点でのウェハの表面温度である。図9に示すように、放射率の小さい放射部材14を用いた場合でも、ウェハの外周側での温度低下が抑制された。
【0059】
(比較例2)
比較例2は、放射部材14とサセプタ10とを接触させていない点が、実施例4と異なる。その他の条件は、実施例4と同様とした。
【0060】
図10は、実施例4、比較例1及び比較例2のウェハ表面の温度分布を示す図である。横軸がウェハの中央からの径方向の位置であり、縦軸がその地点でのウェハの表面温度である。図10に示すように、放射部材14を接触させない比較例2は、ウェハの外周側での温度低下が抑制されなかった。
【0061】
(実施例5)
実施例5は、放射部材14のヒータ側の面に凹凸形状を設けた点が、実施例4と異なる。その他の条件は実施例4と同様とした。凹凸は、溝幅及び間隔0.2mmで、深さ1.0mmで、20本の溝を設けた。
【0062】
図11は、実施例4、実施例5及び比較例1のウェハ表面の温度分布を示す図である。横軸がウェハの中央からの径方向の位置であり、縦軸がその地点でのウェハの表面温度である。図11に示すように、放射部材14に凹凸形状を設けることで、ウェハの外周側での温度低下がより抑制された。
【0063】
(実施例6)
実施例6は、図3に示す構成のSiCエピタキシャル成長装置を用い、放射部材14をサセプタ10に嵌合させた点が実施例1と異なる。放射部材14の径方向の幅L1は、ヒータ12側に表出している部分の幅10mmとした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0064】
(実施例7)
実施例7は、放射部材14の径方向の幅L1を20mmとした点が実施例6と異なる。その他の条件は実施例6と同様とした。
【0065】
図12は、実施例6、実施例7及び比較例1のウェハ表面の温度分布を示す図である。横軸がウェハの中央からの径方向の位置であり、縦軸がその地点でのウェハの表面温度である。図12に示すように、図3に示す構成でも、放射部材14をサセプタ10の裏面に接触させることで、ウェハの外周側での温度低下が抑制された。
【0066】
表1に、検討結果をまとめた。面内温度差dTは、ウェハ面内における温度の最大値と最小値との温度差を意味する。
【0067】
【表1】
【0068】
(実施例8)
図6に示す構成のSiCエピタキシャル成長装置を用いた際のウェハ表面の温度状態をシミュレーションにより求めた。すなわち、サセプタを中央支持部16で支持せずに外周支持部18で支持した点が実施例1と異なる。放射部材14の径方向の幅L2は0.5mmとした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0069】
(実施例9)
実施例2は、放射部材14の径方向の幅L2を1mmとした点が実施例8と異なる。その他の条件は実施例8と同様にした。
【0070】
(比較例3)
比較例3は、放射部材14を設けなかった点が実施例8と異なる。その他の条件は実施例1と同様にした。
【0071】
図13は、実施例8、実施例9及び比較例3のウェハ表面の温度分布を示す図である。横軸がウェハの中央からの径方向の位置であり、縦軸がその地点でのウェハの表面温度である。図13に示すように、図6に示す構成のSiCエピタキシャル成長装置においても、放射部材14をサセプタ10の裏面に接触させることで、ウェハの外周側での温度低下が抑制された。
【0072】
(実施例10)
実施例10は、放射部材14の放射率を0.3とし、放射部材14の径方向の幅L2を2mmした点が実施例8と異なる。その他の条件は、実施例8と同様とした。
【0073】
(実施例11)
実施例11は、放射部材14の径方向の幅L2を20mmした点が実施例10と異なる。その他の条件は、実施例10と同様とした。
【0074】
図14は、実施例10、実施例11及び比較例3のウェハ表面の温度分布を示す図である。横軸がウェハの中央からの径方向の位置であり、縦軸がその地点でのウェハの表面温度である。図14に示すように、放射率の小さい放射部材14を用いた場合でも、ウェハの外周側での温度低下が抑制された。
【0075】
(比較例4)
比較例4は、放射部材14とサセプタ10とを接触させていない点が、実施例10と異なる。その他の条件は、実施例10と同様とした。
【0076】
図15は、実施例10、比較例3及び比較例4のウェハ表面の温度分布を示す図である。横軸がウェハの中央からの径方向の位置であり、縦軸がその地点でのウェハの表面温度である。図15に示すように、放射部材14を接触させない比較例4は、ウェハの外周側での温度低下を充分抑制できなかった。
【0077】
(実施例12)
実施例12は、放射部材14のヒータ側の面に凹凸形状を設けた点が、実施例10と異なる。その他の条件は実施例10と同様とした。凹凸は、溝幅及び間隔0.1mmで、深さ0.2mmで、5本の溝を設けた。
【0078】
図16は、実施例10、実施例12及び比較例4のウェハ表面の温度分布を示す図である。横軸がウェハの中央からの径方向の位置であり、縦軸がその地点でのウェハの表面温度である。図16に示すように、放射部材14に凹凸形状を設けることで、ウェハの外周側での温度低下がより抑制された。
【0079】
(実施例13)
実施例13は、図7に示す構成のSiCエピタキシャル成長装置を用い、放射部材14をサセプタ10に嵌合させた点が実施例8と異なる。ヒータ12側に表出している放射部材14の径方向の幅L2は、0.5mmとした。その他の条件は実施例8と同様とした。
【0080】
(実施例14)
実施例14は、放射部材14の径方向の幅L2を1mmとした点が実施例13と異なる。その他の条件は実施例13と同様とした。
【0081】
(比較例5)
比較例5は、図7に示す構成のSiCエピタキシャル成長装置を用い、放射部材14を設けなかった点が実施例13と異なる。その他の条件は実施例13と同様とした。
【0082】
図17は、実施例13、実施例14及び比較例5のウェハ表面の温度分布を示す図である。横軸がウェハの中央からの径方向の位置であり、縦軸がその地点でのウェハの表面温度である。図17に示すように、図7に示す構成でも、放射部材14をサセプタ10の裏面に接触させることで、ウェハの外周側での温度低下が抑制された。
【0083】
表2に、これらの結果をまとめた。
【0084】
【表2】
【符号の説明】
【0085】
1 チャンバー
2 ガス供給口
3 ガス排出口
10 サセプタ
10a 載置面
10b 裏面
10A 第1部材
10A1 主要部
10A2 突出部
10B 第2部材
10B1 主要部
10B2 突出部
12 ヒータ
14 放射部材
14A 第1部
14B 第2部
14b 一面
15、15A、15B、15C、15D 凹部
12c、14c、Wc 外周端
16 中央支持部
18 外周支持部
18A 支柱
18B 突出部
18B1 嵌合溝
100、101 SiCエピタキシャル成長装置
W ウェハ
K 成膜空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17