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▶ コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】置換トリアジンおよびこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/30 20060101AFI20220204BHJP
   C07C 255/57 20060101ALI20220204BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
C07C253/30
C07C255/57
C07B61/00 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017566391
(86)(22)【出願日】2016-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2016064305
(87)【国際公開番号】W WO2016207158
(87)【国際公開日】2016-12-29
【審査請求日】2019-06-18
(31)【優先権主張番号】15173235.1
(32)【優先日】2015-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ロール,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】シオヴェッタ,ジュゼッペ
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-004782(JP,A)
【文献】特開2004-043678(JP,A)
【文献】特表2005-533858(JP,A)
【文献】特表2006-502109(JP,A)
【文献】特表2013-514380(JP,A)
【文献】国際公開第2014/096648(WO,A1)
【文献】特表2018-526328(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02774921(EP,A1)
【文献】C17H15CL6N3O2 - PUBCHEM,PUBCHEM COMPOUND; NCBI,2015年02月13日,http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/89215661,ACCESSION NO:CID 89215661
【文献】Reinhold Dieing et al.,Soluble Substituted μ-Oxo(phthalocyaninato)iron(III) Dimers,Chemische Berichte ,1995年,128,pp. 589-598
【文献】Krasik, P.,Synthesis of Sterically Hindered Esters via Titanium Catalyzed Transesterification,Tetrahedron Letters,1998年,39,pp. 4223-4226
【文献】MAHABALESHWARA SUBRAO; DAKSHINA MURTHY POTUKUCHI; GIRISH SHARADA RAMACHANDRA; ET AL,NOVEL BIPHENYL-SUBSTITUTED 1,2,4-OXADIAZOLE FERROELECTRIC LIQUID CRYSTALS: SYNTHESIS AND 以下備考,BEILSTEIN JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,2015年02月11日,VOL:11,PAGE(S):233 - 241,http://dx.doi.org/10.3762/bjoc.11.26,CHARACTERIZATION
【文献】MARKWARDT F; NEULAND P; KLOECKING H P,UEBER DIE ANTIFIBRINOLYTISCHE WIRKUNG VON ESTERN DER 4-AMINOMETHYLBENTOESAEURE (PAMBA),DIE PHARMAZIE: AN INTERNATIONAL JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIE,ドイツ,GOVI VERLAG PHARMAZEUTISCHER VERLAG GMBH,1966年,VOL:21,PAGE(S):345 - 348
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C255/57
C07C253/30
C07D251/00-251/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IV)のパラ-二置換ベンゾニトリルを製造する方法であって
【化1】

(式中、R、R、RおよびRがそれぞれ独立して水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルチオ、アルキルセレノであり、RとRと、および/またはRとRとが結合して、2個までのヘテロ原子で置換されていてもよい3~5員の飽和または不飽和のブリッジを形成してもよく、Rが直鎖C~C20アルキルであり、ハロゲンおよび/またはC~C10アルキルおよび/またはC~C10アルコキシにより任意の様式で置換されていてもよく、6個までの炭素原子が酸素で置き換えられていてもよく、この場合、少なくとも2個の炭素原子が2個の酸素原子の間に存在し、前記R部分が少なくとも2個の炭素原子で始まり、前記直鎖C~C20アルキル部分の末端メチル基が非置換であり、Rはメチルまたはエチルまたは異性体プロピルであり、Aは、化合物(III)のものに対応する、チタン(IV)またはジルコニウム(IV)アルカノエートである触媒である)、成分(III)を過剰に使用するワンポット法において、成分(V)、(III)および(IV)が、圧力および温度を調節することにより、3つの工程で前述の順序で蒸留除去され、化合物(V)と(III)との沸点の差および化合物(III)と(IV)との沸点の差がいずれも50℃以上である方法。
【請求項2】
Xがハロゲンであり、R、R、RおよびRがそれぞれ独立して水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルチオ、アルキルセレノであり、RとRと、および/またはRとRとが結合して、2個までのヘテロ原子で置換されていてもよい3~5員の飽和または不飽和のブリッジを形成してもよく、Rが直鎖C~C20アルキルであり、ハロゲンおよび/またはC~C10アルキルおよび/またはC~C10アルコキシにより任意の様式で置換されていてもよく、6個までの炭素原子が酸素で置き換えられていてもよく、この場合、少なくとも2個の炭素原子が2個の酸素原子の間に存在し、前記R部分が少なくとも2個の炭素原子で始まり、前記直鎖C~C20アルキル部分の末端メチル基が非置換であることを特徴とする式(I)の化合物
【化2】

を、第1工程において式(IV)のパラ-二置換ベンゾニトリルを調製するワンポット法を用いる工程、第2工程において、得られた前記パラ-二置換ベンゾニトリルとトリハロアセトニトリルとを反応させる工程を含む請求項1に記載の方法を使用することによって製造する方法。
【請求項3】
が、直鎖C~C20アルキルであり、ハロゲンおよび/またはC~Cアルキルおよび/またはC~Cアルコキシにより任意の様式で置換されていてもよく、6個までの炭素原子が酸素で置き換えられていてもよく、この場合、少なくとも2個の炭素原子が2個の酸素原子の間に存在し、前記R部分が少なくとも2個の炭素原子で始まり、前記直鎖C~C20アルキル部分の末端メチル基が非置換であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
Xが塩素であり、R、R、RおよびRがそれぞれHであることを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の芳香族4,6-ビス-トリクロロメチル-s-トリアジン-2-イル化合物、式(I)の化合物を得るための前駆体としてパラ-二置換ベンゾニトリルを製造する方法、および式(I)の化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の優先日に未公開の欧州特許出願第13198913.9号明細書は、ポリウレタンマトリックスポリマー、アクリレート系書き込みモノマー、ならびに2つの共開始剤および色素を含む光開始剤を含む感光性フォトポリマーを開示している。フォトポリマーの使用は、ホログラフィック露光によって生成される屈折率変調Δnによって明白に判定される。ホログラフィック露光では、信号光ビームおよび参照光ビームの干渉場(最も単純な場合には2つの平面波の干渉場)は、干渉場における高強度の軌跡において、例えば、高屈折率のアクリレートなどの書き込みモノマーの局所的な光重合によって屈折率格子にマッピングされる。フォトポリマー(ホログラム)内の屈折率格子は、信号光ビームのすべての情報を含む。参照光ビームのみでホログラムを照らすと、信号が再構成される。入射された参照光の強度と比較して、このようにして再構成された信号の強度は、次のように回折効率DEと呼ばれる。
【0003】
2つの平面波の重ね合わせから生じる最も単純なホログラムの場合、DEは、再構成時に回折される光の強度と、回折光および非回折光の強度の合計との比である。DEが高いほど、固定された輝度で信号を視覚化するのに必要な参照光の量に関してホログラムの効率が高くなる。
【0004】
ホログラムについて非常に高いΔnおよびDEを実現するために、フォトポリマー配合物のマトリックスポリマーおよび書き込みモノマーは、原則として、屈折率に非常に大きな差があるように選択されるべきである。これを実現する1つの可能な方法は、非常に低い屈折率を有するマトリックスポリマーおよび非常に高い屈折率を有する書き込みモノマーを使用することである。低屈折率の適切なマトリックスポリマーは、例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応によって得ることができるポリウレタンである。
【0005】
しかし、高いDEおよびΔn値に加えて、フォトポリマー配合物からのホログラフィック媒体のための別の重要な要件は、マトリックスポリマーが最終媒体中で高度に架橋されることである。架橋度が低すぎると、媒体は十分な安定性を欠く。この1つの結果は、媒体に刻まれたホログラムの品質がかなり低下することである。最悪の場合、ホログラムはその後破壊されることさえある。
【0006】
特に、フォトポリマー配合物からのホログラフィック媒体の大規模な工業的生産のためには、感光性が、屈折率変調を失うことなく任意の所与のレーザー光源で大面積露光を達成するのに十分であることがさらに非常に重要である。特に、ここで適切な光開始剤の選択は、フォトポリマーの特性にとって決定的に重要である。
【0007】
しかし、ホログラムの効率的な形成は常に単位面積当たりの特定の最小限の光を必要とし、技術的に利用可能なレーザー出力は限られているため、大面積露光の場合には、連続的なレーザー光源を使用するホログラフィック露光が技術的限界に達する。比較的低線量の放射線での大面積露光は、さらに長い露光時間を必要とし、その結果、振動を排除するための露光設定の機械的減衰に非常に高い要件が課される。
【0008】
ホログラムの大面積露光を達成するためのさらなる可能な方法は、非常に短い光のパルス、例えばパルスレーザーまたは非常に高速なシャッターと組み合わせた連続波レーザーからの使用である。パルスレーザーのパルス持続時間は、典型的には500ns以下である。連続波レーザーおよび非常に高速なシャッターによるパルス持続時間は、典型的には100μs以下である。事実上、数秒で連続レーザーと同じエネルギー量を導入することができる。ホログラムはこの方法でドットごとに書き込むことができる。パルスレーザーまたは高速光シャッターは技術的に利用可能であり、このタイプの露光設定は振動を除去する機械的減衰に関して非常に低い要件を有するので、これはホログラムの大面積露光用連続レーザーを含む上記設定に対する良好な技術的代替となる。
【0009】
欧州特許出願第13198913.9号明細書より公知であるフォトポリマーは、概して、パルスレーザーを用いてホログラムを書き込むために使用可能であるが、フォトポリマーの感度のさらなる向上は、幅広い産業上の有用性のために望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願第13198913.9号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明が取り組む問題は、感光性が高いために、パルスレーザーにより明るいホログラムを書き込むことができるフォトポリマーの製造に有用な化合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この問題は、Xがハロゲンであり、R、R、RおよびRがそれぞれ独立して水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルチオ、アルキルセレノであり、RとRと、および/またはRとRとが結合して、2個までのヘテロ原子で置換されていてもよい3~5員の飽和または不飽和のブリッジを形成してもよく、Rが直鎖C~C20アルキルであり、ハロゲンおよび/またはC~C10アルキルおよび/またはC~C10アルコキシにより任意の様式で置換されていてもよく、6個までの炭素原子が酸素で置き換えられていてもよく、この場合、少なくとも2個の炭素原子が2個の酸素原子の間に存在し、前記R部分が少なくとも2個の炭素原子で始まり、前記直鎖C~C20アルキル部分の末端メチル基が非置換であることを特徴とする、式(I)
【化1】
【0013】
の化合物により解決される。
【0014】
これは、驚くべきことに、本発明による式(I)の化合物を含む媒体がより高いレベルの感光性を有し、したがってパルスレーザーを用いた露光に非常に有用であることが見出されたからである。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態において、X部分は塩素を表す。本発明のさらなる実施形態において、R、R、RおよびRはそれぞれ水素である。Rは、本発明の一実施形態において、直鎖C~C20アルキルであり、ハロゲンおよび/またはC~Cアルキルおよび/またはC~Cアルコキシにより任意の様式で置換されていてもよく、6個までの炭素原子が酸素で置き換えられていてもよく、この場合、少なくとも2個の炭素原子が2個の酸素原子の間に存在し、前記R部分が少なくとも2個の炭素原子で始まり、前記直鎖C~C20アルキル部分の末端メチル基が非置換である。
【0016】
式(I)の化合物が、塩素を表すX部分を有し、部分R、R、RおよびRがそれぞれHを表し、Rが2-エチルヘキサノールを表す場合、同様に好ましい。
【0017】
欧州特許出願第0332042号によれば、4,6-ビス-トリクロロメチル-s-トリアジン-2-イル-フェニル誘導体は、環化共三量化(cyclocotrimerization)によって芳香族ニトリルとトリクロロアセトニトリルとから得ることができる。この目的のために、3-または4-シアノ置換メチルベンゾエートまたはシンナメートエステルをトリクロロアセトニトリルと反応させ、次いで得られた4,6-ビストリクロロメチル-s-トリアジン置換メチルベンゾエートまたはシンナメートエステルを、場合により複数の工程を伴う、費用がかかり、不便な方法でエステル交換する。
【0018】
したがって、本発明が取り組む問題は、化合物(I)およびその前駆体を調製するための簡単で経済的な方法をさらに提供することである。
【0019】
この問題は、
式(IV)のパラ-二置換安息香酸エステルニトリルを調製する方法であって
【化2】
【0020】
(式中、R~Rはそれぞれ式(I)において定義した通りであり、Rはメチルまたはエチルまたは異性体プロピルであり、Aは触媒Aである)、成分(III)を過剰に使用するワンポット法において、成分V、IIIおよびIVが、圧力および温度を調節することにより、3つの工程で前述の順序で蒸留除去され、化合物(V)と(III)との沸点の差および化合物(III)と(IV)との沸点の差はいずれも50℃以上である方法により解決された。
【0021】
前記ワンポット法において、式(II)のエステル(式中、R~Rはそれぞれ式(I)で定義された通りであり、Rはメチルまたはエチルまたは異性体プロピルである)が、アルコール(III)(Rは上記の通りである)の存在下および触媒Aの存在下で、第1工程において、内部温度100~150℃および圧力300~1000mbarで、過剰の1.1~10当量の(III)を用いて(II)の転化が完了し、反応混合物から(V)が蒸留除去されるまで加熱し、ならびに続く工程においてオーバーヘッド温度50~150℃および圧力1~300mbarにおいて過剰のアルコール(III)を蒸留除去し、その後、続く工程において、オーバーヘッド温度100-250℃および圧力0.01~1mbarにおいて生成物(IV)を蒸留し、触媒Aをポットの中に残すことによって、転化される。
【0022】
第1工程は、内部温度100~150℃、好ましくは110~145℃、より好ましくは120~140℃を、300~1000mbar、好ましくは350~800mbar、より好ましくは400~600mbarの圧力において利用し、過剰の11~10当量、好ましくは1.2~5当量、より好ましくは1.3~2当量の(III)を用いる。
【0023】
第2工程は、オーバーヘッド温度50~150℃、好ましくは60~125℃、より好ましくは70~100℃および圧力1~300mbar、好ましくは3~100mbar、より好ましくは5~50mbarを利用する。
【0024】
第3工程は、オーバーヘッド温度100~250℃、好ましくは125~240℃、より好ましくは150~230℃および圧力0.01~1mbar、好ましくは0.02~0.5mbarを利用する。
【0025】
アルコール(III)は、適切には、少なくとも1個のメチル基を有する、ハロゲンまたは酸素で置換されていてもよい炭素原子5個以上20個までの脂肪族を有する任意の化合物である。少なくとも1個のメチル基を有する、ハロゲンまたは酸素で置換されていてもよい炭素原子6個以上15個までの脂肪族を有する化合物が好ましい。少なくとも1個のメチル基を有する、ハロゲンまたは酸素で置換されていてもよい炭素原子7個以上10個までの脂肪族を有する化合物が特に好ましい。
【0026】
触媒Aは、適切には、根本的にはMethoden der organischen Chemie(Houben-Weyl)、第E5巻、1、III.a)、γ,γ(pp.702ff、Pielartzik、Irmscher-Pielartzik and Eicher)に記載の触媒、例えばプロトン酸、塩基性触媒(アルカノエート、アニオン交換体)、チタン(IV)およびジルコニウム(IV)アルカノエート、アルコキシトリアルキルスズおよびさらに銅アルカノエート/トリフェニルホスファン錯体である。好ましくは、触媒は、液体形態であり、所望の生成物より高い沸点を有し、迅速かつ完全な転化を確実にするために低濃度で有効である。したがって、より高級なチタン(IV)およびジルコニウム(IV)アルカノエートが特に好ましい。特に、アルカノエートが化合物(III)のものに対応するより高級なチタン(IV)およびジルコニウム(IV)アルカノエートが特に好ましい。
【0027】
さらに、触媒Aの使用量は、使用する化合物(II)に対して0.0001~0.1当量が好ましく、より好ましくは0.0005~0.01当量、さらに好ましくは0.001~0.005当量である。
【0028】
本発明はさらに、第1工程において式(IV)のパラ-二置換ベンゾニトリルを調製するワンポット法を用いる工程、第2工程において得られたパラ-二置換ベンゾニトリルとトリハロアセトニトリルとを反応させる工程を含む化合物(I)の調製方法を提供する。
【0029】
本発明はさらに、光重合性成分と少なくとも1種の式(I)の化合物とを含むフォトポリマー配合物を提供する。
【0030】
フォトポリマー配合物の一実施形態において、該配合物は、マトリックスポリマー、少なくとも1種の書き込みモノマー、および少なくとも1種の式(I)の化合物を含む光開始剤系を含む。
【0031】
本発明によるフォトポリマー配合物のマトリックスポリマーは、特に架橋状態であり得、より好ましくは三次元架橋状態であり得る。
【0032】
マトリックスポリマーがポリウレタンであることも有利であり、この場合、ポリウレタンは、特に、少なくとも1種のポリイソシアネート成分a)と、少なくとも1種のイソシアネート反応性成分b)とを反応させることによって得ることができる。
【0033】
ポリイソシアネート成分a)は、好ましくは、少なくとも2個のNCO基を有する少なくとも1種の有機化合物を含む。これらの有機化合物は、特に、モノマー性ジ-およびトリイソシアネート、ポリイソシアネートおよび/またはNCO-官能性プレポリマーであり得る。ポリイソシアネート成分a)はまた、モノマー性ジ-およびトリイソシアネート、ポリイソシアネートおよび/またはNCO官能性プレポリマーの混合物を含有するか、またはそれらからなってよい。
【0034】
使用されるモノマー性ジ-およびトリイソシアネートは、当業者にそれ自体よく知られている化合物のいずれか、またはこれらの混合物であり得る。これらの化合物は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式の構造を有していてもよい。モノマー性ジ-およびトリイソシアネートはまた、少量のモノイソシアネート、すなわち1つのNCO基を有する有機化合物を含んでもよい。
【0035】
適切なモノマー性ジ-およびトリイソシアネートの例は、ブタン1,4-ジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサン1,6-ジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8-ジイソシアナト-4-(イソシアナトメチル)オクタン、ビス(4,4’-イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよび/またはビス(2’,4-イソシアナトシクロへキシル)メタンおよび/または任意の異性体含量を有するこれらの混合物、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、異性体ビス(イソシアネート-メチル)シクロヘキサン、2,4-および/または2,6-ジイソシアナト-1-メチルシクロヘキサン(ヘキサヒドロトリレン2,4-および/または2,6-ジイソシアネート、H-TDI)、フェニレン1,4-ジイソシアネート、トリレン2,4-および/または2,6-ジイソシアネート(TDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタン2,4’-および/または4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)および/または類似の1,4異性体または前記化合物の任意の所望の混合物である。
【0036】
適切なポリイソシアネートは、ウレタン、尿素、カルボジイミド、アシル尿素、アミド、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンおよび/またはイミノオキサジアジンジオン構造を有する化合物であり、上記ジ-またはトリイソシアネートから得ることができる。
【0037】
より好ましくは、ポリイソシアネートはオリゴマー化された脂肪族および/または脂環式のジ-またはトリイソシアネートであり、特に上記の脂肪族および/または脂環式のジ-またはトリイソシアネートの使用が可能である。
【0038】
イソシアヌレート、ウレトジオンおよび/またはイミノオキサジアジンジオン構造を有するポリイソシアネート、およびHDIまたはこの混合物に基づくビウレットが特に好ましい。
【0039】
適切なプレポリマーは、ウレタンおよび/または尿素基を含み、および上記に特定されたNCO基の修飾を介して形成されるさらなる構造を含んでもよい。この種のプレポリマーは、例えば、上述のモノマー性ジ-およびトリイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートa1)とイソシアネート反応性化合物b1)との反応によって得ることができる。
【0040】
使用されるイソシアネート反応性化合物b1)は、アルコール、アミノまたはメルカプト化合物、好ましくはアルコールであり得る。これらは特にポリオールであってもよい。最も好ましくは、使用されるイソシアネート反応性化合物b1)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールおよび/またはポリウレタンポリオールであってもよい。
【0041】
適切なポリエステルポリオールは、例えば、直鎖ポリエステルジオールまたは分枝ポリエステルポリオールであり、これらは、脂肪族、脂環式または芳香族のジ-またはポリカルボン酸またはこの無水物と、OH官能価が2価以上の多価アルコールとの反応によって公知の方法で得ることができる。適切なジカルボン酸またはポリカルボン酸の例は、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸もしくはトリメリット酸などの多塩基性カルボン酸、ならびに無水フタル酸、無水トリメリット酸もしくは無水コハク酸などの酸無水物、またはこれらの任意の所望の混合物である。ポリエステルポリオールはまた、ヒマシ油などの天然原料をベースにしていてもよい。同様に、ポリエステルポリオールは、ラクトンのホモポリマーまたはコポリマーをベースとすることも可能であり、これは、好ましくは、ブチロラクトン、ε-カプロラクトンおよび/またはメチル-ε-カプロラクトンなどのラクトンまたはラクトン混合物を、OH官能価が2以上の多価アルコールなどのヒドロキシ官能性化合物、例えば上記型の化合物上に付加することによって得ることができる。
【0042】
適切なアルコールの例は、すべての多価アルコール、例えばC~C12ジオール、異性体シクロヘキサンジオール、グリセロールまたこれらの任意の所望の混合物である。
【0043】
適切なポリカーボネートポリオールは、有機カーボネートまたはホスゲンとジオールまたはジオール混合物との反応によってそれ自体公知の様式で得ることができる。
【0044】
適切な有機カーボネートは、ジメチル、ジエチルおよびジフェニルカーボネートである。
【0045】
適切なジオールまたは混合物は、ポリエステルセグメントの文脈においてそれ自体を述べたOH官能価が2以上の多価アルコール、好ましくはブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオールおよび/または3-メチルペンタンジオールを含む。ポリエステルポリオールをポリカーボネートポリオールに転化することも可能である。
【0046】
適切なポリエーテルポリオールは、ブロック構造であってもよい、OH-またはNH-官能性出発分子への環状エーテルの重付加生成物である。
【0047】
適切な環状エーテルは、例えば、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、およびこれらの任意の所望の混合物である。
【0048】
使用される開始剤は、ポリエステルポリオールの文脈においてそれ自体を述べたOH官能価が2以上の多価アルコール、および第一級または第二級のアミンおよびアミノアルコールであってよい。
【0049】
好ましいポリエーテルポリオールは、プロピレンオキシドのみに基づく上述の型のもの、またはプロピレンオキシドとさらなる1-アルキレンオキシドとに基づくランダムまたはブロックコポリマーである。プロピレンオキシドホモポリマーならびにオキシエチレン、オキシプロピレンおよび/またはオキシブチレン単位を含むランダムまたはブロックコポリマーが特に好ましく、ここでオキシエチレン単位、オキシプロピレン単位およびオキシブチレン単位の総量に基づくオキシプロピレン単位の割合は、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも45重量%である。ここでオキシプロピレンおよびオキシブチレンは、それぞれの直鎖および分枝のCおよびC異性体のすべてを包含する。
【0050】
さらに、多官能性イソシアネート反応性化合物のポリオール成分b1)の構成成分として、低分子量(すなわち分子量≦500g/mol)、短鎖(すなわち炭素原子数2~20)の、脂肪族、芳香脂肪族または脂環式のジ-、トリ-または多官能性アルコールが適切である。
【0051】
これらは、例えば、上記化合物に加えて、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、位置異性体ジエチルオクタンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンまたは2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネートであってよい。適切なトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロール-プロパンまたはグリセロールである。適切な多官能性アルコールは、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタ-エリスリトール、ジペンタエリスリトールまたはソルビトールである。
【0052】
ポリオール成分が、二官能性のポリエーテル、ポリエステル、またはポリエーテル-ポリエステルブロックコポリエステルまたは第一級OH官能基を有するポリエーテル-ポリエステルブロックコポリマーである場合、特に好ましい。
【0053】
アミンをイソシアネート反応性化合物b1)として使用することも同様に可能である。適切なアミンの例は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシル-メタン-ジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、二官能性ポリアミン、例えばJeffamines(登録商標)、特に数平均モル質量≦10000g/molを有するアミン末端ポリマーである。前述のアミンの混合物も同様に使用することができる。
【0054】
イソシアネート反応性化合物b1)としてアミノアルコールを使用することも同様に可能である。適切なアミノアルコールの例は、異性体アミノエタノール、異性体アミノプロパノール、異性体アミノブタノールおよび異性体アミノヘキサノール、またはこれらの任意の所望の混合物である。
【0055】
上記のイソシアネート反応性化合物b1)はすべて、所望により互いに混合することができる。
【0056】
イソシアネート反応性化合物b1)が数平均モル質量≧200かつ≦10000g/mol、さらに好ましくは≧500かつ≦8000g/mol、最も好ましくは≧800かつ≦5000g/molを有することが好ましい。ポリオールのOH官能価は、好ましくは1.5~6.0、より好ましくは1.8~4.0である。
【0057】
ポリイソシアネート成分a)のプレポリマーは、特に、<1重量%、より好ましくは<0.5重量%、最も好ましくは<0.3重量%の遊離モノマー性ジ-およびトリイソシアネートの残留含量を有してよい。
【0058】
ポリイソシアネート成分a)が、NCO基がコーティング技術から公知のブロッキング剤と完全に、または部分的に反応した有機化合物を、完全にまたは部分的に含んでいてもよい。ブロッキング剤の例は、アルコール、ラクタム、オキシム、マロン酸エステル、ピラゾールおよびアミン、例えばブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、3,5-ジメチルピラゾール、ε-カプロラクタムまたはこれらの混合物である。
【0059】
ポリイソシアネート成分a)が脂肪族結合NCO基を有する化合物を含む場合、脂肪族結合NCO基は、第一級炭素原子に結合する基を意味すると理解されることが特に好ましい。イソシアネート反応性成分b)は、好ましくは、少なくとも1.5個、好ましくは2~3個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも1種の有機化合物を含む。本発明の文脈において、イソシアネート反応性基は、好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基またはメルカプト基であるとみなされる。
【0060】
イソシアネート反応性成分は、特に、少なくとも1.5個、好ましくは2~3個のイソシアネート反応性基の数平均を有する化合物を含むことができる。
【0061】
成分b)の適切な多官能性イソシアネート反応性化合物は、例えば、上記の化合物b1)である。
【0062】
さらに好ましい実施形態において、書き込みモノマーc)は、少なくとも1種の単官能性および/または1種の多官能性の書き込みモノマーを含むか、またはこれらからなる。さらに好ましくは、書き込みモノマーは、少なくとも1種の単官能性および/または1種の多官能性の(メタ)アクリレート書き込みモノマーを含むか、またはこれらからなり得る。最も好ましくは、書き込みモノマーは、少なくとも1種の単官能性および/または1種の多官能性のウレタン(メタ)アクリレートを含むか、またはこれらからなり得る。
【0063】
適切なアクリレート書き込みモノマーは、特に、一般式(VI)
【化3】
【0064】
(式中、n≧1かつn≧4であり、Rが、非置換、またはヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖状、分枝状、環状または複素環式の有機基であり、および/またはRが、水素または非置換またはヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖状、分枝状、環状または複素環式の有機基である)の化合物である。より好ましくは、Rは水素またはメチルであり、および/またはRは、非置換またはヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖状、分枝状、環状または複素環式の有機基である。
【0065】
アクリレートおよびメタクリレートは、それぞれアクリル酸およびメタクリル酸のエステルを指す。好ましい使用可能なアクリレートおよびメタクリレートの例は、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルメタクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、フェニルチオエチルメタクリレート、2-ナフチルアクリレート、2-ナフチルメタクリレート、1,4-ビス(2-チオナフチル)-2-ブチルアクリレート、1,4-ビス(2-チオナフチル)-2-ブチルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、およびこれらのエトキシル化類似体化合物、N-カルバゾリルアクリレートである。
【0066】
ウレタンアクリレートは、少なくとも1つのアクリル酸エステル基および少なくとも1つのウレタン結合を有する化合物を意味すると理解される。この種の化合物は、例えば、ヒドロキシ官能性アクリレートまたはメタクリレートをイソシアネート官能性化合物と反応させることによって得ることができる。
【0067】
この目的のために使用可能なイソシアネート官能性化合物の例は、モノイソシアネート、およびa)で挙げたモノマー性ジイソシアネート、トリイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートである。適切なモノイソシアネートの例は、フェニルイソシアネート、異性体メチルチオフェニルイソシアネートである。ジ-、トリ-またはポリイソシアネートについては上で述べたが、さらにウレタン、尿素、カルボジイミド、アシル尿素、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオン、イミノオキサジアジンジオン構造を有するトリフェニルメタン4,4’,4”-トリイソシアネートおよびトリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートまたはこれらの誘導体およびこれらの混合物が挙げられる。芳香族ジ-、トリ-またはポリイソシアネートが好ましい。
【0068】
ウレタンアクリレートの調製に有用なヒドロキシ官能性アクリレートまたはメタクリレートには、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)-アクリレート、ポリ(ε-カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、例えばTone(登録商標)M100(Dow、Schwalbach、DE)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、多価アルコールのヒドロキシ官能性モノ-、ジ-、またはテトラアクリレート、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、エトキシル化された、プロポキシル化された、またはアルコキシル化されたトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールまたはこれらの工業的混合物などの化合物が挙げられる。2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートおよびポリ(ε-カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0069】
同様に、OH含量20~300mgKOH/gを有する根本的に公知のヒドロキシル含有エポキシ(メタ)アクリレートまたはOH含量20~300mgKOH/gを有するヒドロキシル含有ポリウレタン(メタ)アクリレートまたはOH含量20~300mgKOH/gを有するアクリル化ポリアクリレートおよびこれらの混合物、ならびにヒドロキシル含有不飽和ポリエステルとの混合物、およびポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物またはヒドロキシル含有不飽和ポリエステルとポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物の使用が可能である。
【0070】
トリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートおよび/またはm-メチルチオフェニルイソシアネートと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび/またはヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコール官能性アクリレートとの反応から得られるウレタンアクリレートが特に好ましい。
【0071】
書き込みモノマーは、α、β-不飽和カルボン酸誘導体、例えばマレエート、フマレート、マレイミド、アクリルアミドなどの不飽和化合物、およびさらにビニルエーテル、プロペニルエーテル、アリルエーテルおよびジシクロペンタジエニル単位を含有する化合物、およびさらにオレフィン性不飽和化合物、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンおよび/またはオレフィンを含むか、またはこれらからなることも同様に可能である。
【0072】
成分d)の光開始剤は、典型的には化学線により活性化可能な化合物であり、これは書き込みモノマーの重合を引き起こすことができる。光開始剤の場合、単分子(I型)開始剤と二分子(II型)開始剤とを区別することができる。加えて、それらはフリーラジカル、アニオン性、カチオン性または混合型の重合のための、光開始剤としてのそれらの化学的性質によって区別される。
【0073】
フリーラジカル光重合のためのI型光開始剤(I型Norrish)は、単分子結合の切断を介した照射によりフリーラジカルを形成する。I型光開始剤の例は、トリアジン、オキシム、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、ビスイミダゾール、アロイルホスフィンオキシド、スルホニウム塩およびヨードニウム塩である。
【0074】
フリーラジカル重合のためのII型光開始剤(II型Norrish)は、増感剤としての色素と共開始剤とからなり、色素に適合する光の照射で二分子反応を行う。まず、色素は光子を吸収し、励起状態のエネルギーを共開始剤に移動する。後者は、電子またはプロトン移動または直接的な水素引き抜きを介して重合を誘発するフリーラジカルを放出する。
【0075】
本発明の文脈において、II型光開始剤の使用が好ましい。
【0076】
この種の光開始剤系は原則として欧州特許出願第0 223 587号明細書に記載されており、好ましくは1または複数の色素と(1または複数の)アンモニウムアルキルアリールボレートとの混合物からなる。
【0077】
アンモニウムアルキルアリールボレートと一緒に、II型光開始剤を形成する適切な色素は、国際公開第2012062655号パンフレットに記載されているカチオン性色素であり、同様にそこに記載されているアニオンと組み合わされる。
【0078】
カチオン色素は、好ましくは以下のクラスに由来するものを意味すると理解される:アクリジン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェナジン色素、フェノキサジン色素、フェノチアジン色素、トリ(ヘテロ)アリールメタン色素、特にジアミノ-およびトリアミノ(ヘテロ)アリールメタン色素、モノ-、ジ-、トリ-およびペンタメチンシアニン色素、ヘミシアニン色素、外部カチオン性メロシアニン色素、外部カチオン性ニュートロシアニン色素、ゼロメチン色素-特にナフトラクタム色素、ストレプトシアニン色素。この種の色素は、例えば、H.Berneth、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、Azine Dyes、Wiley-VCH Verlag、2008年、H.Berneth、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、Methine Dyes and Pigments、Wiley-VCH Verlag、2008年、T.Gessner,U.Mayer、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、Triarylmethane and Diarylmethane Dyes、Wiley-VCH Verlag、2000年に記載されている。
【0079】
フェナジン色素、フェノオキサジン色素、フェノチアジン色素、トリアミノ(ヘテロ)アリールメタン色素、特にジアミノ-およびトリアミノ(ヘテロ)アリールメタン色素、モノ-、ジ-、トリ-およびペンタメチンシアニン色素、ヘミシアニン色素、ゼロメチン色素-特にナフトラクタム色素、ストレプトシアニン色素が特に好ましい。
【0080】
カチオン性色素の例は、アストラゾンオレンジG、ベーシックブルー3、ベーシックオレンジ22、ベーシックレッド13、ベーシックバイオレット7、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、アズールA、2,4-ジフェニル-6-(4-メトキシフェニル)ピリリウム、サフラニンO、アストラフロキシン、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット、エチルバイオレットおよびチオニンである。
【0081】
好ましいアニオンは、特に、C-~C25-アルカンスルホネート、好ましくはC13-~C25-アルカンスルホネート、C-~C18-ペルフルオロアルカンスルホネート、アルキル鎖中に少なくとも3個の水素原子を有するC-~C18-ペルフルオロアルカンスルホネート、C-~C25-アルカノエート、C-~C25-アルケノエート、C-~C25-アルキルサルフェート、好ましくはC13-~C25-アルキルサルフェート、C-~C25-アルケニルサルフェート、好ましくはC13-~C25-アルケニルサルフェート、C-~C18-ペルフルオロアルキルサルフェート、アルキル鎖中に少なくとも3個の水素原子を有するC-~C18-ペルフルオロアルキルサルフェート、少なくとも4当量のエチレンオキシドおよび/または4当量のプロピレンオキシドをベースとするポリエーテルサルフェート、ビス(C-~C25-アルキル、C-~C-シクロアルキル、C-~C-アルケニルまたはC-~C11-アラルキル)スルホスクシネート、少なくとも8個のフッ素原子で置換されたビス-C-~C10-アルキルスルホスクシネート、C-~C25-アルキルスルホアセテート、ハロゲン、C-~C25-アルキル、ペルフルオロ-C-~C-アルキルおよび/またはC-~C12-アルコキシカルボニルの群からの少なくとも1つの基で置換されたベンゼンスルホネート、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、C-~C25-アルキル、C-~C12-アルコキシ、アミノ、C-~C12-アルコキシカルボニルまたは塩素により置換されていてもよいナフタレン-またはビフェニルスルホネート、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C-C25-アルキル、C-C12-アルコキシ、C-C12-アルコキシカルボニルまたは塩素で置換されていてもよいベンゼン-、ナフタレン-またはビフェニルジスルホネート、ジニトロ、C-~C25-アルキル、C-~C12-アルコキシカルボニル、ベンゾイル、クロロベンゾイルまたはトルオイルにより置換されたベンゾエート、ナフタレンジカルボン酸のアニオン、ジフェニルエーテルジスルホネート、脂肪族C-~C-アルコールまたはグリセロールのスルホン化または硫酸化された、少なくとも一不飽和されていてよいC-~C25-脂肪酸エステル、ビス(スルホ-C-~C-アルキル)C-~C12-アルカンジカルボキシレート、ビス(スルホ-C-~C-アルキル)イタコネート、(スルホ-C-~C-アルキル)C-~C18-アルカンカルボキシレート、(スルホ-C-~C-アルキル)アクリレートまたはメタクリレート、12個までのハロゲン基により置換されていてもよいトリスカテコールホスフェート、フェニルまたはフェノキシ基がハロゲン、C-~C-アルキルおよび/またはC-~C-アルコキシによって置換されていてもよいテトラフェニルボレート、シアノトリフェニルボレート、テトラフェノキシボレート、C-~C12-アルキルトリフェニルボレートの群からのアニオン、C-~C12-アルキルトリナフチルボレート、テトラ-C-~C20-アルコキシボレート、1または2個のC-~C12-アルキルまたはフェニル基によりホウ素原子および/または炭素原子が置換されていてもよい7,8-または7,9-ジカルバ-nido-ウンデカボレート(1-)または(2-)、ドデカヒドロジカルバドデカボレート(2-)またはB-C-~C12-アルキル-C-フェニルドデカヒドロジカルバドデカボレート(1-)であり、ナフタレンジスルホネートなどの多価アニオンの場合、Aは一当量のこのアニオンを表し、アルカンおよびアルキル基は、分枝であっても、および/またはハロゲン、シアノ、メトキシ、エトキシ、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルにより置換されていてもよい。
【0082】
色素のアニオンAが1~30の範囲のAClogP、より好ましくは1~12の範囲、特に好ましくは1~6.5の範囲のAClogPを有する場合も好ましい。AClogPは、J.Comput.Aid.[mol%]Des.2005年、19、453;Virtual Computational Chemistry Laboratory,http://www.vcclab.org.に従って、コンピュータにより計算される。
【0083】
適切なアンモニウムアルキルアリールボレートは、例えば、(Cunninghamら、RadTech’98 North America UV/EB Conference Proceedings、Chicago、1998年4月19-22日):テトラブチルアンモニウムトリフェニルヘキシルボレート、テトラブチルアンモニウムトリフェニルブチルボレート、テトラブチルアンモニウムトリナフチルヘキシルボレート、テトラブチルアンモニウムトリス(4-tert-ブチル)フェニルブチルボレート、テトラブチル-アンモニウムトリス(3-フルオロフェニル)ヘキシルボレートヘキシルボレート([191726-69-9]、CGI 7460、BASF SE、Basle、スイスによる製品)、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムジペンチルジフェニルボレートおよびテトラブチルアンモニウムトリス(3-クロロ-4-メチルフェニル)ヘキシルボレート([1147315-11-4]、CGI909、BASF SE、Basle、スイスによる製品)である。
【0084】
これらの光開始剤の混合物を使用することが有利であり得る。使用される放射線源によれば、光開始剤の型および濃度は、当業者に公知の様式で調整されなければならない。さらなる詳細は、例えば、P.K.T.Oldring(Ed.)、Chemistry&Technology for UV&EB Formulations For Inks&Paints、vol.3,1991、SITA Technology、London、p.61-328に記載されている。
【0085】
光開始剤が、その吸収スペクトルが少なくとも部分的に400~800nmのスペクトル範囲をカバーする色素の組み合わせを含み、少なくとも1種の共開始剤が色素に適合している場合が最も好ましい。
【0086】
青色、黄色、緑色および赤色から選択されるレーザー光の色に適した少なくとも1種の光開始剤がフォトポリマー配合物中に存在する場合も好ましい。
【0087】
また、フォトポリマー配合物が、青色、緑色および赤色から選択される少なくとも2種のレーザー光の色に対してそれぞれ1種の適切な光開始剤を含有する場合には、さらに好ましい。
【0088】
最後に、フォトポリマー配合物が、青色、緑色および赤色の各レーザー光の色に対して1種の適切な光開始剤を含有する場合が最も好ましい。
【0089】
さらに好ましい実施形態において、フォトポリマー配合物は、添加剤としてウレタンをさらに含有し、この場合ウレタンは特に少なくとも1個のフッ素原子で置換されていてもよい。
【0090】
好ましくは、ウレタンは一般式(VII)
【化4】
【0091】
(式中、m≧1かつm≦8であり、R、R10およびR11が、非置換であるか、またはヘテロ原子によって置換されていてもよい直鎖状、分枝状、環状または複素環式の有機基であり、および/またはR10、R11はそれぞれ独立して水素であり、この場合、R、R10、R11基の少なくとも1つは少なくとも1個のフッ素原子で置換されていることが好ましく、Rは少なくとも1個のフッ素原子を有する有機基であることがより好ましい)
を有することができる。より好ましくは、R10は、非置換、またはヘテロ原子、例えばフッ素で置換されていてもよい直鎖状、分枝状、環状または複素環式の有機基である。
【0092】
本発明はさらに、フォトポリマー配合物を含み、特にマトリックスポリマー、書き込みモノマーおよび光開始剤系を含み、さらに式(I)の化合物を含むフォトポリマーを提供する。
【0093】
本発明によるフォトポリマー配合物のマトリックスポリマーは、特に架橋状態であり得、より好ましくは三次元架橋状態であり得る。
【0094】
マトリックスポリマーがポリウレタンであることも有利であり、この場合、ポリウレタンは、特に、少なくとも1種のポリイソシアネート成分と少なくとも1種のイソシアネート反応性成分とを反応させることによって得ることができる。
【0095】
本発明によるフォトポリマー配合物のさらに好ましい実施形態に関する上記の記載は、本発明のフォトポリマーについても準用される。
【0096】
本発明はまた、特に、本発明のフォトポリマーを含む、または本発明のフォトポリマー配合物を使用することによって得られるフィルム形態のホログラフィック媒体を提供する。本発明はさらに、ホログラフィック媒体の製造における本発明のフォトポリマー配合物の使用を提供する。
【0097】
本発明によるホログラフィック媒体の好ましい一実施形態において、ホログラフ情報は該媒体内に露光される。
【0098】
本発明のホログラフィー媒体は、可視および近UV範囲(300~800nm)全体にわたる光学用途のための適切な露光プロセスによってホログラムに加工することができる。視覚的ホログラムは、当業者に公知の方法によって記録することができるすべてのホログラムを含む。これらは、インライン(Gabor)ホログラム、軸外ホログラム、フルアパーチャートランスファー(full-aperture transfer)ホログラム、白色光透過ホログラム(「レインボーホログラム」)、Denisyukホログラム、軸外反射ホログラム、エッジリットホログラムおよびホログラフィックステレオグラムを含む。反射ホログラム、Denisyukホログラム、透過ホログラムが好ましい。
【0099】
本発明のフォトポリマー配合物を用いて製造することができるホログラムの可能な光学機能は、レンズ、ミラー、偏向ミラー、フィルタ、拡散器レンズ、回折素子、拡散器光ガイド、導波路、投影レンズおよび/またはマスクなどの光素子の光学機能に対応する。同様に、これらの光学機能の組み合わせを、互いに独立して1つのホログラムに組み合わせることも可能である。これらの光学素子は、ホログラムがどのように露光されたか、およびホログラムの寸法に応じて周波数選択性を有することが多い。
【0100】
さらに、本発明の媒体を用いて、例えば個人的な肖像画、機密文書のバイオメトリック表現、または広告、セキュリティラベル、ブランド保護、ブランディング、ラベル、デザイン要素、装飾品、イラスト、コレクション用カード、画像などのための画像または画像構造のためのホログラフィック画像または表現を生成することも可能であり、さらに上記に詳述した製品との組み合わせを含むデジタルデータを表すことができる画像を生成することも可能である。ホログラフィック画像は、3次元画像の印象を有することができるが、照らされる角度および光源(移動する光源を含む)などに応じて、連続画像、ショートフィルムまたは多数の異なるオブジェクトを表すこともできる。このさまざまな可能な設計のために、ホログラム、特に体積ホログラムは、上述の用途のための魅力的な技術的解決策を構成する。
【0101】
したがって、本発明は、インライン、軸外、フルアパーチャートランスファー、白色光透過、Denisyuk、軸外反射、またはエッジリットホログラム、およびホログラフィックステレオグラムの記録のための、特に、光学素子、画像または画像の描写の生成のための本発明のホログラフィック媒体の使用をさらに提供する。
【0102】
本発明は、同様に、本発明のホログラフィック媒体を含むホログラムを提供する。
【0103】
本発明は同様に、パルスレーザー放射を用いて媒体を露光するホログラムの生成方法を提供する。
【0104】
本発明による方法の一実施形態において、パルス持続時間は≦200ns、好ましくは≦100ns、より好ましくは≦60nsである。パルス持続時間は0.5ns未満であってはならない。パルス持続時間4nsが特に好ましい。
【0105】
本発明はさらに、本発明のフォトポリマー配合物を使用することによるホログラフィック媒体の製造方法を提供する。
【0106】
このフォトポリマー配合物は、特に、フィルムの形態のホログラフィック媒体の製造に使用することができる。この場合、可視スペクトル範囲の光に対して透明な、キャリア基材としての材料または材料複合体のプライ(400~780nmの波長範囲内で透過率が85%を超える)が片面または両面にコーティングされ、カバー層が1または複数のフォトポリマープライに適用されていてもよい。
【0107】
キャリア基材のための好ましい材料または材料複合体は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、セルロース水和物、硝酸セルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ポリエポキシド、ポリスルホン、セルローストリアセテート(CTA)、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラールもしくはポリジシクロペンタジエンまたはこれらの混合物に基づく。より好ましくは、それらはPC、PETおよびCTAに基づく。材料複合材は、フィルムラミネートまたは共押出品であってもよい。好ましい材料複合体は、スキームA/B、A/B/AまたはA/B/Cの1つに従って形成された二重および三重フィルムである。PC/PET、PET/PC/PETおよびPC/TPU(TPU=熱可塑性ポリウレタン)が特に好ましい。
【0108】
キャリア基材の材料または材料複合体は、片面または両面に付着防止性、帯電防止性、疎水性または親水性の仕上げを施すことができる。上記改変は、フォトポリマーに面する側において、フォトポリマーをキャリア基材から破壊することなく取り外し可能にする目的を果たす。フォトポリマーから反対側のキャリア基材の改変は、本発明の媒体が、例えばロールラミネータ、特にロールツーロールプロセスで処理する場合に存在する特定の機械的要求を確実に満たすように機能する。
【0109】
以下の実施例は、本発明を限定することなく例示的に本発明を解明するのに役立つ。
【0110】
[実施例]
試験方法:
OH価:
報告されたOH価はDIN53240-2により決定された。
【0111】
NCO値:
報告されたNCO値(イソシアネート含量)は、DIN EN ISO 11909により決定された。
【0112】
オーバーヘッド温度の決定:
オーバーヘッド温度は、4~20mAの校正されたトランスミッタと、充填カラムより上の沸騰平衡状態で設置されたPT100熱電対を使用して、摂氏(℃)で測定した。
【0113】
内部温度の測定:
内部温度は、反応空間に設置された4-20mA校正トランスミッタおよびPT100熱電対を使用して、摂氏(℃)で測定した。
【0114】
パルス露光における回折効率の決定:
パルス露光における回折効率を決定するために、ミラーのDenisyukホログラムを、フォトポリマーフィルムを積層したガラス板からなるサンプルに記録した。フォトポリマーフィルムの基材およびガラス基材は、それぞれ、レーザー光源およびミラーに面していた。サンプルをレーザービームに対して垂直な平面をもって露光させた。サンプルとミラーとの間の距離は3cmであった。
【0115】
使用したレーザーは、フランスのQuantel製のブリリアントbパルスレーザーであった。問題のレーザーは、周波数が2倍になる532nmのモジュールを備えたQスイッチNd-YAGレーザーであった。単一周波数モードはシードレーザーによって保証された。コヒーレンス長は、算術的に約1mであった。パルス持続時間は4nsであり、平均出力は10Hzのパルス繰り返し率で3ワットであった。
【0116】
電子的に制御されたシャッターを使用して、単一パルス露光を確実にした。波長板は、レーザー光の偏光面の回転を可能にし、その後、偏光子を使用して、レーザー光のS偏光部分をサンプルの方向に反射させた。露光領域は、ビーム拡大によって調整した。波長板およびビームエキスパンダーは、サンプルに100mJ/cm/パルスの露光量を与えるように調整した。
【0117】
回折効率を決定するために、サンプルをそれぞれ正確に1パルスで露光した。露光後、サンプルをライトテーブル上で漂白した。
【0118】
漂白したサンプルのホログラムを通して透過スペクトルを測定した。Ocean Optics製のHR4000分光計を使用した。サンプルを光ビームに対して垂直に置いた。透過スペクトルは、Bragg条件が満たされた波長において透過崩壊を示した。ベースラインへの透過崩壊の深さを、ミラーのDenisyukホログラムの回折効率DEとして評価した(図3)。
【0119】
物質:
使用した溶媒は商業的に入手した。
【0120】
Desmorapid Z Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツの製品であるジブチル錫ジラウレート[77-58-7]。
【0121】
Desmodur(登録商標)N 3900 Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツの製品である、ヘキサンジイソシアネート系ポリイソシアネート、イミノオキサジアジンジオンの割合が少なくとも30%、NCO含量が23.5%。
【0122】
Fomrez UL 28 Momentive Performance Chemicals、Wilton、CT、USAの市販製品である尿素化触媒。
【0123】
ナトリウムビス(2-エチルヘキシル)-[45297-26-5]は、Aldrich Chemie、Steinheimから入手可能である。
【0124】
スルホスクシネート
式(I)の化合物
[実施例1]
2-エチルヘキシル4-[4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]ベンゾエート
本発明のワンポット法による、2-エチルへキシル4-シアノベンゾエートの調製:
ガラスヘッド、メカニカルスターラー、還流ディバイダーと計量および真空ユニットとを有する蒸留ヘッドを備えた25Lのジャケット付きエナメルタンクに、最初に、25℃において不活性雰囲気下で、10.91kgの2-エチルヘキサノール(1.5当量、[104-76-7]Aldrich Chemie、Steinheim、ドイツ)を装入し、9.00kgのメチル4-シアノベンゾエート(1.0当量、[1129-35-7]ABCR GmbH&CO.KG、Karlsruhe、ドイツ)を混合した。この混合物に、32gのチタン(IV)2-エチルヘキサオキシド(0.001当量、[1070-10-6]ABCR GmbH&CO.KG、Karlsruhe、ドイツ)を添加し、内部温度を130℃に上昇させて2時間維持した。この間、約1.2kgのメタノール(理論量の約2/3)を蒸留した。受器を空にし、圧力を500mbarに下げた。内部温度を135℃に上昇させ、さらに4時間維持した。この時点で、さらなるメタノールは回収されず、ガスクロマトグラフィーによる分析によれば、反応混合物はもはやメチル4-シアノベンゾエートを含まなかった。内部温度を100℃に下げ、受器を空にし、10mbarの圧力を印加した。圧力8.8~9.6mbarおよびオーバーヘッド温度65.5~68.5℃において3.14kgの量の2-エチルヘキサノールを回収した。受器を再び空にした後、内部温度を185~190℃に上げ、0.25mbarの圧力を印加した。オーバーヘッド温度150.0~155.0℃において、2-エチルヘキシル4-シアノベンゾエートを無色の油状物として14.04kg(理論値の96.9%)の量で得た。
【0125】
GC(使用カラム:60mのOptima-5 HT MS、温度プログラム:T開始=70℃で10分間、次いで3℃/分で300℃まで、300℃で5分間)の面積率での積分値:0.11%の2-エチルヘキサノール、99.54%の2-エチルヘキシル4-シアノベンゾエート。
【0126】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.19-8.08(m,2H),7.79-7.71(m,2H),4.35-4.18(m,2H),1.81-1.65(hept,J=6.2Hz,1H),1.53-1.23(m,8H),1.01-0.86(m,6H)。
【0127】
2-エチルヘキシル4-[4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]ベンゾエートの調製
1Lの3つ口フラスコに、150.2gの2-エチルヘキシル4-シアノベンゾエートおよび334.4gのトリクロロアセトニトリルを最初に装入し、この初期装入物を15.4gの臭化アルミニウムと0℃において混合した。この混合物に乾燥HCl(g)を飽和点まで添加し、次いで温度を4時間かけて50℃に上げ、2時間維持した。過剰のHCl(g)を窒素で追い出し、反応混合物を100mLのトルエンで希釈し、-20℃において24時間保持した。副産物として生成されたトリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンをこの温度において定量的に分離し、上清溶液をデカントした。溶媒を減圧下で除去して、256gのわずかに淡黄色の油状物を得た。
【0128】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.81-8.71(m,2H),8.28-8.20(m,2H),4.36-4.25(m,2H),1.81-1.70(dt,J=12.2,6.1Hz,1H),1.53-1.39(m,11H),1.39-1.27(m,4H),1.05-0.95(t,J=7.5Hz,3H),0.95-0.87(m,3H)。
【0129】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ175.42,174.09,165.72,137.00,135.85,130.15,129.97,94.74,67.98,38.93,30.61,28.99,26.90,24.03,22.96,14.03,11.11。
【0130】
フォトポリマー配合物のためのさらなる成分の調製:
ポリオール1の調製:
1リットルのフラスコに、最初に0.18gのオクタン酸錫、374.8gのε-カプロラクトンおよび374.8gの二官能性ポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオール(当量500g/モルOH)を装入し、これを120℃に加熱し、この温度を、これを固形分(不揮発成分の割合)が99.5重量%以上になるまで保持した。その後、この混合物を冷却し、生成物をワックス状固体として得た。
【0131】
ウレタンアクリレート1(書き込みモノマー)の調製:ホスホロチオイルトリス(オキシベンゼン-4,1-ジイルカルバモイルオキシエタン-2,1-ジイル)トリスアクリレート
500mLの丸底フラスコに、最初に0.1gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、0.05gのジブチル錫ジラウレート(Desmorapid(登録商標)Z、Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)および213.07gのトリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートの酢酸エチル中27%溶液(Desmodur(登録商標)RFE、バイエルマテリアルサイエンスAG、レバークーゼン、ドイツからの製品)を装入し、これを60℃に加熱した。続いて、42.37gの2-ヒドロキシエチルアクリレートを滴下し、混合物を、イソシアネート含量が0.1%未満に低下するまで60℃に保持した。これを続いて冷却し、減圧下で酢酸エチルを完全に除去した。生成物を半結晶質固体として得た。
【0132】
ウレタンアクリレート2(書き込みモノマー)の調製:2-({[3-(メチルスルファニル)フェニル]-カルバモイル}オキシ)エチルプロパ-2-エノエート
100mLの丸底フラスコに、最初に0.02gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、0.01gのDesmorapid(登録商標)Z、11.7gの3-(メチルチオ)フェニルイソシアネート[28479-1-8]を装入し、この混合物を60℃に加熱した。続いて、8.2gの2-ヒドロキシエチルアクリレートを滴下し、この混合物を、イソシアネート含量が0.1%未満に低下するまで60℃にさらに保持した。これを続いて冷却した。生成物を無色液体として得た。
【0133】
添加剤1ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル)(2,2,4-トリメチル-ヘキサン-1,6-ジイル)ビスカルバメートの調製
50mLの丸底フラスコに、最初に0.02gのDesmorapid(登録商標)Zおよび3.6gの2,4,4-トリメチルヘキサン1,6-ジイソシアネート(TMDI)を装入し、この混合物を60℃に加熱した。続いて、11.9gの2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプタン-1-オールを滴下し、この混合物をイソシアネート含量が0.1%未満に低下するまで60℃にさらに保持した。これを続いて冷却した。生成物を無色の油状物として得た。
【0134】
色素1の調製:
独国特許第1 073 662号の実施例6と同様の手順で、6.98gの式
【化5】
【0135】
のシアノメチレン塩基および30mLの無水トルエン中6.16gの式
【化6】
【0136】
のアルデヒドを、攪拌しながら3.57gの塩化チオニルと徐々に混合した。その後、100℃において1時間攪拌し、冷却した。50mLのトルエンを加え、色素を吸引により濾別した。色素を毎回30mLのトルエンと一緒に3回攪拌し、この場合もまた毎回吸引により濾別した。50℃で減圧乾燥した後、赤色色素を100mLの水に実質的に溶解した。100mLの酢酸ブチル中12.38gのナトリウムビス(2-エチルヘキシル)スルホスクシネート溶液を添加した。二相混合物を1時間攪拌し、次いで分液漏斗に移した。水相を落下させ、有機相を40mLの水で4回洗浄した。最後の洗浄液を除去した後、有機相を250mLの酢酸ブチルで希釈し、減圧下でロータリーエバポレーターにおいて蒸留水を除去した。また、約200mLの酢酸ブチルをこの工程において留去し、最終的に酢酸ブチル中の式
【化7】
【0137】
の色素の赤色溶液150.1gが残り、この溶液は貯蔵安定性であった。
【0138】
サンプルを採取し、残留溶媒を減圧下で除去した。50℃において減圧下で乾燥した後、色素を、赤色の樹脂状物質として得た。
【0139】
λmax(CHCN中)=498nmおよび523nm、ε=89580(498nmにおいて)および99423Lmol-1cm-1(523nmにおいて)Lmol-1cm-1である。これらの分光データは、上記溶液の濃度が10.0%であることを示した。
【0140】
ホログラフィック特性を決定するための媒体の製造
箔コーティング範囲でのホログラフィック媒体の製造
次に、本発明のフォトポリマー配合物および本発明ではないフォトポリマー配合物からのフィルム形態のホログラフィック媒体を製造するための連続法について記載する。
【0141】
製造法は、図1に示されている箔コーティング範囲を用いて実施され、個々の構成部品は、以下の参照符号が割り当てられている。図1は、使用されたコーティング範囲の概略的な設定を示す。前記図において、個々の構成部品は以下の参照符号を有する。
【0142】
1,1’ ストック貯留容器
2,2’ 計量装置
3,3’ 真空脱気装置
4,4’ フィルタ
5 静的ミキサー
6 コーティング装置
7 循環式空気乾燥機
8 キャリア基材
9 被覆層
実施例媒体1
フォトポリマー配合物を調製するために、39.42gのポリオール1を、15.00gのウレタンアクリレート1および15.00gのウレタンアクリレート2、11.25gの添加剤1、0.075gの実施例1、0.75gのCGI909、0.68gのBYK(登録商標)310界面活性剤、0.038gのFomrez UL-28および23.65gの酢酸エチルの混合物と混合し、均質化した。次いで、この混合物を暗所で1.50gの色素1の酢酸エチル中10%溶液と混合し、透明な溶液が得られるように均質化した。必要であれば、配合物を60℃で短時間加熱して、使用した材料の溶解を速めた。この混合物を、コーティング範囲の2つのストック貯留容器1のうちの1つに入れた。第2のストック貯留容器1’に、ポリイソシアネート成分(Desmodur(登録商標)N3900、Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツの製品、ヘキサンジイソシアネートに基づくポリイソシアネート、イミノオキサジアジンジオンの少なくとも30%、NCO含量:23.5%)を充填した。次いで、2つの成分を計量装置2を介して、942.2(成分混合物)対57.8(イソシアネート)の比で真空脱気装置3にそれぞれ供給し、脱気した。そこから、それらはそれぞれフィルタ4を通過してスタティックミキサー5に送られ、そこで成分が混合されてフォトポリマー配合物が形成された。得られた液状物がコーティング装置6に送液された。
【0143】
この場合のコーティング装置6は、当業者に公知のドクターブレードシステムであった。しかし、代わりに、スロットダイを使用することも可能である。前記コーティング装置6を使用して、処理温度20℃において36μmの厚さのポリエチレンテレフタレート箔の形態のキャリア基材8にフォトポリマー配合物を塗布し、循環式空気乾燥機7中で架橋温度80℃において5.8分間乾燥させ、フィルム形態の媒体を得、その後被覆層9として厚さ40μmのポリエチレン箔を提供し、巻き取った。
【0144】
フィルムの所望の目標層の厚さは、好ましくは1~60μm、好ましくは5~25μm、より好ましくは10~15μmであった。
【0145】
製造速度は、好ましくは0.2m/分~300m/分の範囲であり、より好ましくは1.0m/分~50m/分の範囲であった。
【0146】
フィルム用に得られた層の厚さは12μm±1μmであった。
【0147】
比較媒体I
比較媒体Iは、上記の実施例1を用いなかった。
【0148】
ホログラフィックテスト:
上述のようにして得られた媒体を、上記の様式(パルス露光における回折効率の測定)で図2のような測定装置を使用することによって、それらのホログラフィック特性について試験した。DEについて100mJ/cmの固定線量で以下の測定値が得られた:
【表1】

【表2】
【0149】
実施例媒体1で見出された値は、フォトポリマー配合物に使用される本発明の式(I)の化合物が、パルスレーザーで露光されるホログラフィック媒体において非常に有用であることを示している。比較媒体Iは、本発明による任意の式(I)の化合物を含まず、パルスレーザーで露光されるホログラフィック媒体への使用には不適切である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
図1図1は、使用されたコーティング範囲の概略的な設定を示す。
図2図2は、測定装置を示す。
図3図3は、透過のグラフを示す。
図1
図2
図3