(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20220121BHJP
F25D 21/04 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
F25D23/02 303A
F25D21/04 Z
(21)【出願番号】P 2018015661
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】515118014
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】向 一仁
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-082863(JP,A)
【文献】特開2001-255054(JP,A)
【文献】特開平08-049961(JP,A)
【文献】実開昭58-035791(JP,U)
【文献】特開2006-064288(JP,A)
【文献】特開2004-184040(JP,A)
【文献】登録実用新案第3105637(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
F25D 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を低温状態で貯蔵するための庫室が内部に形成された筐体と、
前記筐体の前面開口を閉鎖するための外扉と、
前記筐体の内部の、前記外扉を閉じた状態において当該外扉の内表面から後方へ隔てた位置に配置された扉枠と、
前記扉枠の前面に取り付けられた透明な内扉と、を備え、
前記外扉及び前記内扉が共に閉じられた状態において、前記外扉と前記内扉の間に前室が形成され、
前記内扉が閉じられた状態において、前記庫室と前記前室とを連通する通路が形成されて
おり、
前記通路は、前記内扉の上部及び下部において、前記内扉と前記扉枠との間に形成された左右方向に延在するギャップであり、
前記通路のうち、前記内扉の上部に形成された前記ギャップは、前記内扉の内表面と前記扉枠の前面との間に形成された前後方向のギャップであることを特徴とする冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を低温状態で貯蔵するための冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば飲料、食品等の物品を冷蔵状態(例えば約5℃の低温状態)または冷凍状態(例えば約-20℃の低温状態)で貯蔵するための冷却貯蔵庫が知られている。
【0003】
このような冷却貯蔵庫は、内部に物品貯蔵用の庫室が形成された筐体と、筐体の前面開口を閉鎖するための扉と、庫室内の空気を冷却するための冷却装置とを備えている。
【0004】
このような冷却貯蔵庫においては、物品の出し入れのために扉を開くと、庫室内の冷気が外部に漏れ(あるいは、庫室内に外気が侵入し)、庫室内の温度が上昇してしまう。
【0005】
これを防止するために、筐体の前面開口を閉鎖するための扉(以下、「外扉」という。)に加えて、外扉の後方に庫室の前面開口を閉鎖するための内扉を設けた冷却貯蔵庫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような冷却貯蔵庫においては、内扉が透明な材料によって形成されており、外扉のみを開いた状態でも内扉を通して庫室内を視認できるうえ、この状態では内扉が閉じているため、庫室内の冷気が外部に漏れる(あるいは、庫室内に外気が侵入する)ことがなく、庫室内を低温に保つことができる。また、外扉と内扉の間の空間が断熱空気層として作用するため、冷却貯蔵庫の断熱性能を向上させることもできる。
【0008】
しかしながら、外扉を開くと、外扉と内扉の間の空間に外気が侵入し、外気に含まれる水分が、庫室内の冷気との接触により低温となっている内扉の外表面で結露する。結露が発生すると、内扉が曇って不透明となるため、庫室内を視認するうえで妨げとなり好ましくない。
【0009】
その対策として、結露の発生を防止、あるいは、発生した結露を事後的に除去(デフロスト)するために、内扉をフィルムヒータ等のヒータによって加熱することが有効であると考えられる。しかしながら、ヒータを設けると、加熱され高温となった内扉は、その外表面の結露を融解するためにこれを加熱するのみならず、その内表面に接触する庫室内の冷気をも加熱することになるため、庫室内の温度が上昇してしまうという問題が生じる。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであって、物品を低温状態で貯蔵するための庫室が内部に形成された筐体と、筐体の前面開口を閉鎖するための外扉と、庫室の前面開口を閉鎖するための内扉とを備え、外扉を開いた場合であっても内扉の外表面における結露の発生を防止することができる冷却貯蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の冷却貯蔵庫は、物品を低温状態で貯蔵するための庫室が内部に形成された筐体と、前記筐体の前面開口を閉鎖するための外扉と、前記筐体の内部の、前記外扉を閉じた状態において当該外扉の内表面から後方へ隔てた位置に配置された扉枠と、前記扉枠の前面に取り付けられた透明な内扉と、を備え、前記外扉及び前記内扉が共に閉じられた状態において、前記外扉と前記内扉の間に前室が形成され、前記内扉が閉じられた状態において、前記庫室と前記前室とを連通する通路が形成されており、前記通路は、前記内扉の上部及び下部において、前記内扉と前記扉枠との間に形成された左右方向に延在するギャップであり、前記通路のうち、前記内扉の上部に形成された前記ギャップは、前記内扉の内表面と前記扉枠の前面との間に形成された前後方向のギャップであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内扉が閉じられた状態において、外扉と内扉の間に形成された前室と庫室とを連通する通路が形成されているので、外扉が開かれて前室内に外気が侵入した場合であっても、結露の原因となる水分を含む前室内の空気が、蒸発器で除湿された庫室内の空気によって速やかに置換されることになる。これにより、除湿された空気中で内扉の外表面に付着した水分が蒸発し、結露(曇り)を速やかに解消することができるという優れた効果を得ることができる。さらに、外扉の一部がペアガラス等の透視可能な構造の場合、庫室内を良好に視認することができるという優れた効果も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】本発明の冷却貯蔵庫を向かって左側から見た概略断面図である。
【
図3】本発明の冷却貯蔵庫における内扉の一実施例を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の冷却貯蔵庫における内扉の他の実施例を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の冷却貯蔵庫における内扉のスリットの他の設置態様例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の冷却貯蔵庫の概略斜視図、
図2は、本発明の冷却貯蔵庫を向かって左側から見た概略断面図である。
【0023】
冷却貯蔵庫1は、上部に配置された貯蔵部Sと、下部に配置された機械部Mとから構成されている。
【0024】
貯蔵部Sは、前面開口を有する直方体状の筐体である外箱10(筐体)と、外箱10の前面開口を閉鎖するための外扉20とを備えており、外箱10及び外扉20は、いずれも、内部に断熱材が充填された構造を有している。
【0025】
外扉20は、外箱10の向かって左側(または右側)の側壁の前面に取り付けられたヒンジ(図示省略)を中心として回動することにより、外箱10の前面開口を開閉する。
【0026】
また、外扉20の内表面の周縁部(外扉20を閉じた状態で、外箱10を構成する上下左右の壁の前面と対向する部位)には、外扉20を閉じた状態で外箱10の内部から冷気が外部へ漏れる(あるいは、外箱10の内部に外気が侵入する)ことを防止するために、全周にわたってパッキン22が取り付けられている。
【0027】
さらに、外扉20の中央部には、ペアガラス24が嵌め込まれている。これにより、ペアガラス24を構成する2枚のガラスの間の空間を断熱空気層として作用させることで断熱性を保ちつつ、外扉20を閉じた状態でも内部を視認することが可能となる。なお、外扉20を閉じた状態で内部を視認する必要がない場合は、ペアガラスを設けなくてもよい。
【0028】
外箱10の内部には、外扉20を閉じた状態で外扉20の内表面から後方へ隔てて配置された矩形の扉枠11が設けられており、扉枠11の前面には、内扉30が取り付けられている。これにより、外扉20及び内扉30を閉じた状態において、外箱10の内部空間は、内扉30によって、外扉20と内扉30の間に形成される前室FCと、内扉30の後方に形成された庫室SCとに区分されることになる(
図2参照)。なお、扉枠11は、外箱10の上下左右の壁の内面にこれと一体のものとして形成してもよいし、その一部を別部品として、あるいは、後述する内箱40の上下左右の壁の前端部によって形成してもよい。
【0029】
内扉30は、アクリル等の透明な材料によって形成されており、外扉20のみを開いた状態でも内扉30を通して庫室SC内を視認できるうえ、この状態では内扉30が閉じているため、庫室SC内に外気が侵入することがなく、庫室SC内を低温に保つことができる。また、外扉20と内扉30の間に形成される前室FCが断熱空気層として作用するため、冷却貯蔵庫1の断熱性能を向上させることもできる。
【0030】
内扉30は、
図1に示すように、扉枠11の前面の左側及び右側にそれぞれ取り付けられたヒンジを中心として回動する両開きの扉として形成されている。しかしながら、内扉30は、扉枠11の前面の左側または右側に取り付けられたヒンジを中心として回動する片開きの扉として形成されていてもよい。
【0031】
外箱10の内部であって、閉じられた状態の内扉30より後方の部位には、
図2に示すように、内箱40が配置されている。
【0032】
内箱40は、前面開口を有する直方体状の筐体であり、上部壁42、後部壁44及び下部壁46、並びに、左右の側壁から構成されている。
【0033】
内箱40の上部壁42、後部壁44及び下部壁46は、外箱10の上部壁12、後部壁14及び下部壁16のそれぞれの内面から隔てて配置されている。これにより、外箱10と内箱40の間には、冷気が循環する冷気ダクトCが形成されている。
【0034】
内箱40の上部壁42及び下部壁46には、それぞれ開口部42A及び46Aが形成されている。また、内箱40の上部壁42は、扉枠11の後面から後方へ隔てて配置されており、これにより、上部壁42の前端と扉枠11の間には、冷気通路42Pが形成されている。
【0035】
冷気ダクトCのうち、外箱10の後部壁14と内箱40の後部壁44の間の部位の、高さ方向における中央部近傍には、後述する冷却装置50を構成する蒸発器56が、その上方には、送風ファン56Fが、それぞれ配置されている。
【0036】
機械部Mは、外箱10の下方に配置された機械室MCを含み、機械室MC内には、庫室SC内の空気を冷却するための冷却装置50が収納されている。
【0037】
冷却装置50は、主な構成機器として圧縮機52、凝縮器54、膨張機構(図示省略)及び蒸発器56を含み、冷凍サイクルを実行する。これらの機器のうち、圧縮機52、凝縮器54及び膨張機構(図示省略)は機械室MC内に配置されているが、蒸発器56は、上述したとおり、冷気ダクトC内に配置されている。
【0038】
以上の構成を有することにより、蒸発器56を通過する際に冷却された庫室SC内の空気は、送風ファン56Fの作用により、冷気ダクトCのうち外箱10の後部壁14と内箱40の後部壁44の間の部位を上方へ流れ、その一部が、内箱40の上部壁42に設けられた開口部42Aを通って庫室SC内に流入する。残りの空気は、内箱40の上部壁42の前端と扉枠11の間に形成された冷気通路42Pを通って庫室SC内に流入し、閉じられた状態の内扉30の内表面、即ち扉枠11の開口面に沿う下向きの流れを形成する。この空気の流れはエアカーテンとして作用し、内扉30が開かれた際に、庫室SC内への外気の侵入を防止する。庫室SC内を下方へ流れた冷気は、内箱40の下部壁46に設けられた開口部46Aを通って庫室SCから冷気ダクトCへ戻り、その後、蒸発器56へと還流する。
【0039】
そして、本発明の冷却貯蔵庫1においては、外扉20を開いた場合であっても、内扉30の外表面(前室FCに臨む面)に結露が発生することを防止するため、内扉30が以下で説明する特徴を具えている。
【0040】
即ち、本発明の冷却貯蔵庫1において、内扉30は、当該内扉30が閉じた状態(閉位置にある状態)において、庫室SCと前室FCを連通する通路が形成されるような態様のものとされている。これについて、以下で詳述する。
【0041】
なお、上述した特徴が示すとおり(また、以下で詳述するとおり)、内扉30は如何なる状態においても扉枠11の内側の開口を完全に閉鎖するものではないため、内扉30の「閉位置」は、内扉30の回動範囲内において、内扉30の内表面が扉枠11の前面に最も接近する位置を指すものと定義する。
【0042】
図3は、本発明の冷却貯蔵庫1における内扉の一実施例を示す概略説明図であり、内扉30が閉位置にある状態を示している。(a)は内扉30を正面から見た図、(b)は(a)のT方向矢視図(トップビュー)、(c)は(a)のB方向矢視図(ボトムビュー)、(d)は(a)のX-X拡大断面図、(e)は(a)のY-Y拡大断面図を示す。
【0043】
本実施例において、内扉30は、扉枠11の前面の向かって左側及び右側に取り付けられたヒンジ11Hを中心としてそれぞれ回動する内扉30L及び30Rから成る両開きの扉として形成されている。また、左右の内扉30L及び30Rは共に上下に2分割され、それぞれ内扉セクション30LU及び内扉セクション30LL、内扉セクション30RU及び内扉セクション30RLから成っている。
【0044】
そして、左右の内扉30L及び30Rは、いずれも、その上下方向の寸法が、扉枠11の内法(うちのり)寸法よりも大きく形成されており、これにより、内扉セクション30LU及び30RUの上端部、及び、内扉セクション30LL及び30RLの下端部は、前後方向に扉枠11とオーバーラップしている。
【0045】
それと同時に、左右の内扉30L及び30Rは、(b)のT方向矢視図(トップビュー)及び(c)のB方向矢視図(ボトムビュー)に示すように、扉枠11の前面から前方へ隔たっている。これは、内箱40の内部を左右に仕切る隔壁48(
図1参照)の前面の上部及び下部に、内扉30の閉位置において左右の内扉30L及び30Rの内表面と接触するストッパ48Sが取り付けられており、当該ストッパ48Sの前面が扉枠11の前面より前方へ突出していることによる。これにより、内扉30の上部及び下部において、その内表面と扉枠11の前面との間に、それぞれ前後方向のギャップGU及びGLが形成されている。
【0046】
なお、ストッパは、隔壁48の前面に代えて、扉枠11の前面や左右の内扉30L及び30Rの内表面に取り付けてもよい。
【0047】
また、上述したように、左右の内扉30L及び30Rがそれぞれ上下に2分割されていることにより、内扉セクション30LU及び30RUと内扉セクション30LL及び30RLの間には、ギャップGMが形成されている。
【0048】
内扉30の上部及び下部にそれぞれ形成されるギャップGU及びGLは、(d)のX-X拡大断面図及び(e)のY-Y拡大断面図にそれぞれ矢印AE及びAIで示すように、庫室SCと前室FCとを連通する通路を形成する。同様に、内扉30の上下方向の中央部に形成されるギャップGMも、庫室SCと前室FCとを連通する通路を形成する。
【0049】
以上のように構成されていることにより、庫室SC内を循環する冷気の一部は、ギャップGU及びGMを経て前室FC内へ流出し、内扉30の外表面に沿って下方へ流れた後、ギャップGLを経て再び庫室SC内へ流入する。ギャップGLを経て庫室SC内へ流入する流れは、送風ファン56Fの作用により、内箱40の下部壁46に設けられた開口部46Aを通じて、庫室SC内の空気が冷気ダクトC内へ吸引されていることにより生じるものである。
【0050】
上述した冷気の流れが生じていることにより、外扉20が開かれて前室FC内に外気が侵入した場合であっても、高温・高湿度の状態となった前室FC内の空気は、ギャップGU及びGMを経て庫室SC内から流入する低温・低湿度の空気によって置換されることになる。したがって、内扉30の外表面における結露の発生を防止することができる。
【0051】
この結露発生防止効果は、ギャップGU、GM及びGLが内扉30の左右方向の全域にわたって延在するものとして形成されていることにより、一層顕著なものとなっている。即ち、ギャップGU、GM及びGLが内扉30の左右方向の全域にわたって延在していることにより、庫室SC内から流出した低温・低湿度の空気は内扉30のほぼ全面に沿って下方へ流れ、結露発生防止効果は、内扉30のほぼ全面において現れることになる。
【0052】
なお、
図3に示した実施例においては、内扉30の上部に形成されるギャップGUを、(d)のX-X拡大断面図に示されるように蛇行する通路を形成するものとしている。これは、ギャップGUの形成される位置が、冷気ダクトCのうち外箱10の上部壁12と内箱40の上部壁42の間の部位を前方へ流れる冷気が衝突する位置にあたるため、庫室SC内から前室FC内へ過剰に多くの冷気が流出することを防止すべく、通路の流体抵抗を増大させることを意図したものである。
【0053】
同実施例においては、内扉セクション30LU及び30RUと内扉セクション30LL及び30RLとを同一形状の部品(即ち、共通部品)としているため、内扉30の下部に形成されるギャップGLも、(e)のY-Y拡大断面図に示されるように蛇行する通路を形成するものとなっている。しかしながら、前室FC内から庫室SC内へ冷気を吸引する機能を有する当該ギャップGLは、必ずしも、流体抵抗を増大させた通路を形成するものとする必要はない。したがって、
図3に破線で示すように、内扉セクション30LL及び30RLの上下方向の寸法を短縮することにより、庫室SCと前室FCとを前後方向に直線的に連通する通路となるギャップGL‘を形成してもよい。
【0054】
また、
図1~
図3に示した実施例においては、左右の内扉30L及び30Rを共に上下に2分割された構造のものとしているが、上下方向の分割数を3以上としてもよいし、逆に、上下方向に分割しなくてもよい。左右の内扉30L及び30Rを共に上下に2分割しない場合であっても、内扉30の左右方向の全域にわたって延在するギャップGUを経て庫室SC内から前室FC内へ冷気が流出するので、十分な結露発生防止効果を得ることができる。
【0055】
なお、
図1~
図3に示した実施例においては、内扉30と扉枠11とが接触していないので、結露により生じた水分が、内扉30の外縁部と扉枠11とに跨って付着することがなく、これが凍結することにより内扉30と扉枠11とが氷着し、内扉30の開閉が困難となることが防止される。
【0056】
図4は、本発明の冷却貯蔵庫1における内扉の他の実施例を示す概略説明図であり、内扉130が閉位置にある状態を示している。
図3と同様、(a)は内扉130を正面から見た図、(b)は(a)のT方向矢視図(トップビュー)、(c)は(a)のB方向矢視図(ボトムビュー)、(d)は(a)のX-X拡大断面図、(e)は(a)のY-Y拡大断面図を示す。
【0057】
本実施例が、
図3を用いて説明した実施例と異なる点は、内扉130を構成する左右の内扉130L及び130Rが、(b)のT方向矢視図(トップビュー)及び(c)のB方向矢視図(ボトムビュー)に示すように、扉枠111の前面と接触している点である。このような配置においては、内扉130の上部及び下部において、その内表面と扉枠111の前面との間に、ギャップは形成されない。
【0058】
そこで、本実施例においては、
図3を用いて説明した実施例におけるギャップGU及びGLに代えて庫室SCと前室FCとを連通する通路を形成するものとして、左右の内扉130L及び130Rのそれぞれの上部及び下部に、それぞれ左右方向に延在するスリットSU及びSLを設けている。より具体的には、向かって左側の内扉130Lを構成する内扉セクション130LU及び130LLのそれぞれの上部及び下部の、扉枠111の前面と前後方向に重ならない位置に、スリットSU及びSLを設けている。同様に、向かって右側の内扉130Rを構成する内扉セクション130RU及び130RLのそれぞれの上部及び下部の、扉枠111の前面と前後方向に重ならない位置にも、スリットSU及びSLを設けている。
【0059】
これにより、庫室SC内を循環する冷気の一部は、スリットSUを経て前室FC内へ流出し、内扉130の外表面に沿って下方へ流れた後、スリットSLを経て再び庫室SC内へ流入することとなり、
図3を用いて説明した実施例と同様に、内扉130の外表面における結露の発生を防止することができる。
【0060】
なお、本実施例においても、左右の内扉130L及び130Rの上下方向の分割数を3以上としてもよいし、逆に、上下方向に分割しなくてもよい。
【0061】
なお、スリットの設置態様は、
図4に示されたものに限定されない。本発明の冷却貯蔵庫1における内扉のスリットの他の設置態様例を、
図5を参照して以下で説明する。
【0062】
スリットSU及びSLは、
図4に示された実施例においては、内扉の上部及び下部のそれぞれに設けられているが、
図5(a)及び(b)に示すように、扉枠211のうち、それぞれ内扉230LUの上端よりも上方及び内扉230LLの下端よりも下方に位置する部位に設けてもよい。
【0063】
また、特に内扉の上部に設けられるスリットについては、内扉330LUのうちスリットSUの上側に隣接する部位を、前方へ(即ち、前室FC側へ)突出させたルーバLVとして形成(
図5(c)参照)、あるいは、内扉430LUに設けられるスリットSUを後方から前方へ向かって下向きに傾斜した形状のものとして形成(
図5(d)参照)してもよい。これにより、庫室SC内からスリットSUを経て前室FC内へ流出する冷気が、より確実に内扉の外表面に沿って流れるようになり、結露の防止または解消の効果を上げることができる。
【0064】
さらに、特に内扉の上部に設けられるスリットについては、庫室SC内において内扉530LUに設けられたスリットSUに対向する位置に遮風板(壁)BFを配置(
図5(e)参照)、あるいは、内扉630LUのうちスリットSUの上側に隣接する部位を、後方へ(即ち、庫室SC側へ)突出させたルーバLVとして形成(
図5(f)参照)してもよい。これにより、スリットSUにより形成される通路の流体抵抗を増大し、庫室SC内から前室FC内へ過剰に多くの冷気が流出することを防止することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 冷却貯蔵庫
10 外箱(筐体)
11、111 扉枠
20 外扉
24 ペアガラス
30、130 内扉
FC 前室
SC 庫室
GU,GM,GL ギャップ(通路)
SU,SL スリット(通路)