(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】時計用ムーブメントおよび時計
(51)【国際特許分類】
G04C 3/00 20060101AFI20220204BHJP
G04C 3/14 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
G04C3/00 E
G04C3/14 W
(21)【出願番号】P 2018022234
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】田邉 幸子
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-086097(JP,A)
【文献】特開2000-321376(JP,A)
【文献】特開昭55-058402(JP,A)
【文献】特開2017-201307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00-99/00
G01D 5/00- 5/252
G01D 5/39- 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性部を有する回転体と、
前記磁性部に対して磁気反応を示す対応磁性部と、
前記磁性部と前記対応磁性部との磁気反応により生じた前記回転体の回転負荷の変動を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部により検出された前記回転体の回転負荷の変動に基づいて、前記回転体の回転方向における基準位置を検出する位置検出部と、
を備え
、
前記磁性部の少なくとも一部は、前記回転体の周方向に沿って延び、
前記磁性部は、前記回転体が前記基準位置に位置するときに、前記周方向に沿って延びる部分における前記対応磁性部に最接近する箇所のみに間欠部を備える、
ことを特徴とする時計用ムーブメント。
【請求項2】
磁性部を有する回転体と、
前記磁性部に対して磁気反応を示す対応磁性部と、
前記磁性部と前記対応磁性部との磁気反応により生じた前記回転体の回転負荷の変動を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部により検出された前記回転体の回転負荷の変動に基づいて、前記回転体の回転方向における基準位置を検出する位置検出部と、
を備え
、
前記回転体は、前記回転体の中心角30度ずつ区分けされた12の区分領域を備え、
12の前記区分領域を、任意の1つの前記区分領域を始点として前記回転体の周方向一方側に順に第1区分領域から第12区分領域としたとき、
前記磁性部は、第4区分領域、第5区分領域、第6区分領域、第8区分領域、第10区分領域および第11区分領域において、前記回転体の径方向における互いに同じ位置に設けられている、
ことを特徴とする時計用ムーブメント。
【請求項3】
磁性部を有する回転体と、
前記磁性部に対して磁気反応を示す対応磁性部と、
前記磁性部と前記対応磁性部との磁気反応により生じた前記回転体の回転負荷の変動を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部により検出された前記回転体の回転負荷の変動に基づいて、前記回転体の回転方向における基準位置を検出する位置検出部と、
を備え
、
前記磁性部は、前記回転体の周方向に沿って円環状に延び、
前記磁性部は、
第1磁性部と、
前記第1磁性部以外の部分に設けられ、前記第1磁性部よりも磁化率または磁化の小さい第2磁性部と、
を有し、
前記第1磁性部および前記第2磁性部のいずれか一方は、前記回転体が前記基準位置に位置するときに、前記対応磁性部に最接近する位置のみに設けられている、
ことを特徴とする時計用ムーブメント。
【請求項4】
前記回転体が支持された支持部材をさらに備え、
前記対応磁性部は、前記支持部材に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の時計用ムーブメント。
【請求項5】
前記
対応磁性部は、前記回転体に噛み合う被係合回転体である、
ことを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の時計用ムーブメント。
【請求項6】
磁性部を有する回転体と、
前記磁性部に対して磁気反応を示す対応磁性部と、
前記磁性部と前記対応磁性部との磁気反応により生じた前記回転体の回転負荷の変動を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部により検出された前記回転体の回転負荷の変動に基づいて、前記回転体の回転方向における基準位置を検出する位置検出部と、
を備え
、
前記対応磁性部は、前記回転体に対して前記回転体の回転軸線方向で対向する位置に設けられ、前記回転体の回転を規正する規正レバーに設けられる、
ことを特徴とする時計用ムーブメント。
【請求項7】
前記磁性部は、前記回転体が前記基準位置に位置するときに、前記対応磁性部に最接近する位置のみに設けられている、
ことを特徴とする請求項
6に記載の時計用ムーブメント。
【請求項8】
前記磁性部は、
第1磁性部と、
前記回転体の径方向において前記第1磁性部と同じ位置に設けられ、前記第1磁性部よりも磁化率または磁化の小さい第2磁性部と、
を備える、
ことを特徴とする請求項
6に記載の時計用ムーブメント。
【請求項9】
前記磁性部は、前記回転体における前記回転体の回転軸線方向に向く主面上に設けられている、
ことを特徴とする請求項1
から請求項8のいずれか1項に記載の時計用ムーブメント。
【請求項10】
前記磁性部は、前記回転体の最外周部に設けられている、
ことを特徴とする請求項1
から請求項9のいずれか1項に記載の時計用ムーブメント。
【請求項11】
前記磁性部は、前記回転体における前記回転体の径方向外側に向く側面上に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の時計用ムーブメント。
【請求項12】
指針を回転させるロータを有するステッピングモータと、
前記負荷検出部および前記位置検出部を含み、主駆動パルスおよび補助駆動パルスによって前記ロータを回転させるとともに、前記主駆動パルスに基づく検出駆動パルスによって前記指針を回転させたときに前記ロータの回転状態の検出により前記指針の指針基準位置を判断する制御部と、
前記回転体を有し、前記ステッピングモータの駆動力を前記指針に伝達する輪列と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の時計用ムーブメント。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の時計用ムーブメントを備えることを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用ムーブメントおよび時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時計において、指針の位置を検出するために、輪列を構成する歯車の回転位置を検出する手法が用いられる場合がある。歯車の回転位置を検出する手法として、例えば歯車が有する穴を発光素子と受光素子で挟み、透過光の有無によって検出することが知られている。
【0003】
また、歯車の回転位置を検出する手法として、磁気を用いる技術がある(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明では、歯車の回転面上に歯車中心より放射状に指針の回転位置をデジタルコード化した硬磁性膜パターンが形成され、かつ該硬磁性膜パターンが垂直磁化されており、該硬磁性膜パターンに対向して時計基板にホール素子が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、ホール素子が設けられるので、部品点数が増加する。また、ホール素子が歯車の回転面に対向して設けられているので、歯車の回転軸線方向にムーブメントが大型化する可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、回転体の回転位置を検出する手段を、部品点数の増加および大型化を抑制して実現できる時計用ムーブメントおよび時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の時計用ムーブメントは、磁性部を有する回転体と、前記磁性部に対して磁気反応を示す対応磁性部と、前記磁性部と前記対応磁性部との磁気反応により生じた前記回転体の回転負荷の変動を検出する負荷検出部と、前記負荷検出部により検出された前記回転体の回転負荷の変動に基づいて、前記回転体の回転方向における基準位置を検出する位置検出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、回転体が回転して磁性部が対応磁性部に接近すると、磁気反応により磁性部と対応磁性部との間に磁力が作用する。これにより、回転体の回転負荷を変動させることができる。このため、従来技術のようにホール素子を用いることなく、負荷検出部および位置検出部によって回転体の回転方向における基準位置を検出することができる。したがって、回転体の回転位置を検出する手段を、部品点数の増加および大型化を抑制して実現できる。
【0009】
上記の時計用ムーブメントにおいて、前記磁性部は、前記回転体における前記回転体の回転軸線方向に向く主面上に設けられている、ことが望ましい。
【0010】
本発明によれば、回転体が歯車である場合等、回転体の外周面に他の部材が係合する場合、回転体における他の部材に係合しない箇所に磁性部が設けられるので、回転体と他の部材との係合により磁性部が損傷することを抑制できる。
【0011】
上記の時計用ムーブメントにおいて、前記磁性部は、前記回転体の最外周部に設けられている、ことが望ましい。
【0012】
本発明によれば、磁性部が回転体の最外周部よりも内側に設けられている構成と比較して、磁性部と対応磁性部との間に作用する同等の磁力によって、回転体に対してより大きなトルクを付与することができる。したがって、回転体の回転負荷をより確実に変動させることができる。
【0013】
上記の時計用ムーブメントにおいて、前記磁性部は、前記回転体における前記回転体の径方向外側に向く側面上に設けられている、ことが望ましい。
【0014】
本発明によれば、磁性部は、回転体の最外周部に設けられる。このため、磁性部が回転体の最外周部よりも内側に設けられている構成と比較して、磁性部と対応磁性部との間に作用する同等の磁力によって、回転体に対してより大きなトルクを付与することができる。したがって、回転体の回転負荷をより確実に変動させることができる。
【0015】
上記の時計用ムーブメントにおいて、前記磁性部は、前記回転体が前記基準位置に位置するときに、前記対応磁性部に最接近する位置のみに設けられている、ことが望ましい。
【0016】
本発明によれば、回転体が基準位置に位置しない状態では、磁性部と対応磁性部との間に磁気反応が生じず、磁力が作用しないので、回転体の回転負荷が小さくなる。したがって、回転体の回転負荷の増大に伴う、駆動に要する消費電力の増加を抑制できる。
【0017】
上記の時計用ムーブメントにおいて、前記磁性部の少なくとも一部は、前記回転体の周方向に沿って延び、前記磁性部は、前記回転体が前記基準位置に位置するときに、前記周方向に沿って延びる部分における前記対応磁性部に最接近する箇所のみに間欠部を備える、ことが望ましい。
【0018】
本発明によれば、間欠部が対応磁性部に接近すると、磁性部と対応磁性部との磁気反応の度合いが低下する。このため、磁性部に作用する磁力は、磁性部の間欠部が対応磁性部に最接近するときに減少する。したがって、回転体が基準位置に位置するときに回転体の回転負荷を変動させることができるので、負荷検出部および位置検出部によって回転体の基準位置を検出することができる。
【0019】
上記の時計用ムーブメントにおいて、前記磁性部は、第1磁性部と、前記回転体の径方向において前記第1磁性部と同じ位置に設けられ、前記第1磁性部よりも磁化率または磁化の小さい第2磁性部と、を備える、ことが望ましい。
【0020】
本発明によれば、第1磁性部が対応磁性部に接近する場合と、第2磁性部が対応磁性部に接近する場合と、で磁気反応の度合いが相違する。すなわち、回転体の回転位置によって磁気反応の度合いを変化させることができる。したがって、回転体の回転負荷を変動させることができるので、負荷検出部および位置検出部によって回転体の基準位置を検出することができる。
【0021】
上記の時計用ムーブメントにおいて、前記回転体が支持された支持部材をさらに備え、前記対応磁性部は、前記支持部材に設けられている、ことが望ましい。
【0022】
本発明によれば、対応磁性部を支持するために新たな部品を追加する必要がない。したがって、部品点数の増加を抑制できる。
【0023】
上記の時計用ムーブメントにおいて、前記対応磁性部は、前記回転体に噛み合う被係合回転体である、ことが望ましい。
【0024】
本発明によれば、回転体を含む輪列が回転体に噛み合う被係合回転体を有する場合に、対応磁性部として新たな部品を追加する必要がない。したがって、部品点数の増加を抑制できる。
【0025】
上記の時計用ムーブメントにおいて、前記対応磁性部は、前記回転体に対して前記回転体の回転軸線方向で対向する位置に設けられ、前記回転体の回転を規正する規正レバーに設けられる、ことが望ましい。
【0026】
本発明によれば、対応磁性部として新たな部品を追加する必要がない。したがって、部品点数の増加を抑制できる。
【0027】
上記の時計用ムーブメントにおいて、前記回転体は、前記回転体の中心角30度ずつ区分けされた12の区分領域を備え、12の前記区分領域を、任意の1つの前記区分領域を始点として前記回転体の周方向一方側に順に第1区分領域から第12区分領域としたとき、前記磁性部は、第4区分領域、第5区分領域、第6区分領域、第8区分領域、第10区分領域および第11区分領域において、前記回転体の径方向における互いに同じ位置に設けられている、ことが望ましい。
【0028】
本発明によれば、回転角度30度毎の連続する4つの回転負荷のパターンは、12の初期位置それぞれに対して異なるパターンとなる。すなわち、回転体を120度回転させて、回転角度30度毎に回転負荷を4回検出することで、検出動作開始時の回転体の回転位置を把握することができる。このため、回転体が360度回転する間において回転体の回転負荷が1回のみ変動する構成と比較して、回転体の回転位置を速やかに検出できる。
【0029】
上記の時計用ムーブメントにおいて、指針を回転させるロータを有するステッピングモータと、前記負荷検出部および前記位置検出部を含み、主駆動パルスおよび補助駆動パルスによって前記ロータを回転させるとともに、前記主駆動パルスに基づく検出駆動パルスによって前記指針を回転させたときに前記ロータの回転状態の検出により前記指針の指針基準位置を判断する制御部と、前記回転体を有し、前記ステッピングモータの駆動力を前記指針に伝達する輪列と、を備える、ことが望ましい。
【0030】
本発明によれば、指針の指針基準位置を把握する手段を通常運針可能な所定負荷によって実現できる。したがって、補助駆動パルスを用いることなく回転体を1周回転させることができるので、補助駆動パルスを使用した場合の駆動に要する消費電力の増加を抑制できる。
【0031】
本発明の時計は、上記の時計用ムーブメントを備えることを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、回転体の回転位置を検出する手段を、部品点数の増加および大型化を抑制して実現された時計を提供できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、回転体の回転位置を検出する手段を、部品点数の増加および大型化を抑制して実現できる時計用ムーブメントおよび時計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1実施形態に係る時計の構成例を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る指針の指針基準位置の一例を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態に係る指針駆動部とモータ負荷検出部の構成例を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係るパルス制御部が出力する駆動パルスの例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係るモータの構成例を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る主駆動パルスとモータ回転時に発生する誘起電圧の例を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る負荷の状態と誘起電圧の関係を説明するための図である。
【
図8】第1実施形態に係る指針位置を検出する手順の概要を説明するための図である。
【
図9】第1実施形態に係る針位置検出を行う処理手順例を示すフローチャートである。
【
図10】第1実施形態の時計用ムーブメントを示す断面図である。
【
図12】第1実施形態の四番歯車の拡大斜視図である。
【
図13】第2実施形態の四番歯車の拡大斜視図である。
【
図17】第5実施形態の負荷検出部のよって検出される四番歯車の回転負荷のパターンを示す表である。
【
図18】第5実施形態に係る針位置検出を行う処理手順例を示すフローチャートである。
【
図19】第6実施形態の時計用ムーブメントを示す断面図である。
【
図20】第7実施形態の時計用ムーブメントを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る時計1の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、時計1は、電池2、発振回路3、分周回路4、記憶部5、制御部10、第1モータ20a、第2モータ20b、第3モータ20c、輪列30a、輪列30b、輪列30c、第1指針40a、第2指針40b、および第3指針40cを備える。
【0037】
制御部10は、パルス制御部11(位置検出部)、および指針駆動部12を備える。
指針駆動部12は、第1指針駆動部121a、モータ負荷検出部122a(負荷検出部)、第2指針駆動部121b、モータ負荷検出部122b(負荷検出部)、第3指針駆動部121c、およびモータ負荷検出部122c(負荷検出部)を備える。
なお、時計用ムーブメントは、少なくとも記憶部5、制御部10、第1モータ20a、第2モータ20b、第3モータ20c、輪列30a、輪列30b、および輪列30cを備える。
【0038】
なお、第1モータ20a、第2モータ20b、および第3モータ20cのうちの1つを特定しない場合は、モータ20という。また、輪列30a、輪列30b、および輪列30cのうちの1つを特定しない場合は、輪列30という。また、第1指針40a、第2指針40b、および第3指針40cのうちの1つを特定しない場合は、指針40という。また、第1指針駆動部121a、第2指針駆動部121b、および第3指針駆動部121cのうちの1つを特定しない場合は、指針駆動部121という。また、モータ負荷検出部122a、モータ負荷検出部122b、およびモータ負荷検出部122cのうちの1つを特定しない場合は、モータ負荷検出部122という。
【0039】
なお、
図1に示す時計1は、計時した時刻を指針40によって表示するアナログ時計である。
図1に示した例では、時計1が3本の指針40を備える例であるが、指針40の数は、1本でも2本でも4本以上であってもよい。その場合、時計1は、指針駆動部121、モータ負荷検出部122、モータ20、および輪列30を、指針40毎に備えている。
【0040】
電池2は、例えばリチウム電池や酸化銀電池等の、いわゆるボタン電池である。なお、電池2は、太陽電池、および太陽電池によって発電された電力を蓄電する蓄電池であってもよい。電池2は、電力を制御部10に供給する。
【0041】
発振回路3は、例えば水晶の圧電現象を利用し、その機械的共振から所定の周波数を発振するために用いられる受動素子である。ここで、所定の周波数は、例えば32[kHz]である。
分周回路4は、発振回路3が出力した所定の周波数の信号を所望の周波数に分周し、分周した信号を制御部10に出力する。
【0042】
記憶部5は、第1指針40a、第2指針40b、第3指針40cそれぞれの主駆動パルス、補助駆動パルスを記憶する。なお、主駆動パルス、補助駆動パルスについては、後述する。また、記憶部5は、第1指針40a、第2指針40b、第3指針40cそれぞれのサーチパルスを記憶する。なお、サーチパルスは、指針40の指針基準位置を検出する際に用いられる。サーチパルス、指針基準位置の検出については、後述する。記憶部5は、区間T1~T3における、モータ負荷検出部122が備える比較器Q7(
図3参照)の出力の組み合わせと回転状態とモータ20の状態を関連付けて記憶している。なお、区間T1~T3については、
図7を用いて後述する。記憶部5は、所定周期、後述する駆動パルスにおけるパルスの幅、駆動パルスにおけるパルスの数、変更したパルスの数等を記憶する。記憶部5は、制御部10が制御に用いるプログラムを記憶する。
【0043】
制御部10は、分周回路4が分周した所望の周波数を用いて計時を行い、計時した結果に応じて、指針40を運針するようにモータ20を駆動する。また、制御部10は、モータ20の回転によって発生する逆起電圧(誘起電圧)を検出し、検出した結果に基づいて、指針40の指針基準位置を検出する。なお、指針基準位置の検出方法は、後述する。
【0044】
パルス制御部11は、分周回路4が分周した所望の周波数を用いて計時を行い、計時した結果に応じて指針40を運針するようにパルス信号を生成し、生成したパルス信号を指針駆動部12に出力する。また、パルス制御部11は、指針駆動部12が検出したモータ20に発生する誘起電圧と基準電圧との比較結果を取得し、取得した結果に基づいて指針基準位置の検出を行う。
【0045】
また、パルス制御部11は、駆動端子M111、駆動端子M112、駆動端子M121、駆動端子M122、制御端子G11、制御端子G12が、第1指針駆動部121aに接続され、検出端子CO1がモータ負荷検出部122aに接続されている。また、駆動端子M211、駆動端子M212、駆動端子M221、駆動端子M222、制御端子G21、制御端子G22が、第2指針駆動部121bに接続され、検出端子CO2がモータ負荷検出部122bに接続されている。また、駆動端子M311、駆動端子M312、駆動端子M321、駆動端子M322、制御端子G31、制御端子G32が、第3指針駆動部121cに接続され、検出端子CO3がモータ負荷検出部122cに接続されている。
【0046】
指針駆動部12は、パルス制御部11が出力したパルス信号に応じてモータ20を駆動することで指針40を運針させる。また、指針駆動部12は、モータ20を駆動したときに発生する誘起電圧を検出し、検出した誘起電圧と基準電圧との比較結果をパルス制御部11に出力する。
【0047】
第1指針駆動部121aは、パルス制御部11の制御に応じて、第1モータ20aを正転または逆転させるためのパルス信号を生成する。第1指針駆動部121aは、生成したパルス信号によって第1モータ20aを駆動する。
【0048】
第2指針駆動部121bは、パルス制御部11の制御に応じて、第2モータ20bを正転または逆転させるためのパルス信号を生成する。第2指針駆動部121bは、生成したパルス信号によって第2モータ20bを駆動する。
【0049】
第3指針駆動部121cは、パルス制御部11の制御に応じて、第3モータ20cを正転または逆転させるためのパルス信号を生成する。第3指針駆動部121cは、生成したパルス信号によって第3モータ20cを駆動する。
【0050】
モータ負荷検出部122aは、第1モータ20aの回転によって第1指針駆動部121aに発生する逆起電圧を検出し、検出した逆起電圧を閾値である基準電圧Vcompと比較した結果をパルス制御部11に出力する。
【0051】
モータ負荷検出部122bは、第2モータ20bの回転によって第2指針駆動部121bに発生する逆起電圧を検出し、検出した逆起電圧を基準電圧Vcompと比較した結果をパルス制御部11に出力する。
【0052】
モータ負荷検出部122cは、第3モータ20cの回転によって第3指針駆動部121cに発生する逆起電圧を検出し、検出した逆起電圧を基準電圧Vcompと比較した結果をパルス制御部11に出力する。
【0053】
第1モータ20a、第2モータ20b、第3モータ20cそれぞれは、例えばステッピングモータである。第1モータ20aは、第1指針駆動部121aが出力したパルス信号によって、輪列30aを介して第1指針40aを駆動する。第2モータ20bは、第2指針駆動部121bが出力したパルス信号によって、輪列30bを介して第2指針40bを駆動する。第3モータ20cは、第3指針駆動部121cが出力したパルス信号によって、輪列30cを介して第3指針40cを駆動する。
【0054】
輪列30a、輪列30b、輪列30cそれぞれは、少なくとも1つの歯車を有する。輪列30aは、第1モータ20aの駆動力を第1指針40aに伝達する。輪列30bは、第2モータ20bの駆動力を第2指針40bに伝達する。輪列30cは、第3モータ20cの駆動力を第3指針40cに伝達する。輪列30は、指針40が360度回転する間において、一カ所、負荷変動するように形成されている。輪列30は、基準負荷部を有する。基準負荷部は、指針40が指針基準位置に位置するときに、輪列30が有する歯車の回転負荷を変動させるように構成されている。これにより、モータ20のロータ202(
図5参照)が受ける負荷(トルク)は、指針40が指針基準位置に位置するときに変動する。本実施形態では、基準負荷部は、指針40が取り付けられた歯車の回転負荷を変動させるように構成されている。なお、指針40が指針基準位置に位置するときに、指針40が取り付けられた歯車が位置する回転位置を基準位置とする。輪列30および基準負荷部の詳細な構成については後述する。
【0055】
第1指針40aは、例えば時針である。第2指針40bは、例えば分針である。第3指針40cは、例えば秒針である。
【0056】
次に、指針40の指針基準位置について説明する。
図2は、本実施形態に係る基準負荷部と指針40の指針基準位置の一例を説明するための図である。
図2の指針40は、例えば秒針である第3指針40cである。
図2において、略12時の位置が指針40の指針基準位置であり、この位置(第1領域)に指針40があるとき、他の位置(第2領域)と比較して、ロータ202が受ける負荷が変動する。すなわち、
図2に示す例では、略12時の位置に基準負荷部が設けられている。換言すると、ロータ202が受ける第1領域の負荷は、第2領域の負荷より大きいまたは小さい。本実施形態では、モータ負荷検出部122は、ロータ202が受ける負荷の変動を検出することにより、指針40が取り付けられた歯車の回転負荷の変動を検出する。また、パルス制御部11は、モータ負荷検出部122により検出されたロータ202が受ける負荷の変動に基づいて、指針40が取り付けられた歯車の基準位置を検出し、指針40の指針基準位置を把握する。
なお、
図2では、略12時の位置が指針40の指針基準位置である例を示したが、指針40の指針基準位置は他の位置であってもよい。また、第1指針40a、第2指針40b、第3指針40cそれぞれの指針基準位置は、同じ位置であっても互いに異なる位置であってもよい。
【0057】
次に、指針駆動部121とモータ負荷検出部122の構成例を説明する。
図3は、本実施形態に係る指針駆動部121とモータ負荷検出部122の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、指針駆動部121は、スイッチング素子Q1~Q6を備えている。また、モータ負荷検出部122は、抵抗R1とR2、比較器Q7を備えている。
【0058】
スイッチング素子Q3は、ゲートがパルス制御部11の駆動端子Mn11(nは1~3のいずれか)に接続され、ソースが電源+Vccに接続され、ドレインがスイッチング素子Q1のドレインと抵抗R1の一端と比較器Q7の第1入力部(+)と第1出力端子Outn1に接続されている。
スイッチング素子Q1は、ゲートがパルス制御部11の駆動端子Mn12に接続され、ソースが接地されている。
【0059】
スイッチング素子Q5は、ゲートがパルス制御部11の制御端子Gn1に接続され、ソースが電源+Vccに接続され、ドレインが抵抗R1の他端に接続されている。
【0060】
スイッチング素子Q4は、ゲートがパルス制御部11の駆動端子Mn21に接続され、ソースが電源+Vccに接続され、ドレインがスイッチング素子Q2のドレインと抵抗R2の一端と比較器Q7の第2入力部(+)と第2出力端子Outn2に接続されている。
スイッチング素子Q2は、ゲートがパルス制御部11の駆動端子Mn22に接続され、ソースが接地されている。
【0061】
スイッチング素子Q6は、ゲートがパルス制御部11の制御端子Gn2に接続され、ソースが電源+Vccに接続され、ドレインが抵抗R2の他端に接続されている。
【0062】
比較器Q7は、第3入力部(-)に基準電圧Vcompが供給され、出力部がパルス制御部11の検出端子COnに接続されている。
【0063】
指針駆動部121の第1出力端子Outn1と第2出力端子Outn2の両端には、モータ20が接続されている。
【0064】
スイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6それぞれは、例えばPチャネルのFET(Field effect transistor;電界効果トランジスタ)である。また、スイッチング素子Q1,Q2それぞれは、例えばNチャネルのFETである。
スイッチング素子Q1とQ2は、モータ20を駆動する構成要素である。スイッチング素子Q5とQ6と抵抗R1と抵抗R2は、回転検出のための構成要素である。スイッチング素子Q3とQ4は、モータ20の駆動と回転検出の双方に兼用される構成要素である、スイッチング素子Q1~Q6それぞれは、オン状態でオン抵抗が小さく、低インピーダンスの素子である。また、抵抗R1とR2の抵抗値は、同じであり、スイッチング素子のオン抵抗より大きな値である。
【0065】
なお、指針駆動部121は、スイッチング素子Q1,Q4を同時にオン状態、Q2,Q3を同時にオフ状態にすることで、モータ20が備える駆動コイル209に対して正方向の電流を供給することで、モータ20を180度正方向に回転駆動させる。また、指針駆動部121は、スイッチング素子Q2,Q3を同時にオン状態、Q1,Q4を同時にオフ状態にすることで、駆動コイル209に対して逆方向の電流を供給することで、モータ20を正方向に更に180度回転駆動させる。
【0066】
次に、パルス制御部11が出力する駆動信号の例を説明する。
図4は、本実施形態に係るパルス制御部11が出力する駆動パルスの例を示す図である。
図4において、横軸は時刻、縦軸は信号がH(ハイ)レベルであるかL(ロー)レベルであるかを表している。波形P1は、第1の駆動パルスの波形である。波形P2は、第2の駆動パルスの波形である。
【0067】
時刻t1~t6の期間は、モータ20を正転させる期間である。時刻t1~t2の期間、パルス制御部11は、第1駆動パルスMn1を生成する。時刻t3~t4の期間、パルス制御部11は、第2駆動パルスMn2を生成する。なお、時刻t1~t2または時刻t3~t4の期間の駆動信号は、符号g31が示す領域のように、複数のパルス信号により構成され、パルス制御部11がパルスのデューティを調整する。この場合、時刻t1~t2の期間または時刻t3~t4の期間は、パルスのデューティに応じて変化する。以下、本実施形態では、符号g31が示す領域の信号波を「くし歯波」という。または、時刻t1~t2または時刻t3~t4の期間の駆動信号は、符号g32が示す領域のように、1つのパルス信号により構成され、パルス制御部11がパルスの幅を調整する。この場合、時刻t1~t2の期間または時刻t3~t4の期間は、パルスの幅に応じて変化する。以下、本実施形態では、符号g32が示す領域の信号波を「矩形波」という。
なお、本実施形態では、時刻t1~t2または時刻t3~t4の期間のパルスを主駆動パルスP1という。以下の説明では、主駆動パルスP1が、くし歯波の例を説明する。
【0068】
なお、時刻t5~t6の期間の補助駆動パルスP2は、主駆動パルスP1によってロータが回転しなかったことが検出されたときのみに出力される駆動パルスである。
また、実施形態では、補助駆動パルスを用いずに主駆動パルス(検出駆動パルス)によって指針40を運針させる状態を第1回転状態という。さらに、第1回転状態の後に補助駆動パルスも用いて指針を運針させる状態を第2回転状態という。
【0069】
次に、モータ20の構成例を説明する。
図5は、本実施形態に係るモータ20の構成例を示す図である。
図5に示すように、モータ20をアナログ電子時計に用いる場合には、ステータ201および磁心208はネジ(図示せず)によって地板51(
図10参照)に固定され、互いに接合されている。また、駆動コイル209は、第1端子OUT1、第2端子OUT2を有している。
【0070】
ロータ202は、2極(S極およびN極)に着磁されている。ロータ202には、かな202a(
図10参照)が設けられている。
ステータ201は、磁性材料によって形成されている。ステータ201の外端部には、ロータ収容用貫通孔203を挟んで対向する位置に複数(本実施形態では2個)の切り欠き部(外ノッチ)206,207が設けられている。各外ノッチ206,207とロータ収容用貫通孔203間には過飽和部210,211が設けられている。
【0071】
過飽和部210,211は、ロータ202の磁束によっては磁気飽和せず、駆動コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなるように構成されている。ロータ収容用貫通孔203は、輪郭が円形の貫通孔の対向部分に複数(本実施形態では2つ)の半月状の切り欠き部(内ノッチ)204,205を一体形成した円孔形状に構成されている。
【0072】
切り欠き部204,205は、ロータ202の停止位置を決めるための位置決め部を構成している。駆動コイル209が励磁されていない状態では、ロータ202は、
図5に示すように前記位置決め部に対応する位置、換言すれば、ロータ202の磁極軸Aが、切り欠き部204,205を結ぶ線分と直交するような位置(角度θ0位置)に安定して停止している。ロータ202の回転軸(回転中心)を中心とするXY座標空間を4つの象限(第1象限I~第4象限IV)に区分している。
【0073】
ここで、指針駆動部121から矩形波の主駆動パルスを駆動コイル209の端子OUT1,OUT2間に供給して(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)、
図5の矢印方向に駆動電流iを流すと、ステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、過飽和部210,211が飽和して磁気抵抗が大きくなり、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は
図5の矢印方向に180度回転し、磁極軸が角度θ1位置で安定的に停止する。なお、モータ20を回転駆動することによって通常動作(本実施形態ではアナログ電子時計であるため運針動作)を行わせるための回転方向(
図5では反時計回り方向)を正方向とし、その逆(
図5では時計回り方向)を逆方向としている。
【0074】
指針駆動部121から、逆極性の矩形波の主駆動パルスを駆動コイル209の端子OUT1,OUT2に供給して(前記駆動とは逆極性となるように、第1端子OUT1側を負極、第2端子OUT2側を正極)、
図5の反矢印方向に駆動電流iを流すと、ステータ201には反破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、過飽和部210、211が先ず飽和し、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は前記と同一方向(正方向)に180度回転し、磁極軸が角度θ0位置で安定的に停止する。
【0075】
以後、このように、指針駆動部121が、駆動コイル209に対して極性の異なる信号(交番信号)を供給する。これにより、モータ20は、前記動作が繰り返し行われて、ロータ202を180度ずつ矢印方向に連続的に回転させることができるように構成されている。
指針駆動部121は、相互に極性の異なる駆動パルスP1で交互に駆動することによってモータ20を回転駆動し、主駆動パルスP1で回転できなかった場合には、後述する区間T3の後に主駆動パルスP1と同極性の補助駆動パルスP2を用いて回転駆動する。
【0076】
次に、モータ20の駆動時のスイッチング素子Q1~Q6の動作とモータ回転時に発生する誘起電圧の例について説明する。なお、以下の例では、モータ20が正転の場合を説明する。
【0077】
図6は、本実施形態に係る主駆動パルスP1とモータ回転時に発生する誘起電圧の例を示す図である。
図6において、横軸は時刻、縦軸は信号がHレベルであるかLレベルであるかを表している。波形g11は、指針駆動部121のOutn1から出力される主駆動パルスP1および検出パルスの波形である。符号g12は、検出区間を示している。波形g13は、スイッチング素子Q3のゲートに入力される制御信号Mn11の波形である。
波形g14は、スイッチング素子Q1のゲートに入力される制御信号Mn12の波形である。波形g15は、スイッチング素子Q4のゲートに入力される制御信号Mn21の波形である。波形g16は、スイッチング素子Q2のゲートに入力される制御信号Mn22の波形である。波形g17は、スイッチング素子Q5のゲートに入力される制御信号Gn1の波形である。波形g18は、スイッチング素子Q6のゲートに入力される制御信号Gn2の波形である。
なお、
図6に示す状態は、
図4における時刻t1~t3の期間の状態である。
【0078】
なお、
図6において、スイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6は、ゲートに入力される信号がLレベルの期間、オン状態になり、ゲートに入力される信号がHレベルの期間、オフ状態になる。また、スイッチング素子Q1,Q2は、ゲートに入力される信号がHの期間、オン状態になり、ゲートに入力される信号がLレベルの期間、オフ状態になる。
時刻ta~tbの期間は、駆動区間である。
また、時刻tb~tcの期間は、回転状態の検出区間である。
【0079】
駆動区間であるta~tbの期間、波形g13と波形g14に示すように、パルス制御部11は、くし歯波である主駆動パルスP1に応じてスイッチング素子Q3とQ1を所定周期でオン状態とオフ状態に切り換えることで、モータ20を正方向に回転させるように制御する。モータ20が正常に回転できた場合は、モータ20が備えるロータが正方向に180度回転する。なお、この期間、スイッチング素子Q2,Q5,Q6それぞれは、オフ状態であり、スイッチング素子Q4は、オン状態である。
【0080】
検出区間の時刻tb~tcの期間、パルス制御部11は、スイッチング素子Q1のオフ状態を維持し、スイッチング素子Q3を所定のタイミングでオン状態とオフ状態を切り換えてハイインピーダンスの状態になるように制御する。そして、パルス制御部11は、この検出区間、スイッチング素子Q5をオン状態に切り換えるように制御する。なお、検出期間、パルス制御部11は、スイッチング素子Q4のオン状態を維持し、スイッチング素子Q2,Q6をオフ状態に制御する。
【0081】
これにより、検出区間では、スイッチング素子Q4とQ5をオン状態でスイッチング素子Q3をオフ状態にする検出ループと、スイッチング素子Q4とQ5をオン状態でスイッチング素子Q3をオン状態にする閉ループとが所定周期で交互に繰り返される。このとき、検出ループの状態は、スイッチング素子Q4,Q5、抵抗R1によってループが構成されるため、モータ20に制動がかからない。一方、閉ループの状態は、スイッチング素子Q3,Q4、モータ20が有する駆動コイル209によってループが構成されることにより、駆動コイル209が短絡されているので、モータ20に制動がかかり、モータ20の自由振動が抑制される。
【0082】
検出区間、抵抗R1には、駆動電流と同方向に誘起電流が流れる。この結果、抵抗R1には、誘起電圧信号VRsが発生する。比較器Q7は、区間T1,T2,T3それぞれの区間毎に、この誘起電圧信号VRsと基準電圧Vcompとを比較して、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以下である場合に「1」を示す信号を出力し、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcompより大きい場合に「0」を示す信号を出力する。なお、
図7を用いて後述するように、区間T1は、検出区間における1番目の区間である。区間T2は、検出区間における2番目の区間である。区間T3は、検出区間における3番目の区間である。
【0083】
図4の時刻t3~t5の期間は、第2の駆動パルスが生成される。これにより、駆動区間、パルス制御部11は、主駆動パルスP1に応じてスイッチング素子Q4とQ2を所定周期でオン状態とオフ状態に切り換えることで、モータ20を正方向に回転させるように制御する。なお、この期間、スイッチング素子Q1、Q5、Q6それぞれは、オフ状態であり、スイッチング素子Q3は、オン状態である。
【0084】
そして、検出区間、パルス制御部11は、スイッチング素子Q2のオフ状態を維持し、スイッチング素子Q4を所定のタイミングでオン状態とオフ状態を切り換えてハイインピーダンスの状態になるように制御する。そして、パルス制御部11は、この検出区間、スイッチング素子Q6をオン状態に切り換えるように制御する。なお、検出期間、パルス制御部11は、スイッチング素子Q3のオン状態を維持し、スイッチング素子Q1、Q5をオフ状態に制御する。これにより、抵抗R2には、駆動電流と同方向に誘起電流が流れる。この結果、抵抗R2には、誘起電圧信号VRsが発生する。比較器Q7は、区間T1、T2、T3それぞれの区間毎に、この誘起電圧信号VRsと基準電圧Vcompとを比較して、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以下である場合に「1」を示す信号を出力し、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcompより大きいである場合に「0」を示す信号を出力する。
【0085】
次に、
図7を用いて、負荷の状態と誘起電圧の関係について、さらに説明する。
図7は、本実施形態に係る負荷の状態と誘起電圧の関係を説明するための図である。なお、
図7において、符号P1は駆動パルスP1を示す。符号T1は、区間T1を示す。符号T2は、区間T2を示す。符号T3は、区間T3を示す。なお、波形g201~g204は、比較器Q7に入力される信号CO1と駆動パルスP1を模式的に合わせて示した波形である。
【0086】
モータ20にかかっている負荷が通常の場合(通常負荷)、波形g201に示すように、区間T2のときに、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以上である。このため、比較器Q7の出力は、区間T1のときが「0」、区間T2のときが「1」、区間T3のときが「-」である。なお、「-」は、「0」であっても「1」であってもよいことを表している。
【0087】
モータ20にかかっている負荷が小さい場合(負荷小)、波形g202に示すように、区間T1と区間T2のときに、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以上である。このため、比較器Q7の出力は、区間T1のときが「1」、区間T2のときが「1」、区間T3のときが「-」である。
【0088】
モータ20にかかっている負荷が大きい場合(負荷大)、波形g203に示すように、区間T1と区間T3のときに、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以上である。このため、比較器Q7の出力は、区間T1のときが「-」、区間T2のときが「0」、区間T3のときが「1」である。
【0089】
モータ20が回転できていない場合(非回転)、波形g204に示すように、区間T1のときに、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以上である。このため、比較器Q7の出力は、区間T1のときが「-」、区間T2のときが「0」、区間T3のときが「0」である。
なお、パルス制御部11は、主駆動パルスP1で非回転の状態が検出された場合、主駆動パルスP1と同極性の補助駆動パルスP2で回転駆動するように制御する。
【0090】
すなわち、比較器Q7の区間T1~T3の出力の組み合わせによって、モータ20の負荷の状態や、非回転状態を検出することができる。
なお、記憶部5は、
図7の符号g211で囲んだ領域の区間T1~T3の比較器Q7の出力と、符号g212で囲んだ領域の負荷の状態や回転状態を対応付けて記憶している。
【0091】
次に、制御部10が、くし歯波である駆動パルスP1のパルスの大きさ(パルスのデューティ)を変化させ、その時の比較器Q7の出力に基づいて、指針位置を検出する手順の概要を説明する。
図8は、本実施形態に係る指針位置を検出する手順の概要を説明するための図である。
なお、制御部10は、以下の処理を、例えば、電池2が交換されたとき、初めて電源がオン状態にされたとき、所定の時間毎(例えば一日に一回)、設定が初期化された時、指針40の位置検出を行う針位置検出動作モード等に行う。なお、指針40の指針基準位置を検出するために用いられるサーチパルスは、記憶部5が記憶している。また、サーチパルスとは、
図8に示すように、指針基準位置検出用の主駆動パルスであり、パルスの大きさ(デューティ)の異なる複数のパルスから構成されている。また、サーチパルスは、主駆動パルスに基づく検出駆動パルスである。
【0092】
パルス制御部11は、主駆動パルスP1の初期値に基づく指針40の一周分のパルス信号を指針駆動部121に出力する。
そして、パルス制御部11は、パルス信号を出力した後の区間T1~T3における比較器Q7の出力を指針の1周分、取得する。例えば、指針40が秒針の場合、パルス制御部11は、パルス信号を60回、出力するように制御する。パルス制御部11は、パルスの発数毎に、区間T1~T3の比較器Q7の出力を、記憶部5に記憶させる。具体的には、パルス制御部11は、1発目のパルスに、区間T1が「0」、区間T2が「1」、区間T3が「0」を対応付けて記憶させ、2発目のパルスに、区間T1が「0」、区間T2が「1」、区間T3が「0」を対応付けて記憶させ、以下同様に記憶させる。
【0093】
パルス制御部11は、取得した区間T1~T3における比較器Q7の出力の組み合わせと、記憶部5が記憶する区間T1~T3における比較器Q7の出力のパターンとを比較して、モータ20の状態を検出する。なお、モータ20の状態とは、モータ20が小さな負荷(負荷小)が有る状態か否か、大きな負荷(負荷大)が有る状態か否か、非回転状態であるか否か、である。
【0094】
パルス制御部11は、検出結果に基づいて、主駆動パルスの大きさを変化させる。なお、本実施形態では、主駆動パルスにおいてパルスのLレベルを長くする処理、またはパルスの幅を長くする処理を、パルスアップ(パルスUP)という。また、本実施形態では、駆動パルスにおいてパルスのLレベルの長さを減らす処理、またはパルスの幅を短くする処理を、パルスダウン(パルスDOWN)という。
【0095】
パルス制御部11が、パルスの大きさを変化させることで、指針40の一周(360度)における指針40の位置毎の比較器Q7の出力状態が変化する。
輪列30にロータ202が受ける負荷を変動させる構成要素がない場合は、指針40の一周の間中、
図7で説明した通常負荷の状態(区間T1が「0」、区間T2が「1」、区間T3が「0」)を60回繰り返す。
【0096】
本実施形態では、上述したように、輪列30にロータ202が受ける負荷を変動させる構成要素(基準負荷部)があるため、指針40が360度回転する間において、一カ所、ロータ202が受ける負荷が変動するように形成されている。このため、通常状態であっても、サーチパルスの大きさが適切であれば輪列30にロータ202が受ける負荷を変動させる構成要素がある位置で負荷大または負荷小となり、区間T2が「0」、区間T3が「1」になる、または区間T1が「1」、区間T2が「1」になる。このように、指針40の一周において、負荷大または負荷小となる箇所が一カ所の場合が、指針の検出位置である。具体的には、区間T2が「0」かつ区間T3が「1」、または区間T1が「1」かつ区間T2が「1」が検出された位置が指針基準位置である。本実施形態では、このように、負荷が変動する位置を検出することを、針位置検出という。
【0097】
パルスを大きく(パルスのLレベルの長さを増やす)しすぎた場合は、ロータ202が回転しやすくなるので、負荷が検出されにくくなり、指針基準位置を検出しにくくなる。このように、負荷が検出されなくなった場合、パルス制御部11は、パルスダウンを行う。
一方、パルスを小さく(パルスのLレベルの長さを減らす)しすぎた場合は、ロータ202が回転しにくくなり負荷が大きくなるため、負荷大の状態が複数回発生する。このように、2回以上、負荷が検出された場合、パルス制御部11は、パルスアップを行う。
【0098】
これにより、本実施形態では、指針40を1周(360度)運針させ、運針中の区間T1~T3の検出結果を取得して、取得した結果に基づいて指針40の指針基準位置を検出することができる。なお、本実施形態では、パルスダウンを行う場合であっても、非回転状態にならない主駆動パルスで、針位置検出を行うことが望ましい。
【0099】
次に、針位置検出を行う処理手順例を説明する。
図9は、本実施形態に係る針位置検出を行う処理手順例を示すフローチャートである。
【0100】
(ステップS1)パルス制御部11は、主駆動パルスを初期状態に設定する。
(ステップS2)パルス制御部11は、指針40を1周分(360度)運針させるように主駆動パルスを生成し、生成した主駆動パルスに基づいて指針駆動部121を制御する。続けて、指針駆動部121は、モータ20を駆動して指針40を1周分(360度)運針させる。
【0101】
(ステップS3)パルス制御部11は、1周分の区間T1、区間T2、区間T3それぞれのモータ負荷検出部122の出力を取得する。なお、パルス制御部11は、パルスの発数毎に、区間T1~T3それぞれのモータ負荷検出部122の出力を、記憶部5に記憶させる。
【0102】
(ステップS4)1周分の運針終了後、パルス制御部11は、全ての領域(例えば0~359度の1周分)において、区間T1が「0」かつ区間T2が「1」であったか否かを判定する。パルス制御部11は、全ての領域において、区間T1が「0」かつ区間T2が「1」であったと判定した場合(ステップS4;YES)、ステップS5の処理に進める。パルス制御部11は、全ての領域において、区間T1が「0」かつ区間T2が「1」でなかったと判定した場合(ステップS4;NO)、ステップS6の処理に進める。
【0103】
(ステップS5)全ての領域において、区間T1が「0」かつ区間T2が「1」であった場合は、全ての領域が通常負荷の状態であり、回転に余裕があり、負荷を検出できない状態である。この場合は、負荷を検出しやすくするために、回転しにくくさせる必要がある。このため、パルス制御部11は、1つパルスダウンする。すなわち、パルス制御部11は、主駆動パルスのLレベルの長さを1つ減らす。換言すると、パルス制御部11は、第1エネルギを、第1エネルギより小さい第2エネルギにする。なお、パルス制御部11は、例えば、分周回路4によって生成される周波数に基づいた1クロック分、主駆動パルスのLレベルの長さを短くする。パルス制御部11は、処理後、ステップS2に処理を戻す。
【0104】
(ステップS6)パルス制御部11は、区間T1が「1」かつ区間T2が「1」が一箇所(1つの領域)、または区間T2が「0」かつ区間T3が「1」が一箇所(1つの領域)であった場合(ステップS6;YES)、ステップS7の処理に進める。パルス制御部11は、複数の箇所(複数の領域)で区間T1が「1」かつ区間T2が「1」、または複数の箇所(複数の領域)で区間T2が「0」かつ区間T3が「1」であった場合(ステップS6;NO)、ステップS8の処理に進める。
【0105】
(ステップS7)パルス制御部11は、区間T1が「1」かつ区間T2が「1」が一箇所(1つの領域)、または区間T2が「0」かつ区間T3が「1」が一箇所(1つの領域)であった場合、負荷の変動が検出された位置を指針基準位置であると特定し記憶部5に記憶させる。特定後、パルス制御部11は、指針基準位置を特定したときのサーチパルスである主駆動パルスを最適パルスとして記憶部5に記憶させ、針位置検出処理を終了する。なお、パルス制御部11は、このように指針基準位置を特定したときの駆動パルスを、通常の運針時の駆動パルスに用いるようにしてもよい。
【0106】
(ステップS8)パルス制御部11は、複数の箇所(複数の領域)で区間T1が「1」かつ区間T2が「1」、または複数の箇所(複数の領域)で区間T2が「0」かつ区間T3が「1」であった場合、1つパルスアップする。すなわち、パルス制御部11は、主駆動パルスのLレベルの長さを1つ長くする。換言すると、パルス制御部11は、第1エネルギを、第1エネルギより大きい第3エネルギにする。なお、パルス制御部11は、例えば、分周回路4によって生成される周波数に基づいた1クロック分、主駆動パルスのLレベルの長さを長くする。パルス制御部11は、処理後、ステップS2に処理を戻す。
【0107】
なお、製造のバラツキにより指針基準位置と指針基準位置以外の位置の負荷の相対差が大きく主駆動パルスで指針基準位置を検出できない場合、パルス制御部11は、補助駆動パルスも用いて指針基準位置を検出して記憶部5に記憶させる。このように、補助駆動パルスを用いて指針基準位置を検出(区間T2が「0」かつ区間T3が「0」)した場合、パルス制御部11は、指針基準位置を検出できた主駆動パルスと補助駆動パルスを最適パルスとして記憶部5に記憶させないようにしてもよい。
【0108】
なお、
図9の処理において、負荷変動の位置が指針40の2ステップ以上に渡る場合があるが、負荷変動が2つ以上連続して得られた場合、パルス制御部11は、最初に負荷変動が検出されたパルスの発数に対応する位置を指針基準位置として検出する。なお、負荷変動の位置、負荷変動が検出された位置とは、区間T1が「1」かつ区間T2が「1」の位置、または区間T2が「0」かつ区間T3が「1」の位置である。
【0109】
ここで、
図9の処理の概要を説明する。
パルス制御部11は、初期状態の主駆動パルス(第1エネルギ)を用いて、指針40を一周させて、区間T1~T3それぞれの値を取得する。なお、初期状態の主駆動パルスは、運針に用いている主駆動パルス、または前回、指針基準位置を検出できた主駆動パルスである。
パルス制御部11は、初期状態の主駆動パルスで指針40を一周させたとき、負荷変動が生じる箇所を1つ見つけられた場合、その領域を第1領域(
図2)、すなわち指針基準位置であると判別する。
初期状態の主駆動パルスで負荷変動が生じる箇所を1つも見つけられなかった場合、パルス制御部11は、負荷小または負荷大(
図7)となる箇所が1つとなる状態までパルスダウンを行う。パルスダウンした主駆動パルスが、第2エネルギであり、第2エネルギからさらにパルスダウンした主駆動パルスが、第4エネルギである。
さらに、負荷小または負荷大となる箇所が1つとなる状態までパルスダウンを行っても1つに絞れない場合、パルス制御部11は、補助駆動パルスも用いて、非回転(
図7)となる箇所が1つとなる状態までパルスダウンを行う。
また、初期状態の主駆動パルスを用いて指針40を一周させた結果、負荷小または負荷大(
図7)となる箇所が複数見つかった場合、パルス制御部11は、負荷小または負荷大(
図7)となる箇所が1つとなる状態までパルスアップを行って、指針基準位置を検出する。
【0110】
なお、上述した処理手順は一例であり、処理手順は用途に応じて入れ替えてもよい。また、パルスダウンには下限を設け、パルスアップには上限を設け、これらの上限と下限を予め記憶部5に記憶させておくようにしてもよい。このように、上限と下限が記憶されている場合、パルス制御部11は、上限までパルスアップしても負荷が大きくなる位置を1つに絞れない場合に、再度、初期状態に戻して指針基準位置を検出するか、異常であると判別して報知するようにしてもよい。または、パルス制御部11は、下限までパルスダウンしても負荷が大きくなる位置を1つに絞れない場合に、再度、初期状態に戻して指針基準位置を検出するか、異常であると判別して報知するようにしてもよい。
【0111】
次に、第1実施形態の輪列30について説明する。
図10は、第1実施形態の時計用ムーブメントを示す断面図である。
図10に示すように、時計用ムーブメントは、輪列30a、輪列30bおよび輪列30cと、輪列30a~30c等を支持する地板51、輪列受52および二番受53と、地板51に取り付けられた筒車押さえ54と、を備えている。
【0112】
地板51は、時計用ムーブメントの基板を構成している。輪列受52は、地板51を挟んで時計1の文字板(不図示)とは反対側に配置されている。二番受53は、地板51と輪列受52との間に配置されている。筒車押さえ54は、地板51を挟んで輪列受52とは反対側に配置されている。
【0113】
輪列30aは、時中間車(不図示)と、筒車33と、を有する。時中間車は、地板51と輪列受52とにより回転可能に支持されている。時中間車は、第1モータ20aのロータ202(
図5参照)のかなに噛み合っている。筒車33は、中心パイプ62に回転可能に外挿されている。中心パイプ62は、地板51に保持されている。中心パイプ62は、地板51から突出している。筒車33は、時中間車に噛み合う筒歯車33aを有する。筒車33は、筒車押さえ54に押さえられている。筒車33は、筒車押さえ54と筒歯車33aとの間に配置された第1針座63により、地板51側に向かって付勢されている。筒車33の第1端部は、筒車押さえ54から突出している。筒車33の第1端部には、第1指針40aが取り付けられる。なお、輪列30aは、時中間車を複数備えていてもよい。
【0114】
輪列30bは、二番中間車(不図示)と、二番車36と、を有する。二番中間車は、地板51と輪列受52とにより回転可能に支持されている。二番中間車は、第2モータ20bのロータ202のかなに噛み合っている。二番車36は、中心パイプ62内に輪列受52側から回転可能に挿通されている。二番車36は、筒車33と同軸に配置されている。二番車36の第1端部は、二番受53に支持されている。二番車36は、二番中間車に噛み合う二番歯車36aを有する。二番車36は、二番受53と二番歯車36aとの間に配置された第2針座64により、地板51側に向かって付勢されている。二番車36の第2端部は、筒車押さえ54から突出している。二番車36の第2端部には、第2指針40bが取り付けられる。
【0115】
輪列30cは、六番車37と、五番車38と、四番車39と、を有する。六番車37は、六番歯車37aと六番かな37bとを有し、地板51と輪列受52とにより回転可能に支持されている。六番歯車37aは、第3モータ20cのロータ202のかな202aに噛み合っている。五番車38は、五番歯車38aと五番かな38bとを有し、地板51と輪列受52とにより回転可能に支持されている。五番歯車38aは、六番車37の六番かな37bに噛み合っている。
【0116】
四番車39は、車軸39aと、車軸39aに固定された四番歯車39bと、を有する。車軸39aは、二番車36に挿通され、二番車36に回転可能に支持されている。四番車39は、筒車33および二番車36と同軸に配置されている。車軸39aの第1端部は、輪列受52により回転可能に支持されている。車軸39aの第2端部は、筒車押さえ54から突出している。車軸39aの第2端部には、第3指針40cが取り付けられる。四番歯車39bは、五番車38の五番かな38bに噛み合っている。四番車39は、輪列受52と四番歯車39bとの間に配置された第3針座65により、地板51側に向かって付勢されている。四番歯車39bは、後述する磁性部70を有する。
【0117】
ここで、上述した基準負荷部について詳述する。なお、以下の基準負荷部に関する説明では、第3指針40cの指針基準位置を把握するために、第3指針40cが取り付けられた四番歯車39bの回転方向における基準位置を検出する構成を例に挙げて説明する。
基準負荷部は、四番歯車39bが有する磁性部70と、磁性部70に対して磁気反応を示す対応磁性部80と、を備える。
【0118】
図11は、第1実施形態の四番歯車の平面図である。
図12は、第1実施形態の四番歯車の拡大斜視図である。
図11に示すように、磁性部70は、四番歯車39bに設けられている。磁性部70は、四番歯車39bにおける磁性部70以外の箇所とは磁気特性の異なる部分である。磁性部70は、強磁性体である。具体的に、磁性部70は、軟磁性材料または永久磁石(硬磁性材料)により形成されている。磁性部70は、四番歯車39bの回転軸線O方向に向く一対の主面のうち、輪列受52に対向する主面39c上に設けられている(
図10および
図12参照)。磁性部70は、四番歯車39bの最外周部に設けられている。磁性部70の形成範囲の中心角は、例えば四番歯車39bの有する1つの歯の歯厚に対応する角度である。歯厚は、歯車のピッチ円上における歯の厚さである。なお、磁性部70の形成範囲の中心角は、例えば第3モータ20cの駆動1ステップによって四番歯車39bが回転する角度以下であってもよい。
【0119】
磁性部70は、磁性材料の粉末を含むペーストを四番歯車39bの表面に塗布して加熱することにより形成される。また、磁性部70は、所定の形状に形成された磁性材料を四番歯車39bに接着等によって取り付けることにより形成されてもよい。また、磁性部70は、四番歯車39bの表面に任意の元素を塗布し、レーザー等を用いてスポット熱処理することによって、四番歯車39bにおける局所的に材料組成の異なる部分として形成されてもよい。また、磁性部70は、熱処理によって磁性が変化する材料により四番歯車39bを形成し、レーザー等を用いて四番歯車39bの所定の箇所をスポット熱処理することによって形成されてもよい。熱処理によって磁性が変化する材料としては、例えばリンを含有する無電解ニッケルめっき皮膜等がある。
【0120】
図10に示すように、対応磁性部80は、磁性部70に対向する位置に設けられている。本実施形態では、対応磁性部80は、輪列受52に設けられている。対応磁性部80は、四番歯車39bの回転軸線Oからの距離が磁性部70と略一致する位置に設けられている。対応磁性部80は、四番歯車39bの周方向において一部の箇所に設けられている。対応磁性部80は、強磁性体である。対応磁性部80は、磁性部70が永久磁石によって形成されている場合、永久磁石または軟磁性材料により形成されている。また、対応磁性部80は、磁性部70が軟磁性体により形成されている場合、永久磁石により形成されている。これにより、対応磁性部80は、磁性部70に対して磁気反応を示す。なお、磁気反応は、磁性部70と対応磁性部80との吸引または反発である。対応磁性部80は、磁性部70と同様の方法により形成される。磁性部70および対応磁性部80は、第3指針40cが指針基準位置に位置するとき、すなわち四番歯車39bが基準位置に位置するときに、互いに最接近するように設けられている。
【0121】
四番歯車39bが回転すると、磁性部70が1周ごとに対応磁性部80に最接近する。磁性部70および対応磁性部80がともに永久磁石により形成されている場合、磁性部70には、対応磁性部80に接近する際に反発方向または吸引方向の磁力が作用する。これにより、四番歯車39bの回転負荷は、磁性部70が対応磁性部80に最接近する際、または磁性部70が対応磁性部80に最接近した位置から離間する際に増大する。よって、第3指針40cが指針基準位置に位置するときに、ロータ202が受ける負荷が増大する。
【0122】
また、磁性部70が軟磁性材料により形成され、対応磁性部80が永久磁石により形成されている場合、磁性部70は対応磁性部80に接近すると磁化する。このため、磁性部70には、対応磁性部80に接近する際に吸引方向の磁力が作用する。これにより、四番歯車39bの回転負荷は、磁性部70が対応磁性部80に最接近した位置から離間する際に増大する。よって、第3指針40cが指針基準位置に位置するときに、ロータ202が受ける負荷が増大する。なお、磁性部70が永久磁石により形成され、対応磁性部80が軟磁性材料により形成されている場合も同様である。
【0123】
このように、本実施形態の時計用ムーブメントは、磁性部70を有する四番歯車39bと、磁性部70に対して磁気反応を示す対応磁性部80と、磁性部70と対応磁性部80との磁気反応により生じた四番歯車39bの回転負荷の変動を検出するモータ負荷検出部122と、モータ負荷検出部122により検出された四番歯車39bの回転負荷の変動に基づいて、四番歯車39bの基準位置を検出するパルス制御部11と、を備える。この構成によれば、四番歯車39bが回転して磁性部70が対応磁性部80に接近すると、磁気反応により磁性部70と対応磁性部80との間に磁力が作用する。これにより、四番歯車39bの回転負荷を変動させることができる。このため、従来技術のようにホール素子を用いることなく、モータ負荷検出部122およびパルス制御部11によって四番歯車39bの基準位置を検出することができる。したがって、四番歯車39bの回転位置を検出する手段を、部品点数の増加および大型化を抑制して実現できる。
【0124】
また、磁性部70は、四番歯車39bにおける四番歯車39bの回転軸線O方向に向く主面39c上に設けられている。この構成によれば、五番かな38bに係合しない箇所に磁性部70が設けられるので、四番歯車39bと五番かな38bとの係合により磁性部70が損傷することを抑制できる。
【0125】
また、磁性部70は、四番歯車39bの最外周部に設けられている。この構成によれば、磁性部が四番歯車39bの最外周部よりも内側に設けられている構成と比較して、磁性部70と対応磁性部80との間に作用する磁力によって、四番歯車39bに対して大きなトルクを付与することができる。したがって、四番歯車39bの回転負荷をより確実に変動させることができる。
【0126】
また、磁性部70は、四番歯車39bが基準位置に位置するときに、対応磁性部80に最接近する位置のみに設けられている。このため、四番歯車39bが基準位置に位置しない状態では、磁性部70と対応磁性部80との間に磁気反応が生じず、磁力が作用しないので、四番歯車39bの回転負荷が小さくなる。したがって、四番歯車39bの回転負荷の増大に伴う、駆動に要する消費電力の増加を抑制できる。
【0127】
また、対応磁性部80は、四番歯車39bを支持する輪列受52に設けられている。このため、対応磁性部80を支持するために新たな部品を追加する必要がない。したがって、部品点数の増加を抑制できる。
【0128】
また、時計用ムーブメントは、主駆動パルスに基づく検出駆動パルスによって指針40を回転させたときにロータ202の回転状態の検出により指針40の指針基準位置を判断する制御部10を備える。この構成によれば、指針40の指針基準位置を把握する手段を通常運針可能な所定負荷によって実現できる。したがって、補助駆動パルスを用いることなく四番歯車39bを1周回転させることができるので、補助駆動パルスを使用した場合の駆動に要する消費電力の増加を抑制できる。
【0129】
なお、第1実施形態では、磁性部70が四番歯車39bにおける輪列受52に対向する主面39c上に設けられ、対応磁性部80が輪列受52に設けられているが、これに限定されない。磁性部が四番歯車39bにおける二番受53に対向する主面上に設けられ、対応磁性部が二番受53に設けられていてもよい。
【0130】
また、第1実施形態では、磁性部70が輪列30cに設けられた構成を説明したが、輪列30aおよび輪列30bのうち少なくともいずれか一方に磁性部が設けられていてもよい。すなわち、基準負荷部は、筒歯車33aが有する磁性部と、筒歯車33aの磁性部に対して磁気反応を示す対応磁性部と、を備え、第1指針40aが取り付けられた筒歯車33aの基準位置を検出するように構成されていてもよい。また、基準負荷部は、二番歯車36aが有する磁性部と、二番歯車36aの磁性部に対して磁気反応を示す対応磁性部と、を備えて、第2指針40bが取り付けられた二番歯車36aの基準位置を検出するように構成されていてもよい。例えば、二番歯車36aの磁性部に対して磁気反応を示す対応磁性部は、図中の符号80aで示すように、地板51に設けられてもよい。
【0131】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態の四番歯車の拡大斜視図である。
図11および
図12に示す第1実施形態では、磁性部70は、四番歯車39bの主面39c上に設けられている。これに対して、
図13に示す第2実施形態では、磁性部170は、四番歯車39bにおける四番歯車39bの径方向外側に向く側面39d(歯面)上に設けられている点で、第1実施形態と異なっている。本実施形態では、磁性部170は、四番歯車39bの1つの歯に設けられている。
【0132】
この構成によれば、磁性部170は、四番歯車39bの最外周部に設けられる。このため、磁性部が四番歯車39bの最外周部よりも内側に設けられている構成と比較して、磁性部170と対応磁性部80との間に作用する磁力によって、四番歯車39bに対して大きなトルクを付与することができる。したがって、四番歯車39bの回転負荷をより確実に変動させることができる。
【0133】
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態の四番歯車の平面図である。
図11に示す第1実施形態では、磁性部70は、四番歯車39bが基準位置に位置するときに、対応磁性部80に最接近する位置のみに設けられている。これに対して、
図14に示す第3実施形態では、磁性部270は、四番歯車39bが基準位置に位置するときに対応磁性部80に最接近する箇所を除いて、四番歯車39bの周方向に沿って延びている点で、第1実施形態と異なっている。
【0134】
図14に示すように、磁性部270の全体は、四番歯車39bの周方向に沿って円環状に延びている。磁性部270は、四番歯車39bが基準位置に位置するときに、対応磁性部80(
図10参照)に最接近にする箇所のみに間欠部271を備えている。換言すると、磁性部270は、四番歯車39bが基準位置に位置するときに対応磁性部80に最接近する箇所を避けるように、四番歯車39bの周方向に沿って円弧状に延びている。間欠部271の形成範囲の中心角は、例えば第3モータ20cの駆動1ステップによって四番歯車39bが回転する角度以下である。
【0135】
四番歯車39bが回転すると、磁性部270の間欠部271が1周ごとに対応磁性部80に最接近する。磁性部270および対応磁性部80が永久磁石により形成されている場合、磁性部270には、対応磁性部80に接近する際に反発または吸引方向の磁力が作用する。磁性部270に作用する磁力は、磁性部270の間欠部271が対応磁性部80に最接近するときに減少する。これにより、四番歯車39bの回転負荷は、磁性部270の間欠部271が対応磁性部80に最接近した位置から離間する際、または磁性部270の間欠部271が対応磁性部80に最接近する際に増大する。よって、第3指針40cが指針基準位置に位置するときに、ロータ202が受ける負荷が増大する。
【0136】
また、磁性部270が軟磁性材料により形成され、対応磁性部80が永久磁石により形成されている場合、磁性部270は対応磁性部80に接近すると磁化する。このため、磁性部270には、対応磁性部80に接近する際に吸引方向の磁力が作用する。磁性部270に作用する磁力は、磁性部270の間欠部271が対応磁性部80に最接近するときに減少する。これにより、四番歯車39bの回転負荷は、磁性部270の間欠部271が対応磁性部80に最接近する際に増加する。また、四番歯車39bの回転負荷は、磁性部270の間欠部271が対応磁性部80に最接近した位置から離間する際に減少する。よって、第3指針40cが指針基準位置に位置するときに、ロータ202が受ける負荷が減少する。なお、磁性部270が永久磁石により形成され、対応磁性部80が軟磁性材料により形成されている場合も同様である。
【0137】
このように、磁性部270は、四番歯車39bの周方向に沿って延びるとともに、四番歯車39bが基準位置に位置するときに対応磁性部80に最接近する位置に間欠部271を備える。この構成によれば、間欠部271が対応磁性部80に接近すると、磁性部270と対応磁性部80との磁気反応の度合いが低下する。このため、磁性部270に作用する磁力は、磁性部270の間欠部271が対応磁性部80に最接近するときに減少する。したがって、四番歯車39bが基準位置に位置するときに四番歯車39bの回転負荷を変動させることができるので、モータ負荷検出部122およびパルス制御部11によって四番歯車39bの基準位置を検出することができる。
【0138】
なお、上記第3実施形態では、磁性部270は、円環状に形成されているが、これに限定されない。磁性部は、上述した磁性部270よりも広範囲に設けられていてもよい。例えば、磁性部は、四番歯車39bの主面全体に設けられていてもよい。この場合であっても、磁性部の少なくとも一部が周方向に沿って延び、磁性部はその一部に間欠部を備えていれば、上述した効果を奏することができる。
【0139】
(第4実施形態)
図15は、第4実施形態の四番歯車の平面図である。
図11に示す第1実施形態では、磁性部70は、四番歯車39bが基準位置に位置するときに、対応磁性部80に最接近する位置のみに設けられている。これに対して、
図15に示す第4実施形態では、磁性部370は、円環状に延びるとともに、互いに磁気的性質の異なる第1磁性部371および第2磁性部372を備える点で、第1実施形態と異なっている。
【0140】
図15に示すように、磁性部370は、四番歯車39bの周方向に沿って円環状に延びている。磁性部370は、四番歯車39bが基準位置に位置するときに対応磁性部80(
図10参照)に最接近する位置のみに設けられた第1磁性部371と、四番歯車39bの径方向において第1磁性部371と同じ位置に設けられた第2磁性部372と、を備える。第2磁性部372は、磁性部370における第1磁性部371以外の部分である。磁性部370が永久磁石により形成されている場合、第2磁性部372は、第1磁性部371よりも磁化が小さい。磁性部370が軟磁性材料により形成されている場合、第2磁性部372は、第1磁性部371よりも磁化率が小さい。第1磁性部371と第2磁性部372との磁性は、互いが逆であってもよい。すなわち、磁性部370が永久磁石により形成されている場合、第1磁性部371が第2磁性部372よりも磁化が小さくてもよい。また、磁性部370が軟磁性材料により形成されている場合、第1磁性部371が第2磁性部372よりも磁化率が小さくてもよい。
【0141】
四番歯車39bが回転すると、第1磁性部371が1周ごとに対応磁性部80に最接近する。磁性部370および対応磁性部80が永久磁石により形成されている場合、磁性部370には、対応磁性部80に接近する際に反発または吸引方向の磁力が作用する。第1磁性部371は、第2磁性部372よりも磁化が大きいので、第1磁性部371には、第2磁性部372が対応磁性部80に接近する際よりも大きい反発または吸引方向の磁力が作用する。これにより、四番歯車39bの回転負荷は、第1磁性部371が対応磁性部80に最接近する際、または第1磁性部371が対応磁性部80に最接近した位置から離間する際に増大する。よって、第3指針40cが指針基準位置に位置するときに、ロータ202が受ける負荷が増大する。
【0142】
また、磁性部370が軟磁性材料により形成され、対応磁性部80が永久磁石により形成されている場合、磁性部370は対応磁性部80に接近すると磁化する。このため、磁性部370には、対応磁性部80に接近する際に吸引方向の磁力が作用する。第1磁性部371は、第2磁性部372よりも磁化率が大きいので、第1磁性部371には、第2磁性部372が対応磁性部80に接近する際よりも大きい吸引方向の磁力が作用する。これにより、四番歯車39bの回転負荷は、第1磁性部371が対応磁性部80に最接近した位置から離間する際に増大する。よって、第3指針40cが指針基準位置に位置するときに、ロータ202が受ける負荷が増大する。
【0143】
このように、磁性部370は、第1磁性部371と、四番歯車39bの径方向において第1磁性部371と同じ位置に設けられ、第1磁性部371よりも磁化率または磁化の小さい第2磁性部372と、を備える。この構成によれば、第1磁性部371が対応磁性部80に接近する場合と、第2磁性部372が対応磁性部80に接近する場合と、で磁気反応の度合いが相違する。すなわち、四番歯車39bの回転位置によって磁気反応の度合いを変化させることができる。したがって、四番歯車39bの回転負荷を変動させることができるので、モータ負荷検出部122およびパルス制御部11によって四番歯車39bの位置を検出することができる。
【0144】
なお、第1磁性部371は、少なくとも第2磁性部372と同径の円周上における第2磁性部372以外の箇所を同一磁性として存在していればよい。すなわち、磁性部は、円環状に限らず、四番歯車39bの主面の全面に設けられていてもよい。
【0145】
また、本実施形態では、第1磁性部371は、四番歯車39bが基準位置に位置するときに対応磁性部80に最接近する位置のみに設けられているが、これに限定されず、第1磁性部371と第2磁性部372との位置関係が逆転していてもよい。すなわち、四番歯車39bが基準位置に位置するときに対応磁性部80に最接近する位置には、第2磁性部が設けられていてもよい。
【0146】
(第5実施形態)
上述した各実施形態では、四番歯車39bが360度回転する間において、四番歯車39bの回転負荷が1度変動する。これに対して、第5実施形態では、四番歯車39bが360度回転する間において、四番歯車39bの回転負荷が特定のパターンで変動する。なお、第1実施形態ではパルス制御部11は負荷が変動する箇所を1つ探しているが、本実施形態ではパルス制御部11は負荷が変動する箇所を複数探すように構成される。
【0147】
図16は、第5実施形態の四番歯車の平面図である。
図16に示すように、磁性部470は、四番歯車39bの周方向において所定のパターンで配置されている。
【0148】
以下、磁性部470が配置される所定のパターンについて詳述する。
四番歯車39bは、中心角30度ずつ区分けされた12の区分領域を備える。ここで、四番歯車39bの12の区分領域を、任意の1つの区分領域を始点として、図中の時計回り方向に順に第1区分領域から第12区分領域とし、符号K1からK12を付す。この場合、磁性部470は、第4区分領域K4、第5区分領域K5、第6区分領域K6、第8区分領域K8、第10区分領域K10および第11区分領域K11に設けられている。磁性部470は、四番歯車39bの径方向における互いに同じ位置に設けられている。磁性部470は、四番歯車39bの周方向に沿って延びている。磁性部470は、各区分領域において四番歯車39bの周方向全域に延びている。すなわち、磁性部470は、隣り合う区分領域の磁性部470と連続している。
【0149】
図17は、第5実施形態の負荷検出部のよって検出される四番歯車の回転負荷のパターンを示す表である。
図17には、四番歯車39bを
図16中に矢印CCWで示す反時計回り方向に回転させた場合の、四番歯車39bの回転角度30度毎の回転負荷を示している。
図17において初期回転位置は、四番歯車39bの12の区分領域K1からK12のうち、検出動作開始時に対応磁性部80に最接近している区分領域を表している。また、
図17において、検出パターンの「0」は磁性部470が対応磁性部80に最接近しておらず四番歯車39bの回転負荷が変動していない状態を示し、「1」は磁性部470が対応磁性部80に最接近して四番歯車39bの回転負荷が増大している状態を示している。
【0150】
図17に示すように、回転角度30度毎の連続する4つの回転負荷のパターンは、12の初期位置それぞれに対して異なるパターンとなっている。すなわち、四番歯車39bを120度回転させて、回転角度30度毎に回転負荷を4回検出することで、検出動作開始時の四番歯車39bの回転位置を把握することができる。
【0151】
次に、針位置検出を行う処理手順例を説明する。
図18は、本実施形態に係る針検出を行う処理手順例を示すフローチャートである。
なお、四番歯車39bの基準位置は、
図16に示す磁性部を有する区分領域と磁性部を有しない区分領域の境界が対応磁性部80に最接近する回転位置であるものとする。すなわち、四番歯車39bの基準位置は、K3とK4、K6とK7、K7とK8、K8とK9、K9とK10、K11とK12のいずれかの境界が対応磁性部80に最接近する回転位置であるものとする。また、最適なサーチパルスは設定されていることを前提とする。
【0152】
(ステップS1’)四番歯車39bを120度回転させ、回転角度30度毎に連続する4つの回転負荷を検出する。
【0153】
(ステップS2’)ステップS1’で検出した回転負荷のパターンから、検出動作開始時に対応磁性部80に最接近していた区分領域を割り出す。
【0154】
(ステップS3’)四番歯車39bが基準位置の手前側に位置するように、四番歯車39bを回転角度30度ずつ回転させる。
【0155】
(ステップS4’)四番歯車39bを連続回転させ、最初に回転負荷が検出された回転位置を基準位置であると特定し、記憶部5に記憶させて針位置検出処理を終了する。
【0156】
具体的な例を以下に示す。例えば、四番歯車39bの基準位置は、区分領域K3とK4の境界に対応磁性部80が最接近する際の四番歯車39bの回転位置とする。また、検出動作開始時に対応磁性部80に最接近している区分領域は、
図16に示す区分領域K10の点Xの位置であるとする。このような状態において針位置検出の処理を開始した場合、回転負荷の4つの検出パターンは1,1,0,0となる。これにより、検出動作開始時に対応磁性部80に最接近していた区分領域がK10である割り出されると同時に、四番歯車39bにおける対応磁性部80に最接近する区分領域が区分領域K1へと移動する。さらに、四番歯車39bを60度(30度×2回)回転させ、四番歯車39bが基準位置の直前に位置する状態にする。続いて、四番歯車39bを連続回転させ、回転負荷が増大する位置、言い換えれば、検出パターンが0から1となる位置を検出し、これを基準位置と特定して針位置検出処理を終了する。
【0157】
このように、本実施形態によれば、四番歯車39bを120度回転させることで、検出動作開始時の四番歯車39bの回転位置を把握できる。このため、四番歯車39bが360度回転する間において四番歯車39bの回転負荷が1度だけ変動する構成と比較して、四番歯車39bの回転位置を速やかに検出できる。
【0158】
(第6実施形態)
図19は、第6実施形態の時計用ムーブメントを示す断面図である。
図10に示す第1実施形態では、対応磁性部80が輪列30a~30c等を支持する地板51等の部材に設けられている。これに対して、
図19に示す第6実施形態では、対応磁性部580を規正レバー67に設けた点で、第1実施形態と異なっている。
【0159】
図19に示すように、二番歯車36aは、磁性部570を有する。磁性部570は、二番歯車36aの回転軸線O方向に向く一対の主面のうち、二番受53に対向する主面上に設けられている。磁性部570は、四番歯車39bが有する磁性部70(
図11等参照)と同様に形成されている。
【0160】
規正レバー67は、二番受53に設けたピン(図示せず)により案内され、対応磁性部580が、規正レバー67における磁性部570に対向する位置に設けられている。規正レバー67の対応磁性部580は、指針合わせの際、例えば五番車38の回転を規正するように構成されている。この対応磁性部580は、二番受53と二番歯車36aとの間から、五番車38に向かって延び、五番車38に接触可能に設けられている。なお、規正レバー67の全体が対応磁性部580となっていてもよい。
【0161】
この構成によれば、対応磁性部580が規正レバー67に設けられているので、対応磁性部として新たな部品を追加する必要がない。したがって、部品点数の増加を抑制できる。
【0162】
(第7実施形態)
図20は、第7実施形態の時計用ムーブメントを示す断面図である。
図10に示す第1実施形態では、対応磁性部80が輪列30a~30c等を支持する地板51等の部材に設けられている。これに対して、
図20に示す第7実施形態では、対応磁性部680が四番歯車39bに噛み合う五番かな38bである点で、第1実施形態と異なっている。この構成によれば、輪列30cが四番歯車39bに噛み合う五番かな38bを有しているので、対応磁性部として新たな部品を追加する必要がない。したがって、部品点数の増加を抑制できる。
【0163】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、各指針40a~40cのそれぞれにモータ20aから20cが設けられているが、これに限定されず、各指針40a~40cを1つのモータ20により駆動するように構成されていてもよい。この場合、磁性部は、輪列が有する歯車のうち、モータ20の駆動力の伝達経路上において、よりモータ20に近い位置の歯車に設けられることが望ましい。これにより、ロータに与える負荷の変動がノイズに埋もれることを抑制できる。
【0164】
また、上記各実施形態では、パルス制御部11は、ロータ202の回転負荷が大きくなる箇所を探すように構成されているが、ロータ202の回転負荷が小さくなる箇所を探すように構成されていてもよい。
【0165】
また、上記各実施形態では、指針40の基準位置を把握するために回転体の基準位置を検出しているが、これに限定されない。例えばレトログラードや回転数カウンターに対して本発明を適用してもよい。適用に際しては、地板等に磁性部を設け、また、レトログラード針またはカウンター針を取り付ける歯車には、この地板等に設けた磁性部と対向する位置に、対応磁性部を設ける。歯車が回転し、地板等に設けた磁性部と、歯車に設けた対応磁性部が対向した際、発生した負荷を検出し、レトログラードにおいては、帰零位置検出を行い、回転数カウンターにおいては、回転数の積算を行うことが可能となる。
【0166】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態および各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0167】
1…時計 10…制御部 11…パルス制御部(位置検出部) 20…モータ 20a…第1モータ(モータ) 20b…第2モータ(モータ) 20c…第3モータ(モータ) 30,30a,30b,30c…輪列 36a…二番歯車(回転体) 38b…五番かな(被係合回転体) 39b…四番歯車(回転体) 39c…主面 39d…側面 40…指針 40a…第1指針(指針) 40b…第2指針(指針) 40c…第3指針(指針) 51…地板(支持部材) 52…輪列受(支持部材) 67…規正レバー 70,170,270,370,470,570…磁性部 80,580,680…対応磁性部 122,122a,122b,122c…モータ負荷検出部(負荷検出部) 202…ロータ 271…間欠部 371…第1磁性部 372…第2磁性部 K4…第4区分領域 K5…第5区分領域 K6…第6区分領域 K8…第8区分領域 K10…第10区分領域 K11…第11区分領域 O…回転軸線