(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】磁性発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/14 20060101AFI20220204BHJP
H05K 9/00 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
C08J9/14 CER
C08J9/14 CEZ
H05K9/00 W
(21)【出願番号】P 2018022938
(22)【出願日】2018-02-13
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2017025427
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000214788
【氏名又は名称】DMノバフォーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231970
【氏名又は名称】パウダーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】湯本 正弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰慶
(72)【発明者】
【氏名】安賀 康二
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-022935(JP,A)
【文献】特開昭56-110204(JP,A)
【文献】特開平01-267836(JP,A)
【文献】特開平05-008266(JP,A)
【文献】特開2012-092226(JP,A)
【文献】特開昭55-066933(JP,A)
【文献】特開平03-122139(JP,A)
【文献】特開2012-136633(JP,A)
【文献】特開平07-256674(JP,A)
【文献】特開昭60-000458(JP,A)
【文献】特開2006-257346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0111976(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0183380(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08J 9/00 - 9/42
B29C 44/00 - 44/60
B29C 67/20
H05K 9/00
H01B 5/00 - 5/16
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
B29C 48/00 - 48/96
B29C 45/00 - 45/24
B29C 45/46 - 45/63
B29C 45/70 - 45/72
B29C 45/74 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と真比重6g/cm
3以下
及び平均粒径0.3~40μmの磁性粒子とを含み、
全表面の80%以上の面積がスキン層で被覆され、かつ発泡倍率が3倍以上である磁性発泡体。
【請求項2】
磁性粒子が複合金属酸化物粒子である請求項
1記載の磁性発泡体。
【請求項3】
磁性粒子がフェライト粒子である請求項1
又は2記載の磁性発泡体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1~
3のいずれかに記載の磁性発泡体。
【請求項5】
熱可塑性樹脂と磁性粒子との重量割合が、熱可塑性樹脂/磁性粒子=97/3~20/80である請求項1~
4のいずれかに記載の磁性発泡体。
【請求項6】
発泡倍率が20倍以上である請求項1~
5のいずれかに記載の磁性発泡体。
【請求項7】
連続気泡率が0.1~90体積%である請求項1~
6のいずれかに記載の磁性発泡体。
【請求項8】
真密度が1~3g/cm
3である請求項1~
7のいずれかに記載の磁性発泡体。
【請求項9】
熱可塑性樹脂
と真比重6g/cm
3以下
及び平均粒径0.3~40μmの磁性粒子
とを含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する請求項1~
8のいずれかに記載の磁性発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石や電磁波シールド材などに利用できる磁性発泡体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量でクッション性を有する発泡体に磁性粉を含有させることにより、磁性が付与された磁性発泡体を製造する方法が提案されている。特開平5-8266号公報(特許文献1)には、射出成形機のノズル口を閉鎖した状態でスクリューを回転させ、樹脂の可塑化を行いながら計量工程を行い、計量工程の終了と同時にスクリューの回転及び後退を停止させ、次にノズル口を開放して所定量の溶融樹脂を金型キャビテイ内に射出し、冷却して成形品を取り出す射出成形方法において、樹脂に体積比で0.2~2%の発泡剤及び体積比で10~30%の磁性粉を加えたものを用い、計量工程中の溶融樹脂に65~400kg/cm2の圧力を与える発泡樹脂磁石の成形方法が開示されている。この文献には、発泡倍率を適当な値(4倍以上)にすることにより、比重1以下の発泡樹脂を成形できると記載されている。
【0003】
また、特開2001-277281号公報(特許文献2)には、所定量の磁性粉が含有された熱可塑性樹脂からなる射出材料を可塑化・射出装置により可塑化すると共に、前記可塑化・射出装置に二酸化炭素、窒素等の物理的発泡剤を注入し、可塑化された溶融樹脂中に超臨界状態の物理的発泡剤を溶解させて発泡溶融樹脂を得て、これを金型のキャビテイに射出して発泡させて比重の小さい発泡樹脂磁石を成形する発泡樹脂磁石の成形方法が開示されている。この文献では、平均セル径0.01~50μm、平均セル密度108~1016個/cm3の微細なセル構造を有する発泡体が得られている。
【0004】
しかし、特許文献1及び2の成形方法では、高発泡倍率の磁性発泡体は得られない。さらに、これらの文献には、溶融樹脂の詳細は記載されていない。
【0005】
特開平7-94313号公報(特許文献3)には、粉末状磁性材料と有機高分子からなる水性粘結剤と熱分解性有機発泡剤とを混合したゾル状原材料を、成形ダイを介して圧送し、薄膜状に送り出し、この薄膜状原材料を常時回動する無継目のコンベアで受け、加熱炉へ搬送し、発泡と同時に溶媒を除去乾燥してシート状とし、前記コンベアから剥離した後に着磁した発泡性磁石の製造方法が開示されている。この文献には、前記有機高分子からなる水性粘結剤として、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はアクリル共重合エマルジョンが記載されている。さらに、合成樹脂又は合成ゴムの発泡体内に80~95%の磁性体が分散含有した磁石が得られると記載され、実施例では、約3倍以下の発泡倍率を有する発泡磁石が製造されている。
【0006】
しかし、この製造方法でも、高発泡倍率の磁性発泡体は得られない。
【0007】
特開2000-336199号公報(特許文献4)には、電磁波シールド部材に利用できる発泡体として、ポリオレフィン系樹脂100重量部、発泡剤1~50重量部及び薄片状、粒状又は針状の金属粉100~1000重量部を主成分として含有する樹脂組成物を発泡成形してなるプラスチック発泡体であって、その厚さが2~8mmであり、かつ最上層の表面に金属が露出しているプラスチック発泡体が開示されている。この文献の実施例では、低密度ポリエチレン(LDPE)100重量部、発泡剤(アゾジカルボンアミド)15重量部、鉄粉(針状)280重量部、ニッケル粉(針状)120重量部を混合して、押出成形した後、オーブン内で発泡させて発泡倍率15倍の発泡体を製造している。
【0008】
しかし、この発泡体では、金属粉が均一に分散するためか、磁性の強さは十分でなく、発泡倍率を向上させるのも困難である。また、金属粉が酸化するため、長期間使用すると、磁力が低下し、耐久性が十分でない。さらに、金属粉が表面から露出しているため、搬送時の擦れなどによって、発泡体が損傷したり、発泡体から金属粉が脱離し易く、取り扱い性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平5-8266号公報(請求項1、4頁6欄2~3行)
【文献】特開2001-277281号公報(請求項1、段落[0017][0025])
【文献】特開平7-94313号公報(特許請求の範囲、段落[0007][0015])
【文献】特開2000-336199号公報(請求項1、[0001]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、強い磁性と高い発泡性とを両立できる磁性発泡体及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、磁性粒子の脱落を抑制でき、取り扱い性に優れる磁性発泡体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂と真比重6g/cm3以下の磁性粒子とを組み合わせて発泡することにより、強い磁性と高い発泡性とを両立できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の磁性発泡体は、熱可塑性樹脂と真比重6g/cm3以下の磁性粒子とを含み、かつ発泡倍率が3倍以上である。前記磁性粒子の平均粒径は0.1~300μm程度である。前記磁性粒子は複合金属酸化物粒子(特にフェライト粒子)であってもよい。前記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。前記熱可塑性樹脂と前記磁性粒子との重量割合は、熱可塑性樹脂/磁性粒子=97/3~20/80程度である。本発明の磁性発泡体は、発泡倍率が20倍以上であってもよい。本発明の磁性発泡体は、連続気泡率が0.1~90体積%であってもよい。本発明の磁性発泡体は、全表面の80%以上の面積がスキン層で被覆されていてもよい。本発明の磁性発泡体は、真密度が1~3g/cm3程度であってもよい。
【0014】
本発明には、熱可塑性樹脂及び真比重6g/cm3以下の磁性粒子を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する前記磁性発泡体の製造方法も含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、熱可塑性樹脂と真比重6g/cm3以下の低比重磁性粒子とを組み合わせて発泡しているため、強い磁性と高い発泡性とを両立できる。特に、特定の粒径を有する前記磁性粒子を用いることにより、発泡体内部で磁性粒子を適度に局在化できるためか、電磁波シールドや磁石に有用な磁力を向上できる。また、略全表面にスキン層を有するため、磁性粒子の脱落を抑制でき、取り扱い性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例5で得られた磁性発泡体の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(450倍)である。
【
図2】
図2は、マイクロストリップラインを用いて実施例9及び比較例1で得られた磁性発泡体の電磁波シールド性(電磁波の減衰率)を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の磁性発泡体は、熱可塑性樹脂と真比重6g/cm3以下の磁性粒子(低比重磁性粒子)とを含む。
【0018】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、これらの樹脂の構成成分を含む熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独又は二種以上組み合わせてもよい。
【0019】
これらのうち、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーなど)が好ましく、柔軟性や弾性などの機械的特性にも優れる点から、少なくともオレフィン系樹脂を含むのが特に好ましい。
【0020】
オレフィン系樹脂は、通常、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリC2-3オレフィン系樹脂であり、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0021】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-(4-メチルペンテン-1)共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体などが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂のうち、発泡性などの点から、LDPE、LLDPE、EVA樹脂などが好ましい。
【0022】
ポリエチレン系樹脂の数平均分子量は、例えば10,000~300,000、好ましくは15,000~200,000、さらに好ましくは20,000~100,000程度であってもよい。なお、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)において、測定温度140℃で、溶媒としてオルトジクロロベンゼン、及びカラム(Shodex GPC AD-806MS)を用いて、ポリスチレンを基準とするユニバーサルキャリブレーションにより測定できる。
【0023】
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準じた方法(190℃、荷重21.2N)で、0.1g/10分以上であってもよく、例えば0.1~20g/10分、好ましくは0.3~10g/10分、さらに好ましくは0.5~5g/10分(特に0.6~3g/10分)程度である。MFRが小さすぎると、発泡性や強度などが低下する虞がある。
【0024】
前記ポリエチレン系樹脂の融点又は軟化点は、例えば80~150℃、好ましくは90~140℃、さらに好ましくは100~130℃程度である。
【0025】
オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂単独であってもよく、オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂)との組み合わせであってもよい。
【0026】
オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との重量割合は、オレフィン系樹脂/他の熱可塑性樹脂=100/0~10/90(例えば100/0~50/50)程度の範囲から選択でき、両樹脂を組み合わせる場合、オレフィン系樹脂/他の熱可塑性樹脂=99/1~30/70、好ましくは98/2~50/50、さらに好ましくは95/5~70/30(特に93/7~80/20)程度である。オレフィン系樹脂の割合が少なすぎると、発泡性が低下する虞がある。
【0027】
(低比重磁性粒子)
本発明の磁性発泡体は、真比重6g/cm3以下の磁性粒子(低比重磁性粒子)を含むため、トレードオフの関係にある強い磁性と高い発泡性とを両立できるが、その理由は、低比重磁性粒子を含むことにより、発泡体中で磁性粒子を適度に局在化でき、磁力を向上できるためであると推定できる。さらに、低比重磁性粒子の粒径を制御することにより、空隙の壁面やスキン層付近に低比重磁性粒子が局在化し、かつ適度に低比重磁性粒子が凝集した海島構造を形成するためか、発泡性を損なわず、低比重の磁性粒子であるにも拘わらず、磁力を効果的に向上できると推定できる。
【0028】
低比重磁性粒子の真比重は6g/cm3以下であればよいが、例えば2~6g/cm3、好ましくは3~5.8g/cm3、さらに好ましくは4~5.5g/cm3(特に4.5~5.3g/cm3)程度である。真比重が大きすぎると、強い磁性と高い発泡性とを両立するのが困難となる。
【0029】
低比重磁性粒子としては、真比重が6g/cm3以下であれば、慣用の軟磁性粒子及び硬磁性粒子のいずれの磁性粒子であっても使用でき、例えば、フェライト粒子、アモルファス磁性合金粒子などが挙げられる。これらのうち、強い磁性と高い発泡性とを両立できる点から、フェライト粒子が好ましい。
【0030】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、磁性粒子の真比重は、JIS R9301-2-1に準拠して、ピクノメータ方式で測定でき、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0031】
フェライト粒子は、酸化鉄を主成分とし、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛、コバルト、バリウム、マグネシウムなどの金属酸化物を副成分として含有する複合金属酸化物粒子であり、軟磁性粒子であるソフトフェライトで形成された粒子(ソフトフェライト粒子)であってもよく、硬磁性粒子であるハードソフトフェライトで形成された粒子(ハードフェライト粒子)であってもよく、用途に応じて選択できる。
【0032】
ソフトフェライトとしては、例えば、Mn系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Mg系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Cu-Mg-Zn系フェライト、Ni-Cu-Zn系フェライト、Ni-Mn-Zn系フェライトなどが挙げられる。
【0033】
これらのソフトフェライトのうち、磁気特性(特に磁化)の制御の容易さの点から、Mn-Mg系、Mn-Mg-Sr系、Mn-Mg-Ti系、Mn系フェライトが好ましい。これらのソフトフェライト粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
ソフトフェライトにおいて、例えば、Mn-Mg-Sr系フェライトは、フェライト全体に対して、Fe含有量は45~55重量%(特に47.5~52.5重量%)、Mn含有量は15~22重量%(特に16~21重量%)、Mg含有量は0.5~3.5重量%(特に1~3重量%)、Sr含有量は0~1.5重量%(特に0.5~1重量%)程度である。
【0035】
ハードフェライトとしては、例えば、Sr系フェライト、Ba系フェライトなどが挙げられる。これらのハードフェライトのうち、磁気特性(特に保磁力)の制御の容易さの点から、Sr系フェライトが好ましい。これらのハードフェライト粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0036】
ハードフェライトにおいて、Sr系フェライトは、フェライト全体に対して、Fe含有量は61~64重量%(特に62~63.5重量%)、Sr含有量は7.5~9.5重量%(特に8~9重量%)、Mg含有量は0~0.5重量%(特に0.01~0.3重量%)程度である。
【0037】
低比重磁性粒子(特にフェライト粒子)のBET比表面積は、例えば0.05~30m2/g、好ましくは0.1~25m2/g、さらに好ましくは0.2~25m2/g(特に0.25~25m2/g)程度である。本明細書及び特許請求の範囲において、BET比表面積は、例えば、比表面積測定装置(型式:Macsorb HM model-1208(マウンテック社製))を用いて測定できる。
【0038】
磁性粒子(特にフェライト粒子)の形状は、特に限定されず、例えば、球状(真球状又は略球状)、楕円体(楕円球)状、多角体状(多角錘状、正方体状や直方体状など多角方形状など)、板状(扁平状、鱗片状、薄片状など)、ロッド状又は棒状、繊維状又は針状、樹針状、不定形状などが挙げられる。これらのうち、真球状などの球状、板状、針状、不定形状などが汎用され、樹脂への分散の容易さから、球状、不定形状が好ましい。
【0039】
フェライト粒子の平均粒径は、例えば0.1~300μm、好ましくは0.5~200μm、さらに好ましくは1~100μm(特に1.5~50μm)程度である。さらに、平均粒径は、磁性発泡体の用途に応じて選択してもよく、電磁波シールド材として利用する場合、例えば0.01~100μm、好ましくは0.01~50μm、さらに好ましくは0.01~35μm程度である。磁石として利用する場合、フェライト粒子の平均粒径は、例えば0.1~50μm、好ましくは0.3~40μm、さらに好ましくは0.5~30μm程度である。平均粒径が小さすぎると、磁力が低下する虞があり、大きすぎると、発泡性が低下する虞がある。本明細書及び特許請求の範囲において、平均粒径は、体積平均粒径を意味し、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定でき、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0040】
フェライト粒子は、慣用の方法、例えば、目的の組成に応じて、原料である金属化合物に対して、必要に応じてバインダー及び分散剤などの添加剤を配合した組成物を焼成する方法などにより製造でき、例えば、特開2015-196607号公報、特開2016-60682号公報、特開2016-106262号公報、特開2016-137448号公報、特開2016-138189号公報に記載の方法などにより製造してもよい。
【0041】
熱可塑性樹脂と低比重磁性粒子との重量割合は、例えば、熱可塑性樹脂/低比重磁性粒子=99/1~10/90(例えば97/3~20/80)、好ましくは95/5~30/70(例えば90/10~40/60)、さらに好ましくは80/20~50/50(特に70/30~60/40)程度である。低比重磁性粒子の割合が少なすぎると、磁力が低下する虞があり、逆に多すぎると、発泡性が低下する虞がある。
【0042】
(高比重磁性粒子)
本発明の磁性発泡体は、真比重が6g/cm3を超える高比重磁性粒子をさらに含んでいてもよい。高比重磁性粒子の真比重は6g/cm3を超えていればよく(例えば6g/cm3を超えて23g/cm3以下)、例えば6.1~10g/cm3、好ましくは6.3~9.5g/cm3、さらに好ましくは6.5~9g/cm3(特に7~8.5g/cm3)程度である。
【0043】
高比重磁性粒子としては、真比重が6g/cm3を超えていれば、慣用の軟磁性粒子及び硬磁性粒子のいずれの磁性粒子であっても使用できる。
【0044】
軟磁性粒子としては、例えば、純鉄粒子、還元鉄粒子、アトマイズ鉄粒子、ケイ素鋼粒子、パーマロイ粒子、センダスト粒子、パーメンジュール粒子などが挙げられる。これらの軟磁性粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】
硬磁性粒子としては、例えば、アルニコ磁石粒子、Cu-Ni-Fe系合金粒子、Cu-Ni-Co系合金粒子、Pt合金粒子、Mn-Bi系合金粒子、Mn-Al系合金粒子、Sm-Co系合金粒子などが挙げられる。これらの硬磁性粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
高比重磁性粒子の形状及び平均粒径は、好ましい態様も含めて、低比重磁性粒子の形状及び平均粒径と同一である。
【0047】
高比重磁性粒子の割合は、低比重磁性粒子100重量部に対して100重量部以下であってもよく、例えば50重量部以下(例えば0.1~50重量部)、好ましくは30重量部以下(例えば0.5~30重量部)、さらに好ましくは10重量部以下(例えば1~10重量部)程度である。高比重磁性粒子の割合が多すぎると、強い磁性と高い発泡性との両立が困難となる虞がある。
【0048】
(発泡剤)
本発明の磁性発泡体は、前記熱可塑性樹脂及び磁性粒子を含む発泡性樹脂組成物を発泡して得られ、発泡性樹脂組成物は、発泡剤を含んでいてもよい。
【0049】
発泡剤としては、慣用の発泡剤を使用でき、分解性発泡剤(化学発泡剤)であってもよいが、簡便な方法で、発泡倍率を向上できる点から、揮発性発泡剤(物理発泡剤)が好ましい。揮発性発泡剤としては、例えば、無機系発泡剤(窒素、二酸化炭素、酸素、空気、水など)、有機系発泡剤(脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、フッ化炭化水素、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類など)などが挙げられる。これらのうち、安価で毒性が低い点から、ブタン(n-ブタン、イソブタン)やペンタン(n-ペンタン、イソペンタンなど)などの低級脂肪族炭化水素が汎用される。
【0050】
発泡剤の割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば、0.01~30重量部、好ましくは0.1~25重量部、さらに好ましくは1~20重量部(特に5~15重量部)程度である。
【0051】
(発泡核剤)
本発明の磁性発泡体は、発泡核剤をさらに含んでいてもよい。発泡核剤としては、例えば、ケイ素化合物(タルク、シリカ、ゼオライトなど)、無機酸塩(重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩又は炭酸水素塩など)、有機酸又はその塩(クエン酸、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛など)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)などが挙げられる。これらの発泡核剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0052】
発泡核剤の割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば0.01~10重量部、好ましくは0.05~5重量部、さらに好ましくは0.1~3重量部(特に0.5~2重量部)程度である。
【0053】
(収縮防止剤)
本発明の磁性発泡体は、収縮防止剤をさらに含んでいてもよい。収縮防止剤としては、例えば、脂肪酸エステル(パルミチン酸モノ乃至トリグリセリド、ステアリン酸モノ乃至トリグリセリドなどのC8-24脂肪酸と多価アルコールとのエステルなど)、脂肪酸アミド(パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどのC8-24脂肪酸アミドなど)などが挙げられる。これらの収縮防止剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
収縮防止剤の割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば0.01~30重量部、好ましくは0.05~20重量部、さらに好ましくは0.1~10重量部(特に1~5重量部)程度である。
【0055】
(他の添加剤)
本発明の磁性発泡体は、他の添加剤として、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、着色剤(染料や顔料など)、表面平滑剤、気泡調整剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤など)、粘度調節剤、相溶化剤、分散剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、充填剤(炭酸カルシウム、炭素繊維など)、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、難燃剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、消臭剤などが挙げられる。これら慣用の添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0056】
(磁性発泡体の特性)
本発明の磁性発泡体の発泡倍率は、3倍以上(例えば3~70倍)であればよく、例えば3.1~60倍、好ましくは3.5~50倍、さらに好ましくは5~45倍(特に10~40倍)程度である。本発明では、磁性粒子を含むにも拘わらず、高い発泡倍率も可能であり、例えば10倍以上(特に20倍以上)の発泡倍率も可能であり、例えば10~70倍、好ましくは20~60倍、さらに好ましくは30~50倍(特に35~45倍)程度であってもよい。発泡倍率が低すぎると、柔軟性が低下する虞がある。
【0057】
本発明の磁性発泡体は、少なくとも独立気泡構造を含むのが好ましく、気泡全体(連続気泡と独立気泡との合計)に対する連続気泡の割合である連続気泡率は90体積%以下であってもよく、例えば0.1~90体積%、好ましくは1~80体積%(例えば2~70体積%)、さらに好ましくは3~50体積%(特に5~40体積%)程度である。連続気泡率が高すぎると、発泡体の機械的特性が低下する虞がある。本発明では、磁性粒子として、比重が小さく、体積が大きいため、独立発泡が困難な磁性粒子を用いているにも拘わらず、特定の熱可塑性樹脂と特定の磁性粒子との組み合わせにより、このような高い独立気泡率を実現できる。
【0058】
本発明の磁性発泡体の平均気泡径は、例えば0.3~2mm、好ましくは0.4~1.5mm、さらに好ましくは0.5~1.3mm(特に0.6~1mm)程度である。平均気泡径が小さすぎると、発泡倍率を高くするのが困難となる虞があり、大きすぎると、機械的特性が低下する虞がある。
【0059】
本発明の磁性発泡体は、表面にスキン層を有するのが好ましく、全表面に対するスキン層の被覆率は60面積%以上(特に80面積%以上)であってもよく、好ましくは90面積%以上であってもよく、100面積%(全表面がスキン層)であってもよい。スキン層は、磁性発泡体の表面において、略均一な厚みで延びる非発泡層を意味する。
【0060】
スキン層の平均厚みは、0.001~1mm程度の範囲から選択でき、例えば0.005~0.1mm、好ましくは0.008~0.05mm、さらに好ましくは0.01~0.03mm(特に0.012~0.025mm)程度である。スキン層の平均厚みが薄すぎると、磁性粒子が脱落したり、取り扱い性が低下する虞があり、逆に厚すぎると、発泡性が低下する虞がある。
【0061】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、発泡倍率、連続気泡率、平均気泡径及びスキン層の平均厚みは、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0062】
本発明の磁性発泡体の真密度は、例えば1~3g/cm3、好ましくは1.2~2.8g/cm3(例えば1.5~2.6g/cm3)、さらに好ましくは1.8~2.5g/cm3(特に1.9~2.2g/cm3)程度である。真密度が小さすぎると、磁力が低下する虞があり、逆に大きすぎると、発泡性が低下する虞がある。
【0063】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、磁性発泡体の真密度は、JIS K7112に準じて測定できる。
【0064】
本発明の磁性発泡体は、硬磁性粒子(特に、ハードフェライト粒子)を含む場合、保磁力及び残留磁化の値は大きければ大きいほどよい。保磁力が大きい場合は、外部からの印加磁場が大きくなっても磁性体内部の磁気モーメントが消磁されにくく、磁力を保持できるため、安定して磁力線を出す用途(永久磁石として使用する用途)に適している。残留磁化は保持する磁力に相当し、永久磁石として使用する際に永久磁石の強さとなる。
【0065】
硬磁性粒子(特に、ハードフェライト粒子)を含む磁性発泡体の保磁力は、例えば1000~4500(Oe)、好ましくは2000~4500(Oe)程度である。保磁力が小さすぎると、外部磁場により消磁され易くなり、長期間にわたり安定して磁力線を出す用途(永久磁石として使用する用途)に向かない虞がある。なお、後述する実施例で使用するハードフェライト粒子では保磁力が4500(Oe)を超えることはない。
【0066】
硬磁性粒子(特に、ハードフェライト粒子)を含む磁性発泡体の残留磁化は、例えば1~35(emu/g)、好ましくは5~35(emu/g)程度である。残留磁化が小さすぎると、殆ど磁力が発生しないため、磁性発泡体として機能しない虞がある。なお、後述する実施例で使用するハードフェライト粒子では残留磁化が35(emu/g)を超えることはない。
【0067】
本発明の磁性発泡体は、軟磁性粒子(特に、ソフトフェライト粒子)を含む場合、飽和磁化の値は大きければ大きいほどよい。飽和磁化が大きい場合は、外部からの印加磁場(永久磁石)が弱い場合でも磁力でひきつけられやすい。
【0068】
軟磁性粒子(特に、ソフトフェライト粒子)を含む磁性発泡体の飽和磁化は、例えば10~130(emu/g)、好ましくは20~130(emu/g)程度である。飽和磁化が小さすぎると、外部からの印加磁場(永久磁石)が強い場合でも磁力によりひきつけられにくくなり、磁力による磁性発泡体の固定が出来なくなる虞がある。なお、真比重6g/cm3以下のソフトフェライト粒子と真比重6g/cm3より大きい磁性粒子とを用いても飽和磁化が130(emu/g)よりも高くなることはない。
【0069】
本発明の磁性発泡体は、電磁波シールド性を有しており、軟磁性粒子(特に、ソフトフェライト粒子)を含む磁性発泡体では、例えば1~30GHz、好ましくは1~20GHz、さらに好ましくは5~20GHz程度の電磁波のシールド性に優れており、特に5~10GHzの範囲においては、安定した電磁波シールド性を有している。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、電磁波シールド性は、IEC62333に準拠した伝送減衰率測定方法(マイクロストリップライン)で測定でき、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0070】
[磁性発泡体の製造方法]
本発明の磁性発泡体の製造方法は、熱可塑性樹脂及び低比重磁性粒子を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する方法であればよく、慣用の方法を利用できるが、通常、前記樹脂組成物を溶融混練し、発泡成形する方法である。
【0071】
溶融混練は、慣用の溶融混練機、例えば、一軸又はベント式二軸押出機などを用いて溶融混錬してもよい。また、溶融混練に先だって、慣用の方法、例えば、混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)を用いて、熱可塑性樹脂と、磁性粒子と、他の成分(発泡剤及び必要に応じて発泡核剤、添加剤など)とを予備混合してもよい。
【0072】
発泡成形法としては、慣用の方法、例えば、押出成形法(例えば、Tダイ法、インフレーション法など)、射出成形法などが使用できる。これらのうち、強い磁力と高い発泡性を有する発泡体を高い生産性で製造できる点から、押出成形法が好ましい。
【0073】
押出成形法において、押出機としては、例えば、単軸押出機(例えば、ベント式押出機など)、二軸押出機(例えば、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機など)などが利用でき、発泡条件を調整し易く、高発泡率を実現できる点から、タンデム押出機などの多段押出機が好ましい。
【0074】
押出成形法において、発泡剤を導入する方法は特に限定されず、分解性発泡剤(化学発泡剤)を予め発泡性樹脂組成物に配合してもよいが、簡便な方法で、発泡倍率を向上できる点から、押出機において揮発性発泡剤(物理発泡剤)を導入するのが好ましい。
【0075】
口金の吐出口(ダイのリップ)の形状は、特に制限されず被保護体(又は物品)の形態に応じて選択でき、例えば、棒状、紐状などの一次元的形状、シート状、フィルム状、二次元網目(ネット)状などの二次元的形状、ブロック状、板状、柱状、スリット状、L字状、コ型状、パイプ状又はリング状などの三次元的形状であってもよい。シート状発泡体は、少なくとも一方の面が平坦面又は凹凸面であってもよく、一方の面が凹凸面に形成され、他方の面が凹凸面であってもよい。この凹凸面は、長尺のシート状発泡体では長手方向に沿って形成する場合が多い。凹凸面を形成することにより、被保護体の滑りを抑制でき、緩衝効果を高めることができる。凹凸部の高さは特に制限されない。
【0076】
押出発泡された発泡体は、慣用の方法、例えば、冷却器を用いた冷却方法で冷却してもよい。冷却器を用いた冷却方法において、冷却媒体としては、圧縮エアー、水(冷却水)、空気(ブロア)などの冷却媒体が挙げられる。冷却方法としては、圧縮エアーを噴射する方法、ブロアで冷却する方法、水を噴霧して冷却する方法、冷却ジャケットを用いて冷却する方法などが挙げられる。冷却媒体の温度は、例えば0~60℃、好ましくは5~55℃、さらに好ましくは10~50℃程度であってもよい。
【0077】
圧縮エアーを噴射する方法において、エアーの圧力は、例えば0.1~10MPa、好ましくは0.2~5MPa、さらに好ましくは0.3~1MPa程度であってもよい。圧縮エアーの噴射量は、例えば100~1000リットル/分、好ましくは200~500リットル/分、さらに好ましくは250~400リットル/分程度であってもよい。
【0078】
また、必要により、得られた磁性発泡体(特に、シート状発泡体)を二次加工[例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチモールド成形などの熱成形(例えば、金型を用いる熱成形)]してもよい。
【0079】
なお、発泡成形又は二次成形温度は、例えば70~300℃、好ましくは80~280℃、さらに好ましくは85~260℃程度であってもよい。
【0080】
発泡体の形状は、用途に応じて任意の形状に適宜選択でき、例えば、棒状、シート状、三次元形状などであってもよい。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた原料、及びフェライト粒子の製造方法は以下の通りであり、得られたフェライト粒子及び磁性発泡体の特性は以下の方法で評価した。
【0082】
[原料]
LDPE:低密度ポリエチレン、東ソー(株)製「170」
イソブタン(発泡剤):市販品
発泡核剤:タルク、永和化成(株)製「EE275」
収縮防止剤:ベーリンガーインゲルハイムケミカルズ(株)製「アクティベックス325」
還元鉄粉:パウダーテック(株)製「RD-C」、体積平均粒径30μm、真比重7.04g/cm3。
【0083】
[ハードフェライト粒子の製造方法]
フェライト原料として、Fe2O3とSrCO3とを、Fe2O3/SrCO3=5.75/1のモル比で用い、これらの原料をヘンシェルミキサーで10分混合した。得られた混合物を、固定式電気炉を用い、大気中、1100℃で4時間(ピーク)本焼成し、Srフェライト粉を得た。
【0084】
さらに、上記本焼成で得られた焼成物を、ビーズミルを用いて固形分60重量%で30分湿式粉砕し、洗浄、脱水、乾燥後、大気中、850℃で1時間(ピーク)熱処理し、熱処理済Srフェライト粉を得た。得られたハードフェライト粒子の体積平均粒径は1.7μm、真比重は5.11g/cm3であった。
【0085】
[ソフトフェライト粒子の製造方法]
MnOとMgOとFe2O3とSrOとが、MnO/MgO/Fe2O3/SrO=39/11/50/0.5のモル比になるように原料を秤量し、乾式のメディアミルで5時間粉砕し、得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。MnO原料としては四酸化三マンガンを、MgO原料としては水酸化マグネシウムを、SrO原料としては、炭酸ストロンチウムをそれぞれ用いた。
【0086】
このペレットを粗粉と微粉を除去した後、連続式電気炉で、950℃で3時間加熱し、仮焼成を行った。次いで、乾式のメディアミルを用いて、平均粒径が約5μmまで粉砕した後、水を加え、さらに湿式のメディアミルを用いて粉砕した。このスラリーの粒径(粉砕の一次粒子径)をマイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製「Model9320-X100」)にて測定した結果、D50は約2μmであった。このスラリーに分散剤を適量添加し、バインダーとしてポリビニルアルコール10重量%水溶液を固形分に対して0.4重量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、得られた粒子(造粒物)の粒度調整を行い、その後、ロータリー式電気炉を用い、大気雰囲気で、750℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーなどの有機成分の除去を行った。
【0087】
その後、トンネル式電気炉にて、焼成温度1150℃、酸素濃度0.01容量%にて、5時間保持した。この時、昇温速度を150℃/時、冷却速度を110℃/時とした。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整を行い、磁力選鉱により低磁力品を分別し、ソフトフェライト粒子を得た。得られたソフトフェライト粒子の体積平均粒径は14.7μm、真比重は4.89g/cm3であった。
【0088】
[フェライト粒子の体積平均粒径]
フェライト粒子の体積平均粒径は、マイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製「Model9320-X100」)を用いてレーザー回折散乱法により測定した。屈折率は2.42とし、25±5℃、湿度55±15%の環境下で測定を行った。体積平均粒径(メジアン径)は、体積分布モード、ふるい下表示での累積50%粒子径である。なお、分散媒としては水を用いた。
【0089】
[フェライト粒子の真比重]
フェライト粒子の真比重は、JIS R9301-2-1に準拠して、ウルトラ・ピクノメーター(ユアサアイオニクス(株)製)を用いて、ピクノメータ方式で測定した。
【0090】
[磁性発泡体の真密度]
実施例及び比較例で得られた発泡体の真密度(g/cm3)は、JIS K7112に準じて測定した。
【0091】
[発泡倍率]
発泡倍率は、以下の式に基づいて算出した。
【0092】
発泡倍率(倍)=発泡体用樹脂組成物の密度/発泡体の見掛密度。
【0093】
[連続気泡率]
実施例及び比較例で得られた発泡体を、予め重量を測定し、水中に静置した後、-400mmHgの減圧下に1分間放置して、連続気泡構造の中に水を浸透させた。減圧状態から大気圧力に戻し、発泡体の表面に付着した水を除去して重量を測定した後、下記式(1)により算出した。
【0094】
連続気泡率(%)={(w2-w1)/d3}/(w1/d1-w1/d2) (1)
(式中、w2は吸水後の発泡体重量、w1は吸水前の発泡体重量、d1は発泡体の見掛密度、d2は発泡体に使用されている樹脂組成物の見掛密度、d3は測定時の水の密度を示す)。
【0095】
[気泡径(セルサイズ)]
発泡体の断面を走査型電子顕微鏡又はデジタル顕微鏡(スカラ(株)製)で観察し、TD方向及びMD方向の気泡径を任意の10箇所で測定し、平均値を気泡径とした。また、各々の気泡径は、長径と短径との平均値とした。
【0096】
[スキン層の平均厚み]
電子顕微鏡(スカラ(株)製)及びファイリング&2次元計測ソフトウェア((株)アートレイ製「AR-CNVMF」)を用いて、TD方向のスキン層の厚みを任意の10箇所で測定し、平均値をスキン層の平均厚みとした。
【0097】
[VSMを用いた磁気特性の測定]
振動試料型磁気測定装置(型式:VSM-C7-10A、東英工業(株)製)を用いた。発泡体の測定試料は、内径5mm、高さ2mmのセルに圧縮して詰めて上記装置にセットした。測定は、印加磁場を加え、10K・1000/4π・A/mまで掃引した。次いで、印加磁場を減少させ、ヒステリシスカーブを作製した。このカーブのデータより飽和磁化、残留磁化及び保磁力を求めた。
【0098】
[磁性発泡体の電子顕微鏡による観察方法]
磁性発泡体の観察は、FE-SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製「SU-8020」)を用いて、LAモード、検出器はUpperを使用し、WDは8mm、加速電圧1kV、倍率450倍で行った。磁性発泡体は、金蒸着せず、そのままFE-SEMのサンプルホルダーにセットし、LAモードで撮影することにより、磁性発泡体において、樹脂のみの領域が暗く、磁性粒子が存在する部分は明るく撮影できるように調整した。
【0099】
[電磁波シールド性]
実施例で得られた磁性発泡体を縦200mm×横200mm×厚み5mmに切り出し、IEC62333に準拠した伝送減衰率測定方法(マイクロストリップライン)にて測定した。
【0100】
(測定範囲)
1~18GHz
(測定用冶具)
マイクロストリップライン冶具
(ネットワークアナイライザ)
Anritsu37247C。
【0101】
比較例1
LDPE100重量部、発泡核剤1重量部及び収縮防止剤3重量部を含む樹脂組成物を押出機に投入し、この押出機の途中からイソブタンガス10重量部を注入した後、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けた円形状の金型から押出し、発泡体を得た。得られた発泡体は、略円状断面の平均径が16.1mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.022mmであった。
【0102】
実施例1
(マスターバッチの調製)
LDPE30重量部とハードフェライト粒子70重量部とをボールミルに投入して10分間回転しながら混合後、得られた混合物をホッパーからKRCニーダー((株)栗本鐵工所製)に連続的に投入することで溶融混練し、連続的に排出される混合物(フェライト粒子の含有割合:70重量%)を水で冷却したのちペレタイザーで切断することでマスターバッチを調製した。
【0103】
(発泡体の製造)
LDPE100重量部の代わりに、LDPE95重量部及びマスターバッチ5重量部を用いる以外は比較例1と同様の方法で発泡体を製造した。得られた発泡体(フェライト粒子含量:3.4重量%)は、略円状断面の平均径が16mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.021mmであった。
【0104】
実施例2
LDPE100重量部の代わりに、LDPE90重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ10重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:6.7重量%)を製造した。略円状断面の平均径が15.2mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.018mmであった。
【0105】
実施例3
LDPE100重量部の代わりに、LDPE80重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ20重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:13.5重量%)を製造した。略円状断面の平均径が15.6mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.012mmであった。
【0106】
実施例4
LDPE100重量部の代わりに、LDPE70重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ30重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:20.2重量%)を製造した。略円状断面の平均径が15.8mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.012mmであった。
【0107】
実施例5
LDPE100重量部の代わりに、LDPE60重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ40重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:26.9重量%)を製造した。略円状断面の平均径が15.8mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.013mmであった。
【0108】
実施例6
LDPE100重量部の代わりに、LDPE50重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ50重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:33.7重量%)を製造した。略円状断面の平均径が12.8mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.012mmであった。
【0109】
実施例7
LDPE100重量部の代わりに、LDPE40重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ60重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:40.4重量%)を製造した。略円状断面の平均径が12.1mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.010mmであった。
【0110】
実施例8
LDPE100重量部の代わりに、LDPE30重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ70重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:47.1重量%)を製造した。略円状断面の平均径が8.6mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.011mmであった。
【0111】
実施例9
(マスターバッチの調製)
LDPE30重量部とソフトフェライト粒子70重量部とをボールミルに投入して10分間回転しながら混合後、得られた混合物をホッパーからKRCニーダー((株)栗本鐵工所製)に連続的に投入することで溶融混練し、連続的に排出される混合物(フェライト粒子の含有割合:70重量%)を水で冷却したのちペレタイザーで切断することでマスターバッチを調製した。
【0112】
(発泡体の製造)
LDPE40重量部、得られたマスターバッチ60重量部、発泡核剤1重量部及び収縮防止剤3重量部を含む樹脂組成物を押出機に投入し、この押出機の途中からイソブタンガス10重量部を注入した後、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けたサーキュラーダイから押出し、筒状の発泡体を得た。得られた筒状の発泡体を切り開くことにより、シート状の発泡成形体(フェライト粒子含量:40.4重量%)を得た。シート厚みが0.7mmであり、スキン層の平均厚みは0.021mmであった。
【0113】
実施例10
(マスターバッチの調製)
LDPE40重量部とソフトフェライト粒子30重量部と還元鉄粉30重量部とをボールミルに投入して10分間回転しながら混合後、得られた混合物をホッパーからKRCニーダー((株)栗本鐵工所製)に連続的に投入することで溶融混練し、連続的に排出される混合物(フェライト粒子の含有割合:30重量%)を水で冷却したのちペレタイザーで切断することでマスターバッチを調製した。
【0114】
(発泡体の製造)
マスターバッチの種類を得られたマスターバッチに変更する以外は実施例9と同様にしてシート状の発泡体(フェライト粒子含量:8.7重量%)を製造した。シート厚みは0.8mmであり、スキン層の平均厚みは0.013mmであった。
【0115】
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
表1の結果から明らかなように、実施例で得られた磁性発泡体は、磁性粒子を含んでいても、発泡倍率が高い。
【0118】
実施例5で得られた磁性発泡体の電子顕微鏡写真を
図1に示す。局在化したフェライト粒子が確認できた。
【0119】
実施例9及び比較例1で得られた磁性発泡体の電磁波シールド性を測定した結果を
図2に示す。
図2から明らかなように、比較例1で得られた磁性発泡体が電磁波シールド性を示さないのに対して、実施例9で得られた磁性発泡体は2~18GHzの電磁波に対してシールド性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の磁性発泡体は、磁石(装飾用途・磁石による仮止め用途・固定用途など)、電磁波シールド材(PCやスマートフォン、車載センチ波又は準ミリ波レーダーなどの電磁波を発生する電子機器におけるハウジングの内外壁、家屋や車両などの構造物や内装材など)、電磁波受信体(例えば、レーザー通信やマイクロ波通信などの通信システム、駐車場や有料道路などの料金自動収受システムなどのアンテナなど)などに利用できる。