(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】燃料電池式産業車両
(51)【国際特許分類】
B60L 50/70 20190101AFI20220204BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220204BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20220204BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20220204BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20220204BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220204BHJP
【FI】
B60L50/70
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04302
H01M8/04313
H01M8/04858
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2018079676
(22)【出願日】2018-04-18
【審査請求日】2020-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【氏名又は名称】金山 明日香
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】立川 克之
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-059218(JP,A)
【文献】特開2008-258072(JP,A)
【文献】国際公開第2006/077970(WO,A1)
【文献】特開2014-041808(JP,A)
【文献】特開2007-294294(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114391(WO,A1)
【文献】特開2017-143714(JP,A)
【文献】特開2012-016163(JP,A)
【文献】特開2006-351407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 58/40
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、前記車両本体に搭載される燃料電池ユニットとを備え、前記燃料電池ユニットは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックが発電する電力を蓄える蓄電装置とを有し、前記車両本体は、前記蓄電装置を介して前記燃料電池ユニットから供給される電力によって動作する燃料電池式産業車両であって、
前記車両本体を制御するために設けられる第1のスイッチと、
前記燃料電池ユニットを制御するために設けられる第2のスイッチと、
前記蓄電装置の電圧が所定閾値電圧未満となってキーオン操作による前記燃料電池スタックの起動に規制をかける起動規制制御が適用された状況であっても、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチが所定の条件を満たすようにオン状態となった場合に、前記燃料電池スタックを起動して前記蓄電装置への充電を開始し、前記蓄電装置の電圧が前記所定閾値電圧以上となるまで前記蓄電装置への充電を継続するように制御する制御部と、
を備える燃料電池式産業車両。
【請求項2】
車両始動用のキーの操作に応じてオンオフ状態が切り替わるキースイッチを有し、
前記制御部は、前記キースイッチがオン状態となっている期間中に、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチが前記所定の条件を満たすようにオン状態となったか否かを判断する
請求項1に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項3】
前記第1のスイッチは、前記車両本体の動作を制御するために操作される操作部材の動きに応じてオンオフ状態が切り替わる操作感知スイッチである
請求項1または2に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項4】
前記操作部材はブレーキペダルであり、前記操作感知スイッチは、前記ブレーキペダルが押されているときにオン状態となるブレーキペダルスイッチである
請求項3に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項5】
前記車両本体は、前記燃料電池ユニットを覆う開閉可能なカバーを有し、
前記第2のスイッチは、前記燃料電池ユニットと共に前記カバーで覆われ、前記カバーを開けることで操作可能になるスイッチである
請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項6】
前記第2のスイッチは、オートパワーオフ機能を解除するためのオートパワーオフ解除スイッチである
請求項5に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチが前記所定の条件を満たすようにオン状態となった場合に、前記燃料電池スタックが最大の発電量で発電を開始するように前記燃料電池
スタックの発電状態を制御する
請求項1~6のいずれか1項に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項8】
車両本体と、前記車両本体に搭載される燃料電池ユニットとを備え、前記燃料電池ユニットは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックが発電する電力を蓄える蓄電装置とを有し、前記車両本体は、前記蓄電装置を介して前記燃料電池ユニットから供給される電力によって動作する燃料電池式産業車両であって、
前記車両本体を制御するために設けられる第1のスイッチと、
前記燃料電池ユニットを制御するために設けられる第2のスイッチと、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチが所定の条件を満たすようにオン状態となった場合に、前記燃料電池スタックを起動して前記蓄電装置への充電を開始し、前記蓄電装置の電圧
が所定閾値電圧以上となるまで前記蓄電装置への充電を継続するように制御
する制御部と、
を備える燃料電池式産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両に関し、特に、燃料電池式産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業車両をはじめとする車両用の駆動源として、クリーンでエネルギー効率が高い燃料電池が注目されている。燃料電池を駆動源とした燃料電池式産業車両では、燃料電池で発電した電力を蓄電装置に蓄え、この蓄電装置を介して車両負荷に電力を供給する構成が採用されている(たとえば、特許文献1および特許文献2を参照)。
【0003】
このような構成では、蓄電装置から車両負荷に電力を供給した場合に、蓄電装置の蓄電量の減少にともなって蓄電装置の電圧が低くなる。このため、燃料電池式産業車両においては、蓄電装置の蓄電量を一定のレベル以上に維持するために、蓄電装置の電圧をセンサで検出し、検出した蓄電装置の電圧に基づいて燃料電池の発電状態を制御している。また、燃料電池式産業車両は、コンプレッサと燃料電池スタックを含む燃料電池ユニットを備え、オペレータが車両始動用のキーを停止位置から始動位置に操作(以下、「キーオン操作」という。)したときに、コンプレッサから燃料電池スタックに空気を送ることにより、燃料電池スタックが起動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-351407号公報
【文献】特開2009-232555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、燃料電池式産業車両に何らかの故障が発生し、これが原因で燃料電池スタックを起動できない状況に陥ることがある。そうした場合、燃料電池式産業車両を修理しないままオペレータが何度もキーオン操作を繰り返すと、その都度、燃料電池ユニットでは燃料電池スタックを起動しようとして電力が消費され、蓄電装置の蓄電量が減っていく。そして、蓄電量の減少によって蓄電装置の電圧が下限閾値電圧を下回ると、それ以上の電力消費を避けるために、燃料電池ユニットでは、キーオン操作が行われても燃料電池スタックを起動しないように規制をかける起動規制制御が適用される。
【0006】
起動規制制御の適用の有無は、蓄電装置の電圧が下限閾値電圧未満であるかどうかによって決まっており、サービスマン等が燃料電池式産業車両を修理して故障を解消した後でも、蓄電装置の電圧が下限閾値電圧以上に回復しないかぎり適用される。このため、修理後に起動規制制御を解除するには、外部設備となる安定化電源を用意して蓄電装置に接続し、安定化電源が出力する電力によって蓄電装置を充電することにより、蓄電装置の電圧を下限閾値電圧以上に回復させる必要がある。
また、外部設備からの充電は、通常の燃料電池による充電とは異なる作業のため、例えば蓄電装置を満充電まで回復させようとした際には蓄電装置が過充電にならないよう、サービスマン等が蓄電装置の電圧を確認しながらゆっくりと充電する必要がある。このため、燃料電池式産業車両の修理を終えてから蓄電装置の電圧を回復させるまでに手間と時間がかかってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、燃料電池ユニットにおいて蓄電装置の電圧が低くなって起動規制制御が適用された場合に、安定化電源等の外部設備を使用しなくても、蓄電装置の電圧を回復させることができる燃料電池式産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両本体と、前記車両本体に搭載される燃料電池ユニットとを備え、前記燃料電池ユニットは、燃料電池と、前記燃料電池が発電する電力を蓄える蓄電装置とを有し、前記車両本体は、前記蓄電装置を介して前記燃料電池ユニットから供給される電力によって動作する燃料電池式産業車両であって、前記車両本体を制御するために設けられる第1のスイッチと、前記燃料電池ユニットを制御するために設けられる第2のスイッチと、前記蓄電装置の電圧が所定閾値電圧未満となってキーオン操作による前記燃料電池スタックの起動に規制をかける起動規制制御が適用された状況であっても、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチが所定の条件を満たすようにオン状態となった場合に、前記燃料電池を起動して前記蓄電装置への充電を開始し、前記蓄電装置の電圧が前記所定閾値電圧以上となるまで前記蓄電装置への充電を継続するように制御する制御部と、を備える。
【0009】
本発明に係る燃料電池式産業車両は、車両始動用のキーの操作に応じてオンオフ状態が切り替わるキースイッチを有し、前記制御部は、前記キースイッチがオン状態となっている期間中に、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチが前記所定の条件を満たすようにオン状態となったか否かを判断してもよい。
【0010】
また、前記第1のスイッチは、前記車両本体の動作を制御するために操作される操作部材の動きに応じてオンオフ状態が切り替わる操作感知スイッチであってもよい。
【0011】
また、前記操作部材はブレーキペダルであり、前記操作感知スイッチは、前記ブレーキペダルが押されているときにオン状態となるブレーキペダルスイッチであってもよい。
【0012】
前記車両本体は、前記燃料電池ユニットを覆う開閉可能なカバーを有し、前記第2のスイッチは、前記燃料電池ユニットと共に前記カバーで覆われ、前記カバーを開けることで操作可能になるスイッチであってもよい。
【0013】
また、前記第2のスイッチは、オートパワーオフ機能を解除するためのオートパワーオフ解除スイッチであってもよい。
【0014】
また、前記制御部は、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチが前記所定の条件を満たすようにオン状態となった場合に、前記燃料電池が最大の発電量で発電を開始するように前記燃料電池スタックの発電状態を制御するものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、燃料電池ユニットにおいて蓄電装置の電圧が低くなって起動規制制御が適用された場合に、安定化電源等の外部設備を使用しなくても、蓄電装置の電圧を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池式産業車両の構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る燃料電池式産業車両の外観を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る燃料電池式産業車両における燃料電池スタックの発電状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る燃料電池式産業車両において、FC制御装置が行う復旧制御処理を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
<燃料電池式産業車両の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池式産業車両の構成例を模式的に示すブロック図である。本発明に係る燃料電池式産業車両は、車両本体200と、車両本体200に搭載される燃料電池ユニット100とを備える産業車両である。なお、本発明の実施形態においては、燃料電池式産業車両として、フォークリフト300を例に挙げて説明する。
【0019】
(燃料電池ユニット)
燃料電池ユニット100は、燃料電池スタック(Fuel Cell Stack)1と、水素タンク2と、コンプレッサ3と、を備えている。燃料電池スタック1(以下、「FCスタック」ともいう。)は、図示しない複数の発電セルを積層した構成になっている。各々の発電セルは、たとえば、固体高分子電解質をアノード極とカソード極とによって挟み込んで形成される。水素タンク2は、FCスタック1に対して、発電のための燃料ガスとなる水素を供給する。コンプレッサ3は、FCスタック1に対して、酸化剤ガスとなる酸素を含む空気を供給する。FCスタック1と水素タンク2の間には、流量制御弁4が設けられている。流量制御弁4は、水素タンク2からFCスタック1に供給される水素の量を調整するものである。
【0020】
FCスタック1は、水素タンク2から流量制御弁4を通してFCスタック1に供給される水素と、コンプレッサ3からFCスタック1に供給される空気中の酸素との化学反応により、電気エネルギーを生成する。すなわち、FCスタック1は、水素と酸素の化学反応により発電する。
【0021】
FCスタック1には、FCスタック1を冷却するための冷却機構が接続されている。冷却機構は、冷却水路6と、水温センサ7と、ラジエータ8と、ウォータポンプ9と、冷却ファン10と、を備えた構成になっている。冷却水路6は、FCスタック1を冷却する冷却水が流れる水路である。冷却水路6の一部は、FCスタック1が発生する熱を吸収可能に配置されている。これにより、冷却対象となるFCスタック1と、冷却水路6を流れる冷却水との間で熱交換が行われ、この熱交換によってFCスタック1が冷却される構成になっている。
【0022】
水温センサ7は、冷却水路6を流れる冷却水の温度を検出するものである。水温センサ7は、FCスタック1からラジエータ8に至る冷却水路6の途中に設けられている。水温センサ7が検出する冷却水の温度は、FC制御装置5に入力される。ラジエータ8は、冷却水路6に流れる冷却水を冷却するものである。ウォータポンプ9は、冷却水路6を流れる冷却水を循環させるポンプである。ウォータポンプ9は、ラジエータ8からFCスタック1に至る冷却水路6の途中に設けられている。ウォータポンプ9は、FCスタック1の発電量に基づいて回転数が設定されており、冷却ファン10が回転している時には最大回転数で回転し冷却水を送る。
【0023】
冷却ファン10は、ラジエータ8を冷却するものである。冷却ファン10は、冷却ファン10自身の回転によって空気流を発生させる。冷却ファン10が発生する空気流は、ラジエータ8に吹き付けられ、これによってラジエータ8が冷却される。
【0024】
FCスタック1の出力には、DC/DCコンバータ11と蓄電装置12が電気的に接続されている。DC/DCコンバータ11は、FCスタック1から出力される直流電圧を所定の直流電圧に降圧して出力するものである。蓄電装置12は、車両負荷20に供給される直流電力を安定化させる役目を果たす。蓄電装置12は、FCスタック1が生成する電気エネルギーを充電によって蓄える充電機能と、充電によって蓄えた電気エネルギーを放出する放電機能とを有する。蓄電装置12は、たとえば、キャパシタまたは二次電池などによって構成される。充電によって蓄電装置12に蓄えられた電力は、車両本体200の車両負荷20で消費されるほか、燃料電池ユニット100のコンプレッサ3や冷却ファン10でも消費される。
【0025】
蓄電装置12には電圧センサ13が電気的に接続されている。電圧センサ13は、蓄電装置12の電圧を検出するセンサである。電圧センサ13が検出する蓄電装置12の電圧値は、FC制御装置5に入力される。FCスタック1とDC/DCコンバータ11の間には、発電量センサ14が電気的に接続されている。発電量センサ14は、FCスタック1が発電する発電量を検出するセンサである。発電量センサ14が検出するFCスタック1の発電量は、FC制御装置5に入力される。
【0026】
FC制御装置5は、燃料電池ユニット100全体の処理および動作を制御するものである。FC制御装置5は、たとえば、マイクロコンピュータ等によって構成される。FC制御装置5には、制御対象として、コンプレッサ3と、流量制御弁4と、冷却ファン10と、DC/DCコンバータ11が、それぞれ電気的に接続されている。また、FC制御装置5には、水温センサ7と、電圧センサ13と、発電量センサ14が、それぞれ電気的に接続されている。これらのセンサは、FC制御装置5に参照情報を入力するセンサである。参照情報は、FC制御装置5が制御対象を制御する際に参照する情報である。さらに、FC制御装置5には、オートパワーオフ解除スイッチ15と蓋感知スイッチ16が、それぞれ電気的に接続されている。オートパワーオフ解除スイッチ15と蓋感知スイッチ16は、いずれも、燃料電池ユニット100を制御するためにフォークリフト300に設けられるスイッチである。
【0027】
オートパワーオフ解除スイッチ15は、フォークリフト300が有するオートパワーオフ機能を解除するためのスイッチである。オートパワーオフ機能は、フォークリフト300の電源を自動的に切断する機能である。オートパワーオフ機能は、車両始動用のキーの切り忘れを防止するための機能であって、フォークリフト300の無動作および無操作の状態が所定の時間にわたって継続したときに、フォークリフト300の電源を自動的に切断する。
一方、フォークリフト300は、燃料電池ユニット100で発電した電力を外部の電子機器等へ供給する外部給電機能を有している。そして、オートパワーオフ解除スイッチ15は、外部給電機能を使用する場合に、フォークリフト300の電源がオートパワーオフ機能によって外部給電中に自動的に切断されないようにオートパワーオフ機能を無効とするために押圧操作されるスイッチである。
【0028】
オートパワーオフ解除スイッチ15は、
図2に示すように、フォークリフト300の車両本体200に設けられたシートスタンド201をA方向に持ち上げて開けることで操作可能になるスイッチである。オートパワーオフ解除スイッチ15は、たとえば、押しボタン式のスイッチであって、スイッチを押しているときにオン状態となり、それ以外はオフ状態となる。シートスタンド201は、燃料電池ユニット100を覆う開閉可能なカバーに相当する。シートスタンド201は、シート202およびフロアカバー203を一体に有し、図示しない支軸を中心とした回動動作により開閉可能に設けられている。
【0029】
フォークリフト300の通常の使用時には、シートスタンド201は
図2に実線で示すように閉じた状態とされ、この閉じ状態でオペレータがシート202に座ってフォークリフト300を操作する。また、
図2に二点鎖線で示すように、シートスタンド201をA方向に持ち上げると、シートスタンド201と一緒にシート202とフロアカバー203が持ち上がる。これにより、シートスタンド201が開いた状態となる。
【0030】
シートスタンド201を閉じた状態では、オートパワーオフ解除スイッチ15がシートスタンド201で覆われるため、オートパワーオフ解除スイッチ15を操作することはできない。これに対し、シートスタンド201を開けた状態では、オートパワーオフ解除スイッチ15が外部に露出するため、オートパワーオフ解除スイッチ15を操作することができる。
【0031】
蓋感知スイッチ16は、燃料ガス充填孔を開閉する蓋(不図示)の開閉状態に応じてオンオフ状態が切り替わるスイッチである。具体的には、蓋感知スイッチ16は、蓋が閉じているときはオフ状態となり、蓋が開いているときはオン状態となる。燃料ガス充填孔は、燃料ガスとなる水素を水素タンク2に充填するために燃料電池ユニット100に設けられるものである。燃料ガス充填孔を開閉する蓋は、通常は閉じられており、燃料ガスを充填するときに開けられる。
【0032】
また、FC制御装置5には、燃料ガスの充填中にガス漏れの有無を検知するために、ガス漏れ検知センサ17が電気的に接続されている。FC制御装置5は、蓋感知スイッチ16がオン状態になるとガス漏れ検知センサ17を起動し、ガス漏れ検知センサ17を用いてガス漏れの有無を検知する。また、FC制御装置5は、ガス漏れ検知センサ17でガス漏れの発生を検知した場合は、それを報知するための報知処理を行う。
【0033】
FC制御装置5は、DC/DCコンバータ11に電流指令値を出力することにより、DC/DCコンバータ11がFCスタック1から取り出す出力電流を制御する。また、FC制御装置5は、FCスタック1の発電状態に基づいて、冷却ファン10の回転数を制御する。
【0034】
FC制御装置5は、コンプレッサ3による空気の供給量と、流量制御弁4による水素の供給量とを制御することにより、FCスタック1の発電状態を制御する。FCスタック1に供給される水素の量と酸素の量が多くなると、それに応じてFCスタック1の発電量が多くなる。このため、FC制御装置5は、コンプレッサ3と流量制御弁4を制御することで、FCスタック1の発電状態を制御することができる。
【0035】
FCスタック1の発電状態には、FCスタック1の発電量の違いに応じて複数の状態がある。本実施形態においては、一例として、FCスタック1の発電状態が4つあるものとする。4つの発電状態は、発電停止、低発電、中発電、高発電に分かれる。発電停止は、FCスタック1の発電量がゼロ、すなわちFCスタック1が発電を停止している状態である。高発電は、FCスタック1の発電量が最大、すなわち最高発電の状態である。低発電は、FCスタック1の発電量がゼロよりも多く、かつ、中発電時の発電量よりも少ない状態である。中発電は、FCスタック1の発電量が低発電時の発電量よりも多く、かつ、高発電時の発電量よりも少ない状態である。
【0036】
FC制御装置5は、FCスタック1の発電状態が、発電停止、低発電、中発電、高発電のうちいずれか1つの状態となるように制御する。具体的には、FC制御装置5は、
図3に示すように、電圧センサ13が検出する蓄電装置12の電圧Vに基づいて、FCスタック1の発電状態を制御する。以下、FC制御装置5によるFCスタック1の発電状態の制御方法を、発電量を増やす場合と、発電量を減らす場合に分けて説明する。
【0037】
なお、FCスタック1の発電量を増やす場合は、FC制御装置5がコンプレッサ3と流量制御弁4を制御することにより、FCスタック1に供給される水素の量と酸素の量を増やすことになる。また、FCスタック1の発電量を減らす場合は、FC制御装置5がコンプレッサ3と流量制御弁4を制御することにより、FCスタック1に供給される水素の量と酸素の量を減らすことになる。また、FCスタック1の発電を停止する場合は、FC制御装置5がコンプレッサ3と流量制御弁4を制御することにより、FCスタック1に対して水素の供給と酸素の供給を共に停止することになる。
【0038】
(発電量を増やす場合)
FC制御装置5は、FCスタック1の発電状態が発電停止のときに、蓄電装置12の電圧Vが、予め決められた閾値電圧Vth01を下回ると、FCスタック1の発電状態を発電停止から低発電に切り換える。また、FC制御装置5は、FCスタック1の発電状態が低発電のときに、蓄電装置12の電圧Vが、予め決められた閾値電圧Vth12を下回ると、FCスタック1の発電状態を低発電から中発電に切り換える。また、FC制御装置5は、FCスタック1の発電状態が中発電のときに、蓄電装置12の電圧Vが、予め決められた閾値電圧Vth23を下回ると、FCスタック1の発電状態を中発電から高発電に切り換える。
【0039】
(発電量を減らす場合)
FC制御装置5は、FCスタック1の発電状態が高発電のときに、蓄電装置12の電圧Vが、予め決められた閾値電圧Vth32を上回ると、FCスタック1の発電状態を高発電から中発電に切り換える。また、FC制御装置5は、FCスタック1の発電状態が中発電のときに、蓄電装置12の電圧Vが、予め決められた閾値電圧Vth21を上回ると、FCスタック1の発電状態を中発電から低発電に切り換える。また、FC制御装置5は、FCスタック1の発電状態が低発電のときに、蓄電装置12の電圧Vが、予め決められた閾値電圧Vth10を上回ると、FCスタック1の発電状態を低発電から発電停止に切り換える。
【0040】
図1の説明に戻って、DC/DCコンバータ11の出力側には、蓄電装置12を介して車両負荷20が電気的に接続されている。本実施形態においては、車両負荷20の一例として、走行モータ21および荷役モータ22を挙げる。
【0041】
(車両本体)
車両本体200は、走行モータ21を駆動源として走行動作する走行装置(不図示)と、荷役モータ22を駆動源として荷役動作する荷役装置(不図示)と、走行装置による走行動作および荷役装置による荷役動作を制御するためにオペレータによって操作される操作部材(後述)と、車両本体200全体の処理および動作を制御する車両制御装置30と、を備えている。車両制御装置30とFC制御装置5とは、たとえばCAN(Controller Area Network)により、互いに通信可能に構成されている。
【0042】
車両負荷20を構成する走行モータ21および荷役モータ22は、それぞれ、車両制御装置30に電気的に接続されている。また、走行モータ21および荷役モータ22は、それぞれ、燃料電池ユニット100から車両本体200に供給される直流電力によって駆動する。車両制御装置30は、たとえば、マイクロコンピュータ等によって構成される。車両制御装置30は、制御対象となる走行モータ21および荷役モータ22をそれぞれ個別に制御するものである。
【0043】
車両制御装置30には、車両本体200の動作を制御するために操作される操作部材の動きに応じてオンオフ状態が切り替わる操作感知スイッチが電気的に接続されている。本実施形態においては、操作部材の一例として、図示しないアクセルペダル、ブレーキペダル、リフトレバー、チルトレバーを挙げる。アクセルペダルおよびブレーキペダルは、車両本体200の走行動作を制御するために操作される。リフトレバーおよびチルトレバーは、車両本体200の荷役動作を制御するために操作される。また、本実施形態においては、上述した操作部材に対応する操作感知スイッチとして、アクセルペダルスイッチ33、ブレーキペダルスイッチ34、リフトレバースイッチ35およびチルトレバースイッチ36が、それぞれ車両制御装置30に電気的に接続されている。アクセルペダルスイッチ33、ブレーキペダルスイッチ34、リフトレバースイッチ35およびチルトレバースイッチ36は、いずれも、車両本体200を制御するためにフォークリフト300に設けられるスイッチである。
【0044】
アクセルペダルスイッチ33は、アクセルペダルの動きに応じてオンオフ状態が切り替わるスイッチである。アクセルペダルスイッチ33は、アクセルペダルが押されているときにオン状態となり、アクセルペダルが押されていないときにオフ状態となる。ブレーキペダルスイッチは、ブレーキペダルの動きに応じてオンオフ状態が切り替わるスイッチである。ブレーキペダルスイッチ34は、ブレーキペダルが押されているときにオン状態となり、ブレーキペダルが押されていないときにオフ状態となる。
【0045】
リフトレバースイッチ35は、リフトレバーの動きに応じてオンオフ状態が切り替わるスイッチである。リフトレバースイッチ35は、リフトレバーがフォーク上昇指令位置(後傾位置)またはフォーク下降指令位置(前傾位置)にあるときにオン状態となり、リフトレバーが中立の位置にあるときにオフ状態となる。チルトレバースイッチ36は、チルトレバーの動きに応じてオンオフ状態が切り替わるスイッチである。チルトレバースイッチ36は、チルトレバーがマスト前傾指令位置(前傾位置)またはマスト後傾指令位置(後傾位置)にあるときにオン状態となり、チルトレバーが中立の位置にあるときにオフ状態となる。
【0046】
また、車両制御装置30には、キースイッチ31が電気的に接続されている。キースイッチ31は、図示しない車両始動用のキーの操作に応じてオンオフ状態が切り替わるスイッチである。車両始動用のキーの操作にはオン操作とオフ操作がある。オン操作は、車両始動用のキーをキー穴等に差し込んで停止位置から始動位置に回す操作、すなわちキーオン操作である。オフ操作は、車両始動用のキーを始動位置から停止位置へと回す操作、すなわちキーオフ操作である。キースイッチ31は、車両始動用のキーが始動位置にあるときにオン状態となり、車両始動用のキーが停止位置にあるときにオフ状態となる。
【0047】
<燃料電池式産業車両の処理および動作>
次に、本発明の実施形態に係る燃料電池式産業車両の処理および動作の一例として、フォークリフト300を始動するときに適用される始動制御処理と、フォークリフト300を故障等から復旧させるときに適用される復旧制御処理について説明する。
【0048】
(始動制御処理)
フォークリフト300を始動する場合、オペレータは、車両始動用のキーをキー穴等に差し込んでキーオン操作する。これにより、キースイッチ31がオフ状態からオン状態に切り替わる。キースイッチ31がオン状態になると、その旨を知らせる信号(以下、「キーオン信号」ともいう。)が車両制御装置30からFC制御装置5に出力され、この信号を受けてFC制御装置5がFCスタック1を起動する。その際、FC制御装置5は、FCスタック1を起動する前に、蓄電装置12の電圧Vを電圧センサ13から読み出す。このとき、蓄電装置12の電圧Vが下限閾値電圧Vmin以上であれば、FC制御装置5はFCスタック1の起動を許可し、下限閾値電圧Vmin未満であれば、FC制御装置5はFCスタック1の起動を不許可とする。
つまり、FC制御装置5は、蓄電装置12の電圧Vが下限閾値電圧Vmin未満になると、キーオン操作によってキースイッチ31がオン状態になってもFCスタック1を起動しないように規制をかける。
下限閾値電圧Vminは、蓄電装置12への電力の供給がない状態で蓄電装置12の電力を消費し続けた場合に、蓄電装置12に残っている蓄電量が過度に少なくなって蓄電装置12の特性に悪影響をおよぼさないようそれ以上の電力消費を避けるために、予め設定される閾値電圧である。
【0049】
また、下限閾値電圧VminはFCスタック1の起動において、蓄電装置12に悪影響を及ぼさずFCスタック1を起動するのに最小限必要となる電力が蓄電装置12に残っているときの蓄電装置12の電圧をVpとすると、Vmin>Vpの条件を満たすように設定される。この条件は、その後の何らかの放電等によっても蓄電装置12の電圧がVp以下とならないように、ある程度余裕を持って設定される。なお、電圧Vpは蓄電装置12の種類や構造等によって決まっており、下限閾値電圧Vminは、電圧Vpの値に基づいて、車両の特性や使用状況などの情報を考慮して実験又は計算等に基づいて決定する。したがって、蓄電装置12の電圧が下限閾値電圧Vmin未満であっても、電圧Vp以上であれば、蓄電装置の特性に悪影響を及ぼすことなくFCスタック1を起動するための電力は有している。また、下限閾値電圧Vminは、FCスタック1の発電状態を制御する際に適用される3つの閾値電圧Vth01、Vth12、Vth23(
図3参照)と比較すると、いずれの閾値電圧よりも低い電圧値に設定される。
【0050】
そして、FC制御装置5がFCスタック1の起動を許可する場合は、車両制御装置30からキーオン信号が出力されたとき、すなわちキースイッチ31がオン状態になったときに、FC制御装置5はコンプレッサ3を起動してFCスタック1に空気を供給し、これによってFCスタック1を起動する。しかし、フォークリフト300や燃料電池システムに何らかの故障が発生している場合は、FC制御装置5がFCスタック1を起動しようとしても、その故障が直接または間接的な原因となってFCスタック1を起動できないことがある。FCスタック1の起動の際には蓄電装置12の電力を使用するため、起動の繰り返し、具体的には、キースイッチ31がオフ状態からオン状態に切り替えることを繰り返すと蓄電装置12の蓄電量が減っていく。
【0051】
そして、FC制御装置5は、蓄電装置12の電圧Vが下限閾値電圧Vmin未満になると、キーオン操作によってキースイッチ31がオン状態になってもFCスタック1を起動しないように規制をかける起動規制制御を適用する。すなわち、燃料電池ユニット100においては、キーオン操作によるFCスタック1の起動に規制をかける起動規制制御がFC制御装置5によって適用された状態となる。FC制御装置5がFCスタック1の起動を不許可とする場合は、車両制御装置30からキーオン信号が出力されたときでも、FC制御装置5はFCスタック1を起動しない。起動規制制御は、蓄電装置12の電圧Vを下限閾値電圧Vmin以上に回復させないかぎり適用される。
なお、FCスタック1はコンプレッサ3から空気を供給しないと起動できないため、コンプレッサ3の起動とFCスタック1の起動は、実質的に同義である。
【0052】
(復旧制御処理)
上述した起動規制制御が適用された場合は、その後、サービスマン等がフォークリフト300を修理して故障を解消しても、蓄電装置12の電圧Vは下限閾値電圧Vmin未満のままである。このため、キーオン操作によってFCスタック1を起動できる状態に戻すためには、蓄電装置12の電圧Vを下限閾値電圧Vmin以上に回復させる必要がある。そこでFC制御装置5は次のような復旧制御処理を行う。なお、本実施形態においては、復旧制御処理を行うにあたって、キースイッチ31と、これ以外の2つのスイッチ、すなわちオートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33を適用するものとする。この適用例においては、アクセルペダルスイッチ33が第1のスイッチに相当し、オートパワーオフ解除スイッチ15が第2のスイッチに相当する。
【0053】
図4は、FC制御装置が行う復旧制御処理を説明するタイムチャートである。
まず、サービスマン等によるキーオン操作によってキースイッチ31がオン状態にされる。ただし、蓄電装置12の電圧Vが下限閾値電圧Vmin未満であると、キーオン操作による起動規制制御が適用された状況であるため、FC制御装置5は、FCスタック1を起動しない。そして、FC制御装置5は、キースイッチ31がオン状態となっている状態で、サービスマン等による操作によってオートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33が所定の条件を満たすようにオン状態となったか否かを判断する。アクセルペダルスイッチ33のオンオフ状態は、車両制御装置30からFC制御装置5に通知され、この通知を受けてFC制御装置5はアクセルペダルスイッチ33のオンオフ状態を判別する構成となっている。本実施形態では、一例として、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33が共にオン状態になったときに、FC制御装置5は、それら2つのスイッチが所定の条件を満たすようにオン状態になったと判断するものとする。
【0054】
ここで、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33を共にオン状態にするための具体的な操作方法について説明する。この操作方法には3つの方法がある。第1の操作方法は、オートパワーオフ解除スイッチ15を押したまま、アクセルペダルを押すように操作する場合である。第2の操作方法は、アクセルペダルを押したまま、オートパワーオフ解除スイッチ15を押すように操作する場合である。第3の操作方法は、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルの両方を同時に押すように操作する場合である。
【0055】
第1の操作方法では、オートパワーオフ解除スイッチ15がオン状態に立ち上がった後、アクセルペダルスイッチ33がオン状態に立ち上がる。そして、アクセルペダルスイッチ33がオン状態に立ち上がったタイミングで、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33を共にオン状態になる。第2の操作方法では、アクセルペダルスイッチ33がオン状態に立ち上がった後、オートパワーオフ解除スイッチ15がオン状態に立ち上がる。そして、オートパワーオフ解除スイッチ15がオン状態に立ち上がったタイミングで、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33を共にオン状態になる。第3の操作方法では、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33が同時にオン状態に立ち上がり、これによってオートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33を共にオン状態になる。
【0056】
また、オートパワーオフ解除スイッチ15に関しては、フォークリフト300の通常の使用時において、オートパワーオフ解除スイッチ15がシートスタンド201の下に隠れている。このため、オートパワーオフ解除スイッチ15を操作するには、シートスタンド201を持ち上げてオートパワーオフ解除スイッチ15を外部に露出させる必要がある。また、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33を共にオン状態にするためには、たとえば、フォークリフト300の脇に立つオペレータやサービスマンなどの操作者が、一方の手でオートパワーオフ解除スイッチ15を操作し、かつ、他方の手でアクセルペダルを操作する必要がある。
【0057】
図4に示す例では、まず、キースイッチ31がタイミングT0でオフ状態からオン状態に立ち上がった後、オートパワーオフ解除スイッチ15がタイミングT1でオフ状態からオン状態に立ち上がっている。次に、オートパワーオフ解除スイッチ15がオン状態に保持されている期間内のタイミングT2でアクセルペダルスイッチ33がオフ状態からオン状態に立ち上がっている。その後、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33は、いずれもタイミングT3で、オン状態からオフ状態に立ち下がっている。この場合、操作者は、上述した第1の操作方法に従ってオートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルを操作したことが分かる。
【0058】
このような場合、FC制御装置5は、タイミングT2において、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33を共にオン状態になったと判断する。また、FC制御装置5は、アクセルペダルスイッチ33がタイミングT2でオン状態に立ち上がると、上述した起動規制制御が適用された状況であっても、FCスタック1の起動を許可する。すなわち、FC制御部5は、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33を共にオン状態となったタイミングT2でFCスタック1を起動する。これにより、FCスタック1による発電が開始する。
FCスタック1の起動において、上述のように蓄電装置12の電圧が下限閾値電圧Vmin未満であっても、電圧Vp以上であれば、蓄電装置12の特性に悪影響を及ぼすことなくFCスタック1を起動するための電力は有している。フォークリフト300の故障が解消されていれば、蓄電装置12に残っている電力を使ってFCスタック1を起動し、FCスタック1の発電を開始することができる。その際、FC制御装置5は、FCスタック1が最大の発電量Wmax、すなわち高発電で発電を開始するようにFCスタック1の発電状態を制御する。
【0059】
このようにFCスタック1の発電を開始すると、FCスタック1が発電する電力が蓄電装置12に蓄えられ、これによって蓄電装置12が充電される。このため、蓄電装置12の電圧Vが徐々に高くなる。蓄電装置12を充電している間、FC制御装置5は、蓄電装置12の電圧Vを電圧センサ13から読み出す。そして、たとえばタイミングT4において、蓄電装置12の電圧Vが、予め決められた上限閾値電圧Vmaxに達した場合、すなわち蓄電装置12が満充電の状態になると、FC制御装置5は、FCスタック1の発電を自動的に停止し、以降は通常制御モードに移行する。通常制御モードは、
図3を用いて説明したように、蓄電装置12の電圧Vに基づいてFCスタック1の発電状態を制御する制御モードである。
なお、復旧制御処理のFCスタック1の起動において、FC制御装置5は、蓄電装置12の電圧がVp以上であるか否か判断する。もし、蓄電装置12の電圧がVp未満の場合には、FCスタック1の起動を不許可とする。この場合には、外部設備となる安定化電源を用意して起動規制制御を解除する必要がある。
したがって、復旧制御処理のFCスタック1の起動は、蓄電装置の電圧がVmin未満で、かつ、Vp以上のときに行われる。
【0060】
<実施形態の効果>
本発明の実施形態においては、蓄電装置12の電圧Vが下限閾値電圧Vmin未満となってキーオン操作による前記燃料電池スタックの起動に規制をかける起動規制制御が適用された状況であっても、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33が共にオン状態となった場合に、FC制御装置5が、FCユニット1を起動して蓄電装置12への充電を開始する。このため、燃料電池ユニット100において蓄電装置12の電圧Vが低くなって起動規制制御が適用された場合に、緊急的な処理として復旧制御処理をおこなうことで、安定化電源等の外部設備を使用しなくても、蓄電装置12の電圧Vを回復させることができる。
【0061】
また、本発明の実施形態においては、車両本体200を制御するために設けられるアクセルペダルスイッチ33を第1のスイッチとする一方、燃料電池ユニット100を制御するために設けられるオートパワーオフ解除スイッチ15を第2のスイッチとしている。この場合、フォークリフト300の通常の使用において、アクセルペダルスイッチ33は、フォークリフト300の操中にオペレータがアクセルペダルを踏み込んだときにオン状態となる。これに対し、オートパワーオフ解除スイッチ15は、フォークリフト300を操作するためのスイッチではない。このため、フォークリフト300の通常の使用中に、オートパワーオフ解除スイッチ15が誤って押されることがない。よって、本発明の実施形態によれば、フォークリフト300の通常の使用とは別の用途である、蓄電装置12の電圧Vを回復させるための復旧制御処理のために、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33といった2つのスイッチを有効に活用することができる。
【0062】
また、フォークリフト300の通常の使用では、オートパワーオフ解除スイッチ15がシートスタンド201で隠されているため、フォークリフト300の通常の使用中にオペレータがオートパワーオフ解除スイッチ15を操作することはできない。よって、緊急的な処理である復旧制御処理においてのみ、第1のスイッチと第2のスイッチを使用して蓄電装置12の電圧Vを回復させることができる。
【0063】
また、起動規制制御の適用を避けるための手段としては、蓄電装置12の電圧Vが下限閾値電圧Vmin未満でもFC制御装置5がFCユニット1の起動を許可するよう、起動規制制御の適用を解除するための新たなスイッチを設けることが考えられる。ただし、現状のフォークリフトではスペース上の制約が大きく、そのようなスイッチを新たに設けることは困難な状況にある。また、新たなスイッチを設けるにはコストアップをともなう。これに対し、本発明の実施形態においては、フォークリフトが備える既存のスイッチであるオートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33を使用している。このため、スペース上の制約を受けることなく、またコストアップをともなうことなく、起動規制制御の適用を避けてFCユニット1を起動することができる。
【0064】
また、本発明の実施形態においては、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33が共にオン状態となった場合に、FCスタック1が最大の発電量で発電を開始するように、FC制御装置5がFCスタック1の発電状態を制御する。このため、蓄電装置12を急速に充電し、短い時間で蓄電装置12の電圧Vを回復させることができる。また、蓄電装置12の充電を開始してから、蓄電装置12が満充電の状態になるまでの時間を極力短縮することができる。
【0065】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0066】
たとえば、上記実施形態においては、FCスタック1の発電状態を、発電停止、低発電、中発電および高発電の4つに分けて制御する例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、FCスタック1の発電状態を2つ、3つ、あるいは5つ以上に分けて制御する構成を採用してもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、復旧制御処理によってFCユニット1を起動する場合に、FCスタック1の発電を高発電で開始するものとしたが、本発明はこれに限らず、中発電または低発電でFCスタック1の発電を開始してもかまわない。
【0068】
また、上記実施形態においては、復旧制御処理に適用する第1のスイッチとして、操作感知センサの1つであるアクセルペダルスイッチ33を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らない。たとえば、アクセルペダルスイッチ33に代えて、ブレーキペダルスイッチ34、リフトレバースイッチ35またはチルトレバースイッチ36を復旧制御処理に適用してもよい。また、車両本体200のライトを点灯させるためのスイッチやクラクションを鳴らすためのスイッチを第1のスイッチとして復旧制御処理に適用してもよい。
【0069】
特に、復旧制御処理にブレーキペダルスイッチ34を適用した場合は、これに対応するブレーキペダルが、車両本体200の走行動作を強制的に停止するときに操作される操作部材となる。このため、復旧制御処理に際してブレーキペダルを操作する操作者に対し、「ブレーキペダルを押していれば車両本体200が動かない」という安心感を与えることができる。なお、ブレーキペダルスイッチ34、リフトレバースイッチ35またはチルトレバースイッチ36を復旧制御処理に適用する場合は、実際に適用するセンサのオンオフ状態が車両制御装置30からFC制御装置5に通知され、この通知を受けてFC制御装置5がセンサのオンオフ状態を判別することになる。
【0070】
また、上記実施形態においては、キースイッチ31がオン状態となっている期間中に、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33が共にオン状態になったか否かをFC制御装置5で判断するようにしたが、本発明はこれに限らない。たとえば、車両始動用のキーがキー穴等から抜かれてキースイッチ31がオフ状態となっている場合にも、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33が共にオン状態となったか否かをFC制御装置5で判断し、この判断結果を基にFCユニット1を起動するように制御してもよい。その場合は、蓄電装置12が満充電の状態になったときにFC制御装置5がFCスタック1の発電を自動的に停止することにより、それ以降は、通常の始動時と同様にキーオン操作によってFCユニット1を起動できるようになる。
【0071】
また、上記実施形態においては、オートパワーオフ解除スイッチ15とアクセルペダルスイッチ33が共にオン状態になったときに、FC制御装置5は、それら2つのスイッチが所定の条件を満たすようにオン状態になったと判断する構成を採用したが、本発明はこれに限らない。すなわち、FC制御装置5で判断の基準とする所定の条件は、種々の変更が可能である。たとえば、第1のスイッチと第2のスイッチのうち、一方のスイッチがオン状態になってから他方のスイッチがオン状態になるまでの時間をタイマー等で計測し、その計測した時間が、予め決められた規定の時間内(たとえば、5秒以内)である場合に、それら2つのスイッチが所定の条件を満たすようにオン状態になったと判断する構成を採用してもよい。また、これ以外にも、たとえば、2つのスイッチが、予め決められた順序でオン状態となった場合に、2つのスイッチが所定の条件を満たすようにオン状態になったと判断する構成を採用してもよい。
【0072】
また、上記実施形態においては、キーオン操作による起動規制制御が適用された状況の下で、第1のスイッチと第2のスイッチが共にオン状態となった場合に、燃料電池スタックを起動して蓄電装置への充電を開始するように制御したが、本発明はこれに限らない。
すなわち、キーオン操作による起動規制制御が適用されているかどうかにかかわず、第1のスイッチと第2のスイッチが所定の条件を満たすようにオン状態となった場合に、燃料電池スタックを起動して蓄電装置への充電を開始するように制御する構成を採用してもよい。これにより、様々な要因で復旧制御処理が必要になった場合にも、第1のスイッチと第2のスイッチを適宜操作することにより、燃料電池スタックを起動して蓄電装置への充電を開始することができる。
【0073】
また、上記実施形態においては、燃料電池式産業車両として、フォークリフトを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、たとえばトーイング車(Towing Car)などの他の燃料電池式産業車両に適用してもよい。トーイング車に適用する場合は、運転席の前部または後部に配置されるボンネットの下に燃料電池ユニットが搭載されることもあるため、燃料電池ユニットを覆うカバーに相当するものはボンネットになる。
【符号の説明】
【0074】
1 FCスタック(燃料電池スタック)、5 FC制御装置(制御部)、12 蓄電装置、15 オートパワーオフ解除スイッチ(第2のスイッチ)、33 アクセルペダルスイッチ(第1のスイッチ)、34 ブレーキペダルスイッチ(操作感知スイッチ)、100 燃料電池ユニット、200 車両本体、201 シートスタンド(カバー)、300 フォークリフト。