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  • 特許-局所ドライエッチング装置 図1
  • 特許-局所ドライエッチング装置 図2
  • 特許-局所ドライエッチング装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】局所ドライエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20220121BHJP
   C23F 4/00 20060101ALI20220121BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
H01L21/302 101E
H01L21/302 101D
H01L21/302 105B
C23F4/00 A
H05H1/46 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018096153
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019201168
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000107745
【氏名又は名称】スピードファム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108730
【氏名又は名称】天野 正景
(72)【発明者】
【氏名】奥田 洋平
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-147893(JP,A)
【文献】特開2002-198200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00-4/04
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバー、
上記真空チャンバー内に開口するノズル、
上記ノズルに接続された放電管、
上記真空チャンバー内に配置され、ワークを載置するためのワークテーブル、
上記ワークテーブルを駆動するテーブル駆動装置、
記テーブル駆動装置を制御するテーブル駆動制御装置、
上記放電管に原料ガスを供給するための原料ガス供給装置、
上記放電管に形成されたプラズマ発生部、
電磁波発器、
上記電磁波発振器で発振された電磁波を上記プラズマ発生部に照射するための電磁波伝送手段、
上記プラズマ発生部の圧力を検出するために、上記放電管の上記プラズマ発生部の近傍であってその上流側に設けられた圧力計、
予め求められている関数であって、上記プラズマ発生部の圧力とエッチングレートとの対応関係を表すエッチングレート関数に基づいて、上記圧力計の計測値からエッチングレートを算出するエッチングレート算出器、及び、
上記エッチングレート算出器の算出値に基づいて、上記エッチングレートが一定になるように上記電磁波発器の出力を制御する電磁波出力制御装置
を備えたことを特徴とする局所ドライエッチング装置。
【請求項2】
請求項1に記載された局所ドライエッチング装置において、
上記エッチングレート関数は、更に、その放電管の累積使用時間によって補正された関数であること
を特徴とする局所ドライエッチング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された局所ドライエッチング装置において、
上記エッチングレート関数は、更に、局所ドライエッチング装置の始動からの始動経過時間によって補正された関数であること
を特徴とする局所ドライエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、局所ドライエッチング装置に関する。局所ドライエッチング加工といわれる加工法は、活性種ガスにより、シリコンウエハ、半導体ウェハなどのワーク表面の凸部などを局所的にエッチングすることにより、平坦化あるいは厚さ分布を均一にするための技術である。
【背景技術】
【0002】
図1は、プラズマを用いた局所ドライエッチングによるワークの平坦化方法の原理を説明するための説明図である。符号100は放電管の一部をなすプラズマ発生部であり、プラズマ発生部100で発生したプラズマ中の活性種ガスGは、ノズル101からワークWの表面に噴射される。ワークWは、ワークテーブル120上に載置固定されており、ワークテーブル120をノズル101に対して水平方向に制御された速度及びピッチでスキャンさせる。
【0003】
ワークWは加工前には場所に応じて厚さが異なり、微細な凹凸を備えている。局所ドライエッチング加工に先立って、ワークW毎に、その細分化された各領域における厚さが測定される。この測定により各領域の位置での厚さのデータ、すなわち、位置-厚さデータが得られる。
【0004】
局所ドライエッチング加工では、領域毎の材料除去量は、その領域が活性種ガスGに曝される時間に対応する。このため、ワークに対してノズルが通過する相対速度(以下、ノズル速度という)は、相対的に厚い部分Waの上では低速で、また、相対的に薄い部分では相対的に高速で移動するように速度が決定される。
【0005】
図2は、噴射される活性種ガスにより単位時間当たりに除去されるワーク材料の量(深さ)、すなわちエッチングレート、の分布を示すグラフである。このエッチングレートプロファイルと呼ばれる曲線はガウス分布に非常に近い曲線である。この図2に示されるように、エッチングレートEはノズル101の中心線上において最大の値Emaxを有し、中心から半径r方向に遠ざかるにつれて減少する。
【0006】
このように材料除去能力がノズル中心からの距離に応じた分布を示すため、一つの領域に対して要求される材料除去量は、一つの領域のノズル速度だけによっては決定することができない。つまり、一つの領域において、必要な材料除去が行われたとしても、隣の領域あるいは更にその隣の領域に対してエッチングが行われるとき、最初の領域についても上記エッチングレートプロファイルに応じた材料除去が行われるからである。
【0007】
このように、一つの領域には、他の全ての領域に対するエッチングの影響が及ぶので、これらの影響を全ての領域について重ね合わせた結果として各領域の表面の高さが互いに等しくなるように、ノズル速度が計算により導き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-147893号公報
【文献】特開2000-208487号公報
【文献】特開2002-198200号公報
【文献】特開2000-174001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記位置-厚さ(あるいは凹凸)データとエッチングレートプロファイルとを元に計算によって得られたノズル速度で局所ドライエッチング加工を行えば所望の平面又は厚さが得られるはずである。ところが、実際に加工し、加工されたウェハ表面を測定したとき、単なる誤差としては説明の付かない誤差が生じる。
【0010】
すなわち、プラズマ発生部の圧力がエッチングレートに影響を及ぼし、更に、細かく見ると、このエッチングレートは上記プラズマ発生部の圧力だけでなく、その放電管が使用されてきた時間の累積である累積使用時間、及び、局所ドライエッチング装置の、例えば、その日の作業開始のために装置を始動してからの始動経過時間の影響も受ける。
【0011】
つまり、基本的にはプラズマ発生部の圧力を検出すればエッチングレートを算出できるが、更に微細に調整するには、このプラズマ発生部の圧力の計測値に加え、累積使用時間、始動経過時間を用いて補正できることを意味している。さらに、プラズマを発生させるのはプラズマ発生部に照射される電磁波であり、電磁波発振器の出力の大きさがエッチングレートに反映されることになるから、上記プラズマ発生部の圧力、累積使用時間、始動経過時間とエッチングレートとの対応関係(ここではエッチングレート関数という)を予め取得しておけば、これらの測定値から補正されたエッチングレートを算出でき、この算出結果に応じて電磁波発振器の出力を制御することによってエッチングレートを一定に維持することができるという知見に至った。
【0012】
本発明は、このように局所ドライエッチング装置において、プラズマ発生部の圧力のほか、累積使用時間、始動経過時間に基づいて、エッチングレートを一定に維持するように補正して局所ドライエッチング加工を行うことができ、その結果、加工誤差が極めて少なくなるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は以下の手段により解決される。すなわち、第1番目の発明は、真空チャンバー、上記真空チャンバー内に開口するノズル、上記ノズルに接続された放電管、上記真空チャンバー内に配置され、ワークを載置するためのワークテーブル、上記ワークテーブルを駆動するテーブル駆動装置、上記テーブル駆動装置を制御するテーブル駆動制御装置、上記放電管に原料ガスを供給するための原料ガス供給装置、上記放電管に形成されたプラズマ発生部、電磁波発器、上記電磁波発振器で発振された電磁波を上記プラズマ発生部に照射するための電磁波伝送手段、上記プラズマ発生部の圧力を検出するために、上記放電管の上記プラズマ発生部の近傍であってその上流側に設けられた圧力計、予め求められている関数であって、上記プラズマ発生部の圧力とエッチングレートとの対応関係を表すエッチングレート関数に基づいて、上記圧力計の計測値からエッチングレートを算出するエッチングレート算出器、及び、上記エッチングレート算出器の算出値に基づいて、上記エッチングレートが一定になるように上記電磁波発器の出力を制御する電磁波出力制御装置を備えたことを特徴とする局所ドライエッチング装置である。
【0014】
第2番目の発明は、第1番目の発明の局所ドライエッチング装置において、上記エッチングレート関数は、更に、その放電管の累積使用時間によって補正された関数であることを特徴とする局所ドライエッチング装置である。
【0015】
第3番目の発明は、第1番目又は第2番目の発明の局所ドライエッチング装置において、上記エッチングレート関数は、更に、局所ドライエッチング装置の始動からの始動経過時間によって補正された関数であることを特徴とする局所ドライエッチング装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プラズマ発生部の圧力、あるいは放電管の累積使用時間や局所ドライエッチング装置の始動経過時間と、エッチングレートとの対応関係を示すエッチングレート関数を予め取得しておき、これらの測定値からエッチングレートを算出し、この算出結果に応じて電磁波発振器の出力を制御するので、エッチングレートを一定に維持することができ、いっそう精密な平坦化加工を可能とし、又は均一な厚さ分布を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】プラズマを用いた局所ドライエッチングによるウェハの平坦化方法の原理を説明するための説明図である。
図2】噴射される活性種ガスのエッチングレートの分布を示すグラフである。
図3】本発明の局所ドライエッチング装置の一実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0019】
図3は、本発明の局所ドライエッチング装置の一例を示す説明図である。局所ドライエッチング装置は、プラズマ発生器1、放電管2、ノズル20、原料ガス供給装置3、真空チャンバー4、テーブル駆動装置5を具備している。
【0020】
プラズマ発生器1は、例えばアルミナ等からなる放電管2内に送り込まれた原料ガスをプラズマ化させて中性ラジカルを含んだ活性種ガスGを生成するための機器であり、電磁波発振器10と電磁波伝送手段である導波管11とを備えている。電磁波発振器10は、所定周波数の電磁波M(例えばマイクロ波)を発振することができる。
【0021】
電磁波伝送手段である導波管11は、電磁波発振器10から発振された電磁波Mを伝送するためのもので、放電管2に外挿されている。導波管11の電磁波発振器が接続された反対側の端部内には、電磁波Mを反射して定在波を形成する反射板(ショートプランジャー)12が取り付けられている。更に、導波管11の中途には、電磁波Mの位相合わせを行うスタブチューナ13と、電磁波発振器10に向かう反射電磁波Mを90°方向に曲げるアイソレータ14とが取り付けられている。
【0022】
放電管2は、一方の端部にノズル20が形成された円筒体であり、他方の端部には、原料ガス供給装置3の供給パイプ30が連結されている。原料ガス供給装置3は、放電管2内に原料ガスを供給するための装置であり、原料ガス(SF6(六フッ化硫黄)ガス等)のボンベ31を有し、ボンベ31がバルブ32と流量制御器33を介して供給パイプ30に連結されている。なお、原料ガスとしての六フッ化硫黄ガスは例示であり、他にCF4、NF3等を選択することも可能である。また、単独のガスとすることもできるが、供給パイプ30に他のガスを同時に供給し、混合ガスとすることもできる。
【0023】
原料ガス供給装置3から放電管2に原料ガスを供給すると共に、電磁波発振器10によって電磁波Mを発振すると、放電管2内においてガスのプラズマ化が行われる。プラズマ化によって生成された活性種ガスGがノズル20から噴射される。
【0024】
ワークWは、真空チャンバー4内のワークテーブル40上に配置され、ワークテーブル40に静電気力によって吸着される。真空チャンバー4には、真空ポンプ41がとりつけられており、この真空ポンプ41によって真空チャンバー4内を真空にする(減圧する)。
【0025】
また、真空チャンバー4の上面中央部には、孔42が穿設され、この孔42を通して放電管2のノズル20が真空チャンバー4内に挿入されている。孔42に挿入されたノズル20の周囲にはダクト43が設けられている。ダクト43には他の真空ポンプ44が接続されており、エッチング時の反応生成ガスはダクト43を通って真空チャンバー4の外部に排出される。
【0026】
ダクト43はノズル20を取り囲むように設けられている。排気がダクト43内を通過するとき、真空チャンバー内の気体が集中して来るため、この排気流量によって噴出する活性種ガスのエッチングプロファイルが調整できる。真空ポンプ44と真空チャンバー4との間には排気流量を調整する流量調整装置46が設けられている。
【0027】
テーブル駆動装置5は真空チャンバー4内に配されており、ワークテーブル40の下方からこれを支持している。このテーブル駆動装置5は、そのX駆動モータ50によってワークテーブル40と後述のY駆動モータ51とを一体に図3の左右方向に移動させ、そのY駆動モータ51によってワークテーブル40をX駆動モータ50の駆動方向に対し水平に直交する方向(図3の紙面表裏方向)に移動させる。すなわち、このテーブル駆動装置5によってノズル20とワークWを相対的にX-Y方向に移動させることができる。
【0028】
原料ガス供給装置3のバルブ32を開くと、ボンベ31内の原料ガスが供給パイプ30に流出して、放電管2に供給される。原料ガスの流量はバルブ32の開度によって調整される。
【0029】
上記原料ガスの供給作業と並行して、電磁波発振器10を駆動する。放電管2内の原料ガスが電磁波Mによってプラズマ化される。ガスのプラズマ化によって活性種ガスGが生成される。活性種ガスGは放電管2のノズル20に案内されて、ノズル20の開口20aからワークWの表面に向けて噴射される。
【0030】
活性種ガスの噴射と並行して、テーブル駆動制御装置47によってテーブル駆動装置5が制御され、ワークテーブル40は決められた軌跡に沿って予め計算された速度でX-Y方向に移動する。
【0031】
噴射された活性種ガスはワークの表面の材料と化学反応を起こす。この化学反応によって生成した生成物はガス状であるため、この生成物をその場から容易に除去する(流し去る)ことができる。これによってワークWの表面から材料が除去される。
【0032】
除去される量は材料表面が活性種ガスに曝される時間に実質的に比例するので、ワークWとノズル20との相対移動速度を制御することによって、除去量を制御する。この相対移動速度は、予め測定されているワークWの凹凸のデータ、すなわち、位置-厚さデータに基づいて決定される。
【0033】
電磁波出力制御部6は、圧力計61、エッチングレート算出器62、エッチングレート関数器63、累積使用時間タイマー64、始動経過時間タイマー65、及び、電磁波出力制御装置66からなる。
【0034】
圧力計61は、放電管2の一部をなしているプラズマ発生部21の近傍であってその上流側に設けられている。これにより、放電管2のプラズマ発生部21でプラズマ化された活性種ガスGにより圧力計61が損傷することを防止しながら放電管2内の正確な圧力計測が可能となる。エッチングレート算出器62は、エッチングレート関数器63に格納された予め求められているエッチングレート関数であって、上記圧力計61で検出された放電管2内の圧力とエッチングレートとの対応関係を表すエッチングレート関数に基づいて、上記圧力計61の計測値からエッチングレートを算出する。
【0035】
更に、このとき、累積使用時間や始動経過時間に応じて上記算出されたエッチングレートを補正することができる。ここで、上記累積使用時間は、累積使用時間タイマー64によって計測された時間であって、この放電管2が、使用開始されてから現在に至るまでの累積使用時間である。累積使用時間は放電管2の劣化状態(例えば、放電管2内部の付着物の付着量)を示す指標である。
【0036】
また、始動経過時間は、始動経過時間タイマー65によって計測された時間であって、この局所ドライエッチング装置が今回の始動から現在までに経過した時間である。始動経過時間はプラズマ発生部21の昇温の程度、つまり、暖機の具合を示す指標である。
【0037】
電磁波出力制御装置66は、上記エッチングレート算出器62の算出値、あるいは、累積使用時間、始動経過時間で補正された算出値に基づいて、上記エッチングレートが一定になるように上記電磁波発器10の出力を制御する。これにより、エッチングレートが安定化し、先に述べたようなエッチングレートが変化することに起因する誤差を低減することができる。
【0038】
本発明の局所ドライエッチング装置における加工動作の一例を以下に示す。まず真空下の真空チャンバー4の搬入搬出扉45を開き、不図示のロボットによってワークWを真空チャンバー4内に搬入し、ワークテーブル40上に載置し、これを吸着把持させる。ワークWをワークテーブル40に吸着すると、次に、搬入搬出扉45を閉じ、バルブ32を開いてボンベ31内の原料ガスを放電管2に送る。
【0039】
電磁波発振器10を動作させ、放電管2内の原料ガスをプラズマ化し活性種ガスGを発生させノズルの開口20aから噴出させる。次いで、X駆動モータ50、Y駆動モータ51を駆動して、ワークWが開口20aの下に来るように、ワークテーブル40をそれまでの退避位置から移動させ、予め計算されたノズル速度(領域毎に異なる)でもってスキャンする。
【0040】
この局所ドライエッチング加工中に、放電管2内のプラズマ発生部21の近傍に設けられた圧力計61により放電管2内の圧力を計測する。その計測値とエッチングレート関数器63に格納された予め求められているエッチングレート関数を用い、所望のエッチングレートを得られるような放電管2内の圧力の閾値をエッチングレート算出器62により予め算出しておく。その閾値と放電管2内の圧力の計測値を比較し、計測値が閾値を超えた場合は、次のワークの加工を行う前に電磁波出力制御装置66により、放電管2内の圧力が閾値の範囲内となるように予め求められているエッチングレート関数を用いて電磁波発振器10の出力を制御する。これにより、所望のエッチングレートによってワークWの加工が可能となる。
【0041】
また、放電管2が使用開始されてから現在に至るまでの累積使用時間(放電開始からの時間)を、前述の電磁波発振器10の出力を制御する際に用いてもよい。この場合は、累積使用時間タイマー64によって、単一の放電管2が使用開始されてから現在に至るまでの累積使用時間を計測し、その累積使用時間と放電管2の劣化状態の関係(関数)をエッチングレート算出器62により予め求めておく。その関数を、エッチングレート関数器63に格納された予め求められているエッチングレート関数に対して補正をかけることで、所望のエッチングレートからのずれ量を極力低減させることが可能となる。
【0042】
更に、局所ドライエッチング装置が始動されてから現在に至るまでの連続して稼働した経過時間を、前述の電磁波発振器10の出力を制御する際に用いてもよい。この場合は、始動経過時間タイマー65によって、局所ドライエッチング装置が始動されてから現在に至るまでの経過時間を計測し、その始動経過時間と放電管2の昇温状態、特にプラズマ発生部21の昇温状態との関係(関数)をエッチングレート算出器62により予め求めておく。その関数を、エッチングレート関数器63に格納された予め求められているエッチングレート関数に対して補正をかけることで、所望のエッチングレートからのずれ量を極力低減させることが可能となる。
【0043】
また、局所ドライエッチング加工後のワークWの取代量から前述の電磁波発振器10の出力を制御する際に用いてもよい。この場合は、不図示のワーク計測器により、加工前及び加工後のワークWの厚み又は形状を計測し、加工によるワーク取代量を算出する。電磁波出力と算出した取代量は比例するため、予め設定した取代量の閾値を超えた場合は、次のワークの加工を行う前に電磁波出力制御装置66により、電磁波発振器10の出力を制御してもよい。これにより、所望のエッチングレートからのずれ量を極力低減させることが可能となる。
【0044】
平坦化終了後、ワークテーブル40を退避位置に移動させ、搬入搬出扉45を開くと不図示のロボットが加工を終了したワークWを取り出して未加工のワークWを先に述べた手順に従って真空チャンバー4内に搬入する。
【0045】
なお、上述の上記電磁波発器10の出力の制御は、局所ドライエッチング加工を行った次の局所ドライエッチング加工に反映しているが、同一の局所ドライエッチング加工中に随時行ってもよい。
【0046】
また、始動経過時間がエッチングレートに影響する主因は、始動時にはプラズマ発生部21及びその近傍などの活性種ガスGが接触する箇所が暖まっていないことにあり、始動後しばらく経てば温度が上昇してやがて定常状態に入ると考えられるので、一定時間の暖機運転をすることを条件にすれば、始動経過時間を考慮から外すことも可能である。
【0047】
また、累積使用時間の影響は、使用を続けるうちに放電管2のプラズマ発生部21内側が生成された活性種ガスGと反応し、放電管2のプラズマ発生部21内側(内壁)が劣化するために生じると考えられている。この影響は非常に緩い速度で進行するため、頻繁且つ自動的に行わせることまでは必ずしも必要でなく、人手による修正とすることも可能である。
【0048】
また、局所ドライエッチング装置が待機中の場合は、プラズマ発生部21及びその近傍などの活性種ガスGが接触する箇所の温度が所望のエッチングレートを達成するに至らない温度となる場合があるため、局所ドライエッチング装置が待機中の温度変化の経過を時間に置き換えて、その経過時間により簡易的に電磁波発振器10の出力を制御し、所望のエッチングレートを得ることも可能である。
【0049】
以上に述べたように、本発明の局所ドライエッチング装置によれば、プラズマ発生部の圧力、累積使用時間、始動経過時間に基づいて、エッチングレートを一定に維持するように補正して局所ドライエッチング加工を行うことができ、加工誤差を極めて少なくすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 プラズマ発生器
10 電磁波発振器
100 プラズマ発生部
101 ノズル
11 電磁波伝送手段(導波管)
12 反射板(ショートプランジャー)
120 ワークテーブル
13 スタブチューナ
14 アイソレータ
2 放電管
20 ノズル
20a 開口
21 プラズマ発生部
3 原料ガス供給装置
30 供給パイプ
31 ボンベ
32 バルブ
33 流量制御器
4 真空チャンバー
40 ワークテーブル
401 ウェハ支持面
402 ヒーター
41 真空ポンプ
42 孔
43 ダクト
44 真空ポンプ
45 搬入搬出扉
46 流量調整装置
47 テーブル駆動制御装置
5 テーブル駆動装置
50 X駆動モータ
51 Y駆動モータ
6 電磁波出力制御部
61 圧力計
62 エッチングレート算出器
63 エッチングレート関数
64 累積使用時間タイマー
65 始動経過時間タイマー
66 電磁波出力制御装置
図1
図2
図3