(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】過給システム
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20220121BHJP
F02B 37/007 20060101ALI20220121BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20220121BHJP
F01D 17/16 20060101ALI20220121BHJP
F01D 17/18 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
F02B37/24
F02B37/007
F02B37/00 400E
F01D17/16 A
F01D17/18 Z
(21)【出願番号】P 2018119696
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 佳明
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 裕也
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102004030259(DE,A1)
【文献】特開2008-280883(JP,A)
【文献】特開2009-30493(JP,A)
【文献】特開2010-196681(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0296828(US,A1)
【文献】特開2010-209845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F02B 37/007
F02B 37/00
F01D 17/16
F01D 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に設けられ、前記エンジンから排出される排気によって作動するタービンホイールを有するタービンと、前記タービンホイールへの排気流入部に配置された複数のノズルベーンのうちの隣接するノズルベーン間の開度を調整する可変ノズル機構と、前記エンジンの吸気通路に設けられ、前記タービンの作動によって前記エンジンに吸入される空気を過給するコンプレッサとを有する、第1過給機および第2過給機と、
前記第1過給機において過給された空気が前記エンジンに供給される第1過給モードから、前記第1過給機において過給された空気と前記第2過給機において過給された空気とが合流して前記エンジンに供給される第2過給モードに切り替える切替制御を実行する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記切替制御の実行が要求される場合に、前記第1過給機における前記可変ノズル機構の第1開度が、前記第2過給機における前記可変ノズル機構の第2開度と同じ開度になるように制御するとともに、前記第2過給機の前記タービンに排気を供給しつつ、前記第2過給機の前記コンプレッサによって過給された空気を前記第1過給機の前記コンプレッサに供給する助走運転を実行し、
前記助走運転中に、前記第1過給機の前記コンプレッサによる第1過給圧に前記第2過給機の前記コンプレッサによる第2過給圧が到達した後に前記第2過給モードに切り替える、過給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記切替制御の実行が要求される場合に、前記第1開度が、前記助走運転の実行前の開度よりも小さい開度であって、かつ、前記第2開度と同じ開度になるように前記第1過給機および前記第2過給機の各々の前記可変ノズル機構を制御する、請求項1に記載の過給システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記助走運転中に、前記第1開度および前記第2開度がいずれも下限値になるように前記第1過給機および前記第2過給機の各々の前記可変ノズル機構を制御する、請求項1または2に記載の過給システム。
【請求項4】
前記過給システムは、
前記第1過給圧を検出する第1圧力センサと、
前記第2過給圧を検出する第2圧力センサとをさらに備える、請求項1~3のいずれかに記載の過給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に接続された複数の過給機を有する過給システムの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの吸気を過給する過給システムとしては、たとえば、並列に接続された複数の過給機を有する構成が公知である。たとえば、並列に接続された2つの過給機を有する過給システムにおいては、2つの過給機のうちの一つを用いてエンジンの吸気を過給する過給モード(以下、シングル過給モードとも記載する)と、両方の過給機を用いてエンジンの吸気を過給する過給モード(以下、ツイン過給モードとも記載する)とを切り替える切替制御が行なわれる。
【0003】
このような切替制御を実行する場合において、切替前後で過給圧に変動が発生すると、トルクショックが生じる場合がある。このような問題に対して、たとえば、特開2010-209845号公報(特許文献1)には、排気圧が一定になるようにツイン過給モード時に動作を開始する過給機に供給される排気量を調整したり、シングル過給モード時に動作する過給機に設けられる可変ノズル機構の開度を調整する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように排気圧を一定にするためには、排気圧を監視するための耐熱性の高い圧力センサや、排気量や可変ノズルベーンの開度の微調整を可能とする制御弁等が必要となり、コストが増加する可能性がある。そのため、切替制御の実行時における過給圧の変動をより簡素な構成で抑制することが求められる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の過給機を用いた過給モードの切り替え時における過給圧の変動をより簡素な構成で行なう過給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に係る過給システムは、エンジンの排気通路に設けられ、エンジンから排出される排気によって作動するタービンホイールを有するタービンと、タービンホイールへの排気流入部に配置された複数のノズルベーンのうちの隣接するノズルベーン間の開度を調整する可変ノズル機構と、エンジンの吸気通路に設けられ、タービンの作動によってエンジンに吸入される空気を過給するコンプレッサとを有する、第1過給機および第2過給機と、第1過給機において過給された空気がエンジンに供給される第1過給モードから、第1過給機において過給された空気と第2過給機において過給された空気とが合流してエンジンに供給される第2過給モードに切り替える切替制御を実行する制御装置とを備える。制御装置は、切替制御の実行が要求される場合に、第1過給機における可変ノズル機構の第1開度が、第2過給機における可変ノズル機構の第2開度と同じ開度になるように制御するとともに、第2過給機のタービンに排気を供給しつつ、第2過給機のコンプレッサによって過給された空気を第1過給機のコンプレッサに供給する助走運転を実行する。制御装置は、助走運転中に、第1過給機のコンプレッサによる第1過給圧に第2過給機のコンプレッサによる第2過給圧が到達した後に第2過給モードに切り替える。
【0008】
このようにすると、助走運転中に第1開度が第2開度と同じ開度になるように制御されることによって、第1過給機および第2過給機の各々のタービンホイールに同等の排気エネルギーを供給することができる。これにより、第1過給圧の低下と、第2過給圧の上昇とのバランスが図れ、第2過給圧が第1過給圧に到達するときの過給圧を高くすることができる。そのため、第1過給モードから第2過給モードに切り替えるときの第1過給圧の低下幅を小さくすることができる。その結果、過給圧の変動によるトルクショックの発生を抑制することができる。このような制御は、可変ノズル機構の開度をそろえることによって実現することができるため、簡素な構成で過給圧の変動を抑制することができる。
【0009】
好ましくは、制御装置は、切替制御の実行が要求される場合に、第1開度が、助走運転の実行前の開度よりも小さい開度であって、かつ、第2開度と同じ開度になるように第1過給機および第2過給機の各々の可変ノズル機構を制御する。
【0010】
このようにすると、第1開度を助走運転の実行前の開度よりも小さい開度であって、かつ、第2開度と同じ開度になるようにすることによって、第1過給圧の低下を抑制しつつ、第2過給圧を速やかに上昇させることができる。
【0011】
さらに好ましくは、制御装置は、助走運転中に、第1開度および第2開度がいずれも下限値になるように第1過給機および第2過給機の各々の可変ノズル機構を制御する。
【0012】
このようにすると、第1開度および第2開度がいずれも下限値になるようにすることによって、第1過給圧の低下を抑制しつつ、第2過給圧を速やかに上昇させることができる。
【0013】
さらに好ましくは、過給システムは、第1過給圧を検出する第1圧力センサと、第2過給圧を検出する第2圧力センサとをさらに備える。
【0014】
このようにすると、第2過給圧が第1過給圧に到達したか否かを精度高く判定することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、複数の過給機を用いた過給モードの切り替え時における過給圧の変動をより簡素な構成で行なう過給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態におけるエンジンの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】シングル過給モード時の過給システムの動作を説明するための図である。
【
図3】助走運転時の過給システムの動作を説明するための図である。
【
図4】ツイン過給モード時の過給システムの動作を説明するための図である。
【
図5】シングル過給モードからツイン過給モードへの切替時の過給圧の変化について説明するための図である。
【
図6】制御装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】制御装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図8】ツイン過給モードへの切替後に発生するサージングについて説明するための図である。
【
図9】コンプレッサマップ上の過給機の動作点の変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
【0018】
<過給システムの構成について>
図1は、本実施の形態におけるエンジン1の概略構成の一例を示す図である。
図1を参照して、このエンジン1は、たとえば、走行のための駆動源として車両に搭載される。本実施の形態においては、エンジン1は、ディーゼルエンジンである場合を一例として説明するが、たとえば、ガソリンエンジンであってもよい。
【0019】
エンジン1は、バンク10A,10Bと、エアクリーナ20と、インタークーラ25と、吸気マニホールド28A,28Bと、過給機30,40と、排気マニホールド50A,50Bと、排気処理装置81と、制御装置200とを備える。
【0020】
バンク10Aには、複数の気筒12Aが形成される。バンク10Bには、複数の気筒12Bが形成される。各気筒12A,12B内にはピストン(図示せず)が収納されており、ピストンの頂部と気筒の内壁とによって燃焼室(燃料が燃焼する空間)が形成されている。各気筒12A,12B内をピストンが摺動することによって燃焼室の容積が変化される。各気筒12A,12Bには、インジェクタ(図示せず)が設けられており、エンジン1の動作中においては、制御装置200によって設定されたタイミングおよび量の燃料を各気筒12A,12B内に噴射する。なお、各インジェクタから噴射する燃料の噴射量およびタイミングは、たとえば、エンジン回転数NE、吸入空気量Qin、アクセルペダルの踏み込み量あるいは車両の速度等から制御装置200によって設定される。
【0021】
各気筒12A,12Bのピストンは、コネクティングロッドを介して共通のクランクシャフト(図示せず)に連結される。各気筒12A,12B内において所定の順序で燃料が燃焼することによってピストンが各気筒12A,12B内を摺動し、ピストンの上下運動がコネクティングロッドを経由してクランクシャフトの回転運動に変換される。
【0022】
過給機30は、コンプレッサ31とタービン32とを含むターボチャージャーである。過給機30のコンプレッサ31は、エンジン1の吸気通路(すなわち、エアクリーナ20から吸気マニホールド28A,28Bまでの通路)に設けられる。過給機30のタービン32は、エンジン1の排気通路(すなわち、排気マニホールド50A,50Bから排気処理装置81までの通路)に設けられる。
【0023】
コンプレッサ31内には、コンプレッサホイール33が回転自在に収納される。タービン32内には、タービンホイール34と可変ノズル機構35とが設けられる。タービンホイール34は、回転自在にタービン32内に収納される。コンプレッサホイール33と、タービンホイール34とは、回転軸36によって連結されており、一体的に回転する。コンプレッサホイール33は、タービンホイール34に供給される排気のエネルギー(排気エネルギー)によって回転駆動される。
【0024】
可変ノズル機構35は、タービン32を作動させる排気の流速を変化させる。可変ノズル機構35は、タービンホイール34の外周側に配置され、排気流入口から供給される排気をタービンホイール34に導く複数のノズルベーン(図示せず)と、複数のノズルベーンの各々を回転させることによって隣接するノズルベーン間の隙間(以下の説明においてこの隙間をVN開度と記載する)を変化させる駆動装置(図示せず)とを含む。可変ノズル機構35は、たとえば、制御装置200からの制御信号VN1に応じて駆動装置を用いてノズルベーンを回転させることによってVN開度を変化させる。
【0025】
過給機40は、コンプレッサ41とタービン42とを含むターボチャージャーである。過給機40のコンプレッサ41は、エンジン1の吸気通路において、コンプレッサ31に並列して設けられ、エンジン1の吸気を過給する。過給機40のタービン42は、エンジン1の排気通路において、タービン32に並列して設けられる。
【0026】
コンプレッサ41内には、コンプレッサホイール43が回転自在に収納される。タービン42内には、タービンホイール44と可変ノズル機構45とが設けられる。タービンホイール44は、回転自在にタービン42内に収納される。コンプレッサホイール43と、タービンホイール44とは、回転軸46によって連結されており、一体的に回転する。コンプレッサホイール43は、タービンホイール44に供給される排気エネルギーによって回転駆動される。
【0027】
なお、可変ノズル機構45は、可変ノズル機構35と同様の構成を有するため、その詳細な説明は繰り返さない。可変ノズル機構45は、たとえば、制御装置200からの制御信号VN2に応じて駆動装置を用いてノズルベーンを回転させることによってVN開度を変化させる。
【0028】
エアクリーナ20は、吸気口(図示せず)から吸入された空気から異物を除去する。エアクリーナ20には、吸気管23の一方端が接続される。吸気管23の他方端は、分岐して吸気管21の一方端および吸気管22の一方端に接続される。
【0029】
吸気管21の他方端は、過給機30のコンプレッサ31の吸気流入口に接続される。過給機30のコンプレッサ31の吸気流出口には、吸気管37の一方端が接続される。吸気管37の他方端は、インタークーラ25に接続される。コンプレッサ31は、コンプレッサホイール33の回転によって吸気管21を通じて吸入される空気を過給して吸気管37に供給する。
【0030】
吸気管22の他方端は、過給機40のコンプレッサ41の吸気流入口に接続される。過給機40のコンプレッサ41の吸気流出口には、吸気管47の一方端が接続される。吸気管47の他方端は、吸気管37の途中の接続部P3に接続される。コンプレッサ41は、コンプレッサホイール43の回転によって吸気管22を通じて吸入される空気を過給して吸気管47に供給する。
【0031】
吸気管47の途中には第1制御弁62が設けられている。第1制御弁62は、たとえば、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリーオフのVSV(負圧切替弁)である。
【0032】
また、吸気管47において第1制御弁62よりも上流側(コンプレッサ41側)に位置する接続部P4に、還流管48の一方端が接続されている。また、還流管48の他方端は吸気管21に接続されている。還流管48は、吸気管47を流れる空気の少なくとも一部を過給機30のコンプレッサ31よりも上流側に還流させるための通路である。還流管48を通じて吸気管21に還流した空気は、コンプレッサ31に供給される。
【0033】
還流管48の途中には第2制御弁64が設けられている。第2制御弁64は、たとえば、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリーオフの電磁弁(ソレノイドバルブ)である。
【0034】
接続部P3には、コンプレッサ31によって過給された空気と、コンプレッサ41によって過給され、第1制御弁62を通過した空気とが供給される。これらの空気は、接続部P3で合流してインタークーラ25に流入する。
【0035】
インタークーラ25は、流入した空気を冷却するように構成される。インタークーラ25は、たとえば空冷式又は水冷式の熱交換器である。インタークーラ25には、2カ所の吸気流出口が設けられる。インタークーラ25の一方の出口には、吸気管27Aの一方端が接続される。吸気管27Aの他方端は、吸気マニホールド28Aに接続される。インタークーラ25の他方の出口には、吸気管27Bの一方端が接続される。吸気管27Bの他方端は、吸気マニホールド28Bに接続される。
【0036】
吸気マニホールド28A、28Bは、それぞれバンク10A、10Bにおける気筒12A、12Bの吸気ポート(図示せず)に連結される。一方、排気マニホールド50A,50Bは、それぞれバンク10A,10Bにおける気筒12A,12Bの排気ポート(図示せず)に連結される。
【0037】
各気筒12A,12Bの燃焼室から排気ポートを通じて気筒外に排出された排気(燃焼後のガス)は、エンジン1の排気通路を経由して車外に排出される。上記の排気通路は、排気マニホールド50A,50B、排気管51A,51Bと、接続部P1と、排気管52A,52B,53A,53Bと、接続部P2とを含む。排気管51Aの一方端は、排気マニホールド50Aに接続される。排気管51Bの一方端は、排気マニホールド50Bに接続される。排気管51Aの他方端と、排気管51Bの他方端とは、接続部P1において一旦合流した後に、分岐して排気管52Aの一方端および排気管52Bの一方端に接続される。
【0038】
排気管52Aの他方端は、タービン32の排気流入口に接続される。タービン32の排気流出口には、排気管53Aの一方端が接続される。排気管52Bの他方端は、タービン42の排気流入口に接続される。タービン42の排気流出口には、排気管53Bの一方端が接続される。
【0039】
排気管52Bの途中には第3制御弁66が設けられる。第3制御弁66は、たとえば、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリーオンのVSV(負圧切替弁)である。
【0040】
排気管53Aの他方端と排気管53Bの他方端とは、接続部P2において合流し、排気処理装置81に接続される。排気処理装置81は、たとえば、SCR触媒、酸化触媒、あるいは、PM除去フィルタ等によって構成され、排気管53Aおよび排気管53Bから流通する排気を浄化する。
【0041】
エンジン1の動作は、制御装置200によって制御される。制御装置200は、各種処理を行なうCPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよびデータを記憶するROM(Read Only Memory)およびCPUの処理結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を含むメモリと、外部との情報のやり取りを行なうための入・出力ポート(いずれも図示せず)とを含む。入力ポートには、各種センサ類(たとえば、エアフローメータ102、エンジン回転数センサ104、第1圧力センサ106および第2圧力センサ108等)が接続される。出力ポートには、制御対象となる機器(たとえば、複数のインジェクタ、可変ノズル機構35,45等)が接続される。
【0042】
制御装置200は、各センサおよび機器からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジン1が所望の運転状態となるように各種機器を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。また、制御装置200には、時間の計測を行うためのタイマー回路(図示せず)が内蔵されている。
【0043】
エアフローメータ102は、吸入空気量Qinを検出する。エアフローメータ102は、検出した吸入空気量Qinを示す信号を制御装置200に送信する。
【0044】
エンジン回転数センサ104は、エンジン回転数NEを検出する。エンジン回転数センサ104は、検出したエンジン回転数NEを示す信号を制御装置200に送信する。
【0045】
第1圧力センサ106は、吸気管27A内の圧力(以下、第1過給圧と記載する)Ppを検出する。第1圧力センサ106は、検出した第1過給圧Ppを示す信号を制御装置200に送信する。
【0046】
第2圧力センサ108は、吸気管47の接続部P4における圧力(以下、第2過給圧と記載する)Psを検出する。第2圧力センサ108は、第2過給圧Psを示す信号を制御装置200に送信する。
【0047】
本実施の形態において、過給機30,40と制御装置200とによって「過給システム」が構成される。
【0048】
制御装置200は、第1制御弁62、第2制御弁64および第3制御弁66を制御することにより、過給機30(プライマリターボ)のみで過給を行なうシングル過給モードと、過給機30(プライマリターボ)および過給機40(セカンダリターボ)の両方で過給を行なうツイン過給モードとのうちのいずれか一方から他方に切り替える切替制御を実行可能に構成される。また、制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードに切り替える場合には、シングル過給モードから、過給機40による過給圧を一定以上に上昇させる助走運転を実行した後に、過給モードをツイン過給モードに切り替える。
【0049】
以下、シングル過給モード、助走運転およびツイン過給モードの各々における過給システムの動作について
図2、
図3および
図4を参照しつつ説明するとともに、シングル過給モードから助走運転を経由してツイン過給モードへ切り替えられる際の過給圧の変化について
図5を参照しつつ説明する。
【0050】
<シングル過給モードについて>
制御装置200は、所定の実行条件が成立する場合に、シングル過給モードで過給システムを動作させる。所定の実行条件とは、たとえば、エンジン回転数NEおよび吸入空気量Qinに基づくエンジン1の運転状態が低負荷運転状態であるという条件を含む。制御装置200は、過給モードがシングル過給モードである場合に、シングル過給モードの選択フラグをオン状態にし、ツイン過給モードの選択フラグをオフ状態にする。制御装置200は、過給モードがシングル過給モードである場合には、第1制御弁62、第2制御弁64および第3制御弁66をいずれも閉状態(オフ状態)にする。
【0051】
図2は、シングル過給モード時の過給システムの動作を説明するための図である。
図2の矢印に示すように、排気マニホールド50A,50Bを流通する排気は、排気管52Aを経由して過給機30のタービン32に流れ、排気管53Aを経由して排気処理装置81に流れる。
【0052】
タービン32に供給された排気によって、タービンホイール34が回転し、タービンホイール34の回転にともなってコンプレッサホイール33が回転する。
【0053】
エアクリーナ20から吸入される空気は、吸気管23および吸気管21を経由してコンプレッサ31に流れる。
【0054】
コンプレッサ31から吐出された吸気は、吸気管37を経由してインタークーラ25に流れる。
【0055】
インタークーラ25に流れた吸気は、吸気管27A,27Bに分岐して吸気マニホールド28A,28Bの各々に流れる。
【0056】
<助走運転について>
制御装置200は、たとえば、過給モードがシングル過給モードであって、かつ、過給機30の回転数がしきい値を超える場合に、シングル過給モードからツイン過給モードへの切替要求があると判定する。このとき、制御装置200は、たとえば、シングル過給モードからツイン過給モードへの切替要求フラグをオン状態にする。制御装置200は、たとえば、エンジン1の排気の流量および可変ノズル機構35の開度に基づいて過給機30の回転数を推定してもよい。
【0057】
制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードへの切替要求がある場合には、助走運転を実行する。すなわち、制御装置200は、第2制御弁64および第3制御弁66の両方を開状態(オン状態)にし、第1制御弁62を閉状態(オフ状態)にする。
【0058】
図3は、助走運転時の過給システムの動作を説明するための図である。
図3の矢印に示すように、排気マニホールド50A,50Bを流通する排気は、接続部P1で一旦合流した後に排気管52A,52Bに分岐し、過給機30,40のタービン32,42の両方に流れ、排気管53A,53Bを経由して排気処理装置81に流通する。
【0059】
タービン32に供給された排気によって、タービンホイール34が回転し、タービンホイール34の回転にともなってコンプレッサホイール33が回転する。タービン42に供給された排気によって、タービンホイール44が回転し、タービンホイール44の回転にともなってコンプレッサホイール43が回転する。
【0060】
エアクリーナ20から吸入される空気は、吸気管23から吸気管21,22に分岐してコンプレッサ31,41の両方に流れる。
【0061】
コンプレッサ31から吐出された吸気は、吸気管37を経由してインタークーラ25に流れる。コンプレッサ41から吐出された吸気は、吸気管47から接続部P4を経由して還流管48に流れ、還流管48から吸気管21を経由してコンプレッサ31に流れる。
【0062】
インタークーラ25に流れた吸気は、吸気管27A,27Bに分岐して吸気マニホールド28A,28Bの各々に流れる。助走運転中においては、過給機30によってインタークーラ25に流れる吸気を過給しつつ、過給機40の回転数が上昇される。過給機40の回転数が上昇するにつれて過給機40のコンプレッサ41から吐出される吸気の圧力が上昇していく。
【0063】
<ツイン過給モードについて>
制御装置200は、助走運転中における過給機40の過給能力が十分高くなったタイミングで、ツイン過給モードで過給システムを動作させる。制御装置200は、たとえば、過給モードがツイン過給モードである場合に、シングル過給モードの選択フラグをオフ状態にし、ツイン過給モードの選択フラグをオン状態にする。制御装置200は、過給モードがツイン過給モードである場合には、第1制御弁62を開状態(オン状態)にするとともに、第2制御弁64を閉状態(オフ状態)にする。
【0064】
図4は、ツイン過給モード時の過給システムの動作を説明するための図である。助走運転時においては、過給機40のコンプレッサ41から吐出された吸気が吸気管47の途中から還流管48を経由して吸気管21に流れていたのに対して、ツイン過給モード時においては、
図4の矢印に示すように、過給機40のコンプレッサ41から吐出された吸気が吸気管47から吸気管37を経由してインタークーラ25に流れる。
【0065】
なお、上述以外の排気および吸気の流れは助走運転時の排気および吸気の流れと同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0066】
<過給モードの切替時の過給圧の変化について>
以下、
図5を参照しつつ、シングル過給モードからツイン過給モードへの切替時の過給圧の変化について説明する。
図5は、シングル過給モードからツイン過給モードへの切替時の過給圧の変化について説明するための図である。
【0067】
図5のLN1は、エンジン回転数NEの変化を示す。
図5のLN2は、エンジン1の吸気の過給圧(第1過給圧Pp)の変化を示す。
図5のLN3は、第1制御弁62の開閉状態の変化を示す。
図5のLN4は、第2制御弁64の開閉状態の変化を示す。
図5のlN5は、第3制御弁66の開閉状態の変化を示す。
【0068】
たとえば、車両が発進し、アクセル開度が緩やかに増加する場合を想定する。エンジン1の運転状態が低負荷運転状態である場合には、過給システムは、シングル過給モードで動作する。そのため、
図5のLN3,LN4およびLN5に示されるように、第1制御弁62、第2制御弁64および第3制御弁66は、いずれも閉状態(オフ状態)となる。このとき、
図2を用いて説明したように、エアクリーナ20からの吸気は、過給機30により過給され、エンジン1に供給される。そのため、
図5のLN1に示されるように、エンジン回転数NEの上昇にともなって、排気量が増加する。これにより、
図5のLN2に示されるように、第1過給圧Ppが上昇していく。
【0069】
時間t(0)にて、たとえば、過給機30の回転数がしきい値を超えるなどしてシングル過給モードからツイン過給モードへの切替が要求される場合に、助走運転が実行される。そのため、
図5のLN3、LN4およびLN5に示されるように、第1制御弁62の閉状態が維持されるとともに、第2制御弁64および第3制御弁66がいずれも開状態(オン状態)となる。このとき、
図3を用いて説明したように、エアクリーナ20からの吸気は、過給機30により過給され、エンジン1に供給されるとともに、過給機40により過給された空気は、吸気管21に戻される。
【0070】
また、エンジン1から排出される排気は、排気管51A,51Bを流通し、接続部P1で合流した後に排気管52A,52Bに分岐し、タービン32,42に供給される。排気が排気管52Aのみに流通していた状態から排気管52A,52Bに分岐する状態になるため、
図5のLN1およびLN2に示されるように、時間t(0)以降においては、エンジン回転数NEが上昇していくのに対して、第1過給圧Ppが低下していく。一方、タービン42への排気の供給が開始されるため、エンジン回転数NEの上昇にともなって、第2過給圧Psは上昇していく。
【0071】
時間t(1)にて、過給機40の過給能力が十分高くなる場合に、過給モードがツイン過給モードに切り替えられる。そのため、
図5のLN3、LN4およびLN5に示されるように、第3制御弁66の開状態が維持されるとともに、第1制御弁62が閉状態から開状態に切り替えられ、第2制御弁64が開状態から閉状態に切り替えられる。このとき、
図4を用いて説明したように、エアクリーナ20からの吸気は、過給機30,40により過給され、エンジン1に供給される。すなわち、過給機30のコンプレッサ31から吐出される吸気と、過給機40のコンプレッサ41から吐出される吸気とが接続部P3で合流した後にインタークーラ25を経由して、吸気マニホールド28A,28Bに供給される。
【0072】
また、エンジン1から排出される排気は、排気管51A,51Bを流通し、接続部P1で合流した後に排気管52A,52Bに分岐し、タービン32,42に供給される。そのため、エンジン回転数NEの上昇にともなって、第1過給圧Ppおよび第2過給圧Psが上昇していく。
【0073】
このように、助走運転中に過給圧が低下し、ツイン過給モードに切り替えられた後に過給圧が上昇する変動が生じるため、エンジン1においてトルクショックが発生する場合がある。
【0074】
このような問題に対して、たとえば、排気圧が一定になるように過給機30,40のタービン32,42に供給される排気量を調整したり、可変ノズル機構35,45のVN開度を調整したりすることも考えられるが、排気圧を一定にするためには、排気圧を監視するための耐熱性の高い圧力センサや、排気量や可変ノズル機構35,45のVN開度の微調整を可能とする制御弁等が必要となり、コストが増加する可能性がある。そのため、過給モードの切替制御の実行時における過給圧の変動をより簡素な構成で抑制することが求められる。
【0075】
そこで、本実施の形態においては、制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードへの切替制御の実行が要求される場合に、過給機30のVN開度VN1が過給機40のVN開度VN2と同じ開度になるように可変ノズル機構35,45を制御するとともに、助走運転を実行し、助走運転中に第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達するときにツイン過給モードに切り替えるものとする。
【0076】
このようにすると、シングル過給モードからツイン過給モードに切り替えるときの第1過給圧Ppの低下幅を小さくすることができる。その結果、過給圧の変動によるトルクショックの発生を抑制することができる。このような制御は、可変ノズル機構35,45の開度VN1,VN2を同じ開度にそろえることによって実現することができるため、簡素な構成で過給圧の変動を抑制することができる。
【0077】
以下、
図6を参照して、本実施の形態における制御装置200で実行される処理について説明する。
図6は、制御装置200で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の制御周期毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。
【0078】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、制御装置200は、過給モードがシングル過給モードであるか否かを判定する。制御装置200は、たとえば、シングル過給モードの選択フラグがオン状態である場合には、過給モードがシングル過給モードであると判定する。過給モードがシングル過給モードであると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。
【0079】
S102にて、制御装置200は、ツイン過給モードへの切替要求があるか否かを判定する。制御装置200は、たとえば、ツイン過給モードへの切替要求フラグがオン状態である場合に、ツイン過給モードへの切替要求があると判定する。ツイン過給モードへの切替要求があると判定される場合(S110にてYES)、処理はS104に移される。
【0080】
S104にて、制御装置200は、助走運転を実行する。助走運転の実行時における過給システムの動作については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0081】
S106にて、制御装置200は、等VN開度制御を実行する。具体的には、制御装置200は、可変ノズル機構35,45のVN開度を同じ開度であって、かつ、下限値(最も閉じ側の値)になるように制御する。
【0082】
S108にて、制御装置200は、第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達したか否かを判定する。具体的には、制御装置200は、第1圧力センサ106によって検出される第1過給圧Ppから第2圧力センサ108によって検出される第2過給圧Psを減算した値の大きさがしきい値α以下であるか否かを判定する。第1過給圧Ppから第2過給圧Psを減算した値の大きさがしきい値α以下であると判定される場合に、第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達したと判定する。第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達したと判定される場合(S108にてYES)、処理はS110に移される。
【0083】
S110にて、制御装置200は、過給モードをツイン過給モードに切り替える。ツイン過給モード時の過給システムの動作については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0084】
なお、シングル過給モードでないと判定される場合や(S100にてNO)、切替要求がないと判定される場合(S102にてNO)、この処理は終了される。また、第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達していないと判定される場合(S108にてNO)、処理はS108に戻される。
【0085】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態における制御装置200の動作について
図7を参照しつつ説明する。
図7は、制御装置200の動作の一例を説明するための図である。
図7のLN7は、エンジン回転数NEの変化を示す。
図7のLN8は、第1制御弁62の開閉状態の変化を示す。
図7のLN9は、第2制御弁64の開閉状態の変化を示す。
図7のLN10は、第3制御弁66の開閉状態の変化を示す。
図7のLN11は、可変ノズル機構35のVN開度VN1の変化を示す。
図7のLN12は、可変ノズル機構45のVN開度VN2の変化を示す。
図7のLN13は、等VN開度制御を実行する場合の第1過給圧Ppの変化を示す。
図7のLN14(破線)は、等VN開度制御を実行する場合の第2過給圧Psの変化を示す。
図7のLN15(一点鎖線)は、等VN開度制御を実行しない場合における第1過給圧Ppの変化を示す。
【0086】
たとえば、車両が発進し、アクセル開度が緩やかに増加する場合を想定する。エンジン1の運転状態が低負荷運転状態である場合には、過給システムは、シングル過給モードで動作する(S100にてYES)。そのため、
図7のLN8,LN9およびLN10に示されるように、第1制御弁62、第2制御弁64および第3制御弁66は、いずれも閉状態(オフ状態)となる。このとき、
図2を用いて説明したように、エアクリーナ20からの吸気は、過給機30により過給され、エンジン1に供給される。そのため、
図7のLN7に示されるように、エンジン回転数NEの上昇にともなって、排気量が増加する。これにより、
図7のLN13に示されるように、第1過給圧Ppが上昇していく。
【0087】
時間t(2)にて、たとえば、過給機30の回転数がしきい値を超えるなどしてシングル過給モードからツイン過給モードへの切替が要求される場合に(S102にてYES)、助走運転が実行される(S104)。そのため、
図7のLN8,LN9およびLN10に示されるように、第1制御弁62の閉状態が維持されるとともに、第2制御弁64および第3制御弁66がいずれも開状態(オン状態)となる。このとき、
図3を用いて説明したように、エアクリーナ20からの吸気は、過給機30により過給され、エンジン1に供給されるとともに、過給機40により過給された空気は、吸気管21に戻される。
【0088】
また、エンジン1から排出される排気は、排気管51A,51Bを流通し、接続部P1で合流した後に排気管52A,52Bに分岐し、タービン32,42に供給される。排気が排気管52Aのみに流通していた状態から排気管52A,52Bに分岐する状態になるため、
図7のLN7およびLN13に示されるように、時間t(2)以降においては、エンジン回転数NEが上昇していくのに対して、第1過給圧Ppが低下していく。一方、タービン42への排気の供給が開始されるため、エンジン回転数NEの上昇にともなって、第2過給圧Psは上昇していく。
【0089】
ここで、可変ノズル機構35,45のVN開度が同じ下限値に相当する開度になるように等VN開度制御が実行されるので(S106)、タービンホイール34,44に供給される単位時間当たりの排気エネルギーを等しくすることができる。そのため、
図7のLN13およびLN14に示されるように、第1過給圧Ppの低下を抑制しつつ、第2過給圧Psの上昇が促進される。これにより、第1過給圧Ppの低下量と第2過給圧Psの上昇量とのバランスが図れ、等VN開度制御が実行されない場合(
図7のLN15)と比較して、高い過給圧で第1過給圧Ppと第2過給圧Psとを一致させることができる。第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達すると判定されると(S108にてYES)、過給モードがツイン過給モードに切り替えられる(S110)。
【0090】
時間t(3)にて、ツイン過給モードに切り替えられる場合には、
図7のLN8,LN9およびLN10に示されるように、第3制御弁66の開状態が維持されるとともに、第1制御弁62が閉状態から開状態に切り替えられ、第2制御弁64が開状態から閉状態に切り替えられる。このとき、
図4を用いて説明したように、エアクリーナ20からの吸気は、過給機30,40により過給され、エンジン1に供給される。すなわち、過給機30のコンプレッサ31から吐出される吸気と、過給機40のコンプレッサ41から吐出される吸気とが接続部P3で合流した後にインタークーラ25を経由して、吸気マニホールド28A,28Bに供給される。
【0091】
また、エンジン1から排出される排気は、排気管51A,51Bを流通し、接続部P1で合流した後に排気管52A,52Bに分岐し、タービン32,42に供給される。そのため、エンジン回転数NEの上昇にともなって、第1過給圧Ppおよび第2過給圧Psが上昇していく。等VN開度制御が実行されない場合(
図7のLN15)と比較して時間t(3)における過給圧段差の大きさを小さくすることができるため、応答性よく第1過給圧Ppおよび第2過給圧Psを上昇していく。
【0092】
以上のようにして、本実施の形態に係る過給システムによると、助走運転中にVN開度VN1,VN2が同じ下限値相当の開度になるので、過給機30,40の各々のタービンホイール34,44に同等の排気エネルギーを供給することができる。これにより、第1過給圧Ppの低下を抑制しつつ、第2過給圧Psの上昇を促進できる。その結果、第1過給圧Ppの低下と、第2過給圧Psの上昇とのバランスが図れ、第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達するときの過給圧を高くすることができる。そのため、シングル過給モードからツイン過給モードに切り替えるときの第1過給圧Ppの低下幅を小さくすることができる。その結果、過給圧の変動によるトルクショックの発生を抑制することができる。このような制御は、可変ノズル機構35,45の開度を同じ下限値相当の開度にそろえることによって実現することができるため、簡素な構成で過給圧の変動を抑制することができる。したがって、複数の過給機を用いた過給モードの切り替え時における過給圧の変動をより簡素な構成で行なう過給システムを提供することができる。
【0093】
さらに、第1過給圧Ppが第1圧力センサ106によって検出され、第2過給圧Psが第2圧力センサ108によって検出されるため、第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達したか否かを精度高く判定することができる。
【0094】
さらに、助走運転時に可変ノズル機構35,45のVN開度を同じ下限値相当の開度になるように制御することによってツイン過給モードへの切替後において過給機30,40においてサージングが発生することを抑制することができる。
【0095】
以下、ツイン過給モードへの切替後において発生するサージングについて
図8を用いて説明する。
図8は、ツイン過給モードへの切替後に発生するサージングについて説明するための図である。
【0096】
図8の左側には、助走運転時における過給機30,40の吸気の流れが示される。
図8の右側には、ツイン過給過給モード時における過給機30,40の吸気の流れが示される。
【0097】
図3を用いて説明したとおり、助走運転時においては、過給機40のコンプレッサ41から吐出される空気は、第1制御弁62が閉状態であり、かつ、第2制御弁64が開状態であるため、還流管48を経由して吸気管21に流通する。このとき、なんらかの制御で排気エネルギーが過給機40のタービン42に偏って流通するような場合や、あるいは、可変ノズル機構35のVN開度が可変ノズル機構45のVN開度よりも著しく大きい場合には、過給機40のタービン42の回転数が増加するとともに、過給機30が失速し、コンプレッサ31における流量が低下する。その結果、還流管48から吸気管21に流通した空気の一部は、逆流する状態となる。このような状態から、第1制御弁62が開状態になり、第2制御弁64が閉状態になることによって、ツイン過給モードに切り替えられる場合には、過給機30における流量が少なくかつ、吸入圧力に対する吐出圧力の圧力比が高くなり、サージンが発生しやすい状態となる。
【0098】
上述したように助走運転時に可変ノズル機構35,45のVN開度を同じ下限値相当の開度に制御されるので、上述したような還流管48から吸気管21に流通した空気の一部が逆流することを抑制することができる。そのため、ツイン過給モードに切り替えられる場合には、過給機30における流量の低下を抑制することができる。
【0099】
図9は、コンプレッサマップ上の過給機30の動作点の変化を説明するための図である。
図9の縦軸は、圧力比(過給機30のコンプレッサ31における吸入圧力に対する吐出圧力の比)を示す。
図9の横軸は、過給機30のコンプレッサ31への吸入空気量を示す。
図2の太実線は、過給機30においてサージングが発生しやすい領域との境界線(サージライン)を示す。
図2の細実線は、過給機30の過回転領域との境界線(過回転ライン)を示す。以下の説明においては、サージラインよりも左側の領域をサージ領域と称し、過回転ラインよりも右側の領域を過回転領域と称する。
【0100】
たとえば、シングル過給モード時において過給機30の圧力比と吸入空気量とによって特定される動作点が、
図9のA点である場合を想定する。
【0101】
シングル過給モード時に助走運転が実行されると、過給機40における吸気および排気の流通が開始されるため、過給機30のコンプレッサ31への吸入空気量が減少するとともに、圧力比も低下することになる。すなわち、動作点は、
図9のA点から経路(a)および経路(b)に沿って移動する。そして、吸気管27において上述の逆流が発生した状態で、ツイン過給モードに切り替えられると、吸入空気量が大きく低下するとともに、上述のとおり圧力比が上昇した状態になる。その結果、
図9の実線に示すように、動作点は経路(c)に沿って移動し、サージ領域内のB点に到達する。すなわち、過給機30においてサージングが発生しやすい状態になる。
【0102】
これに対して、助走運転時に可変ノズル機構35,45のVN開度を同じ下限値相当の開度になるように制御することによって、逆流が発生した状態になることが抑制される。そのため、ツイン過給モードに切り替えられたときに吸入空気量が大きく低下することが抑制される。その結果、
図9の破線に示すように、動作点は経路(d)に沿って移動し、サージラインよりも右側のC点に到達する。すなわち、過給機30においてサージングの発生を抑制することができる。
【0103】
以下、変形例について説明する。
上述の実施の形態では、エンジン1の吸気通路には、過給機30,40が設けられるものとして説明したが、エンジン1の吸気通路には、過給機30,40に加えて、たとえば、吸気絞り弁や排気再循環装置のEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガス流入口が設けられてもよい。
【0104】
さらに上述の実施の形態では、エンジン1は、V型6気筒のエンジンを一例として説明したが、たとえば、その他の気筒レイアウト(たとえば、直列型あるいは水平型)のエンジンであってもよい。
【0105】
さらに上述の実施の形態では、過給機30の回転数によってシングル過給モードからツイン過給モードへの切替要求があるか否かを判定するものとして説明したが、過給機30の回転数に加えて、過給機30の効率や車両の運転状態(たとえば、加速状態)等のドライバビリティの観点からシングル過給モードからツイン過給モードへの切替要求があるか否かを判定してもよい。
【0106】
さらに上述の実施の形態では、過給システムとして2つの過給機を備えるものとして説明したが、3以上の過給機を有するものであってもよい。
【0107】
さらに上述の実施の形態では、第1圧力センサ106は、吸気管27A内の圧力を検出するものとして説明したが、少なくともコンプレッサ31の過給圧が検出できればよく、たとえば、吸気管37内の圧力を検出してもよいし、あるいは、吸気管27B内の圧力を検出してもよい。
【0108】
さらに上述の実施の形態では、制御装置200は、第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達したときにツイン過給モードに切り替えるものとして説明したが、少なくとも第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達していればよく、たとえば、制御装置200は、第2過給圧Psが第1過給圧Ppに到達した後の所定のタイミングで過給ツインモードを過給モードに切り替えてもよい。
【0109】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0110】
1 エンジン、10A,10B バンク、12A,12B 気筒、20 エアクリーナ、21,22,23,27,27A,27B,37,47 吸気管、25 インタークーラ、28A,28B 吸気マニホールド、30,40 過給機、31,41 コンプレッサ、32,42 タービン、33,43 コンプレッサホイール、34,44 タービンホイール、35,45 可変ノズル機構、36,46 回転軸、48 還流管、50A,50B 排気マニホールド、51A,51B,52A,52B,53A,53B 排気管、62 第1制御弁、64 第2制御弁、66 第3制御弁、81 排気処理装置、102 エアフローメータ、104 エンジン回転数センサ、106 第1圧力センサ、108 第2圧力センサ、200 制御装置。