(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】味覚調節化合物を含む組成物、それらの使用およびそれらを含む食品
(51)【国際特許分類】
A23L 27/20 20160101AFI20220121BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20220121BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20220121BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220121BHJP
【FI】
A23L27/20 G
A23L2/00 B
A23L27/20 D
A23L2/56
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2018502372
(86)(22)【出願日】2016-08-05
(86)【国際出願番号】 IB2016001272
(87)【国際公開番号】W WO2017025804
(87)【国際公開日】2017-02-16
【審査請求日】2019-03-04
(32)【優先日】2015-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512280161
【氏名又は名称】ヴェ マン フィユ
【氏名又は名称原語表記】V. MANE FILS
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】デイブ ジョゼフソン
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-076010(JP,A)
【文献】特開2006-020526(JP,A)
【文献】特開2005-160402(JP,A)
【文献】特開2005-143466(JP,A)
【文献】特開2005-143465(JP,A)
【文献】特開昭50-076299(JP,A)
【文献】特開昭49-116300(JP,A)
【文献】EUROPEAN FOOD RESEARCH AND TECHNOLOGY,2006年02月14日,Vol. 223,pp. 675-681
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、C11B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの1つ以上の味覚調節化合物を含む組成物を含む食品および飲料の群から選択される製品であって、
【化2】
式中
mは0または1であり、
R
3、R
4およびR
7は、独立して水素および直鎖C1~C3アルキル基から選択され、
R
1は、水素、直鎖C1~C3アルキル基および-CH
2OR'から選択され、
R
2およびR
6は、独立して水素、直鎖C1~C3アルキル基もしくは-OR'から選択されるか、またはR
2およびR
6は結合し、直鎖C1~C3アルキル基で任意に置換されるシクロヘキサン環を形成し、
R
5およびR
8は、独立して水素、直鎖C1~C3アルキル基、-CH
2OR'、-CO-R'または-OR'から選択され、
R'は、水素または直鎖C1~C3アルキル基から選択され、
ただし、
C2とC3との間の二重結合が存在する場合、R
5およびR
7は存在せず、
mが1であり、C4とC5との間の二重結合が存在する場合、R
3およびR
1は存在せず、
mが0であり、C2とC3との間の二重結合が存在する場合、R
2およびR
6は結合し、任意に置換されるシクロヘキサン環を形成することを条件とし、
前記1つ以上の味覚調節化合物を0.1~200ppmの量で含
み、
前記味覚調節化合物は、知覚可能な味および芳香特性を示さない、製品。
【請求項2】
前記味覚調節化合物が、ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4,4-ジメチル-2(3H)-フラノン(パントラクトン)、2-アセチル-ブチロラクトン、4,6-ジメチル-アルファ-ピロン、4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロン、3,4-ジヒドロ-6-メチル-2H-ピラン-2-オン、ジヒドロアクチニジオリド、2-アセチル-2-メチル-ガンマ-ブチロラクトン、ジヒドロ-5-(ヒドロキシメチル)-2(3H)-フラノン、3-ヒドロキシ-2-ピロン、D-アラビノ-1,4-ラクトンまたはそれらの混合物からなる群より選択される、請求項
1に記載の製品。
【請求項3】
溶媒をさらに含む、請求項
1または
2に記載の製品。
【請求項4】
風味成分をさらに含む、請求項
1~
3のいずれか一項に記載の製品。
【請求項5】
請求項1で定めた味覚調節化合物とは異なる1つ以上の追加の味覚調節化合物をさらに含む、請求項
1~
4のいずれか一項に記載の製品。
【請求項6】
5,6-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-6-メチル-2H-ピラン-2-オン、メバロノラクトン、2-メチル-ガンマ-ブチロラクトン、5,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-オン、3-メチル-2(5H)-フラノン、5-メトキシ-2-ピロリジノン、ヒドロキシル-ガンマ-ドデカラクトン、マソイアラクトン、m-クレゾール、3-n-プロピルフェノール、3-エチルフェノール、2-ピペリドン、2-ピロリドン、ピログルタミン酸、4-ヒドロキシ-2-ピロリジノン、N-メチルカプロラクタム、イプシロン-カプロラクタムおよび、9-デセン-2-オン、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む、請求項
1~
5のいずれか一項に記載の製品。
【請求項7】
請求項
1または
2で定めた1つ以上の味覚調節化合物を5~20ppmの量で含む、請求項
1~
6に記載の製品。
【請求項8】
食品および飲料における甘味、塩味、うま味、渋味、唾液分泌および/または苦味の知覚を調節するための、組成物の使用であって、該組成物は
、
請求項
1~
7のいずれか一項に記載の組成物であり、
0.1~200ppmの量で食品および飲料中に存在する前記1つ以上の味覚調節化合物の量となるように、前記組成物を前記食品および飲料に添加
し、
前記味覚調節化合物は、知覚可能な味および芳香特性を示さない、使用。
【請求項9】
前記食品および飲料における塩味感を増加させるための、
前記食品および飲料における、甘味感を増加させるための、および/もしくは高甘味度甘味料の砂糖様知覚を改善するための、
前記食品および飲料におけるうま味感を増加させるための、
前記食品および飲料における渋味を低減させるための、
唾液分泌を増加させるための、または
前記食品および飲料における苦味を低減させるための、
請求項
8に記載の使用。
【請求項10】
食品または飲料における甘味、塩味、うま味、渋味、唾液分泌および/または苦味の知覚を調節する方法であって、
食品または飲料を供給すること、およ
び
請求項
1~
7のいずれか一項に記載の組成物
を前記食品または飲料に添加することを含み、
0.1~200ppmの量で食品および飲料中に存在する前記1つ以上の味覚調節化合物の量となるように、前記組成物を前記食品および飲料に添加
し、
前記味覚調節化合物は、知覚可能な味および芳香特性を示さない、方法。
【請求項11】
前記食品および飲料における塩味感を増加させるための、
前記食品および飲料における、甘味感を増加させるための、および/もしくは高甘味度甘味料の砂糖様知覚を改善するための、
前記食品および飲料におけるうま味感を増加させるための、
前記食品および飲料における渋味を低減させるための、
唾液分泌を増加させるための、または
前記食品および飲料における苦味を低減させるための、
請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味覚調節化合物を含む組成物、これらの組成物の使用、およびそれらを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
香辛料業界は、食品の味を増強、改変または修飾する方法を絶えず探し求めている。これを行う1つの方法は、甘味、風味、うま味、および塩味の知覚を改善する;苦味、酸味、渋味および塩味を隠す;ならびに加温、清涼感または唾液の刺激などの効果を誘発するなどの幅広い用途を包含する味覚調節化合物の添加である。
【0003】
特許文献1では、スクラレオリドを使用してステビアに関連する甘草風味を薄めているのに対して、特許文献2は、低脂肪アイスクリームの濃さおよびクリーミーさ、アスパルテームなどの非栄養甘味料で甘味付けされた食品および飲料の甘味などの食品の官能特性を高めるためのスクラレオリドの使用を記載している。しかしながら、この化合物の使用は、そのような甘味料に限定される。
【0004】
特許文献3は、風味および味をグルコノデルタラクトンで調節しようと試みており、この添加は、それに伴うマイルドな酸味をもたらすレベルで必要とされる。特許文献4は、醤油における塩味増強剤としてのエチルグアイアコールおよびエチルフラネロールを開示しており、これらの化合物の使用を制限するこれらの化合物の煙およびカラメルの芳香を包容することができる。
【0005】
したがって、検出可能な味または特殊利用などの上記の欠点を有さず、多種多様な食品および飲料に使用することができる風味修飾化合物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2013/0115356号
【文献】米国特許第4,917,913号
【文献】米国特許第5,683,737号
【文献】特開2012-070636号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】S. Arctander, Perfume and Flavour Chemicals, 1969, Montclair, N.J., USA
【発明の概要】
【0008】
本出願人は、特定の風味修飾化合物を含む風味修飾組成物が、広範囲の用途で、食品および飲料の風味を修飾するために使用され得ることを見出した。したがって、本発明の第1の態様は、式Iの1つ以上の風味修飾化合物を含む風味修飾組成物に関し、
【化1】
式I
式中
mは0または1であり、
R
3、R
4およびR
7は、独立して水素および直鎖C1~C3アルキル基から選択され、
R
1は、水素、直鎖C1~C3アルキル基および-CH
2OR'から選択され、
R
2およびR
6は、独立して水素、直鎖C1~C3アルキル基もしくは-OR'から選択されるか、またはR
2およびR
6は結合し、直鎖C1~C3アルキル基で任意に置換されるシクロヘキサン環を形成し、
R
5およびR
8は、独立して水素、直鎖C1~C3アルキル基、-CH
2OR'、-CO-R'または-OR'から選択され、
R'は、水素または直鎖C1~C3アルキル基から選択され、
ただし、
C2とC3との間の二重結合が存在する場合、R
5およびR
7は存在せず、
mが1であり、C4とC5との間の二重結合が存在する場合、R
3およびR
1は存在せず、
mが0であり、C2とC3との間の二重結合が存在する場合、R
2およびR
6は結合し、任意に置換されるシクロヘキサン環を形成することを条件とする。
【0009】
本明細書で使用される用語「風味修飾組成物」は、前記組成物が、動物またはヒトの食用組成物における、天然または合成の味覚物質、風味剤、味プロファイル、風味プロファイル、および/または質感プロファイルの味、匂い、質感、および/または風味プロファイルを増強する、増加させる、高める、減少させる、抑制する、または誘導することによって、食用組成物の知覚経験を修飾できることを意味することを意図している。そのような修飾の目的は、主として、望ましい属性の強度を増加させること、食用組成物中に存在しないかもしくは何らかの理由で失われた望ましい属性を代替すること、または望ましくない属性の強度を減少させることである。特に、塩味感、甘味感、酸味感、こく味感、またはうま味感の強度を高め、苦味感を抑えることが望ましい。「風味修飾組成物」は、口腔内の清涼感、辛味(痛み)、渋味、金属味、および唾液分泌を含む非基本味覚特性(「感覚」と呼ばれる)の化学感知によって与えられる口腔知覚を増強および/修飾することもできる。特に、風味修飾組成物は、渋味感を減少させることができ、および/または唾液分泌(すなわち、口内水分の増加)を刺激することができる。
【0010】
本明細書で使用される用語「風味修飾化合物」は、味覚調節化合物を意味することを意図し、味ならびに感覚認識(および/または知覚)を修飾する分子を指す。全ての場合において、そのような化合物の特異性は、それらが知覚可能な味および芳香特性を示さない(味がないおよび芳香がない)ことである。したがって、これらの「風味修飾化合物」の重要な際立った特徴は、食品の風味知覚を調節する一方で、単独で摂取された場合には知覚できないことである。そのような風味修飾化合物は、合成起源であっても天然起源であってもよい。
【0011】
風味の修飾には、塩味感の増加、甘味感の増加、高甘味度甘味料の砂糖様品質の改善、苦味および渋味の低減、唾液分泌の刺激またはうま味感の増加が含まれる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、風味修飾組成物は、式Iの1つ以上の風味修飾化合物を含み、式中
mは0または1であり、
R3、R4およびR7は水素であり、
R1は、水素または直鎖C1~C3アルキル基から選択され、
R2およびR6は、独立して水素、直鎖C1~C3アルキル基または-OR'から選択され、
R5およびR8は、独立して水素、直鎖C1~C3アルキル基、または-OR'から選択され、
R'は水素から選択され、
ただし、
C2とC3との間の二重結合が存在する場合、R5およびR7は存在せず、
mが1であり、C4とC5との間の二重結合が存在する場合、R3およびR1は存在せず、
mが0であり、C2とC3との間の二重結合が存在する場合、R2およびR6は結合し、任意に置換されるシクロヘキサン環を形成することを条件とする。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、風味修飾組成物は、式Iの1つ以上の風味修飾化合物を含み、式中
mは0であり、
R1、R2、およびR7は水素であり、
R5およびR6はメチルであり、
R8はヒドロキシル基であり、
C2とC3との間に二重結合は存在しない。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、風味修飾組成物は、式Iの1つ以上の風味修飾化合物を含み、式中
mは1であり、
R3、R4およびR7は水素であり、
R1は、水素およびメチル基から選択され、
R2およびR6は、独立して水素、メチル基または-OHから選択され、
R5およびR8は、独立して水素、直鎖C1~C3アルキル基、または-OHから選択され、
ただし、
C2とC3との間の二重結合が存在する場合、R5およびR7は存在せず、C4とC5との間に二重結合は存在しない。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、風味修飾化合物は、ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4,4-ジメチル-2(3H)-フラノン(パントラクトン)、2-アセチル-ブチロラクトン、4,6-ジメチル-アルファ-ピロン、4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロン、3,4-ジヒドロ-6-メチル-2H-ピラン-2-オン、ジヒドロアクチニジオリド、2-アセチル-2-メチル-ガンマ-ブチロラクトン、ジヒドロ-5-(ヒドロキシメチル)-2(3H)-フラノン、3-ヒドロキシ-2-ピロン、D-アラビノ-1,4-ラクトンまたはそれらの混合物からなる群より選択される。
【0016】
風味修飾組成物は、風味修飾化合物が、食品または飲料中に0.1~200ppmの量で、好ましくは1~100ppmの量で、より好ましくは3~50ppmの量で、さらにより好ましくは5~20ppmの量で存在するように食品または飲料に添加される。
【0017】
本明細書で使用される用語「食品」、「食用組成物」および「食料品」は、限定されないが、ヒト食品、動物(ペット)食品および医薬組成物などの摂取可能な製品を指す。食品の例には、限定されないが、スナック、菓子、植物材料、および必須栄養素を供給しても供給しなくてもよい食事が含まれ得る。植物材料には、カカオ、カカオ豆、コーヒー、コーヒー豆および茶葉または粉末が含まれる。食品の非限定的な例には、サラダドレッシング、ソース、グレービー、マリネ、すりこみ、栄養バー、焼き菓子、パン、キャラメル、調理穀物、肉製品、家禽製品、肉、家禽、鶏肉、魚、海タンパク質源、豆、パスタ、菓子製品、塩味のあるスナック、乳製品、チーズ、ヨーグルト、バター、マーガリン、即席のシリアル、調味料およびグレービーが含まれる。
【0018】
動物用食品の非限定的な例には、ペットフード、犬用フード、猫用フード、フェレット用フード、ポケットペット用フード、げっ歯類用フード、家畜用飼料、牛用飼料、ヤギ用飼料、ブタ用飼料、ヒツジ用飼料、馬用飼料などが挙げられ得る。犬および猫用フードなどのペットフードは、「欧州ペットフード工業会連合(FEDIAF)」または「米国飼料検査官協会(AAFCO)」のガイドラインに従って作ることができる。これらのガイドラインは、ペットフードが完全でバランスが取れているものであり、犬および猫の全栄養要求を満たすことを保証する。ペットフードの他の実施形態は、犬および猫用に作られたおやつを含むことができる。これらの実施形態は、FEDIAFおよびAAFCOによって指定されている完全でバランスのとれた栄養要求を満たしていない可能性がある。
【0019】
本明細書で使用される用語「飲料」は、ヒトまたは動物によって経口的に摂取され、ヒトまたは動物の健康を維持するために必要な水または他の栄養素を供給する製品を意味する。特に、用語「飲料」は、混合飲料および濃縮飲料を含み、限定されないが、アルコール飲料およびノンアルコール即席飲料および乾燥粉末飲料が含まれる。飲料の非限定的な例には、以下が含まれる:ソーダ、炭酸飲料、醸造飲料、乳製品、飲用ヨーグルト、乳、コーヒーホワイトナー、栄養ドリンク、栄養飲料、ソフト炭酸飲料、ソフト非炭酸果物風味飲料、ファウンテンドリンク、凍結即席飲料、ソフト非炭酸飲料、ジュース、水、フレーバード水、フレーバード飲料、炭酸水、シロップ、ダイエット飲料、炭酸ソフトドリンク、粉末ソフトドリンク、ならびに液体濃縮物(液体、凍結、および常温保存可能なものを含む)、ファウンテンシロップ、コーディアル、果物ジュース、果物含有飲料、果実風味の飲料、野菜ジュース、野菜含有飲料、等張飲料、非等張飲料、果物ジュース含有ソフトドリンク、コーヒーおよびコーヒーベースの飲料、代用コーヒー、シリアルベースの飲料、茶、茶含有乾燥混合製品、ならびに即席茶(ハーブティーおよび茶葉ベース)、乳製品、大豆製品、果物および野菜ジュースおよびジュース風味の飲料ならびにジュース飲料、ジュースカクテル、ネクター、濃縮物、パンチ、加熱(注入、低温殺菌、超高温、オーム加熱または商業的無菌滅菌)およびホット充填包装で処理されたその他の飲料、濾過、化学的保存、およびその他の保存技術により製造された低温充填製品。炭酸飲料の特定の実施形態は、例えば、コーラ、ダイエットコーラ、レモンライム、オレンジ、オレンジジュース、重柑橘類、果物風味、クリームソーダ、茶または茶風味飲料、およびルートビールを含み得る。乳の特定の実施形態は、無脂肪乳、低脂肪乳、低脂肪乳、全乳、粉乳またはそれらの組み合わせを含む任意の適切な形態であり得る。
【0020】
本発明のさらなる実施形態では、風味修飾組成物は、溶媒をさらに含む。溶媒は、食品および飲料に対する風味修飾化合物の正確な投与量を可能にするだけでなく、食品および飲料中の風味修飾化合物の均一な分布も促進する。
【0021】
適切な溶媒は、水、プロピレングリコール、グリセロール、エタノールおよびトリアセチンなどの親水性溶媒、または植物油、例えばパーム油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、ココナッツ油、オリーブ油または中鎖トリグリセリド(MCT)などの疎水性溶媒であってもよい。中鎖トリグリセリドは、6~12個の炭素原子を含む脂肪族脂肪酸に基づくトリグリセリドである。
【0022】
本発明のさらなる実施形態では、風味修飾組成物は、風味成分をさらに含む。
【0023】
用語「風味成分」および「香味料」は、組成物の味を肯定的もしくは心地よい方法で付与または修飾することができると当業者によって認識される化合物であって、単に味を有する化合物として認識される化合物ではないと理解されることが意図されている。そのような風味成分は、天然物質、天然ものと同一の物質または人工物質であり得る。一般に、これらの風味成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素または硫黄複素環化合物および精油など種々の化学的分類に属する。これらの共成分の多くは、いずれの場合も、非特許文献1などの参考文献、もしくはその最新版、または同様の性質の他の研究に、ならびに風味の分野における豊富な特許文献に列挙されている。
【0024】
食品中で使用される場合に甘味料として使用される糖または糖代替物の全部もしくは一部の代わりとするために、本発明の化合物を容易に使用することができる。「糖」または「甘味料としての糖代替物」は、フルクトース、ガラクトース、マンノースもしくはグルコースなどの任意の単糖類、ラクトース、スクロースもしくはマルトースなどの二糖類、デンプン、オリゴ糖、糖アルコール、コーンシロップ、高果糖コーンシロップなどの多糖類、エリスリトール、イソマルト、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、マルトデキストリンなどの「糖アルコール」甘味料、またはデンプンベースの、植物ベースのもしくは海藻ベース(ベータグルカン、オオバコ)のガムなどの他の炭水化物の形態を意味する。追加の甘味料には、一般に使用される高強度甘味料を挙げることができ、例えば、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファム-K、スクラロース、アリタム、水素化デンプン加水分解物(HSH)、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドF、レバウジオシドG、レバウジオシドHおよびその他の甘いステビアベースのグリコシド、アビジアサポニン、アブルソシド、特にアブルソシドA、アブルソシドB、アブルソシドC、アブルソシドD、アセスルファムカリウム、アドバンタム、アルビジアサポニン、アリテーム、アスパルテーム、スーパーアスパルテーム、バユノシド、特にバユノシド1、バユノシド2、ブラゼイン、ブリオシド、ブリオノシド、ブリオノズルコシド、カルノシフロシド、カレラーム、クルクリン、シアニン、クロロゲン酸、シクラメートおよびその塩、シクロカリオシドI、ジヒドロケルセチン-3-アセテート、ジヒドロフラボノール、ズルコシド、ガウジカウジオシド、グリチルリチン、グリチルレチン酸、ジペノシド、ヘマトキシリン、ヘルナンズルシン、イソモグロシド、特にイソモグロシドV、ルグズナム、マガプ、マビンリンス、ミクラクリン、モグロシド(羅漢果)、特にモグロシドIVおよびモグロシドV、モナチンおよびその誘導体、モネリン、ムクロジオシド、ナリンギンジヒドロカルコン(NarDHC)、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NDHC)、ネオテーム、オスラディン、ペンタディン、ペリアンドリンI-V、ペリラルチン、D-フェニルアラニン、フロミソシド、特にフロミソシド1、フロミソシド2、フロミソシド3、フロミソシド4、フロリジン、フィロズルチン、ポルポジオシド、ポリポドシドA、プテロカリオシド、ルブソシド、サッカリンおよびその塩および誘導体、スカンデノシイド、セリグエアニンA、シアメノシド、特に、シアメノシドI、ステビオールビオシド、ステビオシドおよびその他のステビオール配糖体、ストロギン、特にストロギン1、ストロギン2、ストロギン4、スアビオシドA、スアビオシドB、スアビオシドG、スアビオシドH、スアビオシドI、スアビオシドJ、スクラロース、スクロン酸塩、スクロオクテート、タリン、ソーマチン、特にソーマチンIおよびII、トランス-アネトール、トランス-シンナムアルデヒド、トリロバチンおよびD-トリプトファン、カレラームおよび他のグアニジンベースの甘味料など。甘味料には、シクラミン酸、モグロシド、タガトース、ネオテームおよびその他のアスパルテーム誘導体、D-トリプトファン、グリシン、イソマルト、および水素化グルコースシロップ(HGS)も挙げられる。用語「甘味料」は、本明細書に開示される甘味料の組み合わせも含む。
【0025】
本発明のさらなる実施形態では、風味修飾組成物は、本発明の1つ以上の風味修飾化合物とは異なる1つ以上の追加の風味修飾化合物をさらに含む。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、風味修飾組成物は、5,6-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-6-メチル-2H-ピラン-2-オン、メバロノラクトン、2-メチル-ガンマ-ブチロラクトン、5,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-オン、3-メチル-2(5H)-フラノン、5-メトキシ-2-ピロリジノン、ヒドロキシル-ガンマ-ドデカラクトン、マソイアラクトン、メバノラクトン、m-クレゾール、3-n-プロピルフェノール、3-エチルフェノール、2-ピペリドン、2-ピロリドン、ピログルタミン酸、4-ヒドロキシ-2-ピロリジノン、N-メチルカプロラクタム、イプシロン-カプロラクタムおよび3-ヒドロキシ-2-ピロン、9-デセン-2-オン、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む。特に好ましい実施形態では、ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4,4-ジメチル-2(3H)-フラノン(パントラクトン)は、メバノラクトンおよび/またはm-クレゾール、および/または3-n-プロピルフェノールと組み合わせて使用される。いずれの理論にも束縛されるものではないが、本発明の風味修飾化合物(単数または複数)と上記群から選択される化合物(単数または複数)との間に相乗効果が生じるとの仮説が立てられている。
【0027】
本発明の第2の態様は、風味修飾組成物を含む食品および飲料の群から選択される製品である。さらなる実施形態では、製品は、風味修飾組成物の風味修飾化合物を、0.1~200ppmの量で、好ましくは1~100ppmの量で、より好ましくは3~50ppmの量で、さらにより好ましくは5~20ppmの量で含む。
【0028】
本発明の第3の態様は、食品および飲料における甘味、塩味、うま味、渋味、唾液分泌および苦味の知覚を修飾するための、風味修飾組成物の使用である。
【0029】
本発明の第4の態様は、食品または飲料における甘味、塩味、うま味、渋味、唾液分泌および苦味の知覚を改善する方法であって、
食品または飲料を供給すること、および
式Iの1つ以上の風味修飾化合物を含む風味修飾組成物を添加することを含み、
【化2】
式I
式中
mは0または1であり、
R
3、R
4およびR
7は、独立して水素および直鎖C1~C3アルキル基から選択され、
R
1は、水素、直鎖C1~C3アルキル基および-CH
2OR'から選択され、
R
2およびR
6は、独立して水素、直鎖C1~C5アルキル基もしくは-OR'から選択されるか、またはR
2およびR
6は結合し、直鎖C1~C3アルキル基で任意に置換されるシクロヘキサン環を形成し、
R
5およびR
8は、独立して水素、直鎖C1~C3アルキル基、-CH
2OR'、-CO-R'または-OR'から選択され、
R'は、水素または直鎖C1~C3アルキル基から選択され、
ただし、
C2とC3との間の二重結合が存在する場合、R
5およびR
7は存在せず、
mが1であり、C4とC5との間の二重結合が存在する場合、R
3およびR
1は存在せず、
mが0であり、C2とC3との間の二重結合が存在する場合、R
2およびR
6は結合し、任意に置換されるシクロヘキサン環を形成することを条件とする。
【0030】
第1の実施形態では、本発明は、食品または飲料中の塩味を増強する方法を提供する。
【0031】
第2の実施形態では、本発明は、食品または飲料中の甘味を増強する方法および/または高甘味度甘味料の砂糖様味覚認識を改善する方法を提供する。
【0032】
第3の実施形態では、本発明は、食品または飲料中のうま味を増強する方法を提供する。
【0033】
第4の実施形態では、本発明は、食品または飲料中の渋味を低減させる方法を提供する。
【0034】
第5の実施形態では、本発明は、食品または飲料中の唾液分泌を増加させる方法を提供する。
【0035】
さらなる実施形態では、本発明は、食品または飲料中の苦味を低減させる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】以下の風味修飾化合物を、卓上スクリーニング試験で試験した:ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4,4-ジメチル-2(3H)-フラノン(パントラクトン)、2-アセチル-ブチロラクトン、4,6-ジメチル-アルファ-ピロン、4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロン、3,4-ジヒドロ-6-メチル-2H-ピラン-2-オン、ジヒドロアクチニジオリド、2-アセチル-2-メチル-ガンマ-ブチロラクトン、ジヒドロ-5-(ヒドロキシメチル)-2(3H)-フラノン、3-ヒドロキシ-2-ピロン、D-アラビノ-1,4-ラクトン。以下の味覚調節を試験した:塩味増強、甘味増強、苦味低減、うま味増強。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0037】
(実施例1 - チーズソースの塩味への影響)
全てのチーズソース試料を、21℃で提供した。試料を分注する前に手動で撹拌し、成分の均一な分布を確保した。約9mlのチーズソースを、無臭、半透明、3桁のコードでラベルした1オンスのカップに入れ、蓋をした。評価の約45分前に試料を分けた。
【0038】
パネリストは、完全に囲まれた区画ブースの全ての試料を白色光下で評価した。Fizz Network Software Acquisitions Biosystemes 2.47Bをデータ収集に使用した。各パネリストにすすぎ用の濾過水を供給し、厳密なすすぎ手順に従うように指示した。すすぎプロトコルは、パネリストに、最初の試料を味見する前、および各試料を味見した後にすすぐことを求めた。
【0039】
試料は、基準偏差(DFR)法を用いて評価した。パネリストには、「000」とラベル付けされた同定済み基準と同時にコード化試料を与えた。コード化試料は、ブラインド、コード化基準またはコード化試験試料のいずれかであった。パネリストには最初に基準(000)を味見し、その塩味強度を心の中で評価するよう指示した。パネリストには、コード化試料の塩味強度を味見し、同定済み基準と比較して評価するよう指示した。試料セットを、バランスの取れたランダムな順序でパネリストに与えた。風味の持ち越しを減らすために、試料セット間に1分間の待機期間を設けた。
【0040】
パネリストは、以下の記述子で固定された9段階評価を用いて、基準との塩味強度の差を評価した:(-4)基準より著しく低い、(0)基準と同じ、(4)基準より著しく高い。数値は評価に表示されなかった。統計的平均差は、Fizz Calculations Biosystemes 2.47Bを用いた一元配置ANOVAを用いて計算した。有意水準p≦0.05を統計的試験用に設定した。
【0041】
【0042】
変形試料は、対照試料よりも著しく塩味が強いと評価された。
【0043】
(実施例2 - 醤油中)
マギーシーズニング(NestleUSA社、グレンデール、カリフォルニア州;ロット#23261124 15)を、液体風味調味料源として供給した。表2は、試料の成分および量を示す。
【0044】
全ての試料を21℃で供給した。分取前に試料を手動で約5回反転させ、成分の均一な分布を確保した。約6mlの各試料を、無臭、半透明、3桁のコードでラベルした1オンスのカップに入れ、蓋をした。評価の約1時間前に試料を分けた。実施例1に記載のように、試験をさらに実施した。
【0045】
【0046】
対照は、変形よりも著しく塩味が弱いと評価された。
【0047】
(実施例3 - 甘味味覚閾値の低減)
濾過水(Brita(登録商標)Basic Faucet Filtration System、モデル#OPFF-100)を3.8Lプラスチック容器に集め、種々の濃度のスクロース、レバウジオシドA、またはスクラロースを添加した。各甘味料のストック溶液を調製し、半分に分け(重量で)、希釈して所望の濃度レベルを得た。次いで、希釈した甘味溶液に、0.2重量%のエタノール(対照)またはそれぞれ0.1%のパントラクトンと5,6-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-6-メチル-2H-ピラン-2-オン(変形)との組み合わせを添加した。対照および濃縮試料の評価を2回(2度)行った。0.2%エタノールを含む濾過水を「ブランク」試料とした。試料をパネルに与える約24時間前に調製し、無臭の半透明プラスチックカップに分けて蓋をした。全ての試料を21~22℃で供給した。4つの閾値スケーリングセッションを各甘味料について完了させた:エタノール(対照)を含む甘味料の2つのセッションおよび風味修飾組成物を含む甘味料の2つのセッション。パネリストは、ASTM法E679-04で概説されている手順に従った。
【0048】
パネリストは、上昇する濃度レベルの1つの甘味試料と2つのブランク試料からなる三肢強制選択(AFC)試料セットを受け取った。パネリストに、試料を味見し、「甘い」試料を選択するよう指示した。4つの3-AFCセットをセッションで提示した。試料セットの間に1分間の待機時間を設け、この間にパネリストに濾過水で3回味覚をすすぐよう指示した。評価は、完全に密閉された区画のブースで、白色光下で行われた。データはFizz Network Software Acquisitions Biosystemes 2.47Bを用いて収集した。
【0049】
個々の甘味料の結果は、スクロース、Reb-Aおよびスクラロースについての低い知覚閾値を示した。全体的な結果は、風味修飾組成物を試験飲料に添加した場合、甘味知覚がスクロースについて53%、レバウジオシドAについて34%、スクラロースについて35%低下したことを示した。
【0050】
したがって、パントラクトンは、甘味増強剤として使用することができ、少量のスクロース、スクラロースおよび/またはレバウジオシドAの使用を可能にする。
【0051】
(実施例4 - パントラクトンおよびメバロノラクトン存在下でのダークチョコレート(86%ココア)における苦味および渋味の低減)
定量的記述分析において、ダークチョコレート(Lindt(登録商標)85%カカオ)を、上記の風味修飾組成物(5ppmパントラクトンおよび5ppmメバロノラクトン)なし(対照)およびあり(試験)で評価した。24人の専門家パネリストは、対照ダークチョコレートまたは試験ダークチョコレート(試料摂取間で30秒の遅延)のいずれかを、次の順序のいずれかで摂取した:1)最初に対照、次に試験、または2)最初に試験、次に対照。専門家パネルは、最初に対照を摂取した際、試験製品は:1)チョコレート感が少なく、2)渋味が少なく、3)苦味が少ない味がしたと指摘した。対照的に、専門家パネルは、試験を最初に摂取した際、試験製品は対照製品よりチョコレートの味がしたと指摘した。最後に、前の2つの評価からのデータを組み合わせると、試験製品はよりチョコレートの味がしたと認識された。結果は、味覚調節されたダークチョコレートの味覚を考慮する場合、製品を評価する順序が重要であることを確認した。
【0052】
(実施例5 - パントラクトンおよび5,6-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-6-メチル-2H-ピラン-2-オンのバーベキュー味付けチップの甘味の増強)
3種類のバーベキュー味付けチップを評価した:1)対照 - 15%調味料用量、2)処理1 - 7.5%調味料用量 + 5ppmレバウジオシド-A、3)処理2 - 7.5%調味料用量 + 5ppmレバウジオシド-Aおよびパントラクトン(5ppm)および5,6-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-6-メチル-2H-ピラン-2-オン(5ppm)。5人の専門家試食者は、1つの対照バーベキュー味付けチップを摂取し、次いで処理1の1つのチップと処理2の1つのチップを摂取した。結果は、調味料用量の減少および5ppmのReb-A(処理1)が、甘味の減少および風味プロファイルの終わりの若干の苦味をもたらし、一方でパントラクトンおよび5,6-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-6-メチル-2H-ピラン-2-オン(処理2)の追加が、清涼感甘味およびトルラ酵母特性を増幅させ、風味プロファイルの終わりにかけてより少ない苦味を伴うことを示した。
【0053】
【0054】
(実施例6 - チーズソースに添加された様々なレベルのパントラクトン(D-異性体)は、塩味および唾液分泌を高める)
チーズソースに使用された様々な濃度のパントラクトン(D-異性体)を、表6に示す。5人の専門家試食者は対照を摂取し、次いで様々なレベルのパントラクトン(D-異性体)を含む試料を摂取した。パントラクトン(D-異性体)は、チーズソース中において10~12ppmまではすっきりとした味わいがすると結論付けられた。10~12ppmを超えると、パントラクトンはチーズソースの苦味を増大させるが、それでもなお異臭を示さない。水中では、20~25ppmの含量のパントラクトン(D-異性体)はわずかにすっきりしないと認識されるが、不快な感じではない。ナトリウム強化の範囲内で、それは中立的な味わいである。
【0055】
【0056】
(実施例7 - チキンブロスに添加されたパントラクトン(D-異性体)およびメバロノラクトン)
5人の専門家試食者は、対照(チキンブロス)を摂取し、次いで5ppmのパントラクトン(D-異性体)または5ppmのメバロノラクトンのいずれかを含むチキンブロスを摂取した。パントラクトン(D-異性体)およびメバロノラクトンの両方がうま味味覚を増幅させ、パントラクトン(D-異性体)およびメバロノラクトンの両方の組み合わせにより、異臭なしで非常にすっきりと感じられた味の改善をもたらした。
【0057】
【0058】
(実施例8 - レバウジオシド-Aの甘味に対するパントラクトン(D-異性体)の効果)
この実施例では、パントラクトン(D-異性体)を3つの濃度(5、10、20ppm)で、25ppmまたは250ppmのレバウジオシド-A(Reb-A)のいずれかを含有する水に添加し、溶液の甘味に与える影響を実証した。
【0059】
25または250ppmのいずれかのReb-Aを含有し、パントラクトンを含まない製品(対照)を、表6に示すように5、10または20ppmのいずれかで添加したパントラクトン(D-異性体)を含有する製品と比較する。3人の専門家試食者は、対照製品を試験した後、パントラクトン(D-異性体)のレベルが増加された製品を試験した。250ppmのReb-A水溶液に添加されたパントラクトン(D-異性体)のレベルの増加は、よりすっきりとした先味の甘味知覚を、少ない後味でもたらした。25ppmのReb-A水溶液に添加された増加したレベルのパントラクトン(D-異性体)を味見した後、試食者は、少なくとも20ppmのパントラクトン(D-異性体)の添加まで、対照試料よりも甘味が高いとを報告した。
【0060】
【表6】
* PureCircleレバウジオシド-A 97%
【0061】
(実施例9 - チリエキスペーストの辛味味覚に対するパントラクトン(D-異性体)およびメバロノラクトンの効果)
パントラクトン(D-異性体)およびメバロノラクトンを5ppmでチリエキスペーストに添加し、水に溶解した。
【0062】
風味修飾組成物を含まない製品(対照)の味覚認識を、風味修飾組成物を含有する同じ製品(試験)と比較した。4人の専門家試食者は、チリエキスペースト溶液を単独で摂取した後、パスタラクトン(D-異性体)またはメバロノラクトンのいずれかを5ppm含むチリエキスペースト溶液の2種類の希釈様式(中程度もしくは辛い)のうち1種類を摂取した。パントラクトン(D-異性体)をチリエキスペーストに添加した場合、辛味知覚が低下し、辛味の後味が少なくなった。さらに、メバロノラクトンをチリエキスペーストに添加した場合、果実感が増強されたが、辛味知覚は変化しなかったと結論付けられた。
【0063】
【0064】
(実施例10 - パントラクトン(D-異性体)およびメバロノラクトンがミルクチョコレートの甘味および苦味に及ぼす効果)
この実施例では、パントラクトン(D-異性体)およびメバロノラクトンを各5ppmでミルクチョコレートに添加し、甘味および苦味への影響を実証した。
【0065】
風味修飾組成物の添加のない製品(対照)の味覚認識を、風味修飾組成物を含有する同じ製品(試験)と比較した。4人の専門家試食者の所見に基づいて、パントラクトン(D-異性体)をミルクチョコレートに添加した場合、チョコレートがより甘くて苦味の少ないものになると結論付けられた。
【0066】
【表8】
* PureCircleレバウジオシド-A 97%
【0067】
(実施例11 - パントラクトン(D-異性体)、メバロノラクトンならびにそれらの混合物がワインの複雑さおよびボディに及ぼす効果)
パントラクトン(D-異性体)およびメバロノラクトンを、個別に、または混合物として、それぞれ5ppmでワインに加えた。4人の専門家試食者による試験から、パントラクトンとメバロノラクトンは、組み合わせだけでなく、単独でもより複雑でよりボディがあると認識されるワインをもたらすと結論づけられた。
【0068】
【0069】
(実施例12 - パントラクトンがトマトベースの調味料の風味バランスに及ぼす影響)
2つの異なる配合物中のベース甘味料としてスクロースを含有するケチャップおよび第3の配合物中のベース甘味料としてスクラロースを含有するケチャップを、パントラクトンの添加なし(対照)および5.4ppmでの添加あり(試験)で評価した。4人の専門家パネルは、最初のスクロースベースのケチャップの味がバランスよく改善され、甘味は、塩味の知覚の増加によって証明されるようにわずかに抑制されたと思われると指摘した。第2のスクロースベースのケチャップの味は、味の増強を示したが、バランスの取れた感じではなかった。スクラロースベースのケチャップの味は、パントラクトン(D-異性体)の添加により全ての成分において劇的に改善されたが、甘味に関してバランスを取るためにスクラロースを大幅に減少する必要がある。
【0070】
パントラクトン(D-異性体)を伴うと、バランスのとれた製品は風味が増強されることが結果によって確認された。
【0071】
【0072】
(実施例13 - 鶏粉溶液中の塩味を増強するパントラクトン)
表12に示すように、鶏粉および塩化ナトリウムを濾過水(Brita(登録商標)Basic Faucet Filtration System、モデル#OPFF-100)に添加した。試験は、実施例1に示すように行った。
【0073】
【0074】
水溶液中の鶏粉および塩化ナトリウムと、5ppmパントラクトンを含む水溶液中の鶏粉および塩化ナトリウムとの間には、対照を基準として提示した場合、有意差があった。変形試料を基準として提示した場合、水溶液中の鶏粉および塩化ナトリウムと、5ppmパントラクトンを含む水溶液中の鶏粉および塩化ナトリウムとの間に、塩味の有意差はなかった。
【0075】
(実施例14 - 減塩醤油中の塩味を増強する2-アセチル-ブチロラクトンおよび4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロン)
減塩醤油(キッコーマン(登録商標))を、2-アセチル-ブチロラクトンおよび4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロンの水溶液を用いずに、または5ppm濃度で用いて評価した。5人の専門家試食者は、減塩醤油1gを単独で摂取し、次いで1mlの風味修飾溶液、および減塩醤油1gを再び摂取した。結果は、2-アセチル-ブチロラクトンおよび4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロンの両方が、減塩醤油で塩味を増幅したことを示した(表12を参照)。
【0076】
【0077】
(実施例15 - 2-アセチル-ブチロラクトンおよび4,6-ジメチル-アルファ-ピロンがチーズソースの塩味に及ぼす影響)
チーズソース(Ragu(登録商標))を、2-アセチル-ブチロラクトンおよび4,6-ジメチル-アルファ-ピロンの水溶液を用いずに、または5ppm濃度で用いて評価した。5名の専門家試食者は、20gのチーズソースを単独で摂取し、次いで1mlの風味修飾溶液、および20gのチーズソースを再び摂取した。結果は、2-アセチル-ブチロラクトンおよび4,6-ジメチル-アルファ-ピロンの両方が、チーズソースで塩味を増幅したことを示した(表13を参照)。
【0078】
【0079】
(実施例16 - パントラクトン(D-異性体)、2-アセチル-ブチロラクトンおよび4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロンがタンパク質強化スポーツ飲料の渋味に及ぼす効果)
この実施例では、パントラクトン(D-異性体)、2-アセチル-ブチロラクトンまたは4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロンのうちの1つを、それぞれ5ppmでタンパク質強化スポーツドリンクに添加し、風味修飾溶液が渋みに及ぼす影響を実証した。
【0080】
風味修飾溶液を含まない製品(対照)の味覚認識を、表14に記載の風味修飾溶液を含有する同じ製品(試験)と比較する。4人の専門家試食者は、タンパク質強化飲料を単独で摂取し、次いで試食者は、パントラクトン(D-異性体)、2-アセチル-ブチロラクトンまたは4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロンのうちの1つを5ppm含有するタンパク質強化スポーツ飲料を摂取し、所見を記録した。全ての風味修飾化合物/溶液が、タンパク質強化スポーツ飲料に添加されると、渋味知覚を低下させ、スクラロース後味の知覚を低下させると結論付けられた。
【0081】
【0082】
(実施例17 - チーズソースに添加されたパントラクトン、m-クレゾールおよび3-n-プロピルフェノールが塩味および唾液分泌を促進する)
この実施例では、チーズソースに添加されたパントラクトン、m-クレゾールおよび3-n-プロピルフェノール混合物の様々な実施形態は、塩味および唾液分泌の増強を実証する。
【0083】
パントラクトン、m-クレゾールおよび3-n-プロピルフェノールの多くの組み合わせを、表15に示す。5人の専門家試食者は対照を摂取し、次いで処置のそれぞれを摂取し、スコアを記録した。良好なブレンドの1つは、5.40ppmのパントラクトンと100ppbのm-クレゾールとの組み合わせであると結論付けられた。3-n-プロピルフェノールは効果的であるが、風味芳香特性をわずかに高いレベルで示す。
【0084】
【0085】
(実施例18 - 卓上スクリーニング試験)
以下の風味修飾化合物を、卓上スクリーニング試験で試験した(単独):ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4,4-ジメチル-2(3H)-フラノン(パントラクトン)、2-アセチル-ブチロラクトン、4,6-ジメチル-アルファ-ピロン、4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロン、3,4-ジヒドロ-6-メチル-2H-ピラン-2-オン、ジヒドロアクチニジオリド、2-アセチル-2-メチル-ガンマ-ブチロラクトン、ジヒドロ-5-(ヒドロキシメチル)-2(3H)-フラノン、3-ヒドロキシ-2-ピロン、D-アラビノ-1,4-ラクトン。以下の味覚調節を試験した:塩味増強、甘味増強、苦味低減、うま味増強。
【0086】
塩味 - モデル塩溶液 - [0.2%~1.2%塩の範囲]
塩化ナトリウム(NaCl)溶液を、液体塩モデルの供給源として使用した。NaCl溶液を、風味修飾化合物の水溶液を用いずに、または典型的には5ppmの濃度で用いて評価したが、時には1、10および20ppmで試験を行った。最大5人の専門家試食者は、1gのNaCl溶液を単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した1gのNaCl溶液を摂取した。塩味強度の比較に留意し、風味修飾化合物による塩味調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、塩味感の増加を記録する。
【0087】
塩味 - マギー(登録商標)(市販品、Nestle社製)[10%希釈~そのままの濃度の範囲]
マギー(登録商標)シーズニング(NestleUSA社、グレンデール、カリフォルニア州)を、液体味付け調味料の供給源として使用した。マギー(登録商標)シーズニング液を、風味修飾化合物の水溶液を用いずに、または典型的には5ppmの濃度で用いて評価したが、時には1、10および20ppmで試験を行った。最大5人の専門家試食者は、1gのマギー(登録商標)を単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した1gのマギー(登録商標)を摂取した。塩味強度の比較に留意し、風味修飾化合物による塩味調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、塩味感の増加を記録する。
【0088】
塩味 - キッコーマン醤油(通常および減塩)[10%希釈~そのままの濃度の範囲]
通常および/または減塩醤油(キッコーマン(登録商標))を、風味修飾化合物の水溶液を用いずに、または典型的には5ppmの濃度で用いて評価したが、時には1、10および20ppmで試験を行った。最大5人の専門家試食者は、1gの醤油を単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した1gの醤油を摂取した。塩味強度の比較に留意し、風味修飾化合物による塩味調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、塩味感の増加を記録する。
【0089】
塩味 - チーズソース
チーズソースは、地元の食料品店で購入した。全てのチーズソース試料を室温(~70°F)で提供した。試料を分注する前に手動で撹拌し、成分の均一な分布を確保した。およそ1オンスのチーズソースを、無臭、半透明、1オンスのカップに入れた。最大5人の専門家試食者は、5~10gのチーズソースを単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した5~10gのチーズソースを摂取した。塩味強度の比較に留意し、風味修飾化合物による塩味調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、塩味感の増加を記録する。
【0090】
甘味 - モデルスクロース溶液[1.0%~12.0%スクロースの範囲]
濾過水(Brita(登録商標)Basic Faucet Filtration System)を、全ての希釈液に使用した。スクロース溶液を、液体甘味モデルの供給源として作製した。スクロース溶液を、風味修飾化合物の水溶液を用いずに、または典型的には5ppmの濃度で用いて評価したが、時には1、10および20ppmで試験を行った。最大5人の専門家試食者は、10~20gのスクロース溶液を単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した10~20gのスクロース溶液を摂取した。甘味強度の比較に留意し、風味修飾化合物による甘味調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、甘味感の増加を記録する。
【0091】
甘味 - スクラロース溶液[100ppm~450ppmスクラロースの範囲]
濾過水(Brita(登録商標)Basic Faucet Filtration System)を、全ての希釈液に使用した。スクラロース溶液を、液体甘味モデルの供給源として作製した。スクラロース溶液を、風味修飾化合物の水溶液を用いずに、または典型的には5ppmの濃度で用いて評価したが、時には1、10および20ppmで試験を行った。最大5人の専門家試食者は、10~20gのスクラロース溶液を単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した10~20gのスクラロース溶液を摂取した。甘味強度の比較に留意し、風味修飾化合物による甘味調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、甘味感の増加を記録する。
【0092】
甘味 - Reb-A溶液[100ppm~450ppm Reb-Aの範囲]
濾過水(Brita(登録商標)Basic Faucet Filtration System)を、全ての希釈液に使用した。Reb-A溶液を、液体甘味モデルの供給源として作製した。Reb-A溶液を、風味修飾化合物の水溶液を用いずに、または典型的には5ppmの濃度で用いて評価したが、時には1、10および20ppmで試験を行った。最大5人の専門家試食者は、10~20gのReb-A溶液を単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した10~20gのReb-A溶液を摂取した。甘味強度の比較に留意し、風味修飾化合物による甘味調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、甘味感の増加を記録する。
【0093】
甘味 - コーク・ライフ(登録商標) - 市販品(コカコーラ社の製品)
コーク・ライフ(登録商標)(コカコーラ社)を、風味修飾化合物の水溶液を用いずに、または典型的には5ppmの濃度で用いて評価したが、時には1、10および20ppmで試験を行った。最大5人の専門家試食者は、20~30gのコーク・ライフ(登録商標)を単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した20~30gのコーク・ライフ(登録商標)を摂取した。甘味強度の比較に留意し、風味修飾化合物による甘味調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、甘味感の増加を記録する。
【0094】
甘味 - スプライトゼロ(登録商標) - 市販品(コカコーラ社の製品)
スプライトゼロ(登録商標)(コカコーラ社)を、風味修飾化合物の水溶液を用いずに、または典型的には5ppmの濃度で用いて評価したが、時には1、10および20ppmで試験を行った。最大5人の専門家試食者は、20~30gのスプライトゼロ(登録商標)を単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した20~30gのスプライトゼロ(登録商標)を摂取した。甘味強度の比較に留意し、風味修飾化合物による甘味調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、甘味感の増加を記録する。
【0095】
苦味 - ダークチョコレート
ダークチョコレート(Lindt(登録商標)85%カカオ)を溶かし、風味修飾化合物を用いずに(対照)、または5ppmの濃度で添加して用い(試験)、試料のベースとして使用したが、時には1、10および20ppmで試験を行った。最大5人の専門家試食者は、10~20gのチョコレートを単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した10~20gのチョコレートを摂取した。苦味、甘味および唾液分泌強度の比較に留意し、風味修飾化合物による味覚調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、苦味感の減少を記録する。さらに、甘味および唾液分泌の増加を記録する。
【0096】
うま味 - マギー(登録商標)(市販品、Nestle製)[10%希釈~そのままの濃度の範囲]
マギー(登録商標)シーズニング(NestleUSA社、グレンデール、カリフォルニア州)を、液体味付け調味料の供給源として使用した。マギー(登録商標)シーズニング液を、風味修飾化合物の水溶液を用いずに、または典型的には5ppmの濃度で用いて評価したが、時には1、10および20ppmで試験を行った。最大5人の専門家試食者は、1gのマギー(登録商標)を単独(対照)で、続いて1、5、10または20ppmの風味修飾化合物を添加した1gのマギー(登録商標)を摂取した。塩味強度の比較に留意し、風味修飾化合物によるうま味調節を記録した。各濃度で(1、5、10および20ppmの風味修飾化合物)、うま味および塩味感の増加を記録する。