(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】製函機及び段ボールシートの加工位置調整方法
(51)【国際特許分類】
B31B 50/04 20170101AFI20220121BHJP
【FI】
B31B50/04
(21)【出願番号】P 2018567777
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2017035052
(87)【国際公開番号】W WO2019064392
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2018-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊折 信耶
(72)【発明者】
【氏名】下羽坪 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保成
(72)【発明者】
【氏名】細谷 和徳
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-149420(JP,A)
【文献】特開2004-107024(JP,A)
【文献】特開2005-324899(JP,A)
【文献】特開平09-165124(JP,A)
【文献】特許第5911142(JP,B2)
【文献】特開平04-305456(JP,A)
【文献】特開2016-150407(JP,A)
【文献】特許第3016028(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙ロールの外周面の摩耗に起因する段ボールシートの搬送ずれを調整する製函機であって、
段ボールシートの上面と下面の少なくとも一方の面に接触して送り出す前記給紙ロールを有する給紙装置と、
前記給紙装置から送り出された段ボールシートに対して加工を行う加工ロールを有する加工装置と、
段ボールシートの搬送方向における前記加工装置の加工位置を調整する加工位置調整装置と、
前記加工位置調整装置を制御する制御装置と、
前記給紙ロールの回転に伴って発生するパルスを検出するパルス検出器と、
前記給紙装置から予め設定された所定搬送位置に到達した段ボールシートを検出する位置検出器と、
を備える製函機において、
前記制御装置は、
前記パルス検出器によって検出されたパルスと前記位置検出器による検出結果とに基づいて前記給紙装置から前記給紙ロールを経由して前記所定搬送位置までの段ボールシートの実到達パルスを算出する実到達パルス算出部と、
前記給紙装置から前記給紙ロールを経由して前記所定搬送位置までの予め設定された基準到達パルスと前記実到達パルスとを比較して段ボールシートの搬送ずれ量を算出する搬送ずれ量算出部と、
段ボールシートの加工終了後に異なる加工ジョブにて段ボールシートを加工するときに前記搬送ずれ量に基づいて前記加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整する制御部と、
を有
し、
同種類の段ボールシートを所定枚数だけ加工するとき、前記搬送ずれ量算出部は、前記所定枚数の段ボールシートに対する搬送ずれ量を算出し、前記制御部は、異なる種類の段ボールシートを所定枚数だけ加工するとき、前記所定枚数の段ボールシートに対する搬送ずれ量に基づいて段ボールシートの加工位置を調整する、
ことを特徴とする製函機。
【請求項2】
給紙ロールの外周面の摩耗に起因する段ボールシートの搬送ずれを調整する製函機であって、
段ボールシートの上面と下面の少なくとも一方の面に接触して送り出す前記給紙ロールを有する給紙装置と、
前記給紙装置から送り出された段ボールシートに対して加工を行う加工ロールを有する加工装置と、
段ボールシートの搬送方向における前記加工装置の加工位置を調整する加工位置調整装置と、
前記加工位置調整装置を制御する制御装置と、
前記加工ロールの回転に伴って発生するパルスを検出するパルス検出器と、
前記給紙装置から予め設定された所定搬送位置に到達した段ボールシートを検出する位置検出器と、
を備える製函機において、
前記制御装置は、
前記パルス検出器によって検出されたパルスと前記位置検出器による検出結果とに基づいて前記給紙装置から前記加工ロールを経由して前記所定搬送位置までの段ボールシートの実到達パルスを算出する実到達パルス算出部と、
前記給紙装置から前記加工ロールを経由して前記所定搬送位置までの予め設定された基準到達パルスと前記実到達パルスとを比較して段ボールシートの搬送ずれ量を算出する搬送ずれ量算出部と、
段ボールシートの加工終了後に異なる加工ジョブにて段ボールシートを加工するときに前記搬送ずれ量に基づいて前記加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整する制御部と、
を有
し、
同種類の段ボールシートを所定枚数だけ加工するとき、前記搬送ずれ量算出部は、前記所定枚数の段ボールシートに対する搬送ずれ量を算出し、前記制御部は、異なる種類の段ボールシートを所定枚数だけ加工するとき、前記所定枚数の段ボールシートに対する搬送ずれ量に基づいて段ボールシートの加工位置を調整する、
ことを特徴とする製函機。
【請求項3】
前記制御部は、段ボールシートの加工終了後に
段ボールシートの搬送方向の長さ、厚さ、材質の少なくとも一つが異なるタイプの段ボールシートを加工するときに前記搬送ずれ量に基づいて前記加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製函機。
【請求項4】
同種類の段ボールシートを所定枚数だけ加工するとき、前記搬送ずれ量算出部は、前記所定枚数の段ボールシートの搬送ずれ量の平均値を算出し、前記制御部は、前記搬送ずれ量の平均値に基づいて前記加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の製函機。
【請求項5】
前記搬送ずれ量算出部が算出した段ボールシートの搬送ずれ量を記憶する記憶部が設けられ、前記搬送ずれ量算出部が新たな段ボールシートの搬送ずれ量を算出したとき、前記記憶部に記憶された前記搬送ずれ量を更新することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の製函機。
【請求項6】
前記記憶部に段ボールシートの搬送方向長さに対する搬送ずれ量を表すマップが記憶され、前記搬送ずれ量算出部は、前記記憶部に記憶された前記マップを用いて段ボールシートの搬送ずれ量を算出することを特徴とする請求項5に記載の製函機。
【請求項7】
段ボールシート特有の標準搬送ずれ量が設定され、前記制御部は、前記標準搬送ずれ量に前記搬送ずれ量を加算した搬送ずれ量補正値に基づいて前記加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整することを特徴とする請求項1から請求項6いずれか一項に記載の製函機。
【請求項8】
前記加工装置として、段ボールシートに対して印刷を行う印刷部と、段ボールシートに対して表面に罫線加工を行うと共に溝切り加工を行う排紙部とを有し、前記印刷部と前記排紙部との間に前記所定搬送位置に到達した段ボールシートを検出する位置検出器が配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の製函機。
【請求項9】
段ボールシートに対して印刷を行う印刷部と、段ボールシートに対して表面に罫線加工を行うと共に溝切り加工を行う排紙部と、段ボールシートに対して打ち抜き加工を施すダイカット部と、段ボールシートを折り畳んで端部を接合することで扁平形状をなす段ボール箱を形成するフォルディング部と、段ボール箱を計数しながら積み上げた後に所定数ごとに排出するカウンタエゼクタ部とを有し、前記加工位置調整装置は、前記印刷部と前記排紙部と前記ダイカット部による加工位置を調整することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の製函機。
【請求項10】
給紙ロールの外周面の摩耗に起因する段ボールシートの搬送ずれを調整する段ボールシートの加工位置調整方法であって、
前記給紙ロールの回転に伴って発生するパルスを検出する工程と、
給紙装置から予め設定された所定搬送位置に到達した段ボールシートを検出する工程と、
検出された前記パルスと検出された段ボールシートの位置とに基づいて前記給紙装置から前記給紙ロールを経由して前記所定搬送位置までの段ボールシートの実到達パルスを算出する工程と、
前記給紙装置から前記給紙ロールを経由して前記所定搬送位置までの予め設定された基準到達パルスと前記実到達パルスとを比較して段ボールシートの搬送ずれ量を算出する工程と、
段ボールシートの加工終了後に異なる加工ジョブにて段ボールシートを加工するときに前記搬送ずれ量に基づいて次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整する工程と、
を有
し、
同種類の段ボールシートを所定枚数だけ加工するとき、前記所定枚数の段ボールシートに対する搬送ずれ量を算出し、異なる種類の段ボールシートを所定枚数だけ加工するとき、前記所定枚数の段ボールシートに対する搬送ずれ量に基づいて段ボールシートの加工位置を調整する、
ことを特徴とする段ボールシートの加工位置調整方法。
【請求項11】
給紙ロールの外周面の摩耗に起因する段ボールシートの搬送ずれを調整する段ボールシートの加工位置調整方法であって、
段ボールシートに対して加工を行う加工ロールの回転に伴って発生するパルスを検出する工程と、
給紙装置から予め設定された所定搬送位置に到達した段ボールシートを検出する工程と、
検出された前記パルスと検出された段ボールシートの位置とに基づいて前記給紙装置から前記加工ロールを経由して前記所定搬送位置までの段ボールシートの実到達パルスを算出する工程と、
前記給紙装置から前記加工ロールを経由して前記所定搬送位置までの予め設定された基準到達パルスと前記実到達パルスとを比較して段ボールシートの搬送ずれ量を算出する工程と、
段ボールシートの加工終了後に異なる加工ジョブにて段ボールシートを加工するときに前記搬送ずれ量に基づいて次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整する工程と、
を有
し、
同種類の段ボールシートを所定枚数だけ加工するとき、前記所定枚数の段ボールシートに対する搬送ずれ量を算出し、異なる種類の段ボールシートを所定枚数だけ加工するとき、前記所定枚数の段ボールシートに対する搬送ずれ量に基づいて段ボールシートの加工位置を調整する、
ことを特徴とする段ボールシートの加工位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシートを加工して扁平形状をなす段ボール箱を製造する製函機、この製函機で加工される段ボールシートの加工位置を調整する段ボールシートの加工位置調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な製函機は、段ボールシートを加工することで扁平形状をなす段ボール箱を製造するものであり、給紙部、印刷部、排紙部、ダイカット部、フォルディング部、カウンタエゼクタ部などから構成されている。この製函機にて、給紙部は、テーブル上に積み重ねられた複数の段ボールシートのうち、最下部の段ボールシートを一枚ずつ送り出し、印刷部に向けて一定の速度で搬送することができる。
【0003】
ところで、給紙部は、テーブル上に積み重ねられた複数の段ボールシートのうち、回転する複数のロールが最下部の段ボールシートに接触して送り出している。このとき、複数のロールは、外周面が段ボールシートの上面や下面と接触することから、両者の間に滑りが生じてロールの外周面が摩耗してしまう。ロールの外周面の摩耗量が大きくなると、外径が小さくなって周速が低下し、段ボールシートの搬送速度が低下する。段ボールシートの搬送速度が低下すると、例えば、印刷部は、段ボールシートの所定の位置に印刷を行うことができず、印刷位置のずれにより段ボールシートの印刷品質が低下してしまう。
【0004】
段ボールシートの加工位置のずれの発生を抑制する技術としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された段ボールシートの製函機は、搬送位置検出センサにより検出された段ボールシートの搬送位置に基づいて、段ボールシートの溝加工、折れ線付け又は印刷を行う加工ロールの所定の回転位置が搬送される段ボールシートの所定の加工位置に一致するように加工ロール駆動用モータを制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載された技術では、段ボールシートの加工中に、段ボールシートの搬送位置を検出し、段ボールシートの搬送位置に対して加工装置による加工位置を調整している。ところが、段ボールシートが所定の速度で搬送されているとき、その搬送位置を検出して加工装置による加工位置を調整するためには、高精度な検出器や制御機器が必要となり、装置コストが増加してしまう。一方で、加工ロールの所定の回転位置が搬送される段ボールシートの所定の加工位置に一致するように、加工ロールの駆動用モータを常に制御しなければならないため、段ボールシートの搬送速度を高速にすることが困難となり、生産効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、装置コストの増加や生産効率の低下を抑制しながら給紙部による段ボールシートの搬送遅れを抑制することで品質の向上を図る製函機及び段ボールシートの加工位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の製函機は、段ボールシートの上面と下面の少なくとも一方の面に接触して送り出す給紙ロールを有する給紙装置と、前記給紙装置から送り出された段ボールシートに対して加工を行う加工ロールを有する加工装置と、段ボールシートの搬送方向における前記加工装置の加工位置を調整する加工位置調整装置と、前記加工位置調整装置を制御する制御装置と、を備える製函機において、前記制御装置は、前記給紙装置から予め設定された所定搬送位置までの段ボールシートの搬送ずれ量を算出する搬送ずれ量算出部と、段ボールシートの加工終了後の前記搬送ずれ量に基づいて前記加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整する制御部と、を有する、ものである。
【0009】
従って、搬送ずれ量算出部が給紙装置から所定搬送位置までの段ボールシートの搬送ずれ量を算出し、制御部が段ボールシートの加工終了後の搬送ずれ量に基づいて加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整する。そのため、段ボールシートの加工を行うとき、前回に段ボールシートを加工したときに求めた搬送ずれ量を用いて、事前に加工装置による加工位置を調整することとなり、高精度な検出器や制御機器が不要となり、装置コストの増加を抑制することができると共に、段ボールシートの搬送速度を高速にすることが可能となって生産効率の低下を抑制することができる。
【0010】
本発明の製函機では、前記給紙装置から前記所定搬送位置までに前記給紙ロールの回転に伴って発生する実到達パルスを算出する実到達パルス算出部を設け、前記搬送ずれ量算出部は、前記給紙装置から前記所定搬送位置までの予め設定された基準到達パルスと前記実到達パルスとを比較して段ボールシートの搬送ずれ量を算出することを特徴としている。
【0011】
従って、実到達パルス算出部が給紙装置から送り出された段ボールシートの所定搬送位置までの実到達パルスを算出し、搬送ずれ量算出部が給紙装置から所定搬送位置までの基準到達パルスと実到達パルスとを比較して段ボールシートの搬送ずれ量を算出し、制御部が段ボールシートの加工終了後の搬送ずれ量に基づいて加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整する。そのため、段ボールシートの搬送ずれ量を高精度に算出することができる。また、何らかの原因で搬送速度が低下しても、パルスの発生間隔そのものも同様に低下するため、適正にパルスを算出することができる。
【0012】
本発明の製函機では、前記給紙装置から前記所定搬送位置までに前記加工ロールの回転に伴って発生する実到達パルスを算出する実到達パルス算出部を設け、前記搬送ずれ量算出部は、前記給紙装置から前記所定搬送位置までの予め設定された基準到達パルスと前記実到達パルスとを比較して段ボールシートの搬送ずれ量を算出することを特徴としている。
【0013】
従って、実到達パルス算出部が給紙装置から送り出された段ボールシートの所定搬送位置までの実到達パルスを算出し、搬送ずれ量算出部が給紙装置から所定搬送位置までの基準到達パルスと実到達パルスとを比較して段ボールシートの搬送ずれ量を算出し、制御部が段ボールシートの加工終了後の搬送ずれ量に基づいて加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整する。そのため、段ボールシートの搬送ずれ量を高精度に算出することができる。また、何らかの原因で搬送速度が低下しても、パルスの発生間隔そのものも同様に低下するため、適正にパルスを算出することができる。
【0014】
本発明の製函機では、前記給紙装置から前記所定搬送位置までの実到達時間を算出する実到達時間算出部を設け、前記搬送ずれ量算出部は、前記給紙装置から前記所定搬送位置までの予め設定された基準到達時間と前記実到達時間とを比較して段ボールシートの搬送ずれ量を算出することを特徴としている。また、給紙ロールと段ボールシートとの間で滑りが生じても、適正に実到達時間を計測することができる。
【0015】
従って、実到達時間算出部が給紙装置から送り出された段ボールシートの所定搬送位置までの実到達時間を算出し、搬送ずれ量算出部が給紙装置から所定搬送位置までの基準到達時間と実到達時間とを比較して段ボールシートの搬送ずれ量を算出し、制御部が段ボールシートの加工終了後の搬送ずれ量に基づいて加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整する。そのため、段ボールシートの搬送ずれ量を高精度に算出することができる。
【0016】
本発明の製函機では、同種類の段ボールシートを所定枚数だけ加工するとき、前記搬送ずれ量算出部は、前記所定枚数の段ボールシートの搬送ずれ量の平均値を算出し、前記制御部は、前記搬送ずれ量の平均値に基づいて前記加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整することを特徴としている。
【0017】
従って、搬送ずれ量算出部は、所定枚数の段ボールシートの搬送ずれ量の平均値を算出し、制御部は、搬送ずれ量の平均値に基づいて次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整することとなり、算出した搬送ずれ量がばらついても、その平均値に基づいて段ボールシートの加工位置を調整するため、段ボールシートの加工位置を高精度に調整することができる。
【0018】
本発明の製函機では、前記搬送ずれ量算出部が算出した段ボールシートの搬送ずれ量を記憶する記憶部が設けられ、前記搬送ずれ量算出部が新たな段ボールシートの搬送ずれ量を算出したとき、前記記憶部に記憶された前記搬送ずれ量を更新することを特徴としている。
【0019】
従って、搬送ずれ量算出部が段ボールシートの搬送ずれ量を算出すると、最新の段ボールシートの搬送ずれ量が記憶部に記憶されることとなり、加工する段ボールの種類が変更されても、常に最新の搬送ずれ量を用いて段ボールシートの加工位置を調整するため、段ボールシートの加工位置を高精度に調整することができる。
【0020】
本発明の製函機では、前記記憶部に段ボールシートの搬送方向長さに対する搬送ずれ量を表すマップが記憶され、前記搬送ずれ量算出部は、前記記憶部に記憶された前記マップを用いて段ボールシートの搬送ずれ量を算出することを特徴としている。
【0021】
従って、搬送ずれ量算出部は、記憶部に記憶された段ボールシートの搬送方向長さに対する搬送ずれ量を表すマップを用いて段ボールシートの搬送ずれ量を算出することから、搬送ずれ量を高精度に算出することができる。
【0022】
本発明の製函機では、段ボールシート特有の標準搬送ずれ量が設定され、前記制御部は、前記標準搬送ずれ量に前記搬送ずれ量を加算した搬送ずれ量補正値に基づいて前記加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整することを特徴としている。
【0023】
従って、標準搬送ずれ量に搬送ずれ量を加算した搬送ずれ量補正値に基づいて次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整することから、段ボールシート特有の搬送ずれ量を考慮して段ボールシートの加工位置を調整するため、段ボールシートSの加工位置を高精度に調整することができる。
【0024】
本発明の製函機では、前記加工装置として、段ボールシートに対して印刷を行う印刷部と、段ボールシートに対して表面に罫線加工を行うと共に溝切り加工を行う排紙部とを有し、前記印刷部と前記排紙部との間に前記所定搬送位置に到達した段ボールシートを検出する位置検出器が配置されることを特徴としている。
【0025】
従って、印刷部と排紙部との間に段ボールシートを検出する位置検出器を配置することから、例えば、位置検出器が光センサであるとき、印刷部と排紙部との空間部を移動する段ボールシートを高精度に検出することができる。
【0026】
本発明の製函機では、段ボールシートに対して印刷を行う印刷部と、段ボールシートに対して表面に罫線加工を行うと共に溝切り加工を行う排紙部と、段ボールシートに対して打ち抜き加工を施すダイカット部と、段ボールシートを折り畳んで端部を接合することで扁平形状をなす段ボール箱を形成するフォルディング部と、段ボール箱を計数しながら積み上げた後に所定数ごとに排出するカウンタエゼクタ部とを有し、前記加工位置調整装置は、前記印刷部と前記排紙部と前記ダイカット部による加工位置を調整することを特徴としている。
【0027】
従って、制御部は、段ボールシートの搬送ずれに基づいて、段ボールシートに対して印刷を行う位置と、段ボールシートに対して溝切り加工を行う位置と、段ボールシートに対して打ち抜き加工を施す位置とを調整することとなり、段ボールシートの加工精度を向上することができる。
【0028】
また、本発明の段ボールシートの加工位置調整方法は、給紙位置から予め設定された所定搬送位置までの段ボールシートの搬送ずれ量を算出する工程と、段ボールシートの加工終了後の前記搬送ずれ量に基づいて次に加工を行う段ボールシートの加工位置を調整する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0029】
従って、段ボールシートの加工を行うとき、前回に段ボールシートを加工したときに求めた搬送ずれ量を用いて、事前に加工装置による加工位置を調整することとなり、高精度な検出器や制御機器が不要となり、装置コストの増加を抑制することができると共に、段ボールシートの搬送速度を高速にすることが可能となって生産効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の製函機及び段ボールシートの加工位置調整方法によれば、高精度な検出器や制御機器が不要となり、装置コストの増加を抑制することができると共に、段ボールシートの搬送速度を高速にすることが可能となって生産効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本実施形態の製函機を表す概略構成図である。
【
図3】
図3は、製函機の制御系統を表すブロック図である。
【
図4】
図4は、給紙部の摩耗による搬送ずれ量を説明するための概略図である。
【
図5】
図5は、異なる種類の段ボールシートの製造過程における搬送ずれ量の補正方法を説明するための概略図である。
【
図6】
図6は、段ボールシートのシート長に対する補正量(搬送ずれ量)を表すマップである。
【
図7】
図7は、給紙部の使用時間に対する補正量(搬送ずれ量)を表すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る製函機及び段ボールシートの加工位置調整方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0033】
図1は、本実施形態の製函機を表す概略構成図である。
【0034】
本実施形態において、
図1に示すように、製函機10は、段ボールシートSを加工することで扁平形状をなす段ボール箱Bを製造するものである。この段ボールシートSは、表ライナと裏ライナとの間に波形をなす中芯が糊付けされて形成されたものである。製函機10は、段ボールシートS及び段ボール箱Bを搬送する方向(以下、搬送方向)Dに直線状をなして配置された給紙部11、印刷部21、排紙部31、ダイカット部41、フォルディング部51、カウンタエゼクタ部61を備えている。
【0035】
給紙部11は、鉛直方向に沿って積層された段ボールシートSを一枚ずつ送り出し、一定の速度で印刷部21に送るものである。この給紙部11は、給紙テーブル12と、シート送り出し機構13と、フィードロール14とを有している。給紙テーブル12は、多数の段ボールシートSを積み重ねて載置可能である。シート送り出し機構13は、複数の送り出しロールが段ボールシートSの下方に配置されて構成され、給紙テーブル12に支持された多数の段ボールシートSのうちの最下位置にある段ボールシートSを前方に送り出すことができる。フィードロール14は、送り出しロールにより送り出された段ボールシートSを印刷部21に供給することができる。
【0036】
印刷部21は、段ボールシートSの表面(上面)に多色刷り(本実施形態では、4色刷り)を行うものである。この印刷部21は、4つの印刷ユニット21a,21b,21c,21dが水平方向に直列をなして配置され、段ボールシートSの表面に4つのインキ色を使用して印刷を行うことができる。各印刷ユニット21a,21b,21c,21dは、ほぼ同様に構成され、印刷シリンダ22、インキ供給ロール(アニロックスロール)23、インキチャンバ24、受ロール25を有している。印刷シリンダ22は、その外周部に印版26が取付けられ、回転可能に設けられている。インキ供給ロール23は、印刷シリンダ22の近傍にて印版26に対接するように配置され、回転可能に設けられている。インキチャンバ24は、インキを蓄えるものであり、インキ供給ロール23の近傍に設けられている。受ロール25は、印刷シリンダ22との間で段ボールシートSを挟持することで、所定の印圧を付与しながら搬送するものであり、印刷シリンダ22の下方に対向して回転可能に設けられている。なお、図示しないが、各印刷ユニット21a,21b,21c,21dは、その前後に上下一対の送りロールが設けられている。
【0037】
排紙部31は、スロッタ装置を有し、段ボールシートSに対して、罫線加工を施すと共に溝切り加工を施すものである。この排紙部31は、第1罫線ロール32と、第2罫線ロール33と、スリッタヘッド34と、第1スロッタヘッド35と、第2スロッタヘッド36を有している。
【0038】
第1罫線ロール32は、円形状に形成され、段ボールシートSの搬送方向Dに直交する水平方向に所定間隔で複数(本実施形態では、4個)配置され、図示しない駆動装置により回転可能となっている。第2罫線ロール33は、円形状に形成され、段ボールシートSの搬送方向Dに直交する水平方向に所定間隔で複数(本実施形態では、4個)配置され、図示しない駆動装置により回転可能となっている。この場合、下側に配置された第1罫線ロール32は、段ボールシートSの裏面(下面)に罫線加工を施すものであり、下側に配置された第2罫線ロール33は、第1罫線ロール32と同様に、段ボールシートSの裏面(下面)に罫線加工を施すものであり、各罫線ロール32,33に対向する上方位置に、受ロール37,38が同期して回転可能に設けられている。
【0039】
スリッタヘッド34及び第1スロッタヘッド35は、円形状に形成され、段ボールシートSの搬送方向Dに直交する水平方向に所定間隔で複数(本実施形態では、5個)配置され、図示しない駆動装置により回転可能となっている。スリッタヘッド34は、1個で構成され、搬送される段ボールシートSにおける幅方向の端部に対応して設けられており、この段ボールシートSにおける幅方向の端部を切断することができる。第1スロッタヘッド35は、4個で構成され、搬送される段ボールシートSにおける幅方向の所定の位置に対応して設けられており、この段ボールシートSにおける所定の位置で溝切り加工を行うと共に、糊代片加工を行うことができる。第2スロッタヘッド36は、4個で構成され、搬送される段ボールシートSにおける幅方向の所定の位置に対応して設けられており、この段ボールシートSにおける所定の位置に溝切り加工を行うと共に、糊代片加工を行うことができる。この場合、スリッタヘッド34及び第1スロッタヘッド35は、対向する下方位置に下ヘッド39が同期して回転可能に設けられ、第2スロッタヘッド36は、対向する下方位置に下ヘッド40が同期して回転可能に設けられている。
【0040】
ダイカット部41は、段ボールシートSに対して、手穴等の打ち抜き加工を施すものである。このダイカット部41は、上下一対の送り駒42と、アンビルシリンダ43及びナイフシリンダ44を有している。送り駒42は、段ボールシートSを上下から挟持して搬送するものであり、回転可能に設けられている。アンビルシリンダ43及びナイフシリンダ44は、それぞれ円形状に形成され、図示しない駆動装置により同期して回転可能となっている。この場合、アンビルシリンダ43は、外周部にアンビルが形成される一方、ナイフシリンダ44は、外周部における所定の位置に刃物取付台(打ち抜き刃)が取付けられている。
【0041】
フォルディング部51は、段ボールシートSを搬送方向Dに移動させながら折り畳み、幅方向の両端部を接合して扁平状の段ボール箱Bを形成するものである。このフォルディング部51は、上搬送ベルト52と、下搬送ベルト53,54と、成形装置55とを有している。上搬送ベルト52及び下搬送ベルト53,54は、段ボールシートS及び段ボール箱Bを上下から挟持して搬送するものである。成形装置55は、左右一対の成形ベルトを有し、この成形ベルトにより段ボールシートSにおける幅方向の各端部を下方に折り曲げながら折り畳むものである。また、フォルディング部51は、糊付装置56が設けられている。この糊付装置56は、グルーガンを有し、所定のタイミングで糊を吐出することで、段ボールシートSにおける所定の位置に糊付けを行うことができる。
【0042】
カウンタエゼクタ部61は、段ボール箱Bを計数しながら積み重ねた後、所定数のバッチに仕分けした後、排出するものである。このカウンタエゼクタ部61は、ホッパ装置62を有している。このホッパ装置62は、段ボール箱Bが積み重ねられる昇降自在なエレベータ63を有し、このエレベータ63には、整形手段としての図示しない前当板と整角板とが設けられている。なお、ホッパ装置62の下方に、搬出コンベア64が設けられている。
【0043】
多数の段ボールシートSは、給紙部11の給紙テーブル12上に鉛直方向に沿って積み重ねられている。給紙部11にて、給紙テーブル12上に積み重ねられている多数の段ボールシートSは、まず、シート送り出し機構13により最下位置にある段ボールシートSが前方に送り出される。すると、この段ボールシートSは、フィードロール14により所定の一定速度で印刷部21に向けて供給される。
【0044】
印刷部21にて、各印刷ユニット21a,21b,21c,21dでは、インキ供給ロール23の表面にインキチャンバ24からインキが供給されており、印刷シリンダ22及びインキ供給ロール23が回転すると、インキ供給ロール23の表面のインキが印版26に転移される。そして、印刷シリンダ22と受ロール25との間に段ボールシートSが搬送されると、この段ボールシートSが印版26と受ロール25とにより挟持され、この段ボールシートSに印圧が付与されることでその表面に印刷が施される。印刷された段ボールシートSは、送りロールにより排紙部31に搬送される。
【0045】
排紙部31にて、まず、段ボールシートSが第1罫線ロール32を通過するとき、段ボールシートSの裏面側の裏ライナに罫線が形成される。また、段ボールシートSが第2罫線ロール33を通過するとき、第1罫線ロール32と同様に、段ボールシートSの裏面側の裏ライナに罫線が再形成される。次に、段ボールシートSがスリッタヘッド34を通過するとき、幅方向における一方の端部が切断される。また、段ボールシートSが各第1スロッタヘッド35を通過するとき、罫線の上流側の位置に溝が形成される。このとき、幅方向における他方の端部が切断される。また、段ボールシートSが第2スロッタヘッド36を通過するとき、罫線の下流側の位置に溝が形成される。このとき、幅方向における他方の端部が切断され、糊代片(接合片)が形成される。その後、罫線加工と溝切り加工が施された段ボールシートSは、ダイカット部41に搬送される。
【0046】
ダイカット部41にて、段ボールシートSは、アンビルシリンダ43とナイフシリンダ44との間を通過するとき、手穴(図示略)が形成される。但し、手穴加工は、段ボールシートSの種類に応じて適宜行われるものであり、手穴が不要のとき、この手穴加工を実施するための刃物取付台(打ち抜き刃)がナイフシリンダ44から取り外されており、段ボールシートSは、回転するアンビルシリンダ43とナイフシリンダ44の間を通過する。そして、手穴が形成された段ボールシートSは、フォルディング部51に搬送される。
【0047】
フォルディング部51にて、段ボールシートSは、上搬送ベルト52及び下搬送ベルト53,54により搬送方向Dに移動されながら、糊付装置56により糊代片により糊が塗布されてから、成形装置55により、罫線を基点として下方に折り畳まれる。この折り畳みが180度近くまで進むと折り畳み力が強くなり、糊代片とこの糊代片に重なる段ボールシートSの端部とが押えられて互いに密着され、段ボールシートSの両端部が接合され、段ボール箱Bとなる。そして、この段ボール箱Bは、カウンタエゼクタ部61に搬送される。
【0048】
カウンタエゼクタ部61にて、良品と検出された段ボール箱Bは、ホッパ装置62に送られる。このホッパ装置62に送られた段ボール箱Bは、搬送方向Dの先端部が前当板に当たり、整角板により整形された状態でエレベータ63上に積み重ねられる。そして、所定数の段ボール箱Bがエレベータ63上に積み重ねられると、このエレベータ63が下降し、所定数の段ボール箱Bが1バッチとなって搬出コンベア64により排出され、製函機10の後行程に送られる。
【0049】
ここで、上述した本実施形態の製函機10における給紙部11について詳細に説明する。
図2は、給紙部を表す概略構成図である。
【0050】
図2に示すように、給紙部11は、前述したように、給紙テーブル12とシート送り出し機構13とフィードロール(給紙ロール)14とを有している。シート送り出し機構13は、フロントガイド71と、バックストップ72と、複数の送り出しロール(給紙ロール)73と、格子形状をなす支持板74と、吸引装置75とを有している。フロントガイド71は、給紙テーブル12の前方に配置され、給紙テーブル12上に積み重ねられた多数の段ボールシートSの前端位置を位置決めすることができ、下端部と給紙テーブル12の上面との間に1枚の段ボールシートSが通過可能な隙間が確保されている。バックストップ72は、給紙テーブル12の後方に配置され、給紙テーブル12上に積み重ねられた多数の段ボールシートSの後端位置を位置決めすることができる。なお、図示しないが、給紙テーブル12上の段ボールシートSは、サイドガイドにより幅方向の位置が規制されている。
【0051】
複数の送り出しロール73は、給紙テーブル12に支持された段ボールシートSの下方に、段ボールシートSの搬送方向D及び幅方向に沿って複数配置されている。複数の送り出しロール73は、駆動装置(図示略)により駆動回転することができると共に、回転速度を増減することができる。支持板74は、複数の送り出しロール73の間に格子形状をなして配置されており、昇降機構76により昇降可能となっている。即ち、昇降機構76により支持板74が上昇位置にあるとき、段ボールシートSの下面が送り出しロール73と離間し、昇降機構76により支持板74が下降位置にあるとき、段ボールシートSの下面が送り出しロール73に接触し、段ボールシートSを前方に送り出すことができる。吸引装置75は、積み重ねられた段ボールシートSを下方、つまり、給紙テーブル12や送り出しロール73側に吸引するものである。
【0052】
上下一対のフィードロール14は、フロントガイド71より搬送方向Dの下流側に配置されており、駆動装置(図示略)により駆動回転することができる。フィードロール14は、送り出しロール73により給紙テーブル12から送り出された段ボールシートSを上下から挟持し、印刷部21に向けて搬送することができる。また、フィードロール14は、搬送方向Dの下流側に上搬送ロール(給紙ロール)77と下搬送コンベア78が設けられている。上搬送ロール77と下搬送コンベア78は、フィードロール14と共に段ボールシートSを上下から挟持して印刷部21に向けて搬送するものである。
【0053】
そのため、昇降機構76により支持板74が下降すると、回転する複数の送り出しロール73が給紙テーブル12に支持された多数の段ボールシートSのうちの最下位置にある段ボールシートSの下面に接触する。すると、この段ボールシートSは、複数の送り出しロール73により前方に送り出され、所定の速度まで加速される。そして、前方に送り出された段ボールシートSは、上下一対のフィードロール14及び上搬送ロール77と下搬送コンベア78により印刷部21(
図1参照)に供給される。一方、給紙テーブル12から段ボールシートSが送り出されると、昇降機構76により支持板74が上昇し、次の段ボールシートSの下面が複数の送り出しロール73に接触しないように支持する。
【0054】
ところで、給紙部11は、複数の送り出しロール73が給紙テーブル12上の段ボールシートSの下面に接触して前方へ送り出し、フィードロール14と上搬送ロール77及び下搬送コンベア78が段ボールシートSを印刷部21に搬送する。そのため、給紙ロールとしての送り出しロール73、フィードロール14、上搬送ロール77は、外周面が次第に摩耗し、外径が小さくなって周速が低下し、段ボールシートSの送り出し速度が低下してしまう。すると、段ボールシートSは、給紙部11から印刷部21への搬送が遅れ、印刷部21は、段ボールシートSの所定の位置に印刷を行うことが困難となる。
【0055】
そこで、本実施形態では、給紙部11における送り出しロール73、フィードロール14、上搬送ロール77に摩耗が発生し、給紙部11から印刷部21への搬送遅れが生じても、搬送遅れ量(搬送ずれ量)を補正することで、印刷部21が段ボールシートSの所定の位置に印刷を行うことを可能としている。
【0056】
【0057】
本実施形態の製函機10は、
図3に示すように、給紙部11と印刷部21と排紙部31とダイカット部41とフォルディング部51とカウンタエゼクタ部61に加えて、制御装置101を備えている。給紙部11と印刷部21と排紙部31とダイカット部41とフォルディング部51とカウンタエゼクタ部61は、それぞれ給紙制御部11Aと印刷制御部21Aと排紙制御部31Aとダイカット制御部41Aとフォルディング制御部51Aとカウンタエゼクタ制御部61Aが接続されている。制御装置101は、この給紙制御部11Aと印刷制御部21Aと排紙制御部31Aとダイカット制御部41Aとフォルディング制御部51Aとカウンタエゼクタ制御部61Aがそれぞれ接続されている。
【0058】
また、制御装置101は、操作部102が接続されている。操作部102は、オペレータが操作可能であって、各種のジョブデータを入力することができる。また、制御装置101は、記憶部103が接続されている。記憶部103は、操作部102から入力された各種のジョブデータを記憶することができる。また、制御装置101は、パルス検出器110と位置検出器111が接続されている。パルス検出器110は、ロータリエンコーダであり、例えば、送り出しロール73の駆動装置を構成するモータの回転に伴って発生するパルス、または、加工ロールとしての第1罫線ロール32や受ロール37などの駆動装置を構成するモータの回転に伴って発生するパルスをカウントし、パルス数を制御装置101に出力する。位置検出器111は、光電管などの光センサであり、印刷部21と排紙部31との間に配置されており、搬送される段ボールシートSを検出し、検出結果を制御装置101に出力する。
【0059】
制御装置101は、実到達パルス算出部121と、搬送ずれ量算出部122と、制御部123とを有している。実到達パルス算出部121は、給紙部(給紙装置)11から送り出された段ボールシートSの予め設定された所定搬送位置(位置検出器111による検出位置)までの実到達パルスを検出するものである。この実到達パルスとは、段ボールシートSの搬送方向Dにおける下流側の先端が給紙部11のフロントガイド71(
図2参照)を出てから、位置検出器111が段ボールシートSの先端を検出するまでの実際のパルス数である。パルス検出器110は、送り出しロール73のモータの回転に伴って発生するパルスをカウントしており、実到達パルス算出部121は、このパルスカウントと位置検出器111からの段ボールシートSの検出信号に基づいて実到達パルスを算出する。
【0060】
なお、本実施形態は、パルス検出器110を用いるものに限定されるものではない。例えば、実到達パルス算出部121に代えて実到時間算出部を設ける。実到達時間算出部は、給紙部11から送り出された段ボールシートSの所定搬送位置までの実到達時間を検出する。この実到達時間とは、段ボールシートSの搬送方向Dにおける下流側の先端が給紙部11のフロントガイド71(
図2参照)を出てから、位置検出器111が段ボールシートSの先端を検出するまでの実際の時間数である。この場合、例えば、給紙部11のフロントガイド71に、段ボールシートSの搬送方向Dにおける下流側の先端がフロントガイド71から出たことを検出する位置検出器を配置すればよい。実到達時間算出部は、2個の位置検出器111からの段ボールシートSの検出信号に基づいて実到達時間を算出する。
【0061】
搬送ずれ量算出部122は、給紙部11から所定搬送位置までの予め設定された基準到達パルス(時間)と実到達パルス(時間)とを比較して段ボールシートSの搬送ずれ量を算出するものである。この基準到達パルス(時間)とは、段ボールシートSの先端が給紙部11のフロントガイド71を出てから、位置検出器111が段ボールシートSの先端を検出する位置までの設計上の搬送パルス(時間)である。制御部123は、段ボールシートSの加工終了後の搬送ずれ量に基づいて加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整するものである。
【0062】
本実施形態の加工装置は、給紙部11から送り出された段ボールシートSに対して加工を行うものであり、印刷部21と排紙部31とダイカット部41とフォルディング部51とカウンタエゼクタ部61である。また、本実施形態の加工位置調整装置は、段ボールシートSの搬送方向Dにおける加工装置の加工位置を調整するものであり、印刷制御部21Aと排紙制御部31Aとダイカット制御部41Aである。具体的に、印刷制御部21Aは、印刷部21を制御することで、段ボールシートSの搬送方向Dにおける印刷位置を調整する。排紙制御部31Aは、排紙部31を制御することで、段ボールシートSの搬送方向Dにおける溝切り加工位置を調整する。ダイカット制御部41Aは、ダイカット部41を制御することで、段ボールシートSの搬送方向Dにおける打ち抜き加工位置を調整する。
【0063】
この加工位置調整装置による段ボールシートSの加工位置の調整方法について具体的に説明する。印刷部21では、インキが回転する印刷シリンダ22から段ボールシートSに転移して印刷が行われることから、印刷シリンダ22の回転位相を調整する。即ち、段ボールシートSの搬送ずれ量は、遅れ時間であることから、この遅れ時間に段ボールシートSの搬送速度を乗算して遅れ距離を算出する。この遅れ距離が後述する搬送ずれ量補正値となる。印刷制御部21Aは、搬送ずれ量補正値に基づいて印刷シリンダ22の回転位相を調整する。また、排紙制御部31Aは、搬送ずれ量補正値に基づいて溝切り加工位置を調整し、ダイカット制御部41Aは、搬送ずれ量補正値に基づいて打ち抜き加工位置を調整する。
【0064】
また、製函機10が同種類の段ボールシートSを所定枚数だけ加工するとき、搬送ずれ量算出部122は、所定枚数の段ボールシートSとの搬送ずれ量の平均値を算出し、制御部123は、搬送ずれ量の平均値に基づいて次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整する。この場合、次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整するとき、搬送ずれ量の平均値を用いずに、例えば、加工終了直前の1枚の搬送ずれ量、または、加工終了直前の複数枚の搬送ずれ量の平均値に基づいて次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整してもよい。
【0065】
ところで、給紙部11が段ボールシートSを送り出してから、所定搬送位置(位置検出器111による検出位置)までの搬送遅れ量は、送り出しロール73などの摩耗だけでなく、送り出しロール73、フィードロール14、上搬送ロール77と段ボールシートSとの間の滑りなどによっても発生する。そして、この滑りなどにより発生する搬送遅れ量は、段ボールシートSの種類(搬送方向Dにおける長さ、厚さ、材質など)によって変動する。そのため、送り出しロール73などが摩耗していない新品の状態にて、段ボールシートSの先端が給紙部11のフロントガイド71を出てから、位置検出器111が段ボールシートSの先端を検出するまでの実際の到達パルス(時間)を算出し、基準到達パルス(時間)からこの時間を減算することで標準搬送ずれ量を設定しておく。実際は、段ボールシートSの加工開始時に、印刷部21により試し刷り作業を実施し、このときに印刷ずれ量を調整することから、このときの印刷ずれ量を標準搬送ずれ量として設定する。この標準搬送ずれ量は、加工する段ボールシートSの種類ごとに設定されている。
【0066】
そのため、制御部123は、予め設定された標準搬送ずれ量に搬送ずれ量算出部122が算出した搬送ずれ量を加算した搬送ずれ量補正値に基づいて加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整する。このとき、制御部123は、搬送ずれ量補正値を印刷制御部21Aと排紙制御部31Aとダイカット制御部41Aに出力し、印刷制御部21Aと排紙制御部31Aとダイカット制御部41Aは、印刷部21による印刷位置、排紙部31による溝切り加工位置、ダイカット部41による打ち抜き加工位置を調整する。
【0067】
ここで、本実施形態の製函機10における段ボールシートの加工位置調整方法について具体的に説明する。
図4は、給紙部の摩耗による搬送ずれ量を説明するための概略図、
図5は、異なる種類の段ボールシートの製造過程における搬送ずれ量の補正方法を説明するための概略図、
図6は、段ボールシートのシート長に対する補正量(搬送ずれ量)を表すマップ、
図7は、給紙部の使用時間に対する補正量(搬送ずれ量)を表すマップである。
【0068】
本実施形態の段ボールシートの加工位置調整方法は、給紙位置から予め設定された所定搬送位置までの段ボールシートSの搬送ずれ量を算出する工程と、段ボールシートSの加工終了後の搬送ずれ量に基づいて次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整する工程とを有する。
【0069】
図3及び
図4に示すように、例えば、Aタイプの段ボールシートSを所定枚数だけ加工するときのジョブについて説明する。給紙部11が作動して段ボールシートSを送り出すとき、予め設計によって設定された基準シート搬送タイミングでは、時間t1にて、段ボールシートSの先端がフロントガイド71を出て、時間t2にて、段ボールシートSの先端が所定搬送位置(位置検出器111による検出位置)に到達し、時間t4にて、段ボールシートSの後端が所定搬送位置(位置検出器111による検出位置)に到達する。そのため、時間t1から時間t2までの段ボールシートSの搬送時間に検出したパルス数が基準到達パルスPsとなる。一方、実シート搬送タイミングでは、時間t1にて、段ボールシートSの先端がフロントガイド71を出て、時間t3にて、段ボールシートSの先端が所定搬送位置(位置検出器111による検出位置)に到達し、時間t5にて、段ボールシートSの後端が所定搬送位置(位置検出器111による検出位置)に到達する。そのため、時間t1から時間t3までの段ボールシートSの搬送時間に検出したパルス数が実到達パルスPaとなる。ここで、実到達パルスPaから基準到達パルスPsを減算することで、搬送遅れ時間としての搬送遅れ量ΔL(Δa)が算出される。そして、印刷制御部12Aは、印刷部21の印刷シリンダ22(
図1参照)の回転位相を搬送ずれ量ΔLだけずらすことで、段ボールシートSに対する印刷位置を遅れ側に変更する。
【0070】
そして、
図3及び
図5に示すように、例えば、Aタイプの段ボールシートSを所定枚数、Bタイプの段ボールシートSを所定枚数、Cタイプの段ボールシートSを所定枚数、再びAタイプの段ボールシートSを所定枚数だけ加工を行う各加工ジョブが設定されている。まず、Aタイプの段ボールシートSを所定枚数だけ加工するとき、制御装置101にて、制御部123は、予め設定された標準搬送ずれ量aに基づいて段ボールシートSの加工位置を調整する。そして、製函機10がAタイプの段ボールシートSを所定枚数だけ加工しているとき、実到達パルス算出部121は、給紙部11から送り出された段ボールシートSの所定搬送位置(位置検出器111による検出位置)までの実到達パルスPaを算出し、搬送ずれ量算出部122は、実到達パルスPaから基準到達パルスPsを減算して段ボールシートSの搬送ずれ量Δaを算出する。搬送ずれ量算出部122は、Aタイプの段ボールシートSの加工終了時に、Aタイプの段ボールシートSの各搬送ずれ量Δaの平均値Δa(1-n)/nを算出する。ここで、nは、検出した段ボールシートSの数であり、Δa(1-n)は、n個分の段ボールシートSの各搬送ずれ量Δaの合計値である。制御装置101は、Aタイプの段ボールシートSの各搬送ずれ量Δaの平均値Δa(1-n)/nを搬送ずれ量ΔLとして記憶部103に記憶する。このとき、制御装置101は、記憶部103に搬送ずれ量ΔLが既に記憶されていた場合、搬送ずれ量の平均値Δa(1-n)/nを新たな搬送ずれ量ΔLとして更新する。
【0071】
次に、Bタイプの段ボールシートSを所定枚数だけ加工するとき、制御部123は、予め設定された標準搬送ずれ量bに、記憶部103に記憶されている搬送ずれ量ΔLを加算した搬送ずれ量の補正値b+ΔLに基づいて段ボールシートSの加工位置を調整する。そして、製函機10がBタイプの段ボールシートSを所定枚数だけ加工しているとき、実到達パルス算出部121は、給紙部11から送り出された段ボールシートSの所定搬送位置(位置検出器111による検出位置)までの実到達パルスPbを算出し、搬送ずれ量算出部122は、実到達パルスPbから基準到達パルスPsを減算して段ボールシートSの搬送ずれ量Δbを算出する。搬送ずれ量算出部122は、Bタイプの段ボールシートSの加工終了時に、Bタイプの段ボールシートSの各搬送ずれ量Δbの平均値Δb(1-n)/nを算出する。制御装置101は、Bタイプの段ボールシートSの各搬送ずれ量Δbの平均値Δb(1-n)/nに記憶部103に既に記憶されている搬送ずれ量ΔLを加算して搬送ずれ量ΔLを更新し、記憶部103に記憶する。
【0072】
次に、Cタイプの段ボールシートSを所定枚数だけ加工するとき、制御部123は、予め設定された標準搬送ずれ量cに、記憶部103に記憶されている搬送ずれ量ΔLを加算した搬送ずれ量の補正値c+ΔLに基づいて段ボールシートSの加工位置を調整する。そして、製函機10がCタイプの段ボールシートSを所定枚数だけ加工しているとき、実到達パルス算出部121は、給紙部11から送り出された段ボールシートSの所定搬送位置(位置検出器111による検出位置)までの実到達パルスPcを算出し、搬送ずれ量算出部122は、実到達パルスPcから基準到達パルスPaを減算して段ボールシートSの搬送ずれ量Δcを算出する。搬送ずれ量算出部122は、Cタイプの段ボールシートSの加工終了時に、Cタイプの段ボールシートSの各搬送ずれ量Δcの平均値Δc(1-n)/nを算出する。ここで、Δc(1-n)は、n個分の段ボールシートSの各搬送ずれ量Δcの合計値である。制御装置101は、Cタイプの段ボールシートSの各搬送ずれ量Δcの平均値Δc(1-n)/nに記憶部103に既に記憶されている搬送ずれ量ΔLを加算して搬送ずれ量ΔLを更新し、記憶部103に記憶する。
【0073】
そして、再びAタイプの段ボールシートSを所定枚数だけ加工するとき、制御部123は、予め設定された標準搬送ずれ量aに、記憶部103に記憶されている搬送ずれ量ΔLを加算した搬送ずれ量の補正値a+ΔLに基づいて段ボールシートSの加工位置を調整する。そして、製函機10がAタイプの段ボールシートSを所定枚数だけ加工しているとき、実到達パルス算出部121は、給紙部11から送り出された段ボールシートSの所定搬送位置(位置検出器111による検出位置)までの実到達パルスPaを算出し、搬送ずれ量算出部122は、実到達パルスPaから基準到達パルスPsを減算して段ボールシートSの搬送ずれ量Δaを算出する。搬送ずれ量算出部122は、Aタイプの段ボールシートSの加工終了時に、Aタイプの段ボールシートSの各搬送ずれ量Δaの平均値Δa(1-n)/nを算出する。ここで、Δa(1-n)は、n個分の段ボールシートSの各搬送ずれ量Δaの合計値である。制御装置101は、Aタイプの段ボールシートSの各搬送ずれ量Δaの平均値Δa(1-n)/nに記憶部103に既に記憶されている搬送ずれ量ΔLを加算して搬送ずれ量ΔLを更新し、記憶部103に記憶する。
【0074】
ところで、段ボールシートSの搬送ずれ量ΔLは、段ボールシートSの搬送方向Dの長さにより変動する。即ち、段ボールシートSの搬送方向Dの長さに応じて送り出しロール73などが接触する時間が変動することから、段ボールシートSの搬送方向Dの長さが長いほど、段ボールシートSの搬送ずれ量ΔLが大きくなる。そのため、
図6に示すように、シート長(段ボールシートSの搬送方向Dの長さ)と、搬送ずれ量の補正値(搬送ずれ量ΔL)とが比例関係となる。また、
図7に示すように、例えば、送り出しロール73は、使用時間が長くなるほど、摩耗量が増加することから、送り出しロール73の使用時間と、搬送ずれ量の補正値(搬送ずれ量ΔL)とが比例関係となる。そのため、
図6に示すように、シート長に対する搬送ずれ量の補正値とのグラフの傾きは、送り出しロール73の使用時間が長くなるほど、大きく(実線から一点鎖線)なる。なお、
図6は、シート長に対する補正量を表すグラフ(比例関係)をマップとして表し、
図7は、使用時間に対する補正量を表すグラフ(比例関係)をマップとして表し、各マップを記憶部103に記憶させている。
【0075】
段ボールシートSのシート長に対する搬送ずれ量の補正値を表すマップと、送り出しロール73の使用時間に対する搬送ずれ量の補正値を表すマップとを記憶部103に記憶しておき、制御装置101は、この2つのマップを用いて段ボールシートSの搬送ずれ量ΔLを補正する。この場合、新品の送り出しロールの摩耗量は0であり、搬送ずれ量ΔLも0であることから、制御装置101は、送り出しロールを新品に交換した交換信号に基づいて記憶部103に記憶された搬送ずれ量ΔLを0にリセットするようにするとよい。なお、フィードロール14や上搬送ロール77についても同様である。
【0076】
このように本実施形態の製函機にあっては、段ボールシートSの上面と下面の少なくとも一方の面に接触して送り出す送り出しロール73を有する給紙部11と、給紙部11から送り出された段ボールシートSに対して加工を行う加工ロールを有する加工装置と、段ボールシートSの搬送方向Dにおける加工装置の加工位置を調整する加工位置調整装置と、加工位置調整装置を制御する制御装置101とを備え、制御装置101は、給紙部11から予め設定された所定搬送位置までの段ボールシートSの搬送ずれ量を算出する搬送ずれ量算出部122と、段ボールシートSの加工終了後の搬送ずれ量に基づいて加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整する制御部123とを有している。
【0077】
従って、搬送ずれ量算出部122が給紙部11から所定搬送位置までの段ボールシートSの搬送ずれ量を算出し、制御部123が段ボールシートSの加工終了後の搬送ずれ量に基づいて加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整する。そのため、段ボールシートSの加工を行うとき、前回に段ボールシートSを加工したときに求めた搬送ずれ量を用いて、事前に加工装置による加工位置を調整することとなり、高精度な検出器や制御機器が不要となり、装置コストの増加を抑制することができると共に、段ボールシートSの搬送速度を高速にすることが可能となって生産効率の低下を抑制することができる。
【0078】
本実施形態の製函機では、給紙部11から所定搬送位置までの実到達パルスを算出する実到達パルス算出部121を設け、搬送ずれ量算出部122は、給紙部11から所定搬送位置までの予め設定された基準到達パルスと実到達パルスとを比較して段ボールシートSの搬送ずれ量を算出している。基準到達パルスと実到達パルスとを比較して段ボールシートSの搬送ずれ量を算出することから、段ボールシートSと搬送ずれ量を高精度に算出することができる。また、何らかの原因で搬送速度が低下しても、パルスの発生間隔そのものも同様に低下するため、適正にパルスを算出することができる。
【0079】
本実施形態の製函機では、給紙部11から所定搬送位置までの実到達時間を算出する実到達時間算出部121を設け、搬送ずれ量算出部122は、給紙部11から所定搬送位置までの予め設定された基準到達時間と実到達時間とを比較して段ボールシートSの搬送ずれ量を算出している。基準到達時間と実到達時間とを比較して段ボールシートSの搬送ずれ量を算出することから、段ボールシートSと搬送ずれ量を高精度に算出することができる。また、送り出しロール73と段ボールシートSとの間で滑りが生じても、適正に実到達時間を計測することができる。
【0080】
本実施形態の製函機では、同種類の段ボールシートSを所定枚数だけ加工するとき、搬送ずれ量算出部122は、所定枚数の段ボールシートSの搬送ずれ量の平均値を算出し、制御部123は、搬送ずれ量の平均値に基づいて加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整する。従って、算出した搬送ずれ量がばらついても、その平均値に基づいて段ボールシートSの加工位置を調整するため、段ボールシートSの加工位置を高精度に調整することができる。
【0081】
本実施形態の製函機では、搬送ずれ量算出部122が算出した段ボールシートSの搬送ずれ量を記憶する記憶部103を設け、搬送ずれ量算出部122が新たな段ボールシートSの搬送ずれ量を算出したとき、記憶部103に記憶された搬送ずれ量を更新する。従って、搬送ずれ量算出部122が段ボールシートSの搬送ずれ量を算出すると、最新の段ボールシートSの搬送ずれ量が記憶部103に記憶されることとなり、加工する段ボールシートSの種類が変更されても、常に最新の搬送ずれ量を用いて段ボールシートSの加工位置を調整するため、段ボールシートSの加工位置を高精度に調整することができる。
【0082】
本実施形態の製函機では、記憶部103に段ボールシートSの搬送方向Dの長さに対する搬送ずれ量を表すマップが記憶され、搬送ずれ量算出部122は、記憶部103に記憶されたマップを用いて段ボールシートSの搬送ずれ量を算出する。従って、搬送ずれ量を高精度に算出することができる。
【0083】
本実施形態の製函機では、段ボールシートS特有の標準搬送ずれ量を設定し、制御部123は、標準搬送ずれ量に搬送ずれ量を加算した搬送ずれ量補正値に基づいて加工位置調整装置により次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整する。従って、標準搬送ずれ量に搬送ずれ量を加算した搬送ずれ量補正値に基づいて次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整することから、段ボールシートS特有の搬送ずれ量を考慮して段ボールシートSの加工位置を調整するため、段ボールシートSの加工位置を高精度に調整することができる。
【0084】
本実施形態の製函機では、加工装置として印刷部21と排紙部31が設定され、印刷部21と排紙部31との間に所定搬送位置に到達した段ボールシートSを検出する位置検出器111を配置する。従って、位置検出器111が光センサであり、印刷部21にベルトコンベアが設けられているとき、位置検出器111により印刷部21と排紙部31との空間部を移動する段ボールシートSを高精度に検出することができる。
【0085】
本実施形態の製函機では、印刷部21と、排紙部31と、ダイカット部41と、フォルディング部51と、カウンタエゼクタ部61とを設け、加工位置調整装置として、印刷制御部21Aと、排紙制御部31Aと、ダイカット制御部41Aを設けている。従って、制御部123は、段ボールシートSの搬送ずれに基づいて、段ボールシートSに対して印刷を行う位置と、段ボールシートSに対して溝切り加工を行う位置と、段ボールシートSに対して打ち抜き加工を施す位置とを調整することとなり、段ボールシートSの加工精度を向上することができる。
【0086】
また、本実施形態の段ボールシートの加工位置調整方法は、給紙位置から予め設定された所定搬送位置までの段ボールシートSの搬送ずれ量を算出する工程と、段ボールシートSの加工終了後の搬送ずれ量に基づいて次に加工を行う段ボールシートSの加工位置を調整する工程とを有する。
【0087】
従って、段ボールシートSの加工を行うとき、前回に段ボールシートSを加工したときに求めた搬送ずれ量を用いて、事前に加工装置による加工位置を調整することとなり、高精度な検出器や制御機器が不要となり、装置コストの増加を抑制することができると共に、段ボールシートSの搬送速度を高速にすることが可能となって生産効率の低下を抑制することができる。
【0088】
なお、上述した実施形態にて、パルス検出器110は、送り出しロール73や加工ロールとしての第1罫線ロール32や受ロール37などの駆動装置を構成するモータの回転に伴って発生するパルスをカウントするように構成したが、これらに限定されるものではない。例えば、フィードロール14、上搬送ロール77、第2罫線ロール33、その他の受けロールなどを適用し、パルス検出器110は、これらのロールの駆動装置を構成するモータの回転に伴って発生するパルスをカウントしてもよい、また、図示しないが、独立してパルス発生器を設置し、パルス発生器から発信されるパルスをカウントしてもよい。
【0089】
また、上述した実施形態にて、制御装置101は、送り出しロールを新品に交換した交換信号に基づいて記憶部103に記憶された搬送ずれ量ΔLを0にリセットするようにしたが、これに限定されるものではない。送り出しロールが磨耗した状態の所定の時点で搬送ずれ量ΔLを0にリセットするようにしてもよい。この場合、リセットスイッチを設け、送り出しロールが所定量磨耗した状態でオペレータがリセットスイッチを操作して搬送ずれ量をリセットし、調整作業を実施してもよい。
【符号の説明】
【0090】
11 給紙部
12 給紙テーブル
13 シート送り出し機構
14 フィードロール(給紙ロール)
21 印刷部(加工装置)
21A 印刷制御部(加工位置調整装置)
31 排紙部(加工装置)
31A 排紙制御部(加工位置調整装置)
32 第1罫線ロール(加工ロール)
34 スリッタヘッド
35 第1スロッタヘッド(上スロッタヘッド)
36 第2スロッタヘッド(上スロッタヘッド)
37 受けロール(加工ロール)
39,40 下ヘッド(下スロッタヘッド)
41 ダイカット部(加工装置)
41A ダイカット制御部(加工位置調整装置)
51 フォルディング部
61 カウンタエゼクタ部
71 フロントガイド
72 バックストップ
73 送り出しロール(給紙ロール)
74 支持板
75 吸引装置
77 上搬送ロール77(給紙ロール)
101 制御装置
102 操作部
103 記憶部
110 パルス検出器
111 位置検出器
121 実到達パルス算出部(実到達時間算出部)
122 搬送ずれ量算出部
123 制御部
S 段ボールシート