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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】運動補助装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20220204BHJP
   A63B 26/00 20060101ALI20220204BHJP
   E04H 3/14 20060101ALI20220204BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20220204BHJP
   A63B 22/00 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
A63B69/00 Z
A63B26/00
E04H3/14 Z
A61B5/1455
A63B22/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019027768
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020130591
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】乾 剛之
(72)【発明者】
【氏名】嶋 寿泰
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-35327(JP,A)
【文献】特開2008-188104(JP,A)
【文献】特開2007-20921(JP,A)
【文献】特開2018-117728(JP,A)
【文献】特開2007-7171(JP,A)
【文献】特開2017-153708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00
A63B 71/06
A61B 5/00
A61B 5/1455
A63B 22/00
A63B 26/00
E04H 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一人の使用者に対して個々に装着させる少なくとも一つの生体信号センサーと、報知手段を有し、
前記生体信号センサーは少なくともトレーニング中の前記使用者の血中酸素濃度を測定可能であり、
前記報知手段は、前記使用者の前記血中酸素濃度が所定値以下となった際に所定の報知を行うものであり、
通常想定される範囲の前記血中酸素濃度の値が検知された後に突然あり得ない異常値が検出された場合であって、当該異常値が検知される前の検出値が前記所定値を越えていた場合に、前記報知手段が前記所定の報知を行わないか、他の報知を行うことを特徴とする運動補助装置。
【請求項2】
少なくとも一人の使用者に対して個々に装着させる少なくとも一つの生体信号センサーと、報知手段を有し、
前記生体信号センサーは、少なくともトレーニング中の前記使用者の血中酸素濃度を測定可能であり、
前記報知手段は、前記使用者の前記血中酸素濃度が所定値以下となった際に所定の報知を行うものであり、
通常想定される範囲の前記血中酸素濃度の値が検知された後に突然あり得ない異常値が検出された場合であって、当該異常値が検知される前の検出値が前記所定値以下であった場合に、前記報知手段が前記所定の報知を行うことを特徴とする運動補助装置。
【請求項3】
少なくとも一人の使用者に対して個々に装着させる少なくとも一つの生体信号センサーと、報知手段を有し、
前記生体信号センサーは、少なくともトレーニング中の前記使用者の血中酸素濃度を測定可能であり、
前記報知手段は、前記使用者の前記血中酸素濃度が所定値以下となった際に所定の報知を行うものであり、
前記報知手段は、前記生体信号センサーの検出値が表示されるものであり、通常想定される範囲の値が検知された後に突然あり得ない異常値が検出された場合には、所定の条件を満足する前は前記異常値が検知される前の検出値が前記報知手段に表示されることを特徴とする運動補助装置。
【請求項4】
少なくとも一人の使用者に対して個々に装着させる少なくとも一つの生体信号センサーと、報知手段を有し、
前記生体信号センサーは、少なくともトレーニング中の前記使用者の血中酸素濃度を測定可能であり、
前記報知手段は、前記使用者の前記血中酸素濃度が所定値以下となった際に所定の報知を行うものであり、
前記生体信号センサーの検出値及び/又はトレーニング環境を前記使用者に表示する使用者用表示手段を有し、
前記使用者用表示手段の表示値を故意に実測値と異なるものとすることが可能であることを特徴とする運動補助装置。
【請求項5】
前記血中酸素濃度の閾値を2段階以上有し、前記報知手段は視覚的に表示する表示手段を含み、前記表示手段には前記閾値に応じて異なる表示がなされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の運動補助装置。
【請求項6】
トレーニングルームを有し、当該トレーニングルーム内を低酸素環境に調整することが可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の運動補助装置。
【請求項7】
前記トレーニングルーム内を低酸素環境に維持し、前記使用者の前記血中酸素濃度が一定水準以下となった場合に前記トレーニングルーム内の酸素濃度を上昇させることを特徴とする請求項に記載の運動補助装置。
【請求項8】
前記報知手段が前記トレーニングルーム外に置かれていることを特徴とする請求項6又は7に記載の運動補助装置。
【請求項9】
前記トレーニングルーム内の環境を表示する環境表示手段を有し、
当該環境表示手段には、前記トレーニングルーム内の酸素濃度と、当該酸素濃度に相当する標高のうち少なくとも1つが表示されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の運動補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持久力増強、心肺機能の向上、筋力増強その他のトレーニングを行う際に使用する運動補助装置に関するものである。本発明の運動補助装置は、特に模擬的な高地トレーニングを行う際に利用されることが望ましいものである。
【背景技術】
【0002】
通常の室内環境や、通常の屋外環境とは異なる環境を作り、その環境下でトレーニングを行うトレーニングルームが知られている。例えば高地を模した低酸素環境を創成し、その中でトレーニングを行うことによって持久力増強や心肺機能の向上が図られる。
特許文献1に開示された低酸素ルームは、人工的に作り出した低酸素環境下でトレーニングを行うことができるものである。
特許文献1に開示された低酸素ルームを使用する際、使用者は、定期的に運動を止めて血中酸素濃度を測定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4721150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、運動中の血中酸素濃度を継続的に測定することが出来ず、トレーナー等は使用者の運動中の血中酸素濃度を把握することができない。
【0005】
本発明は従来技術の上記の点に着目し、トレーナーが使用者の運動中の生理状態を監視することが可能な運動補助装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための態様は、少なくとも一人の使用者に対して個々に装着させる少なくとも一つの生体信号センサーと、報知手段を有し、前記生体信号センサーは少なくともトレーニング中の前記使用者の血中酸素濃度を測定可能であり、前記使用者の前記血中酸素濃度が所定値以下となった際に前記報知手段が所定の報知を行うことを特徴とする運動補助装置である。
上記した課題を解決するためのもう一つの態様は、少なくとも一人の使用者に対して個々に装着させる少なくとも一つの生体信号センサーと、報知手段を有し、前記生体信号センサーは、少なくともトレーニング中の前記使用者の血中酸素濃度を測定可能であり、前記報知手段は、前記使用者の前記血中酸素濃度が所定値以下となった際に所定の報知を行うものであり、通常想定される範囲の前記血中酸素濃度の値が検知された後に突然あり得ない異常値が検出された場合であって、当該異常値が検知される前の検出値が前記所定値を越えていた場合に、前記報知手段が前記所定の報知を行わないか、他の報知を行うことを特徴とする運動補助装置である。
記した課題を解決するためのさらにもう一つの態様は、少なくとも一人の使用者に対して個々に装着させる少なくとも一つの生体信号センサーと、報知手段を有し、前記生体信号センサーは、少なくともトレーニング中の前記使用者の血中酸素濃度を測定可能であり、前記報知手段は、前記使用者の前記血中酸素濃度が所定値以下となった際に所定の報知を行うものであり、通常想定される範囲の前記血中酸素濃度の値が検知された後に突然あり得ない異常値が検出された場合であって、当該異常値が検知される前の検出値が前記所定値以下であった場合に、前記報知手段が前記所定の報知を行うことを特徴とする運動補助装置である。
上記した課題を解決するためのさらにもう一つの態様は、少なくとも一人の使用者に対して個々に装着させる少なくとも一つの生体信号センサーと、報知手段を有し、前記生体信号センサーは、少なくともトレーニング中の前記使用者の血中酸素濃度を測定可能であり、前記報知手段は、前記使用者の前記血中酸素濃度が所定値以下となった際に所定の報知を行うものであり、前記報知手段は、前記生体信号センサーの検出値が表示されるものであり、通常想定される範囲の値が検知された後に突然あり得ない異常値が検出された場合には、所定の条件を満足する前は前記異常値が検知される前の検出値が前記報知手段に表示されることを特徴とする運動補助装置である。
上記した課題を解決するためのさらにもう一つの態様は、少なくとも一人の使用者に対して個々に装着させる少なくとも一つの生体信号センサーと、報知手段を有し、前記生体信号センサーは、少なくともトレーニング中の前記使用者の血中酸素濃度を測定可能であり、前記報知手段は、前記使用者の前記血中酸素濃度が所定値以下となった際に所定の報知を行うものであり、前記生体信号センサーの検出値及び/又はトレーニング環境を前記使用者に表示する使用者用表示手段を有し、前記使用者用表示手段の表示値を故意に実測値と異なるものとすることが可能であることを特徴とする運動補助装置である。
【0007】
本態様の運動補助装置では、例えばトレーナーや科学者が報知手段を見ることができる。
また本態様の運動補助装置では、使用者の血中酸素濃度が所定値以下となった際に報知手段が所定の報知を行う。例えば、血中酸素濃度が低下し、休憩をとった方が望ましい場合や、運動量を軽くした方が良いような場合に所定の報知を行い、その時期を知ることができる。あるいは、危険を伴いかねない様な場合に所定の報知を行い、安全を確保することができる。
【0008】
上記した態様において、前記血中酸素濃度の閾値を2段階以上有し、前記報知手段は視覚的に表示する表示手段を含み、前記表示手段には前記閾値に応じて異なる表示がなされることが望ましい。
【0009】
「異なる表示」の具体的内容は任意であるが、異なる文字表示や異なる絵の出現、地色や地模様の変化が考えられる。例えば、閾値を2段階に設け、血中酸素濃度が第一閾値以下になった場合には、注意を促す表示を出し、第二閾値以下になった場合には、警告を発する表示を出す。
本態様によって、トレーナー等はより細かい指導を行うことができる。
【0010】
上記した各態様において、前記血中酸素濃度の検出値が通常想定される範囲の血中酸素濃度の値が検知された後に突然異常値が検出された場合であって、前記異常値が検知される前の検出値が前記所定値を越えていた場合に、前記報知手段が前記所定の報知を行わないか、他の報知を行うことが望ましい。
【0011】
また、上記した各態様において、通常想定される範囲の血中酸素濃度の値が検知された後に突然異常値が検出された場合であって、前記異常値が検知される前の検出値が前記所定値以下であった場合に、前記報知手段が所定の報知を行うことが望ましい。
【0012】
上記したいくつかの態様は、トレーニング中に生体信号センサーが外れたり、適正位置からずれた場合を想定したものである。
即ち本態様では、生体信号センサーを身体に装着した状態で運動を行うから、生体信号センサーが外れたり、適正位置からずれる場合もある。例えば生体信号センサーが外れると、見かけ上の検出値が急激に低下し、報知手段が所定の報知を行ってしまうこととなる。しかしながら、例えば生体信号センサーが外れたり、適正位置からずれることは、たびたび起こり得ることであり、その度に報知が行われるとトレーニングに支障を来すことがある。
そこで本態様では、異常値が検知される前の検出値が前記した所定値を越えていた場合に報知手段が所定の報知を行わないか、他の報知を行うこととした。他の報知として、例えば生体信号センサーが外れていることを知らせる報知が考えられる。
またトレーニングの開始当初から生体信号センサーが外れている場合を除外する目的から、報知を行わないか他の報知を行う場合を「通常想定される範囲の血中酸素濃度の値が検知された後に突然異常値が検出された場合」に限定している。
なお異常値を検知する前の検出値が前記所定値以下であった場合は、使用者の血中酸素濃度が本当に低下しており、報知すべき状態であるから、通常通り所定の報知を行う。
【0013】
上記した各態様において、前記報知手段は前記生体信号センサーの検出値が表示されるものであり、通常想定される範囲の前記血中酸素濃度の値が検知された後に突然異常値が検出された場合には、所定の条件を満足する前は、前記異常値が検知される前の検出値が前記報知手段に表示されることが望ましい。この異常値が検知される前の検出値の表示は、継続して行われてもよく、断続的でもよく、一回のみであってもよい。
【0014】
前述した通り、生体信号センサーが外れたり、適正位置からずれる場合があり、この際に報知手段が異常値をそのまま表示すると、トレーニングに支障を来すことがある。
そこで本態様では、通常想定される範囲の血中酸素濃度の値を検知した後に突然異常値が検出された場合には、所定の条件を満足する前は、異常値が検知される前の検出値を表示することとした。
「所定の条件」は任意であるが、例えば一定時間の経過や、手動操作による解除が考えられる。また生体信号センサーの検出値が通常想定される範囲の値に戻った場合も、「所定の条件」に含めることができる。
【0015】
上記した各態様において、前記生体信号センサーの検出値及び/又はトレーニング環境を使用者に表示する使用者用表示手段を有することが望ましい。
【0016】
トレーニング環境は、例えば温度、湿度、周囲の酸素濃度、使用者に掛ける負荷等が考えられる。
本態様によると、使用者自身が自己のコンディションや、トレーニング環境を把握することができる。
【0017】
上記した態様において、前記使用者用表示手段の表示値を故意に実測値と異なるものとすることが可能であることが望ましい。
【0018】
本態様は、いわゆる偽薬効果に相当する効果を狙ったものである。
ここで偽薬効果とは、効能を有さない薬であっても患者が効能を有すると信じて服用すると、体に好ましい効果が現れる現象である。
例えば、過酷な低酸素環境であり、本来は苦しい条件下でトレーニングを行っているが、表示手段の表示を見ると、酸素濃度がそれほど低くない場合、使用者は楽にトレーニングを行っている様な錯覚に陥る。そのため使用者は苦しさから逃げることなくトレーニングに励み、高いトレーニング効果を得ることができる。
【0019】
上記した各態様において、トレーニングルームを有し、当該トレーニングルーム内を低酸素環境に調整することが可能であることが望ましい。
【0020】
本態様によると、擬似的に高地トレーニングを行うことができる。
【0021】
上記した各態様において、前記トレーニングルーム内を低酸素環境に維持し、前記使用者の前記血中酸素濃度が一定水準以下となった場合に前記トレーニングルーム内の酸素濃度を上昇させることが望ましい。
【0022】
酸素濃度を上昇させる方策としては、例えば外気の導入が考えられる。また、低酸素発生装置を停止してもよい。
本態様によると、仮に使用者の血中酸素濃度が低下して危険な状態となった場合でも、安全を確保することができる。また危険な状態に至らないまでも、血中酸素濃度の低下からトレーニング環境が過酷過ぎると思われる場合に適正な酸素濃度に修正し、トレーニングを継続することもできる。
【0023】
上記した各態様において、前記報知手段が前記トレーニングルーム外に置かれていることが望ましい。
【0024】
本態様によると、トレーナー等は、通常の環境下で報知手段を監視することができ、酸素が十分であって正常な判断力を有する精神状態で、使用者に適切な指示を行うことができる。
【0025】
上記した各態様において、前記トレーニングルーム内の環境を表示する環境表示手段を有し、当該環境表示手段には、前記トレーニングルーム内の酸素濃度と、当該酸素濃度に相当する標高の少なくとも1つが表示されることが望ましい。
【0026】
本態様によると、トレーニングルーム内の酸素濃度を感覚的に知ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の運動補助装置は、トレーナー等が使用者の運動中の生理状態を監視することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態の運動補助装置の斜視図である。
図2図1の運動補助装置のトレーニングルームの構成図である。
図3図1の運動補助装置で採用する生体信号センサーの斜視図である。
図4図1の運動補助装置の制御装置のブロック図である。
図5図1の運動補助装置で採用する使用者用表示手段の画面の表示である。
図6図1の運動補助装置で採用するトレーナー用表示手段の画面であり、トレーニング開始直後の表示を表す。
図7図1の運動補助装置で採用するトレーナー用表示手段の画面であり、トレーニング開始から一定時間経過後の表示を表す。
図8図1の運動補助装置で採用するトレーナー用表示手段の画面であり、トレーニング開始からさらに一定時間経過後の表示を表す。
図9図1の運動補助装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の運動補助装置1は、トレーニングルーム2を有している。そしてトレーニングルーム2内に各種の運動器具3が設置されている。
またトレーニングルーム2内であって、前記した運動器具3のそれぞれには、使用者用表示装置5が設置されている。
さらにトレーニングルーム2外にはトレーナーの控室があり、当該控室に制御装置7及びトレーナー用表示装置8がある。トレーナー用表示装置8は、後記する様に警告報知や注意喚起報知を行うものであり、報知手段としても機能する。また、トレーニングルーム2とトレーナー控室間の通話手段も有していてもよい。
本実施形態では、使用者はそれぞれ生体信号センサー10を装着してトレーニングルーム2内で運動する。
【0030】
以下、個別に説明する。
トレーニングルーム2は、数名の者が運動するに足る容積を持った部屋である。本実施形態で採用するトレーニングルーム2は、内部の環境を任意に調節することができる。
具体的には、トレーニングルーム2内の温度と湿度を調節することができる。特に本実施形態では、トレーニングルーム2内の酸素濃度を任意に調節することができる。
即ち図1の様にトレーニングルーム2内には温度センサー11、湿度センサー12、酸素濃度センサー13及び二酸化炭素濃度センサー15が設けられている。
【0031】
トレーニングルーム2内には公知の空調装置20があり、当該空調装置20に温度センサー11と湿度センサー12の信号が入力され、トレーニングルーム2内の温度及び湿度が所望の環境となる様に空調装置20が制御される。
【0032】
本実施形態の運動補助装置1では、酸素量調節装置21があり、ダクト22によってトレーニングルーム2と酸素量調節装置21とが接続されている。
酸素量調節装置21は、図2の様にエアーコンプレッサー25、低酸素発生装置26及び混合ボックス27を有している。
低酸素発生装置26は、公知の高分子分離膜方式の窒素ガス発生装置であり、エアーコンプレッサー25で加圧した空気を導入することによって酸素を分離し、大気に比べて窒素の割合が高い気体を排出するものである。
大気中の酸素割合は、約21パーセントであるが、低酸素発生装置26を通過させることによって酸素割合が、約8パーセントに低下する。
低酸素発生装置26は、高分子分離膜方式に限定されるものではなく、例えばPSA(吸着)式のものであってもよい。
【0033】
低酸素発生装置26を通過した低酸素の空気は、混合ボックス27に導入される。また混合ボックス27には、送風機28とフィルター30及びダンパー31が接続されており、送風機28によって外気が取り込まれて混合ボックス27に導入される。
そして混合ボックス27内で、低酸素の空気と外気が混合され、酸素量が調整されてトレーニングルーム2に供給される。
前記した様にトレーニングルーム2には、酸素濃度センサー13があり、酸素濃度センサー13の信号が制御装置7に入力される。そして制御装置7の信号によってダンパー31の開度が調整され、外気の混合割合を変更することによってトレーニングルーム2内の酸素濃度が調節される。
即ち酸素濃度センサー13の信号がダンパー31にフィードバックされ、トレーニングルーム2内の酸素濃度が所望の濃度に調節される。
【0034】
本実施形態では、運動器具3としてトレーニングルーム2内にトレッドミル(ランニングマシン)が5台設置されている。
運動器具3の種類や個数は限定されるものではなく、他の種類のトレーニングマシンであってもよい。
例えば、全身運動系の運動器具として、トレッドミルの他、フィットネスバイク、クロストレーナー、ステアクライマー等があり、これらがトレーニングルーム2内に設置されていてもよい。
また上半身運動系の運動器具として、アブドミナル、チェストプレス、ラットプルダウン、ショルダープレス等があり、これらがトレーニングルーム2内に設置されていてもよい。
さらに下半身運動系の運動器具として、レッグエクステンション、レッグカール、レッグプレス等があり、これらがトレーニングルーム2内に設置されていてもよい。
【0035】
トレーニングルーム2内に運動器具3を設置するか否かは任意であり、運動器具3はなくてもよい。例えばヨガやダンス、太極拳等を行うことを目的とする場合には、運動器具3は必ずしも必要ではない。
【0036】
使用者用表示装置5は、液晶その他の据え置き型の画面である。使用者用表示装置5は、据え置き型の画面に代わって、携帯型又はウェラブル型の表示装置であってもよい。
【0037】
生体信号センサー10は、パルスオキシメータの機能を備えている。ここでパルスオキシメータとは、血中酸素濃度を検知するものであり、経皮的動脈血酸素飽和度(SPO2)を測定するものである。
動作原理は公知の通りであり、光によって組織を透過する光を分析し、ヘモグロビンが酸素と結合している割合を求めるものである。
本実施形態で採用する生体信号センサー10は、図3に示すように、検知部35と制御部36を有している。そして検知部35が図3の様に使用者の指先に装着され、指先に光を当て、指先の組織を透過する光を分析してヘモグロビンが酸素と結合している割合を求め、血中酸素濃度を演算する。
また本実施形態では、生体信号センサー10によって心拍数も測定される。本実施形態では制御部36は、使用者の手首に装着される。
制御部36は、Bluetooth(登録商標)等の無線通信機能を有し、制御装置7に信号を送信することができる。
【0038】
制御装置7は、コンピュータであり、トレーナー用表示装置8は、コンピュータに外付けされた液晶その他の画面である。制御装置7は、例えば携帯端末(スマートフォン、タブレット)であってもよい。また、トレーナー用表示装置8を兼ねるものであってもよい。
【0039】
使用者用表示装置5及びトレーナー用表示装置8に表示される生理データは、使用者の血中酸素濃度と、心拍数である。また他に消費カロリーと、運動の積算時間等が表示される。
【0040】
制御装置7には、図4の様に温度センサー11、湿度センサー12、酸素濃度センサー13、二酸化炭素濃度センサー15、生体信号センサー10及び設定値入力装置40の信号が入力される。
ここで設定値入力装置40は、トレーニングルーム2内の目標酸素濃度等を入力するものである。
本実施形態では、制御装置7の出力側には、酸素量調節装置21、使用者用表示装置5及びトレーナー用表示装置8が接続されている。
【0041】
図5の様に、使用者用表示装置5には、環境表示欄42と生理データ表示欄43がある。環境表示欄42にはトレーニングルーム2内の環境が表示される。また生理データ表示欄43には、使用者個人の生理データが表示される。
即ち環境表示欄42には、トレーニングルーム2内の環境として、酸素濃度及び二酸化炭素濃度が表示される。なおこれに加えて、温度や湿度を表示してもよい。
またトレーニングルーム2の酸素濃度と同等の標高が表示される。例えば酸素濃度18.6パーセントの場合は、対応する標高として1000mが表示される。
さらに対応する標高をイメージする山道の画像等が表示される。
【0042】
生理データ表示欄43は、図5の様に6区画に分かれており、上から、生体信号センサー10のID、使用者の名前、血中酸素濃度、心拍数、運動強度/消費カロリー、及び運動の積算時間が表示される。
【0043】
一方、トレーナー用表示装置8には、図6の様に、現在トレーニング中の使用者の生理状態が一画面に表示される。
図6図7図8は、トレーナー用表示装置8の表示画面の例であり、表示画面には環境表示欄42と生理データ表示欄43がある。生理データ表示欄43は、使用者別に5区画に分かれている。各区画には使用者用表示装置5の生理データ表示欄43と同様の表示がなされる。
実施形態では、5人同時に運動補助装置1を使用することができるが、使用人数は限定されるものではない。例えば10人同時に運動補助装置1を使用することができる様に設計することもできる。この場合には、一画面に全員の生理データを表示せず、複数の画面に渡って表示してもよい。
【0044】
本実施形態では、村松氏と、早田氏及び嵐氏の3名がトレーニングルーム2内でトレーニングを行っている。
表示画面の第一区画には村松の名前と生理データが表示され、第二区画には早田の名前と生理データが表示され、第三区画には嵐の名前と生理データが表示される。他の2区画には何も表示されない。
トレーナー用表示装置8の環境表示欄42にもトレーニングルーム2内の環境が表示される。
【0045】
制御装置7は、前記した様にコンピュータであり、公知の通りCPUと記憶装置を有している。また制御装置7は、通信手段を有している。
制御装置7の記憶装置には、所定の処理プログラムが格納されている。制御装置7は、CPUと記憶装置の働きにより、酸素濃度調整機能、酸素濃度/標高演算機能、比較機能及び消費カロリー演算機能が発揮される。
なおトレーニングルーム2内の温度及び湿度は、空調装置20の制御装置によって調節される。
【0046】
また無線通信によって複数の生体信号センサー10の検知信号が制御装置7に入力される。制御装置7のプログラムには、2段階の閾値が設定されており、当該閾値と生体信号センサー10が検出した血中酸素濃度が制御装置7の比較機能によって比較される。
ここで2段階の閾値の内の第一閾値は、注意喚起用閾値であり、例えば血中酸素濃度95パーセントである。第二閾値は警告用閾値であり、例えば血中酸素濃度90パーセントである。
【0047】
そして生体信号センサー10の検知信号が注意喚起用閾値たる第一閾値以下に低下すると、表示装置5、8の表示が変化し、注意喚起の報知がなされる。本実施形態では、画面の一部が黄色に変わる。
即ちトレーニング開始直後は、例えば図6の様に、バックが白地である。トレーニングを続け、ある程度の時間が経過すると、疲労して血中酸素濃度が低下する。そして血中酸素濃度が94パーセントに低下して第一閾値以下に至ると、図7の様にトレーナー用表示装置8の血中酸素濃度の欄が白地から黄色地(薄い網かけで表示)に変わる。図示を省略するが、使用者用表示装置5の血中酸素濃度の欄についても、同様に変色する。
【0048】
時間が経過して生体信号センサー10が検知する血中酸素濃度がさらに88パーセントに低下し、警告用閾値たる第二閾値以下に低下すると、警告報知がなされる。即ち図8の様に、表示装置8の血中酸素濃度の欄が黄色地から赤色地(濃い網かけで表示)に変化する。図示を省略するが、使用者用表示装置5の血中酸素濃度の欄についても、同様に変色する。
【0049】
本実施形態の運動補助装置1では、トレーニング中の血中酸素濃度と心拍数が常時監視され、使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8に常時表示される。
ここで運動補助装置1に特有の制御として、生体信号センサー10の検出値が突然あり得ない異常値となった場合、異常値を検知する直前の数値が一時的に記憶され、使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8に表示される。また一定時間内に検出値があり得る範囲に戻ると、生体信号センサー10の検出値が使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8に表示される。
ただし数値の記憶は、過去に生体信号センサー10が正常範囲の値を検出した履歴がある場合に限られ、生体信号センサー10を装着直後に「0」や「エラー」等の異常値が出た場合には血中酸素濃度や心拍数の記憶は行われない。
【0050】
表示装置5、8の警告報知についても同様であり、記憶された数値に基づいて警告報知等の表示を維持したり、変化させる。
【0051】
上記の特有の制御をする理由について説明する。
本実施形態の運動補助装置1は、トレーニング中の血中酸素濃度と心拍数を生体信号センサー10で検出する。ここで使用者は、例えばランニング中であるから、手を振る等の動きがある。そのため生体信号センサー10が、使用者の指から外れてしまったり、ずれてしまうことがある。
生体信号センサー10が、外れたりずれたりしてしまうと、心拍数が検知できず、心拍数がゼロ表示となる場合がある。血中酸素濃度も同様であり、例えば数パーセントという様な異常値を検出する場合がある。異常値はエラーを含む。
【0052】
またトレーニング中に休憩をとる場合もあり、故意に生体信号センサー10を外す場合もある。この場合にも、心拍数が検知できず、心拍数がゼロ表示となる場合がある。また血中酸素濃度も例えば数パーセントという様な異常値を検出する場合がある。
この様な異常値は、相当に低い数値であり、第二閾値以下の数値である。そのため表示装置5、8に警告報知がなされることとなる。
しかしながら、生体信号センサー10が使用者の指から外れることは、トレーニング中に頻繁に起こり得ることであり、たびたび警告報知が出ると、使用者に不安感を与える。またトレーナーにとっても煩わしいこととなる。
【0053】
そこで本実施形態では、生体信号センサー10の検出値があり得ない異常値であった場合には、異常値を検知する直前の数値が一時的に記憶され、使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8に表示され続けることとした。また一定時間内に検出値が想定し得る範囲に戻ると、元の様に生体信号センサー10の検出値を表示することとした。
元の生体信号センサー10の検出値が、閾値以下でないならば、注意喚起の報知や警告報知が行われない。
既に注意喚起の報知や警告報知がなされている場合には、その状態が維持される。
【0054】
次に運動補助装置1の一連の制御を、図9のフローチャートを参照しつつ説明する。
トレーニングに先立って、トレーナーは、制御装置7に使用者の氏名を入力する。またトレーニングルーム2の酸素濃度を設定する。これらの設定は、設定値入力装置40を使用して行う。
その結果、酸素量調節装置21が起動し、トレーニングルーム2内の酸素濃度が設定濃度に低下する。また空調装置20を運転して、トレーニングルーム2内の温度及び湿度をトレーニングに適した値に調節する。
【0055】
運動補助装置1を使用してトレーニングを行う場合には、図1の様に使用者はトレーニングルーム2に入る。一方トレーナーは、控室に入る。
トレーニングルーム2内の使用者は、生体信号センサー10を指に装着する。そして生体信号センサー10側のBluetooth(登録商標)等の無線通信手段を起動し、制御装置7との通信を開始する。
制御装置7では、ステップ1で生体信号センサー10からの信号入力を待つ。そしてステップ2で、生体信号が正常範囲であることを確認する。
ステップ2は、生体信号センサー10が正常に装着されていることを確認する工程である。例えば心拍数が50から130程度の通常範囲であり、血中酸素濃度が98パーセント以上というような正常値を検知すればステップ3に移行する。
【0056】
ステップ3以降は、使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8の双方に生体信号の測定値が表示される。
具体的には、心拍数と血中酸素濃度が使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8の双方に表示される。
【0057】
続くステップ4では、生体信号の測定値、具体的には血中酸素濃度が異常値であるか否かが判定される。低酸素環境下で運動をすると、血中酸素濃度は低下傾向となるが、低下速度は緩やかであり、急激に低下することは通常ないと考えられる。
そのためステップ2で、血中酸素濃度が正常範囲の値であったにもかかわらず、ステップ4で急に血中酸素濃度が異常値まで低下したと判断された場合は、生体信号センサー10が外れたか、位置がずれたこと等が原因であると、通常考えられる。
【0058】
ステップ4で、生体信号が異常値であると判定された場合には、ステップ5に移行し、直前の生体信号のデータが保持される。具体的には、正常時の血中酸素濃度と心拍数が記憶・保持され、その数値が使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8の双方に一定時間表示され続ける。
即ちステップ6で異常値が検出されてから一定時間が経過して、タイマが計時を終了するまで、正常時の血中酸素濃度と心拍数が使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8の双方に表示され続ける。データを記憶・保持する時間は任意であり、変更することができるが、概ね10分から40分程度である。
【0059】
なお、一定時間が経過するまでの間、異常値でない生体信号が検出されるのを待ち、ステップ6とステップ7を繰り返す。
即ち生体信号センサー10が正常に生体信号を検出できる状態になるのを待つ。
一定時間の間待ったにも係わらず、生体信号として異常値が検出され続ける場合は、生体信号を正確に検出できる状態に復活する見込みが薄いと判断し、生体信号センサー10を付けなおすように促す旨の表示を行う。実際には、生体信号センサー10を付け直す必要があることを、トレーナーが使用者に知らせることとなる。
【0060】
一定時間が経過するまでに生体信号として異常値でない値を検出した場合は、記憶値に代わって、生体信号の実測値を使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8に表示する。また、ステップ7からステップ8に進み、生体信号が第一閾値以下であるかどうかを判断する。
【0061】
前記したステップ4で、生体信号の値が異常値でない場合もステップ8に進み、生体信号が一定値以下かどうかを判断する。具体的には、血中酸素濃度が第一閾値以下となるか否かを判断する。
血中酸素濃度が第一閾値よりも高い濃度である場合には、制御はステップ4に戻り、トレーニングが続けられる。
血中酸素濃度が第一閾値以下の濃度である場合には、ステップ9に移行し、生体信号が第二閾値以下であるかを判断する。
要するに、ステップ4、ステップ8、ステップ9で、生体信号の値が、異常値であるか、第一閾値以下であって第二閾値よりも上か、第二閾値以下であるか、を判断する。
ステップ9がNOである場合には、生体信号は、第一閾値以下であって第二閾値よりも高い状態であり、ステップ10に移行して注意喚起表示(注意喚起報知)を行う。ステップ9がYESである場合は、生体信号は、第二閾値以下であるから、ステップ11に移行して警告表示(警告報知)を行う。
【0062】
ステップ10の後、ステップ11の後は、ステップ12に移行し、生体信号が第一閾値を上回るまで回復したか否かを判断する。即ちステップ12で生体信号が健康な値に回復したか否かを判断する。
健康値に回復していない場合には、ステップ4に戻る。その後、生体信号が第一閾値以下であって第二閾値よりも高い状態である場合は、ステップ10に移行して注意喚起表示(注意喚起報知)が維持されるか、注意喚起表示に変更される。また生体信号が第二閾値以下である場合は、ステップ11に移行して警告表示(警告報知)が維持されるか、警告表示に変更されることとなる。
また注意喚起表示や、警告表示がなされている状態の際に、例えば生体信号センサー10が指から外れ、異常値を検知した場合は、ステップ5で閾値以下のデータが保持され、その値が使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8に表示され続ける。また注意喚起表示や警告表示は、そのまま維持される。
【0063】
ステップ12で、生体信号が第一閾値を上回るまで回復したと判断された場合には、ステップ13に移行し、警告表示を解除し、通常の表示を行う。そしてステップ4に戻る。なお、トレーニングは任意のタイミングで終了することができる。
【0064】
以上説明した中で、第一閾値の値及び第二閾値の値は、固定値であっても良いが、手動で個別に設定できる構成としてもよい。
即ち健康な成人の血中酸素濃度は個人差が少ないので、第一閾値の値及び第二閾値の値を固定値としてもよいが、厳しく鍛えられた競技者の血中酸素濃度やその低下傾向は通常の成人とは異なる場合もある。またトレーニングルーム2内の酸素濃度によっても、使用者の血中酸素濃度やその低下傾向が異なる。そのため個人の身体的特徴や、競技経験の有無、トレーニングルーム2内の酸素濃度に応じて、第一閾値の値及び第二閾値の値を変更してもよい。
【0065】
以上説明した実施形態では、閾値を2段階に規定したが、3段階以上に規定してもよい。例えば、負荷が軽すぎる状態を示す閾値を設けてもよい。閾値は一つでもよい。
【0066】
以上説明した実施形態では、表示装置5、8の血中酸素濃度の地色を血中酸素濃度に応じて変えたが、閾値以下となった場合に、特別な図柄を表出させてもよい。また音声やブザーの様な聴覚に訴える報知を採用したり、視覚表示と聴覚表示を併用してもよい。
【0067】
また血中酸素濃度が閾値以下となった場合に、トレーニングルーム2内の酸素濃度を上昇させてもよい。
例えば使用者の血中酸素濃度が第一閾値以下となった場合には、使用者の負担を軽減するために、酸素濃度をいくらか上げて、トレーニングを続けてもよい。
使用者の血中酸素濃度が第二閾値以下となった場合には、安全を確保するために、酸素量調節装置21を停止し、トレーニングルーム2内の酸素濃度を大気状態に戻してもよい。
【0068】
トレーニングルーム2内の酸素濃度の設定は、希望の割合をパーセントで指定してもよい。また本実施形態の運動補助装置1は、擬似的な高地トレーニングを行うものであるから、希望する標高を入力してもよい。例えば標高1000mを入力すると、トレーニングルーム2内がこの標高に相当する酸素濃度たる18.6パーセントに調節される。
【0069】
使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8の表示値は、同じであることが原則であるが、故意に両者に差を付けることができる構成としてもよい。
即ち、トレーナー用表示装置8には、トレーニングルーム2内の温度、湿度、酸素濃度等の環境を正確に表示する。これに対して、使用者用表示装置5には、例えば温度や湿度を低めに表示し、あたかも涼しい環境で走っているかの様な認識を与える。また使用者用表示装置5には、酸素濃度を実際よりも高めに表示する。また、生理データ表示欄43の項目を低めに表示したり、高めに表示したりしてもよい。
そうすることにより、使用者に楽なトレーニングであるかの様な認識を与え、がんばりを引き出す。
【0070】
以上説明した実施形態では、使用者用表示装置5を使用者ごとに設置したが、例えばトレーニングルーム2内に大きな表示装置を設置して、全員の測定値を表示してもよい。またトレーニングルーム内の環境だけを別の大きな表示装置に表示してもよい。
また、トレーナー用表示装置8を控室ではなく、トレーニングルーム2内に設け、トレーナーがトレーニングルーム2内でトレーニング状況を監視するようにしてもよい。
使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8を一つの表示装置として構成してもよい。この場合は、トレーナー用表示装置8が使用者用表示装置5の機能を兼ねることとなる。使用者用表示装置5とトレーナー用表示装置8の双方に生体信号の測定値を表示するのではなく、いずれか一方に測定値を表示するようにしてもよい。
【0071】
以上説明した実施形態では、使用者の生理データとして、心拍数と血中酸素濃度を測定したが、これに加えて、呼吸数、血圧、体温を測定してもよい。あるいは幾つかの項目を省略してもよい。
【0072】
以上説明した実施形態では、トレーニングルーム2内に二酸化炭素濃度センサー15が設けられている。二酸化炭素濃度センサー15が高濃度の二酸化炭素を検知した場合には、換気を行うか、或いはトレーニングルーム2内の酸素濃度を上げることが望ましい。
トレーニング中の生理データは、保存されることが望ましい。生理データを保存することによって、後日のトレーニングメニュー作成の資料とすることができる。
【0073】
以上説明した実施形態では、生体信号センサー10を手の指に装着したが、足や胸等の部位に装着するものであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 運動補助装置
2 トレーニングルーム
3 運動器具
5 使用者用表示装置
7 制御装置
8 トレーナー用表示装置(報知手段)
10 生体信号センサー
13 酸素濃度センサー
21 酸素量調節装置
26 低酸素発生装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9