(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】膨張可能なコーティング組成物、およびその使用
(51)【国際特許分類】
C09D 131/04 20060101AFI20220121BHJP
C09D 123/08 20060101ALI20220121BHJP
C09D 125/14 20060101ALI20220121BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20220121BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220121BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220121BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220121BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220121BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
C09D131/04
C09D123/08
C09D125/14
C09D133/00
C09D5/02
C09D7/65
C09D7/63
B65D65/40 D
B32B27/18 Z
(21)【出願番号】P 2019202225
(22)【出願日】2019-11-07
(62)【分割の表示】P 2017503496の分割
【原出願日】2015-07-21
【審査請求日】2019-12-05
(32)【優先日】2014-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】フアン、 テンジン
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン、 クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ワスキ、 ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲッティー、 クリス
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-154589(JP,A)
【文献】特開2006-291137(JP,A)
【文献】国際公開第2014/051876(WO,A1)
【文献】特開2004-083603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D,B65D,B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多基材であって、
-第1の基材、
-第2の基材、および
-組成物であって、
硬化前の状態において、
(a)乳化重合により調製された
、酢酸ビニルエチレン分散物、ポリ酢酸ビニル、ビニルアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される水性ポリマー;
(b)T
0(膨張開始温度)およびT
m(最大膨張温度)を有する複数の膨張可能なミクロスフェアを、
硬化前の組成物を基準として10~40重量%;および
(c)
粘着付与剤、可塑剤、ワックス分散添加剤、防腐剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤
を含む、組成物
を含み、
前記水性ポリマーが、膨張可能なミクロスフェアのT
0およびT
mの中間点:(T
m+T
0)/2において、0.16MPa以上0.3MPa未満の動的貯蔵弾性率、および0.35より大きいtanδを有する、多基材。
【請求項2】
前記組成物が、
硬化前の組成物から、2500%を超える体積膨張が可能である、
請求項1に記載の多基材。
【請求項3】
前記水性ポリマーが、0.2MPa未満の動的貯蔵弾性率を有し、tanδが0.4より大きい、請求項
1又は2のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項4】
前記膨張可能なミクロスフェアが、ポリマーシェルおよび炭化水素コアを有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項5】
前記組成物が、消泡剤、湿潤剤、界面活性剤、着色剤、架橋剤、防腐剤、充填剤、顔料、染料、安定剤、レオロジー調整剤、ポリビニルアルコール、またはこれらの混合物をさらに含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項6】
前記組成物が、30乾燥重量%以下の前記膨張可能なミクロスフェアを含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項7】
前記膨張可能なミクロスフェアが、80℃未満のT
0を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項8】
前記膨張可能なミクロスフェアが、90℃未満のT
0を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項9】
前記膨張可能なミクロスフェアが、150℃を超えるT
mを有する、請求項1~
8のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項10】
前記膨張可能なミクロスフェアが、130℃を超えるT
mを有する、請求項1~
8のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項11】
前記添加剤が
、ワックス分散添加剤
を含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項12】
前記ワックス分散添加剤が、100℃未満の融点を有する、請求項
1~11のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項13】
前記ワックス分散添加剤が、パラフィン、蜜蝋、合成ポリエチレンワックス、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項
12に記載の多基材。
【請求項14】
前記第1の基材が、繊維板、チップボード(合板)、波形ボード(段ボール)、波形基材、固体漂白ボード、固体漂白亜硫酸ボード、固体未漂白ボード、裏白チップボード、クラフト紙、クラフトボード、コート紙、バインダーボード、低減基本重量(軽量化)基材、金属紙、金属板紙、箔、プラスチック、またはプラスチックフィルムであり、
前記第2の基材が、繊維板、チップボード(合板)、波形ボード(段ボール)、波形基材、固体漂白ボード、固体漂白亜硫酸ボード、固体未漂白ボード、裏白チップボード、クラフト紙、クラフトボード、コート紙、バインダーボード、低減基本重量(軽量化)基材、金属紙、金属板紙、箔、プラスチック、またはプラスチックフィルムである、請求項1~
13のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項15】
保護パッケージである、請求項1~
14のいずれか1項に記載の多基材。
【請求項16】
封筒、ピロー、またはガセット袋の形態の保護パッケージである、請求項
15に記載の多基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護パッケージ用の耐衝撃性および/または断熱性コーティング組成物に関する。このコーティング組成物は、熱または放射線のトリガーがあると、体積で少なくとも2500%膨張する。このコーティング組成物でコーティングされたパッケージは、耐衝撃性、高強度、断熱性および軽量化を備える。特に、本発明は、保護パッケージとして輸送または郵送中に壊れやすい、および/または腐敗しやすい物を収容する封筒、ピロー、または包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の広く使用されている保護包装材料としては、衝撃および/または断熱材として有用である様々な詰物材料または充填材料がある。例えば、単独で、または発泡“ピーナッツ”と共に使用される、プラスチック製のバブルラップまたは発泡挿入物で裏打ちされた包装袋、およびバブルラップが、壊れやすい物を出荷するために使用される。また、外側の小袋と内側の膨張ライナーとを有する郵送用容器(封筒)が利用可能である。しかしながら、それらは大きさがかさばっているか、または、US2011/019121に記載されているように、ライナー中に空気を強制的に密封するために特別な機械が必要である。
【0003】
従来の保護包装材料の大部分はプラスチックで作られているので、それらは生分解せず、したがって環境に悪影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、再生可能および/またはリサイクル可能な基材に耐衝撃性、高強度、および軽量化を与えるコーティング組成物を使用することにより、保護包装を改善することを目的とする。本発明は、より環境的かつ経済的に健全な、壊れやすい、および/または腐敗しやすい物を出荷するための保護パッケージを提供する。本発明はまた、容易に利用できる器具、例えば、オーブンおよびマイクロ波により、特別な機械への依存を最小限にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、耐衝撃性、高強度、断熱性、および軽量化を与える保護パッケージ用のコーティング組成物に関する。本発明は、さらに、基材上に塗布されたコーティング組成物を含む物品を提供する。コーティング組成物は、熱または放射線のトリガーがあると、体積で少なくとも2500%膨張する。体積が膨張した物品は、実質的に少ない量のプラスチック材料で、輸送または郵送中に壊れやすい、および/または腐敗しやすい物を収容することができる。
【0006】
一実施形態では、乳化重合により調製された水性ポリマー;T0(膨張開始温度)およびTm(最大膨張温度)を有する複数の膨張可能なミクロスフェア;および任意に添加剤を含むコーティング組成物が提供される。水性ポリマーは、膨張可能なミクロスフェアのT0およびTmの中間点:(Tm+T0)/2で、0.3MPa未満の弾性率と、0.35より大きいtanδを有する。
【0007】
別の実施形態は、(1)乳化重合により調製された水性ポリマーと、T0およびTmを有する複数の膨張可能なミクロスフェアとを含む組成物を調製する工程、(2)紙、板紙、木材、または箔である基材上に前記コーティング組成物を塗布する工程、(3)前記コーティング組成物を乾燥させて、水を実質的に除去する工程、および、(4)前記組成物を膨張させる工程を含む、保護包装品を形成する方法を提供する。水性ポリマーは、0.3MPa未満の弾性率を有し、膨張可能なミクロスフェアのT0およびTmの中間点:(Tm+T0)/2でのtanδは0.35より大きい。乾燥温度はT0未満であり、膨張温度はT0以上である。
【0008】
さらに別の実施形態は、基材と、乳化重合により調製された水性ポリマー;T0およびTmを有する複数の膨張可能なミクロスフェア;および任意に添加剤を含むコーティング組成物とを含む保護包装品を対象とする。水性ポリマーは、膨張可能なミクロスフェアのT0およびTmの中間点:(Tm+T0)/2で、0.3MPa未満の弾性率と、0.35より大きいtanδを有する。基材は、紙、板紙、木材、金属紙、金属板紙または箔である。いくつかの実施形態では、基材は、再生または再生可能プラスチックまたはプラスチックフィルムであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、このコーティング組成物を加熱、またはコーティング組成物に放射線を照射すると、耐衝撃性、高強度、断熱性、および軽量化を与えるコーティング組成物を提供する。このコーティング組成物、および、このコーティング組成物を用いて作製された物品は、より環境にやさしく、例えば、プラスチック廃棄物を減少させる。
【0010】
本発明は、水性ポリマー、T0およびTmを有する複数の膨張可能なミクロスフェア、および任意に添加剤を含む保護パッケージ用のコーティング組成物が、耐衝撃性、高強度、および軽量化を与えるという発見に基づく。本明細書に記載のコーティング組成物は、保護パッケージのリサイクル可能な基材、および再生可能な基材に塗布することができ、コーティング組成物を加熱、またはコーティング組成物に放射線を照射すると、膨張可能なミクロスフェアが膨張する。ここで有用な保護包装製品としては、嵩高い包装材料を使用することなく、輸送または郵送中に壊れやすい、および/または腐敗しやすい物を収容する可撓性の封筒またはピローが挙げられる。
【0011】
コーティング組成物は、任意の数の材料から作製することができる。好ましくは、コーティング組成物は、乳化重合により調製された水性ポリマー;T0およびTmを有する複数の膨張可能なミクロスフェア;および任意にワックス分散添加剤を含む。水性ポリマーは、膨張可能なミクロスフェアのT0およびTmの中間点:(Tm+T0)/2で0.3MPa未満の弾性率を有し、0.35より大きい(Tm+T0)/2でのtanδを有する。コーティング組成物は、さらに、1種以上の防腐剤、粘着付与剤、可塑剤、湿潤剤または充填剤を含むことができる。所望に応じて、コーティング組成物、およびコーティング組成物の膨張特性に悪影響を及ぼさない他の材料を使用することができる。
【0012】
コーティング組成物は、乳化重合により調製された水性ポリマーを含む。エマルションポリマーは、コーティング組成物中に任意の量で存在することができ、組成物の硬化前に、コーティング組成物の重量の約50重量%~約99.5重量%、好ましくは約50重量%~約70重量%の量で存在することが望ましい。エマルションポリマーに依存して、エマルションポリマーに基づく固形分レベルは、約40重量%から約60重量%まで変化する。
【0013】
水性ポリマーは、水により高度に可塑化できるように選択することができる。これにより、加熱中のミクロスフェアの効率的な膨張が可能になる。エマルションポリマーは、親水性保護コロイドによって安定化されていることが好ましい。乳化重合によって調製される水性ポリマーは、単一グレードであってもよいし、合成エマルションポリマーまたは天然由来のポリマーの混合物であってもよい。乳化重合によって調製される水性ポリマーは、酢酸ビニルエチレン分散物、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルポリビニルアルコール、デキストリン安定化ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニルエチレン共重合体、ビニルアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、スチレンブチルゴム、ポリウレタン、およびこれらの混合物などの、任意の所望のポリマー成分を含むことができる。特に好ましいエマルションポリマー成分は、酢酸ビニルエチレン分散物、ビニルアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、およびポリ酢酸ビニルである。
【0014】
一実施形態では、水性ポリマーは、膨張可能なミクロスフェアのT0およびTmの中間点:(Tm+T0)/2で、0.3MPa未満の弾性率を有する。特に明記しない限り、全ての報告された弾性率測定は、ASTM D5026に従って行った。別の実施形態では、水性ポリマーは、膨張可能なミクロスフェアの(Tm+T0)/2で、0.35より大きいtanδを有する。
【0015】
コーティング組成物は、さらに、ポリマーシェルと炭化水素コアを有する複数の予め膨張された、または膨張可能なミクロスフェアを含む。予め膨張されたミクロスフェアは完全に膨張されていて、さらなる膨張をする必要はない。本発明において有用な膨張可能なミクロスフェアは、熱および/または放射エネルギー(例えば、マイクロ波、赤外線、高周波、および/または、超音波エネルギーなど)の存在下で、大きさを膨張することができるべきである。本発明において有用なミクロスフェアとしては、例えば、炭化水素コアとポリアクリロニトリルのシェルを有するもの(DUALITE(登録商標)という商品名で販売されているものなど)、他の同様のミクロスフェア(EXPANCEL(登録商標)という商品名で販売されているものなど)などの熱膨張性ポリマーのミクロスフェアなどがある。膨張可能なミクロスフェアは、例えば直径が約12μm~約30μmなどの、任意の膨張していない大きさを有することができる。熱の存在下で、本発明の膨張可能なミクロスフェアは、直径を約3倍~約10倍増加させることができる。コーティング組成物中のミクロスフェアが膨張すると、コーティング組成物は、発泡体のような物質になり、それは、向上した耐衝撃性および断熱性を有している。以下に説明するように、部分的に硬化されたコーティング組成物中でミクロスフェアの膨張が起こることが望ましいことがある。
【0016】
膨張可能なミクロスフェアは、それらが膨張し始める特定の温度(T0)と、それらが最大膨張に達する第2の温度(Tm)を有する。異なるグレードのミクロスフェアは、異なる膨張開始温度および最大膨張温度を有する。例えば、一つの特に有用なミクロスフェアは、約80℃~約100℃のT0を有する。本発明では、任意の特定のグレードのミクロスフェアを使用することができるが、配合および処理時には、ミクロスフェアのT0およびTmを考慮すべきである。ミクロスフェアが最大膨張に達する温度(T)は、好ましくは約120℃~約130℃である。
【0017】
特定のミクロスフェア、およびそれらそれぞれのT0およびTmの選択は本発明にとって重要ではないが、これらの温度に応じて、処理温度を変更することができる。コーティング組成物が十分に乾燥される前は、これらのミクロスフェアは、組成物内を移動することができ、膨張することができる。しかしながら、コーティング組成物が十分に乾燥されると、ミクロスフェアは、実質的に決まった場所に固定され、その膨張を不可能ではないにしても、難しくする。
【0018】
好ましい実施形態では、膨張可能なミクロスフェアは、組成物の硬化前に、コーティング組成物の約10重量%~約40重量%の量で、より望ましくは、組成物の硬化前に、接着剤コーティング組成物の約15重量%~約30重量%の量で、コーティング組成物中に存在することが望ましい。膨張可能なミクロスフェアの膨張率と、ミクロスフェアの充填量は、互いに関連している。
【0019】
ミクロスフェアの完全に膨張した大きさに応じて、コーティング組成物中の膨張可能なミクロスフェアの量を調整することができる。組成物中で使用される特定の膨張可能なミクロスフェアに応じて、組成物中のミクロスフェアの所望の量を変更することができる。典型的には、コーティング組成物が、高すぎる濃度の膨張可能なミクロスフェアを含む場合、ミクロスフェアの膨張時に接着力および強度が不十分になり、それにより組成物の構造的完全性が弱められる。
【0020】
硬化前のコーティング組成物の10重量%~約40重量%の膨張可能なミクロスフェアの添加によって、構造的完全性を向上させることが可能になることが明らかになった。膨張されたコーティングは、未乾燥または部分的に乾燥されたコーティングからの全体積膨張が2000%を超え、好ましくは2500%を超える。典型的には、低いガラス転移温度(Tg)と、ミクロスフェアの膨張温度における高い弾性率を有するポリマーが、コーティング組成物のベースバインダーとして選択される。本出願人は、ミクロスフェアの膨張温度において0.3MPa未満の弾性率と、0.35より大きいtanδを有するバインダーポリマーを選択することにより、コーティングの膨張率がより高くなることを見出した。
【0021】
コーティング組成物は、任意に、ワックス分散添加剤を含む。非限定的なワックス分散添加剤としては、パラフィンワックス、蜜蝋、合成ポリエチレンワックスなどが挙げられる。ワックス分散添加剤の融点は、膨張可能なミクロスフェアのT0よりも低いことが望ましい。一実施形態では、ワックス分散添加剤は、100℃未満の融点を有する。
【0022】
他の添加剤としては、粘着付与剤、可塑剤、防腐剤、例えば殺生物剤が挙げられる。例示的な防腐剤としては、l,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンが挙げられる。典型的には、防腐剤は、組成物の硬化前のコーティング組成物の約0.05重量%~約0.5重量%の量で使用することができる。
【0023】
接着剤組成物は、任意に、配合物中に、任意の極性溶媒、特に水を含むことができる。
【0024】
コーティング組成物は、任意に、消泡剤、湿潤剤、界面活性剤、着色剤、架橋剤、防腐剤、充填剤、顔料、染料、安定剤、レオロジー調整剤、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物をさらに含むことができる。これらの成分は、組成物の硬化前のコーティング組成物の約0.05重量%~約15重量%の量で含まれることができる。
【0025】
架橋剤の添加は、ミクロスフェアが膨張された後のコーティングの構造的完全性をさらに強める。
【0026】
コーティング組成物は室温で合体(coalesce)し始めることができるが、コーティング組成物は、なお高い含水量を有し、実質的に流動性である。コーティングを十分に乾燥させる前にミクロスフェアを膨張させるために、エネルギーの一形態をコーティング組成物に導入することができる。このエネルギーの形態は、典型的には、伝導、誘導、または放射からの加熱である。予め膨張したミクロスフェアを含有するコーティングには、追加のエネルギーの一形態は必要ない。
【0027】
膨張可能なミクロスフェアを含有するコーティングと予め膨張されたミクロスフェアを含有するコーティングの両方に、ヒーターおよびファンを使用して、コーティングの乾燥を助けるために、過剰な水を除去することができる。保護物品の製造の特に望ましい実施形態では、コーティング組成物は、基材の表面(または複数の表面)に塗布され、コーティングを合体(coalesce)するのに十分な熱にさらされる。コーティングの合体(coalescence)の開始時、および、コーティングがなお実質的に流体状である間、コーティングは、ミクロスフェアを決まった場所に保持するのを助けるかもしれないが、ミクロスフェアを自由に膨張させる。一実施形態では、次いで、熱を、ミクロスフェアを膨張させるのに十分な温度に上昇させることができる。ヒーターは、ミクロスフェアのT0とTmの間の温度範囲に設定することが好ましい。最後に、熱を、再び、コーティング組成物から水を完全に除去するのに十分な温度に上昇させることができる。例えばオーブン中、または加熱されたローラーの使用によって等の任意の所望の方法によって、熱を加えることができる。様々な段階(硬化の開始、ミクロスフェアの膨張、およびコーティングの十分な乾燥)は、直接加熱の代わりとして、または直接加熱に加えて、放射エネルギーによって達成できることに留意すべきである。すなわち、例えば、様々なステップは、マイクロ波または高周波放射の使用によって達成することができる。このプロセスでは、熱源として、伝導、対流、および/または、誘導加熱法を使用することができる。さらに、加熱と共に、強制空気が使用される。さらに、このプロセスは、熱を加えることと放射線を加えることの任意の組み合わせを含むことができる。例えば、コーティングの初期の合体(coalescence)は、直接加熱によって達成することができ、一方、ミクロスフェアの膨張は、放射エネルギーを加えることによって達成することができる。
【0028】
所望により、コーティングの合体(coalescence)を強めるために、他の添加剤を組成物中に含めることができる。
【0029】
本発明のコーティング組成物は、輸送または郵送中に壊れやすい、および/または腐敗しやすい物を収容する保護パッケージに特に適している。例示的な保護パッケージとしては、封筒、ピロー、ガセット袋などが挙げられる。コーティングされた保護パッケージは、耐衝撃性、高強度、断熱性および軽量化を備える。
【0030】
別の実施形態は、(1)乳化重合により調製された水性ポリマーと、T0およびTmを有する複数の膨張可能なミクロスフェアとを含む組成物を調製する工程、(2)紙、板紙、木材、金属紙、金属板紙、箔、またはプラスチックフィルムである基材上に前記コーティング組成物を塗布する工程、(3)前記コーティング組成物を乾燥させて、水を実質的に除去する工程、および、(4)前記組成物中のミクロスフェアを膨張させる工程を含む、保護パッケージ物品を製造する方法を提供する。
【0031】
別の実施形態では、多基材(multi-substrate)(複数の基材を有する)保護パッケージ物品を製造する方法は、(1)乳化重合により調製された水性ポリマーと、T0およびTmを有する複数の膨張可能なミクロスフェアとを含む組成物を調製する工程、(2)前記コーティング組成物を第1の基材の一部分上に塗布する工程、(2b)任意に、前記コーティング組成物を乾燥させて、水を実質的に除去する工程、(3)前記第1の基材の異なる部分上に接着剤組成物を塗布する工程、(3b)任意に、前記コーティング組成物を乾燥させて、水を実質的に除去する工程、(4)第2の基材を前記第1の基材上に持っていき、それにより、この2つの基材の間に前記接着剤および前記コーティング組成物を介在させる工程、および、(5)前記組成物中のミクロスフェアを膨張させる工程を含む。基材は、紙、板紙、木材、金属紙、金属板紙、箔、またはプラスチックフィルムからそれぞれ独立して選択される。所望のプロセスおよびコーティング組成物に応じて、水を効率的に除去するために、この方法に工程(2b)または工程(3b)を任意に追加することができる。いくつかの実施形態では、コーティング組成物および接着剤組成物、工程(2)および工程(3)を同時に適用することができる。コーティング組成物および接着剤組成物は、基材の異なる領域に塗布されることが好ましい。さらに、耐衝撃性および断熱性を高めるために、接着剤はミクロスフェアを含む。別の実施形態では、接着剤は、第2の基材、または両方の基材に塗布されてもよい。さらに別の実施形態では、耐衝撃性および断熱性を高めるために、コーティング組成物は、第1の基材と第2の基材の両方に塗布されてもよい。耐衝撃性および断熱性をさらに高めるために、多層の、2枚を超える基材を使用して、多基材保護パッケージ物品を製造できることがさらに想定される。
【0032】
ミクロスフェアの膨張は、伝導、対流、または誘導からの加熱により行うことができる。さらに、加熱と共に、強制空気が使用される。水性ポリマーは、ミクロスフェアの(Tm+T0)/2で、0.3MPa未満の弾性率、および、0.35より大きいtanδ値を有する。水性ポリマーバインダーの乾燥温度はT0未満であり、膨張温度はT0以上である。コーティング中の膨張したミクロスフェアは、保護パッケージに、耐衝撃性、高強度、断熱性、および軽量化を与える。
【0033】
基材には、繊維板、チップボード(合板)、波形ボード(段ボール)、波形基材(corrugated medium)、固体漂白ボード(SBB)、固体漂白亜硫酸ボード(SBS)、固体未漂白ボード(SLB)、裏白チップボード(WLC)、クラフト紙、クラフトボード、コート紙、バインダーボード、低減基本重量(reduced basis weight substrate)(軽量化)基材、金属紙、金属板紙、箔、プラスチック、またはプラスチックフィルムが含まれる。
【0034】
保護パッケージのミクロスフェアは、使用直前に膨張されてもよく、または予め事前に製造され、必要になるまで保管されてもよい。膨張前は、保護パッケージは、薄い状態にあり、折りたたまれた状態のままで、より少ないスペースしかとらない。エネルギーを導入、例えば伝導、対流、誘導、または放射からの加熱をすると、コーティング中のミクロスフェアが保護パッケージ上で膨張する。本発明のコーティング組成物では、保護パッケージの空隙内に空気を強制的に送る装置は不要である。
【0035】
別の実施形態では、多層基材層(multi-substrate layers)を有する(複数の基材層を有する)保護パッケージが提供される。このパッケージは、パッケージの内側基材と外側基材とを含む。パッケージは、パッケージのどちらか一方、または両方の層の上に塗布されたコーティングをさらに含み、このコーティング組成物は、それに固定された複数の膨張可能なミクロスフェアを含み、この複数の膨張可能なミクロスフェアが膨張され、コーティング組成物が乾燥されている。このように、保護パッケージは、その片面または両面に、接着された発泡体のような組成物を有する物品を含む。
【0036】
コーティング組成物は、一連の点(水玉)、縞、波、格子縞(市松模様)、一般的な多面体形状のいずれも、および、それらの組み合わせなどの所望の任意の形状で、基材の表面上に塗布することができる。また、所望により、コーティング組成物は、パッケージの基材の全表面に塗布されてもよい。ある実施形態では、基材の外縁は、コーティング組成物でコーティングされず、接着剤のために確保される。次いで、この縁部で基材同士を接着して、多層基材層を形成し、例えば封筒、ピロー、ガセット袋などの保護パッケージを形成することができる。
【0037】
コーティング組成物は、所望により、熱の存在下で塗布することができる。しかしながら、塗布時の熱は、膨張可能なミクロスフェアを膨張させる前にコーティング組成物を十分に硬化させるほどは高くないことが重要である。
【0038】
本発明の接着剤は、郵送および輸送中に保護および断熱を必要とする消費者パッケージに特に適している。
【0039】
本発明は、以下の実施例の分析によって、よりよく理解することができるが、実施例は非限定的であり、本発明を説明するのを助けるためだけを意図する。
【実施例】
【0040】
実施例1 -水性ポリマーバインダー
以下の、膨張可能なミクロスフェア、DUALITE(登録商標)U020-130Dミクロスフェアの、膨張可能なミクロスフェアのT0およびTmの中間点:(Tm+T0)/2で測定された弾性率およびtanδ値を有する水性ポリマーを表1に示す。
【0041】
【0042】
実施例2 -コーティング組成物
以下の成分を含むコーティング組成物を調製した。
【0043】
【0044】
実施例3 -膨張率
コーティング組成物を紙基材上に塗布し、華氏265度、華氏275度、または華氏285度で25秒間加熱した。体積パーセントの増加を表3に示す。
【0045】
【0046】
表3に示すように、サンプル1、サンプル2、およびサンプル3は、全ての温度において、比較サンプルよりも高い膨張率を有していた。したがって、膨張可能なミクロスフェアのT0およびTmの中間点:(Tm+T0)/2で0.3MPa未満の弾性率および0.35より大きいtanδを有するバインダーを用いて形成されたコーティングは、試験された各温度において、ミクロスフェアがより膨張することを可能にした。
【0047】
また、ワックス分散添加剤の添加も、膨張率を増加させた。ワックス添加剤を含有するサンプル1、およびサンプル2は、また、ワックス添加剤を含有しないコーティング、サンプル3よりも高い膨張率を有していた。
【0048】
本発明は以下の事項にも関する。
[1]
(a)乳化重合により調製された水性ポリマー;
(b)T0(膨張開始)およびTm(最大膨張)を有する複数の膨張可能なミクロスフェア;および
(c)任意に、添加剤
を含み、
前記ポリマーが、膨張可能なミクロスフェアのT0およびTmの中間点:(Tm+T0)/2で、0.3MPa未満の弾性率を有し、tanδが0.35より大きいことを特徴とする、コーティング組成物。
[2]
前記ポリマーが、0.2MPa未満の弾性率を有し、tanδが0.4より大きいことを特徴とする、項目1に記載のコーティング。
[3]
前記水性ポリマーが、log(弾性率)対温度である絶対勾配が0.014より大きいことを特徴とする、項目1に記載のコーティング。
[4]
前記水性ポリマーが、log(弾性率)対温度である絶対勾配が0.025より大きいことを特徴とする、項目3に記載のコーティング。
[5]
前記水性ポリマーが、酢酸ビニルエチレン分散物、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルポリビニルアルコール、デキストリン安定化ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニルエチレン共重合体、ビニルアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、スチレンブチルゴム、ポリウレタン、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、項目1に記載のコーティング。
[6]
前記膨張可能なミクロスフェアが、ポリマーシェルおよび炭化水素コアを有することを特徴とする、項目1に記載のコーティング。
[7]
前記膨張可能なミクロスフェアが、80℃未満のT0を有することを特徴とする、項目1に記載のコーティング。
[8]
前記膨張可能なミクロスフェアが、90℃未満のT0を有することを特徴とする、項目7に記載のコーティング。
[9]
前記膨張可能なミクロスフェアが、150℃を超えるTmを有することを特徴とする、項目1に記載のコーティング。
[10]
前記膨張可能なミクロスフェアが、130℃を超えるTmを有することを特徴とする、項目9に記載のコーティング。
[11]
前記添加剤が、粘着付与剤、可塑剤、ワックス分散添加剤、防腐剤、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、項目1に記載のコーティング。
[12]
前記ワックス分散添加剤が、100℃未満の融点を有することを特徴とする、項目11に記載のコーティング。
[13]
前記ワックス分散添加剤が、パラフィン、蜜蝋、合成ポリエチレンワックス、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、項目12に記載のコーティング。
[14]
消泡剤、湿潤剤、界面活性剤、着色剤、架橋剤、防腐剤、充填剤、顔料、染料、安定剤、レオロジー調整剤、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物をさらに含むことを特徴とする、項目1に記載のコーティング。
[15]
前記コーティングが、30乾燥重量%以下の前記膨張可能なミクロスフェアを含むことを特徴とする、項目1に記載のコーティング。
[16]
(a)(i)乳化重合により調製された水性ポリマーと、(ii)T0およびTmを有する複数の膨張可能なミクロスフェアとを含み、前記ポリマーが、膨張可能なミクロスフェアのT0およびTmの中間点:(Tm+T0)/2で、0.3MPa未満の弾性率を有し、tanδが0.35より大きいコーティング組成物を調製する工程、
(b)紙、板紙、木材、箔、プラスチック、またはプラスチックフィルムである基材上に前記コーティングを塗布する工程、
(c)前記コーティングを乾燥させて、水を実質的に除去する工程であって、乾燥温度がT0未満である工程、および、
(d)T0以上の温度で、前記組成物を膨張させる工程
を含む、物品を形成する方法。
[17]
(a)(i)乳化重合により調製された水性ポリマーと、(ii)T0およびTmを有する複数の膨張可能なミクロスフェアとを含み、前記ポリマーが、膨張可能なミクロスフェアのT0およびTmの中間点:(Tm+T0)/2で、0.3MPa未満の弾性率を有し、tanδが0.35より大きいコーティング組成物を調製する工程、
(b)紙、板紙、木材、箔、プラスチック、またはプラスチックフィルムである基材上に前記コーティングを塗布する工程、
(b1)任意に、前記コーティングを乾燥させて、水を実質的に除去する工程であって、乾燥温度がT0未満である工程、
(c)前記第1の基材の異なる部分上に接着剤組成物を塗布する工程、
(d)任意に、前記コーティングを乾燥させて、水を実質的に除去する工程であって、乾燥温度がT0未満である工程、および、
(e)T0以上の温度で、前記組成物を膨張させる工程
を含む、物品を形成する方法。
[18]
工程(b)および工程(c)は、単一の工程として実施される、項目17に記載の方法。
[19]
基材と、項目1に記載の接着剤を含む組成物とを含む物品。
[20]
出荷または郵送の保護パッケージである、項目19に記載の物品。