(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】テープ埋め込み型ドライブ
(51)【国際特許分類】
G11B 5/584 20060101AFI20220121BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20220121BHJP
H01L 41/04 20060101ALI20220121BHJP
H01L 41/053 20060101ALI20220121BHJP
H01L 41/187 20060101ALI20220121BHJP
G11B 5/592 20060101ALI20220121BHJP
G11B 23/087 20060101ALI20220121BHJP
G11B 21/10 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
G11B5/584
H01L41/09
H01L41/04
H01L41/053
H01L41/187
G11B5/592
G11B23/087 Z
G11B21/10 N
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019226347
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2019-12-18
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正人
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-241232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0266705(US,A1)
【文献】特表2016-508657(JP,A)
【文献】特開平10-079153(JP,A)
【文献】特表2002-514338(JP,A)
【文献】特開2005-346793(JP,A)
【文献】米国特許第05191492(US,A)
【文献】特開昭58-097129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0067097(US,A1)
【文献】特表2016-524774(JP,A)
【文献】特表2013-513194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0008683(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0180214(US,A1)
【文献】特開2005-267684(JP,A)
【文献】特開昭55-139630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/584
H01L 41/09
H01L 41/04
H01L 41/053
H01L 41/187
G11B 5/592
G11B 23/087
G11B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレージデバイスであって、
データを記憶するためのテープ媒体を含む1つ以上のテープリールと、
ヘッドアセンブリであって、
支持構造体、
少なくとも1つの読み取りヘッド及び少なくとも1つの書き込みヘッドを含むヘッドバー、並びに
前記ヘッドバーを前記支持構造体に接続する懸架システム、を含む、ヘッドアッセンブリと、
前記ヘッドアセンブリを作動させるように構成されている1つ以上のモータと、
内部空洞を含む封止されたケーシングであって、前記内部空洞が、前記1つ以上のテープリール、前記ヘッドアセンブリ、及び前記1つ以上のモータを保持する、封止されたケーシングと、
前記ケーシングの外面に実装されたプリント回路基板アセンブリ(printed circuit board assembly、PCBA)であって、前記1つ以上のモータに電気的に接続されており、かつ前記1つ以上のモータの動作を制御するように構成されている、プリント回路基板アセンブリ(PCBA)と、を備え
、
前記1つ以上のモータが、
前記ヘッドアセンブリの粗動を提供するように構成されているステッピングモータ、
前記ヘッドアセンブリの微動を提供するように構成されているボイスコイルモータ、
を含み、
前記懸架システムが、前記テープ媒体の幅にわたって前記ヘッドバーを移動させるように構成されている、1つ以上の圧電アクチュエータを含み、
前記ステッピングモータが1回の移動動作によって前記ヘッドアセンブリを移動させる移動幅は、前記ボイスコイルモータが1回の移動動作によって前記ヘッドアセンブリを移動させる移動幅よりも大きく、
前記ボイスコイルモータが1回の移動動作によって前記ヘッドアセンブリを移動させる移動幅は、前記圧電アクチュエータが1回の移動動作によって前記ヘッドバーを移動させる移動幅よりも大きく、
前記ステッピングモータが前記ヘッドアセンブリを移動させることができる範囲は、前記ボイスコイルモータが前記ヘッドアセンブリを移動させることができる範囲よりも大きく、
前記ボイスコイルモータが前記ヘッドアセンブリを移動させることができる範囲は、前記圧電アクチュエータが前記ヘッドバーを移動させることができる範囲よりも大きい
ストレージデバイス。
【請求項2】
PCBAが、シリアル接続SCSI(Serial Attached SCSI、SAS)又はシリアルATA(Serial ATA、SATA)コネクタを含む、請求項1に記載のストレージデバイス。
【請求項3】
前記ケーシングが、3.5インチのフォームファクタである、請求項1に記載のストレージデバイス。
【請求項4】
前記ヘッドバーの幅が、前記テープ媒体の前記幅よりも小さい、請求項1に記載のストレージデバイス。
【請求項5】
前記1つ以上の圧電アクチュエータが、
第1の構成において引くように、及び第2の構成において押すように構成されている、第1の圧電アクチュエータと、
前記第1の構成において押す、及び前記第2の構成において引くように構成されている、第2の圧電アクチュエータと、を含み、
前記第1の圧電アクチュエータが、前記ヘッドバーの第1の側に配置されており、前記第2の圧電アクチュエータが、前記ヘッドバーの第2の側に配置されており、前記第2の側が、前記第1の側とは反対側にある、請求項
1に記載のストレージデバイス。
【請求項6】
前記懸架システムが、
前記支持構造体に接続されているフレームと、
前記ヘッドバーを前記フレームに取り付ける複数の懸架ワイヤと、を更に含み、
前記第1の圧電アクチュエータが、前記ヘッドバーの前記第1の側を前記フレームの第1の側に接続し、前記第2の圧電アクチュエータが、前記ヘッドバーの前記第2の側を前記フレームの第2の側に接続する、請求項
5に記載のストレージデバイス。
【請求項7】
前記懸架システムが、
前記支持構造体に接続されているフレームを更に含み、
前記1つ以上の圧電アクチュエータが、前記フレームを前記ヘッドバーに接続する、請求項
1に記載のストレージデバイス。
【請求項8】
前記1つ以上の圧電アクチュエータが、チタン酸ジルコン酸鉛(lead zirconate titanate、PZT)材料を含む剪断アクチュエータである、請求項
1に記載のストレージデバイス。
【請求項9】
前記懸架システムが、
基部端部及び上端部を含む細長い懸架部を更に含み、
前記ヘッドバーが、前記上端部に取り付けられており、前記基部端部が、前記1つ以上の圧電アクチュエータによって、前記支持構造体に移動可能に取り付けられている、請求項
1に記載のストレージデバイス。
【請求項10】
前記ヘッドバーが、前記テープ媒体の幅の半分未満であり、前記ヘッドバーが、前記テープ媒体の前記幅にわたって移動するように構成されている、
請求項1記載のストレージデバイス。
【請求項11】
前記ヘッドバーが、ライタ-リーダ-ライタレイアウトのヘッドを含む、
請求項1記載のストレージデバイス。
【請求項12】
前記ヘッドバーが、ライタ-リーダ-リーダ-ライタレイアウトのヘッドを含む、
請求項1記載のストレージデバイス。
【請求項13】
ストレージデバイスであって、
データを記憶するためにテープ媒体を保持するように構成されている1つ以上のテープ保持手段と、
ヘッドアセンブリであって、
支持構造体、
テープ読み取り及び書き込み手段、並びに、
前記テープ読み取り手段と書き込み手段とを前記支持構造体に接続する懸架手段、を含む、ヘッドアッセンブリと、
前記ヘッドアセンブリを作動させるように構成されている1つ以上の作動手段と、
内部空洞を含む封止されたケーシングであって、前記内部空洞が、前記1つ以上のテープ保持手段、前記ヘッドアセンブリ、及び前記1つ以上の作動手段を保持する、封止されたケーシングと、
前記ケーシングの外面に実装されたプリント回路基板アセンブリ(PCBA)であって、前記1つ以上の作動手段に電気的に接続されており、かつ前記1つ以上の作動手段の動作を制御するように構成されている構成要素を含む、プリント回路基板アセンブリ(PCBA)と、を備え
、
前記1つ以上の作動手段が、
前記ヘッドアセンブリの粗動を提供するように構成されているステッピングモータ、
前記ヘッドアセンブリの微動を提供するように構成されているボイスコイルモータ、
を含み、
前記懸架手段が、前記テープ媒体の幅にわたって前記テープ読み取り及び書き込み手段を移動させるように構成されている、1つ以上の圧電アクチュエータを含み、
前記ステッピングモータが1回の移動動作によって前記ヘッドアセンブリを移動させる移動幅は、前記ボイスコイルモータが1回の移動動作によって前記ヘッドアセンブリを移動させる移動幅よりも大きく、
前記ボイスコイルモータが1回の移動動作によって前記ヘッドアセンブリを移動させる移動幅は、前記圧電アクチュエータが1回の移動動作によって前記テープ読み取り及び書き込み手段を移動させる移動幅よりも大きく、
前記ステッピングモータが前記ヘッドアセンブリを移動させることができる範囲は、前記ボイスコイルモータが前記ヘッドアセンブリを移動させることができる範囲よりも大きく、
前記ボイスコイルモータが前記ヘッドアセンブリを移動させることができる範囲は、前記圧電アクチュエータが前記テープ読み取り及び書き込み手段を移動させることができる範囲よりも大きい
ストレージデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年2月8日に出願された「TAPE EMBEDDED DRIVE」と題された米国仮特許出願第62/803,366号、及び2019年3月11日に出願された「TAPE EMBEDDED DRIVE」と題された米国特許仮出願第62/816,860号に対する優先権を主張するものであり、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、テープ式データストレージデバイスに関する。より具体的には、本開示は、埋め込み型のテープ式読み取り及び書き込み機構を有するデータストレージデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
特定のコンピューティングシステムでは、テープストレージシステムは、テープ媒体(テープフィルム又は磁気テープとも呼ばれる)を格納するテープドライブ及びテープカートリッジ又はカセットを含む。テープドライブは、カートリッジ又はカセットのデータの書き込み又は読み取りを行う。
【図面の簡単な説明】
【0004】
様々な実施形態が、例示目的のために添付の図面に示されており、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。加えて、異なる開示された実施形態の様々な特徴を組み合わせて、本開示の一部である追加の実施形態を形成することができる。
【0005】
【
図1A】いくつかの実施形態による、テープ埋め込み型ドライブの分解斜視図及び簡略化された上面図及び側面プロファイル図を示す。
【
図1B】いくつかの実施形態による、テープ埋め込み型ドライブの分解斜視図及び簡略化された上面図及び側面プロファイル図を示す。
【
図1C】いくつかの実施形態による、テープ埋め込み型ドライブの分解斜視図及び簡略化された上面図及び側面プロファイル図を示す。
【0006】
【
図2】いくつかの実施形態による、テープ埋め込み型ドライブのプリント回路基板アセンブリ(Printed Circuit Board Assembly、PCBA)の上面斜視図を示す。
【0007】
【
図3A】いくつかの実施形態による、ケーシング内のテープリール(複数可)の可能な配置位置を示す。
【
図3B】いくつかの実施形態による、ケーシング内のテープリール(複数可)の可能な配置位置を示す。
【0008】
【
図4】いくつかの実施形態による、3.5インチのフォームファクタのテープ埋め込み型ドライブ及びリニアテープオープン(Linear Tape-Open、LTO)テープカセットの斜視図を示す。
【0009】
【
図5】いくつかの実施形態による、テープ埋め込み型ドライブのヘッドアセンブリを示す。
【0010】
【
図6】いくつかの実施形態による、テープ埋め込み型ドライブ用のLTOヘッドバー及びヘッドバーを示す。
【0011】
【
図7A】いくつかの実施形態による、別のヘッドアセンブリの斜視図及び対面図を示す。
【
図7B】いくつかの実施形態による、別のヘッドアセンブリの斜視図及び対面図を示す。
【0012】
【
図8A】いくつかの実施形態による、懸架システムを使用したヘッドアセンブリの斜視図及び対面図を示す。
【
図8B】いくつかの実施形態による、懸架システムを使用したヘッドアセンブリの斜視図及び対面図を示す。
【0013】
【
図9A】いくつかの実施形態による、プッシュプル懸架システムを使用するヘッドアセンブリの斜視図及び対面図を示す。
【
図9B】いくつかの実施形態による、プッシュプル懸架システムを使用するヘッドアセンブリの斜視図及び対面図を示す。
【0014】
【
図10A】いくつかの実施形態による、ヘッドジンバルアセンブリを含むヘッドアセンブリの別の実施形態の斜視図、第1の側面プロファイル図、及び第2の側面プロファイル図を示す。
【
図10B】いくつかの実施形態による、ヘッドジンバルアセンブリを含むヘッドアセンブリの別の実施形態の斜視図、第1の側面プロファイル図、及び第2の側面プロファイル図を示す。
【
図10C】いくつかの実施形態による、ヘッドジンバルアセンブリを含むヘッドアセンブリの別の実施形態の斜視図、第1の側面プロファイル図、及び第2の側面プロファイル図を示す。
【0015】
【
図11】いくつかの実施形態による、テープ埋め込み型ドライブのサーボ機構システムの制御ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特定の実施形態が記載されているが、これらの実施形態は単なる例として提示され、保護の範囲を限定することを意図するものではない。実際に、本明細書に記載される新規の方法及びシステムは、様々な他の形態で具現化され得る。更に、本明細書に記載される方法及びシステムの形態の様々な省略、置換、及び変更は、保護の範囲から逸脱することなく行われてもよい。
【0017】
本明細書に開示される原理は、便宜上、任意の好適な又は実用的なデータストレージシステム又は環境に適用可能であり得るが、便宜上、特定の実施形態が、テープ式のデータストレージシステムのコンテキストにおいて本明細書に開示される。
【0018】
テープデータストレージは、デジタル記録を使用して磁気テープ上にデジタル情報を記憶するためのシステムである。テープストレージ媒体は、最も一般的にはカートリッジ及びカセットにパッケージ化されている。テープドライブは、カートリッジ又はカセットのデータの書き込み又は読み取りを行う。自動装填及びテープライブラリを使用して、カートリッジのライブラリからテープドライブにカートリッジ/カセットを移動させて、逆もまた同様にして、カートリッジの取り扱いを自動化することができる。一般的なカセットベースのフォーマットはLTOであり、様々な密度がある。
【0019】
磁気テープのコンテキストにおいては、カセットという用語は通常、磁気テープの単一スパンで2つのリールを保持するエンクロージャを指す。カートリッジという用語は、より一般的であるが、しばしば、プラスチックエンクロージャ内のテープの単一のリールを意味する。便宜上、本開示はカセットを参照するが、記載された技術はカートリッジにも適用され得る。
【0020】
パッケージングのタイプは、ロード時間とアンロード時間、及び保持できるテープの長さの大きな決定要因である。単一のリールカートリッジを使用するテープドライブは、カセットがカセット内に巻き取りリールを有する一方で、ドライブに巻き取りリールを有する。テープドライブ(又は「トランスポート」又は「デッキ」)は、正確に制御されたモータを使用して、テープを一方のリールから他方に巻き戻し、読み取り/書き込みヘッドもそのようにして通過させる。
【0021】
現状のテープドライブライブラリシステムは、いくつかの欠陥を有する。テープが周囲環境に対してオープンであるため、テープ保管設備(例えば、データセンタ)は、テープの信頼性を確保するために、湿度及び温度を制御する必要がある。このような環境維持は高価になり得る。加えて、このようなメンテナンスを行っても、長期の信頼性に関しては、依然として問題となり得る。例えば、温度の変動又は埃による汚染は、テープドライブの信頼性に影響を及ぼし得る。
【0022】
加えて、テープカセットをライブラリ内のテープフォルダからテープドライブシステムに移動させるために使用されるロボットは、読み取りの更なる遅延を引き起こす可能性がある。例えば、ロボット(約平均50秒)及びテープドライブ(約平均50秒)の両方のアクセス時間は、約100秒となり得る。
【0023】
更に、テープドライブシステムは、デュアルステージモータと呼ばれる上下ステッピングモータ及びボイスコイルモータ(voice coil motor、VCM)を使用して、大型のライタ及びリーダヘッドバーを移動させる。インチあたりのトラック数(tracks per inch、TPI)が大きい場合、大型ヘッドバーにより、デュアルステージモータでの可能な精度が制限される。加えて、テープドライブシステムは、複数世代のカセットをサポートする必要がある。テープドライブシステムは、いくつかのタイプのテープフィルムベンダ製及び複数の世代の記録に対応するデータを書き込み、読み取りする必要があり得る。適合性を維持することは、技術改善の可能性を制限することになり得る。
テープ埋め込み型ドライブの概要
【0024】
これらの問題に対する1つの解決策は、テープ埋め込み型ドライブであり、その実施形態を以下で考察する。テープ埋め込み型ドライブは、いくつかの実施形態では、テープ媒体及び読み取り及び書き込み用ヘッド(複数可)を統合したカセットである。更に、カセットは、例えば、ハードディスクドライブ(hard disk drives、HDD)に共通の3.5インチのフォームファクタを利用することができる。3.5インチのフォームファクタを使用することにより、コントローラ及びシールドドライブ技術など、HDD用に開発された技術をテープドライブに適合又は利用することができる。例えば、HDDドライブで使用される同様のPCBAを使用することができ、SATA又はSASインターフェースをホストに提供することができる。更に、PCBAは、システムオンチップ(system-on-a-chip、SoC)、並びに/又は例えば、データ読み込みチャネル、メモリ、モータドライバ(複数可)、及びアクチュエータドライバ(複数可)を含む、他の制御回路を含むことができる。ヘッド技術を統合することは、関連するメンテナンスコストを含むテープライブラリシステムを維持する必要性を排除することができる。
【0025】
加えて、3.5インチのフォームファクタなどの標準化フォームファクタを使用することにより、既存のデータセンタインフラストラクチャとのより良好な統合を提供することができる。HDDは一般的にデータセンタのストレージに使用され、3.5インチのフォームファクタHDDを使用するように設計された専用のラックとサーバがある。3.5インチのフォームファクタを使用することにより、テープ埋め込み型ドライブは、データセンタのメンテナンス及びインフラストラクチャの必要性を簡素化することができる。テープドライブをサポートするための第2のセットのインフラストラクチャを用意するのではなく、同じインフラストラクチャを利用して、本開示に記載されるようなHDD及びテープ埋め込み型ドライブの両方をサポートすることができる。特定の他の実施形態では、同じ統合化アプローチを、非3.5インチのフォームファクタの構造に適用することができる。例えば、2.5インチ又は5.25インチのフォームファクタが使用されてもよく、又は別の略矩形のフォームファクタが使用されてもよい。2.5インチ又は5.25インチフォームファクタを使用することにより、3.5インチのフォームファクタに関して上述したものと同じインフラストラクチャ及び他の利点を提供することができる。
【0026】
図1A~
図1Cは、特定の実施形態によるテープ埋め込み型ドライブ100の分解斜視図及び簡略化された上面図及び側面プロファイル図を示す。例えば、
図1Bに注目すると、テープ埋め込み型ドライブは、ケーシング105、1つ以上のテープリール110、テープ媒体115、1つ以上のモータ(例えば、ステッピングモータ120(ステッパモータとしても知られる)、ボイスコイルモータ125など)、1つ以上の読み取り及び書き込みヘッド、テープガイド/ローラ135a、135b、及びPCBA155を含むヘッドアセンブリ130(
図1C)を含む。一実施形態では、構成要素の大部分は、ケーシングの外部表面上に実装されるPCBAを除いて、ケーシングの内部空洞内にある。同じ構成要素は、
図1Aの斜視図に示されている。
【0027】
図示した実施形態では、2つのテープリール110は、ケーシングの内部空洞に配置され、2つのテープリールの中心が空洞内の同じレベルにあり、ヘッドアセンブリ130は2つのテープリールの中央及び下に位置する。テープリールのスピンドルに配置されたテープリールモータ140は、テープリール内のテープフィルムを巻き取り及び巻き戻すように動作することができる。各テープリールはまた、テープフィルムをリール上にきれいに巻くことを助けるために、テープフォルダを組み込んでもよい。テープ媒体は、改善された面密度を提供するために、スパッタリングプロセスによって作製されてもよい。
【0028】
テープリールからのテープフィルムは、ガイド/ローラ135a、135bに対して付勢され、リールの移動によってヘッドアセンブリ130に沿って移動可能に通される。図示した実施形態は、ヘッドアセンブリ130から最も離れた2つのガイド/ローラ135aがフィルムの方向を変える働きをし、及びヘッドアセンブリ130に最も近い2つのガイド/ローラ135bが、フィルムをヘッドアセンブリ130に押し付ける、4つのガイド/ローラ135a、135bを示す。
【0029】
図1Aに示すように、いくつかの実施形態では、ガイド/ローラ135は、同じ構造を利用する。他の実施形態では、
図1Bに示すように、ガイド/ローラ135は、より特殊な形状を有してもよく、機能に基づいて互いに異なっていてもよい。更に、より少ない又はより多い数のローラが使用され得る。例えば、2つの機能性ローラは、円筒形の形状であってもよく、2つの機能的ガイドは平側面(例えば、矩形プリズム)であってもよく、又は2つの突起のあるクリップ形状、及びクリップの突起間を移動するフィルムであってもよい。
【0030】
ボイスコイルモータ及びステッピングモータは、テープヘッド(複数可)を、記録テープの幅に対して横方向に可変的に位置付けることができる。ステッピングモータは粗動を提供し、一方ボイスコイルモータはヘッド(複数可)のより細かい作動を提供し得る。一実施形態では、テープフィルムに沿ったヘッド(複数可)のより正確な位置決めを補助するために、サーボデータをテープに書き込むことができる。
【0031】
加えて、ケーシング105は、ケーシング内の環境を維持するのを助けるために、1つ以上の粒子フィルタ141及び/又は乾燥剤142(
図1A)を含むことができる。例えば、ケーシングが気密にされていない場合、空気流が予想される場所には、粒子フィルタが配置され得る。粒子フィルタ及び/又は乾燥剤は、1つ以上の角、又は移動する内部構成要素から離れた任意の他の好都合な場所に配置され得る。例えば、テープを巻く/巻き戻すにつれて、移動するリールが内部の気流を生成するため、その気流内に粒子フィルタが配置され得る。
【0032】
ケーシング内のテープ埋め込み型ドライブ100の内部構成要素の配置には、多種多様な可能性がある。具体的には、特定の実施形態では、ヘッド機構がケーシングの内部にあるため、従来のテープドライブなどのように、フィルムをケーシングの外側に露出させる必要はない。したがって、テープフィルムは、ケーシングの縁部に沿ってルーティングされる必要はなく、ケーシング内でよりコンパクトに、又は他のより効率的な方法で自由にルーティングすることができる。同様に、これらの構成要素への外部アクセスを提供する設計要件がないので、より効率的なレイアウトを実現するために、ヘッド(複数可)及びテープリールを様々な場所に配置され得る。
【0033】
図1Cに示すように、ケーシング105は、カバー150及び基部145を含む。PCBA155は、カバー150の反対側のケーシング105の外面上で、底部に取り付けられる。ソリッドステートの電子機器で作製されたPCBAは、環境問題に関しては懸念事項が少ないため、ケーシング105の内部に配置される必要がない。これにより、他の構成要素、特に保護された環境から恩恵を受ける移動構成要素及びフィルム媒体のために、ケーシング内に空間が残される。
【0034】
いくつかの実施形態では、テープ埋め込み型ドライブ100は封止される。封止とは、ドライブが密封して封止されているか、又は必ずしも気密である必要はなく単純に封止されていることを意味し得る。ドライブを封止することは、テープフィルムの巻き取りの安定性、テープフィルムの信頼性、及びテープヘッドの信頼性のために有効であり得る。乾燥剤は、ケーシング内の湿度を制限するために使用されてもよい。
【0035】
一実施形態では、カバー150は、テープ埋め込み型ドライブを密封して封止するために使用される。例えば、ドライブ100は、カバーを基部145に取り付けること(例えば、レーザ溶接、接着剤など)によって、環境制御のために密封して封止されてもよい。ドライブ100は、ヘリウム、窒素、水素、又はいくつかの他の典型的には不活性ガスによって充填されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、テープ埋め込み型ドライブ100に他の構成要素を追加することができる。例えば、ヘッドの前置増幅器をテープ埋め込み型ドライブに追加することができる。前置増幅器は、ヘッドアセンブリ130内のPCBA155上に、又は別の位置に配置されてもよい。一般に、ヘッドにより近い前置増幅器を配置することは、信号対雑音比(signal-to-noise ratio、SNR)における、読み取り信号及び書き込み信号に対してより大きな効果を有することができる。他の実施形態では、構成要素の一部を除去することができる。例えば、フィルタ141又は乾燥剤142は、除去されてもよい。
【0037】
図2は、特定の実施形態による、テープ埋め込み型ドライブ100のPCBA155の上面斜視図を示す。PCBA155は、ケーシングの底面に取り付けられ、コネクタ205は、ケーシング内の内部構成要素に電気的/電子的に接続されている底面上の接点又はインターフェースに取り付けられる。例えば、接点又はインターフェースは、ケーシング内の1つ以上のモータ及び/又はアクチュエータに電気的に接続されてもよい。一実施形態では、接点/インターフェースは、ケーシングの気密封止を損なうことなく、ケーシング内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、コネクタ205は、ケーシングの封止を維持しながら、ケーシング内部の構成要素をPCBA上の構成要素に電気的に接続する、電気的フィードスルーとすることができる。例えば、本開示の譲受人に譲渡され、その開示が参照により組み込まれる、2017年6月6日に発行された「Sealed bulkhead electrical feed-through X-Y positioning control」と題された米国特許第9,672,870号に記載される、密閉型ヘリウムディスクドライブで見られるものと同様の電気的フィードスルーを使用することができる。
【0038】
PCBA155は、1つ以上のコントローラ、1つ以上のコネクタ205、SoC210、1つ以上のデータインターフェース215(例えば、シリアルATA(Serial ATA、SATA)、シリアルアタッチドSCSI(Serial Attached SCSI、SAS)、不揮発性メモリエクスプレス(non-volatile memory express、NVMe)若しくは同様のもの)、メモリ220、電力大規模集積回路(Power Large Scale Integration、PLSI)225、及び/又はデータ読み取りチャネルコントローラ230などの、様々な構成要素を含むことができる。必要に応じて、1つ以上の切り抜き部235をPCBAに追加して、テープリールモータのための追加のスペースを提供することができる。例えば、テープリールモータ140の上のケーシングの部分は、モータのための追加のスペースを提供するように隆起されてもよい。切り抜き部235を設けることにより、PCBA155がケーシングの隆起部分を囲むことができるため、テープ埋め込み型ドライブ100の厚さを低減することができる。
【0039】
PCBAは、ケーシング105の底部外面全体に沿って延在することができ、又は様々な構成要素がどのくらいスペースを必要とするかに応じて、表面に沿って部分的にのみ延在してもよい。いくつかの実施形態では、第2のPCBAは、ケーシング105内に配置されてもよく、例えば、コネクタ205を介して第1のPCBA155と通信することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、PCBA上のコントローラは、テープ埋め込み型ドライブ100の読み取り及び書き込み動作を制御する。コントローラは、テープスプールモータと連動して、テープスプールにテープフィルムを前後に巻き付けることができる。コントローラは、ステッピングモータ及びボイスコイルモータを使用して、テープフィルム上へのヘッド(複数可)の配置を制御することができる。コントローラはまた、SATA又はSASなどの1つ以上のインターフェース215を介して、テープ埋め込み型ドライブ100への、又はそこからのデータの出力/入力を制御することができる。
【0041】
図3A~
図3Bは、ケーシング内のテープリール(複数可)の可能な配置位置を示す。上で考察されるように、テープ埋め込み型ドライブ100の密閉されている特質により、内部構成要素の配置に大きな余裕が生まれる。
図3Aは、実質的に同じ水平線に沿ったテープリール110a、110bの配置を示す。リールは、ケーシングの上縁部305に近接し、モータ及びヘッド(複数可)などの他の内部構成要素のためにケーシングの底縁部310に沿った空間を提供する。
【0042】
図3Bは、テープの配置が互いに対角線上であることを示す。右テープリール110bは、ケーシングの右上角に配置され、左テープリール110aはケーシングの左下角に配置されている。底部右角部315及び/又はケーシングの左上角に沿ったスペースは、モータ及びヘッド(複数可)などの他の内部構成要素のために残される。別の実施形態では、左下角及び/又は右上角にスペースを残して、リールが左上角及び右下角に配置されてもよい。
【0043】
<寸法の考察>
図4は、特定の実施形態による、3.5インチのフォームファクタのテープ埋め込み型ドライブ100及びLTOテープカセットの斜視図を示す。一実施形態では、テープ埋め込み型ドライブ100は、147mmの長さ、102mmの幅、及び26mmの高さ寸法を有する。LTOカセット405は、125mmの長さ、109mmの幅、及び25mmの高さの寸法を有する。上記は、テープ埋め込み型ドライブ用に可能な寸法の一組を開示しているが、他の実施形態では異なる寸法を有してもよい。例えば、より大きなデータ容量を有するより大きなテープフィルムの使用を可能にするために、高さを2倍にするか、別様に増加(例えば、約52mmまで)させてもよい。
【0044】
PCBAを有するテープ埋め込み型ドライブのサイズ(長さ×幅×高さ)は、アクセス時間及びストレージ容量によって最適化することができる。アクセス時間をより速くするには、テープフィルムの長さを短くする必要がある。テープフィルムの長さを短くすると、テープ埋め込み型ドライブのケーシングの長さ及び/又は幅のサイズは短くなり得るが、総データ容量が減少するという潜在的なコストがかかる。容量を増加させるために、ケーシングの幅及び/又は長さを伸ばして、テープ長さ全体を長くすることができるが、アクセス時間が長くなるという潜在的なコストがかかる。
【0045】
いくつかの実施形態では、テープフィルムの幅は、LTOカセットで使用される標準的な12.65mmから、より広いフィルムにまで増加させることができる。テープ幅を増加させることは、テープ全体の長さが同じままであり得るため、アクセス時間に必ずしも多大な影響を及ぼすことなく、容量を増加させることができる。
【0046】
表1は、LTOテープ測定と比較したテープ埋め込み型ドライブ100のテープフィルム測定のために可能な1つの実施形態を示す。テープの厚さに基づいて、テープ長さは約592mと計算され得、これは標準LTOテープフィルムの長さの約60%である。参照のために、現状のLTOテープカセット(125mm×109mm×25mm)は、カセット(LTO-7spec)内に約960mのテープフィルム長さを有する。
【表1】
【0047】
1/3の長さのシーク時間が平均シーク時間を表すと仮定し、7m/秒でテープが巻き取られ、かつ、1098mのテープ長さを有するLTOカセットにおいて、平均シーク時間は約1098/3/7~=52秒である。ライブラリシステムでの平均ロボットハンドリング速度を50秒と仮定すると、合計平均データアクセス時間は約100秒になる。一方、3.5インチのフォームファクタのテープ埋め込み型ドライブの一部の実施形態では、平均シーク時間に対して592/3/20~=10秒のアクセス時間を有することができる。テープの長さを短くして、テープの質量を小さくすると、10m/秒、15m/秒、及び20m/秒のテープ巻き取りを実現することができる。更に、各テープリールモータからの慣性回転に起因する、バックラッシュが全くない。又は少なくとも、より少なくなってもよい。
【0048】
上記では、テープ埋め込み型ドライブ100は、HDDのような3.5インチのフォームファクタを有するケーシングを有するものとして考察しているが、テープ埋め込み型ドライブ100は、他のフォームファクタを使用することができる。例えば、テープ技術が将来十分な小型化を実現させた場合、テープ埋め込み型ドライブは、ラップトップHDDによって使用されるような、2.5インチのドライブフォームファクタを使用することができる。より大きなサイズが所望されるいくつかの実施形態では、テープ埋め込み型ドライブ100は、コンピュータCD-ROMによって使用されるような、ケーシングのための5.25ドライブフォームファクタを使用することができる。更に、テープ埋め込み型ドライブ100は、いくつかの変形例で3.5インチのフォームファクタを使用することができる。例えば、ドライブは、わずかに長く/短く、わずかに厚く/薄く、又は同様のものであってもよい。データ/電力インターフェースの寸法又は配置にわずかな違いがあっても、ドライブ100は、ラック及びサーバなどの様々なコンピュータ機器に見出される既存の3.5インチベースのインフラストラクチャに対して依然として互換性があり得る。
【0049】
<ヘッドアセンブリ>
図5は、特定の実施形態によるテープ埋め込み型ドライブ100のヘッドアセンブリ500を示す。ヘッドアセンブリ500は、ヘッドアセンブリを動かすための多段階アクチュエータを含む。いくつかの実施形態では、多段階アクチュエータは、ステッピングモータ505(第1段階)と、コイル529及び磁石530を含むボイスコイルモータ510(第2段階)、及びヘッドバー520の上下運動のためにそれぞれ粗い、微細、及び超微細な作動を提供できる圧電アクチュエータ515(第3段階)を含む。一実施形態では、圧電アクチュエータは、チタン酸ジルコン酸鉛(lead zirconate titanate、PZT)アクチュエータ(例えば、剪断PZT)である。3段階モータを使用することにより、ヘッドバー520の移動はより正確になり得る。より高い精度で、テープフィルム上により多くのチャネルを支持することができ、テープフィルムのデータ密度をより高めることができる。一実施形態では、ヘッドバーは、従来のテープヘッドと同様のレイアウトでライタ-リーダ-ライタレイアウトのヘッドを含む。別の実施形態では、ヘッドバーは、HDDヘッドのレイアウトと同様の、リーダ-ライタレイアウトの2つのヘッドを含む。
【0050】
ヘッドアセンブリ500は、アクチュエータブロック526をステッピングモータに接続するねじシャフト525を更に含むことができる。ねじシャフト525及びガイドシャフト524、540は、ステッピングモータ505によるアクチュエータブロックの移動を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、異なる数のガイドシャフトが使用される(例えば、0、1、3+)。例えば、より小さい又はより軽いアクチュエータブロックは、移動中により少ない支持でよく、ガイドシャフトを1つのみ又は全く使用しなくてもよい。一方、より大きい又はより重いアクチュエータブロックには、追加のガイドシャフト又は複数のねじシャフトを使用することができる。
【0051】
懸架アセンブリ528は、ヘッドバー520をアクチュエータブロック526に接続することができる。一実施形態では、懸架アセンブリは、ヘッドバーの読み取り及び書き込みヘッドとの間で電気信号をやり取りするために、取り付けプレート、ロードビーム、及び積層フレクシャを含む。懸架アセンブリ528はまた、制御された電流が通過するコイル529を含むことができる。コイル529は、アクチュエータブロック526に取り付けられた1つ以上の磁石530と相互作用して、ヘッドバー520を制御可能に動かすためのボイスコイルモータ510を形成する。
【0052】
一実施形態では、ヘッド支持ブロック535は、ヘッドバー520と圧電アクチュエータ515とを懸架アセンブリ528に接続する。ヘッド支持ブロック535は、ヘッドバー520及び圧電アクチュエータ515を固定するためのクランプ536と、基部を懸架アセンブリ528に接続するために、クランプに垂直な支持構造体537とを含むことができる。一実施形態では、ヘッド支持ブロック及びアクチュエータは、ボイスコイルモータ510及びステッピングモータ505によって提供される制御と連動して、ヘッドバー520がテープ媒体の幅をわたって移動することを可能にする懸架システムを形成する。
【0053】
圧電アクチュエータ515は、任意選択的に、導電性(例えば、金)電極層の間に挟まれた複数の圧電材料層を含む多層圧電素子であってもよいことにも留意されたい。圧電アクチュエータ515は、任意選択的に、多くの既知の圧電材料、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛、タンタル酸スカンジウム鉛、ケイ酸ランタンガリウム、タンタル酸リチウム、チタン酸バリウム、リン酸ガリウム、及び/又は酒石酸カリウムナトリウムのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0054】
一実施形態では、圧電アクチュエータ515は、第2の軸に沿って延在するか、又は収縮する。アクチュエータ515は、ヘッドバー520をテープ媒体に向かって押すか、又はテープ媒体からヘッド(複数可)を引き離すことができる。一実施形態では、ヘッド(複数可)をテープフィルムの近くに移動させるために、ヒータ(例えば、加熱コイル)がヘッドバー520に組み込まれてもよい。タッチダウンセンサをヘッドバーに組み込んで、ヘッドとフィルムの接触を検出し、ヘッドバーがテープフィルムに触れないようにすることも可能である。
【0055】
ヘッド(複数可)をテープフィルムに近づくように移動させることにより、信号強度を増加させることができる。加えて、ヘッドバーがテープ媒体から離れるように移動できるようにすることによって、テープ埋め込み型ドライブ100に対して早送り又は巻き戻し機能を有効にすることができる。ヘッドバーが媒体から更に離れるにつれて、テープ媒体がより速く移動しても、媒体がヘッドバーに衝突する機会が減少する。接触を回避することにより、読み取り及び書き込みヘッド及び/又はテープ媒体の信頼性が維持される。
【0056】
ヘッドアセンブリ500をケーシング105へ、より良好に固定するために、第2のガイドシャフト540が使用されてもよい。一実施形態では、第1のガイドシャフト524は、アクチュエータブロック526の一方の側にあり、第2のガイドシャフト540はアクチュエータブロック526の反対側の端部にある。
【0057】
一実施では、ヘッドバー520の移動は、3段階動作で完了される。まず、ステッピングモータはねじシャフト525を回転させ、アクチュエータブロックに、第1のガイドシャフト524及び第2のガイドシャフト540を上下に移動させる。これにより、ヘッドバーを、テープフィルムの幅にわたって(上下に)移動させる。VCMコイルに電流が印加されると、ヘッドサポートブロックも上下するが、その間懸架アセンブリによって支持される。圧電アクチュエータ515に電圧が印加されると、ヘッド(複数可)は再び上下に移動する。並行して作業することにより、3段階動作は、ヘッドバーをテープフィルムの幅全体にわたって(上下に)粗い、微細、又は超微細な間隔で移動させることができる。一実施形態では、3段階の移動は、約30,000/10,000/1の比率で進行し、ステッピングモータ505は12.65mmまで移動可能であり、VCM510は4mmまで移動可能であり、圧電アクチュエータ515は0.4μmまで移動可能である。
【0058】
図6は、特定の実施形態による、テープ埋め込み型ドライブ100用のLTOヘッドバー605及びヘッドバー610を示す。LTOカセットは、ヘッドバーを作動させるためのステッピングモータ及びボイスコイルモータのみを有する。
図6は、LTO及びテープ埋め込み型ドライブの実施形態に対するテープ幅とテープヘッドバーの長さとの関係を示す。
【0059】
複数のライタ及びリーダは、ヘッドバー内に配置され得る。例えば、テープバーは、1~10個のリーダヘッド及び/又は1~10個のライタヘッドを有し得る。典型的には、テープヘッドバーは、ライタ-リーダ-ライタレイアウトを使用する。しかしながら、ライタ-リーダ-リーダ-ライタなどの他のレイアウトも使用可能である。いくつかの実施形態では、2つ以上のリーダを使用することにより、より良好な信号対雑音比(SNR)を提供し、より高いTPIを可能にする。
【0060】
テープ記録は、記録のためのヘッドフィルム接触技術を使用する。典型的には、LTOテープは、フィルム上の4つのデータバンドを使用し、この場合、ヘッド(複数可)がテープの幅の上下にある4つの異なる位置に移動される。ステッピングモータは、4つの位置のそれぞれに移動するために使用され、ボイスコイルモータは、各位置内でより微細な作動を処理する。したがって、LTOカセットは、テープ幅(12.65mm)よりも長いヘッドバー長さ(例えば22.4mm)を使用するため、テープ幅は移動先の4つの位置のそれぞれにおいてヘッドバーで覆われる。
【0061】
より長いヘッドバー605の重い質量、より広いヘッドリーダ幅、及びステッピング及びボイスコイルモータの制限された移動精度により、LTOカセットのフィルム上のトラック密度は制限される。LTO-7トラックピッチは、10.7k TPI(2.37um)である。
【0062】
一実施形態では、テープ埋め込み型ドライブ100は、長さ約4mmのヘッドバー610などのLTOヘッドバー605よりも著しく小さいヘッドバー610を含む。ヘッドバーの長さを短くしてより小さな質量に対応することで、PZTの超微細作動によりヘッドバーを上下に移動させることができる。一実施形態では、ヘッドアセンブリは、ボイスコイルモータの作動可能部分に取り付けられたアセンブリ上に配置された(
図5において考察されているように)PZTアクチュエータに取り付けられ、これは同様に、ステッピングモータの作動可能部分に取り付けられたアセンブリ上にある。一実施形態では、PZTアクチュエータは、ボイスコイルモータによって移動され、ボイスコイルモータは、同様にして、ステッピングモータによって移動される。
【0063】
上記では、約4mmのヘッドバーサイズを考察しているが、他のサイズ、例えば、約3mm、約5mm、又は更には他のサイズであってもよい。いくつかの実施形態では、ヘッドバーはテープ幅よりも著しく小さい。例えば、ヘッドバーは、テープ媒体の幅の半分未満、又は4分の1未満であってもよい。
【0064】
一実施形態では、テープアセンブリの両側に2つのテープガイド615が配置されている。テープガイドは、テープの移動を制限し、ヘッドアセンブリがテープフィルム上を移動するときのより良好な安定性を提供する。他の実施形態では、ヘッドアセンブリが利用され得る前又は後のいずれかに配置された単一のテープガイドのみが使用されてもよい。
【0065】
ヘッドバー610は、(
図5において考察されているように)HDDのようなジンバルアセンブリ又は懸架アセンブリによって支持することができる。これは、より緩やかな、及び/又はより安定したヘッドとフィルムとの接触を提供し、読み取り及び/又は書き込みのより良好な信頼性を提供し得る。懸架アセンブリは、ステンレス鋼又は同様のものなどの様々な材料を使用することがxできる。
【0066】
<ヘッドアセンブリの実施形態>
図7~
図10Cは、テープ埋め込み型ドライブ100のヘッドアセンブリの様々な異なる実施形態を示す。これらは、単にいくつかの変形例であり、他の変形例は、テープ埋め込み型ドライブ100と協働し得る。例えば、以下の実施例は、剪断又はプッシュプルPZTなどの圧電アクチュエータを使用する。しかしながら、同様の性能特性を有する他のタイプのアクチュエータを使用することができる。別の実施例では、示される数字の代わりに、異なる数の圧電アクチュエータ(例えば、1、2、3、4など)を使用することができる。
【0067】
図7A~
図7Bは、ヘッドアセンブリ700の実施形態の斜視図及び対面図を示す。ヘッドアセンブリ700は、
図5のヘッドアセンブリと類似しているが、圧電アクチュエータは、中央に切り抜き部を有する2つのバー又は区分715a、715bに分割される。圧電アクチュエータは、
図7Bの破線矢印によって示されるように、テープ媒体の幅をわたってヘッドバー720を移動させる。圧電材料の量を低減することにより、重量を低減することができ、これはヘッドバー720の移動に有益である。例えば、より軽いヘッドバーは、ヘッドバーを作動させるのに必要な電力を低減することができる。材料の低減はまた、製造コストを低減することができる。
【0068】
図8A~
図8Bは、懸架システム840を使用したヘッドアセンブリ800の別の実施形態の斜視図及び対面図を示す。ヘッドアセンブリ800は、懸架システム840が追加されている点を除いて、
図7A~7Bのヘッドアセンブリと同様である。懸架システム840は、テープフィルムとのソフトタッチ接触を維持する際にヘッドバー820を補助することができる。テープフィルムがヘッドバー820を通過して移動すると、テープは、接触しているヘッド表面に対してわずかに変動し得る。懸架システム840は、それらの変動を補償し、ヘッドがテープフィルムとの接触を維持したままであることを可能にすることができる。これにより、読み取り/書き込み性能を増加させることができ、テープフィルムへの潜在的損傷を低減し、及び/又は読み取り/書き込み信頼性を向上させることができる。
【0069】
一実施形態では、懸架システム840は、フレームを含む。フレームは、
図5に説明されるヘッド支持ブロックのような支持構造体841に片側で接続することができる。ヘッドバー820は、フレームの他方の側に接続することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、懸架システム840の張力を変更するために、懸架システム840の切り抜き部を拡大又は縮小することができる。
図8Bの破線矢印で示されるように、圧電アクチュエータがテープ媒体をわたってヘッドバーを移動するときの張力の変化は、ヘッドバー820の移動量に影響を及ぼし得る。
【0071】
図9A~
図9Bは、プッシュプル懸架システムを使用したヘッドアセンブリ900の別の実施形態の斜視図及び対面図を示す。プッシュプルアクチュエータは、一般に、剪断アクチュエータよりも低い電圧を使用する。プッシュプル懸架システムは、プッシュアクチュエータ941と、プルアクチュエータ942と、フレーム943と、を含む。一実施形態では、プッシュアクチュエータ、プルアクチュエータ、及び複数の懸架ワイヤは、支持構造体944に接続されているフレーム943に、ヘッドバー920を接続する。
【0072】
図9Bの破線の矢印で示すように、プッシュアクチュエータとプルアクチュエータは、連携して動作し、懸架ヘッドをテープの幅に対して上下に移動させることができる。例えば、プッシュアクチュエータ941が収縮すると、プルアクチュエータ942が拡張し、それによってヘッドを一方向(上方)に押す。プッシュアクチュエータ941が拡張し、プルアクチュエータ942が収縮すると、ヘッドは反対方向(下方)に押される。一実施形態では、プッシュ及びプルアクチュエータはPZTである。
【0073】
懸架システムはまた、ヘッド(複数可)を移動可能に支持するためのワイヤ懸架部945a、945bを含むことができる。一実施形態では、ワイヤ懸架部945a、945bは、プッシュ及びプルアクチュエータによって容易に移動することができる可撓性材料で作製される。図示した実施形態では、2本の懸架ワイヤがヘッド(複数可)の各側に配置される。
【0074】
ワイヤ懸架部の設計は、ヘッドバーの所望の移動を考慮するために異なっていてもよい。例えば、プッシュプルアクチュエータ941、942は、破線矢印によって示されるように、テープ媒体の幅にわたってヘッドバーを移動させる。一実施形態では、第1の懸架ワイヤタイプ945aは、例えば、上下運動に沿って圧縮するように構成されているループ部分を有することによって、上下運動を促進するように構成されている。一実施形態では、第2の懸架ワイヤタイプ945bは、上下運動中の横方向の移動を低減するように構成される。例えば、第2の懸架ワイヤは、より剛性であってもよく、より高い伸張性のある材料を利用し、及び/又は上下運動に垂直な方向に沿って圧縮を低減する形状(例えば、「W」形状)を利用してもよい。
【0075】
HDDで使用されるプッシュプルアクチュエータ設計は、上述のように、テープドライブで使用するように適合させることができる。プッシュプル設計は、高い信頼性及び低製造コストを有し、テープ埋め込み型ドライブ100の実施形態に適している。
【0076】
図10A~
図10Cは、HDD HGAから適合されたヘッドジンバルアセンブリ(head gimbal assembly、HGA)1050を含むヘッドアセンブリ1000の別の実施形態の斜視図(
図10A)、第1の側面プロファイル図(
図10B)、及び第2の側面プロファイル図(
図10C)を示す。
図10Cは、軸に沿って90度回転した
図10Bの側面プロファイル図である。HGA1050は、上端部及び基部端部を含む細長い懸架部1051を含む。懸架部1051は、その上端部において、空気ベアリングシステム1052を含むヘッド1020(又は複数のヘッド)及びヘッドスライダ(又は複数のヘッドスライダ)を支持することができる。
【0077】
細長い懸架部1051は、その基部端部において、1つ以上のアクチュエータ1054、1055及びバネ型クランプ1056によって支持構造体1053に接続することができる。図示した実施形態では、1つ以上のアクチュエータはプッシュプルアクチュエータであり、第1のアクチュエータ1054及び第2のアクチュエータ1055は、懸架部1051の基部を、懸架部1051を支持構造体1053に接続するバネ型クランプ1056に接続する。
【0078】
一実施形態では、第1のアクチュエータ1054及び第2のアクチュエータ1055は、PZTアクチュエータである。
図10Cに示すように、第1のアクチュエータ1054が拡張し、第2のアクチュエータ1055が収縮すると、ヘッド(複数可)は左に移動する。第1のアクチュエータ1054が収縮し、第2のアクチュエータ1055が拡張すると、ヘッド(複数可)は右に移動する。
【0079】
<制御システム>
図11は、特定の実施形態による、テープ埋め込み型ドライブ100のサーボ機構システム1100の制御ブロック図を示す。システムの制御ロジックは、PCBA内のSoC及び/又はPLSIなどのテープ埋め込み型ドライブ100の1つ以上のコントローラのプロセスとして実装されてもよく、1つ以上のモータ及び/又はアクチュエータを制御するために使用されてもよい。
【0080】
一実施形態では、ステッピングモータコントローラ1105、PZTコントローラ1107、及びVCMコントローラ1110は、ステッピングモータ1115、PZTアクチュエータ1120、及びVCM1125を制御し、ターゲットコマンドに応じて、ヘッド(複数可)の移動を調整する。
【0081】
上で考察されるように、ステッピングモータ1115は粗動を提供することができ、VCM1125は微細動を提供することができ、PZTアクチュエータ1120は超微細動を提供することができる。例えば、テープ幅を12.65mmと仮定すると、ステッピングモータのストロークは約12.65mm、VCMストロークは約4mm、PZTストロークは約0.4μmであり得る。この実施形態では、約30,000:10,000:1(ステッピングモータ/VCM/PZTアクチュエータ)の移動比率を作成する。他の実施形態では、この比率は、モータ及びアクチュエータの性能仕様に基づいて異なり得る。
【0082】
第1の制御信号1130は、ステッピングモータコントローラからステッピングモータに送られる。次いで、ヘッド(複数可)を粗動で移動させる。一実施形態では、ヘッド位置センサは、第1の移動の後のヘッドの位置を検出し、ポジティブエラー信号(positive error signal、PES)をVCM及びPZTコントローラに提供する。これに応じて、VCM及びPZTコントローラは、必要に応じてヘッド(複数可)を更に各々微細動及び超微細動させて、ヘッド(複数可)を所望の位置に配置することができる。
【0083】
第1の増幅器1133は、第2の制御信号1135を増幅するために、PZTコントローラ1107とPZTアクチュエータ1120との間に配置され得る。第2の増幅器1138は、第3の制御信号1140を増幅するために、VCMコントローラ1110とVCM1125との間に配置され得る。
【0084】
一実施形態では、PZTアクチュエータ1120及びVCM1125は、ヘッド(複数可)を連続的に移動させる。VCMはまずヘッド(複数可)を動かし、次にヘッドがターゲット位置から第1の閾値距離内にある場合、PZTアクチュエータ1120は、超微細動のためにヘッド(複数可)の移動を引き継ぐことができる。別の実施形態では、PZTアクチュエータ1120及びVCM1125は、ヘッド(複数可)を平行に移動させることができる。
図11の制御システムの説明ではPZTが使用されているが、上記のように、PZTの代わりに他のタイプのアクチュエータを使用することができ、
図11のシステムは、他の実施形態において適宜適合され得ることに留意されたい。
【0085】
<更なる実施形態>
当業者は、いくつかの実施形態では、依然として本開示の範囲内にありながら、他のタイプのテープ埋め込み型ドライブシステムを実装することができることを理解するであろう。加えて、本明細書で考察されるプロセスにおいて行われる実際の工程は、図に記載又は示されるものと異なってもよい。実施形態に応じて、上記の工程のうちの特定の工程を除去してもよく、他の工程を加えてもよい。
【0086】
特定の実施形態が記載されているが、これらの実施形態は単なる例として提示されたものであり、保護の範囲を限定することを意図するものではない。実際に、本明細書に記載される新規の方法及びシステムは、様々な他の形態で具現化され得る。更に、本明細書に記載される方法及びシステムの形態の様々な省略、置換、及び変更が行われてもよい。添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物は、保護の範囲及び趣旨に含まれるような、形態又は修正を網羅することを意図している。例えば、図に示される様々な構成要素は、プロセッサ、ASIC/FPGA、又は専用ハードウェア上のソフトウェア及び/若しくはファームウェアとして実装されてもよい。また、上記で開示された特定の実施形態の特徴及び属性を異なる方法で組み合わせて、追加の実施形態を形成することができ、それらは全て本開示の範囲内にある。本開示は、特定の好ましい実施形態及び用途を提供するが、本明細書に記載される特徴及び利点の全てを提供しない実施形態を含む、当業者には明らかである他の実施形態もまた、本開示の範囲内である。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義されることが意図される。
【0087】
上記のプロセスの全ては、1つ以上の汎用コンピュータ又は専用コンピュータ又はプロセッサによって実行されるソフトウェアコードモジュール内に具現化され、完全に自動化されてもよい。コードモジュールは、任意の種類のコンピュータ可読媒体、又は他のコンピュータストレージデバイス、又はストレージデバイスのコレクションに保存されてもよい。方法の一部又は全ては、代替的に、専用のコンピュータハードウェアで具現化されてもよい。